交通事故の診断書の提出先や期限・もらい方と警察などに提出しないデメリット

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診断書を出さないと慰謝料が減る?

交通事故でけがをした場合、医師に作成してもらう「診断書」は、警察や保険会社への手続きで必要となる書類です。

他にも後遺障害認定を受ける場合や、勤め先から求められた場合は診断書を提出しなければなりません。

診断書を適切に提出しなければ、賠償請求などで不利益を被ることがあります。

そこでこの記事では、交通事故の診断書について、提出先や必要になる理由、提出期限から作成にかかる費用や注意点まで、わかりやすく解説します。

事故後の対応に迷っている方や、どこにいつ診断書を出せばいいのか不安な方は、ぜひ参考にしてください。

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交通事故の診断書とは?内容や必要性、提出期限を解説

診断書とは、医師が患者のケガの状態を診察し、診察時の判断結果をまとめた書類です。

ケガの名前や治療開始日、治療経過、今後の見通しなどが記載され、被害者が交通事故によってどのようなケガを負ったのかを示す証拠となります。

交通事故の診断書には、主に警察提出用・保険会社提出用・後遺障害認定用・勤務先提出用の4つがあります。

それぞれのの目的や期限・タイミングは以下の通りです。

診断書主な目的期限・タイミング
警察提出用人身事故としての届け出のため事故後10日以内が目安
保険会社提出用賠償請求のため賠償請求時
後遺障害認定用後遺障害認定のため後遺障害申請時
勤務先提出用休業の申し出のため就業規則による

それぞれについて詳しく解説します。

警察提出用の診断書

【警察提出用の診断書に記載すべき内容】

  • 傷病名(むちうち、打撲、骨折など)
  • 全治までの日数(加療を要する期間)

警察提出用の診断書は、交通事故でケガをしたことを証明するために必要です。

交通事故には物損事故と人身事故がありますが、人身事故として警察に処理してもらうには、ケガをしたことを証明する必要があるのです。

警察提出用の診断書の期限

警察への診断書の提出に期限はありませんが、事故後10日以内が望ましいと言えます。

事故から時間がたって受診し、診断書を提出しても、「事故後に別の要因で負ったケガではないか」と疑われ、人身事故としての届け出を受け入れてもらえない可能性があるからです。

保険会社提出用の診断書

【保険会社背提出用の診断書に記載する主な内容】

  • 傷病名(受傷部位)
  • 治療開始日・治癒または治癒見込み日
  • 治療内容・経過
  • 今後の見通し
  • 検査所見
  • 既往症・既存障害
  • 治療期間・通院回数

加害者側の保険会社に提出する診断書の目的は、賠償請求です。

交通事故では、慰謝料や損害賠償金は加害者側の自賠責保険・任意保険から支払われることが多いです。

そこで、ケガの内容や治療期間などを示す証拠として診断書が必要になるのです。なお、賠償請求には主に以下の2つの方法があり、どちらを選ぶかによって診断書の提出方法が異なります。

【任意一括対応を受ける場合】

  • 加害者側の任意保険会社が、病院に直接治療費を支払ってくれる。
  • 自賠責保険からの賠償金も任意保険からの賠償金も、すべてまとめて任意保険会社が支払ってくれる。
  • 加害者側の任意保険会社が診断書を取り寄せるため、被害者側からの提出は不要。
    ※病院から保険会社に医療情報を渡すにあたり、同意書にサインを求められます。

【任意一括対応を受けない場合】

  • 加害者側の自賠責保険会社への請求(被害者請求)や、任意保険会社への請求(示談交渉)が必要。
  • 被害者請求する場合は自賠責保険へ、示談交渉する場合は任意保険会社へ診断書の提出が必要

なお、被害者請求で提出する診断書は、自賠責保険用のものを用います。これは、保険会社に問い合わせたり、インターネット上でダウンロードしたりすることで入手可能です。

ただし、健康保険を利用していた場合には、病院から自賠責保険会社指定の書式の診断書の作成を拒否されることがあります。その場合は例外的に自賠責保険会社指定の書式のものでなくても被害者請求をすることは可能です。

自賠責保険の請求手続きや自賠責保険の書式の診断書(自賠責診断書)について、詳しくは『自賠責保険│被害者請求と加害者請求の違いは?必要書類は自賠責診断書?』をご覧ください。

保険会社提出用の診断書の期限

診断書の提出タイミングは請求時ですが、「被害者請求」には3年の時効があります。
診断書の提出を含め、被害者請求の申請は以下の表の起算日から3年以内に行いましょう。

損害賠償請求権の時効起算点

傷害分の費目事故翌日
後遺障害分の費目症状固定の翌日
死亡事故の費目死亡日の翌日

※症状固定とは、これ以上治療を続けても、症状の回復が期待できない状態。

後遺障害認定用の診断書

【後遺障害診断書に記載する主な内容】

  • 治療期間・通院回数
  • 後遺症の箇所・症状・程度
  • 痛みやしびれなどの自覚症状
  • 各種検査結果(腱反射・筋肉・筋力などの神経学的所見や可動域制限など)
  • 症状固定日
  • 今後の見通し

後遺障害認定用の診断書は、後遺障害認定を受けるために必要です。

後遺障害認定とは、交通事故で残った後遺症に対して「後遺障害等級」の認定を受けることです。これにより、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになります。

後遺障害診断書は後遺障害認定の審査で重視される書類であり、その認定結果は「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」の請求可否や金額を左右します。

たとえば後遺障害慰謝料は、1つ等級が違うだけで70万円~430万円の差が生じます。

医師は「後遺障害認定の対策に適した診断書の書き方」に精通しているとは限りません。診断書を受け取ったら、被害者側でも内容を確認し、必要があれば医師に修正をお願いしましょう。

後遺障害診断書について詳しくは、『後遺障害診断書とは?もらい方と書き方、自覚症状の伝え方を解説』をご覧ください。

後遺障害認定用の診断書の提出期限

提出のタイミングは、後遺障害申請時です。

なお、遺障害等級認定の審査を受けるための手続きには、「被害者請求」と「事前認定」の2種類の方法があり、どちらを選ぶかで診断書の提出先が異なります。

被害者請求の流れ

【被害者請求】

  • 被害者側が必要書類を集め、加害者側の自賠責保険会社を経由して審査機関に提出する方法。
  • 被害者にとって手間がかかるが、後遺障害等級に認定されるための工夫をしやすく、適切な等級に認定されやすい。
  • 後遺障害診断書は加害者側の自賠責保険会社に提出し、そこから審査機関にわたる。
事前認定の流れ

【事前認定】

  • 後遺障害診断書だけは被害者側が用意し、残りは加害者側の任意保険会社が用意する。
  • 被害者にとって手間はかからないが、後遺障害等級に認定されるための工夫をしづらいため、本来より低い等級に認定されたり、そもそも認定されなかったりすることがある。
  • 後遺障害診断書は加害者側の任意保険会社に提出し、そこから審査機関にわたる。

被害者請求で後遺障害申請をする流れや必要書類は『後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由を解説』をご覧ください。

勤務先提出用の診断書

各勤務先の規則にもよりますが、交通事故にあったら勤務先にも診断書を提出しなければならない場合があります。

交通事故による休業などにあたり、事故でケガをしたことを証明するためです。休業時だけでなく、復職時にも診断書の提出が必要な場合があります。

労災保険の適用のために、診断書提出を求められることもあるでしょう。

交通事故で診断書を提出する場合の費用や注意点

交通事故で診断書を作成する場合は、費用がかかります。また、依頼してすぐに作成してもらえるものばかりではないため、かかる期間も把握し余裕をもって作成依頼をする必要があります。

そこで、交通事故の診断書の作成費用や期間、その他の注意点について解説します。

交通事故の診断書作成にかかる費用・期間

診断書の作成にかかる期間は、診断書の種類や病院によって異なります。

警察に提出する診断書なら「怪我をしたことの証明」が主な内容になるので、作成にそれほど時間がかからないことが多いです。即日発行されることもあるでしょう。

一方、後遺障害診断書は、怪我や後遺障害の治療経過、症状などについて詳細な情報を記載するため、作成に2週間~3週間程度かかることになります。

警察提出用の診断書は事故直後の初診時に、後遺障害診断書は医師から症状固定の診断を受けた時に作成を依頼しておくと良いです。

交通事故の診断書の作成費用・費用負担

診断書の作成費用は受診する病院によって異なりますが、3,000円~5,000円程度が一般的な相場です。

なお、診断書を自己負担で作成した場合、後の示談交渉で相手方に請求できる場合があります。診断書を自己負担で作成してもらったときは、忘れずに領収証をもらって保管しておくようにしましょう。

診断書費用負担
警察提出用原則自己負担
保険会社提出用原則保険会社負担
後遺障害診断書後遺障害に該当:原則保険会社負担
後遺障害非該当:原則自己負担

交通事故の診断書はコピーでなく原本で提出が原則

診断書は、原則として原本を提出しなければなりません。
診断書のコピーを提出しても、認められないことがほとんどなので注意しましょう。

なお、勤務先の会社に診断書を提出するときは、コピーの提出でも認められる場合があります。事前に会社の担当者に確認してみてください。

交通事故の診断書を提出しないとどうなる?

診断書を提出しないことは、被害者にとって慰謝料や賠償金額が減るなどデメリットしかありません。

事故の相手方から「診断書を提出しないでほしい」「提出した診断書を取り下げてほしい」と依頼されても、安易に応じないことをおすすめします。

診断書を提出しないデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

警察に提出しない場合【人身事故として処理されない】

交通事故の診断書を警察に提出しないと、物損事故として処理され、慰謝料や治療費の請求が困難になります。

物損事故として届け出た状態でも、加害者側の任意保険会社がケガの存在を認めれば、人身関連の費目も請求できることがあります。しかし、人身事故として警察に処理されている場合よりも減額されるリスクがあるでしょう。

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実況見分調書が作られず、示談交渉で不利になる可能性も

警察に診断書を提出し、人身事故として処理してもらわなければ、事故時の状況に関する捜査結果をまとめた「実況見分調書」などが作成されません。

その結果、相手方と意見が食い違った際に事故の状況を立証することが困難となり、被害者にとって不利な内容で示談となる可能性も高まります。

特に、過失割合は事故時の状況をベースに決めるものなので、交渉で不利になりやすいでしょう。

被害者側にも過失割合が付くと、その割合分、損害賠償金が減額されます。

加害者側の保険会社に提出しない場合【適切な賠償請求ができない】

加害者側の保険会社に診断書を提出しなければ、自賠責保険への請求(被害者請求)や、任意保険への請求(示談交渉)が適切に進みません。

まず、被害者請求では診断書が提出書類の1つになっているため、診断書がなければそもそも手続きができません。

次に示談交渉時には、診断書がなければ治療期間や治療内容などが確認できず、治療費や入通院慰謝料が算定できないおそれがあります。

本当にケガをして通院していたのか?と疑われ、物損関連の請求しか認められない可能性もあるでしょう。

ただし、先述の通り相手方の保険会社が治療費を直接病院に支払い(一括払い)している場合、相手方の保険会社は直接病院から診断書を取り寄せます。
この場合、被害者が自分で相手方の保険会社に診断書を提出せずとも問題なく補償が受け取れるので、特段気にする必要はないでしょう。

後遺障害診断書を提出しない場合【後遺障害認定を受けられない】

後遺障害診断書を提出しない場合、後遺障害等級の審査を受けられません。

後遺障害等級の審査を受けず、後遺障害等級認定がされなかった場合、「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」といった損害賠償金の費目について支払いを受けられなくなります。

後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は、損害賠償金の中でも高額になりやすい費目です。
後遺障害診断書を提出しなければ、損害賠償金が本来受け取れるはずの金額よりも大きく減ってしまう可能性があるのです。

勤務先に診断書を提出しない場合【休業損害などの請求ができない】

勤め先から診断書の提出を求められているのに提出しなかった場合、「交通事故による休業」として扱ってもらえず不利益を被る可能性があります。

たとえば、加害者側に休業損害を請求したい場合は、勤め先に「交通事故による休業が何日あったか」などを示す休業損害証明書を作成してもらう必要があります。

しかし、提出すべき診断書を提出していない場合、こうした書類の作成も対応してもらえない可能性があるでしょう。

また、労災保険金も受け取れないリスクも考えられます。

交通事故の診断書はどうやって取得する?

交通事故の診断書は、医療機関である病院で、被害者を診察した医師により作成されます。

ここでは、交通事故の診断書を取得する方法やで気を付けるポイントを解説します。

病院の医師に依頼する|整骨院では作成できない

交通事故で提出する診断書は、病院の医師に作成してもらいます。整骨院(接骨院)は医療機関ではない(医師がいない)ため、診断書の作成はできません。

診断書作成時には、以下の点について医師に伝えておくとよいでしょう。

  • 診断書の提出先や目的
  • 自覚症状

たとえば、交通事故によるケガで多いむちうちは、客観的に症状の程度がわからないことが多いです。
毎回の診察において自覚症状を適切に伝えておけば、被害者にとって不利益となる内容が記載されることを避けられます。

なお、医師法20条は、医師であっても自ら診察をしないで診断書を交付することを禁止しているため、被害者を診察していない医師から診断書を作成してもらうことはできません。

主治医でない(診察していない)医師が、医証(カルテ、診断書、画像検査)を精査して医学的所見を述べる書面のことは「意見書」といいます。

治療期間中に転院する場合の診断書の注意点

治療の途中で転院することになった場合、診断書には「継続」「転医」の箇所に〇をつけてもらう必要があります。

「治ゆ」や「中止」の箇所に〇をつけられると、転院後の治療費の支払いが受けられなくなるリスクがあるからです。

交通事故の診断書に関するよくある質問

続いて、交通事故の診断書に関してよくある以下の質問にお答えします。

  • 追突事故で軽傷でも診断書は提出すべき?
  • 物損事故として処理された後でも、警察に診断書を提出すべき?
  • 整骨院の施術証明書は診断書の代わりになる?
  • 全治日数が変わったら、警察に出した診断書も修正すべき?

追突事故で軽傷でも診断書は提出すべき?

軽傷でもケガをしているなら、人身事故として届け出るために診断書が必要です。

追突事故で多いむちうちは、日がたってから悪化してくることも多いです。その他のケガも、だんだんと悪化してくる可能性があるので、軽傷であっても病院で診察を受け、診断書を出してもらい、警察に提出しましょう。

物損事故として処理された後でも、警察に診断書を提出すべき?

物損事故として処理された後でも、ケガが発覚したなら診断書を提出し、人身事故に切り替えましょう。

物損事故として処理されたままでは、治療費や慰謝料をきちんと請求できない可能性があるからです。

整骨院の施術証明書は診断書の代わりになる?

なりません。

整骨院では柔道整復師による「施術証明書」を作成してもらえますが、医師による書類ではないため、診断書の代わりとして警察や相手方の保険会社に提出することはできないのです。

全治日数が変わったら、警察に出した診断書も修正すべき?

全治日数が変わっても、警察に提出した診断書の修正や再提出は不要です。

なお、警察に提出する診断書の全治日数は、人身事故加害者の刑事処分や違反点数(免許停止・取消の行政処分)の判断において考慮されるため、実際の治療日数よりも控えめに記載されていることが多いです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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