車線変更事故の過失割合|合流地点の事故は?よくあるケースごとに解説

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車線変更の事故

自動車同士の交通事故の形態は色々ありますが、その1つが車線変更による事故です。前方車が車線変更をしようと車線を越えたところに、直進してきた後方車が突っ込んで事故になるのが典型例でしょう。

交通事故では双方の過失割合が重要になります。過失割合が高いほど自分の責任が重くなり、慰謝料などの賠償金の金額に影響してくるからです。
また、同じ四輪車同士の車線変更に伴う交通事故であっても、車線変更禁止の道路で車線変更をした、スピード違反をしていたなどの事情によって過失割合が変化します。

そこで今回は、四輪車同士の車線変更による交通事故について、前方車と後方車の過失割合をよくあるケースごとに解説していきます。

なお、ここで紹介する過失割合や修正要素は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

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一般道路における車線変更事故の過失割合

一般道における車線変更事故の基本の過失割合と修正要素を紹介します。

車線変更事故の過失割合は70対30が基本

一般道路で車線変更をした前方車(B)と後方を直進してきた後方車(A)が衝突した場合、基本の過失割合は「後方車(A):前方車(B)=30%:70%」です。

進路変更は事故を起こす可能性がある行為なので、道路交通法はみだりに進路変更してはならない旨を規定しています。
また、進路変更後の進路の後続車について、速度または方向を急に変更させるおそれがあるときは、進路変更をしてはならない旨も規定しています。

つまり、進路変更をする際には周囲に十分に注意し、特に後続車の進行の妨げにならないようにするという注意義務を法律では課しているのです。それにも関わらず進路変更をした結果、後続車と衝突してしまったのなら、前方車に重い責任として70%の過失が認定されます。

一方、追突した後続の車両にも30%の過失が課されています。
これは、十分に前方に注意していれば先行者の車線変更に対応できたにも関わらず、十分に前方に注意していなかったことについて、過失ありとされるのです。

もっとも、事故ごとに生じる個別の事情によって、過失割合は70対30から変動します。

AB
基本の過失割合3070
Aがゼブラゾーン進行+10~20-10~20
Aが15km以上の速度違反+10-10
Aが30km以上の速度違反+20-20
Aのその他の著しい過失+10-10
Aのその他の重過失+20-20
進路変更禁止場所-20+20
Bの合図なし-20+20
Aの初心者マーク等-10+10
Bのその他の著しい過失-10+10
Bのその他の重過失-20+20

こういった事情のことを「修正要素」と呼びます。各修正要素の内容については後述します。

駐停車中の車に衝突したら100対0

車線変更により駐停車中の車に衝突した場合、基本の過失割合は「車線変更車:駐停車の車=100%:0%」となります。

駐停車している車は衝突を回避することが通常不可能であるため、過失が認定されないためです。

このような一方の過失割合が存在しない場合における事故には、独自の問題が生じることがあります。詳しく知りたい方は『交通事故で過失割合が10対0になる場合とは?過失割合を減らす方法も解説』の記事をご覧ください。

修正要素(1)ウインカーを出さず車線変更

車線変更をした前方車(B)がきちんとウインカーを出さなかったために、後方を直進してきた後方車(A)と衝突した場合、過失割合は「後方車(A):前方車(B)=10%:90%」に修正されます。

道路交通法令では、車線変更をする3秒前にウインカーを出さなければならないと定められています。にも関わらず、きちんとウインカーを出さずに車線変更をして事故を起こしたことに対して、より重い責任が課されるのです。

一方、車線変更した自動車がウインカーを出さなかったとしても、後方車の過失は0にはなりません。車線変更車がウインカーをきちんと操作するとは限らないため、それも含めて後方車は前方車にきちんと注意しなければならないということです。

修正要素(2)ゼブラゾーンを走行した

後方を直進してきた後方車(A)がゼブラゾーンを走行していたために、車線変更をした前方車(B)と衝突した場合、過失割合は10~20%変動して「後方車(A):前方車(B)=40%:60%~50%:50%」に修正されます。

ゼブラゾーンとは、車両が安全かつ円滑に走行できるように誘導するための区画線で、正式名称は導流帯といいます。道路上にしましま模様で描かれていることから、通称ゼブラゾーンと呼ばれているのです。

ゼブラゾーンの走行自体は違法ではなく、走行したことによる罰則もありません。
ただし、ゼブラゾーンを走行しないように警察が指導する場合があること、ゼブラゾーンを他の車両が走行することは一般に予測し難いことなどから、ゼブラゾーンを進行していた車に過失が上乗せされることがあるのです

ゼブラゾーンで発生した事故に関する過失割合や事故後の対応については『ゼブラゾーンでの事故の過失割合は?交通ルールや事故被害者の対応もわかる』の記事もおすすめです。

修正要素(3)車線変更禁止場所で車線変更

車線変更が禁止されている場所で前方車(B)が車線変更して、後方を直進してきた後方車(A)と衝突した場合、過失割合は「後方車(A):前方車(B)=10%:90%」に修正されます。

ラインが黄色の実線の道路は、隣の車線に移っての追い越しが禁止されているため、車線変更が禁止されている道路です。車線変更が禁止されている道路をまたいで事故になった場合、その車両に対して20%の過失が追加されます。

禁止されている区間で車線変更をすることは、事故になるかどうかに関わらずそもそも法律に違反しているため、その分だけ重い責任が認められるということです。

修正要素(4)スピード違反があった

自動車が時速15km以上の速度超過をしていれば過失割合が10%、時速30km以上の速度超過をしていればより重い責任として過失割合が20%程度加算されます。

これは、車線変更をした前方車にも、後方を直進してきた後方車にも該当する可能性のある修正要素です。

たとえば、後方を直進してきた後方車(A)が15km以上の速度超過をしたため、車線変更した前方車(B)と衝突した場合、過失割合は「後方車(A):前方車(B)=40%:60%」に修正されます。30km以上の速度超過だった場合の過失割合は「後方車(A):前方車(B)=50%:50%」です。

一方、15km以上も速度超過して車線変更をした前方車(B)が、後方を直進してきた後方車(A)と衝突した場合、過失割合は「後方車(A):前方車(B)=20%:80%」に修正されます。30km以上の速度超過だった場合の過失割合は「後方車(A):前方車(B)=90%:10%」です。

まとめ

違反車速度超過
15km以上
速度超過
30km以上
後方車(A)A:B=40%:60%A:B=50%:50%
前方車(B)A:B=20%:80%A:B=90%:10%

車線変更はそれだけでも事故になる危険を伴う行為ですが、規制されている以上のスピードを出していれば、事故が発生する危険性がさらに高まるでしょう。
また、法定速度であれば相手の車両に気づいてブレーキを操作すれば事故を起こさずに停止できたにも関わらず、速度超過によってブレーキが間に合わずに事故につながってしまう可能性もあります。

そのため、車線変更においては前方車か後方車かに関わらず、法定速度をオーバーした車両については過失割合が増加するペナルティが課されるのです。

スピード違反を伴う衝突事故を起こした場合、過失割合が加重されて責任が重くなるうえに、スピード違反について罰則の対象になる場合もあるため、十分に注意したいところです。

スピード違反で発生した事故に関する過失割合や事故後の対応については『スピード違反による事故の過失割合|故意の有無や死亡事故かどうかは関係ある?』の記事で詳しく解説しています。

修正要素(5)初心者マークを付けていた

初心者マークが付いている後方を直進してきた後方車(A)が、車線変更をした前方車(B)と衝突した場合、後方車の過失が10%軽減されて過失割合は「後方車(A):前方車(B)=20%:80%」に修正されます。

初心者マークは、運転免許を取得してから1年未満の場合に、車の前面と後面に取り付けなければならないことが道路交通法で義務付けられているのです。

初心者マークは初心者ドライバーには義務として課されている反面、他のドライバーにとっては、初心者マークが付いていれば十分に注意しなければならないことがすぐに把握できます。

後続直進車が初心者マークの付いた車である場合の車線変更には十分注意しなければならないにも関わらず、車線変更によって事故を起こしたことから、基本よりも重い過失割合が前方車に課されるということです。

修正要素(6)著しい過失や重過失があった

車線変更事故を起こした車に著しい過失や重過失が認められる場合には、過失割合が10%または20%加算されます。著しい過失や重過失とは、具体的には以下のような内容です。

著しい過失(10%加算)

  • 脇見運転
  • ハンドルやブレーキを不適切に操作した
  • 携帯電話の使用
  • 酒気帯び運転

重過失(20%加算)

  • 酒酔い運転
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • 薬物の使用

これは、車線変更をした前方車にも、後方を直進してきた後方車にも該当する可能性のある修正要素になります。

高速道路における車線変更事故の過失割合

高速道路における車線変更事故の過失割合を紹介します。また、車線変更事故とあわせて気になる加速車線から本線車線へ合流した時に生じる事故の過失割合もあわせてみていきましょう。

走行車線から追越車線に進路変更した場合

高速道路で走行車線から車線変更をした前方車(B)と追越車線を後方から直進してきた後方車(A)が衝突した場合、基本の過失割合は「後方車(A):前方車(B)=20%:80%」です。

AB
基本の過失割合2080
Bの合図なしまたは合図遅れ-10+10
Aの初心者マーク等-10+10
進路変更禁止区間-10+10
Bのその他の著しい過失・重過失-10+10
Aの速度違反+10~20-10~20
分岐点・出入口付近+10-10
Aがゼブラゾーン走行+20-20
Aのその他の著しい過失・重過失+10~20-10~20

後方からくる直進車の速度や方向を急に変更するおそれがあるような車線変更は道路交通法で禁止されています。

特に、一般道路に比べて高速道路は走行速度が速く、車線変更の際にはさらなる注意が求められるため、車線変更した方の過失割合が大きくなるのです。

追越車線から走行車線に進路変更等した場合

高速道路で追越車線から車線変更をしたり、片側3車線以上の道路で走行車線から走行車線に車線変更したりした前方車(B)と後方から直進してきた後方車(A)が衝突した場合、基本の過失割合は「後方車(A):前方車(B)=30%:70%」です。

AB
基本の過失割合3070
Bの合図なしまたは合図遅れ-10+10
Aの初心者マーク等-10+10
進路変更禁止区間-10+10
Bのその他の著しい過失・重過失-10~20+10~20
Aの速度違反+10~20-10~20
分岐点・出入口付近+10-10
Aがゼブラゾーン走行+20-20
Aのその他の著しい過失・重過失+10~20-10~20

合流地点の場合

加速車線から高速道路の本線に合流してきた合流車(B)が、本線を直進してきた本線車(A)と衝突した場合、基本の過失割合は「本線車(A):合流車(B)=30%:70%」となります。

AB
基本の過失割合3070
B進入路手前進入-10+10
Bのその他の著しい過失・重過失-10~20+10~20
Aの速度違反+10~20-10~20
Aの急加速+10~20-10~20
Aのその他の著しい過失・重過失+10~20-10~20

合流車の基本の過失割合が大きい理由は、道路交通法で高速道路の本線を走行する車両が優先されるからです。本線車の走行を妨げるような低速での合流や、加速車線からいきなり合流してはいけません。

合流車は本線車に注意しながら、本線の流れを止めないようにしっかり加速して合流しましょう。

もっとも、本線車が優先されるとはいっても、合流地点でかたくなに譲らない行為が正当化される訳ではありません。

合流地点は譲らない?ファスナー合流のススメ

合流に関しては、運転する人のなかでも意見が分かれるようです。

「合流地点で譲ってくれずうまく合流できなかった」
「直進車が優先なのだから合流車には譲らない」

合流に苦手意識を持つ方も多いでしょう。過失割合の視点でみると、車線変更した方の過失が高くなりますが、直進車にも一定の過失がつくため、ときに譲り合うことも重要であるといえます。

高速道路を管理するNEXCOでは、渋滞緩和のために「ファスナー合流(ジッパー合流)」を推奨しています。

“ファスナー合流”とは:規則正しく 1 台ずつ交互に(ファスナーのように)合流するもの

「ファスナー合流」へのお願い

加速車線のいたるところで合流するよりも、加速車線の先頭で交互に規則正しく合流するファスナー合流のほうが交通の流れが良くなり、渋滞対策に有効であるといわれています。

譲ってくれなかった、譲るのはズルいと考えるのではなく、譲り合いの心を持って走行すれば、渋滞緩和だけでなく交通安全にもつながるのではないでしょうか。

交通事故における過失割合の仕組み

車線変更に関する過失割合をパターン別にいくつか見てきました。

では、そもそも過失割合はなぜ重要なのでしょうか。車線変更の事故の過失割合をより深く理解するために、過失割合の基本をおさえておきましょう。

過失割合は事故の責任を表した数値

交通事故における過失割合とは、事故の当事者それぞれにどの程度の責任があるかを割合で示したものです。

たとえば、前方車の過失割合が80%で後方車の過失割合が20%の場合、前方車のほうが後方車に比べて、交通事故について4倍の責任があります。

一方だけに過失割合がつく10対0の事故もありますが、当事者それぞれに過失が付くことが多いです。

交通事故の基本的な内容を網羅した関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順』も参考になりますので、あわせてご確認ください。

なぜ過失割合は重要なのか

過失割合は被害者に支払われる損害賠償の金額にも影響する重要な数値です。

たとえば、交通事故の被害の総額が100万円で、過失割合が前方車70%で後方車30%の場合、後方車が前方車に請求できるのは100万円のうち、自分の責任である30%を差し引いた70万円となります。
このような過失に基づいた減額を、「過失相殺」というのです。

自分の過失割合が大きいほど責任も重くなるため、交通事故で保険会社と示談交渉をする場合などは、どの程度の過失割合になるかは非常に重要となります。

過失相殺のより具体的な計算方法については、関連記事『過失相殺とは?具体例つきで計算方法や減額をカバーする方法を解説』が参考になるので、あわせてご覧ください。

車線変更事故を弁護士に相談・依頼すべき理由

車線変更事故で過失割合や示談金に関して争いになっている場合は、弁護士に相談・依頼しましょう。

たとえ争いになっていない場合でも、本当に妥当な過失割合や示談金なのか知っておく意味でも、弁護士に確認してもらうのは重要です。

保険会社が提示する過失割合は怪しい

車線変更の事故に巻き込まれた場合に弁護士に相談・依頼をすると、適正な過失割合で損害賠償を受けることにつながります。

車線変更の事故の当事者になった場合、相手方の保険会社から過失割合を提示されるのが一般的でしょう。注意すべきなのは、保険会社が提示する割合が正しいとは限らないことです。
保険会社からすると、自分の側の過失割合が小さいほど支出も少なくなるため、客観的な過失割合とは異なる小さい過失割合を提示する場合が少なくありません。

相手方が提示する過失割合に納得がいかない場合、交通事故に知見のある弁護士に相談すれば、裁判になった際に裁判官が提示するような、第三者の立場から見た適切な過失割合を回答してくれます。

適切な過失割合で妥当な示談金を得る

弁護士に依頼すれば、客観的な過失割合に基づいて相手方と交渉したり、相手が交渉に応じない場合に裁判という形で争うことができるので、適切な割合による損害賠償を獲得しやすくなります。

過失割合が異なると請求できる損害賠償の金額も変わってくるので、納得できなければ迷わず弁護士に相談しましょう。

弁護士に依頼することで生じるメリットを知りたい方は『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。

まとめと無料相談の案内

車線変更による事故の過失割合を中心に解説してきました。

ウインカーを出していなかった、車線変更禁止の道路で変更しようとした、スピード違反などの事情がある場合、基本の過失割合が調整されることになるでしょう。

注意点として、事故の相手方が提示してくる過失割合は、客観的に正しいとは限らず、実際よりも自分の責任を低く見積もっている場合があります。

過失割合は損害賠償金の支払いに影響するので、納得がいかない場合は交通事故に知見のある弁護士に相談するのがおすすめです。

アトム法律事務所では、弁護士による無料相談を行っています。無料相談をご希望の場合は、下記バナーより相談予約をお取りください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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