交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説
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交通事故の損害賠償請求とは、民法709条などを根拠に、事故で生じた損害を加害者に補償してもらうことです。
具体的には治療費や慰謝料、ケガによる減収などを損害賠償請求できるでしょう。
損害賠償請求の範囲は事故が原因で生じた損害であり、実費請求できるものや一定の計算ルールにしたがって算定するものもあります。
具体的にどのように損害賠償請求するのか、どこまでの範囲の損害を補償してもらえるのかわからないという方に向けて、損害賠償金の内訳や計算方法、損害賠償を請求する流れなどを解説しています。
目次

交通事故の損害賠償とは?
まずは、交通事故の損害賠償についての概要を解説します。
事故の損害を補償してもらうこと
損害賠償とは、加害者の不法行為によって生じた損害を補償してもらうことです。
民法709条では、「不法行為を行って他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負う」とされています。
この法律を根拠に、交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できるのです。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法709条
交通事故の損害賠償金としては、治療費や事故の影響による減収、事故による精神的苦痛に対する慰謝料といった「事故と因果関係の認められる損害」に対する補償を請求できます。
損害賠償請求の相手は加害者だけとは限らない
交通事故の損害賠償請求の相手は、直接の加害者である相手車両の運転手が原則です。
しかし、加害者以外の人物が損害賠償請求できる相手となる場合もあります。
たとえば、加害者がレンタカーやバス・社用車などを運転していた場合は「運行供用者」または「使用者」、加害者が未成年の場合は監督義務者である「親」などにも損害賠償を請求できる場合があるのです。
また、他人の車に乗せてもらっていて事故にあった場合は、その車を運転していた人(同乗者)に賠償請求できることもあります。
もっとも、実際には請求相手本人ではなく、請求相手が加入する保険会社に対して損害賠償請求するケースがほとんどです。
ここでは、運行共用者、使用者、親、同乗者が請求相手となる場合について解説します。
運行供用者
運転供用者とは、「自動車の運行を支配・管理する立場にあり、自動車の運行により利益を得ている人」をいいます。
具体的にはレンタカー業者、社用車の所有主である会社、運転代行業者などが運行供用者に該当するでしょう。
所有する車を人に運転させるなどして利益を得ている人は、逆に、損害についても責任を負うものと考えられているのです。
使用者
使用者とは「事業のために他人を使用する者」をいいます。
具体的には、通勤・業務中の運転で事故を起こした加害者の雇用主などがあげられるでしょう。
雇用関係にある従業員がその業務に関連した行為を行っている最中に第三者に損害を与えた場合、雇用主がその損害賠償責任を負うこととなります。
例えば加害者が通勤中だったり、営業先に向かう途中だったりした場合には、加害者の雇用主に対しても損害賠償請求できる可能性があります。
親(監督義務者)
加害者が未成年で責任能力もなければ、原則的に監督義務者である親が賠償責任を負います。
あるいは、未成年に責任能力があっても、監督義務がある親には監督義務違反を根拠とした損害賠償請求できる可能性があるのです。
同乗していた車の運転手
他人の車に乗せてもらっていて事故に遭った場合は、事故の相手方だけでなく同乗車の運転手にも損害賠償請求できることがあります。
ただし、同乗していた車側に過失がない場合には損害賠償請求できません。
損害賠償金は2つの保険会社に請求する
先述の通り、交通事故の損害賠償金は、請求相手本人ではなく請求相手が加入する保険会社に対して行うことがほとんどです。その保険会社とは、自賠責保険と任意保険です。
- 自賠責保険
車を運転する人に加入が義務付けられている保険。加入者が交通事故を起こした場合、その被害者に対して最低限の補償をする。 - 任意保険
車を運転する人が任意で入る保険。加入者が事故を起こした場合、被害者に支払う損害賠償金は「対人・対物賠償保険」で支払われる。
自賠責保険は強制加入なので、ほぼ全てのケースで加害者も加入しています。
ただし、自賠責保険から支払われる損害賠償金は、国が定めた最低限の基準に基づく金額で上限が定められています。
また、自賠責保険では物損に対する損害賠償は対象外です。
よって、自賠責保険だけでは足りない分は、任意保険の「対物・対人賠償保険」から支払ってもらうという仕組みです。

多くの場合、損害賠償金は示談交渉にて、加害者側の任意保険会社に全額請求します。
すると、全額が加害者側の任意保険会社から支払われ、あとから任意保険会社と自賠責保険会社との間で精算が行われます。
ただし、「被害者請求」という手続きによって、自賠責保険分の損害賠償金を加害者側の自賠責保険会社に直接請求することも可能です。
関連記事
自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説
加害者が任意保険に入っていない場合はどうなる?
加害者が任意保険に入っていない場合は、まず加害者側の自賠責保険会社に「被害者請求」の手続きをし、最低限の補償を受け取ります。
その後、足りない分は加害者本人に請求しましょう。
ただし、加害者本人への請求分は、加害者の資力の問題から分割払いになる可能性があります。支払いを踏み倒されるリスクも否定できません。
したがって、自身の保険も活用したり、示談書を公正証書にしたりといった対策が必要です。
関連記事
交通事故の相手が無保険?お金がない場合の賠償請求と政府保障事業等での対策
損害賠償請求の範囲|相場と計算方法
交通事故における損害賠償請求の範囲である損害の種類は以下の通りです。
- 精神的損害:被害者が交通事故により負った精神的苦痛
- 財産的損害:被害者が交通事故により負った財産上の損害
- 積極損害:実際に出費したことで生じる損害
- 消極損害:事故により、本来得られたはずのものが得られなくなったという損害
- 物的損害:事故によって物が損壊した損害
主な損害賠償の内訳
範囲 | 主な費目 |
---|---|
精神的損害 (慰謝料) | 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料 |
財産的損害 (積極損害) | 治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、器具・装具費、介護費用、葬儀費用 |
財産的損害 (消極損害) | 休業損害、後遺障害逸失利益、死亡逸失利益 |
物損 | 車両の修理費・買替費用、評価損、代車費用、休車損害 |
これらの損害の相場を解説します。
精神的損害(慰謝料)
慰謝料は交通事故による精神的苦痛を補償するもので、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料があります。
種類 | 概要 |
---|---|
入通院慰謝料 | 交通事故による入院・通院で生じた精神的苦痛への補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことで生じた精神的苦痛への補償 |
死亡慰謝料 | 死亡した被害者やその遺族の精神的苦痛への補償 |
なお、交通事故の慰謝料には3つの計算基準が存在し、どの計算基準により金額を算出するのかによって金額が異なります。

3つの計算基準
- 自賠責基準
被害者に補償される最低限の金額基準。
関連記事:自賠責保険の慰謝料計算や限度額を解説 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる算定基準。
各社で異なり非公開だが、自賠責基準に近いことが多い。
関連記事:交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは? - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる算定基準。
過去の判例をもとにしているため法的正当性が高い。
関連記事:交通事故の慰謝料は弁護士基準(裁判基準)で請求
被害者が獲得すべき法的正当性が高い慰謝料は、弁護士基準に基づくものです。
しかし、加害者側は任意保険基準や自賠責基準に基づく金額を提示してくるので、鵜呑みにせず増額を交渉しましょう。
ここでは、弁護士基準と自賠責基準の慰謝料相場を解説します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料の金額は、基本的に入通院期間の長さに応じて判断されます。入通院期間別の相場を示した算定表は次の通りです。
入通院慰謝料(重傷)

入通院慰謝料(軽傷)

算定表の使い方
- 基本的に「重傷」の表を参照し、むちうち・打撲・すり傷などの場合は「軽傷」の表を参照する
- 「入院」と「通院」の月数の交わるマスが慰謝料の相場となる
- 「1月」は30日とする
- 入通院期間が35日など、30日で割り切れない場合は、日割り計算を行う
記事『交通事故の慰謝料の計算方法』では、算定表によるくわしい計算手順を解説中です。
自賠責基準の算出方法
一方で、自賠責基準においては以下の計算方法の内金額が小さい方となります。
- 4,300円×治療期間
- 4,300円×(実際の治療日数×2)
仮に、骨折で6ヶ月間(180日間)通院し、治療日数が90日である場合の自賠責基準と弁護士基準の入通院慰謝料の金額は以下のようになります。
自賠責基準 | 弁護士基準(相場) |
---|---|
77万4000円 | 116万円 |
なお、交通事故の慰謝料の目安を知りたいときは、アトム法律事務所の慰謝料計算機による自動計算が便利です。おおよその相場を知りたい方はご活用ください。
後遺障害慰謝料
認定された後遺障害等級に応じて、110万円から2,800万円の後遺障害慰謝料の請求が可能です。等級別の後遺障害慰謝料相場額と自賠責基準の金額を下表に示します。
後遺障害慰謝料の金額
等級 | 自賠責* | 相場額 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
2級 | 998(958) | 2,370 |
3級 | 861(829) | 1,990 |
4級 | 737(712) | 1,670 |
5級 | 618(599) | 1,400 |
6級 | 512(498) | 1,180 |
7級 | 419(409) | 1,000 |
8級 | 331(324) | 830 |
9級 | 249(245) | 690 |
10級 | 190(187) | 550 |
11級 | 136(135) | 420 |
12級 | 94(93) | 290 |
13級 | 57(57) | 180 |
14級 | 32(32) | 110 |
※単位:万円
()内は2020年3月31日以前の交通事故における金額
ポイント
後遺障害慰謝料は後遺障害認定を受けた場合のみ請求可能です。たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級に認定されなければ基本的に後遺障害慰謝料はもらえません。
関連記事では、等級ごとに後遺症の内容を一覧で紹介しているので参考にしてみてください。
死亡慰謝料
死亡慰謝料の自賠責基準と弁護士基準(相場額)の金額は以下の通りです。
死亡慰謝料の金額
被害者 | 自賠責 | 相場額 |
---|---|---|
一家の支柱 | 400 (350) | 2,800 |
母親 配偶者 | 400 (350) | 2,500 |
独身の男女 | 400 (350) | 2,000~2,500 |
子ども | 400 (350) | 2,000~2,500 |
幼児 | 400 (350) | 2,000~2,500 |
遺族1名※ | + 550 | – |
遺族2名※ | + 650 | – |
遺族3名以上※ | + 750 | – |
被扶養者有※ | + 200 | – |
慰謝料の単位:万円
遺族:被害者の配偶者、子、両親(認知した子、義父母などを含む)
( )内の金額は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用
※該当する場合のみ
弁護士基準は亡くなった本人分、父母や配偶者・子といった近親者分への慰謝料を含んだ金額です。
実際に死亡慰謝料を含めた損害賠償の請求を行うのは、被害者本人ではなく、相続人となります。
死亡事故の賠償請求については、『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』の記事もお役立てください。
財産的損害(積極損害)|治療費など
財産的損害のうち、交通事故によって被害者が実際にお金を支払わなくてはいけなくなった損害のことを積極損害といいます。
人身事故の積極損害としては、主に以下の費目が挙げられるでしょう。
主な積極損害
- 治療費
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 器具・装具費
- 介護費用
- 葬儀費用
それぞれの費目の意味合いや相場の金額をくわしく確認していきます。
ただし、交通事故によって生じる財産的損害の種類はさまざまです。
「このような費用は損害賠償金として請求できる?」という疑問がある場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
治療費
治療費は、具体的には応急手当費、診察料、投薬料、手術料などを指します。
交通事故が原因といえるケガを治療するために必要であった部分については、基本的に実費全額を損害額として請求可能です。
治療費の損害賠償請求については、以下の点についておさえておきましょう。
- 治療と並行して加害者側の任意保険会社が直接病院に治療費を支払ってくれることがある。
- 被害者側で治療費を立て替える場合は、健康保険などを使うと負担を軽減できる。
- 整骨院での治療や温泉療法などは、必要な治療といえるのかについて争いになりやすい。
交通事故における治療費については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
付添看護費
付添看護費とは、被害者の通院に付き添いが必要だった場合にかかる費用のことです。原則、医師から付き添いの指示があれば、付添看護費の請求が認められます。
被害者の家族が付き添いをした場合は、入院1日につき6,500円、通院1日につき3,300円が認められます。
また、ヘルパーなど専門家が付き添いをした場合には実費全額が認められるでしょう。
交通事故における付添看護費について詳しく知りたい方は『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?』の記事がおすすめです。
入院雑費
入院中に発生した日用雑貨の購入費や通信費といった雑費も、損害賠償として請求することができます。
ただし、かかった雑費のすべてが無制限に認められるわけではありません。実務上は、1日あたり1,500円といった形で認められることが多いでしょう。
通院交通費
通院にかかった交通費も必要があると認められれば損害賠償請求可能です。
原則として公共交通機関の利用料金や走行距離に応じた自家用車のガソリン代などが対象になります。
事故のケガで公共交通機関の利用が著しく困難だったケースなどでは、タクシー代の請求が例外的に認められることもあります。
他にも、ケガによりタクシーや新幹線など通常より料金のかかる手段で通学・通勤することになった場合は、加害者側に費用請求できるケースも考えられるでしょう。
交通費の請求については『交通事故の通院交通費|請求できる条件や慰謝料との違い、他の交通費は?』の記事をご参考ください。
器具・装具費
松葉づえや車いす、義肢やメガネ、コンタクトレンズなどの器具や装具を購入しなくてはならないこともあります。このような器具・装具についても賠償の対象となるのです。
原則として、かかった実費全額が器具・装具費として認められるでしょう。
なお、長期間にわたって使用する器具・装具については、将来のメンテナンス費用・買替費用も必要になることが想定されるため、将来の費用についても一括で請求することが可能です。
介護費用
交通事故により後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害等級の要介護1級・2級と認定された場合には、交通事故発生から、将来の分も含めて介護費用を請求することが可能です。
介護費用の具体例としては、おむつ費用、車椅子の購入や買い替え費用、居宅のリフォーム費用などがあげられます。
なお、要介護1級・2級の認定が受けられなかった場合でも、交通事故のケガにより日常生活を送るためには介護が必要であると明らかにすれば、介護費用の請求が認められます。
ただし、介護の必要性や介護費用を明らかにすることは難しく、加害者側も簡単には認めないため、介護費用の算定と請求は専門家である弁護士に依頼すべきでしょう。
介護費用が請求できるケースやよくある疑問点について知りたい方は『交通事故で介護費用が請求できる2ケース|計算方法と裁判例から金額もわかる』の記事をご覧ください。
葬儀費用
交通事故により被害者が亡くなった場合、通夜や葬儀などの法要や、墓石や仏壇の設置などにかかったお金を損害賠償金として請求できます。
葬儀費用としては、最大150万円まで請求が認められるでしょう。
財産的損害(積極損害)|休業損害など
財産的損害のうち、事故がなければ本来得られていたであろう利益のことを消極損害といいます。
人身事故の消極損害としては、主に以下の費目が挙げられます。
- 休業損害
- 逸失利益
それぞれの項目の意味合いと計算方法を確認していきましょう。
休業損害
休業損害は、交通事故によるケガで仕事を休まざるを得なくなったために生じた損失を補償するものです。

サラリーマンや自営業者など実際に減収が生じた人はもちろん、専業主婦や一部の無職者も請求できます。
休業損害は、基本的に「日額×実際に休んだ日数」で計算され、日額は事故前3ヶ月間の収入から算出したものとなるでしょう。
日額の計算方法
事故前3ヶ月の収入÷実労働日数=休業損害の日額
休業損害の計算例、いつ請求できていくらもらえるのか、必要書類などは関連記事を参考にしてください。
逸失利益
逸失利益は、交通事故による後遺障害や死亡で得られなくなった、将来の収入を補償するものです。
後遺障害の影響で減ってしまう生涯収入に対する補償を「後遺障害逸失利益」、死亡により得られなくなった将来の収入への補償を「死亡逸失利益」といいます。

後遺障害逸失利益および死亡逸失利益の計算式は次の通りです。
逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数
逸失利益の計算式は複雑です。その一方で、逸失利益は損害賠償の費目のなかでも高額になりやすいため、相場を知り、しっかり請求していく必要があります。
関連記事では逸失利益の計算方法を具体例とともに解説していますので、あわせてお読みください。
関連記事
物的損害|車の修理費など
交通事故では人身への損害の他に、物的な損害についても損害賠償を請求できます。物的損害の主な費目は以下の通りです。
物的損害の主な賠償請求費目
- 車両の修理費
- 車両の買替費用
- 評価損
- 代車費用
- 休車損害 など
それぞれの費目の意味合いや金額を見ていきましょう。
車両の修理費
車の修理にかかった費用は、加害者側に損害賠償を請求できます。
修理費は、修理の妥当性が認められる範囲までの実費を請求可能です。必ずしも修理費のすべてが認められるわけではないことに注意しましょう。
車両の買替費用
以下の場合は、車の修理費ではなく買い替え費用を請求できます。
- 車が物理的に全損し、修理が不可能である場合
- 車の修理費が買い替え費用より高くなる場合
ただし、新車価格ではなく、事故車と同一の車種かつ同程度の使用状態である中古車の価格です。
なお、車の買い替えにあたっては、登録費用や廃車費用も加害者側に請求できます。
車の修理費と買い替え費用を比較したいときや、廃車せざるを得ない状況で、廃車売却を検討する場合は以下のサイトをご覧ください。
評価損
車を修理した場合、修理した箇所によっては修復歴が残ってしまい、中古車市場における市場価格が下がってしまいます。
このような事故による修理で下がった市場価格分については、評価損として加害者側に請求できます。
評価損の金額としては、一般財団法人日本自動車査定協会が発行する「事故減価額証明書」を参考にすることもありますが、修理費を基準に3割程度の範囲内で認められることが多いです。
評価損については『評価損(格落ち)を勝ち取る方法!保険会社が請求を拒否・認めない』の記事も参考になりますので、あわせてご覧ください。
代車費用
車を修理している間の代車費用についても、加害者側に請求できます。
ただし、代車費用が認められるのは、車を業務で使用していた場合がほとんどです。
車を通勤や買い物に使用していた場合は、他の交通手段があるとして、代車費用の請求を認められないことが多いでしょう。
代車費用としては、修理や買替の相当期間分について、修理に出した車と同程度のグレードの車を借りた金額が認められることが多いです。
代車費用については『交通事故で代車費用は請求できる?修理期間中に代車を借りたい』の記事も参考になりますので、あわせてご覧ください。
休車損害
車を業務で使用していた場合、修理などで車が使えなかった期間に得られていたはずの利益を休車損害として加害者側に請求できます。
タクシーやバス、営業用のトラックなどが被害にあったケースでは、休車損害を認められることが多いでしょう。
休車損害は、基本的に「(1日当たりの平均売上額-経費)×休業日数」といった式を用いて計算されます。
事故車のレッカー代
交通事故にあった事故車は、レッカーを呼んで移動させてもらうことがあります。この際かかったレッカー代は、加害者側に請求可能です。
ただし、加害者側から事故車のレッカー代を支払ってもらえるのは、一般的に示談成立後となります。
それより早く事故車のレッカー代を回収したい場合は、自身の車両保険に保険金請求するとよいでしょう。
なお、自身の自動車保険のロードサービスを使い、事故車を保険会社指定の修理工場に運んだ場合は、レッカー代が無料となることがあります。
このようなケースではそもそも事故車のレッカー代は生じていないため、加害者側に損害賠償請求できません。
関連記事
損害賠償の範囲に関してよくある質問
損害賠償請求については、以下のような質問が多いです。
- ペットの被害による精神的苦痛で慰謝料は請求できる?
- お見舞いに来てくれた人の交通費は請求できる?
- 入院やリハビリで留年・就職浪人したときの費用は?
これらについてお答えします。
ペットの被害による精神的苦痛で慰謝料は請求できる?
残念ですが、交通事故でペットが亡くなっても、ペット自身の精神的苦痛や飼い主の精神的苦痛を慰謝料として補償してもらうことはできません。
交通事故の慰謝料の対象となるのは、原則として「人の死傷によって生じた精神的苦痛」だからです。
交通事故においてペットの被害は物損被害として扱われるため、損害賠償金として請求できる範囲はペットの治療費などにとどまるでしょう。
もっとも、ペットの死に対して慰謝料が認められた事例は存在します。
ただし例外的なケースであり、ペットの死で慰謝料を認めてもらうには裁判になる可能性が高く、裁判でも判断が分かれる可能性があります。
お見舞いに来てくれた人の交通費は請求できる?
家族や友人が交通費をかけてお見舞いに来てくれた場合、その交通費は以下の点を考慮して必要・相当と認められる範囲で加害者側に請求できます。
- 被害者の症状の重さ
- 被害者と見舞人の関係性
- 見舞人の心情
とくに見舞人が家族であったり被害者の症状が重かったりする場合、すぐにでもお見舞いに行きたいと思うのはごく自然なことです。
そのため、航空券代や新幹線代など高額な交通費も認められやすい傾向にあります。
また、遠方からの見舞人が翌日もお見舞いするために近隣の宿泊施設に泊まった場合は、その費用も加害者側に請求できることがあります。
入院やリハビリで留年・就職浪人したときの費用は請求できる?
被害者が子供や学生で、交通事故によるケガのために留年・就職浪人した場合は、余分に必要になった学費や下宿代、就職が遅れた期間分の収入などを加害者側に請求できます。
また、留年していなくても、勉強の遅れを取り戻すために家庭教師をつけたり塾に通ったりした場合は、その費用も加害者側に請求できることがあります。
子供・学生の損害賠償金については以下の記事で詳しく解説しているので、ご確認ください。
関連記事
交通事故の損害賠償金に影響する要素
交通事故の損害賠償金は、「過失割合」と「素因減額」によって減額されることがあります。
これらのケースについてもみていきましょう。
過失割合
過失割合とは、事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるかを割合で示したものです。
被害者側にも過失割合がつくと、その割合分、損害賠償金が減額されます。これを「過失相殺」と言います。
過失割合は、事故時の状況から算定され、基本的には示談交渉の際に損害賠償金額とともに決められます。
示談交渉の際、加害者側が提示してくる過失割合は正しくないことも多いので、過失割合の提示を受けたら弁護士に相談することがおすすめです。
関連記事
過失が付けば被害者でも損害賠償請求されることになる
過失が被害者にもつくと、加害者側から損害賠償請求されることにもなります。
たとえば被害者側に過失が1割あるとされると、加害者側から請求されている金額の1割を支払わなければなりません。
実際には被害者から加害者への請求額の方が高く、差し引きした結果、被害者が加害者に支払う金額は0円となることが多いです。
しかし、加害者側が高級車であったため修理費用が高額になった、加害者側に重大な後遺障害が残ったなどの場合は、加害者側からの請求額の方が高くなることがあるでしょう。
もっとも、被害者が任意保険に加入していれば、保険を利用して損害賠償責任を果たすことができます。
素因減額
素因減額とは、被害者側の心因的・身体的素因が交通事故の損害拡大につながっている場合に、その影響分、損害賠償金を減額することです。
例えばもともと腰痛持ちだった被害者が交通事故にあい、腰痛が悪化した場合、腰痛の原因の全てが交通事故にあるとは言えません。
それにもかかわらず腰痛に関する損害額を全て加害者側が負担するのは公平ではないため、損害賠償金を一部減額するのです。
素因減額については関連記事『素因減額とは?減額されるケースや判断基準がわかる【判例つき】』をご覧ください。
損害賠償金の決め方と流れ
損害賠償請求の方法には、示談、ADR、調停、裁判といったものがあげられます。
交通事故の損害賠償請求においては、まずは加害者側との示談交渉で話し合って決めることが多いです。
交通事故の発生から損害賠償を受けるまでの流れを以下に示します。
治療
治癒または症状固定と診断されるまで、治療を受けます。
後遺障害認定
症状固定と診断され、後遺症が残ったら、後遺障害認定を受けます。
示談交渉
基本的には加害者側から示談案の提示があります。示談案の内容を確認し、問題があれば電話やFAX、メールなどで示談交渉をします。
示談交渉では話がまとまらない場合は、ADR、調停、裁判などに移ります。
示談書の作成
示談が成立したら、加害者側から示談書が届きます。内容を確認のうえ、署名・捺印して返送します。
損害賠償金の振り込み
約2週間程度で、損害賠償金が指定の口座に振り込まれます。
示談交渉では、賠償の範囲、損害賠償金額、過失割合などを決めていきます。示談交渉の進め方を具体的に知りたい方、注意点をおさえておきたい方は関連記事もお役立てください。
交通事故の損害賠償請求における注意点
交通事故の損害賠償請求では、「損害が確定してから請求をすること」「時効までに損害賠償請求すること」に注意しましょう。
これらの点について解説します。
損害賠償請求は損害が確定してから行う
交通事故における損害賠償請求を始める時期は、すべての損害が確定し、金銭問題として算定できる状態となってからです。
損害が確定する時期は事故態様によって以下のように変わります。
損害賠償請求を始める時期
事故の態様 | 開始時期 |
---|---|
人身事故(完治) | 治療終了後 |
人身事故(後遺症あり) | 後遺障害認定後 |
物損事故 | 修理など見積り後 |
死亡事故 | 葬儀後 |
すべての損害が確定しない早い段階から示談交渉を開始すると、請求漏れが発生するリスクが高まります。
一度示談が成立してしまうと、再交渉や追加請求はほぼできないため、示談交渉の開始時期には注意が必要です。
損害賠償請求の権利には時効がある
交通事故において、損害賠償請求できる権利には時効があります。時効は損害賠償金の種類により異なります。
たとえば、ケガの治療に関する損害賠償金は、事故の翌日を起算日として5年が請求の時効期限です。
一方で、死亡に関する損害賠償金は死亡の翌日から5年、後遺障害に関する賠償金は症状固定の翌日から5年以内に損害賠償請求しなければなりません。
ただし、物損部分や保険金の請求については時効期限が3年である点には注意が必要です。
示談交渉を開始する時期が遅いと時効までに示談が成立せず、損害賠償請求する権利を失ってしまう危険性があります。
損害賠償請求の期限の詳細や時効の延ばし方については、以下の関連記事もお役立てください。
交通事故の損害賠償金を最大限受け取る方法
交通事故の損害賠償金は、基本的には示談交渉によって金額が決まります。
そのため、交渉次第では相場以下の金額しか得られないこともあります。交通事故の損害賠償金を最大限受け取る方法を確認していきましょう。
(1)相場である弁護士基準の金額を目指す
示談交渉においては、「弁護士基準」に基づく損害賠償額を得られるよう交渉しましょう。
加害者側が提示してくる金額は自賠責基準や任意保険基準に基づいて計算されたものであり、弁護士基準の金額と比べると半分〜3分の1程度になっていることがあります。
加害者側から提示された内容を鵜呑みにするのではなく、被害者側でも正しい損害賠償金を確認し、適切な金額になるよう交渉しましょう。
ただし、弁護士基準の金額は本来、裁判を起こして認められるものです。
したがって、示談交渉段階で被害者が主張しても、加害者側は受け入れようとしないでしょう。
しかし、被害者側が弁護士を立てれば、加害者側は裁判に発展することを恐れて譲歩の姿勢をとることがあります。
被害者自身の交渉で弁護士基準の金額を得るのは難しいため、示談交渉では弁護士を立てることもご検討ください。
(2)事故の過失割合をしっかり交渉
示談交渉では、過失割合が適切なものとなるように交渉することが必要です。
加害者側の任意保険会社は過失相殺を狙い、あえて被害者側の過失割合を多く見積もってくることがあります。
よって、示談交渉時には損害賠償金額だけでなく、過失割合についても徹底的に交渉しましょう。
ただし、過失割合は法的知識や過去の事例をもとに柔軟に算定されます。算定方法を調べてその通りに算定すれば正しい過失割合がわかるというものではありません。
無料相談を利用して交通事故に詳しい弁護士に算定してもらうことをおすすめします。
アトム法律事務所では損害賠償額を増額させたい方や過失割合の妥当性がわからないという方からのご相談を無料で受け付けています。

(3)後遺障害認定に向けて万全に対策
交通事故で後遺症が残ったら、示談をする前に後遺障害等級認定の申請を適切に行いましょう。
ただし、申請すれば必ず後遺障害に認定されるとは限りません。
申請書類で後遺症の存在や程度を十分に伝えられないと、本来よりも低い等級に認定されたり、そもそも等級が認定されなかったりする可能性があります。
適切な後遺障害等級に認定されるためには、審査に向けて申請書類に工夫を施すことが何より大切です。
交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、過去の事例や専門知識をもとに、提出書類の改善や、受けるべき検査についてのアドバイスを受けられます。
想定より低い後遺障害等級に認定されたり非該当となったりして後悔しないためにも、後遺障害等級認定を申請する際は、弁護士に相談することがおすすめです。
交通事故の損害賠償問題は弁護士に相談しよう
交通事故の損害賠償問題は、弁護士に一度相談しておくことをおすすめします。
損害賠償金が増額可能かを弁護士に相談できる
弁護士に相談すれば、損害賠償金額の相場額がわかり、増額の可能性を探ることができます。
また、ほかにも弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを受けることが可能です。
メリット
- 適切な過失割合を知ることができる
- 示談交渉において相場の金額まで増額されやすくなる
- 適切な等級の後遺障害等級認定を受けられるようサポートしてくれる
- 示談交渉や証拠の収集を弁護士に行ってもらえる
- 示談交渉がスムーズに進み、早期の解決になりやすい
弁護士への依頼により、被害者が相場の金額の損害賠償金を受け取れる可能性が高まるでしょう。
弁護士に相談・依頼するメリットは他にも多数ありますので、相談・依頼するかどうか検討しているという方は『交通事故を弁護士に依頼するメリット10選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。
弁護士費用は弁護士費用特約でカバーできる
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約のことです。約款によりますが弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社が負担する内容が多くなっています。

最終的な示談金額によりますが、弁護士費用特約でカバーできる事案は多いので、弁護士費用特約を使えば、被害者は弁護士費用の負担をしなくて済む可能性が高いといえるでしょう。
弁護士費用特約は、自動車保険、火災保険、クレジットカードなどにも付帯されていたり、被害者の家族の保険に付帯されている弁護士費用特約が利用できたりします。
弁護士費用が不安な方は、ぜひご自身やご家族の保険契約の約款や加入状況を確認してみてください。
弁護士費用特約の使い方やメリットについては、『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご参考ください。
アトム法律事務所の賠償金増額事例
次に、アトム法律事務所が実際に受任した事案から、損害賠償金の増額事例を厳選して紹介します。
その他の増額事例や体験談を知りたい方は、『交通事故の体験談8選』の記事をご確認ください。
増額事例(1)後遺障害なしのケース
頚椎捻挫の増額事例
弁護士相談の段階で慰謝料などの金額に増額の余地があったケース。
弁護活動の成果
提示額の41万円から、最終的な受取金額が159万円まで増額された。
傷病名
頚椎捻挫
後遺障害等級
なし
この交通事故は、加害者側から41万円の提示を受けておられましたが、弁護士からみて増額の余地があると十分判断できるものでした。
弁護活動の結果、当初の提示41万円から約3.8倍の159万円という金額まで増額が認められました。
軽傷事故の弁護士費用は?
比較的軽傷の事案ではありましたが、弁護士費用特約を利用できたことから、被害者自身は自己負担なくご依頼いただけました。
弁護士費用特約を使っても保険等級には影響しないので、特約が使える状況であれば、積極的に弁護士への依頼を検討すべきといえます。
増額事例(2)むちうちで後遺障害認定を受けられたケース
頚椎捻挫の増額事例
弁護士相談の段階で後遺障害等級が既に認定済だったものの、慰謝料などの金額に増額の余地があったケース。
弁護活動の成果
提示額の256万円から、最終的な受取金額が670万円まで増額された。
傷病名
頚椎捻挫
後遺障害等級
12級13号
この交通事故では、交差点を走行中の被害者の車に対して、わき道から自動車が飛び出してきて衝突した事案でした。
アトム法律事務所にご相談に来られた段階で後遺障害12級認定を受けておられましたが、弁護士から見ると損害賠償金が低い水準となっていたのです。
弁護士が交渉に入った結果、わずか1か月で約2.6倍の金額まで増額されました。
スピード解決もメリットのひとつ
交通事故の内容やご相談のタイミングによっては、スピード解決が実現できる場合もあります。損害賠償金を早く受け取りたい方も、弁護士への相談を検討してみてください。
交通事故でむちうちを負ったときの慰謝料や後遺障害等級認定については、『交通事故によるむちうちの症状・治療期間・後遺症|慰謝料相場も解説』の記事が参考になります。
増額事例(3)圧迫骨折のケース
圧迫骨折の増額事例
弁護士相談の段階で認定されていなかった後遺障害等級について認定を受けることで、慰謝料等の増額に成功したケース。
弁護活動の成果
提示額の6万円から、最終的な受取金額が825万円まで増額された。
傷病名
胸椎圧迫骨折
後遺障害等級
11級7号
こちらの事例は、後遺障害等級に認定されていない状態で損害賠償金の提示がなされ、適正金額はいくらなのか確認するため弁護士に相談されたものです。
弁護士が事故後の経過などを確認したところ、後遺障害認定の見込みが十分にある事案だとわかりました。弁護士がサポートした結果、後遺障害等級11級に認定され、損害賠償金も800万円以上増額されました。
提示額は不十分なことも多い
加害者側の主張をそのまま受け入れて示談してしまったら、大きく損してしまうケースもあることがわかる事例です。示談成立の前に、弁護士に適正金額を確認することは重要と言えるでしょう。
圧迫骨折で後遺症を負ったときの慰謝料や後遺障害等級認定は、『交通事故による圧迫骨折の後遺障害等級と慰謝料の基準を弁護士が解説』の記事が参考になります。
交通事故の損害賠償請求はアトムの弁護士にお任せ
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方を対象に無料法律相談を実施しています。
無料相談では、ご自身のケースに即した損害賠償金を見積もることも可能です。交通事故の損害賠償金を最大限受け取りたいなら、弁護士に一度相談してみましょう。
「忙しくて法律事務所まで行く時間がない」
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「損害賠償金の見積もりだけでもとってみたい」
上記のようなお悩みをお持ちの方も、気軽にご連絡ください。アトム法律事務所の無料相談は、以下のような体制を整えています。
- 電話・LINEでスキマ時間に弁護士に相談できる
- 相談予約の電話は24時間365日つながる
- 交通事故の被害者の方からの相談は全国受付
まずはお気軽にお問合せください。





高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了