交通事故の休業損害|計算方法を職業別に網羅!いつ・いくらもらえるかわかる

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職業別 交通事故の休業損害

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故で負傷し仕事や家事を休まざるを得なかった方は、ご自分の受け取れる休業損害(休業補償)の見込み額をご確認ください。

※半角数字で入力してください

年収

万円

休業日数


・主婦の方は、「事故前の年収」の欄に「264」(2021年発生の交通事故の場合)と入力してください。
・本計算機は、個別事情を考慮せず、一般的な計算方法に基づいて計算しており、会社役員・自営業・学生・無職・失業者の方は計算方法が異なります。
・正確な慰謝料額を知りたい重傷の被害者やご家族の方は、当事務所の電話無料相談サービス(0120-434-911)をご利用ください。

休業損害とは、交通事故の治療のために仕事ができずに失った収入のことをいい、最低限の金額として自賠責保険に日額6,100円が請求できます(事故日によっては日額5,700円)。民法709条の「不法行為によって他人に損害を与えた者は、損害を賠償する責任を負う」を法的根拠です。休業損害を請求できるのは、会社員や自営業といった実際に収入がある方だけではありません。主婦や学生、一部の無職の方も請求可能です。

ただし、事故で減った収入をすべて休業損害として回収できるとは限りません。計算に用いる事故前の収入額や休業損害の対象日をめぐって、加害者側と争うことも多いのです。

この記事では、休業損害の職業別の計算方法や対象となる日、請求の流れを詳しく解説します。交通事故で仕事を休んだ方は、正しい金額を受け取るためにもぜひご一読ください。

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岡野武志弁護士

休業損害の基礎知識|計算式と受け取り時期、休業損害証明書の書き方

休業損害とは?休業補償とは別物

休業損害とは、交通事故のケガの影響で仕事を休んだため生じた減収の補償のことです。

休業損害は「1日あたりの収入×休んだ日数」で計算して請求しましょう。

ただし、1日あたりの収入の算出方法は職業によって異なること、必ずしも休んだ日すべてが休業損害の対象になるとは限らないことに注意してください。

休業損害とはケガによって収入が減少した損害

その他に、休業損害の特徴としては以下のものがあげられます。

  • 実際には収入のない主婦でも請求できる
    (家事労働も賃金労働と同じように扱われるため)
  • 実際には収入のない失業者・学生でも請求できることがある
    (事故後に収入を得ていた可能性があると認められる場合)
  • 不労所得については基本的に請求できない
    (事故でケガをして稼働できずとも収入を得られると考えられるため)
  • 物損事故では基本的に請求できない
    (あくまでケガの影響で休業したことによる減収の補償のため)

休業損害は損害賠償金、休業補償は労災給付金

休業損害と混同されやすいものとして、「休業補償」があります。

交通事故が通勤途中や業務中に起こった場合、労災にあたる可能性があります。労災になりうる交通事故のときには、休業損害と休業補償の両方の意味や違いを整理しておきましょう。しかし、仕事と関連のないときの交通事故であれば、休業損害を請求できることのみ理解しておけば問題ありません。

どちらも休業による減収を補償するものではありますが、休業損害と休業補償の違いは以下の通りです。

  • 休業損害
    • 交通事故の加害者側に対して請求する損害賠償金の一部
      (通常は、加害者側の任意保険や自賠責保険に対して請求する。)
    • 対象となる事故は、人身事故全般。
  • 休業補償
    • 被害者自身が加入している労災保険に対して請求する給付金
    • 対象となる事故は、人身事故のうち通勤中や業務中に発生したもの。
    • 休業補償を請求すると、「休業特別支給金」もあわせて受け取れる。

休業損害と休業補償はともに休業による減収を補償するものです。両方満額で受け取ると、実際の減収以上の補償を受けることになってしまうため、金額の相殺が行われます。

ただし、休業補償を請求すると受け取れる「休業特別支給金」は相殺の対象外となります。
よって、休業損害と休業補償を両方請求すると、どちらか一方を請求する場合よりも受け取れる金額が多くなります

休業損害と休業補償の違いや、なぜ受け取れる金額が大きくなるかについては、『交通事故の休業で補償される休業補償と休業損害の違いや計算方法』で詳しく解説しています。休業補償の請求方法もわかるので、通勤中・業務中に事故にあった方はぜひご確認ください。

休業損害の計算式|基礎日額と休業日数の掛け算で求める

休業損害の計算式は、以下のとおりです。

休業損害の計算式

  • 基礎収入(日額)×休業日数

基礎収入(日額)については、休業損害の計算に用いる「算定基準」によって、以下のとおり求め方が異なります。

算定基準ごとの基礎収入(日額)の求め方

自賠責基準
(自賠責保険が用いる基準)
日額6,100円※
任意保険基準
(任意保険が用いる基準)
自賠責基準と同額~やや高額な程度
弁護士基準
(弁護士・裁判所が用いる基準)
事故前の被害者の収入を日割りにした金額

※2020年3月31日までに発生した事故なら日額5,700円

自賠責基準の休業損害は1日あたり6,100円と決まっています。しかし実際の損害が日額6,100円を超えていることを立証できるなら、日額19,000円を上限に実損害額が認められる仕組みです。任意保険基準でも同様の取り扱いになる可能性があるでしょう。

事故前の被害者の収入を日割りにした金額は、職業ごとに具体的な求め方が異なります。詳しくは、次章「休業損害の計算方法|職業別の日額の求め方」で解説します。

休業日数の数え方|通院日数と同じ?有給休暇は対象?

休業日数(休業損害の対象となる日)は、基本的に交通事故の怪我で仕事を休んだ入院・通院日数や、医師の指示で仕事を休んだ日です。

自営業者や主婦の方は、サラリーマンのような勤怠管理の記録がないため、通院先から発行された診療報酬明細書や医師の診断書などから、入院や通院をした日数を証明します。

また、休業損害の期間は、事故発生日から「完治」または「症状固定」と医師による診断があった日までが原則です。

症状固定とは、これ以上治療しても症状が改善しないと判断された状態をさします。ただし、症状固定後も定期的なリハビリが必要だったり、将来的に手術を予定していたりする場合、例外的に症状固定後の休業損害が認められることもあるでしょう。

後遺症が残り、「後遺障害等級」に認定されたなら、症状固定日以降の将来的な減収については休業損害ではなく「逸失利益」として請求可能です。詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。

有給休暇や半日休暇は休業日数に含まれる?

有給休暇をとって通院した日も休業日数に含むことができます。同様に、半日休暇についても半日分の休業損害を請求可能です。休業損害の対象といえるのか、判断に迷ってしまうケースの答えを以下に示します。

  • 有給休暇をとった日
    • 休業日数に含まれる
  • 半休をとった日
    • 半日が休業日数に含まれる
  • 年末年始、お盆などの勤務先が定める休日
    • 休業日数に含まれない
  • 自宅加療をした日
    • 医師の指示があれば休業日数に含まれる
    • 自己判断なら、休業日数に含まれない可能性が高い
  • 保険会社とのやりとり、弁護士への相談などで休業した日
    • 休業日数に含まれない

有給休暇と、自己判断による自宅加療について、詳しく見ていきましょう。

有給休暇について

入通院のために有給休暇を取った日も、休業損害の対象となります。

有給休暇を使った場合、実際には減収は生じていません。
しかし、「本来なら被害者が自由に使えるはずだった有給休暇を、交通事故のためやむを得ず使うことになってしまった」という点で、損害が生じていると言えます。

実際に、有給休暇を使った日に対して休業損害が支払われた判例もあります。

小学校技術職員(男・事故時28歳)の有給休暇(37.5日)につき、事故前3ヵ月間の収入88万9600円を稼働日数(60日)で除した金額(1万4826円)を日額として55万円余を認めた

神戸地判平25.1.24 自保ジ1900・85

自己判断による自宅加療について

「通院日ではなく、医師から休業の指示があった日でもないが、ケガの調子が悪く自己判断で休んだ」という場合もあるでしょう。

しかし、この場合、仕事を休まざるを得ないほど体調が悪かったことを証明できなければ、加害者側は休業損害の支払いを認めない可能性が高いです。

自己判断で仕事を休む場合は、できれば病院へ行き、その日の状態を医師に記録してもらっておくことをおすすめします。

休業損害をもらえる時期|早くもらいたいなら毎月請求も可能

給与所得者や自営業者のように現実に減収が生じている場合は、休業損害を月ごとに請求することが可能です。

なお、専業主婦のように現実に減収が生じていない場合は、示談交渉の際にまとめて休業損害を請求することが一般的といえます。

休業損害を月ごとに請求する場合は、手続きをしてからおよそ1週間~2週間後に指定口座に支払ってもらえます。

ただし、この際支払われる金額は、加害者側の保険会社が算定したものであり、日額や休業日数が少なく見積もられている可能性があります。このような場合は、不足分を示談交渉の際に請求することになるでしょう。

保険会社側から休業損害を打ち切られることもある

休業損害を毎月請求する場合、事故から一定期間が経過すると「そろそろケガが治り、仕事ができる状態になったのでは?」と保険会社が判断し、休業損害や治療費の打ち切りを打診されることがあります。

しかし、ケガが治ったのか、仕事ができる状態かを判断するのは原則的に医師です。

保険会社から休業損害や治療費の打ち切りの連絡があれば、まずは医師に治療や休業を続けるべきか確認しましょう。
もし、被害者自身がまだ仕事ができるほど回復していないと感じるなら、その旨を医師に伝えて指示を仰いでください。

医師が治療や休業を続けるべきと判断したなら、医師に意見書や診断書を作成してもらい、打ち切りを延長するよう保険会社と交渉しましょう。交渉の際は、弁護士を立てるとさらに効果的です。

保険会社から打ち切りを打診された場合の対処法については、関連記事『交通事故の治療費打ち切りとは?延長交渉や治療の続け方を解説』もご覧ください。

休業損害の請求方法|毎月請求か示談時に請求するかの2通り

休業損害を請求する流れは、毎月請求する場合と、まとめて示談金として請求する場合とで、それぞれ次のとおりです。

毎月請求する場合

  1. 加害者側の保険会社に必要書類を提出する
  2. 加害者側の保険会社での事務処理後、休業損害が支払われる
    (必要書類の提出から1~2週間後が目安)

示談交渉を通して請求する場合

  1. 加害者側の保険会社に必要書類を提出する
  2. 加害者側の保険会社が休業損害を含めた示談金を算定し、被害者側に提示する
  3. 示談交渉で休業損害を含めた示談金などを決める
  4. 示談成立後、その他の示談金とあわせて休業損害が支払われる
    (示談の成立から1~2週間後が目安)

休業損害請求の必要書類|休業損害証明書の書き方もひな形付きで解説

休業損害を請求するには、交通事故の怪我でいったいいくらの損害を被ったのか、根拠を示して請求しなくてはなりません。損害を被った金額の根拠として必要な書類は、職業・家庭での立場によって異なります。

休業損害の必要書類

根拠資料
給与所得者休業損害証明書
・事故の前年分の源泉徴収票
自営業・確定申告書の控え
家事従事者・家族分の記載がある住民票

上記以外の職業の方は、保険会社に問い合わせ、自身の休業損害を証明するために必要な書類が何か確認するとよいでしょう。保険会社から「あなたの場合は請求できない」などと言われた場合は、弁護士に休業損害の立証に必要な書類を相談してください。

休業損害証明書のひな形とチェックポイント

給与所得者が休業損害を請求する際に必要な「休業損害証明書」は、加害者側の保険会社に問い合わせて様式を取り寄せ、勤務先の担当部署に提出して記入してもらいましょう

休業損害証明書の記載内容は、以下のテンプレートを参考にしてください。

休業損害証明書のテンプレート

休業損害証明書を作成してもらったら、必ず内容を確認してください。記載内容に不備があれば、再提出が必要になったり、適正な金額の休業損害を受けとれません。

上のひな形に沿って、休業損害証明書を提出する前にみておきたいチェックポイントを解説します。ただし、保険会社の書式により異なる部分もあるので、お手元の書式のルールを優先してください。

休業損害証明書の主なポイント

  • 前年度分の源泉徴収票は添付されている?
    • 事故前3ヶ月の賃金台帳の写しでも代用できる場合がある
  • 休業日は正しい?
    • 会社を休んだ期間が正しいことを確認する
  • 会社を休んだ期間の内訳は正しい?
    • 欠勤、有給休暇、遅刻、早退の回数を確認する
  • 休業日を示す表には正しく印が付けられている?
    • 休んだ日を意味する印の数と休業日数の一致を確認する
    • 休業した月が正しいことを確認する
  • 休んだ期間のうち、給与の発生・不発生は正しい?
    • 有給休暇は「全額支給した日数」に数える
    • 給与が発生しなかった欠勤や遅刻回数も確認する
  • 事故前3ヶ月に支給された給与額が記載されている?
    • 事故当月は含まない(給与の締め日に注意)
    • 手取りではなく額面を記載、賞与は含まない
  • 社会保険や労災保険からの給付の有無欄に漏れはない?
    • 正しい回答となっていることを確認する
  • 休業損害証明書の作成者欄に漏れはない?
    • 企業情報や社印があることを確認する
    • 休業損害証明書の書類作成日に漏れがないことを確認する

もし勤め先が休業損害証明書の記入をしてくれないときには、一度弁護士に相談してみましょう。

休業損害の計算方法|職業別の日額の求め方

(1)給与所得者(会社員・アルバイトなど)

会社員やアルバイトといった給与所得者の場合、以下の式で休業損害を計算します。

給与所得者の休業損害

  • {事故前3ヶ月分の給与額÷稼働日数(出勤日数)}×休業日数

なお、上記の給与額には住民税や社会保険料などが控除される前の金額を用います。手取り額ではないのでご注意ください。

給与所得者の休業損害で、「この場合の休業損害はどうなる?」と悩まれることが多いポイントを以下にまとめました。

  • 賞与(ボーナス)が減少した場合
    • 損失を証明できれば、休業損害として請求できる
  • 住宅手当、季節手当など各種手当が減少した場合
    • 損失を証明できれば、休業損害として請求できる
  • 昇給が遅れた場合
    • 損失を証明できれば、休業損害として請求できる
  • 産休中・育休中の場合
    • 給与が支払われているなら、休業損害は請求できない
    • 給与が支払われていないなら、専業主婦と同様に女性労働者の全年齢平均賃金から休業損害を計算する
  • 産休明け・育休明けの場合
    • 産休・育休前の年収額をもとに、休業損害を計算する

ただし、賞与や各種手当の減少、昇給の遅れも含めた休業損害の請求は、交通事故との関連性を証明する必要があるため、加害者側の保険会社ともめる可能性があります。

その場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、どのような証拠が必要か、いくら請求できるかを確認するようにしてください。

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岡野武志弁護士

(2)自営業・個人事業主

自営業者や個人事業主の場合、確定申告をしているのであれば、以下の式で休業損害を計算するのが一般的です。

自営業者・個人事業主の休業損害

  • (事故前年の確定申告書に記載の所得金額÷365日)×休業日数
    • 青色申告の所得金額:前年度の確定申告所得額+青色申告控除額
    • 白色申告の所得金額:前年度の確定申告所得額+専従者控除額

もし、確定申告をしていない、過少申告をしていたといった場合は、以下のような式で休業損害を計算することになるでしょう。

  • 確定申告をしていない場合
    • 預金通帳の入金状況や伝票などから算出した日額の所得×休業日数
  • 過少申告をしていた場合
    • 賃金センサスに基づき算出された日額の所得×休業日数
    • 立証した実際の所得×休業日数

ただし、入金状況や伝票から算出した日額は、必ずしも認められるとは限りません。加害者側の保険会社が日額の根拠を否定し、争いになる可能性もあります。

入金状況や伝票をもとにした日額で休業損害を請求したい場合は、弁護士に相談・依頼することがおすすめです。弁護士による算出であれば、日額に説得力が生まれやすくなります。

休業に関連する他の損害も請求できる場合がある

自営業の場合、交通事故による休業に伴い次のような損害が発生することもあります。

  • 休業中に自分の代わりとなる人を臨時で雇用した
  • 休業中も事務所の家賃や従業員の給与といった固定経費が発生した

上記のような損害も、交通事故によるものであると証明できれば加害者側に請求可能です。

自営業者が休業した場合の補償については『交通事故の慰謝料・個人事業主編』でより詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。

(3)会社役員

会社役員の場合、以下の式で休業損害を計算します。

会社役員の休業損害

  • 役員報酬(労働対価分)から算出された基礎収入×休業日数

会社役員の場合は、事故発生前の役員報酬のうち、利益配当に該当する部分は除き、労働の対価に相当する金額のみを基礎収入とすることに注意が必要です。

労働の対価分の金額がいくらになるかは、さまざまな事情を考慮して決められます。詳しい判断のポイントについては、『会社役員の交通事故慰謝料・休業損害は?』の記事をご覧ください。

役員の休業によって会社に損害が出た場合や、会社役員が請求できるその他の費目についてもわかります。

(4)家事従事者(専業主婦・兼業主婦)

家事従事者の計算式は、被害者が専業主婦(主夫)か兼業主婦(主夫)か、兼業主婦なら収入が平均賃金を超えているか否かによって異なります。

家事従事者の休業損害

  • 専業主婦(主夫)の場合
    • 女性労働者の全年齢平均賃金額から算出された基礎収入額×休業日数
  • 兼業主婦(主夫)で、「収入<女性労働者の全年齢平均賃金」の場合
    • 専業主婦の計算式と同じ
  • 兼業主婦(主夫)で、「収入>女性労働者の全年齢平均賃金」の場合
    • {事故前3ヶ月分の給与額÷稼働日数(出勤日数)}×休業日数

女性労働者の全年齢平均賃金額は、「賃金センサス」という厚生労働省が実施している統計に基づいた資料から算出します。なお、男性と女性とで平均賃金が異なるため、公平性の見地から、主夫の場合も女性の平均賃金を用います。

2019年~2022年の賃金センサスから算出した日額は、以下のとおりです。

女性労働者の全年齢平均賃金(日額)

2019年約10,410円
2020年約10,465円
2021年約10,575円
2022年約10,800円

なお、主婦の休業損害における日額は、ケガの回復状況に応じて徐々に減らされる「逓減方式」をとることがあります。事故直後はケガのためほとんど家事ができなかったとしても、回復するにつれて少しずつ家事ができるようになっていくと考えられるからです。

下記の関連記事は、主婦が交通事故の被害にあった場合に役立つ解説記事になります。主婦の休業損害について、より詳しい計算方法や必要書類を知りたい方、慰謝料を含む損害賠償請求について知りたい方はあわせてご覧ください。

(5)無職・失業者

事故にあった時点で無職・失業中であった場合、休業損害を請求するには以下の条件にあてはまる必要があります。

無職・失業者の請求条件

  • 求職活動中であり、事故前後に内定を受けていた
  • 年齢・能力・本人の意思などから、事故がなければ就労していた蓋然性がある
    (応募先の企業とのやり取りや、面接の頻度などから判断される)

上記に該当する場合、無職・失業者の休業損害の計算方法は以下のとおりです。

無職・失業者の休業損害

  • 事故の直前・直後に内定を受けていた場合
    • 賃金センサスまたは就職予定先の給与推定額から算出
  • 内定はなかったが就労の蓋然性がある場合
    • 賃金センサスまたは失業前の収入額から算出

ただし、内定を受けていない無職者の休業損害については、加害者側の保険会社ともめる可能性が高いです。就労の蓋然性を示す証拠を入念に集める必要があるので、弁護士に一度ご相談ください。

無職の方の損害賠償請求について解説した記事『無職でも交通事故の慰謝料は請求できる』では、就労の蓋然性を示す書類の具体例も紹介しています。

(6)学生

事故にあった時点で学生だった場合、以下のような状況なら休業損害を請求できる可能性があります。

学生の請求条件

  • アルバイトをしていた
  • 内定取り消しや留年などにより、就職時期が遅れた

上記のケースのうち、アルバイトをしていたケースについては、給与所得者の項をご参考ください。

就職時期が遅れたケースについては、内定を受けていたか否かによって以下のとおり休業損害の計算方法が異なります。

学生の休業損害(就職遅れの場合)

  • 内定を受けている場合
    • 賃金センサスまたは内定先の給与推定額に基づく
  • 内定を受けていない場合
    • 賃金センサスに基づき、就職が遅れた期間分の休業損害が計算される

就職遅れによる休業損害の請求も、加害者側の保険会社と争いになる可能性が高いです。

たとえば、被害者の事故前の単位取得状況が芳しくなかったなら「事故にあわなくても留年していた可能性が高い」として、加害者側が休業損害を否定してくることが考えられます。
また、金額についてトラブルになることもあるでしょう。

上記のように加害者側の保険会社が休業損害を認めなかったり、低い金額を提示してきたりすることに備えるためにも、弁護士に一度ご相談ください。

なお、事故を理由に留年した場合は、留年のため生じた学費や下宿代、教材費なども請求できます。詳しくは、学生の交通事故の慰謝料について説明した記事『学生の交通事故|慰謝料の計算方法や相場は?学生ならではの費目もわかる』をご覧ください。

休業損害を減収額どおりにもらえるとは限らない

休業損害が減収額以下の場合に考えられる理由

事故前の収入や休業日数を示す書類を提出したのに、加害者側の保険会社から減収額以下の休業損害が提示されることがあります。

なぜ減収額以下の金額になっているのか、考えられる理由は次のとおりです。

  • 自賠責基準や任意保険基準で休業損害を計算している
  • 休業した日の一部を休業損害の対象にしていない
  • 被害者側に不利な形で休業損害を計算している
    • 事故前3か月間の収入を「事故前3か月間の実労働日数」ではなく「90日(30日×3ヶ月)」で割った金額を基礎収入(日額)にしている など

大前提として、加害者側の保険会社は営利企業なので、被害者に支払う金額を少しでも減らしたいと考えています。

そのため、保険会社独自の基準で休業損害を計算する、被害者側にとって不利な計算条件を用いるといった方法で、休業損害を減らそうとしてくるのです。

休業損害を十分に回収するためのポイント

加害者側の保険会社から提示された休業損害が低額な場合は、示談交渉で増額を求める必要があります。

しかし、以下の点から、示談交渉の経験や損害賠償の知識については、被害者より保険会社の方が圧倒的に豊富です。そのため、被害者自身での交渉は困難と言わざるを得ません。

増額交渉を成功させ、休業損害を十分に回収するためには、弁護士に依頼することが有効になります。

弁護士が出てくると、加害者側の保険会社は裁判への発展を懸念し、増額交渉に応じやすくなる傾向にあります。「弁護士が出てくればこの金額まで増額を認める」といった内部ルールを設定している保険会社もあるのです。

弁護士ありの増額交渉は増額の可能性が高い

「弁護士に依頼すると弁護士費用がかかってかえって損をしそう…」と心配される被害者の方も多いですが、弁護士特約を使えば弁護士費用を一定金額まで保険会社に負担してもらうことができます。自己負担なしで弁護士に依頼できるケースも少なくありません

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右足高原骨折の増額事例

弁護士による増額についてもっと知りたい方は関連記事も参考にしてください。

休業損害以外の費目も低額のリスクあり

交通事故の被害者は、休業損害以外にも以下のような費目を請求できます。

示談金の主な費目

  • 治療関係費
    • 事故によるケガの治療関連に要した費用
    • 診察費、投薬費、通院交通費、入院雑費、入通院付添費など
  • 慰謝料
    • 事故による精神的苦痛の補償
    • 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類がある
  • 逸失利益
    • 事故による将来的な減収の補償
    • 後遺障害逸失利益、死亡逸失利益の2種類がある
  • その他、車の修理代など

上記の費目についても、加害者側の保険会社は本来被害者が請求できる金額よりも低い金額を提示してくることが多いです。

示談が一度成立してしまうと、あとから撤回したり再交渉したりすることは基本的にできません。「本来ならもっと多くの金額をもらえていたのに…」と後悔しても、再請求することはできないのです。

よって、加害者側の保険会社から示談金の案が提示されたら、法律の専門家である弁護士に適正な金額か確認することをおすすめします。

アトム法律事務所では、電話・LINEによる弁護士への無料相談を受け付けています。弁護士事務所に行かなくとも、スキマ時間で弁護士の確認を受けられるので、気軽にお問い合わせください。

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岡野武志弁護士

以下の記事では、ご自身の交通事故について弁護士を立てるかどうか、弁護士を立てるメリットやデメリットを解説しています。弁護士への相談を躊躇している方は、検討にお役立てください。

休業損害に関するよくある疑問

Q1.通院のために有給休暇を使うほうがいい?

通院のために有給休暇を使っても、欠勤しても、休業損害の対象日として補償を受けられる点は同じです。

通院するために有給休暇を使うと、会社から支払われる給与とは別に休業損害を請求できる点がメリットといえます。

なお、交通事故より前に元々から有給休暇を予定していた場合であっても、その有給休暇日に通院していれば同様に両方を請求できます。通院していなければ、とうぜん休業損害は請求できません。

Q2.事故が原因で退職したら休業損害はどうなる?

交通事故が原因で退職せざるを得なくなった場合、退職と事故の因果関係を立証できれば、退職後の一定期間も休業損害が認められる可能性があります

退職と事故の因果関係が認められるかどうかについては、以下のような事実が判断基準となります。

  • 交通事故によるケガの程度
    仕事を行える程度のケガかどうか
    治療を行った医師の意見が重要になります
  • 仕事の内容
    肉体労働が多い場合には、仕事に支障があるとして因果関係が認められやすいといえるでしょう
  • 自主退職か会社からの解雇か
    自主退職なら交通事故によるケガが退職の原因であると主張することが難しくなります
    退職する場合には自己都合退職ではなく会社都合退職にしてもらうべきです
  • 交通事故によるケガ以外の理由で退職したのか
    交通事故によるケガ以外が退職理由であると因果関係が認められにくいといえるでしょう
  • 再就職の可能性があるのか
    再就職が困難なケガであるなら因果関係が認められやすくなります

退職と事故の因果関係を証明することが難しい事案もあります。加害者側の保険会社に「退職したのは事故と関係ない」と主張され、退職後の休業損害を認められない可能性もあるでしょう。

退職と事故の因果関係を証明し、休業損害を受け取りたいなら、あらかじめ弁護士に相談しておくことをおすすめします。

Q3.副業していたら休業損害はどうなる?

副業による収入も、休業損害の対象になります
ただし、副業で収入を得ていることや、いくら収入があったのかを立証する必要があります。

もし、複数の職場を掛け持ちしていたなら、すべての就業先に休業損害証明書を書いてもらいましょう。副業として事業所得を得ていたなら、前年の確定申告書をもとに基礎収入を計算します。

なお、先述のとおり不労所得は基本的に休業損害として認められません。副業として株の配当金や家賃収入を得ていても、休業損害の対象にはならないでしょう。

副業による収入を休業損害の対象にするかどうかも、加害者側の保険会社と揉めやすいポイントです。加害者側が副業収入を認めないと主張するなら、弁護士に相談して対策を練りましょう。

Q4.休業損害に税金はかかる?

「給料には税金がかかるけど、休業損害にはかからないの?」といったように、休業損害と税金の関係で悩まれる被害者の方は少なくありません。

所得税法9条1項18号において、損害賠償金は非課税所得とされています。
よって、損害賠償金の一部である休業損害は課税されません

確定申告をしたり、年末調整を受けたりする場合は、実際に働いて得た給与所得や事業所得のみ記載し、休業損害として支払ってもらった金額については記載しない形になります。

「扶養から外れないよう年間の収入が130万円を超えないようにしている」「所得税がかからないよう年間の収入が103万円を超えないようにしている」といった働き方をされている方もいらっしゃいますが、この場合の収入に休業損害は含まれないのでご安心ください。

Q5.相手が任意保険に入っていないと休業損害はもらえない?

相手方が自賠責保険に加入している場合は、被害者請求によって上限120万円までの保険金を請求できます。ただし120万円の中には、休業損害だけではなく、治療費、通院交通費、慰謝料なども含む点には注意しましょう。

相手が加入している自賠責保険会社は交通事故証明書に記載されています。交通事故証明書を入手したら、相手方の自賠責保険会社へ連絡を取り、被害者請求に必要な書類を送ってもらいましょう。

休業損害で困ったら弁護士への無料相談を活用しよう

アトム法律事務所は、電話・LINEで弁護士に無料相談が可能です。
自宅にいながら弁護士のアドバイスを受けられるので、気軽にご利用ください。

弁護士にご相談いただければ、以下のような休業損害に関するお困りごとについて、適切なアドバイスを受けられます。

  • 休業損害の金額が低い
  • 休業損害に昇給、ボーナスなどが適切に反映されていない
  • 主婦やアルバイトなので休業損害を支払わないと言われた
  • 休業損害の請求に必要な書類がわからない
  • 休業損害が打ち切られた
  • その他、休業損害について保険会社ともめている

また、弁護士に依頼することで、休業損害を含めた請求の対応を弁護士に任せることができるため治療に専念することが可能となったり、必要な証拠収集のサポートを受けるといったメリットがが生じます。

弁護士に依頼するメリットについて詳しく知りたいかたは『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。

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岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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