交通事故で保険会社から支払いを拒否される原因と対処法まとめ

この記事でわかること
交通事故の被害に遭ったにもかかわらず、保険会社から保険金の支払いを拒否されたり、支払いを渋られたりすると、大きな不安や怒りを感じてしまうものです。「このまま泣き寝入りするしかないの?」「どこに相談すればよい?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実は、支払いが拒否される背景には、過失割合の争い・証拠不足・契約条件の問題など、ある程度、共通したパターンがあります。
この記事では、交通事故で保険会社が支払いを拒否する主な理由や、被害者が取るべき対応、さらに弁護士に相談するメリットまで、わかりやすく解説します。どのような場合に正当な保険金を受け取れるのか、また、支払い拒否にどう対処すればよいのかを知ることで、安心して次の行動に移ることができます。
目次

交通事故で保険会社が支払いを拒否・渋る主な理由
交通事故に遭った後、「当然、保険金が支払われる」と考えていたのに、保険会社から突然「支払えません」と拒否される…
こうした保険金支払いに関するトラブルは、珍しいことではありません。
支払い拒否や渋りの背景には、契約内容や事故状況に関する認識のズレ、証拠の不足、手続きの誤りなど、さまざまな理由が潜んでいます。この章では、保険金が支払われない典型的な原因を整理し、それぞれについて注意すべきポイントを解説します。
よくある!交通事故で保険金が支払われない理由
実際に被害者が保険金の支払いを拒否されたケースでよくあるトラブルの一例は、下記の通りです。
- 過失割合をめぐる争い
- 証拠や診断書の不備
- 契約条件(免責事項)による支払い拒否
- 報告や手続きのミス
- 実際の損害や後遺障害が十分に認定されない
それぞれ詳しく見ていきます。
1. 過失割合をめぐる争い
保険会社が「被害者側にも過失がある」と一方的に判断した場合、賠償額が減額される、もしくは支払いが行われないことがあります。
特に10:0の事故だと思っていても、保険会社が8:2や7:3と主張してくることがあります。
もっとも、保険会社の主張に納得いってもいかなくても、すぐさま受け入れないようにしましょう。妥当な過失割合かどうかは弁護士に相談してみることをおすすめします。
2. 証拠や診断書の不備
事故証明や診断書など、事故発生事実やけがの程度を裏付ける書類が不十分な場合、「事故との因果関係が証明できない」とされ、保険金の支払いが否定される可能性があります。
事故後すぐに受診せず、後日通院した場合なども「因果関係不明」とされやすく、注意が必要です。
3. 契約条件(免責事項)による支払い拒否
保険契約には免責条項があり、以下のようなケースでは保険金の支払い対象外となります。
免責となる主なケース | 説明 |
---|---|
飲酒・無免許運転 | 違法運転による事故は補償対象外とされます。 |
故意による事故 | 故意に事故を起こした場合(例:当たり屋)、保険は利用できません。 |
自然災害・戦争 | 地震や津波、戦争など不可抗力による事故も免責対象になります。 |
4. 報告や手続きのミス
保険会社へ事故の報告が遅れた、もしくは必要な書類が揃っていない、期限内に請求手続きをしなかったといった場合も、支払い拒否につながることがあります。
特に、自賠責保険や任意保険の請求には「時効」が設けられており、これを過ぎると請求そのものが認められません。手続きは正確かつ迅速に行うことが大切です。
時効の期限は、損害の内容や加害者と被害者どちらの任意保険に請求するかなどで異なります。詳しくは下記の関連記事をご覧ください。
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5. 実際の損害や後遺障害が十分に認定されない
後遺症があるのに、医師の診断書や意見書の記載が不十分なために後遺障害等級が認定されず、補償額が大幅に減額されたり、保留されたりするケースもあります。
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後遺障害認定されなかった!非該当の理由と対処法は?異議申し立ても解説
自賠責保険への被害者請求でのトラブル
被害者が加害者の保険会社ではなく、自身で自賠責保険に「被害者請求」を行う場合も、以下のようなトラブルが起こることがあります。
- 書類が揃っているにもかかわらず、「調査中」を理由に支払いが保留される
- 必要以上の書類を要求されたり、対応を引き延ばされたりする
- 不誠実な対応により、請求から支払いまでが大幅に遅れる
このような場合、請求者側の過失やミスではなく、保険会社側の対応に問題がある可能性もあります。
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自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説
交通事故で保険の支払いを拒否された被害者が取るべき対処法
もしも保険金の支払いを拒否されたら、まずは冷静に対応しましょう。正当な理由なく保険金の支払いを拒まれている場合には、適切に対処することで支払いを受けられる可能性があります。
感情的にならず、段階的に手続きをすすめる方法を解説します。
拒否理由の確認と保険会社への問い合わせ方法
まずは、保険会社からの「拒否理由」を文書で明確に確認しましょう。電話で済ませず、「書面で回答をください」と依頼することで証拠として残せます。
以下のように問い合わせることが有効です。
- 具体的にどの点が支払い対象外なのか
- どの証拠や書類が不足していると判断されたのか
- どの保険約款・規定に基づいて支払いを拒否しているのか
記録を残すため、書面やメールでのやりとりを基本とし、電話での会話も日時・内容をメモしておくとよいでしょう。
また、事故対応の窓口だけで対応が不十分な場合は、保険会社のカスタマーサービスセンターや監督官庁(金融庁)への相談も効果的です。
証拠の整理と再請求の準備方法
支払い拒否の理由が「証拠不十分」「因果関係不明」などの場合は、必要な証拠を集め直し、再請求の準備をすることが重要です。
具体的には、以下のような書類の再点検・収集を行います。
- 医師の診断書や通院記録
- 警察の交通事故証明
- 現場や車両の損傷状況の写真
- 目撃者の証言やドライブレコーダー映像
これらを可能な限りそろえて再度、請求することで支払いが実現するケースもあります。
保険金支払拒否に泣き寝入りしないための相談窓口のすすめ
保険会社とのやりとりに限界を感じたり、自力での対応が難しいと感じた場合には、第三者機関や専門家への相談を検討しましょう。「どうせ払ってもらえないだろう…」と諦める前に、まずは専門機関に相談をしてみてください。
主な相談先
相談先 | 特徴 | 費用 |
---|---|---|
弁護士 | 法的視点からの総合アドバイス | 初回無料の事務所も多数 |
金融庁 | 保険会社への行政的な監督視点 | 無料 |
そんぽADRセンター | 中立な専門機関で裁判外の紛争解決を支援 | 無料 |
専門家による客観的な判断で、解決の糸口が見えるかもしれません。
交通事故に強い弁護士の無料相談
交渉に自信がない場合や、保険会社の対応に納得がいかない場合、交通事故に詳しい弁護士への相談を検討してください。
交通事故案件を多く扱う弁護士は、保険会社との交渉に精通しており、拒否理由が不当かどうかを法的に判断できます。また、弁護士が介入することで、保険会社の対応が一変するケースも珍しくありません。
交通事故に強い弁護士事務所の多くは、初回相談を無料で提供しており、費用の不安を解消してから依頼できます。

金融庁に相談するという選択肢
保険会社の対応があまりに不誠実な場合、監督官庁である金融庁の「金融サービス利用者相談室」に相談する方法があります。電話やインターネットから無料で利用でき、公正な立場からアドバイスが受けられるため、弁護士相談の前段階としてもおすすめです。
詳しくは、金融庁HP「金融サービス利用者相談室 皆様の「声」をお寄せください!」をご覧ください。
あくまで行政による相談窓口なので、強制的に保険金を支払わせることはできませんが、保険会社に一定のプレッシャーを与える効果は期待できるでしょう。
裁判外で解決する「そんぽADRセンター」の活用
保険会社とのトラブルを裁判をせずに解決したい場合は、日本損害保険協会が運営する「そんぽADRセンター」が有効です。中立的に紛争解決を支援してくれます。
費用は原則無料で、弁護士を立てなくても個人で利用可能です。
「保険会社と話し合いがうまくいかない」「裁判は避けたい」という人に特におすすめです。
保険金の支払拒否には弁護士への相談が有効
保険会社からの支払い拒否に直面したとき、心強い味方となるのが交通事故に強い弁護士です。
被害者が個人で対応を続けるのは大きなストレスとなるでしょう。さらに、保険会社との交渉には法律知識や交渉力が求められるため、不利な状況に追い込まれるリスクもあります。
なぜ弁護士に相談すべきなのか?
弁護士に相談すれば、法的な裏付けをもって主張ができるため、保険会社も無視できない交渉が可能になります。
保険会社との交渉は専門的な知識や法的根拠が求められるため、個人での対応には限界があるでしょう。
多くの弁護士事務所では、以下のような料金体系を導入しています。
- 「初回相談無料」
- 「着手金+成功報酬」または「完全成功報酬制」
最初に費用の不安を解消したうえで依頼できるので、安心して相談をスタートできます。
弁護士に相談・依頼する5つのメリット
弁護士に相談・依頼することで、主に以下のようなメリットが得られます。
主な5つのメリット
メリット | 内容 |
---|---|
適正な損害額を算定できる | 慰謝料や逸失利益など、損害項目を漏れなく主張できる。相場より低い金額で妥協してしまう心配がない。 |
過失割合の主張をサポート | 法律の専門知識をもとに、有利な過失割合を導き交渉してくれる。 |
面倒な交渉を任せられる | 加害者側や保険会社とのやりとりを弁護士が引き受けてくれるため、精神的負担が大幅に軽減される。 |
後遺障害認定へのサポート | 後遺障害の等級認定手続きにも対応。専門性の高い申請が可能。 |
訴訟も視野に入れた対応ができる | 話し合いでの解決が難しい場合には、訴訟提起や少額訴訟、調停など、法的手続きを進めてもらえる。 |
この他にも、弁護士に依頼することで得られるメリットは多数あります。下記の関連記事でも解説していますので、あわせてご確認ください。
関連記事
交通事故を弁護士に依頼するメリット9選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?
交渉力のある弁護士による支払拒否対応の具体例
保険会社からの支払拒否に対し、弁護士が適切な対応をとることで、保険金が支払われる結果となったり、金額が大幅に増額されたりするケースも多いです。以下は、その代表的な対応例です。
- 診断書や事故証明の補完対応:医師に追加の所見を書いてもらったり、交通事故証明書の記載内容を精査して、事故との因果関係を明確化する
- 過失割合の法律的再検討と反論:ドライブレコーダー映像や現場写真をもとに、保険会社の過失割合の主張に対し、根拠ある法的反論を行う
- 後遺障害等級認定への異議申し立て:非該当や低い等級と判断された場合に、必要な医療資料を揃えて異議申し立てを行い、適正な等級認定を目指す。
これらを代行してもらうことで、受け取れる保険金が増額された例も少なくありません。弁護士による専門的な主張と証拠の提示は、交渉の成否を大きく左右するため、経験豊富な弁護士の存在は極めて心強い味方となるでしょう。
交通事故の保険支払拒否に関するよくある質問(FAQ)
Q.保険金が支払われない場合はまずどこに連絡すればよい?
まずは、保険会社の担当者に支払拒否の理由を文書で確認しましょう。
内容が不明確だったり納得できない場合は、保険会社の「苦情受付窓口」や「カスタマーサービスセンター」に問い合わせてください。それでも解決しない場合は、弁護士やそんぽADRセンターなどの第三者機関に相談しましょう。
Q.保険金が下りるまでの期間は通常どの程度?
任意保険については、損害の内容や過失割合に関する争いの有無などによって幅がありますが、示談にかかる期間は、示談開始からだいたい2ヶ月~1年程度となります。示談がまとまれば、示談成立後から約2週間以内には振り込まれる見込みです。
長期化する場合は、進捗状況をこまめに確認するようにしましょう。
また、自賠責保険に被害者請求する場合、書類が揃っていれば1ヶ月以内に支払われるのがほとんどです。ただし、書類に不備があると大幅に遅れることがあります。
Q.過失割合を一方的に決められて保険が支払われなかった場合の対応は?
保険会社が相手方の主張を一方的に採用して、過失割合を決めているケースでは、その根拠を明確に示すよう求めましょう。
事故状況に納得がいかない場合は、実況見分調書やドラレコ映像などの証拠をもとに、反論することが可能です。交渉が難航する場合は、弁護士に相談するのが確実です。
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Q.相手が無保険だった場合に受けられる補償制度は?
相手が自賠責保険も任意保険も未加入の完全な無保険状態であった場合は、以下のような方法で補償を受け取りましょう。
- 被害者自身の自動車保険を使う(搭乗者傷害保険、人身傷害保険、無保険車傷害保険、車両保険など)
- 健康保険を使って治療を受ける
- 労災に該当する場合は労災保険を請求する
- 政府の保障事業を利用する
原則的には、相手方本人に賠償請求することになりますが、踏み倒しのリスクが高かったり、そもそもの資力がなかったりする可能性があります。
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Q.保険支払拒否に関して弁護士費用が不安なときの考え方は?
「弁護士費用特約」があるか確認しましょう。特約があれば、特約の上限範囲内であれば自己負担なしで弁護士に相談・依頼が可能です。
また、交通事故案件を積極的に扱っている弁護士であれば、相談料無料でかつ、着手金無料・完全成功報酬型のプランを採用していることが多いでしょう。
費用面の不安を理由に弁護士への相談・依頼をあきらめる必要はありません。
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まとめ|保険金が支払われないときは、まず原因を確認して早めに専門家に相談
交通事故の被害に遭ったのに、「保険会社が支払いを渋る」「保険が支払われない」といった事態に直面すると、精神的にも大きな負担になります。しかし、多くの場合は、証拠の集め方や交渉方法次第で状況が改善される可能性があります。
まずは「なぜ保険金が支払われないのか」という理由を正確に把握し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しましょう。交通事故に詳しい弁護士であれば、被害者が適正な保険金を受け取れるよう法的にサポートしてくれます。
不安な気持ちを抱え込まず、まずは一度、無料相談を活用してみるのも良い選択です。
アトム法律事務所は、交通事故でお怪我をされた方を対象に、無料の法律相談を実施しています。法律相談の受け付けは24時間365日いつでも対応中です。気軽にお問い合わせください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了