後遺障害診断書の書き方や書式のもらい方は?自覚症状の伝え方や認定のポイントも

交通事故のケガが治らず、後遺症が残ってしまった場合、後遺障害診断書の提出が必要になることがあります。
この診断書は、後遺障害の等級認定を受けるための極めて重要な書類です。
適切に記載されていれば、後遺障害慰謝料や逸失利益といった賠償金を正しく受け取ることにつながります。
一方で、「医師に任せれば大丈夫」と安心しきってしまうと、本来受け取れるはずだった賠償金を大きく減らしてしまうケースもあります。
認定審査は書類ベースで行われるため、自覚症状の伝え方や診断書の書き方に注意を払うことが非常に重要です。
後遺障害診断書のポイントを見ていきましょう。
目次
後遺障害診断書とは?
後遺障害認定を受けるための必要書類
後遺障害診断書とは、後遺症として残った症状について記載した診断書です。正式名称は「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」といい、後遺症の症状や部位などが記載されます。

後遺障害診断書は、交通事故によって後遺症が残り、後遺障害認定を受ける際に審査機関へ提出する必要があります。
後遺障害認定の結果、「後遺障害等級」が認定されれば、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになります。
後遺障害診断書は、単なる必要書類というわけではなく、「後遺症がどの後遺障害等級に該当するか」を審査する際に重視されるものです。
そのため、作成者である医師に症状についてしっかり共有し、適切な内容にしておくことが重要です。
関連記事
後遺障害等級が認定されるには?|認定の仕組みと認定率の上げ方を解説
症状固定と診断されたら医師に作成してもらう
後遺障害診断書を作成するタイミングは、医師から症状固定と診断されたときです。
症状固定とは「これ以上治療を続けても、大幅な改善は見込めない」と判断されることで、後遺症が残ったことを意味します。

後遺障害診断書を作成するのは、これまで治療を担当してきた医師です。
なお、交通事故の治療では整骨院や接骨院に通うこともありますが、整骨院・接骨院で後遺障害診断書を書いてもらうことはできません。
整骨院・接骨院ばかりに通っていて、病院の医師に治療経過を把握してもらえていないと、後遺障害診断書を書いてもらえない場合があります。
そのため、整骨院・接骨院に通う場合でも定期的に病院にも通院し、治療経過を確認してもらいましょう。
症状固定のタイミングは、後遺障害認定の結果に影響することがあります。例えば治療期間6ヶ月未満で症状固定になっていると、後遺障害認定されにくくなります。
詳しくは関連記事『症状固定とは?時期や症状固定と言われたらすべき後遺障害認定と示談』をご覧ください。
後遺障害診断書の費用は5,000円1万円|だれが負担する?
後遺障害診断書の費用相場は、一般的には5,000円~10,000円程度です。
大きな病院では書類作成規定が決まっているため、診断書の作成費用に大きな差はありませんが、小規模な病院やクリニックでは、20,000円を超えることもあるようです。
診断書の費用は、原則としてはいったん被害者側で立て替えることになります。
そして後遺障害認定されれば、加害者側に立て替えた分を負担してもらえるでしょう。
後遺障害診断書のもらい方
後遺障害診断書を作成するには、まず被害者側で診断書の書式を手に入れる必要があります。
そこから医師に作成をお願いし、後遺障害認定の申請に進みます。
後遺障害診断書の書式はどこでもらえるのか、もらった後はどのようにしたらよいのかについて、確認していきましょう。
書式のもらい方は2通り【ここからダウンロード可】
後遺障害診断書には、自賠責保険で定められた「指定の様式」があるので、所定のものを入手しましょう。
後遺障害診断書の書式のもらい方としては、「加害者側の任意保険会社または自賠責保険会社から取り寄せる」「インターネット上でダウンロードする」の2パターンがあります。
なお、歯の障害の場合には、歯科用の書式を使用する必要があるので、そちらをもらいましょう。
加害者側の任意保険会社または自賠責保険会社から取り寄せる場合
加害者が任意保険に加入している場合は、その任意保険の担当者に連絡することで書式をもらえます。
後遺障害診断書は自賠責保険で定められた書式になっていますが、任意保険会社からでも取り寄せ可能です。
加害者が任意保険に入っていない場合は、加害者側の自賠責保険会社から書式をもらいましょう。
相手方の加入する自賠責保険会社は、「交通事故証明書」を見るとわかります。
交通事故証明書はご自身でも取得可能です。関連記事『交通事故証明書とは?後日取得の期限やもらい方、コピーの可否を解説』で取得方法を説明しているので、参考にしてください。
注意
保険会社から後遺障害診断書の書式をもらう場合、実際に手に入るまでに時間がかかることがあります。
後遺障害診断書の入手後、作成には1ヶ月程度かかることもあるので、症状固定が間近に迫っている、あるいはすでに症状固定の診断を受けている場合には、次に紹介するインターネット上でダウンロードする方法のほうがタイムロスが少なくなりおすすめです。
インターネット上でダウンロードする場合
後遺障害診断書の書式は、インターネット上でももらえます。以下の書式が利用可能なので、A3サイズで印刷のうえ、ご利用ください。
後遺障害診断書の書式

書式(PDF)のダウンロードはこちら
- 一般用(交通事故全般に用いる)
- 歯科用(歯の後遺障害がある場合に使用)
※歯の後遺障害だけは書式が異なります
書式をもらった後の流れ
書式を用意できたら、以下の流れで後遺障害診断書の作成・後遺障害認定の手続きを進めましょう。
- 医師に後遺障害診断書の作成を依頼
- 後遺障害診断書を加害者側の保険会社に提出し、後遺障害申請
(1)医師に後遺障害診断書の作成を依頼
継続的に治療を受けている主治医に、後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
この際、本人しかわからない自覚症状については改めて医師にしっかり伝え、すり合わせをしておくことが重要です。
自覚症状をしっかり伝えるポイントは、本記事内でのちほど解説します。
また、医師に依頼する際は「自賠責保険の後遺障害等級認定用です」と目的をしっかり伝え、完成した診断書を受け取ったら、その内容をしっかり確認しましょう。
等級に影響する重要な書類なので、不備や記載漏れがあっては申請が認められないこともあります。
後遺障害診断書の書き方についても、本記事内でのちほど解説します。
複数の病院に通院していたら誰が作成する?
複数の病院に通院している場合、治療方針を立てている主治医に後遺障害診断書の作成を依頼するのが良いでしょう。
たとえば、主治医のいる総合病院で定期的な診察を受け、日常的なリハビリは近所のクリニックで受けているような場合、主治医に後遺障害診断書の作成を依頼するのが通常です。
もっとも、複数の部位で異なる医師の診察を受けており、それぞれの部位で後遺障害が残った場合は各担当医に後遺障害診断書の作成を依頼することもあります。
複数の部位で障害が残ると後遺障害診断書の記載が複雑になるので、2枚に分けて作成することもあるからです。
(2)後遺障害診断書を加害者側の保険会社に提出し、後遺障害申請
後遺障害診断書が完成したら、後遺障害等級認定の審査を受けるため、認定審査に必要な書類を審査機関に提出します。
このとき、加害者側の自賠責保険会社を経由する「被害者請求」と、加害者側の任意保険会社を経由する「事前認定」のどちらかを選びます。
両者の違いを簡単にまとめた表は以下の通りです。
被害者請求と事前認定の主な違い
| 被害者請求 | 事前認定 | |
|---|---|---|
| 提出先 | 加害者側の自賠責保険会社 ※他の書類も一緒に提出する | 加害者側の任意保険会社 ※他の書類は用意してもらえる |
| メリット | 審査対策がしやすい | 必要書類を準備しなくてよいので楽 |
| デメリット | 必要書類を準備するなど手間がかかる | 審査対策が不十分になりやすい |
後遺障害等級が認定される可能性を高めたいなら、審査対策がしやすい被害者請求による申請方法がおすすめです。
ただし、提出する書類をすべて自分で集める必要があるため、後遺障害に関する知識が不足していると満足な審査対策ができないおそれがあります。
被害者請求をお考えの場合は、後遺障害認定に関する知識が豊富な弁護士に一度相談してみましょう。
関連記事
医師に診断書を書いてもらえない時の対処法
次のような理由から、医師が後遺障害診断書を書いてくれないことがあります。
- 症状固定しておらず、まだ治療が必要な段階であるため
- 治療経過を十分に把握できていないため
- 後遺症が残ったと考えていないため
- 交通事故の賠償問題に巻き込まれることを心配しているため
それぞれのケースの対処法を解説します。
症状固定しておらず、まだ治療が必要な段階であるため
この場合は、医師の指示に従い、症状固定と診断されるまで治療を続けましょう。
医学的に見て症状固定していない状態で後遺障害診断書を作成し、後遺障害認定を受けようとしても、認定されない可能性が高いです。
治療経過を十分に把握できていないため
たとえば一度転院しており、現在の医師が治療経過の一部を把握できていないなら、以前の医師から当時の治療記録を取り寄せるなどの対応をしましょう。
そうすることで、現在の医師が転院前の治療経過についても把握でき、後遺障害診断書を書いてもらえる可能性があります。
後遺症が残ったと考えていないため
この場合は、具体的にどのような症状が残っていて、日常生活や仕事にどのような支障が出ているのかを医師に伝え、後遺症が残っていることを認めてもらう必要があります。
後遺症が残ったと認めてもらい、後遺障害診断書を書いてもらわないと、交通事故の賠償請求に支障が出ることを伝えるのもよいでしょう。
交通事故の賠償問題に巻き込まれることを心配しているため
後遺障害診断書を書いたからと言って、必ずしもその医師が示談交渉や裁判にかかわらなければならないわけではありません。
その旨を説明して、医師に納得してもらいましょう。
後遺障害診断書の書き方と認定に向けたポイント
後遺障害診断書の記載内容は、主に次のとおりです。
後遺障害診断書の主な項目
- 被害者の基本情報
被害者の氏名、住所、生年月日、職業など - 受傷日時
交通事故にあって負傷した日時
※ここが間違っていると、審査されない場合があるので訂正を求めましょう。 - 症状固定日
症状固定と判断された日
※多くの場合、治療開始から6カ月未満だと後遺障害認定されにくくなります。 - 当院入通院期間
後遺障害診断書を作成する医師が在籍する病院に入通院した期間 - 傷病名
症状固定時に残存している傷病名
※「○○等」でまとめず、すべて記載する必要があります。 - 既存障害
被害者が交通事故の前から有していた障害 - 自覚症状
被害者が症状固定時に訴えている症状 - 他覚症状および検査結果
症状固定時に残っている他覚症状および各種検査の結果 - 障害内容の今後の見通し
今後の症状の増悪または緩解の見通し
後遺障害診断書は、後遺障害認定の審査でも重視される書類の一つです。
そのことを踏まえ、特に書き方に注意しなければならないのが既存障害・自覚症状・他覚所見および検査結果・障害内容の今後の見通しです。
また、必要に応じて別紙・意見書も添付する必要があるので、これらの書き方・注意点を解説していきます。
(1)既存障害|いつ・どんな障害かを具体的に書いてもらう
既存障害とは、交通事故の前から被害者が有していた障害のことです。
この欄は、交通事故によって既存障害と同じ部位にさらに障害が加わる「加重障害」になった場合に記入します。
例えば交通事故で腰痛が悪化したものの、もともと腰痛持ちだった場合や、交通事故でねん挫したものの、その箇所は以前から複数回ねん挫していて癖になっていた場合などが該当します。
既存障害の欄には、既存障害の程度や交通事故との関係性について、できるだけ明確に記述してもらうとよいでしょう。
既存障害の書き方
- 「腰痛で通院歴あり」など抽象的な記述は避け、既存障害の程度・部位・治療期間が明確にわかる記述にする
- 交通事故による後遺症との関連性が具体的にわかる記述にする。とくに、医師が「交通事故で残った症状に既存障害は影響していない」と判断している場合は、その旨を明確に記述してもらう
既存障害の記載が曖昧だと、「残存する症状は交通事故によるものではなく、元から有していた障害である」として後遺障害等級が正しく認定されないおそれがあります。
既存障害のよる症状ではなく、今回の交通事故による症状だとわかるように記載してもらいましょう。
(2)自覚症状|生活や仕事にどう影響してるかも伝える
自覚症状とは、被害者自身が感じている痛みやしびれなどの症状を指します。
後遺障害等級の認定審査では、この自覚症状の欄も重要な判断材料の一つとされています。
特に画像には異常が写らないむちうちなどでは、自覚症状の重要性が増します。しかし、「痛い」「つらい」といった記載だけでは、審査機関に症状の深刻さが伝わらない可能性があるでしょう。
曖昧な表現ではなく、「どこに・どんな症状が・どのように支障を与えているか」を具体的に伝えることで、後遺障害の認定につながる可能性が高まります。
自覚症状の書き方
- 仕事や生活への影響も合わせた書き方をする
- 自覚症状の一貫性と連続性がわかる書き方をする
それぞれ詳しく解説していきます。
仕事や生活への影響も合わせて伝える
単に症状を伝えるだけでなく、その症状によってどんな支障が出ているかをあわせて伝えることが大切です。
適切な自覚症状の伝え方の具体例
- 腰痛がひどく、重い物が持てず介助の仕事ができない
- 首に痛みとしびれがあり、長時間のパソコン作業が困難
- 集中力が続かず、業務中のミスが増えた
自覚症状は客観的に証明しにくい分、「日常生活にどんな影響が出ているか」を具体的に書いてもらうことで、審査機関に伝わりやすくなります。
一貫性・継続性がわかるように伝える
自覚症状は、事故直後から一貫して続いているかどうかも重要なポイントになります。
例えば、「受傷当時から同じ部位のしびれが続いている」「痛みは天候や時間に関係なく持続している」など、症状の継続性や一貫性がわかる表現を使いましょう。
逆に、断続的な記載やぶれのある内容だと、事故との因果関係が疑われてしまう可能性があります。
注意
医師に自覚症状欄を具体的に書いてもらうには、事前に自覚症状について詳細に伝えておく必要があります。
「感じてはいるのにうまく言葉にできない」ということも多い自覚症状をどのように医師に伝えるべきかは、本記事内でのちほど詳しく解説します。
(3)他覚症状|検査結果とセットで確認
他覚症状とは画像検査(レントゲン・CT・MRIなど)や神経学的検査(患部に刺激を与えて反応を見る検査)などを通じで客観的に確認できる症状を指します。
後遺障害診断書では、この他覚症状欄の記載内容が等級認定の結果に大きな影響を与えるケースもあります。
とくに、むちうちや神経症状の後遺障害では、検査で症状を裏づけられるかどうかが非常に重要です。
他覚症状のNGな書き方
- 「原因不明」など医学的根拠のない記述
- 「異常なし」「画像所見なし」など検査では後遺症の存在がわからないことを示す記述
一方で、以下のような記載であれば、他覚的に症状が確認できていると判断されやすくなります。
他覚症状のOKな書き方
- MRI画像で神経根の圧迫を確認
- 神経学的検査でしびれ症状と一致する症状あり
- 腱反射検査で左右差を確認
特に画像に異常が見られないケースでも、神経学的検査で異常が見られれば、等級認定につながる可能性もあります。
医師が「検査しなくても状態は明らか」と判断して実施しなかったような検査でも、後遺障害診断書に記載するためには受ける必要があるケースもあります。
後遺障害認定のために受けるべき検査については、弁護士が詳しく把握しているので、ぜひご相談ください。
弁護士依頼が有利に働いた例
- むちうちの事例
- CTやMRIなどの画像検査を実施し、結果を添付するよう弁護士から医師に依頼。画像検査によって他覚所見が認められたため、後遺障害12級に認定された。
- 後遺症によって日常生活に支障があったため、意見書を作成するよう弁護士から医師に依頼。意見書には、弁護士のアドバイスを受けて日常生活に関する状況を記載した。
- 高次脳機能障害の事例
- 交通事故の前後で被害者の行動や人格がどのように変わったか証明するため、「日常生活状況報告」「学校生活の状況報告」を資料として添付。資料には、弁護士のアドバイスを受けて具体的な状況を記載した。
(4)障害の見通し|回復の余地があるような書き方はNG
障害内容の今後の見通しの項目には、症状固定時に残存している症状が今後増悪・緩解する可能性があるのかといった内容を記載します。
基本的には、「症状固定」「完治せず」など、今後も完治しない後遺症が残ったことがはっきりわかる記述になっているととよいでしょう。
障害の見通しの書き方
- 「症状固定」「完治せず」など今後も治る見込みのない症状が残ったことが明確にわかる記述
※「予後不明」「緩解」「治癒」など今後完治する可能性を含んだ記述は避ける
今後回復の余地があるような書き方になっていると、「回復の可能性があるなら後遺障害認定の対象にはならない」と判断される恐れがあります。
(5)別紙・意見書|伝わりにくい部分を補足
後遺障害診断書では、すべての情報を一枚の書類で網羅するのは難しい場合があります。
より詳細な説明を補足するために、「別紙」や「医師の意見書」などの書類を添付することが有効です。
別紙|日常生活の支障などを詳しく伝える
診断書の記載欄だけでは説明しきれない事情がある場合、別紙を添付してより詳しく伝えることができます。
書式は自由で、主に以下のような内容が有効です。
別紙の書き方
- 身体的な症状
手の神経症状により、食事の際に介助が必要 - 精神面や神経系の症状
頭部外傷の影響で性格が大きく変わり、感情のコントロールができない
医師の意見書|医学的な見解を追加する
医師による意見書では、後遺症の原因や症状の重さ、将来の見通しなどについて、医学的な見解を補足できます。
具体的な書き方は次の通りです。
- MRI所見により神経根の圧迫を確認。神経学的検査も陽性であり、症状は医学的に説明可能。
- 症状は今後も改善見込みが低く、症状固定と判断される。
意見書は診断書の信頼性を高め、等級認定に有利に働くことが多いため、医師と相談のうえ添付を検討しましょう。
「どんな内容を添えればいいかわからない」と感じた方は、弁護士に相談することで、最適な対策や記載内容のチェックをしてもらえる場合があります。
後遺診断書作成時の自覚症状の伝え方5ポイント
(1)症状を感じ始めた時期を明確に伝える
まずは、症状を感じ始めた時期を明確に伝えましょう。
基本的には事故当日からになるでしょう。しかし、むちうちなど事故から時間がたって自覚症状が出てくることもあります。
そうした場合でも、事故直後から少しでも痛みや違和感がなかったかを思い出して、医師に伝えてみましょう。
症状を感じ始めたタイミングが交通事故日から離れていると、事故による症状ではないとして後遺障害認定されにくくなってしまいます。
(2)症状のある位置を正確に伝える
どの部位に症状を感じるのかを正確に伝えることもポイントです。
症状が複数あるのに「背中等」とまとめて後遺障害診断書に書かれると、適切な認定を受けにくくなります。
症状を感じる部位はすべて医師に伝えるとともに、該当箇所がピンポイントで痛いのか、該当箇所を中心として広範囲が痛いのかといった症状の範囲も伝えておくとよいでしょう。
(3)症状の強さや質を具体的に伝える
症状の強さや質も、症状を感じている本人にしかわからないことなので、工夫してなるべく正確に伝えることが重要です。
例えば痛さを10段階で評価するとよいでしょう。
また、症状の質は「ズキズキ」「ジンジン」「ピリッとする」などのように伝えても問題ありません。ほかにも「鈍痛」「腕が重く感じる」などの表現でもよいでしょう。
(4)症状の一貫性・継続性・増減を伝える
交通事故から一貫して同じ症状が継続的に続いていることも、改めて明確に伝えておきましょう。
この際、「雨の日だけ痛む」など場面を限定した表現をすると、継続性がアピールできません。
天候などによって症状が増減する場合は、「常に痛みはあるが、雨の日に特に痛みが強くなる」というような伝え方をしましょう。
(5)日常生活への影響を具体的に伝える
自覚症状によって、家事や仕事など日常生活にどのような影響が出ているのかも、医師に伝えることが重要です。
痛みによって重いものを持てなくなった、首のしびれや痛みで長時間のデスクワークが苦痛になったなど、具体的な影響を伝えておきましょう。
後遺障害診断書Q&A|よくある疑問をまとめて解消!
Q1.通院6ヶ月以上じゃないと診断書は書いてもらえない?
後遺障害診断書の作成に6ヶ月以上の通院が必要かどうかは、症状によるといえます。通院6ヶ月については、作成時期の目安のひとつ程度に考えておきましょう。
たとえば、むちうちで後遺障害等級の認定を受けるなら、通院が6ヶ月以上であることが後遺障害認定の要件として重要になってきます。
そういった意味では、むちうちでは6ヶ月程度の通院を継続してから、後遺障害診断書の作成を依頼すべきであるといえるでしょう。
一方、腕や足など身体の一部を失ってしまった場合であれば、通院が6ヶ月未満でも治療による回復が見込めないことは明らかです。このような場合は6ヶ月未満でも後遺障害診断書を作成することができるでしょう。
このように、後遺障害診断書を作成する時期は症状ごとに異なります。ご自身の身体の調子を見ながら、医師と相談のうえで後遺障害診断書を作成するようにしましょう。
Q2.後遺障害診断書は書き直してもらえる?
後遺障害診断書の書き直しを医師にお願いすることは可能です。ただし、実際に後遺障害診断書を書き直したり、修正したりするかは、最終的に医師の判断となります。
医師によっては書き直しを拒否することもあるので、書き直しが必要な理由を丁寧に説明したり、失礼のないお願いの仕方になるよう注意を払ったりする必要があるでしょう。
また、書き直しに際して追加の費用が必要になる場合もあるので、あわせて確認するようにしてください。
Q3.後遺障害診断書に有効期限はある?
後遺障害診断書そのものに有効期限はありません。
診断書を作成した時点で、残存した症状がどのようなものなのか医学的な観点から書かれた書類だからです。
もっとも、後遺障害に関する示談は、症状固定の翌日から5年以内に成立させねばなりません。(加害者側の自賠責保険会社に対しては3年以内)
したがって、後遺障害診断書を作成してもらったらすみやかに後遺障害等級認定の申請を行い、認定結果が出たら示談交渉すべきでしょう。
示談の期限に関してくわしくは、関連記事『交通事故の示談に期限はある?時効期間と時効の延長方法』をご確認ください。
後遺障害診断書について弁護士にも相談すべき理由
医師が後遺障害認定向けの書き方に詳しいとは限らない
後遺障害診断書を作成するのは医師ですが、医師が後遺障害認定について詳しく知っているとは限りません。
そのため、後遺障害認定を意識した書き方になっていない場合があります。
しかし、弁護士なら後遺障害認定のサポートもしているため、後遺障害認定の審査を意識した書き方を知っています。
そのため、弁護士に相談することで後遺障害診断書の内容が適切になっているか、確認できるのです。
もし訂正すべき点があれば、医師に依頼して訂正してもらえます。
後遺障害認定のサポートも頼める|サポート事例も紹介
弁護士に相談・依頼すると、後遺障害診断書の内容確認だけでなく添付すべき追加書類のアドバイスをもらえます。
また、委任契約まで進めば後遺障害認定の手続きも任せられるため、手間をかけずに万全の対策をしたうえで認定審査を受けることが可能です。
後遺障害認定において、後遺障害診断書や添付書類は非常に重要ですが、被害者自身で対策するのは以下の点から難しいでしょう。
なぜ被害者自身では難しい?
- 後遺症の内容・程度から妥当な等級を見定め、その等級の認定基準を踏まえた対策をする必要がある
- 適切な審査対策をするには医学的知識と後遺障害認定の知識が必要
- 追加書類を添付するには「被害者請求」で申請しなければならないが、手間がかかる
そのため、弁護士に後遺障害診断書や追加書類について相談したり、申請手続きを依頼したりすることがおすすめなのです。
実際に弁護士が後遺障害認定の準備に介入した事例を紹介します。
弁護士は過去の事例や各等級の認定基準等をふまえたチェックが可能です。
また、一度目の審査結果に納得いかない場合は、異議申し立てのサポートも受けられます。
弁護士が意見書をつけて再申請を行い、併合12級認定
肩関節の機能障害が認定された事案
ご依頼者様の運転する自動車が、居眠りでセンターラインを越えてきた対向車に接触され、怪我を負った事案。当初はむちうちとのみ診断されていたが、肩周辺に違和感を覚えた被害者が違う病院を受診し、肩腱板の断裂が発覚した事案。
手術が必要な場合仕事ができなくなることへの不満もあり、障害の認定、金額、保険会社への対応について様々な相談をしたいとしてアトム法律事務所に相談。
弁護活動の成果
最終的に1090万円で示談が成立。
傷病名
むちうち、肩腱板損傷
後遺障害等級
併合12級
このケースでは、手術により可動域が改善する可能性が後遺障害診断書で示唆されていたことから、「症状固定の時期ではない」とされ、後遺障害認定はされませんでした。
依頼者が手術をしない選択をしたため、弁護士が過去の裁判例なども参考位に、手術を受けるかどうかは個人の自己決定にかかわることだという内容の意見書をつけて再申請したところ、後遺障害併合12級が認定されて、1090万円で示談が成立しました。
申請方法の相談を受けて被害者請求を行い、14級認定
右足踵骨折の後遺障害認定事例
依頼者がバイクで優先道路を直進中、右側から飛び出した自動車と衝突。急ブレーキが間に合わず、右足踵骨折と背中から首にかけての痛みを負った。
3か月間の通院治療後、加害者保険会社から治療打ち切りを告げられ、後遺障害申請を検討することに。事前認定と被害者請求のどちらにすべきかを相談するため、アトム法律事務所のLINE相談を利用した。
弁護活動の成果
最終的に295万円で示談が成立。
傷病名
右足踵骨折、首の痛み
後遺障害等級
14級9号
この事例では、他覚所見がありませんでしたが、アトム法律事務所の弁護士が被害者請求を行い、その結果後遺障害14級の認定を獲得し、ご依頼から4ヶ月で295万円にて示談が成立しました。
事前認定ではなく被害者請求を選択したことで、より詳細な医学的資料を提出し、自覚症状の一貫性や信用性を立証できたことが成功の要因です。
後遺障害等級認定では、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。被害者請求は手続きが複雑ですが、必要な資料を自分で収集・提出できるため、より有利な認定を受けられる可能性があります。

弁護士
この事案で認められた後遺障害14級9号は、痛みやしびれなどの神経症状に関する等級です。痛みやしびれは客観的な症状の証明が難しく、認定のためには適切な資料をそろえて申請を行う必要があります。
弁護士に依頼すれば、豊富な知識や経験をもとに認定に有効な資料がわかるため、後遺障害の認定率を高められます。
認定後の示談交渉も任せられる
弁護士に依頼することで、相場に近い慰謝料の金額を示談交渉で得ることが可能となります。
示談交渉時に加害者側の任意保険会社が提示してくる金額は相場よりも低いことがほとんどです。
せっかく適切な後遺障害等級を獲得できても、示談交渉がうまくいかなければ結局もらえる慰謝料は少なくなってしまうのです。
たとえば、むちうちで6か月通院し後遺障害14級に認定された場合、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の金額は以下のようになります。
任意保険会社の基準と弁護士の基準の比較(6か月通院、後遺障害14級の場合)
| 入通院慰謝料 | 後遺障害慰謝料 | |
|---|---|---|
| 任意保険会社の基準※ | 64.3万円 | 32万円 |
| 弁護士の基準※※ | 89万円 | 110万円 |
※入通院慰謝料は旧任意保険基準で計算。後遺障害慰謝料は自賠責基準とほぼ同額とする。
※※弁護士基準とは、過去の判例をもとにした正当性の高い金額
合計で100万円以上の違いが生じることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
なお、入通院期間が長かったり、後遺障害が重かったりした場合は、合計で1,000万円以上の違いが生じることも珍しくありません。

しかし、被害者自身の交渉で加害者側の提示額を増額させるのには限界があります。
弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書の作成にあたってのサポートを受けられるだけではなく、慰謝料を含む損害賠償金の大幅な増額を目指すことも可能なのです。
関連記事
後遺障害診断書についての無料相談はこちらから
アトム法律事務所では、電話・LINE・メールで無料相談が可能です。
後遺障害診断書は、事故後に補償を受け取るための「生命線」ともいえる大切な書類です。
「自覚症状の伝え方に自信がない…」
「医師にどう説明すればいいかわからない…」
「そもそも、自分の症状が後遺障害に該当するのか不安」
このようなお悩みをお持ちの方は、早めに弁護士に相談することも検討しましょう。等級認定という明確な「ゴール」に向かって、一つ一つのステップを適切に進めていくことが大切です。
また、弁護士に相談した後、本格的なサポートのために委任契約を結んだ場合でも、弁護士費用特約を使えば弁護士費用を自身の保険会社に負担してもらえます。

弁護士費用特約が使えない方でも、相談料や着手金といった初期費用は基本的に無料ですので、まずは一度お気軽にご相談ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
後遺障害診断書に書いてある一言が原因で、後遺障害認定が認められないケースもあります。それに気づかず何度も再申請を行ったとしても、認定されることはありません。
弁護士と一緒に、後遺障害診断書の内容が適切かどうか確認しましょう。