交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故の損害賠償請求とは、民法709条などを根拠に、事故で生じた損害を加害者に補償してもらうことです。具体的には治療費や慰謝料、ケガによる減収などを損害賠償請求できます。
しかし、具体的にどのように損害賠償請求するのか、どこまでの範囲の損害を補償してもらえるのかわからないという方も多いでしょう。
この記事では、損害賠償金の内訳や計算方法、損害賠償を請求する流れなどを解説しています。「こんな損害も賠償請求できる?」という疑問にもお答えするので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
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交通事故の損害賠償とは?
まずは、交通事故の損害賠償とはそもそも何か、どのような流れで賠償を受けるのかを確認していきましょう。
事故による損害を相手に補償してもらうこと
損害賠償とは、加害者の不法行為によって生じた損害を補償してもらうことです。
民法709条では、不法行為を行って他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負うとされています。
この法律を根拠に、交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できるのです。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法709条
交通事故の場合、損害賠償金として治療費や事故の影響による減収、事故によって生じた精神的苦痛などに対する補償を請求できます。
なお、損害賠償金として受け取ったお金に税金がかかることは基本的にありません。損害賠償金が非課税である理由、例外的に課税されるケースについては『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース|いくらから課税される?税金別に解説』の記事をご確認ください。
賠償請求相手は加害者に加えて他にもいる
交通事故の被害にあったとき、基本的には直接の加害者である相手車両の運転手に対して損害賠償請求を行います。
しかし、場合によっては、加害者に加えて他にも損害賠償請求できる相手がいることもあります。たとえば、加害者がレンタカーやバス・社用車などを運転していた場合は「運行供用者」または「使用者」、加害者が未成年の場合は「親」などにも損害賠償を請求できる場合もあります。
- 運行供用者
所有する車を人に運転させるなどして利益を得ている人。
レンタカー業者、社用車の所有主である会社、運転代行業者など。 - 使用者
業務上の目的で運転手に車を運転させていた人。
通勤・業務中の運転で事故を起こした加害者の雇用主など。 - 親
加害者が未成年で責任能力もなければ、原則的に親が賠償責任を負う。
未成年に責任能力があっても、監督義務がある親には損害賠償請求が可能。
また、他人の車に乗せてもらっていて事故に遭った場合は、事故の相手方だけでなく同乗車の運転手にも損害賠償請求できることがあります。
ポイント
通常、加害者は任意保険に加入していることが多いので、賠償請求相手は加害者側の任意保険会社となることがほとんどです。
任意保険会社が提示してくる賠償金には安易に合意しないでください。任意保険会社は、支払う賠償金をできる限り少なくしようとあの手この手で交渉してきます。
損害賠償請求の相手について詳しくは、以下の記事にてご確認ください。
損害賠償金の決め方と流れ
交通事故の損害賠償金については、まず示談交渉にて加害者側と話し合って決めていくことになります。交通事故の発生から損害賠償を受けるまでの流れは、以下のとおりです。
- 交通事故直後の対応
- 入院・通院などで治療
- ケガが完治または症状固定となる
- 後遺症が残ったら後遺障害等級認定の申請
- 示談交渉
※相手は加害者側の任意保険担当者あるいは加害者本人であることが多い - 示談がまとまらなければADRや調停、民事裁判を行う
- 示談金(損害賠償金)の獲得

なお、損害賠償金が受け取れるのは基本的に示談成立後ですが、加害者側の自賠責保険会社に対して「被害者請求」という手続きをすれば、示談成立前に一部の金額を受け取れます。被害者請求について詳しくは『交通事故の被害者請求とは?メリットや請求方法、必要書類を解説』の記事をご覧ください。
示談金と損害賠償金はどう違う?
交通事故における損害賠償金とは、事故で被った損害を弁済する金銭のことです。
交通事故の損害賠償では、まず示談交渉による解決を目指すことが多くなっています。こうして示談によって当事者同士が決めた損害賠償金は「示談金」として受けとることになるのです。
示談金と損害賠償金に細かな意味の違いはありますが、いずれも交通事故で被った損害に対して支払われる金銭をいいます。
損害賠償請求は開始時期と時効に要注意
交通事故における損害賠償では、示談交渉の開始時期と時効に注意しましょう。
すべての損害が確定しない早い段階から示談交渉を開始すると、請求漏れが発生するリスクが高まります。示談成立後には回収できない恐れがあるので、示談交渉の開始時期には注意が必要です。
あるいは、示談交渉を開始する時期が遅いと時効までに示談が成立せず、損害賠償請求する権利を失ってしまうことになります。
- 示談交渉の開始時期
- 人身事故(後遺障害なし):治療終了後
- 人身事故(後遺障害あり):後遺障害認定後
- 物損事故:車の修理費などの見積りが出た後
- 死亡事故:葬儀後
- 示談成立の期限(損害賠償請求権の消滅時効まで)
- 傷害に関する費目:事故翌日から5年
- 後遺障害に関する費目:症状固定翌日から5年
- 物損に関する費目:事故翌日から3年
- 死亡に関する費目:死亡翌日から5年
なお、保険金を請求する場合や加害者不明の場合、損害賠償請求権の消滅時効は上記の通りではありません。詳しくは『交通事故の示談は時効期限に注意』の記事をご覧ください。
請求できる賠償金の費目範囲|相場・計算方法も解説
交通事故で請求できる損害には、「精神的損害」と「財産的損害」の2種類があります。
また、財産的損害は、実際に出費した「積極損害」と、事故によって得られなくなった「消極損害」にわけられます。
交通事故の損害賠償金の内訳を、人的損害と物的損害にわけて確認してみましょう。
損害賠償金の内訳(人的損害)
- 精神的損害
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
- 財産的損害(積極損害)
- 治療費
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 器具・装具費
- 葬儀費用 など
- 財産的損害(消極損害)
- 休業損害
- 後遺障害逸失利益
- 死亡逸失利益
損害賠償金の内訳(物的損害)
- 財産的損害(積極損害)
- 車両の修理費
- 車両の買替費用
- 評価損
- 代車費用
- 休車損害 など
これら各費目について、具体的にどのような内容か、どうやって計算するのかを確認していきましょう。
(1)慰謝料|事故による精神的苦痛の補償
交通事故にあったとき、被害者は「ケガの治療でつらい思いをした」「治る見込みがない後遺症と付き合っていかなくてはいけない」といった精神的苦痛を受けると考えられます。
こうした精神的損害に対する金銭的な補償のことを慰謝料といい、交通事故の損害賠償では「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」といった3種類の慰謝料があるのです。
- 入通院慰謝料:交通事故による入院・通院で生じた精神的苦痛への補償
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことで生じた精神的苦痛への補償
- 死亡慰謝料:死亡した被害者やその遺族の精神的苦痛への補償
各慰謝料の計算方法・相場を見ていきましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料の金額は、基本的に入通院期間の長さに応じて判断されます。入通院期間別の相場を示した算定表は次の通りです。
入通院慰謝料(重傷)

入通院慰謝料(軽傷)

算定表の使い方
- 基本的に「重傷」の表を参照し、むちうち・打撲・すり傷などの場合は「軽傷」の表を参照する
- 「入院」と「通院」の月数の交わるマスが慰謝料の相場となる
- 「1月」は30日とする
- 入通院期間が35日など、30日で割り切れない場合は、日割り計算を行う
- 日割計算の解説記事:交通事故慰謝料の相場早見表
また、関連記事『交通事故の慰謝料相場|症状別の相場金額を網羅』では、ケガの症状別に平均的な入通院期間などを想定して慰謝料相場を紹介しています。
治療終了前でどれくらいの入通院期間になるかまだ分からない場合は、参考にしてみてください。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺症に対して認定された「後遺障害等級」に応じて金額が判断されます。
たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級に認定されなければ基本的に後遺障害慰謝料はもらえません。
等級別の後遺障害慰謝料相場は次の通りです。
後遺障害慰謝料の金額
等級 | 慰謝料額 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800 |
2級・要介護 | 2,370 |
1級 | 2,800 |
2級 | 2,370 |
3級 | 1,990 |
4級 | 1,670 |
5級 | 1,400 |
6級 | 1,180 |
7級 | 1,000 |
8級 | 830 |
9級 | 690 |
10級 | 550 |
11級 | 420 |
12級 | 290 |
13級 | 180 |
14級 | 110 |
※単位:万円
ポイント
後遺障害慰謝料は後遺障害認定を受けた場合のみ請求可能です。入通院慰謝料とは別に請求できるので、後遺障害認定を受けられれば損害賠償金全体として増額されます。
『後遺障害等級一覧表』の記事では、後遺症別に該当しうる等級を紹介しているので参考にしてみてください。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、亡くなった本人分、父母や配偶者・子といった近親者分への慰謝料を含んで、下表の金額が相場です。
死亡慰謝料の金額
被害者 | 慰謝料額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
独身の男女 | 2,000~2,500万円 |
子ども | 2,000~2,500万円 |
幼児 | 2,000~2,500万円 |
※近親者に認められる慰謝料を含む金額
実際に死亡慰謝料を含めた損害賠償の請求を行うのは、被害者本人ではなく、相続人となります。
死亡事故の賠償請求については、『死亡事故の慰謝料相場はいくら?遺族が請求すべき損害賠償金の解説』の記事もお役立てください。
(2)積極損害|治療費などにかかった費用の補償
慰謝料以外の損害は、すべて財産的損害に該当します。
財産的損害のうち、交通事故によって被害者が実際にお金を支払わなくてはいけなくなった損害のことを積極損害といいます。
人身事故の積極損害としては、主に以下の費目が挙げられるでしょう。
- 治療費
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 器具・装具費
- 葬儀費用 など
それぞれの費目の意味合いや相場の金額をくわしく確認していきます。
治療費
治療費は、具体的には応急手当費、診察料、投薬料、手術料などを指します。交通事故が原因といえる部分については基本的に実費全額を損害額として請求できます。
治療費の損害賠償請求については、以下の点についておさえておきましょう。
- 治療と並行して加害者側の任意保険会社が直接病院に治療費を支払ってくれることがある。
- 被害者側で治療費を立て替える場合は、健康保険などを使うと負担を軽減できる。
- 整骨院での治療や温泉療法などは、交通事故との因果関係について争いになりやすい。
交通事故における治療費については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
付添看護費
付添看護費とは、被害者の通院に付き添いが必要だった場合にかかる費用のことです。原則として、医師から付き添いの指示があれば、付添看護費の請求が認められます。
被害者の家族が付き添いをした場合は、入院1日につき6,500円、通院1日につき3,300円が認められます。
また、ヘルパーなど専門家が付き添いをした場合には実費全額が認められるでしょう。
交通事故における付添看護費について詳しく知りたい方は『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?』の記事がおすすめです。
入院雑費
入院中に発生した日用雑貨の購入費や通信費といった雑費も、損害賠償として請求することができます。
ただし、かかった雑費のすべてが無制限に認められるわけではありません。実務上は、1日あたり1,500円といった形で認められることが多いでしょう。
通院交通費
入通院をするために発生した交通費についても、損害賠償請求が可能です。
請求が認められるのは、原則として公共交通機関の利用料金や自家用車のガソリン代などです。しかし、足をケガして公共交通機関の利用が著しく困難だったケースなどでは、タクシー代の請求が認められることもあります。
他にも、ケガによりタクシーや新幹線など通常より料金のかかる手段で通学・通勤することになった場合は、その費用も加害者側に請求できる可能性があります。
交通費の請求については『交通事故にあったら【交通費】と慰謝料を請求できる?』の記事をご参考ください。
器具・装具費
交通事故によってケガを負ったとき、場合によっては松葉づえや車いす、義肢やメガネ、コンタクトレンズなどの器具や装具を購入しなくてはならないこともあります。このような器具・装具についても賠償の対象となります。
原則として、かかった実費全額が器具・装具費として認められるでしょう。
なお、長期間にわたって使用する器具・装具については、将来のメンテナンス費用・買替費用も必要になることが想定されます。長期間にわたって使用する器具・装具がある場合は、将来の費用についても一括で請求することになるでしょう。
葬儀費用
交通事故により被害者が亡くなった場合、通夜や葬儀などの法要や、墓石や仏壇の設置などにかかったお金を、損害賠償金として請求できます。
葬儀費用としては、最大150万円まで請求が認められるでしょう。
その他
これまで紹介してきた費目の他に、以下のような費用も損害賠償金として請求できます。
ただし、いずれも交通事故との因果関係が認められるものに限ります。
- 診断書の発行手数料
- 医師への謝礼
- 後遺障害に対応するための家屋のリフォーム代 など
「このような費用は損害賠償金として請求できる?」という疑問がある場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
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(3)消極損害|ケガの影響による減収などの補償
財産的損害のうち、事故がなければ本来得られていたであろう利益のことを消極損害といいます。
人身事故の消極損害としては、主に以下の費目が挙げられます。
- 休業損害
- 逸失利益
それぞれの項目の意味合いと計算方法を確認していきましょう。
休業損害
休業損害は、交通事故によるケガで仕事を休まざるを得なくなったために生じた損失を補償するものです。
サラリーマンや自営業者など実際に減収が生じた人はもちろん、専業主婦や一部の無職者も請求することが可能です。
休業損害は、基本的に「日額×実際に休んだ日数」で計算され、日額は事故前3カ月間の収入から算出したものとなります。
休業損害における日額の計算方法
計算方法 | |
---|---|
日額 | 事故前3ヶ月の収入 ÷実労働日数 |
休業損害の詳しい計算方法、いつ請求できていくらもらえるのか、必要書類などのくわしい中身は関連記事を参考にしてみてください。
逸失利益
逸失利益は、交通事故による後遺障害や死亡で得られなくなった、将来の収入を補償するものです。
後遺障害の影響で減ってしまう生涯収入に対する補償を「後遺障害逸失利益」、死亡により得られなくなった将来の収入への補償を「死亡逸失利益」といいます。
逸失利益の計算式は次の通りです。
- 後遺障害逸失利益
- 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
- 死亡逸失利益
- 基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
計算式の詳しい解説:【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法
逸失利益は計算方法が複雑なので、以下の計算機で目安を掴むこともおすすめです。あくまでも機械的な計算結果となるため、細かい事情を反映した厳密な相場とは異なる可能性があります。計算機の結果はあくまでも目安とし、個別の相場観は弁護士にお問い合わせください。
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(4)物的損害|車の修理費などの補償
交通事故では人身への損害の他に、物的な損害についても損害賠償を請求できます。物的損害の主な費目は以下の通りです。
- 車両の修理費
- 車両の買替費用
- 評価損
- 代車費用
- 休車損害 など
それぞれの費目の意味合いや金額を見ていきましょう。
車両の修理費
車の修理にかかった費用は、加害者側に損害賠償を請求することができます。
修理費は、修理の妥当性が認められる範囲までの実費を請求可能です。必ずしも修理費のすべてが認められるわけではないことに注意しましょう。
車両の買替費用
以下の場合は、車の修理費ではなく買い替え費用を請求できます。
- 事故によって車が物理的に全損し、修理が不可能である場合
- 車の修理費が買い替え費用より高くなる場合
ただし、請求できるのは新車価格ではなく、事故車と同一の車種かつ同程度の使用状態である中古車の価格です。
また、車の買い替えにあたっては、登録費用や廃車費用も加害者側に請求できます。
評価損
車を修理した場合、修理した箇所によっては修復歴が残ってしまい、中古車市場における市場価格が下がってしまいます。
このような事故による修理で下がった市場価格分については、評価損として加害者側に請求できます。
評価損の金額としては、一般財団法人日本自動車査定協会が発行する「事故減価額証明書」を参考にすることもありますが、修理費を基準に3割程度の範囲内で認められることが多いです。
代車費用
車を修理している間の代車費用についても、加害者側に請求できます。
ただし、代車費用が認められるのは、車を業務で使用していた場合がほとんどです。車を通勤や買い物に使用していた場合は、他の交通手段があるとして、代車費用の請求を認められないことが多いでしょう。
代車費用としては、修理や買替の相当期間分について、修理に出した車と同程度のグレードの車を借りた金額が認められることが多いです。
休車損害
車を業務で使用していた場合、修理などで車が使えなかった期間に得られていたはずの利益を休車損害として加害者側に請求できます。
タクシーやバス、営業用のトラックなどが被害にあったケースでは、休車損害を認められることが多いでしょう。
休車損害は、基本的に「(1日当たりの平均売上額-経費)×休業日数」といった式を用いて計算されます。
損害賠償請求できる?レッカー代やお見舞いなどケース別に解説
事故車のレッカー代を請求したい
交通事故にあった事故車は、レッカーを呼んで移動させてもらうことがあります。この際かかったレッカー代は、加害者側に請求可能です。
ただし、加害者側から事故車のレッカー代を支払ってもらえるのは、一般的に示談成立後と考えておきましょう。
それより早く事故車のレッカー代を回収したい場合は、自身の車両保険に保険金請求するとよいでしょう。
なお、自身の自動車保険のロードサービスを使い、事故車を保険会社指定の修理工場に運んだ場合は、レッカー代が無料となることがあります。このようなケースではそもそも事故車のレッカー代は生じていないため、加害者側に損害賠償請求できません。
家族や友人が交通費を払ってお見舞いに来てくれた
家族や友人が交通費をかけてお見舞いに来てくれた場合、その交通費は以下の点を考慮して必要・相当な範囲で加害者側に請求できます。
- 被害者の症状の重さ
- 被害者と見舞人の関係性
- 見舞人の心情
とくに見舞人が家族であったり被害者の症状が重かったりする場合、すぐにでもお見舞いに行きたいと思うのはごく自然なことです。よって、航空券代や新幹線代など高額な交通費も認められやすい傾向にあります。
また、遠方からの見舞人が翌日もお見舞いするために近隣の宿泊施設に泊まった場合は、その費用も加害者側に請求できることがあります。
入院やリハビリで留年・就職浪人した
被害者が子供や学生で、交通事故によるケガのために留年・就職浪人した場合は、余分に必要になった学費や下宿代、就職が遅れた期間分の収入などを加害者側に請求できます。
また、留年していなくても、勉強の遅れを取り戻すために家庭教師をつけたり塾に通ったりした場合は、その費用も加害者側に請求できることがあります。
子供・学生の損害賠償金については以下の記事で詳しく解説しているので、ご確認ください。
ペットが亡くなり精神的苦痛を感じた
残念ですが、交通事故でペットが亡くなっても、ペット自身の精神的苦痛や飼い主の精神的苦痛を慰謝料として補償してもらうことはできません。
交通事故の慰謝料の対象となるのは、原則として「人の死傷によって生じた精神的苦痛」だからです。
交通事故においてペットの被害は物損被害として扱われるため、損害賠償金として請求できる範囲はペットの治療費などにとどまるでしょう。
もっとも、ペットの死に対して慰謝料が認められた事例は存在します。ただし例外的なケースであり、ペットの死で慰謝料を認めてもらうには裁判が必要になる可能性が高いでしょう。そして、裁判でも判断が分かれる可能性があります。
物損被害に関して慰謝料が認められた事例は、『物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法』の記事にて紹介しています。
交通事故の損害賠償金を最大限受け取る方法
次に、交通事故の損害賠償金を最大限受け取るにはどうすればよいかを見ていきます。
(1)弁護士基準の金額を目指して交渉
示談交渉の際、加害者側は相場よりも低い金額を提示してきます。
中でも慰謝料は、自賠責基準や任意保険基準という基準に沿って計算されており、本記事で紹介した相場(弁護士基準に沿ったもの)より大幅に低いことが多いです。
たとえばむちうちで後遺障害14級に認定された場合の後遺障害慰謝料は、弁護士基準なら110万円ですが自賠責基準だとわずか32万円です。
よって、最大限の損害賠償金を得るには弁護士基準の金額になるよう増額交渉しなければなりません。

- 自賠責基準
被害者に補償される最低限の金額基準。
関連記事:自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる? - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる算定基準。各社で異なり非公開だが、自賠責基準に近いことが多い。
関連記事:交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは? - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる算定基準。
過去の判例をもとにしているため法的正当性が高い。
関連記事:交通事故の慰謝料は弁護士基準で計算!
(2)損害賠償金を左右する過失割合も徹底的に交渉
過失割合とは、交通事故が生じた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのかを割合で示したものです。
過失割合が付いてしまうとその割合分、損害賠償金が減額されてしまいます。これを「過失相殺」と言います。
被害者であっても過失割合が付くことは珍しくありません。
しかし、加害者側の任意保険会社は過失相殺を狙い、あえて被害者側の過失割合を多く見積もっていることがあります。
よって、示談交渉時には損害賠償金額だけでなく、過失割合についても徹底的に交渉すべきです。
ただし、過失割合は法的知識や過去の事例をもとに柔軟に算定するものです。
算定方法を調べてその通りに算定すれば正しい過失割合がわかるというものではありません。
よって、無料相談を利用して交通事故に詳しい弁護士に算定してもらうことをおすすめします。
過失が付けば被害者でも損害賠償請求されることになる
なお、過失が被害者にもつくと、加害者側から損害賠償請求されることにもなります。
実際には被害者から加害者への請求額の方が高く、差し引きした結果、被害者が加害者に支払う金額は0円となることが多いです。
しかし、加害者側が高級車であったため修理費用が高額になった、加害者側に重大な後遺障害が残ったなどの場合は、加害者側からの請求額の方が高くなることがあるでしょう。このような場合、被害者は加害者に対して損害賠償金を支払わなければなりません。
もっとも、被害者が任意保険に加入していれば、保険を利用して損害賠償責任を果たすことができます。
(3)後遺障害認定に向けて万全な対策をとる
交通事故で後遺症が残ったら、示談をする前に後遺障害等級認定の申請を行いましょう。
ただし申請すれば必ず後遺障害に認定されるとは限りません。申請書類で後遺症の存在や程度を十分に伝えられないと、本来よりも低い等級に認定されたり、そもそも等級が認定されなかったりする可能性もあるのです。
適切な後遺障害等級に認定されるためには、審査に向けて申請書類に工夫を施すことが何より大切です。
交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、過去の事例や専門知識をもとに、提出書類の改善や、受けるべき検査についてのアドバイスを受けられます。
想定より低い後遺障害等級に認定されたり非該当となったりして後悔しないためにも、後遺障害等級認定を申請する際は、弁護士に相談することがおすすめです。
交通事故の損害賠償問題は弁護士に相談しよう
交通事故の損害賠償問題は、弁護士に一度相談しておくことをおすすめします。
賠償金が増額可能か弁護士に聞いてみる
弁護士に相談すれば、損害賠償金額の相場額を知ることができるので、増額の可能性を探ることができます。
また、ほかにも弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを受けることが可能です。
- 適切な過失割合を知ることができる
- 示談交渉において相場の金額まで増額されやすくなる
- 適切な等級の後遺障害等級認定を受けられるようサポートしてくれる
- 示談交渉や証拠の収集を弁護士に行ってもらえる
- 示談交渉がスムーズに進み、早期の解決になりやすい
詳しくは、『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選』の記事をご覧ください。
つづいて弁護士費用を抑える方法を紹介します。
弁護士費用は「弁護士費用特約」があれば安心
「弁護士費用がかかれば結果的に損をしてしまうのでは?」と不安に思われる方は少なくありません。
弁護士費用が不安な方は、弁護士費用特約を利用できるか今すぐ確認することをおすすめします。
ポイント
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約のことです。
約款によりますが弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社が負担する内容が多くなっています。

最終的な示談金額によりますが、弁護士費用特約でカバーできる事案は多いので、弁護士費用特約を使えば、被害者は弁護士費用の負担をしなくて済む可能性が高いといえるでしょう。
弁護士費用特約は、自動車保険、火災保険、クレジットカードなどにも付帯されていたり、被害者の家族の保険に付帯されている弁護士費用特約が利用できたりします。
弁護士費用が不安な方は、ぜひご自身やご家族の保険契約の約款を確認してみてください。
弁護士費用特約の使い方やメリットについては、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事をご参考ください。
アトム法律事務所の賠償金増額事例
次に、アトム法律事務所が実際に受任した事案から、損害賠償金の増額事例を厳選して紹介します。
その他の増額事例や体験談を知りたい方は、『交通事故の体験談8選』の記事をご確認ください。
増額事例(1)後遺障害なしのケース
事例の概要
傷病名 | 頚椎捻挫 |
後遺障害等級 | 非該当 |
当初の提示額 | 41万円 |
最終的な回収額 | 159万円(約3.8倍に増額) |
この交通事故は、加害者側から41万円の提示を受けておられましたが、弁護士からみて増額の余地があると十分判断できるものでした。弁護活動の結果、当初の提示41万円から約3.8倍の159万円という金額まで増額が認められました。(もっと詳しく:頚椎捻挫の増額事例)
軽傷事故の弁護士費用は?
比較的軽傷の事案ではありましたが、弁護士費用特約を利用できたことから、被害者自身は自己負担なくご依頼いただけました。弁護士費用特約を使っても保険等級には影響しないので、特約が使える状況であれば、積極的に弁護士への依頼を検討すべきといえます。
増額事例(2)むちうちで後遺障害認定を受けられたケース
事例の概要
傷病名 | 頚椎捻挫 |
後遺障害等級 | 12級13号 |
当初の提示額 | 256万円 |
最終的な回収額 | 670万円(約2.6倍に増額) |
この交通事故では、交差点を走行中の被害者の車に対して、わき道から自動車が飛び出してきて衝突した事案でした。
アトム法律事務所にご相談に来られた段階で後遺障害12級認定を受けておられましたが、弁護士から見ると損害賠償金が低い水準となっていたのです。弁護士が交渉に入った結果、わずか1か月で約2.6倍の金額まで増額されました。(もっと詳しく:頚椎捻挫で後遺障害12級の増額事例)
スピード解決もメリットのひとつ
交通事故の内容やご相談のタイミングによっては、スピード解決が実現できる場合もあります。損害賠償金を早く受け取りたい方も、弁護士への相談を検討してみてください。
交通事故でむちうちを負ったときの慰謝料や後遺障害等級認定については、『交通事故によるむちうち(外傷性頚部症候群)の症状や治療期間|慰謝料も解説』の記事が参考になります。
増額事例(3)圧迫骨折のケース
事例の概要
傷病名 | 胸椎圧迫骨折 |
後遺障害等級 | 11級7号 |
当初の提示額 | 6万円 |
最終的な回収額 | 825万円(800万円強の増額) |
こちらの事例は、後遺障害等級に認定されていない状態で損害賠償金の提示がなされ、適正金額はいくらなのか確認するため弁護士に相談されたものです。
弁護士が事故後の経過などを確認したところ、後遺障害認定の見込みが十分にある事案だとわかりました。弁護士がサポートした結果、後遺障害等級11級に認定され、損害賠償金も800万円以上増額されました。(もっと詳しく:胸椎圧迫骨折の増額事例)
提示額は不十分なことも多い
加害者側の主張をそのまま受け入れて示談してしまったら、大きく損してしまうケースもあることがわかる事例です。示談成立の前に、弁護士に適正金額を確認することは重要と言えるでしょう。
圧迫骨折で後遺症を負ったときの慰謝料や後遺障害等級認定は、『圧迫骨折の後遺症が後遺障害に認定される基準は?請求できる慰謝料も解説』の記事が参考になります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了