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物損事故で慰謝料がもらえた事例と注意点を解説|原則と例外に注意しよう

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2020年4月1日改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

人が死傷した交通事故を人身事故と呼ぶのに対して、人が死傷せずに物が損傷した事故を物損事故といいます。

人身事故の場合は、入通院が必要になったり後遺障害が残った場合などに慰謝料請求が認められますが、物損事故の場合だと慰謝料は認められるのでしょうか?

実は、物損事故の場合は慰謝料が認められるのは特別なケースに限られ、原則として慰謝料は認められません。物損事故で一般に請求できるのは、車の修理費用などの財産的な損害に限られます。

そこで今回は、物損事故で慰謝料がもらえた例外的な事例や、物損事故で請求できる損害賠償の項目などを解説します。

物損事故とは

物損事故の慰謝料について考えるために、まずどのような交通事故が物損事故に該当するのかを知っておきましょう。

物損事故とは、事故によって人が負傷したり亡くなったりせずに、物が損傷した事故のことです。

物損事故の対象となる物には様々な種類がありますが、代表的な例として以下のものがあります。

  • 事故の当事者が運転していた車
  • 事故にあった車に搭載されていた荷物
  • 被害者が搭乗していた二輪車、荷物、持ち物
  • 車が衝突した信号機、ガードレール、家屋などの建造物
  • 事故で死傷した犬や猫などのペット

注意点として、物が損壊したとしても、それだけでなく人が死傷していれば、物損事故ではなく人身事故に該当します。物損事故になるのは、人が死傷せずに物だけが損壊した場合に限られます。

物損事故は原則として慰謝料が発生しない

物損事故の場合は、原則として慰謝料は発生しません。その理由はなんでしょうか?

そもそも交通事故における慰謝料とは、被害者が交通事故によって被った精神的な苦痛を慰撫するために支払われる金銭です。

この点、人が負傷せずに物が損壊しただけの物損事故の場合は、財産的な損害が填補されれば精神的な苦痛も慰撫されると考えられています。

大切な物やペットにも原則として慰謝料は発生しない

ここで、一つの疑問が生じるかもしれません。物が壊れたとしても、それが被害者にとって大切なものであれば、大きな精神的苦痛を被ることから慰謝料に値するのではないかと。

ところが、被害者にとって大切な物が壊れてしまった場合でも、物損事故において慰謝料は発生しないのが原則です。

たとえば、物損事故を起こされて長年大切にしてきた愛車を壊された場合でも、それに対する慰謝料は発生しません。損壊した車を修理するための修理代や、買い換えるための時価相当額などを請求できるのみです。

犬や猫などのペットは、法的には物の一種として捉えられています。そのため、交通事故によって犬や猫が死傷した場合には、人身事故ではなく物損事故に該当します。

物損事故によって大切なペットが亡くなってしまった場合、被害者は大きな苦痛を感じることから慰謝料の対象になると思われるかもしれません。

ところが、大切にしていた物を壊された場合に慰謝料が発生しないのと同様に、物損事故でペットが亡くなった場合にも、原則として慰謝料は発生しません。

まとめると、物損事故の場合は慰謝料が発生しないのが原則です。そのため、事故で大切な物が損壊したりペットが亡くなったりしても、原則として慰謝料は請求できないということです。

物損事故で慰謝料がもらえた事例

物損事故の場合は原則として慰謝料は発生しませんが、例外として、物損事故でも慰謝料が認められた過去の裁判例は存在します。

物損事故で慰謝料が認められた代表的な事例としては、長年家族のように大切にしてきたペットが亡くなったケースと、自動車が民家に飛び込んできたケースの2種類があります。

事故によって単に物が損壊しただけでなく、家族同然の存在が亡くなったり、家屋が損壊してそれまでの平穏な生活を崩されるなど、事故によって特別な損害を受けたと認められる事情がある場合に、例外として慰謝料が認められたと考えられます。

ただし、これらは特殊な事情にもとづくケースであり、あくまで個別具体的な状況のもとで慰謝料が認められた点には注意が必要です。

事故でペットが亡くなったり、家屋を破壊されたりした場合に、必ず慰謝料が認められるわけではない点に注意しましょう。

物損事故の場合は原則として慰謝料は請求できない、という原則を知っておくことが重要です。

物損事故で請求できる損害賠償の項目

物損事故で原則として慰謝料が請求できないとすると、「なら、物損事故の場合はどんな損害を相手に請求できるんだ」と思われることでしょう。

そこで、物損事故の場合に加害者に請求できる、代表的な損害賠償の項目を解説します。

  • 車の修理費用
    交通事故で損傷してしまった車を修理するための費用です。一般的に請求できる金額は、実際に修理にかかるであろう費用の見積額になります。
    車の損傷が激しく修理が不可能な場合、いわゆる全損として車を買い換える費用を請求することができます。請求できる買い換え費用の目安は、事故にあう前の車の評価額が基準です。
  • 格落ち損
    格落ち損とは、事故によって車が損傷したり事故車扱いになったりすることで、その車両の価値が下がってしまうことによる損害です。
    格落ち損は全ての車に認められるわけではありません。一般に格落ち損が認められやすいケースは、比較的新しい車か高級外車の場合です。
    格落ち損が認められるかどうかは、初年度登録から経過した年数、走行距離、事故による損傷部位、購入時の価格などの要素を総合的に考慮して判断されます。
  • 代車の費用
    車を修理に出している期間や、新車が納入されるまでの間など、代車が必要な場合はその費用を請求することができます。代車の使用が認められる期間は、ケースにもよりますが2週間〜1か月程度が目安です。
    請求できる代車の価格は、事故で損壊した車と同クラスの車両のレンタル料が目安になります。ただし、高級外車など特別に高価な車が損壊した場合は、必ずしも同ランクの費用が認められるとは限らず、国産の高級車のレンタル料に限られるのが一般的です。
  • 休車損害
    タクシーや運送会社など、車自体を業務に使用している会社の車が交通事故にあい、その車で営業ができなくなった場合は、その分の損害を休車損害として請求することができます。
    請求できる金額の目安は、その車が事故にあわなければ得られたであろう利益から、ガソリン代などの経費を差し引いた金額です。
    ただし、事故にあった車とは別に普段使用していない遊休車が存在し、その車を使って営業ができた場合は、損害が発生していないので休車損害を請求することはできません。
  • 損傷した物の費用
    車以外にも、物損事故によって損傷した物の修理費用や、時価相当の賠償費用を請求することができます。
    対象となる物は設備、建物、荷物、ペットなどです。なお、ペットが負傷した場合は治療費も請求の対象です。

まとめ

人が死傷せず、車や荷物などの物だけが損傷した物損事故の場合、慰謝料請求は原則として認められません。

長年大切にしてきたペットが亡くなった場合や、車が突っ込んできて家屋が損傷した場合などに慰謝料が認められた事例がありますが、あくまで個別具体的な事情のもとで認められた特別なケースである点に注意しましょう。

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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