物損事故の示談の流れと示談金相場|交渉時の注意点も解説

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物損事故で示談

物損事故の示談では、車の修理費や代車費用、評価損といった損害の補償額や過失割合について話し合います。示談金の相場は数万~30万円程度で、原則として慰謝料や治療費は請求できません。

物損事故の示談はもめずに終わると思われがちですが、代車費用や評価損、過失割合はもめやすい項目です。修理費についてもポイントを押さえなければ、一部が認められない可能性があります。

物損事故で請求できる損害賠償金の内訳や相場、物損事故の示談ならではの注意点を確認しておきましょう。

物損事故の示談交渉の方法・流れ

物損事故に遭ったら、示談成立まで次の流れで対応していきます。

  1. 警察へ連絡など事故直後の処理
  2. 車の修理費の見積書などを加害者側に提出し、修理
  3. 加害者側から示談案が届き、交渉開始
  4. 示談書作成後、示談金が振り込まれる

たとえば車の修理では、事前に見積を加害者側に提出することが非常に重要です。

このように各フェーズで注意点や知っておくべきことがあるので、確認していきましょう。

(1)警察へ連絡など事故直後の処理

物損事故が起こったら、まずは警察に連絡を入れましょう。

警察に連絡を入れた後は、加害者との情報交換や警察での聞き取り捜査への協力などをおこなってください。

警察に連絡しないと道路交通法違反となり罰則が生じるだけでなく、加害者側への損害賠償請求・自身の保険への保険金請求で必要な書類が発行されません。

示談金や保険金の受け取りがスムーズに進まないおそれがあるので、まだ警察に届け出ていない場合は速やかに届出をしてください。

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(2)車の修理費の見積書などを加害者側に提出し、修理

物損事故によって車が壊れた場合は、まず修理費の見積りをとって、加害者側の保険会社に提出しましょう。

加害者側に見積もりを確認してもらう前に車を修理してしまうと、「この修理は必要なかった」「この傷は今回の事故によるものではない」などと言われて修理費の支払いを一部拒否される可能性があります。

必ず見積書の内容を加害者側の保険会社に提出し、修理費・修理内容に問題ないことを確認したうえで、車の修理をしてください。

(3)加害者側から示談案が届き、交渉開始

車の修理費をはじめ、事故によって壊れた物とその物の修理費・弁償代などの確認がすべて取れたら、加害者側の保険会社から示談案が届きます。

示談案には示談金額、過失割合などが記載されているので、その内容をもとに、加害者側・被害者側が互いに合意できる内容になるよう交渉をしていきましょう。

交渉は対面で行われることは少なく、電話やメール、FAXなどを通して行われることが多いです。

物損事故における示談交渉の注意点は後ほど解説するので、ご確認ください。

(4)示談成立・示談金振込|再交渉は原則として不可

示談が成立したら、加害者側の保険会社から、以下の内容を記載した示談書が届きます。

  • 当事者それぞれの氏名と住所
  • 事故車両の登録番号(ナンバープレート)
  • 事故の発生年月日
  • 事故の発生場所
  • 当事者それぞれの損害額と過失割合
  • 支払われる賠償金の金額、支払い方法、振込先
  • 清算条項(示談後の追加請求などを行わない約束)
  • 当事者それぞれの署名・捺印

内容に間違いがないかよく確認したうえで署名・捺印をして加害者側の保険会社に返送すると、2週間程度で示談金が振り込まれます。

なお、示談書に一度署名・捺印をすると、原則として示談内容の撤回・再交渉はできません。署名・捺印後に弁護士に相談したとしても、どうにもならないことも多いです。

よって、示談内容について少しでも疑問や心残りがあるのなら、署名・捺印する前に弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故の示談書の書き方や注意して確認すべきポイントについては、『交通事故の示談書の書き方』の記事で紹介しているので、ぜひご一読ください。

加害者が無保険だと示談金支払に支障が出る可能性がある

加害者が任意保険に入っていれば、物損事故の示談金は加害者側の任意保険から支払われます。
よって、たとえ示談金が高額でも一括で滞りなく受け取ることが可能です。

しかし、加害者が任意保険に入っていない場合、示談金は加害者自身の負担によって支払われます。

加害者の資力によっては分割払いになるなどスムーズな支払いを受けられない可能性があるのです。

加害者が任意保険未加入だった場合は、確実に示談金を支払ってもらえるよう、示談書を公正証書にしたり、加害者に連帯保証人を立てさせたりすることが重要です。

物損事故の示談金の内訳と相場|基本的には実費を請求

物損事故の示談金相場は、数万~30万円ほどです。基本的には車の修理費や代車費用など、物損事故によって実際に生じた費用の実費が示談金となります。

ただし、物損事故の示談金相場は車の損壊の程度や代車の有無などによっても変わってきます。

物損事故の示談金の基本的な内訳である以下の費目について、相場の考え方や注意点を見ていきましょう。

物損事故の示談金

示談金の内訳
自動車の損害車の修理費/買い替え費
代車費用
車の修理中の交通費
評価損(格落ち)
休車損害
自動車以外の損害その他の物的損害の修理費や弁償代
慰謝料※
休業損害※

※ 物損事故で極めて例外的に認められる場合

車の修理費/買い替え費

物損事故で車が壊れたら、「車の修理費」や「買い替え費」を加害者側に請求できます。

車が修理できる場合は、買い替え費ではなく修理費を請求するのが原則です。
修理費については「この修理は事故によって必要になったものではないのではないか」などと疑われる可能性があるので、修理前に見積書を加害者側に確認してもらってください。

修理費が買い替え費よりも高額になったり、物理的に修理がむずかしかったりする場合は、買い替え費を請求しましょう。

修理費と買い替え費の違い

修理費修理できる場合は原則として修理費を請求する
基本的には実費を請求できる
買い替え費修理費より買い替え費の方が安い場合や、物理的に修理がむずかしい場合に請求する
買い替え費を限度額として請求できる

なお、買い替え費といっても、単純に買い替えにかかった金額を請求できるわけではありません。

壊れた車と同種・同程度・同価格の車を買い替え費の上限とし、「買い替え差額+買い替え諸費用」を請求するのが基本です。

車の買い替え費の内訳

  • 買い替え差額
    • 事故当時の車の時価-事故車の売却金
  • 買い替え諸費用
    • 登録費用
    • 車庫証明費用
    • 廃車費用
    • リサイクル費用
    • 自動車取得税
    • ディーラーに支払う手数料

つまり、事故車を売却しても回収しきれなかった赤字分と、新たに車を購入するにあたって必要になる諸費用が、買い替え費として支払われるということです。

代車費用

車の修理中に代車を借りた場合、「代車費用」を加害者側に請求できます。代車を借りる必要性・相当性があり、実際に代車を使用したことが前提条件です。

個別の事情で異なりますが、基本的には修理の場合で1~2週間程度、買い替えの場合で1ヶ月程度の代車費用が認められるでしょう。

なお、以下の場合はたとえ代車を借りても、代車費用を請求できなかったり一部しか請求できなかったりする可能性があります。

  • 公共交通機関で代用できる場合
  • 代車を実際に使った日数が少ない場合

代車の利用中も事故に遭う可能性はあります。代車を借りたレンタル業者などに任意保険の有無を事前に確認しておき、十分に注意して運転しましょう。

代車のガソリン代は請求不可

代車のガソリン代は加害者側に請求できません。

事故に遭わず自身の車を運転し続けてた場合でもガソリン代は生じるので、事故による損害とは認められないのです。

車の修理中の交通費

車の修理中、代車を借りずに別の公共交通機関を使って移動した場合、その分の「交通費」を加害者側に請求できます。

ただし、代車費用で認められる金額が上限となる点に注意してください。

評価損(格落ち)

車に修理歴や事故歴、修理しきれない傷跡などが残った場合、車の価値に対する賠償金として「評価損(格落ち)」を加害者側に請求できます。

評価損の相場は車の修理費の10%~50%とされることが多いですが、必ずしも認められるとは限りません。

評価損が認められやすいのは、事故にあった車の市場価格がもともと高い場合です。全損の場合は評価損は請求できません。

評価損は2種類ある

評価損には「技術上の評価損」と「取引上の評価損」があり、それぞれで請求の認められやすさが違います。

2つの評価損

内容
技術上の評価損車の性能・機能・外観に修理できない損傷が残って価値が下がること
一定程度の請求が認められる傾向にある
取引上の評価損たとえ車の性能や機能が修理で回復しても、事故歴・修理歴があることで取引上の価値が下がること
原則的に認められにくい

いずれにしても、示談交渉で評価損を請求すると加害者側と揉める可能性が高いです。事前に弁護士に相談し、必要であれば交渉時に弁護士を立てることをおすすめします。

休車損害

車を修理に出すことで営業できなくなった場合、その損害を補償するものとして「休車損害」を加害者側に請求できます。

営業車やタクシーなど、営業のために不可欠な車を修理に出した場合に請求可能です。
休車損害は、以下の式で計算されます。

休車損害の計算式

(1日当たりの平均売上額-経費)×休業日数

ただし、他の車を代用して営業ができた場合、休車損害は請求できません。

その他の物的損害の修理費や弁償代

自動車以外にも、物損事故によって壊れた物がある場合は、その「修理費や弁償代」を加害者側に請求できます。

物損事故ではペットの被害も物損被害と考えられるので、ペットの治療費なども請求可能です。

慰謝料や休業損害は原則請求不可|例外もある

慰謝料や休業損害は、物損事故の場合は原則として請求できません。
物損事故は「物的被害のみで身体的被害は生じていない交通事故」ですが、慰謝料や休業損害は「身体的被害によって生じる損害」だからです。

  • 慰謝料:交通事故による精神的苦痛を補償するもの
  • 休業損害:交通事故による治療のために休業し、減ってしまった収入を補償するもの

たとえば、物損事故でも「愛車が壊れた」「事故時に付けていた大切な時計が壊れた」など精神的苦痛が生じることはあります。

しかし、こうした精神的苦痛は壊れた物の修理費・弁償代によって補償されると考えられます。よって、物損事故では原則として慰謝料は請求できないのです。

ただし、極めて例外的ではあるものの、慰謝料や休業損害を請求できる場合もあるので解説します。

物損事故で慰謝料が認められる例外

物損事故では、「ペットに重大な被害が生じた」「墓石が損壊した」などの理由で例外的に慰謝料が認められた事例があります。

他にも物損事故で慰謝料が認められた事例を挙げると、以下のとおりです。

  • 自身で制作した芸術作品が損壊した
  • 家屋がひどく損壊した
    など

物損事故で慰謝料が認められるケースについて詳しくは、関連記事『物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法』を確認してみてください。

物損事故で休業損害が認められる例外

「物損事故として警察に届け出ているが、実際にはケガをしており仕事を休んだ」という場合は、休業損害が認められる可能性があります。

ただし、加害者側の任意保険会社にケガの存在を認めてもらう必要があります。

「警察で物損事故として処理されているのだから、ケガはないはずだ」などとして休業損害を支払ってもらえない可能性もあるので、ケガをしているなら人身事故として届け出直したほうが確実です。

一度物損事故として届け出た事故でも、あとから人身事故として届け出直すことは可能です。

ただし、届け出直した時点で事故から時間が経ちすぎていると、事故とケガとの関連性があいまいになり人身事故に切替えられない場合があります。

関連記事『物損から人身への切り替え方法と手続き期限!切り替えるべき理由もわかる』を参考に、早めに切り替えて続きをしてください。

人身事故に切り替えると慰謝料なども請求可能

物損事故を人身事故に切り替えると、休業損害だけでなく慰謝料や治療費なども請求できるようになります。示談金額は大幅に増えるでしょう。

慰謝料や治療費も、加害者側にケガの存在を認めてもらえれば物損事故として届け出たままでも請求できます。

しかし、物損事故のままだとケガの存在を求めてもらえない可能性があるため、人身事故への切り替え手続きをしてください。

人身事故に切り替えるなら弁護士への相談も検討を

先述の通り、物損事故を人身事故に切り替えると、休業損害・慰謝料・治療費なども請求できるようになります。

しかし、示談金の内訳が増え、示談金額が上がることで、加害者側はより厳しい態度で示談交渉に臨んでくるようになる可能性が高いです。

相場より低い示談金額で合意せざるを得なくなる可能性もあるので、人身事故に切り替える場合は弁護士への相談もご検討ください。

アトム法律事務所では、慰謝料増額の可能性について弁護士による無料相談を実施中です。詳しくは「交通事故の無料相談」ページをご覧ください。

物損事故の示談交渉・示談金の注意点

物損事故の示談交渉や示談金については、以下の点に注意しましょう。

  • 物損事故の示談は開始が早い
  • 過失割合で示談金が減額されることがある
  • 示談交渉の相手は基本的にプロ
  • 物損事故の示談金請求の時効は短い

それぞれについて解説します。

物損事故の示談は開始が早い|準備期間が短い

物損事故の示談は、車の修理費や代車費用など事故による損害の金額がすべてわかってから始められます。目安としては事故から1ヶ月程度となるでしょう。

一方、人身事故の示談は治療後、もしくは治療後の後遺障害認定終了後から始められます。

例えばむちうちの治療は平均で3ヶ月程度と言われているため、物損事故の示談は基本的に人身事故より早く始められるといえるでしょう。

示談交渉の準備・対策をする期間がそれだけ短いということでもあるので、弁護士への相談も視野に入れながら、示談金額・過失割合の算定や交渉テクニックの確認など、早めに準備に取り掛かかることが重要です。

参考になる記事

交通事故の示談テクニック8つ

過失割合で示談金が減額されることがある

過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるかを割合で示したものです。

過失割合は事故発生時の状況をもとに算定され、被害者側にも過失割合が付くとその割合分、受け取れる示談金が減額されます(過失相殺)。

たとえば、示談金が本来100万円だったとしても、被害者側に2割の過失割合が付いていると、実際に受け取れる金額は100万円から2割を引いた80万円になるのです。

加害者側は過失相殺を狙って被害者側の過失割合を多めに見積もっていることがあります。
提示された過失割合は鵜呑みにせず、事前に正しい過失割合を把握したうえで加害者側としっかり交渉しましょう。

物損事故の過失割合はどれくらい?

以下は、物損事故の過失割合の例です。「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

過失割合の例

  • 追突事故
    追突車:被追突車=100:0
  • 交差点の出会いがしらでの直進車同士の事故
    左方車:右方車=40:60
  • 交差点での直進車と右折車の事故
    直進車:右折車=20:80
  • 道路外からの左折での進入車:直進車
    進入車:直進車=80:20

参考:「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)

ただし、過失割合は事故の細かい事情まで考慮して決めらるため、必ずしも上記のとおりにはなりません。

過失割合の詳しい決め方・例は『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』で解説していますが、自身の事案に即した厳密な過失割合は弁護士に確認することをおすすめします。

示談交渉の相手は基本的にプロ|自分で交渉は難しい

物損事故の示談交渉では、加害者が加入する任意保険の担当者が相手となることが多いです。

任意保険の担当者は日々さまざまな交通事故被害者・弁護士と示談交渉をしているプロです。

豊富な経験の中で培った交渉スキルを駆使して、少しでも被害者側の過失割合を大きく、示談金を少なくしようと交渉してくることが考えられます。

被害者側がいくら知識を身につけて交渉に臨んでも、知識・経験の差から交渉を有利に運ぶのは難しいと言わざるを得ません。被害者側も、示談交渉では弁護士や自身の保険担当者などプロを立てることがポイントです。

なお、任意保険に入っていれば、自身の保険会社に示談交渉を任せられます。ただし、自身の過失が0の場合は保険担当者に示談交渉を頼めません。

物損事故の示談金請求の時効は短い

交通事故の被害者には加害者に対して損害賠償請求する権利(損害賠償請求権)がありますが、この権利は時効が過ぎると消滅してしまいます。

物損事故の場合、時効が成立するのは事故翌日から3年後です。

とくに滞りなく交渉が進めば、時効前に示談が成立することが多いです。

しかし、待っていてもなかなか示談交渉が始まらない、交渉が行き詰まって進まないという場合は、弁護士に相談するなどして時効がくる前に示談が成立するようにしてください。

物損事故の示談で弁護士に相談すべきケース

物損事故の示談で弁護士に相談すべきケースとしては、以下の3つが挙げられます。

  • もらい事故など自分で示談交渉が必要な場合
  • 過失割合でもめている場合
  • 人身事故への切り替えが必要な場合

各ケースについて見ていきましょう。

(1)もらい事故など自分で示談交渉が必要な場合

交通事故の示談交渉は、自身の加入する任意保険の担当者に任せることができます。
これを「示談代行サービス」といいます。

しかし、追突事故などの「もらい事故」で被害者側の過失が0の場合は、示談代行サービスを利用できません。
保険会社が「過失割合0の被保険者の代理人」として示談交渉をすることは、非弁行為として弁護士法で禁止されているのです。

よって、被害者側の過失が0の場合には、被害者が自分で示談交渉に対応する必要があります。

しかし、多くの場合で交渉相手となる加害者側の任意保険会社は、示談交渉経験も専門知識も豊富であり、被害者側は不利であると言わざるを得ません。

加害者側の任意保険会社との示談交渉に不安がある場合や、交渉がうまく進まない場合は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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(2)過失割合でもめている場合

物損事故の示談金は領収書などで疑いなく金額を証明できる費目が多いです。評価損や代車費用などでは金額や請求可否についてもめる場合もありますが、過失割合についてもめる可能性も高いです。

  • 示談金額
    物損事故の場合は、領収書などで金額が証明できる費目がほとんどなので、交渉の余地がないことが多い。
  • 過失割合
    明確な答えはなく、最終的に示談交渉次第となる。
    そのため、少しでも支払う示談金額を減らしたい加害者側にとっては重要な交渉ポイントとなる。

加害者側が提示してくる過失割合は、被害者側のものが多く見積もられていることがあります。

そのまま受け入れてしまうと不当に大幅に示談金が減額されてしまうので、必ず被害者側でも過失割合を算定し、適切な内容になるよう交渉しましょう。

過失割合は過去の判例や専門知識を踏まえて算定していく必要があるので、被害者自身で算定するのではなく、弁護士に相談してみることをおすすめします。

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(3)人身事故への切り替えが必要な場合

事故によってケガをしており、物損事故を人身事故に切替える場合も、弁護士に相談することがおすすめです。

人身事故の場合、物損事故で請求できる費目に加え、慰謝料・休業損害・逸失利益なども請求できます。

すると、以下の点から加害者側と示談交渉でもめやすくなるのです。

  • これらの費目は計算式を工夫することで低額にしやすいため、加害者側は低めの金額を提示してくる
  • これらの金額は示談金の中でも高額になりやすいため、加害者側の交渉態度がシビアになりやすい

被害者自身の交渉でも、示談金を多少増額させることはできます。しかし、増額の余地を残さないようにするには弁護士を立てることが重要です。

自力で最大限の増額は難しい?

自力で示談交渉をして示談金を最大限に増額させることは、以下の点から難しいと言わざるを得ません。

  • 示談交渉の経験や示談金に関する知識は、加害者側の保険会社の方が圧倒的に豊富
  • 加害者側の保険会社は社内の方針として、被害者が交渉にあたる場合と弁護士が出てきた場合とで許容額に差をつけていることがある

もらい事故でなければ、示談交渉を自身の保険担当者に任せることも可能です。しかし、その場合でも、以下の点から最大限の示談金増額は難しいでしょう。

  • 保険会社同士での交渉となるため、これまで・これからの関係性を考えて交渉が甘くなる場合がある
  • 保険担当者は交渉のプロではあるが、「弁護士」という資格を持っているわけではないので、弁護士が主張するような最大限の金額を主張しても相手方に認めてもらえない

こうした点から考えても、やはり最大限の示談金額を得るには交渉時に弁護士を立てることが重要です。

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まとめ

物損事故では、壊れた車や物の修理費・代車費用・評価損などを中心とする費目が請求できます。

人身事故に比べると、物損事故では領収書などで明確に確認できる費目が多い分、示談金額をめぐって加害者側と争いになることは少ないです。しかし、評価損や代車費用のような比較的もめやすい費目もありますし、示談金額に影響する過失割合についてはもめる可能性もあります。

また、事故でケガをしていて人身扱いに変更する場合は、高額かつもめやすい費目が示談金に加わるため、示談交渉が難航するリスクが出てきます。

過失割合でもめた場合や人身扱いに変更する場合などは特に、弁護士に相談・依頼してみることを検討しましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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