交通事故で痛くないのに通院・検査してもいい?不正請求や嘘はバレる?

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痛くないのに通院してもいい?

交通事故に遭ったとき「痛くないのに通院してよいのか?」と悩む方は多くいらっしゃいます。

結論から言えば、交通事故の直後は痛くない場合でも通院をして検査を受けることが重要です。

なぜなら、事故直後に自覚症状が出ないケースがあるからです。時間が経ってから通院を開始した場合、治療費や慰謝料などを受け取れないおそれがあります。

なかには「痛くないのに通院したら保険金の不正請求を疑われるのでは?」「痛くないけど念のため検査を受けた費用は支払ってもらえるの?」と不安に思われる方もいらっしゃると思います。

この記事では、交通事故で痛くないのに通院すべき理由や、痛くないのに通院する際のポイントを解説します。保険金の不正請求・過剰請求を疑われないためにも、ぜひ参考にしてみてください。

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交通事故の直後、痛くないのに通院すべき5つの理由

交通事故にあっても、痛くない・痛みを感じにくいケースは存在します。

そんなときは、「痛くないのに通院しても良いのだろうか」と不安になるものです。

事故直後は痛くなくても、基本的には病院に行って医師の診察や検査を受けましょう。

この章ではその理由を説明していきます。

(1)交通事故との因果関係を疑われるから

交通事故直後に通院せず、半月後や1か月後などに「やっぱり痛いから病院に行こう」と考え直して通院を開始する方もいるでしょう。

しかし、交通事故発生から時間が空きすぎると、相手方の保険会社は「本当に事故による痛みなのか」と事故と症状の因果関係を疑います。

交通事故との因果関係とは

交通事故によって損害が発生したという、原因と結果の関係。 損害の原因が交通事故にあるという因果関係があってはじめて、損害賠償請求が認められる。

交通事故との因果関係がないのに通院をしていると判断されれば、保険金の不正請求を疑われるリスクが高くなります。

結局は治療費も慰謝料も払ってもらえず泣き寝入りとなってしまう可能性もあるでしょう。

交通事故後はすぐに通院をして、適切な検査と医師の診断を受けてください。

(2)事故直後は痛みを感じにくく検査が必要だから

追突事故をはじめとする交通事故では、実際はケガをしているのに、現場で痛みやしびれなどの症状の自覚がなく、「痛くない」と感じる方が多くいらっしゃいます。

痛くないと感じる1つめの理由は、被害者が事故に遭って興奮状態になっているからです。
神経が昂ぶっているので痛くないと認識している状態になっています。この場合、後で落ち着くと痛みを自覚しはじめるでしょう。

痛くないと感じる2つめの理由は、交通事故の直後には痛くないケースやしびれなどの症状が出ないケースがあるためです。

交通事故翌日や2日後などに痛みや体調の異変に気づく方も多いので注意が必要です。

むちうちは病院で検査を受ける

後から症状が表れる典型例にむちうちがあります。むちうちとは外部からの強い力を受けて首がムチを打ったようにしなり、周辺組織が傷つくことで様々な症状が表れるものです。

事故直後は痛くなくても、むちうちを発症している可能性もあります。むちうちは病院(整形外科)で検査を受けてください。

なお、診断書に「むちうち」ではなく、「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」などと記載されます。そのような記載があれば、むちうち状態にあると診断されたということです。

むちうちの検査

むちうちの場合は、CTやMRIといった画像検査の他にも神経学的検査を受けることもポイントです。

神経学的検査とは、ジャクソン・テスト、スパークリング・テスト、徒手筋力検査、握力検査、腱反射テストなど多種多様にあります。

整形外科医の指示のもとで検査を受けることで、症状があるから通院しているということが検査結果からも明らかになるのです。

交通事故によるむちうちの症状は多岐にわたります。むちうちで治療を受けた場合の慰謝料や、後遺症が残った場合の賠償金について詳しく知りたい方は、関連記事を参考にしてください。

(3)通院しないと治療費や慰謝料をもらえないから

事故の被害に遭うと、加害者から損害賠償金を払ってもらえます。ただし、その金額は「物損事故」と「人身事故」で大きく異なります。

人身事故とは、人的損害が出ている事故という意味です。治療費や慰謝料、休業損害、場合によっては後遺症への補償金も請求できます。

一方、原則として物損事故は慰謝料をもらえず、車両の修理代程度にとどまるため賠償金は少額です。

実際にはケガをしているのに通院していないと、物損事故とみなされ、治療費や慰謝料などを支払ってもらえない可能性が生じます。

そのような目に遭わないため、まずは事故直後に痛くないケースでも通院して異常がないかの検査を受けるべきといえます。

また、通院した際は、必ず警察に人身事故として届け出るようにしましょう。
すでに物損事故として届け出ていた場合は、人身事故に切り替えることが可能です。

(4)通院開始が遅いと後遺障害認定を受けにくくなるから

交通事故後、しばらく経ってから通院を開始すると「後遺障害等級認定」の場面でも不利益を受ける可能性があります。

後遺障害等級認定は、交通事故による後遺症が一定の等級に認定されることです。

後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益といった損害賠償金の費目を請求できるようになります。

交通事故で後遺障害認定を受けるには、MRIやレントゲンなどの検査結果や、医師の作成する「後遺障害診断書」など資料の提出が必要です。

後遺障害認定を受けるにあたっては、事故直後の状態が問題になるケースも多々あります。

事故直後には痛くないからと通院を怠ると、いざ後遺障害認定を申請する際に必要資料を揃えられません。

その結果、後遺障害認定の申請すらできなかったり、申請しても「非該当」とされたりするリスクが高くなるのです。

後遺障害認定まで見据えて、事故後は速やかに通院して検査を受けましょう。

後遺障害認定の詳しい申請方法や流れを知りたい方は、関連記事『交通事故で後遺障害を申請する|認定を受ける流れとは?申請手続きと必要書類』を併せてお読みください。

また、実際に後遺障害認定の申請をする際には、弁護士への相談・依頼を検討しましょう。弁護士のサポートはより納得度の高い後遺障害認定結果につながります。

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(5)重大な症状の進行が検査でわかる場合もあるから

交通事故で頭を打つと、脳内出血や脳挫傷などの重大なケガをする可能性もあります。一方で病状が少しずる悪化するケースや自覚症状がないケースがほとんどです。

たとえば脳内出血を原因として発生することがある高次脳機能障害では、被害者本人やごく近しい人が少し違和感を持つ程度の症状しか出ないこともあるのです。

被害者が気づかずに通院しないで帰宅すると、自宅でどんどん状態が悪化してきて命に関わるリスクもあります。

すぐに病院へ行き、すべての症状や不安をもれなく医師に申告してください。

とくに「事故時の記憶が曖昧だ」という方は、その通りに申告しましょう。頭部を打っていることで記憶が飛んでいることだってあるのです。

精密検査を受けるなど、医師の指示に従ってください。

痛くないのに通院して保険金の不正請求を疑われるケース

交通事故で「痛くないのに通院したら保険金の不正請求にならないのか?」「検査費用の過剰請求と言われないか?」と疑問を抱く方も多いでしょう。

確かに、痛くないのに通院したならば、不正請求や過剰請求を疑われるリスクもあります。

ここからは「保険金の不正請求」とはどういったものなのか、具体的に確認していきましょう。

実際にはケガをしていないのに治療費を請求する

保険金の不正請求の典型例は、実際にはケガをしていないのに治療費や慰謝料を請求するパターンです。

被害者が痛くないのに「痛い」などと嘘をついて診察や検査を受け、通院期間中の治療費と慰謝料を加害者側へと不正に請求する事例もあります。

こうした問題があるため、むちうちなどの外見上は分からない自覚症状を含む軽傷時の通院に関して、保険会社は慎重に対応する傾向があるのです。

不必要な治療を行って治療費等を過剰請求する

実際にケガをしていても、治療費は必要かつ相当な範囲でしか払ってもらえません。

しかし、ケガの程度や症状に対して、本来不要な治療や施術を行って保険会社へ賠償金を請求する、いわゆる過剰請求をする被害者も存在します。

また、被害者に告げず、整骨院の先生が勝手に施術費を水増しして保険会社へ請求する事例もみられます。

こういった事件が起こるので、保険会社はどうしても慎重に対応せざるを得ないのです。

痛いと嘘をついて通院するリスク|嘘はなぜバレる?

全く痛くないのに「まだ痛みがある」と噓をついたり、交通事故とは関係のないケガを事故のせいであるかのように嘘をついて通院を続けたりすると、取り返しのない事態に発展する可能性があります。

たとえ事故の被害者であっても、嘘をつくと次のようなリスクが発生する可能性があるでしょう。

  1. 治療費や慰謝料などの返還を求められる
  2. 保険金の不正請求・過剰請求は詐欺罪に問われる可能性

順番にみていきましょう。

治療費や慰謝料などの返還を求められる

嘘がバレるまでに保険会社から治療費や慰謝料、休業損害などが支払われていた場合、嘘がバレると返還を求められることになります。

特に、保険会社が一括対応をしていた場合、一括対応はすぐさま打ち切られると同時に、保険会社がこれまで病院に支払った分の治療費などの返還が求められる流れとなるでしょう。

慰謝料や休業損害などの返還が求められるうえ、治療費や通院交通費なども被害者の自己負担になってしまいます。

嘘をついていれば返還を求められるのは当然の話です。しかし、むちうちのようなケースで適切に通院していないと嘘だと疑われてしまう可能性があります。交通事故でケガしたら、必要かつ相当な範囲に収まる治療を受けるよう心がけてください。

なお、痛くないのに通院していても、それが嘘ではなく必要な通院であったことが、後の示談交渉や裁判において認められれば、いったん立て替えた治療費が支払われることもあるでしょう。

保険金の不正請求・過剰請求は詐欺罪に問われる可能性

痛くないのに通院した結果、最悪のケースでは、保険金の不正請求や過剰請求を疑われる可能性もあります。保険金の不正請求や過剰請求は、刑法第246条「詐欺罪」になり得る犯罪行為です。

不正請求や過剰請求を行った場合、たとえ保険会社に治療費や慰謝料などを返還したとしても、保険会社は詐欺罪として刑事告訴する可能性もあるでしょう。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法第246条

詐欺罪には懲役刑しか規定されていないので、起訴され有罪判決を受けることになれば、実刑判決を受ける可能性もあります。

また、被害者自身が詐欺をしているつもりはなくても、事件に巻き込まれてしまうケースも存在するので注意してください。

たとえば、病院や整骨院が痛くないのに通院することを受け入れ、不正に保険金を請求した場合、被害者も疑われる可能性があるのです。

事故後、痛くないのに通院するときには、リスクを抑えるための対策が必須といえます。

コラム|事故で嘘をついてもバレる理由

事故が起きると、ドライブレコーダーや防犯カメラに記録された映像・写真、目撃者の証言など、あらゆる角度から証拠が集められます。こうした証拠や医師の診断結果、痛いと話している症状の内容を照らし合わせ、矛盾点がないか、証拠と一致するかなど保険会社は徹底して調査を行うでしょう。

実際には事故でケガしていないのに、安易に痛いと嘘をついても、バレる可能性は高いです。

もっとも、どこも痛くなくても、「本当に事故でケガをしていないか」を明らかにしておく必要はあります。悪意を持って嘘をつくことは言語道断ですが、念のため通院することは何も悪いことではありません。

痛くなくても念のため通院する際のポイント

交通事故後、痛くないのに通院する場合には、以下の点に注意して不要な疑いをかけられるリスクを低減しましょう。

交通事故直後は病院へ行く|検査費用請求のポイント

事故に遭ったら、すぐに病院へ行くことが重要です。

時間が空くと「交通事故と因果関係がない」とみなされたり、不正請求を疑われたりするリスクが高くなるからです。

また、事故直後に検査をしておかないと、将来後遺障害認定を受けにくくなるリスクも発生します。

事故に遭ったら、たとえ痛みがなくてもその日か翌日には病院に行きましょう。

交通事故直後に念のため受けた検査費用はどうなる?

交通事直後の検査費用は、相手方に請求可能な賠償金といえます。痛くないから事故直後の検査は不要と思いこまず、相手の任意保険会社に申告して検査費用の負担を求めましょう。

任意保険会社の手続きが済んでいれば、病院窓口での費用負担は発生しません。ただし、手続きに一定の時間はかかるので、いったん被害者が負担せざるを得ない場合もあるでしょう。

交通事故後におこなわれる代表的な検査には、レントゲンやCT・MRIなどがあげられます。

たとえばレントゲンは骨の異常を確認することに有効です。一方でCTやMRIは骨の状態に加え、組織や血管の状態も調べることができます。

医師の判断に従い、適切な治療を受けるようにしましょう。

一定の頻度で通院を続ける|通院間隔をあけすぎない

治療にあたっては通院頻度も重要です。痛くないからといって「1か月に1回」しか通院しなければ、保険会社は「通院の必要がない」と考えるでしょう。

できるだけ週2、3度を目安とし、ひと月のなかで7、8回くらいは通院することをおすすめします。

通院の必要がなくなったら速やかに治療を終了して示談交渉に入りましょう。

関連記事『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点、避けるべき行動』では、治療終了後の示談の流れや注意点など、示談について網羅的に解説しています。

適切な検査を受ける|症状があることの証明にもなる

痛くないのに通院する場合は、適切な検査を受けておくことも重要です。

たとえば、むちうちの場合は、レントゲンには映らないことも多いので、MRI検査やジャクソンテストなどの神経学的検査を受けるとよいでしょう。

検査で症状が証明できれば、保険金の不正請求を疑われる可能性は低くなります。
もし、症状が証明できなくても、検査を受けていることで「症状がないのに通院しているのではないか?」と疑われる可能性を低くすることができます。

関連記事『【お悩み解決】むちうちはレントゲンでわかる?MRIを受けるべき理由あり』ではむちうちが疑わしいときにはMRIを受けておくべき理由についてまとめているので、参考にしてください。

交通事故後は痛くなくても病院に通院|むちうちなら整形外科

交通事故後に通院するときには「どこで治療を受けるか」も重要です。事故直後であれば、まずは病院へ行きましょう。

特にむちうちの場合では「整骨院」を選択する方も多いのですが、整骨院への通院には注意が必要です。

整骨院は病院ではないので、医師による診察は受けられず、投薬や検査もしてもらえません。整骨院にしか通院していないと、後遺障害認定を受けるのも困難となります。

むちうちやねんざ、骨折などが疑われるなら必ず「整形外科」を受診してください。あるいは頭に衝撃を受けた場合には「脳神経外科」が対応してくれます。

交通事故後の通院先に迷っているならば、関連記事『交通事故で病院の何科をいつまでに受診すべき?受診後は賠償問題を弁護士に相談』も参考にしてみてください。

必要以上に長期、高額、過剰な治療を受けない|疑わしい行動はやめる

交通事故で痛くないのに不必要な治療を受けると、保険会社は保険金の支払いを拒絶します。

このとき重要なのは「通院期間」と「治療内容」です。

必要以上に長期にわたる通院をすると、治療費や慰謝料を払ってもらえない可能性が高くなります。

また、治療内容に関しても過剰診療(濃厚診療)や高額な治療を受けた場合にも、保険金の支払いを拒絶されるケースが多数あります。

過剰診療とは、症状やケガの程度と釣り合わない治療を受けることです。相手方の保険会社に過剰診療と考えられると、保険金の不正請求の疑いまでかけられます。

さらに、医師からは不要と言われているにも関わらず毎日通院することは、過剰請求と疑われかねません。交通事故後の治療は「必要かつ相当な範囲」にしましょう。

なお慰謝料の金額と通院日数は常に正比例するわけではありません。慰謝料額と通院日数の関係については関連記事『交通事故の被害者は毎日通院した方がいい?通院頻度や期間と慰謝料の関係』も参考にしてみてください。

保険会社とトラブルになったら弁護士に相談しよう

交通事故後、軽傷やむちうちになった場合に被害者が保険会社へ治療費や慰謝料を請求すると、支払いを拒絶されたり、事故とケガの因果関係に疑いの目を向けられたりしてトラブルになるケースが多々あります。

そんなとき、被害者自身で対応すると、問題が大きくなってしまう可能性もありますし、ストレスも溜まってしまうでしょう。

困ったときには、弁護士に相談してみてください。弁護士であれば、以下のような点について的確なアドバイスが可能です。

  • 交通事故とケガの因果関係を立証するにはどうしたら良いのか
  • 適切な通院方法
  • 受けるべき検査の内容

また、弁護士に示談交渉を任せれば、被害者が自分で対応する必要はなくなります。

交通事故の被害者を守るのが弁護士の仕事です。迷いや不安を感じたら、1人で悩まずに弁護士を頼りましょう。

まとめ

重要

  • 交通事故の直後は痛くなくても病院へ通院して検査を受ける
  • 交通事故の直後に痛くないのに通院しても検査費用は原則損害賠償請求できる
  • 交通事故と因果関係がないものや嘘の内容で賠償請求すると不正請求や過剰請求が疑われる

交通事故後、痛くないとしてもまずは一度、通院して医師による診察や検査を受けましょう。

自覚がなくてもケガをしているケースが多々あります。

軽傷やむちうちのケースで保険会社とトラブルになったら、早めに弁護士に相談しましょう。当事務所でも交通事故被害者へのサポートに積極的に取り組んでいますので、困ったときにはお気軽にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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