出会い頭事故の過失割合|信号や一時停止違反などの影響は?交渉のコツも解説
更新日:
出会い頭事故とは、異なる方向から進行してきた車両同士が交差した際に衝突する事故で、交差点で起こることが多いです。
令和5年度交通安全白書(内閣府)によると、令和4年中の交通事故発生件数では追突事故が最多で、次に出会い頭事故が多くなっています。追突と出会い頭事故を合わせて事故全体の約6割を占めるほどです。
赤信号を無視してきた車両と、青信号に従って走行していた車両同士の出会い頭では、青信号側に過失はつきません。しかし、それ以外の出会い頭事故は双方に一定の過失がつくことがほとんどです。
しかし、たとえ被害者にも過失がつくとはいえ、不当に高い過失がつくことは避けるべきでしょう。
また、被害者側に過失がつけば損害賠償金は減額されます。そのため、損害賠償金そのものが低いと、最終的にもらえる金額も不十分なものになりかねません。
この記事では、出会い頭事故の過失割合や、出会い頭事故で適正な損害賠償金を請求する際のポイントなどを解説しています。出会い頭事故の被害にあった方は、ぜひご一読ください。
目次
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出会い頭事故の過失割合|信号機の有無・一時停止違反・道幅など
出会い頭事故では、信号の有無や色、交通標識や道幅といった道路環境などが過失割合を左右する主な要素です。
過失割合とは、「交通事故が起きた責任が加害者と被害者にそれぞれどのくらいあるか」を示す割合のことです。
過失割合を決める際には、基本の過失割合をベースに、事故をどれくらい予想できたか(予見可能性)や、事故時の状況(信号の色、スピード、見通しのよさなど)から個別に検討していきます。
まずは、出会い頭事故の基本の過失割合を事故のパターン別に見ていきましょう。なお、ここで紹介する過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。
(1)車同士の出会い頭事故
まずは、交差点における車同士の出会い頭事故について、信号機の有無などの状況別に基本の過失割合を確認していきましょう。
信号機のある交差点での出会い頭事故
信号機のある交差点における車同士の出会い頭事故の過失割合は、事故当時の信号機の色によって異なります。
状況 | A | B |
---|---|---|
A:青 B:赤 | 0 | 100 |
A:黄 B:赤 | 20 | 80 |
A:赤 B:赤 | 50 | 50 |
なお、交差点侵入のタイミングも考慮されます。
たとえば、黄信号車と赤信号車で出会い頭事故が起こった場合には、黄信号車に20%の過失がつき、20:80の過失割合になります。さらに、黄信号車が赤信号直前に交差点に進入していたら、黄信号車の過失割合が10%加算される見込みです。
あるいは、出会い頭での衝突時に赤信号車側の信号が青になっていたら、黄信号車の過失割合が20%加算されるでしょう。
信号機のない交差点での出会い頭事故
信号機のない交差点における車同士の出会い頭事故の過失割合は、以下のような状況によってそれぞれ異なります。
- 交差する道の幅が同じくらいだった場合
- 片方が明らかに広い道路幅だった場合
- 片方に一方通行違反があった場合
- 片方に一時停止の規制があった場合
- 片方が優先道路だった場合
出会い頭事故では、基本的に優先道路や明らかに道幅が広い道路を走っていた優先車の過失割合が低くなります。道幅が同じ道路を走っていた場合は、左方優先の原則に従い、同程度の速度なら左方車の方が過失割合が低くなるでしょう。
左方車とは?
左方から進行してくる車両のこと。信号機がなかったり、優先関係が明確でなかったりする交差点では「左方優先」が原則です。この左方優先の原則により、左方車の方が過失が少ないものと考えられます。
それぞれの過失割合を見ていきましょう。
状況 | A:左方車 | B:右方車 |
---|---|---|
AとBが同程度の速度 | 40 | 60 |
A:減速せず B:減速 | 60 | 40 |
A:減速 B:減速せず | 20 | 80 |
道幅が同じくらいで出会い頭に衝突した場合、速度が同程度であれば、左方車のほうが過失は低いものとされます。(左方車40:右方車60)
ただし、減速がなされていないと、減速していない方の過失は20%重くなる見込みです。 つまり、減速をしていない右方車が、減速した状態の左方車に突っ込んで衝突した場合、過失割合は左方車20:右方車80になる可能性もあります。
状況 | A:広路車 | B:狭路車 |
---|---|---|
AとBが同程度の速度 | 30 | 70 |
A:減速せず B:減速 | 40 | 60 |
A:減速 B:減速せず | 20 | 80 |
一方の道路幅が広いとき、双方が同じ程度の速度であれば、広い道路幅を走行している車両の方が、過失割合は低いと判断されます。(広路車30:狭路車70)
なお、減速をしていない方の過失割合は10%重くなる見込みです。つまり、広路車が十分に減速をしているところへ、減速をしないまま狭路車が衝突してきた場合には、広路車20:狭路車80になる可能性もあります。
状況 | A:無違反車 | B:違反車 |
---|---|---|
- | 20 | 80 |
出会い頭事故で衝突した際に一方通行違反があれば、過失割合は20:80であり、違反車のほうに80%の過失がつきます。
状況 | A:規制なし | B:規制あり |
---|---|---|
AとBが同程度の速度 | 20 | 80 |
A:減速せず B:減速 | 30 | 70 |
A:減速 B:減速せず | 10 | 90 |
B:一時停止後進入 | 40 | 60 |
一時停止の規制がある道路で出会い頭に衝突事故が起こった場合、同じ程度の速度であれば、過失割合は20:80であり、一時停止の規制がある方に80%の過失割合がつきます。
一時停止後に侵入して衝突事故を起こした場合も、一時停止規制側の過失は大きく、60%の過失がつくでしょう。
また、減速していない方の過失割合は10%大きくなる見込みです。
状況 | A:優先車 | B:非優先車 |
---|---|---|
- | 10 | 90 |
優先道路を走行していたときに出会い頭事故にあったり、加害者側の一時停止無視により出会い頭事故にあったりした場合も、被害者側にも一定の過失割合がつくことになります。
優先道路や一時停止無視の過失割合については、以下の関連記事もご覧ください。
(2)車とバイクの出会い頭事故
交通事故の過失割合を算定するときは、交通弱者側の過失割合を低くする傾向があります。
バイクは車よりも車体が小さく、事故の被害が大きくなりやすいことが特徴です。したがって、車とバイクによる出会い頭事故の場合、車同士の事故と比べてバイク側の過失割合がやや低めになるでしょう。
車とバイクの出会い頭事故について、信号機の有無や左方優先などケース別の過失割合を見ていきましょう。
信号機のある交差点での出会い頭事故
信号機のある交差点における車とバイクの出会い頭事故では、車同士の場合と同じく、事故当時の信号機の色によって過失割合が異なります。
信号機のある交差点で出会い頭に事故が起こった場合、赤信号を無視した車両に対して、青信号側には過失はつきません。
しかし、赤信号と黄信号同士の事故では双方に一定の過失がつきます。
状況 | A:バイク | B:自動車 |
---|---|---|
A:青 B:赤 | 0 | 100 |
A:赤 B:青 | 100 | 0 |
A:黄 B:赤 | 10 | 90 |
A:赤 B:黄 | 70 | 30 |
A:赤 B:赤 | 40 | 60 |
ただし、バイク側が青信号・車側が赤信号の場合も、安全確認をしなかった、回避措置を怠ったといった何らかの過失がある場合は、バイク側の過失割合が5%加算されます。
また、黄信号・赤信号の場合で、黄信号側が赤信号直前に交差点に進入した場合は、黄信号側の過失割合が10%加算されるでしょう。
信号機のない交差点での出会い頭事故
次に、信号機のない交差点における車とバイクの出会い頭事故の過失割合を見ていきましょう。ここでは、代表的なケースとして交差する道の幅が同じくらいだった場合の過失割合を紹介します。
状況 | A:左方バイク | B:右方車 |
---|---|---|
AとBが同程度の速度 | 30 | 70 |
A:減速 B:減速せず | 15 | 85 |
A:減速せず B:減速 | 45 | 55 |
車が左方から侵入し、自動車が右方から侵入したときには、左方優先の原則もあいまって、自動車側に70%の過失がつく見込みです。
減速をしていないときには、減速をしていない車両側に、さらに15%の過失がつきます。
たとえば、左方からバイクが減速して走行しているところで、減速なしの右方車が出会い頭に衝突してきた場合、バイク側の過失は15%減り、過失ゼロになることもあるでしょう。
状況 | A:右方バイク | B:左方車 |
---|---|---|
AとBが同程度の速度 | 50 | 50 |
A:減速 B:減速せず | 35 | 65 |
A:減速せず B:減速 | 60 | 40 |
なお、車同士の出会い事故の場合と同じく、どちらかが優先道路だった、一時停止の規制があったといった事故の状況によって過失割合は変動します。
各状況の過失割合はここでは割愛しますが、車同士の事故と比べ、バイク側の過失割合は5%~20%ほど低くなると考えてください。
出会い頭事故は過失割合が争点になりやすい
交通事故のなかでも、出会い頭事故は双方に過失割合がつくことも多く、相手方と過失の有無についてもめやすいという特徴があります。交通事故の当事者になってはじめて知ることも多いので、過失割合に疑問を持つことは不思議なことではなく、むしろ当然のことです。
相手方が提示する過失割合が必ず正しいとは限りません。不当な過失割合を受け入れてしまうと、受けとれる示談金額は少なくなってしまい、今後の生活に支障が出ることもあるでしょう。
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方向けに無料の法律相談を行っています。弁護士の数が限られているので、まずは無料相談のご予約をお取りください。事故の状況をお伺いして、弁護士から過失割合の見解や示談金の相場をお答えすることも可能です。
ポイント
- 保険会社の言う過失割合は「絶対正しい」とは限らない
- 不安があって当たり前、弁護士の意見も聞いておくと安心
- 示談が成立すると撤回は困難なので示談前に相談しよう
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(3)車と自転車の出会い頭事故
車と自転車の出会い頭事故では、車同士の事故・車とバイクの事故に比べ、自転車側の過失割合が低くなる傾向にあります。自転車はバイクよりもさらに交通弱者であるとみなされているからです。
以上を前提にして、車と自転車の出会い頭事故の過失割合を見ていきましょう。
信号機のある交差点での出会い頭事故
信号機のある交差点における、車と自転車の出会い頭事故の過失割合は以下のとおりです。
状況 | A:自転車 | B:自動車 |
---|---|---|
A:青 B:赤 | 0 | 100 |
A:赤 B:青 | 80 | 20 |
A:黄 B:赤 | 10 | 90 |
A:赤 B:黄 | 60 | 40 |
A:赤 B:赤 | 30 | 70 |
なお、黄信号側が赤信号直前に交差点に進入した場合、過失割合が変動します。黄信号側が自転車の場合は過失割合が5%加算され、自動車の場合は15%加算されるでしょう。
信号機のない交差点での出会い頭事故
信号機のない交差点における車と自転車の出会い頭事故の代表例として、交差する道の幅が同じくらいだった場合の過失割合を見ていきましょう。
状況 | A:自転車 | B:自動車 |
---|---|---|
- | 20 | 80 |
優先道路だった、一時停止規制があったといったその他のケースにおいては、車同士の事故と比べ、自転車側の過失割合が10%~30%ほど低くなると考えてください。
とくに、片方が明らかに広い道路だった場合は、広い道路を走っていたのが自動車だったとしても、過失割合は自転車側:自動車側=30:70と大幅に自転車側が保護されることになります。
車と自転車の事故の過失割合や注意点については、『車と自転車の事故|過失割合と慰謝料相場は?おかしいと思ったら要確認』の記事でまとめていますので、あわせてご一読ください。
出会い頭事故の過失割合を修正しうる要素
前章では、出会い頭事故のパターンに分けて、基本の過失割合を紹介してきました。
しかし、事故にはさまざまなパターンが想定されます。事故の個々の状況を反映するため、過失割合を算定するときは「基本の過失割合」に「修正要素」を加えて最終的な数値を決めます。
たとえば、自動車と自転車の出会い頭事故で、自転車を運転していたのが幼児だった場合は、修正要素を加えて自転車側の過失割合をさらに低くするといった形です。
過失割合の算定においては、修正要素も非常に重要になります。ここからは、出会い頭事故の主な修正要素を見ていきましょう。
(1)先に交差点に進入していたか
信号機のない交差点において非優先車が先に進入していた場合、状況によっては優先車側の過失割合が10%高くなります。相手がバイクや自転車の場合は、20%高くなるでしょう。
非優先車が交差点に明らかに先入していたとき、優先車が気づいて回避行動をとれば事故が防げた可能性があります。そのため、優先車側の過失割合が高く修正されるのです。
ただし、先に交差点に進入していたことにより過失割合を修正する際は、お互いの速度差が考慮されます。
優先車が制限速度以下で運転しており、非優先車が交差点に進入したことに気づいてすぐに回避行動をとれば事故が起きなかった状況ならば、過失割合が修正されるでしょう。一方、非優先車のスピードが速く、回避行動をとっても事故が起きていた状況ならば、過失割合は修正されません。
(2)見とおしがきく交差点だったか
信号機のない交差点で発生した出会い頭事故の場合、見とおしがきく交差点だったと判断されると、右方車や道幅の狭い道路を走っていた車の過失割合が10%高くなります。
見とおしがきく交差点だった場合、左から進入してくる車を認識し、左方優先の原則にしたがって運転しやすい状況だったといえるでしょう。そのため、道路交通法を守らなかった側の過失割合が通常よりも高くなるのです。
ただし、当事者のどちらかが自転車だった場合は、この修正要素は適用されません。
見とおしがきかない交差点とは?
交差点の見とおしは、交差点侵入直前の状況で判断されます。
- 沿道の建物
- 駐車車両
- 広告塔
- 看板
見とおしがきかない交差点とは、これらによって、左右両方あるいは左右いずれかの見とおしがきかないことです。こうした交差点では、車両には原則として徐行が義務付けられています。
見通しのいい交差点でも事故は起こる
見通しのいい交差点で相手の自動車の存在に気付かなかったり、停車しているように見えたけれど走行していたため衝突してしまったりという事故は、コリジョンコース現象が原因である可能性があります。
関連記事『コリジョンコース現象の原因は?事故の過失割合と見通しのいい交差点での注意点』では、事故発生後の流れや過失割合についてまとめているので参考にしてみてください。
(3)夜間に発生した事故だったか
日没から日の出までの夜間に出会い頭事故が発生した場合、過失割合が5%変動することがあります。
夜間は自動車のライトによって交差する道路から車が進入してくることを認識しやすい状況です。そのため、認識できなかったり認識したのに回避行動を怠ったりした側の過失割合が増えてしまいます。
たとえば、同じくらいの道幅の信号機のない交差点で起きた車同士の事故の場合、左方車の過失割合が5%低くなるでしょう。一方通行違反があった事故の場合は、無違反車側の過失割合が5%高くなります。
また、車と自転車の事故では、ケースによっては自転車側の過失割合が5%高くなるでしょう。なお、車とバイクの事故では、基本的に夜間であることが過失割合の修正要素にはなりません。
(4)その他|速度違反・ながら運転などの悪質性
出会い頭事故におけるその他の修正要素には、以下のようなものがあります。
著しい過失 | 行った側が+10% |
重過失 | 行った側が+20% |
著しい過失・重過失とは、以下のような状況のことです。
- 著しい過失
- 脇見運転など著しい前方不注視
- 著しいハンドル・ブレーキ操作の不適切
- 携帯電話などの使用・画像注視
- 時速15km以上30km未満の速度違反
- 酒気帯び運転 など
- 重過失
- 酒酔い運転
- 居眠り運転
- 無免許運転
- 時速30km以上の速度違反
- 過労運転
- 病気や薬物の影響で正常な運転ができない状態 など
また、当事者のどちらかが自転車の場合、状況によっては以下の要素も加味されることがあります。
事故の状況 | 過失割合の修正 |
---|---|
自転車側が右側通行・左方から進入 | 自転車側が+5% |
自転車の運転手が児童等・高齢者 | 自転車側が-5% |
自転車が自転車横断帯を通行 | 自転車側が-10% |
自転車が横断歩道を通行 | 自転車側が-5% |
過失割合の決め方や影響をより詳しく知りたい方は、『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』の記事もご参考ください。
出会い頭事故における損害賠償請求のポイント
次に、出会い頭事故で加害者側に損害賠償を請求する際のポイントをお伝えしていきます。
なお、多くの場合、賠償金の金額や過失割合は加害者側の任意保険会社との話し合い(示談交渉)で決定されます。交通事故の示談について解説した記事『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点』もあわせてお読みいただくと、より理解が深まるでしょう。
賠償金の内訳と相場を知っておく
交通事故の賠償金の内訳には、主に以下のようなものがあります。
- 治療中の費目
- 治療関係費
- 休業損害
(事故で仕事を休んだことによる減収の補償) - 入通院慰謝料
(事故で入通院した精神的苦痛の補償) - その他、通院交通費、入院雑費など
- 治療終了後、後遺障害が残ったときの費目※
- 逸失利益
(後遺障害の影響による将来的な減収の補償) - 後遺障害慰謝料
(事故で後遺障害を負った精神的苦痛の補償)
- 逸失利益
- 物損に関する費目
- 車の修理費 など
※後遺障害とは、事故の後遺症のうち後遺障害認定を受けたもののこと
賠償金の各費目がどのような損害を補償するのか、相場はいくらかについては、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事において詳しく紹介しています。
また、賠償金のうち慰謝料については、以下の計算機ですぐに相場を知ることが可能です。
なお、加害者側の任意保険会社は、保険会社独自の基準で計算した相場よりも低い賠償金を提示してくるでしょう。
相場よりも低い金額を提示され、増額も認めてもらえない場合は、弁護士に依頼して示談交渉を代理してもらうことをおすすめします。
過失割合の交渉では証拠を用意する
示談交渉の中では過失割合についても決めていくことになります。
このとき、加害者側の任意保険会社は、被害者側の過失割合を不当に高く見積もって提示してくることがある点に注意が必要です。
先述のとおり、被害者側に過失割合がついたら過失相殺によって賠償金が減額されます。そのため、加害者側の任意保険会社は支払う金額を減らすべく、あえて被害者側の過失割合を高めに見積もってくることがあるのです。
加害者側から不当に高い過失割合を提示されたときは、適切な過失割合へと交渉していく必要があります。その際は、ただやみくもに「この過失割合はおかしい」と主張するのではなく、証拠を用意して論理だてた説明をしなくてはなりません。
過失割合の交渉をする際は、以下のような証拠を集めるとよいでしょう。
- 警察による刑事記録
- 実況見分調書
- 供述調書
- ドライブレコーダーなどの映像記録
- 目撃者の証言 など
ただし、過失割合を算定する際には過去の事例に精通していることや、適切な法律知識があることが必要になります。
そもそも加害者側から提示された過失割合が不当か判断がつかない方、どのような証拠が有効かわからない方は、無料相談を利用して弁護士にアドバイスを聞いてみることをおすすめします。
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交通事故の過失割合でもめるパターンごとの対処法を紹介する記事『交通事故の過失割合でもめる4ケース&対処法|証拠が無い時どうする?』もあわせてご参考ください。
自身に過失割合がついたら保険でカバーする
被害者側にも過失割合がついた場合、その割合に応じて賠償金が減額されます。そのため、治療費や休業損害、車の修理費などの一部が被害者側の自己負担となってしまうのです。
このように、賠償金の一部が自己負担になった場合は、被害者自身が加入している保険を利用してまかなうとよいでしょう。被害者自身が加入している保険は、基本的に過失割合とは関係なく支払いを受けられます。
ただし、被害者側の保険を利用することで保険料が上がる場合もある点はあらかじめ留意しておいてください。
出会い頭事故で使える被害者側の保険には、以下のようなものがあります。
- 自動車保険
- 人身傷害補償保険
(ケガや後遺障害、死亡など、人身の損害をカバーする保険) - 搭乗者傷害保険
(被害者自身や同乗者に対し見舞金のような保険金を受け取れる保険) - 車両保険
(車の損害をカバーする保険) - 無保険車傷害保険 など
- 人身傷害補償保険
- 健康保険
- 労災保険(通勤中・勤務中の事故のみ)
- その他、生命保険、傷害保険など
交通事故で使える被害者側の保険については、『交通事故で使える保険の種類と請求の流れ|被害者自身の保険も使える?』の記事でも網羅的に解説しています。あわせてご一読ください。
出会い頭事故に関する疑問4選
ここからは、出会い頭事故に関するよくある疑問にお答えしていきます。
Q1.出会い頭事故の原因と対策は?
出会い頭事故の要因としては、主に以下のものがあげられます。
- 交差する車両を見落としていた
- 道路標識を見落としていた
- 雑談など運転以外のことに気がそれていた
- 交差する車両が停止するだろうと思い込んだ
- 運転操作を誤った
- 道路の見通しが悪く、標識やカーブミラーなども不足していた
上記の要因から、道路交通法第70条で定められている安全運転義務を守ることが、出会い頭事故を防ぐために有効であることがわかります。具体的には、以下のような安全運転義務違反に該当する行為を避けるとよいでしょう。
運転操作不適 | 運転操作のミスの全般。 ブレーキとアクセルの踏み間違い、ハンドルの操作ミスなど。 |
前方不注意 | 考え事などをしながら運転する「漫然運転」や、 周囲の景色に気をとられる「脇見運転」など。 |
動静不注視 | 他の車などを認識しているにもかかわらず、 「危険がないだろう」と思い込み、注意しないこと。 |
安全不確認 | 前後左右の不確認。 |
安全速度違反 | 制限速度内で走行しているが、 交差点や見通しの悪い場所で徐行を怠ること。 |
予測不適 | 運転操作や周囲の状況に関する判断の誤り。 「相手が避けてくれるだろう」 「あまりスピードは出ていないだろう」など。 |
また、自分が優先道路を走っているときも過信しすぎずに周囲の様子をよく見る、一時停止では形式的に止まるのではなく安全かどうかきちんと確認することも大切です。
なお、出会い頭事故は交差点で多く発生しています。交差点での事故を防ぐ方法については、『交差点での事故の過失割合は?信号あり・信号なしのパターンで解説』の記事でも紹介しているので、あわせてご参考ください。
Q2.出会い頭事故の点数は?
出会い頭事故の点数は、事故状況などによって異なります。
なお、車同士の出会い頭事故のような当事者双方に責任がある事故の場合、被害者側にも違反点数がつく可能性があるでしょう。
交通事故の違反点数は、交通違反をしたことで付与される「基礎点数」と相手方のケガの程度や過失割合などによって加算される「付加点数」があります。基礎点数と付加点数を合算した結果が、最終的な違反点数となります。
出会い頭事故の原因となりうる主な違反の基礎点数と、付加点数を見てみましょう。
事故種別 | 基礎点数 |
---|---|
安全運転義務違反 | 2点 |
速度超過 | 1点~12点 |
信号無視 | 2点 |
優先道路通行車妨害等 | 2点 |
徐行場所違反 | 2点 |
携帯電話使用等(交通の危険) | 6点 |
携帯電話使用等(保持) | 3点 |
交差点右左折方法違反 | 1点 |
交差点右左折等合図車妨害 | 1点 |
交差点等進入禁止違反 | 1点 |
無灯火 | 1点 |
※上記以外にも、事故の態様や免許・車検・保険などの状況により基礎点数がつく可能性あり
事故種別 | 付加点数※ |
---|---|
死亡事故 | 20点 (13点) |
傷害事故 (治療期間3月以上または後遺障害が残存) | 13点 (9点) |
傷害事故 (治療期間30日以上3月未満) | 9点 (6点) |
傷害事故 (治療期間15日以上30日未満) | 6点 (4点) |
傷害事故 (治療期間15日未満) | 3点 (2点) |
※()内は事故が専ら違反行為をした側の不注意によって発生したものではない場合の点数
なお、物損事故では、基本的に違反点数はつきません。ただし、重過失により発生した事故、当て逃げ事故、建造物を破壊した事故では違反点数がつくこともあります。
Q3.出会い頭事故でケガしたら人身事故にすべき?
出会い頭事故でケガをしたとき、加害者側から「人身事故ではなく物損事故にしてください」と頼まれるケースも散見されます。
しかし、損害賠償請求の観点から言えば、ケガをしたなら人身事故として警察に届け出るべきです。
ケガをしているにも関わらず人身事故として届け出ていない場合、治療費や慰謝料が適切に支払われない、誤った過失割合を主張されたとき反論できないといったリスクが生じてしまいます。その理由は以下のとおりです。
- 物損事故だと、書面上はケガをしていないことになってしまう。
実務上は物損事故で治療費などを支払ってもらえることもあるが、減額されるようなケースもある。 - 物損事故だと、警察による実況見分が行われない。
そのため、過失割合を示す有力な証拠となる「実況見分調書」が作成されない。
もし、すでに物損事故として届け出ているなら、医師による診断書を発行してもらって人身事故に切り替えましょう。
ただし、事故の発生から時間が経っていると切り替えが認められないこともあります。可能な限り、事故から7日~10日以内に切り替え手続きを行うようにしてください。
Q4.子どもが曲がり角で出会い頭事故にあったら?
曲がり角では十分な安全確認が必要ですが、子どもはとくに自転車乗車中の出会い頭事故が多いといわれています。
基本的に、子ども(とくに13歳以下の幼児)は交通弱者とされるので、過失割合は基本よりも少なくなりますが、一定の過失が付くことは十分あるでしょう。
出会い頭に交通事故にあうと、急なことで受け身が取れなかったり、強い衝撃で頭部を打ち付けたりと重大な事故になることも多いです。さらに事故当時の記憶が曖昧だったり、大人のようにうまく説明できなかったりすると、相手方の言い分だけが通ってしまう可能性も考えられます。
関連記事も参考にして、弁護士を立てることも検討してみてください。
関連記事
出会い頭事故は弁護士への相談・依頼もご検討ください
出会い頭事故にあったときは、弁護士への相談・依頼もご検討ください。ここからは、出会い頭事故について弁護士に相談・依頼するメリットを解説していきます。
弁護士なら正しい過失割合を主張できる
出会い頭事故では、被害者側にも一定の過失割合がつく可能性があります。しかし、加害者側の任意保険会社に被害者側の過失割合をあえて高く見積もられることもあります。
適切な過失割合へ変更するには、証拠をもとに、加害者側と粘り強く交渉していく必要があります。しかし、どのような証拠が必要かわからなかったり、そもそも最終的にどのくらいの過失割合を目指すべきか判断できなかったりする方も多いのではないでしょうか。
弁護士であれば、過去の判例や法律知識をもとに、事故状況に応じた適切な過失割合を算定し、主張していくことが可能です。また、証拠の検討や収集についても弁護士に対応を一任できます。
加害者側の任意保険会社は、支払う金額を減らすため、過失割合の変更を認めないことも多いです。納得できない過失割合で示談すると、その分、支払ってもらえる慰謝料・賠償金が低額になってしまいます。
過失割合に疑問がある、加害者側と過失割合についてもめているといった場合は、弁護士に一度ご相談ください。
弁護士なら慰謝料の大幅な増額も見込める
弁護士が交渉すれば、慰謝料・賠償金の大幅な増額も見込めます。
実は、慰謝料にはいくつかの算定基準があり、同じ事故でもどの基準を用いるかによって金額は変わってくるのです。
出会い頭事故では、被害者側にも一定の過失がつく可能性があります。過失分の慰謝料減額だけでなく、慰謝料の金額自体が適正相場を下回っていると、被害者が受けとる金額は本来もらえるはずの金額よりも大幅に少なくなってしまうのです。
ここからは、慰謝料の算定基準について解説していきます。
加害者側の任意保険会社は、最低限の金額となる「自賠責基準」か、保険会社内の独自ルールである「任意保険基準」で計算した金額を提示してくるでしょう。
この金額は、過去の判例をもとにしている「弁護士基準(裁判基準)」で計算し直せば、2倍~3倍にまで増額される可能性があるのです。
しかし、被害者自身で弁護士基準の金額を主張しても、加害者側の任意保険会社が認めることはほとんどありません。「弊社ではこの金額が上限です」「裁判をしないとその金額は認めません」などと反論されてしまうでしょう。
一方、弁護士が示談交渉を行えば、加害者側の任意保険会社は弁護士基準に近い金額を認める傾向にあります。
なぜなら、弁護士が出てくれば、裁判への発展が現実味を帯びるからです。裁判は加害者側の任意保険会社にとってデメリットが大きいうえ、裁判になればどのみち弁護士基準の金額が認められます。それならば、示談交渉の段階で弁護士基準に近い金額を認めようと判断されるのです。
加害者側の任意保険会社に提示された金額に不満がある方、増額の余地があるのか知りたい方は、まずは弁護士に相談してみましょう。
アトム法律事務所の解決事例をまとめた『交通事故の解決事例』のページもあわせてご確認ください。ご自身と似たような事例での増額事例がわかります。
弁護士費用は意外と心配しなくていい
弁護士の依頼を検討するとき、弁護士費用が気になる方も多いと思われます。しかし、弁護士費用特約を使えば弁護士費用の負担を大きく軽減することが可能です。
弁護士費用特約とは、保険会社に弁護士費用を負担してもらえるオプションです。
弁護士費用特約を使えば、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社に負担してもらえます。弁護士費用が300万円を超えるケースはまれであるため、多くのケースで、被害者は自己負担なしに弁護士に依頼できます。
交通事故では、被害者自身の自動車保険についている弁護士費用特約ではなく、火災保険、クレジットカード、被害者の家族の保険についている弁護士費用特約も利用できる可能性があります。まずは保険の契約状況を確認してみましょう。
弁護士費用特約については、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事で詳しく説明しています。
弁護士費用特約が使えないときも安心
また、弁護士費用特約が使えない場合も、弁護士への無料相談を利用し、慰謝料・賠償金の増額見込みと弁護士費用の見積もりを取ることで費用倒れを避けることは可能です。
もし、慰謝料・賠償金の増額見込みよりも弁護士費用の方が高くなるなら、無料相談だけで完結させて、他の法律事務所に見積もりを取ってもらうことも選択肢といえます。
もっとも、事故の規模や怪我のご状況によりますが、弁護士費用を支払っても、弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増える可能性も十分ありえるでしょう。
弁護士費用特約が使えないときも、まずは弁護士への無料相談で見積もりを取ることをおすすめします。アトム法律事務所はLINEで簡単に見積もりを取ることが可能です。
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出会い頭事故の損害賠償問題でお悩みの方は、アトム法律事務所の電話・LINEによる弁護士への無料相談もご利用ください。
交通事故の解決実績豊富な弁護士が、以下のようなお悩みにお答えします。
- 加害者側が主張する過失割合は妥当?
- 過失割合に納得できないときどうやって反論すればいい?
- 加害者側に提示された慰謝料・賠償金に増額の見込みはある?
- 弁護士費用はどれくらいになる? など
示談が一度成立したら、基本的に撤回はできません。あとから「本来ならこんなに過失割合は高くないはずだったのに…」「本来ならもっと多くの慰謝料・賠償金を受け取れたのに…」と後悔しないためにも、示談前に弁護士への相談をご検討ください。
もちろん、無料相談のみの利用でも大丈夫です。強引に契約を迫るようなことはありません。また、セカンドオピニオンとしての利用も受け付けております。
相談予約は24時間365日受け付けております。まずはお悩みをお聞かせください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了