コリジョンコース現象の原因は?事故の過失割合と見通しのいい交差点での注意点
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見通しの良い交差点で発生する交通事故の一つに「コリジョンコース現象」があります。
これは、同じ速度・角度で接近する車両が止まって見えたりお互いに認識できなかったりして交差点で衝突する現象です。
本記事では、コリジョンコース現象の基本的な内容を説明しつつ、コリジョンコース現象の対策や事故の過失割合についても言及しています。また、事故にあった後の流れや注意点についても解説しているので最後までご確認ください。
なお、本記事で紹介する過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースに作成しています。
目次
コリジョンコース現象とは?
コリジョンコース現象の意味|田園型交通事故とも呼ばれる
コリジョンコース現象とは、見通しのいい交差点などにもかかわらず、お互いの車両が止まって見えたり存在を認識できなかったりして、出合頭で衝突してしまうことです。
見通しのいい田園地帯で起こりやすいコリジョンコース現象は、田園型事故とも呼ばれたりしています。
それではなぜ、見通しのいい交差点であっても、お互いを早期に視認することがむずかしくなってしまうのでしょうか。
コリジョンコース現象の原因|見通しのいい交差点で起きる?
コリジョンコース現象は、同じ速度・角度で直角に交わる十字路に接近する車両同士がお互いに気づかず衝突する現象です。
人間の視覚的錯覚が原因でコリジョンコース現象は起こります。
たとえば、自分が運転する車と同じ速度で横から車が近づいてきても、常に同じ角度(斜め約45度)に車が見える状態だと、止まっているように錯覚してしまいます。
また、運転席から斜め約45度の角度はフロントガラスを支えるピラーの位置で、これが死角となり相手車両がピラーの陰に隠れてしまうのです。
- 相手車両が止まっているように錯覚する
- ピラーに相手車両が隠れつづけてしまい見えない
「見通しのいい交差点で衝突するなんてありえない」と思うかもしれませんが、コリジョンコース現象は見通しのいい交差点だからこそ起こる現象といえます。
コリジョンコース現象の対策
コリジョンコース現象を防ぐためには、視覚的錯覚を解消することと、運転者の意識付けが対策として有効です。
具体的には、以下の対策があげられます。
ポイント
- 目だけでなく首も動かして左右の安全確認をとる
- 道路標識を確認し危険を意識する
- 交差点を通過する時は減速し、よりいっそう注意を払う
見通しのいい交差点ゆえに運転手は油断しがちで、特に対向車が来ない交差点ではスピードも出しやすくなっています。速いスピードで走行中にコリジョンコース現象が発生すると、大事故を招くおそれがあるでしょう。
事故が多発する地点では、行政も危険を認識して道路標識を設置するなどの対策を行っています。しかし、コリジョンコース現象による事故を防ぐには、運転者一人ひとりの安全意識が重要になってくるでしょう。
コリジョンコース現象による事故の過失割合
過失割合(1)同幅員の交差点の場合
同程度の速度で同幅員の交差点に進入した場合に起きた事故の基本の過失割合は、A(左方車):B(右方車)=40:60です。もっとも、過失割合は修正要素によって調整されるので、下記表もご覧ください。
A(左方車) | B(右方車) | |
---|---|---|
基本 | 40 | 60 |
Aの著しい過失 | +10 | -10 |
Aの重過失 | +20 | -20 |
見通しがきく交差点 | -10 | +10 |
夜間 | -5 | +5 |
Bの著しい過失 | -10 | +10 |
Bの重過失 | -20 | +20 |
同幅員の交差点では左方が優先されるので、右方車の過失割合が大きくなります。
過失割合(2)一方が明らかに広い道幅の場合
同程度の速度で一方が明らかに広い道幅の交差点に進入した場合に起きた事故の基本の過失割合は、A(広路車):B(狭路車)=30:70です。もっとも、過失割合は修正要素によって調整されるので、下記表もご覧ください。
A(広路車) | B(狭路車) | |
---|---|---|
基本 | 30 | 70 |
Bの明らかな先入 | +10 | -10 |
Aの著しい過失 | +10 | -10 |
Aの重過失 | +20 | -20 |
見通しがきく交差点 | -10 | +10 |
Bの著しい過失 | -10 | +10 |
Bの重過失 | -20 | +20 |
一方が明らかに広い道幅の交差点では広い道幅にいる方が優先されるので、狭い道幅にいる方の過失割合が大きくなります。
過失割合(3)一方に一時停止規制がある場合
同程度の速度で一方に一時停止規制がある交差点に進入した場合に起きた事故の基本の過失割合は、A(規制なし):B(規制あり)=20:80です。もっとも、過失割合は修正要素によって調整されるので、下記表もご覧ください。
A(規制なし) | B(規制あり) | |
---|---|---|
基本 | 20 | 80 |
Aの著しい過失 | +10 | -10 |
Aの重過失 | +20 | -20 |
Bの著しい過失 | -10 | +10 |
Bの重過失 | -20 | +20 |
一方の道路に一時停止規制のある交差点では規制なしの方が優先されるので、規制ありの方の過失割合が大きくなります。
コリジョンコース現象による事故にあったら?
(1)事故で怪我したら治療を受ける
コリジョンコース現象による事故で怪我を負ったら、まずは治療に専念しましょう。
怪我や痛みがないと思ったとしても、事故にあったら病院にいって検査を受けてください。後から怪我や痛みが出てくることも珍しくありません。
また、治療費は通常、相手側の任意保険会社が支払いますが、一時的に立て替える必要がある場合は領収書や診断書など忘れずに保管しておきましょう。立て替え分を後から請求する場合に必要になります。
(2)後遺症が残ったら後遺障害認定を受ける
事故による怪我の治療を続けたにもかかわらず後遺症が残った場合は、後遺障害の認定を受けましょう。
後遺障害の認定を受けることで、後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金が追加で請求できるようになります。
後遺障害の認定を受けるには、後遺障害の申請が必要です。申請方法について詳しくは関連記事『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』をご確認ください。
(3)損害が確定したら示談交渉する
治療が完了したり後遺障害の認定も受けたりすると、損害が確定します。交通事故による損害で請求することになる主な内訳は以下の通りです。
損害が確定したら、相手側の任意保険会社と示談交渉がはじまるでしょう。
示談交渉では、保険会社が提示する賠償金を安易に鵜呑みにしてはいけません。その金額が損害に対して見合った妥当なものなのか事前に弁護士に確認しておく必要があります。
なぜなら、保険会社は不当に低い金額の賠償金しか提示してこないことが通常だからです。
弁護士に依頼すれば、妥当な賠償金を算定してもらえるだけでなく、保険会社との交渉も一任できます。
弁護士に依頼することで、妥当な金額の賠償金を手にできる可能性が高まるのです。
交通事故で弁護士に依頼するか迷っている方は『交通事故を弁護士に依頼するメリット』の記事をご覧ください。弁護士に依頼する重要性がおわかりいただけるでしょう。
事故の過失割合や賠償金に疑問を持ったら弁護士相談
コリジョンコース現象による事故では、事故の当事者どちらかだけにすべての過失が付くことは基本的にないでしょう。そのため、お互いにどのくらい事故の責任を負うべきなのかを示す過失割合の大きさには注意が必要です。
また、相手方の任意保険会社が提示してくる賠償金は、事故による被害を受けた時に本来なら受け取れるはずの金額より低くなっています。そのため、適切な補償といえるのか賠償金の金額にも注意を払わねばなりません。
過失割合や賠償金が妥当なのか、専門的な知識がないと判断しにくいでしょう。疑問を持った場合はもちろん、疑問がない場合でも、示談に合意する前には一度、弁護士に相談しておくことをおすすめします。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了