【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき

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逸失利益計算方法

逸失利益には後遺障害逸失利益と死亡逸失利益があり、いずれも大まかには交通事故がなければ得られていたはずの、将来の収入を補償するものを指します。

逸失利益は、後遺障害の程度や被害者の年齢・性別、事故前に得ていた収入などの要素から個々に計算されるため、計算方法を理解しておくことが重要です。

逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益は「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」で計算します。

死亡逸失利益は「1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数」で計算します。

逸失利益の計算方法は複雑なうえに聞き慣れない用語も多いので、本記事で丁寧に計算方法を解説していきます。

また、「年齢・平均年収・等級別の早見表」や便利な「自動計算ツール」も用意していますので、逸失利益の大体の目安金額を知る参考にしてみてください。

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逸失利益の計算方法

(1)後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益の計算式は、以下の通りです。

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

後遺障害逸失利益の計算方法

計算式で用いるそれぞれの要素を解説します。

基礎収入とは?

基礎収入は1年あたりの収入を指し、被害者の職業や属性によって算出方法が違います。

  • 給与所得者:原則として事故前年度の年収額(源泉徴収票や給与明細から判断)
  • 会社役員:役員報酬のうち、労務対価部分のみ
  • 自営業者:事故前年度の確定申告の内容から決定
  • 専業主婦:賃金センサスの女性全年齢平均賃金を用いて算出
  • 子ども:賃金センサスの男女別全年齢平均賃金を用いて計算

職業別の基礎収入の算定方法は、本記事内「補足|計算に用いる基礎収入は職業ごとに変わる」で詳しく解説します。

労働能力喪失率とは?

労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われた労働能力を割合で示したものです。後遺障害等級ごとに目安が定められています。

後遺障害等級と労働能力喪失率の早見表

等級 労働能力喪失率
1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

ただし、必ずしも上記の通りになるとは限りません。職業や後遺障害の部位・程度、実際の仕事に対する支障の程度などにより増減することもあります。

労働能力喪失期間とは?

労働能力喪失期間とは、今後何年にわたって労働能力の喪失が続くのかを表した年数です。労働能力喪失期間は原則として、67歳までとされています。

具体的には、以下のようにして求められます。

労働能力喪失期間の求め方

被害者の年齢 労働能力喪失期間の求め方
幼児~高校生・67歳-18歳=49年間
・大学進学が確実な場合は大学生の例に準じる
大学生・67歳-22歳=45年間
・卒業予定の年齢によって短くなる場合がある
社会人・67歳-症状固定時の年齢
高齢者・平均余命*の2分の1
・67歳-症状固定時の年齢 のいずれか長い方

※平均余命については、厚生労働省発表の簡易生命表を用いて計算することが多い。

ただし、医師や税理士など、67歳以降も働く可能性の高い職業については、労働能力喪失期間が長くなることがあります

また、むちうちで後遺障害12級か14級に認定されている場合、労働能力喪失期間は12級で10年程度、14級で5年程度とされることが多いです。その理由は以下のようになります。

  • むちうちによる後遺障害は時間の経過によって減退・消失する傾向にあるから
  • むちうちによる後遺障害は比較的軽度であり、訓練により順応し、労働能力への影響が抑えられると考えられるから

ただし、むちうちによる後遺障害でも上の2点に当てはまらない場合は、労働能力喪失期間が長くなる場合があります。

ライプニッツ係数とは?

ライプニッツ係数とは、逸失利益から中間利息を差引くための数値です。

中間利息とは

お金を預金したり資産運用に回したりすることで生じる利益。
逸失利益は高額なので預金・運用して保管することが多く、中間利息が生じやすい。

逸失利益の請求が認められると、本来は段階的に得るはずだった将来の収入を一括で受け取ることになるので、中間利息の金額も通常より増加することになります。

逸失利益を満額で受け取ると、中間利息の発生により、結果的に被害者側は本来得られる以上の金額を得ることになってしまうのです。

こうしたことを防ぐために計算式に用いられるのが、ライプニッツ係数です。

ライプニッツ係数は、2020年4月の民法改正により、事故発生日が2020年3月31日以前か、2020年4月1日以降かで異なります。

被害者が18歳以上のときのライプニッツ係数の早見表

労働能力喪失期間 2020/3/31以前2020/4/1以降
1年0.95240.9709
2年1.85941.9135
3年2.72322.8286
4年3.5463.7171
5年4.32954.5797
6年5.07575.4172
7年5.78646.2303
8年6.46327.0197
9年7.10787.7861
10年7.72178.5302
11年8.30649.2526
12年8.86339.954
13年9.393610.635
14年9.898611.2961
15年10.379711.9379
16年10.837812.5611
17年11.274113.1661
18年11.689613.7535
19年12.085314.3238
20年12.462214.8775

被害者が18歳未満のときのライプニッツ係数*の早見表

事故当時の年齢 2020/3/31以前2020/4/1以降
0歳7.549514.9795
1歳7.926915.4289
2歳8.323315.8918
3歳8.739416.3686
4歳9.176516.8596
5歳9.635217.3653
6歳10.11717.8864
7歳10.622918.423
8歳11.154118.9756
9歳11.711719.5449
10歳12.297320.1312
11歳12.912120.7352
12歳13.557821.3572
13歳14.235621.998
14歳14.947422.6579
15歳15.694923.3376
16歳16.479624.0377
17歳17.303524.7589

*大学進学の蓋然性が認められる場合は数値が異なることもある

ライプニッツ係数については、『ライプニッツ係数とは?【一覧表あり】逸失利益や将来介護費の計算も解説』で詳しく解説しています。

ライプニッツ係数を用いて計算するその他の賠償金についてもわかるので、合わせてご確認ください。

(2)死亡逸失利益の計算方法

死亡逸失利益の計算式は、以下の通りです。

死亡逸失利益の計算式

死亡逸失利益=1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数

死亡逸失利益の計算方法

計算式で用いられるそれぞれの要素について解説します。

ライプニッツ係数については、後遺障害逸失利益の解説の中で紹介しているのでご覧ください。

基礎収入とは?

基礎収入は、被害者の事故前における1年間の収入を指します。基礎収入の算定方法は職業や属性により異なるため、詳しくは本記事内「補足|計算に用いる基礎収入は職業ごとに変わる」をご覧ください。

なお、死亡逸失利益の基礎収入としては、以下の年金も認められます。

  • 老齢年金
  • 障害年金(子や妻の加算分を除く)
  • 退職共済年金

被害者が死亡時点において年金の支給を受けていた場合には、仕事による収入がなくても上記の年金額に応じた基礎収入が認められます。

ただし、年金の給付目的が受給者自身の生計を維持するためである場合には、存続性がないとして基礎収入に該当しないと判断される場合もあることに注意してください。
遺族年金は、基礎収入として認められない可能性があります。

生活費控除率とは?

被害者が交通事故で死亡した場合、被害者本人分の生活費はかからなくなります。
死亡逸失利益から被害者本人分の生活費を差し引かなかった場合、差し引かなかった分は損害に対する補償ではなく利益といえるでしょう。

そこで、被害者本人分の生活費を差し引くために計算式に用いるのが、生活費控除率なのです。

生活費控除率は、以下の数値が目安となっています。

生活費控除率
男性
(独身、幼児等を含む)
50%
女性
(主婦、独身、幼児等を含む)
30%
被害者が一家の支柱
(被扶養者が1人の場合)
40%
被害者が一家の支柱
(被扶養者が2人以上の場合)
30%

女性の方が生活費控除率が低くなっているのは、計算に用いる基礎収入が女性の方が低い傾向にあることを考慮するためです。

なお、女子年少者で基礎収入を「男女計全労働者の全年齢平均賃金額」とする場合は、生活率控除率が40%~50%とされることが多くなります。

生活費控除率が30%のままだと、同じく「男女計全労働者の全年齢平均賃金額」を基礎収入として計算する男子年少者の逸失利益よりも大幅に高額になってしまうためです。

なお、生活費控除率は以下のような場合には増減することもあります。

  • 控除率が低くなるケース
    • 独身だが離婚して養育費を支払っていた、高齢の親を援助していたなどの事情がある場合
  • 控除率が高くなるケース
    • 相続人が兄弟姉妹である(通常、兄弟姉妹の生活保障は考慮しないため)
    • 収入が多く税金の負担率が平均よりも高かった
    • 夫婦ともに平均収入以上を得ている共働きであった

就労可能年数とは?

就労可能年数とは、事故にあわなければ今後何年にわたって働けたのかを表した年数です。就労可能年数は原則として、67歳までとされています。

就労可能年数の求め方

被害者の年齢就労可能年数の求め方
幼児~高校生・67歳-18歳=49年間
・大学進学が確実な場合は大学生の例に準じる
大学生・67歳-22歳=45年間
・卒業予定の年齢によって短くなる場合がある
社会人・67歳-死亡時の年齢
高齢者・平均余命*の2分の1
・67歳-死亡時の年齢 のいずれか長い方

※平均余命については、厚生労働省発表の簡易生命表を用いて計算することが多い。

ただし、仕事の内容によって67歳以降も働く可能性の高い職業については、就労可能年数が長くなることがあります

補足|計算に用いる基礎収入は職業ごとに変わる

基礎収入は、交通事故にあう前の被害者の収入(年収)です。職業別に基礎収入の算出方法を見ていきましょう。

給与所得者の基礎収入

原則として事故前年度の年収額(源泉徴収票や給与明細から判断)とします。

ただし、被害者が30歳未満の若年労働者であり、現実の給与額が賃金センサスの平均額を下回っている場合は、将来平均賃金を得られる蓋然性があるのなら、全年齢の平均賃金を用いての計算も可能です。

会社役員の基礎収入

役員報酬のうち、労務対価部分のみが基礎収入とされます。利益配当部分は加算しません。
また、昇給や給与の変動は一般的には考慮されません。

会社役員の労務対価部分については『会社役員の交通事故慰謝料・休業損害は?請求可否の判断基準や計算方法を解説』の記事で説明しているので、参考にしてみてください。

自営業(個人事業主)の基礎収入

自営業者の基礎収入は事故前年度の確定申告の内容から決定します。毎月固定で生じる経費は差引きません。

確定申告をしていない場合は帳簿などから前年の所得を証明するか、平均賃金から基礎収入を算出する必要があります。

申告所得が実際の所得より低い場合には、帳簿などから実際の所得を証明できればそれに近い金額を基礎収入にできる可能性がありますが、相手方との交渉次第となるでしょう。

関連記事『交通事故の慰謝料・個人事業主編』では、赤字経営だった場合や自営業1年目だった場合などの基礎収入も解説しています。

主婦の基礎収入

専業主婦の基礎収入は、賃金センサスの女性全年齢平均賃金を用いて算出します。
令和元年以降の女性全年齢平均賃金(年収)は、以下の通りです。

女性の全年齢平均賃金(令和元年以降)

令和女性・全年齢平均賃金
元年約388万円
2年約382万円
3年約386万円
4年約394万円
5年約400万円

なお、兼業主婦は就労で得た収入と、賃金センサスの女性平均賃金を比べて高い方を基礎収入として採用します。

子ども・学生の基礎収入

子ども・学生の基礎収入は、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金を用いて計算します。

大学進学の可能性が高い場合には、男女別・大卒の平均賃金で算定される可能性もあります。

令和全年齢平均
(男/女)
大卒
(男/女)
元年約561万円/約388万円約671万円/約472万円
2年約546万円/約382万円約638万円/約451万円
3年約546万円/約386万円約631万円/約454万円
4年約555万円/約394万円約640万円/約462万円
5年約570万円/約400万円約655万円/約470万円

なお、女子年少者の基礎収入は、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定されるケースもある点に留意しておきましょう。

男女を含む全労働者の全年齢平均賃金は、以下の通りです。

令和男女・全労働者・全年齢平均賃金
元年約500万円
2年約487万円
3年約489万円
4年約496万円
5年約507万円

また、就職・内定が決まっている場合には内定先の平均賃金で算定される可能性もあります。

職業別の逸失利益計算例と平均年収別の早見表

給与所得者(年収約450万円、後遺障害12級)の計算例

サラリーマンの逸失利益については、実際の事例における計算例を紹介します。

職業・性別会計事務所勤務・女性
年齢33歳
後遺障害12級13号(頸椎椎間板ヘルニア)
基礎収入額年収469万3070円
労働能力喪失率14%
労働能力喪失期間10年
後遺障害逸失利益=469万3070円(基礎収入)×0.14(労働能力喪失率)×7.7217(ライプニッツ係数)=507万3387円

参考元:平成29年2月24日/名古屋地方裁判所/民事第3部/判決/平成27年(ワ)4630号

この事例では、被害者は33歳なので通常なら労働能力喪失期間は「67-33=34年」となります。しかし、今回は頸椎椎間板ヘルニアで後遺障害12級となっているため、労働能力喪失期間は10年とされました。

給与所得者(年収約600万円、死亡)の計算例

続いて、以下のケースにおける死亡逸失利益を確認してみましょう。

職業・性別給与所得者・男性
年齢37歳
死因左肺挫傷等の傷害を負い、出血性ショックのため死亡
基礎収入額年収591万2000円
労働能力喪失期間30年(67-37=30年)
生活費控除率*50%
死亡逸失利益=591万2000円(基礎収入)×15.372(ライプニッツ係数)×(1-0.5(生活費控除率))=4543万9632円

参考元:平成29年6月13日/大阪地方裁判所/第15民事部/判決/平成28年(ワ)139号

主婦(後遺障害13級)の計算例

専業主婦の場合における後遺障害逸失利益の計算例をご紹介します。

職業主婦
年齢47歳
後遺障害等級13級
基礎収入額年収394万円(女性の全年齢平均※2022年)
労働能力喪失率9%
労働能力喪失期間20年(67-47=20年)
後遺障害逸失利益=394万円(基礎収入)×0.09(労働能力喪失率)×14.8775(ライプニッツ係数)=527万5562円

自営業者(年収約600万円、後遺障害6級)の計算例

自営業者の後遺障害逸失利益の計算例を見てみましょう。

職業自営業者
年齢51歳
後遺障害等級6級
基礎収入額年収620万円
労働能力喪失率67%
労働能力喪失期間16年(67-51=16年)
後遺障害失利益=620万円(基礎収入)×0.67(労働能力喪失率)×12.5611(ライプニッツ係数)=521万1788円

子ども(後遺障害10級)の計算例

子どもの逸失利益の計算例を見てみましょう。

職業なし
年齢8歳
後遺障害等級10級
基礎収入額年収555万(男性全年齢平均※2022年)
労働能力喪失率27%
労働能力喪失期間49年(67‐18=49年)
後遺障害逸失利益=555万円(基礎収入)×0.27(労働能力喪失率)×18.9756(ライプニッツ係数)=2,843万4,937円

【逸失利益の早見表】年齢・平均年収・等級別

逸失利益はどのくらいになるのか知りたい方に向けて、後遺障害逸失利益についての年齢・平均年収・等級別に早見表を作成しました。

25歳・45歳・65歳の平均年収をもとに、等級別の後遺障害逸失利益を確認していきましょう。

前提

基礎収入は、例年の平均年収を想定して仮で計算していきます。

  • 男性
    25歳:501~600万円
    45歳:601~700万円
    65歳:401~500万円
  • 女性
    25歳:401~500万円
    45歳:401~500万円
    65歳:301~400万円

あくまで目安程度の概算にはなりますが、参考にご覧ください。

男性版の早見表(万円)

等級25歳45歳65歳
1~3級9,7158,9693,738
4級8,9378,2523,439
5級7,6747,0862,953
6級6,5096,0092,504
7級5,4405,0232,093
8級4,3724,0361,682
9級3,4003,1391,308
10級2,6232,4221,009
11級1,9431,794748
12級1,3601,256523
むちうち12級595703486
13級874807336
14級11914197
むちうち14級11914197

女性版の早見表(万円)

等級25歳45歳65歳
1~3級7,9486,2092,907
4級7,3125,7132,675
5級6,2794,9052,297
6級5,3254,1601,948
7級4,4513,4771,628
8級3,5772,7941,308
9級2,7822,1731,018
10級2,1461,677785
11級1,5901,242581
12級1,113869407
むちうち12級486486378
13級715559262
14級979776
むちうち14級979776

※ 平均年収を想定した概算の早見表です。
※ 逸失利益は本来、個別の事情を加味して計算するものなので、上記の金額になるとは限りません。

そもそも交通事故の逸失利益とは?

将来的な減収に対する補償

逸失利益は、交通事故による後遺障害や死亡がなければ得られていたはずの、将来の収入を補償するものです。

具体的には、事故で怪我したことで以前のように働けなくなったり、職種を変えざるを得なくなったりする場合や、死亡しなければ昇進できたはずといった場合のみ、逸失利益は請求できます。

交通事故にあったからといって、すべてのケースで逸失利益を自動的に請求できるものではないのです。後遺障害等級に認定されなかったり、たとえ障害や死亡のケースでも減収が生じていなかったりしていれば、逸失利益はもらえません。

逸失利益の基本的な意味や請求に必要な具体的な条件、逸失利益をもらえない場合の対処法などについては『交通事故の逸失利益とは?損害賠償請求できる条件ともらえない原因』の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

【計算機】自分の逸失利益が自動でわかる

ここまで逸失利益の計算方法を詳しく解説してきましたが、ご自身の逸失利益の目安は以下の計算機を利用すると簡単に確認可能です。

交通事故の損害賠償を知るには、逸失利益のほかにも慰謝料なども含めて考える必要があります。

被害者の年齢や年収などを入力するだけで利用可能です。利用に際して、名前や電話番号など具体的な個人情報を入力する必要はありません。簡単に金額がわかるので、ぜひお使いください。

ただし、この計算機でわかるのはあくまでも機械的な計算結果です。
実際にはさまざまな要素を反映して金額が増減することもあるので、厳密な相場は弁護士に確認することをおすすめします。

弁護士に相談すべきケース|逸失利益が低い・もらえないなど

交通事故の被害者となり逸失利益を請求する際に、以下のような事情がある場合は、弁護士に相談するこをおすすめします。

  • 基礎収入が低く見積もられている
  • 労働能力喪失率や期間が実情に見合わない
  • 後遺障害等級の認定結果に納得していない
  • 減収がないため逸失利益がもらえないといわれた

それぞれのケースについて詳しくみていきましょう。

(1)基礎収入が低く見積もられている

交通事故が起きた場合は、加害者が加入している任意保険会社から、逸失利益の支払い金額ついて提案されることが多いでしょう。

しかし、加害者側の任意保険会社は、逸失利益の金額を下げるために基礎収入を低く見積もっていることがあります。

給与所得者(会社員・サラリーマン)の場合は源泉徴収票を、自営業者の場合は確定申告書を提示して正しい基礎収入を主張してみましょう。

それでも基礎収入が訂正されない場合、加害者側の任意保険会社は、基本的に被害者本人の主張は聞き入れないつもりである可能性が高いです。

「弁護士が出てきたら主張を聞き入れる」という方針である可能性も考えられるので、弁護士にご相談ください。

基礎収入の交渉がとくに難航しやすいケース

以下の場合は、基礎収入の交渉がとくに難航しやすいです。

  • 自営業者で確定申告をしていない、過少申告をしている
  • 専業主婦(主夫)、学生、子ども、無職で現実の収入額を証明できない
  • 給与所得者で収入が平均より低いが、将来的に平均額を得られる見込みがあったため、全年齢平均賃金を基礎収入としたい

上記の場合は、給与所得者の源泉徴収票のように、基礎収入の根拠を示す確実な証拠がありません。

よって、専門知識を駆使して過去の判例や専門書の記載などを提示しながら交渉する必要があります。

しかし、専門知識の量は加害者側の任意保険会社の方が圧倒的に豊富であるため、被害者側も専門家である弁護士を立てることが重要です。

(2)労働能力喪失率・期間が実情に見合わない

加害者側の任意保険会社は、労働能力喪失率・期間を低く見積もることで、逸失利益の金額を下げようとすることがあります。

適切な労働能力喪失率・期間にするためには、過去の判例や専門知識を踏まえつつ個別的な事情も考慮し、医師の意見書や日常生活報告書なども用意したうえで交渉しなければなりません。

とくに以下の場合は労働能力喪失率・労働能力喪失期間に関して相手方ともめやすいです。
納得いかない点がある場合は、弁護士にご相談ください。

  • むちうちによる神経症状や、顔の傷、骨の変形、内臓の異常
    「仕事にさほど影響はない」と相手方から主張され、労働能力喪失率が低く見積もられやすい
  • 医師や税理士など
    67歳を超えても働く可能性が高いため、労働能力喪失期間が通常より長くできる可能性がある
  • むちうちで後遺障害12級、14級に認定された
    労働能力喪失期間が10年(12級)・5年(14級)とされることが多いが、実際の症状などによってはもっと長くなることもある

(3)後遺障害等級に納得していない

認定された後遺障害等級に納得いっていない場合は、異議申し立てによる再審査も検討してみましょう。

再審査を受けてより高い等級に認定されれば、労働能力喪失率が高くなり、逸失利益も高額になる可能性があります。

ただし、異議申し立てについては以下のリスクもあります。

  • 異議申し立てをしても等級が変わるとは限らない(下がることはない)
  • 異議申し立てをする分、示談交渉の開始が遅れるため、損害賠償請求権の消滅時効が迫ってくる
  • 示談交渉の開始が遅れる分、示談金の受け取りも遅くなる

よって、異議申し立てをするかどうかは、等級認定結果が上がる可能性をしっかり検討したうえで決めなければなりません。

また、異議申し立てをする際は、1度目の認定結果を踏まえた入念な審査対策が必要です。

異議申し立てをするかどうかは、過去の事例や後遺障害等級の認定基準に精通した弁護士に相談しながら決めることが重要といえるでしょう。

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(4)減収がないと言われた

加害者側の任意保険会社が以下の理由から逸失利益が生じていないために支払わないと言ってきた場合も、弁護士にご相談ください。

  • 被害者の後遺障害により労働能力が低下していない
  • 後遺障害による減収が生じていない

確かに、たとえ後遺障害が残っていても、労働能力に影響がなかったり減収が生じていなかったりすると逸失利益がもらえないことがあります。

しかし、本当に労働能力に影響が出ていないのか、今現在のみならず将来にも減収が生じないと言い切れるのかは慎重に検討すべきです。

加害者側の任意保険会社が「労働能力に影響がない」「減収が生じていない」などと主張して逸失利益を支払おうとしない場合の反論方法について、解説を行います。

後遺障害による労働能力の低下がないという主張への対処

後遺障害認定を受けていても、労働能力の低下がないと主張されやすい事例としては、以下のような傷跡や変形障害が代表的です。

  • 体に残った傷跡の大きさから後遺障害認定を受けたケース
  • 脊柱や鎖骨などの変形が生じたために後遺障害認定を受けたケース

傷跡や変形は身体活動に影響せず、労働能力は低下していないとして、逸失利益は賠償の対象外と言われやすいのです。

このような主張に対しては、被害者の仕事内容から、後遺障害の症状が原因で労働能力の低下が認められると反論することになります。

特に、接客業やモデルなどの見た目が重視される仕事では、傷跡や体の変形がわかることから以前のように仕事ができなくなったと主張しやすいといえるでしょう。

実際に逸失利益が認められた判例として、以下のようなものがあります。

判例(1)

大阪地方裁判所平成19年(ワ)第8174号

  • 被害者に残った後遺障害の一つに顔の傷跡があった。
  • 加害者側の主張
    被害者の職業である飲食店経営に顔の傷跡は影響しない。
  • 裁判所の判断
    傷跡の程度は著しいものであり、接客業である飲食店経営への影響も大きいことから、労働能力に対する影響は無視できない。

判例(2)

大阪地方裁判所平成25年(ワ)第7853号

  • 被害者(喫茶店アルバイト)に残った後遺障害の一つに顔の傷跡があった。
  • 加害者の主張
    顔に傷跡があっても接客業ができないわけではないため、労働能力への影響はない。
  • 裁判所の判断
    外貌醜状の程度からすると、原則的には労働能力への影響はない。しかし、被害者が19歳とまだ若く、今後幅広い職業に就く可能性がある中で、傷跡によって職業選択の幅が制限される可能性はある。したがって、労働能力への影響を完全には否定できない。

減収が生じていないという主張への対処

被害者に後遺障害が認定されたとしても、その後の被害者の収入が事故前より低下していない場合は、逸失利益がそもそも生じていないと主張されることが考えられます。

このような主張に対しては、減収が生じていないのは本人の努力や勤務先の配慮によるという事情があるためと反論することすることになります。

逸失利益が否定されてしまった場合の対処

減収が生じていないために逸失利益が認められなかったとしても、交渉次第では、代わりに後遺障害慰謝料を増額させられる可能性があります。

逸失利益は認められなかったものの、事情を考慮して後遺障害慰謝料が増額された判例は、以下の通りです。

判例

京都地方裁判所平成28年(ワ)第1303号

  • 被害者(小学1年生の女児)の額に線状痕が残った。
  • 加害者側の主張
    傷跡は被害者が就労するころには目立たない程度に回復している可能性があること、髪の毛で容易に隠せることから、将来の労働能力に影響するとは言えない。
  • 裁判所の判断
    傷跡は化粧や髪の毛で隠すことができ、労働能力への影響は考えられないため、逸失利益は認められない。
    ただし、髪型の制限が今後女児にとって精神的負担になりえること、傷跡を気にして対人関係などに消極的になる可能性があること、それにより性格形成に影響が出かねないことを考慮し、後遺障害慰謝料を870万円とする。
    ※後遺障害等級は9級16号であり、本来の相場は690万円。

反論する場合には弁護士に相談を

上記のような反論を行うことで逸失利益が認められたり、慰謝料増額を実現することは簡単ではありません。

基本的には、逸失利益や慰謝料増額の可否をめぐって加害者側と争いになる可能性が高いです。
そのため、あらかじめ弁護士を立てて示談交渉することをおすすめします。

逸失利益の請求可否については過去の判例や専門書の記載などをもとに交渉する必要があるので、専門家である弁護士にご相談ください。

逸失利益以外の問題も弁護士に相談・依頼すべき

弁護士に相談・依頼することで得られるメリット

逸失利益に関して問題がある場合に、弁護士への相談をおすすめしていますが、逸失利益以外の問題についても、専門家である弁護士相談するべきでしょう。

弁護士に相談・依頼を行うことで、以下のようなメリットが生じます。

  • 逸失利益以外の損害賠償金についても相場の金額を請求できる
  • 加害者側に対する請求の交渉を代わりに行ってもらえる

逸失利益が生じる程度のケガを負ったり、死亡事故が生じた場合は、治療費や入通院により生じる慰謝料など逸失利益以外に請求できる損害賠償金の金額も高額になりやすいでしょう。

こうした場合は特に、加害者側は少しでも支払う金額を下げようとしてきます。弁護士による専門知識に基づいた主張を行ってもらうことが必要でしょう。

また、弁護士に依頼して代わりに交渉を行ってもらうことで、被害者は治療に専念することができます。

逸失利益が生じる程度のケガを負っている場合は、長期の治療やリハビリが必要なケースも多いので、弁護士に依頼して治療に専念できることによるメリットは大きいといえるでしょう。

弁護士に相談・依頼する費用は抑えることができる

弁護士への相談や依頼には弁護士費用がかかると思われがちですが、弁護士費用特約を利用することで負担を減らすことが可能です。

弁護士費用特約があれば上限の範囲内で弁護士費用の負担がなくなる

弁護士費用特約を利用すれば、相談料や弁護士費用を契約で定められた上限額まで保険会社に負担してもらうことができます。

多くのケースで相談料や弁護士費用は上限額内に収まるので、金銭的な負担を気にすることなく相談や依頼を行うことが可能となるでしょう。

弁護士費用特約を付けていたはずだがどういった特約かよくわかっていない、具体的な使い方を知りたいという場合は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご確認ください。

注目

たとえ、弁護士費用特約が使えなくても弁護士への相談や依頼をおすすめします。

相談料や成功報酬を差し引いても、弁護士を立てた方が多くの金額を得られることが多いためです。

弁護士を立てた方が最終的に得なのかどうかは、相談の際に確認できるため、一度は弁護士への相談を行ってみるべきでしょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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