交通事故の過失割合とは?決め方と示談のコツ!事故パターン別の過失割合

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交通事故の過失割合

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故が起きると、事故の当事者双方にどのくらいの交通違反があったのか、どの程度の不注意があったのかなど、事故原因となった責任の大きさが判断されます。この責任の大きさを数値で表したのが過失割合です。

「過失割合はこのくらいが妥当です」
「過失割合に変更はありません」

加害者側からこのように言われ、納得できていないのに言われたままの過失割合で話し合いを進めようとしていませんか?
過失割合を何となく決めてしまうと、「手にできる損害賠償金の金額が減る」可能性が高くなってしまいます。

この記事では、過失割合の基礎知識や交渉のコツを弁護士が解説します。示談交渉で失敗しないために、過失割合に関する知識を身に付けていきましょう。

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岡野武志弁護士

交通事故の過失割合とは?

まずは、過失割合とはどういうものなのかといった基本的な事柄や、過失割合がどのように損害賠償金に影響するのかを解説していきます。

過失割合は事故の責任を割合で表したもの

過失割合とは、交通事故の加害者と被害者にそれぞれどのくらい事故の責任があるかを表す数値のことです。

被害者にも過失割合がついた場合、損害を公平に分担するために、損害賠償金から被害者の過失割合分が差し引かれます。その根拠は民法722条2項です。

第七百二十二条
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

民法722条2項

過失割合は、9対1、8対2、7対3といったように数値で表現されます。

過失割合を決める際は、過去の判例を参照して「基本の過失割合」を選定し、事故個別の要素を反映する「修正要素」を加えて修正しながら決定します。過失割合の具体的な決め方は、後ほど詳しく解説します。

過失相殺によって受け取れる損害賠償金が減額される

交通事故では、過失割合が大きい方の当事者を事故の加害者、過失割合が小さい方の当事者を事故の被害者と呼ぶのが一般的です。

先述のとおり、少しでも過失があると認められれば、たとえ被害者でも「過失相殺」という形で過失割合に応じた責任を負うことになります。

過失相殺とは?

過失相殺とは、過失割合に応じて受け取れる損害賠償金(示談金)が減額されること

交通事故で怪我などの損害を負った場合、治療費・慰謝料・入通院慰謝料などを合計した損害賠償金を事故相手に請求可能です。
しかし、自分に過失があるのなら、損害賠償金を全額受け取ることはできません。過失割合に応じて過失相殺されてしまうのです。

過失割合の程度が大きくなればなるほど、過失相殺される金額が大きくなり、受け取れる金額は少なくなります。つまり、過失割合は最終的に受け取れる損害賠償金額を大きく左右するのです。

過失相殺がどのように影響するのか、計算例で見てみましょう。

過失相殺の計算例

AB
過失割合80%20%
損害額100万円
相手に請求できる金額80万円
(=100万円×80%)

Bの過失は2割なので、損害額100万円を過失相殺すると2割の20万円が差し引かれ、Aに請求できる金額は80万円となります。差し引かれた20万円は、Bが自己負担しなければいけません。

事故相手にも損害がある場合

事故相手にも損害がある場合、過失相殺されるだけではなく、自身の過失割合に応じて相手の損害を賠償する必要も生じます

このような場合の損害賠償金の支払い方法には、お互いが支払う金額を相殺する「相殺払い」、相殺せずにお互いに支払いあう「クロス払い」といった形があります。

相殺払いをする場合の損害賠償の例を見ていきましょう。

相手にも損害がある場合の計算例(相殺払いの場合)

AB
過失割合80%20%
損害額50万円100万円
相手に請求できる金額10万円
(=50万円×20%)
80万円
(=100万円×80%)
相殺後の金額70万円
(=80万円-10万円)

Bの過失は2割なので、Aの損害額50万円の2割にあたる10万円を負担しなければいけません。Aの過失相殺後の金額80万円から、Bの過失相殺後の金額10万円を差し引いた結果、最終的に支払ってもらえる金額は70万円に減ってしまいました。

このように、過失割合は最終的に受け取れる金額に大きく影響します。

事故パターン別の過失割合と過失割合ごとの注意点

「歩行者と自動車」、「自動車と自動車」、「バイクと自動車」、「自転車と自動車」、「歩行者と自転車」の事故パターン別に基本の過失割合をまとめました。

また、過失割合が10対0、9対1・8対2になる場合の注意点についても解説します。

事故パターン別の過失割合

事故パターン別に基本の過失割合を紹介します。代表的な事故類型をピックアップしていますので、該当の事故パターンをクリックしてみてください。

注意点

本サイトで案内する過失割合は基本的な過失割合です。実際は事故状況を個別に確認し、基本の過失割合に個別状況を反映したうえで過失割合が決められます。

なお、特定の事故類型に特化して過失割合などを解説した記事も以下にまとめました。該当するものがある場合は、あわせて確認してみてください。

過失割合10対0、9対1や8対2ごとの注意点

過失割合が10対0、9対1や8対2ごとに気を付けたい注意点を解説します。

あわせて、それぞれの過失割合に特化した関連記事も紹介していますので、参考にご覧ください。

過失割合10対0の注意点

被害者に過失が全くない過失割合10対0の事故は、一般的に「もらい事故」と呼ぶことが多いです。
被害者の過失が全くないと損害賠償金は減額されないので、とくに注意する点はないように思えます。

しかし、過失割合が10対0の場合、加害者側の保険会社が提示してくる損害賠償金の金額そのものが低額である可能性が高いのです。

過失相殺による減額がない分、加害者側の保険会社は「慰謝料をあえて少なく見積もる」「休業損害が低額になる計算方法を使う」といった方法で損害賠償金を低額にしようとしてきます。
また、増額を認められづらい傾向がある点にも注意が必要でしょう。

さらに、過失割合10対0の場合、任意保険に加入していても保険会社による示談代行サービスが利用できないので、被害者が自力で示談交渉を行わなければなりません

損害賠償金の金額に納得いかなかったり、示談交渉の対応に不安があったりする場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

過失割合10対0になるケースについては、以下の関連記事をご確認ください。加害者側から過失割合9対1や8対2などと言われ、10対0に変更できないかとお考えの方にも、参考になる内容を記載しています。

過失割合9対1・8対2の注意点

過失割合9対1は被害者に1割の過失、過失割合8対2は被害者に2割の過失がある事故のことです。

1割や2割程度の過失なら大した減額にならないようにも思えますが、損害額が大きければ1割や2割が与える影響も大きくなります。

示談交渉を通して、過失割合9対1や8対2から10対0に変更できる可能性もありますが、過失割合を主張するには具体的な根拠を示さねばなりません。

根拠を示せる資料の収集や、その資料を使って法的に過失割合を主張していきたいなら、弁護士に相談してみてください。

ただし、そもそもの損害額が少ないような場合、弁護士に依頼することで返って費用倒れになってしまう可能性も検討せねばなりません。費用倒れの可能性については、過失割合とあわせて弁護士に確認するようにしてください。

過失割合を9対0とすることもできる

過失割合を9対0や8対0にして、交通事故の損害賠償問題を解決する方法のことを片側賠償と言います。片側賠償は、事故の当事者双方に過失があるものの、一方のみが損害賠償を行うことです。

片側賠償は、示談交渉で当事者双方の主張がまとまらなかった時の折衷案として用いられる方法と言えます。
片側賠償を認めると、加害者側に対して損害賠償金を支払う必要はありませんが、被害者が受け取れる金額は減ることは理解しておきましょう。

片側賠償については、『交通事故の過失割合9対0とは?過失相殺の計算例やメリット・デメリットもご紹介』で詳しく解説しています。

過失割合の決め方|誰がどのように決める?

損害賠償額に影響を与える過失割合は、どのように決定されるのか解説していきます。

加害者側の保険会社から提示された過失割合が正しいのか判断するためにも、過失割合の決め方を知っておくことは重要です。

過失割合は当事者同士の話し合いによって決まる

過失割合の決定に警察は関わりません。事故の当事者同士の話し合いによって決められるのが通常です。

なお、当事者が立てた代理人同士が話し合うこともあります。事故の加害者が任意保険に入っている場合は、加害者側の保険会社が代理人となることがほとんどでしょう。
また、被害者側も保険会社や弁護士を代理人とすることが可能です。

過失割合や損害賠償金(示談金)といった賠償問題について、話し合いで解決しようとする手続きのことを「示談」といいます。

示談が成立すると、あとからやり直すことは基本的にできません。過失割合など、示談の内容に納得していない場合は安易に合意しないようにしましょう。

示談をするうえで注意すべきポイントや示談の進め方については、関連記事『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点』が参考になります。

通常は加害者側の保険会社の提示で話し合いがはじまる

示談交渉は、通常は加害者側の保険会社から過失割合が提示されることではじまります。

このとき、被害者側の過失割合を多めに見積もられていることは多いです。

保険会社からの提示は、過失割合の最終的な決定ではありません。「保険会社が言うのだから間違いないだろう」と鵜呑みにせず、被害者自身でも妥当な過失割合を調べ、交渉していく必要があります。

それでは、妥当な過失割合はどのようにすればわかるのでしょうか。次節からは、過失割合の詳しい決め方を紹介していきます。

過失割合を決める手順

過失割合が話し合いで決まると言っても、何の基準もなくただやみくもに話し合うわけではありません。過失割合は、過去の交通事故に関する裁判例を基準にし、実際の事故状況を照らし合わせることで決められます。

過失割合は、以下のような手順で導き出されます。

  1. 事故状況を明確にする
  2. 過去の判例を参照し、「基本の過失割合」を選ぶ
  3. 「修正要素」を加え、最終的な過失割合を決める

具体的にどのようなことをすればよいのか、確認していきましょう。

(1)事故状況を明確にする

まずは、事故状況について当事者双方の認識を確認し、認識のすり合わせを行っていくことで、事故状況を明確にしていきます。
確認内容は以下のようなものとなるでしょう。

  • 信号の色がどうなっていたのか
  • 一時停止を守っていたのか
  • 右左折の合図を出していたのか

認識が食い違っている部分については、証拠をもとにして確認し、事故状況を明確にしていきます。

(2)過去の判例を参照し「基本の過失割合」を選ぶ

明確となった事故状況について、過去の判例から類似する事故類型を選定し、「基本の過失割合」を確認します。

たとえば、「信号機なしの交差点における直進車と右折車の事故(自動車同士)」の場合、過去の判例を参照すると、基本の過失割合は「直進車:右折車=20:80」になります。

過去の判例を参照する際は、以下のような書籍を参考にするとよいでしょう。

過失割合の参照元

  1. 別冊判例タイムズ
  2. 交通事故の赤い本

上記の書籍は3000円~5000円程度で、一般の方でも購入することが可能です。
ただし、どちらも専門書であるため、交通事故の知識が少ない場合は適切に事故類型を選定できなかったり、後述する「修正要素」を反映できなかったりすることがあるでしょう。

その場合、適切な過失割合にならないおそれもあるので、弁護士の力を借りることも検討してみてください。

(2)「修正要素」を加えて最終的な過失割合を決める

事故類型ごとに定められた「基本の過失割合」を選定したら、事故個別の事情を反映するための「修正要素」を加えて最終的な過失割合が決まります

同じようなパターンの事故と言っても、さまざまな態様が考えられます。たとえば、同じ信号機なしの交差点における直進車と右折車の事故でも、どちらか片方が注意義務を怠ったまま交差点に進入していた、速度違反をしていたといった個別の事情があるでしょう。

そこで、事故個別の事情を過失割合に反映するため、「修正要素」が考慮されることになります。修正要素があれば、基本の過失割合から「+10」「+20」「-5」といった具合に加算・減算が行われるのです。

修正要素は事故の時間や場所、事故当事者の車種や運転状況などさまざまなものがあります。ここでは一例を確認しておきましょう。

修正要素の一例

  • 夜間
    日没時から日出時までの時間
  • 幹線道路
    歩車道の区別があり道路幅が広く交通量が頻繁な道路
  • 住宅街・商店街
    人の横断や通行が多い場所
  • 直前直後横断・佇立・後退
    歩行者が車両等の直前直後で横断したり、特段の事情なく立ち止まったり後退したりする
  • 急な飛び出し、ふらふら歩き
    歩行者が車両等の進路の前に急に飛び出したり、予想外にふらふら歩いたりする
  • 被害者の属性
    • 児童(6歳以上13歳未満の者)
    • 高齢者(おおむね65歳以上の者)
    • 幼児(6歳未満の者)
    • 身体障害者(車いすの者、目が見えない者、耳が聞こえない者など)
  • 著しい過失
    • わき見運転におる前方不注視
    • 携帯使用のながら運転など
  • 重過失
    以下のような状態で正常な運転が不可能など
    • 酒酔い運転
    • 居眠り運転
    • 無免許運転
    • 速度違反
    • 過労・病気・薬物

過失割合の求め方の具体例

それでは、モデルケースをもとに、実際に過失割合を導き出してみましょう。なお、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにすることとします。

たとえば、図のように駐停車中の自動車(B)に後方から走行してきた自動車(A)がぶつかった追突事故では、基本の過失割合は「A:B=100:0」になります。

過失割合10対0の修正要素例

しかし、駐停車中の自動車Bに駐停車方法が不適切といった過失があれば、基本の過失割合100:0に「-10~20」の修正要素が加えられ、最終的な過失割合は「90:10」や「80:20」になります。

参照|別冊判例タイムズ38号【157】抜粋

追突車両A駐停車車両B
基本の過失割合1000
駐停車方法の不適切-10~20+10~20

※車両は駐停車する時道路の左側に沿い、他の交通の妨害となってはいけない(道路交通法第47条1項、2項

このように、まず類似する事故類型の基本の過失割合を確認し、そこに事故類型ごとに設定された修正要素を反映することで、過失割合は調整されていくことになります。

過失割合が適正なものかどうかを判断するには、事故類型と修正要素のそれぞれが妥当であるか確認しなければなりません

過失割合を決める際の示談交渉のコツ

過失割合の求め方はわかりましたが、実際に適正な過失割合で合意するにはどのような点に気を付けて話し合いをすればよいのでしょうか。ここからは、過失割合を決める際の示談交渉のコツをお伝えしていきます。

保険会社の主張する過失割合が正しくない可能性を疑う

過失割合は本来、過去の判例に基づいて決められるべきものです。

しかし、加害者側の保険会社が主張する過失割合が、必ずしも過去の判例の基準に従って決められているわけではない点に注意しておく必要があります。

保険会社の担当者は法律の専門家ではありません。

保険会社の担当者が過失割合を決めるとき、事故状況を単純にマニュアルに当てはめて判断していることも往々にしてあります。つまり、法律を適切に解釈し、事故状況を適切に反映した過失割合を算定しているとは言い難いケースもあるのです。

過失割合を正しく判断できるのは、法律の専門家である弁護士です。交通事故案件を取り扱っている弁護士であれば、過去の判例を適切に読み解くことができますし、過去の判例に当てはまらない特殊な事故や複雑な事故にも対応できます。

過失割合については、加害者側の保険会社の主張を鵜呑みにするのではなく、一度弁護士に適切か確認してもらうことが非常に大切です。

あえて被害者側に不利な過失割合を提示されることもある

加害者側の保険会社は、あえて被害者側に不利なように見積もった過失割合を提示してくる可能性があるので注意が必要です。

そもそも、保険会社は営利企業です。交通事故の被害者に対して支払う損害賠償金は、加害者側の保険会社にとっては大きな支出となります。
そのため、保険会社は利益を上げるために、少しでも損害賠償金を減らして支出を抑えようとすることがあるのです。

したがって、過失相殺によって損害賠償金が少しでも多く減額されるよう、被害者側の過失割合をあえて多く見積もるといったケースが散見されることになります。

たとえ公平な過失割合だと言われても鵜呑みは危険

交通事故の専門知識がなければ、不当な過失割合だったとしても、そのおかしさにさえ気づけない可能性があります

加害者側の保険会社から「過失割合が7対3で決まりました」と連絡が来た場合、以下のような反応をしてしまう被害者の方もいらっしゃるでしょう。

例1

「そのくらいの過失割合が普通なのかな」「CMを見るくらい有名な保険会社が言うことだから正確なのだろうな」と思い、保険会社の言うことを信じて疑わない

例2

被害者側の過失がそんなに高いとは思えないと反論したら、「公平な見地から算出した過失割合です」と保険会社に言われ、「仕方がないのかな」と妥協してしまう

自身にも過失が少しあると自覚されているような被害者の方は、負い目を感じて過失割合に不服があっても強く言い出せないことがあるようです。

いずれの場合も、加害者側の保険会社が主張する過失割合がもし適正な過失割合でなかったとしたら、本来得られるはずだった損害賠償額よりも低い金額になってしまう可能性が高くなってしまいます。

加害者側の保険会社が主張する過失割合に不満や疑問がある場合は、弁護士に一度相談し、法的に正しい過失割合を確認してみてください。

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岡野武志弁護士

事故当時の状況を示す証拠を集めておく

示談交渉において適正な過失割合を主張していくとき、ただやみくもに「7対3ではなく9対1にすべきだ」と伝えても認められることは難しいです。

示談交渉で適切な過失割合が認められるには、その過失割合を証明するような、事故当時の状況を示す証拠の有無が非常に大切になります。

事故当時の状況を示す証拠としては、主に以下のようなものがあげられます。

  • 刑事記録
    • 実況見分調書
    • 供述調書
  • 証言記録など
    • 目撃者の証言
    • ドライブレコーダー など

具体的にどのようなものか、どのように入手すればよいのかを確認していきましょう。

刑事記録|実況見分調書・供述調書

交通事故に関する刑事記録には、実況見分調書、供述調書といったものがあります。

このような刑事記録は、警察・検察といった捜査機関が作成するものです。第三者的な立場の公的機関が作成するものであるため、過失割合を主張する際に信用性の高い証拠として取り扱われます。

刑事記録は交通事故の被害者の方でも開示するよう求めることができます。具体的には、以下のような手順で入手することが可能です。

刑事記録の入手方法

  1. 交通事故証明書に記載の担当警察署を確認する
  2. 担当警察署で、加害者の送致日・送致先検察庁・送致番号を確認する
  3. 送致先検察庁の記録係で、送致日・送致番号を伝えて刑事記録の謄写を依頼する

もっとも、刑事記録を入手しただけでは過失割合の証明には不十分です。刑事記録のどの部分が自身の主張する過失割合を立証するのか、論理立てて説明しなければなりません。交通事故や法律の専門知識がない場合、困難に感じる方も多いです。

弁護士に依頼すれば、刑事記録の取り付けだけではなく、証拠としてどのように活用するかの検討も任せられます。

証言記録など|目撃者の証言、ドライブレコーダー

残念ながら、刑事記録だけでは過失割合の立証に不十分なこともあります。

このような場合は、目撃証言や防犯カメラの映像、事故現場に居合わせた車両のドライブレコーダーの映像などを収集し、過失割合の立証を目指すことも可能です。

ドライブレコーダーや防犯カメラの映像が上書きされないように保存を行ったり、目撃者の連絡先を聞き出すなど、適切な収集作業を行いましょう。

その他に、事故現場付近の店舗や住民に丹念な聞き込みをすることで、新たな証拠が手に入ることもあります。

ただし、被害者自身でこのような証拠を集めようとすると、膨大な手間と時間がかかることが予想されます。
また、証拠をもとに過失割合を主張するためには、法律の専門知識も必要になるでしょう。

弁護士に依頼することで、刑事記録以外の新しい証拠がないか探すことを一任できます。

交通事故証明書は証拠にならない?

交通事故証明書は、過失割合を決めるための証拠になりません

交通事故証明書は、交通事故が発生したという事実が記された書類であり、事故の発生日時や発生場所、当事者の氏名や住所といった事故に関する基本的な情報のみが記載されています。

なお、加害者が任意保険に加入している場合、加害者側の保険会社が交通事故証明書を入手しているので、被害者が交通事故証明書を取り付ける必要は通常ありません。

もし、被害者自身で交通事故証明書を取り付ける必要が生じた場合は、関連記事『交通事故証明書のもらい方は?後日取得やコピーの可否も解説』をお役立てください。

過失割合に不満がある場合の対処法

示談交渉で加害者側が提示してきた過失割合に不満があるが、なかなか被害者側の主張する過失割合を認めてもらえない場合、以下のような対処法をとるとよいでしょう。

対処法

  • 弁護士を味方につける
  • ADR・調停・裁判を利用する

対処法それぞれの特徴を見ていきます。

弁護士を味方につける|過失割合以外にもメリットあり

過失割合に不満がある場合の一つ目の対処法は、弁護士に依頼することです。

交通事故の示談交渉で不利にならないようにするには、交通事故の専門知識が豊富な保険会社の担当者と対等にやりあえるかどうかがポイントになってきます。

法律の専門家である弁護士に示談交渉を依頼することで、被害者自身では対応しきれない問題を解決してくれるでしょう。

弁護士に依頼した場合、以下のようなメリットを得られることが期待できます。

  • 適切な過失割合を主張できる
  • 面倒な示談交渉を任せられる
  • 慰謝料・損害賠償金が増額する

それぞれの項目について、詳しく確認していきましょう。

適切な過失割合を主張できる

加害者側が提示する過失割合を変更するよう交渉する際、過失割合に不満があるから変えてほしいと単に主張しても聞く耳を持ってくれないでしょう。

適切な過失割合で合意するためには、過失割合が正当だと証明できる客観的な証拠や、判例や証拠を読み解く法的知識、加害者側に納得させる交渉力が必要です。

この点、弁護士は法律の専門家であり、交渉ごとにも長けています。交通事故事案を扱っている弁護士なら、過失割合を示すための証拠についても精通しているでしょう。

弁護士による交渉で、実際に過失割合が変わった事例は多数あります。関連記事『交通事故の過失割合に納得いかない!過失割合変更のコツとゴネ得対策』で実例を紹介していますので、過失割合に納得がいかないときの対策とあわせてご確認ください。

面倒な示談交渉を任せられる

加害者側の保険会社と示談交渉をする場合、仕事や子育てをしている日中に何度も連絡がかかってくることがあります。

また、担当者に専門用語を多用される、高圧的な態度を取られる、不親切な回答しかしてくれないといった状況で、示談交渉をストレスに感じてしまう方も少なくありません。

弁護士に依頼すれば、示談交渉を一任してしまうことも可能です。

被害者の方は保険会社の担当者とのやりとりから解放され、仕事や子育て、怪我の治療に時間を使えるようになるのです。

もちろん、示談交渉だけではなく、証拠の収集や各種手続きも弁護士に任せられます。

慰謝料・損害賠償金が増額する

弁護士に示談交渉を任せれば、被害者自身で示談交渉するよりも、慰謝料や損害賠償金の増額が見込めます。

その理由は、「過失割合が適正になり、過失相殺の幅が減る」ことだけではありません。「慰謝料などが弁護士基準で計算される」ことも理由のひとつになります。

交通事故の慰謝料や損害賠償金は、次の3つの基準のいずれかで計算されます。3つの基準の中で、最も高額になるのが弁護士基準なのです。

慰謝料などの算定基準

  1. 自賠責基準
    自賠責保険が用いる基準。被害者に補償される最低限の金額になる。
  2. 任意保険基準
    任意保険が用いる基準。自賠責基準と同程度~やや高額な程度。
  3. 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士や裁判所が用いる基準。過去の判例をもとにしている。
慰謝料金額相場の3基準比較

示談交渉において、被害者自身が弁護士基準の金額を主張しても、加害者側の保険会社が認めることはほぼありません。「裁判をしないと認められない金額です」「弊社ではこの金額が上限です」などと反論されてしまうでしょう。

一方、弁護士が示談交渉すれば、加害者側の保険会社は弁護士基準に近い金額を認めるようになります。

なぜなら、被害者側が弁護士を立てた場合、裁判への発展が現実味を帯びてくるからです。裁判では弁護士基準の金額が認められます。また、裁判費用や判決までの時間もかかるでしょう。

そのため、弁護士が出てきたら、保険会社は示談交渉の段階で弁護士基準の金額を認めるようになるのです。

慰謝料の増額交渉を弁護士に任せたとき、どのくらいの慰謝料増額が期待できるのかを知りたい方は、以下の「慰謝料計算機」をご利用ください。

慰謝料の計算の仕組みを具体的に知りたい方には、関連記事『交通事故の慰謝料を正しく計算する方法』をお役立ていただけます。

ADR・調停・裁判を利用する

過失割合に不満がある場合の二つ目の対処法として、ADR・調停・裁判を利用する方法があります。
示談による話し合いで交通事故の損害賠償問題が解決しない場合に利用することになるでしょう。

示談・裁判・ADRの違い

ADR・調停・裁判でできることを簡単にみていきます。

ADR

ADRとは、裁判所以外の第三者が交通事故に関する法律相談や示談交渉が決裂してしまったケースの和解あっ旋手続きなどを行う機関です。

ADRの代表的なものとして、「公益財団法人 交通事故紛争処理センター」や「公益財団法人 日弁連交通事故相談センター」などがあげられます。

ADRを利用するメリットは、裁判よりも短い期間での解決が期待でき、費用も無料であることです。

ADRでは専門の相談員やセンターの弁護士が関与してあっ旋をすすめてくれますが、あくまで中立的な立場をとるので、絶対に被害者の味方になってくれると期待しない方がいいでしょう。

調停

調停とは裁判所の調停委員が事故の当事者双方の話を聞き、和解をまとめる手伝いをしてくれるものです。交通事故の被害者ご本人で調停の申し立てをすることも難しくありません。

当事者双方の都合に合わせて約1~2ヶ月に1回のペースで調停期日が行われ、問題が解決するまで続きます。

お互いに合意すれば調停成立、合意できなければ調停不成立として手続きが終わります。もっとも、合意できる見込みがなくなると調停委員会が不成立の判断をする場合もあります。

調停委員会は中立的な立場をとるため、絶対に被害者の味方になってくれると期待することはできません。調停の手続きを弁護士に任せることもできるので、調停に関して疑問がある方は弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

裁判

裁判(民事裁判)とは、法廷で交通事故の損害賠償問題を争い、裁判所によって法的な判断が出される手続きのことです。裁判に勝訴した場合、相手の合意がなくても裁判所の判断によって紛争が解決されます。

交通事故の民事裁判では、裁判所に訴状を提出してから1~2ヶ月後に第1回目の口頭弁論が行われます。その後は月1回ほどのペースで口頭弁論を重ね、裁判所が最終的な判断として判決を出す流れになるでしょう。

交通事故の裁判の流れ

裁判をする場合、示談交渉やADRなどに比べて解決までに相当長い期間がかかることや、裁判費用がかかることも覚悟しておく必要があります。

交通事故の被害者の方だけでも訴えを提起して裁判をはじめることはできますが、裁判では証拠を十分に揃えて立証していく必要があります。裁判手続きを適切に進行するには法律の知識がないと難しいと言わざるを得ません。

証拠が不十分な状態で裁判を進めた場合、敗訴してしまうリスクがあることに注意しなければなりません。

裁判になると加害者側の保険会社も弁護士を立ててくることになるので、被害者側にも味方になってくれる弁護士がついていないと不利になってしまうでしょう。

過失割合でもめやすいのはどのようなケース?

交通事故の過失割合でもめやすいのは、以下のようなケースです。

  • 損害賠償額が大きい
  • 交通事故の状況を示す証拠がない
  • 事故状況が既存のよくあるケースに当てはまらない
    (駐車場内で起きた事故、自転車事故など)

損害賠償額が大きいケースでは、加害者側が支払う金額を減らすべく、被害者側にとって不利な過失割合を主張してゆずらないことがあります。その結果、過失割合でもめてしまうことが多くなります。

また、事故状況を示す証拠がないケースや、既存のよくある事故状況に当てはまらないケースでは、どのような過失割合にすべきか主張が食い違ってしまうことが多いでしょう。

関連記事『交通事故の過失割合でもめる3パターン&対処法』では、加害者側と過失割合でもめやすいパターン別に対処法を解説しているので、こちらもご覧いただくと、より深い理解が可能です。

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(前略)いろいろ私どもにとって、最良と思われる方向性を丁寧に教えて戴きました。一人で悩んでいたところを救われた想いです。大変感謝しております。ありがとうございました。

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心配事があり連絡を入れてから直ぐに時間をとって頂き相談に乗って貰えました。思い切って電話して良かったです。

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弁護士さんに相談することは初めてで、最初はとても勇気が要りましたが、優しい対応で安心できました。ありがとうございます。(後略)

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弁護士費用の不安は弁護士費用特約で解決できる

望ましい過失割合を得たいなら、弁護士に依頼し、示談交渉を代理してもらうのが効果的です。
しかし、弁護士に依頼する場合は「弁護士費用が高くつきそうで不安」と思われる方も多いのではないでしょうか。

弁護士費用について不安があるなら、ご自身が加入されている保険に弁護士費用特約が付帯されているかを確認してみてください。

弁護士費用特約を使えば、多くの場合で300万円を上限に、保険会社が弁護士費用を負担してくれます。弁護士費用を自己負担することなく依頼できることも珍しくありません

弁護士費用特約のメリット

弁護士費用特約は、自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカードに付帯されているものも利用できることが多いです。
また、被害者自身の保険だけではなく、被害者の家族が加入している保険に付帯されているものも利用できる場合があります。

弁護士費用特約を利用しても、基本的に翌年以降の保険料が上がることはないのでご安心ください。

弁護士費用特約の概要や使い方を詳しく知りたい方は、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事をご確認ください。

被害者に過失がある場合も弁護士費用特約は利用できる?

被害者に過失が認められるケースにおいても多くの場合は利用可能ですが、被害者の過失が大きい場合には利用できない恐れがあります。
事故の発生について被害者にも過失がある場合には、利用の可否について事前に確認しておくと良いでしょう。

弁護士費用特約がない場合は?

弁護士費用特約を使えない場合でも、弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
なぜなら、弁護士費用を支払っても、弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増えるケースは多いからです。

無料相談では、依頼した場合にどのくらいの弁護士費用が必要になるのか見積もりを作成することも可能です。

弁護士が介入することで得られる金額と必要になる弁護士費用とのバランスを見て、弁護士に依頼すべき事案かどうかご案内しますので、まずは電話・LINEで気軽にお問い合わせください。

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岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。