物件事故報告書とは?保険請求で本当に必要な書類の入手方法
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物件事故報告書とは、けが人のいない物損事故が起きたときに、警察が作成する簡易な事故の記録です。
警察の内部資料のため、事故の当事者であっても警察署の窓口で写しをもらうことは原則としてできません。取り寄せる場合は、弁護士を通じた弁護士会照会(23条照会)を利用するのが一般的です。
保険会社から「事故の報告書を出してください」と言われて調べている方もいるかもしれませんが、その場合は、多くは「事故発生状況報告書」を指しています。物件事故報告書が意味を持つのは、主に過失割合などで相手と事故状況の言い分が食い違ったときです。
この記事では、物件事故報告書の記載内容や入手方法、証拠としての使われ方、関連書類との違いを解説します。
目次
物件事故報告書とは?警察が作る物損事故の記録
「物件事故報告書」とは、物損事故(けが人のいない事故)が起きた際に、警察が作成する簡易な事故の記録です。
事故の状況を忘れないように記録しておく、警察の「メモ」のようなものだと考えてください。
| 作成する人 | 警察官 |
| 作成される状況 | 物損事故の届出があったとき |
| 記載内容 | ・事故があった日時と場所 ・現場の見取り図 ・事故当事者の名前や連絡先 ・車の登録番号(ナンバープレート) ・車の壊れた箇所の簡単な状況 など |
実況見分調書のような詳細な捜査記録ではありませんが、事故直後に警察官が作成した記録であるため、物損事故では事故状況を知る数少ない客観的資料になります。
交通事故における物損事故については、『物損事故(物件事故)とは?人身事故との違いや損害賠償を得るまでの流れ』の記事で詳しく解説しています。
物件事故報告書の入手方法|本人は取り寄せられる?
当事者本人が警察で写しをもらうのは原則難しい
物件事故報告書は警察の内部資料であるため、当事者が警察署に「見せてほしい」「コピーがほしい」と頼んでも、応じてもらえないのが通常です。
自分の個人情報について警察に開示を求める「保有個人情報の開示請求」を使う方法もありますが、物件事故報告書が開示されるかどうかは警察署によって対応が異なります。開示されても、相手方の氏名など自分以外の情報は伏せられるのが通常です。
弁護士会照会(23条照会)で取り寄せるのが一般的
示談交渉の段階で物件事故報告書を入手する一般的な方法は、弁護士法23条の2に基づく「弁護士会照会(23条照会)」です。
依頼を受けた弁護士が所属する弁護士会を通じて警察署に照会し、その回答として物件事故報告書の写しが開示されます。
弁護士会照会のポイント
- 開示までの期間:照会から1か月程度かかることもある
- 費用:弁護士会所定の照会手数料がかかる。弁護士費用特約を使っている場合は、実費として特約の範囲に含まれることが多い
- 開示範囲:個人情報の一部が黒塗りになることや、現場での聞き取りメモなどが開示されないことがある
また、弁護士会照会をしたとしても、物件事故報告書に代えて、事故状況の略図のみが開示されることもあります。
裁判になったら文書送付嘱託で取り寄せる
民事訴訟に発展した場合は、裁判所から警察に書類の送付を求める「文書送付嘱託」(民事訴訟法226条)でも取り寄せられます。
裁判官から物件事故報告書の提出を求められた場合も、この方法を利用するのが一般的です。
保険会社は物件事故報告書を取得できる?
保険会社も、物件事故報告書を警察から直接取り寄せられるわけではありません。
保険会社は、交通事故証明書のほか、当事者の説明や車両の損傷状況、写真、ドライブレコーダー映像などをもとに事故状況を判断します。
物件事故報告書が証拠として役立つ場面
事故の客観的な記録として、物件事故報告書は、過失割合などをめぐるトラブルの場面で役割を果たすことがあります。
過失割合で相手と争いになったとき
保険金の請求だけであれば、物件事故報告書は通常必要ありません。物件事故報告書が重要になるのは、「停車していた」「相手が急にバックしてきた」など、過失割合に影響する事実について当事者の主張が争いになったときです。
事故直後に警察官が両当事者から話を聞いて作成した記録は、時間がたってから変化しがちな当事者の記憶や主張よりも、客観性が高い資料として扱われることがあります。
物件事故報告書が重要な証拠となった裁判例
物件事故報告書が決定打となった駐車場事故
東京地判平25・10・30(平成25年(ワ)3244号・18495号)
立体駐車場で駐車中に発生した衝突事故で、当事者の主張が真っ向から対立。被告は「停車中に原告車が高速後退して衝突」と主張したが、警察官が事故直後に両当事者から事情聴取して作成した物件事故報告書には「原告車が駐車するのを待たず、後ろにいた被告車が接触したもの」と明記されていた。
裁判所の判断
「…物件事故報告書の作成経緯及び内容に鑑みると、その記載内容は基本的に信用することができ、…」
東京地判平25・10・30(平成25年(ワ)3244号・18495号)
- 物件事故報告書の記載を重視
- 被告の供述は「的確な客観的証拠がなく、にわかに採用できない」
過失割合
原告0%、被告100%
この裁判例で注目すべきは、物件事故報告書が証拠としていかに重要な役割を果たしたかです。
事故直後に作成された警察の報告書が、事故状況を認定するうえで重要な証拠となり得ることを示した裁判例です。
「交通事故証明書」「実況見分調書」との違いは?
交通事故の後に登場する書類には、物件事故報告書のほかにも、「交通事故証明書」「実況見分調書」といったものがあります。
これらは名前が似ていますが、事故の種類(物損か人身か)などによって作られる書類が異なります。
物件事故報告書と交通事故関連書類を比較
「物件事故報告書」は物損事故についての警察の簡易な記録、「交通事故証明書」は事故があったことの公的な証明書、「実況見分調書」は人身事故についての詳細な捜査記録です。
交通事故関連書類の比較
| 物件事故報告書 | 交通事故証明書 | 実況見分調書 | |
|---|---|---|---|
| 対象の事故 | 物損事故 | 警察に届け出たすべての事故 | 人身事故 |
| 作成・発行 | 警察 | 自動車安全運転センター | 警察 |
| 記載の詳しさ | 簡易 | 事故の事実のみ | 詳細 |
| 本人の入手 | 原則不可 | 可能 | 難しい |
| 主な使い道 | 過失割合の争いでの証拠 | 保険金の請求、勤務先への届出 | 過失割合の判断、裁判の証拠 |
交通事故証明書は保険請求に使う基本の書類
交通事故証明書は、「いつ、どこで、誰が関わる事故がありました」という事実を公的に証明してくれる、最も基本となる書類です。保険金の請求や、会社への報告などで必要になります。
事故の詳しい状況や、どちらにどれくらいの責任(過失割合)があるか、といったことは書かれていません。
警察に届け出さえすれば、物損事故でも人身事故でも発行してもらえます。詳しくは、『交通事故証明書とは?後日取得の期限やもらい方』をご覧ください。
実況見分調書は人身事故の詳細な記録
実況見分調書は、けが人が出てしまった人身事故のときに、刑事事件の捜査資料として作成される非常に詳細な書類です。現場の写真や見取り図、当事者が「どこで相手に気づき、どこでブレーキを踏んだか」といった説明まで細かく記録されます。
このため、当事者間で事故状況の言い分が食い違う場合や、裁判になった場合には、過失割合を判断するための非常に強力な証拠となります。
ただし、これは刑事事件の記録なので、当事者であっても簡単には見ることができず、入手するには検察庁への申請など、複雑な手続きが必要です。詳しくは、『実況見分とは?交通事故での流れや注意点!呼び出し対応や過失割合への影響』の記事をご覧ください。
事故の種類に応じて異なる重要書類と保険手続きの関係
事故の種類によって警察が作成する書類は異なります。
物損事故(けが人なし)の場合
警察は、事故の概要を記録した物件事故報告書を作成します。保険請求などの手続きで必要となるのは、事故の事実を証明する交通事故証明書です。
人身事故(けが人あり)の場合
警察は、より詳細な実況見分調書を作成します。この事故情報をもとに、保険請求などで使用する交通事故証明書も発行されます。
交通事故の書類は複雑なため、事故の状況に不安がある場合は、ご自身の保険会社や、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。どの書類が存在し、どうすれば内容を確認できるのかといった疑問にも答えてくれるでしょう。
物損事故の後にやるべき3つの手続きと流れ
「書類のことは分かったけど、結局何をすればいいの?」という方のために、事故後のやるべきことと全体の流れをまとめました。
STEP1:必ず警察に届け出る【最重要】
物損事故が起きた場合、警察に報告することは道路交通法72条1項後段で定められた義務です。面倒に感じても、必ず警察に連絡してください。
警察に届け出ないと、そもそも事故があったことを公的に証明する「交通事故証明書」が発行されません。
届出をしないと、こんなデメリットが…
- 交通事故証明書が発行されないため、保険金を請求できない可能性がある
- 修理費などをめぐって、相手と「言った言わない」のトラブルになる
- 当て逃げされた場合、犯人を特定する捜査をしてもらえない
警察に届け出ることは、権利や利益を守るための最初の大切なステップです。詳しくは、『交通事故後は警察への報告義務あり|報告・届け出をしないデメリット 』をご覧ください。
STEP2:ご自身の保険会社に連絡する
警察への届出が終わったら、できるだけ速やかに、ご自身が加入している自動車保険の会社に連絡しましょう。
事故受付の担当者が、今後の手続きの流れを丁寧に案内してくれます。交通事故証明書の取得についても、多くの場合、保険会社が代行してくれたり、取得方法を詳しく教えてくれたりします。
STEP3:交通事故証明書の発行を申請する
交通事故証明書をご自身で取得する場合は発行を申請します。
主な申請方法
- 警察署・交番で申請用紙をもらう
事故を届け出た際に、警察官から申請用紙(郵便振替用紙)をもらいます。ただし、警察署や交番では申請用紙をもらえるだけで、その場で発行手続きはできません。用紙に必要事項を記入後、ゆうちょ銀行・郵便局で申し込むのが一般的です。 - 自動車安全運転センターの窓口で申請する
各都道府県にあるセンターの窓口で直接申請できます。 - インターネットで申請する
自動車安全運転センターのウェブサイトからオンラインでの申請も可能です。(※本人による申請のみ)
交通事故証明書は、自動車安全運転センターの窓口で申請すれば原則即日発行されますが、それ以外の方法では郵送のため目安として10日ほどかかります。
まとめ|物件事故報告書は弁護士を通じて取り寄せる
物件事故報告書は、物損事故の届出を受けて警察が作成する簡易な事故の記録です。
警察の内部資料のため、当事者本人が窓口で写しをもらうことは原則できず、弁護士会照会(23条照会)で取り寄せるのが一般的です。
相手方の主張する事故状況や過失割合に納得できない場合は、物件事故報告書だけでなく、ドライブレコーダー映像や写真などの証拠もそろえて反論することが大切です。
自分で証拠を集めて交渉するのが難しいと感じたら、早めに弁護士へ相談することを検討しましょう。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国16拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
