死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点

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死亡事故の慰謝料

交通事故で被害者が死亡した場合、加害者側は刑事責任や行政責任に加えて、民事責任(損害賠償責任)を問うことになります。

交通事故の損害賠償のひとつである死亡慰謝料の相場は、弁護士基準で2,000万円~2,800万円です。

もっとも、自賠責保険基準では遺族人数に応じても400万円~1,350万円程度にとどまるため、相手の提示額のまま受け入れるのではなく、適正相場への増額交渉が必要になります。

この記事は死亡した被害者本人や近親者への死亡慰謝料をはじめとした賠償金の相場や請求の流れについての解説記事です。

適切な慰謝料や損害賠償金を受け取ることは、ご本人の無念や遺族の悲しみを少しでも癒すために大切だと思われます。この記事が、死亡事故の遺族の方のお役に立てますと幸いです。

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交通事故の死亡慰謝料とは?

死亡慰謝料とは死亡事故の精神的苦痛をなぐさめるお金

交通事故で被害者が死亡した際に支払われる慰謝料を、死亡慰謝料といいます。

死亡慰謝料とは死亡させられた被害者や遺族の精神的苦痛を金銭で補償し、回復を図るためのお金です。

交通事故においては、相手方の加入する任意保険会社に対して請求することが多くなります。

基本的には示談交渉を通して慰謝料額が決まりますが、被害者死亡事故は賠償金が全体的に高額になりやすく、示談不成立となって調停や裁判に発展することも考えられるでしょう。

死亡慰謝料には被害者本人分と遺族分がある

死亡事故が発生した場合に支払われる死亡慰謝料には、以下の2種類があります。

  1. 死亡に至らしめられた精神的苦痛に対して支払われる「被害者本人の慰謝料
  2. 近親者を亡くした精神的苦痛に対して支払われる「被害者遺族の慰謝料

「被害者本人の慰謝料」は、本来は死亡した被害者本人に支払われるべき慰謝料なので、被害者本人が慰謝料の請求権を持ちます。

もっとも被害者は亡くなっているので、遺族の中から選出される「相続人」が代わりに請求や受け取ることになるでしょう。

また、「被害者遺族の慰謝料」は、基本的に配偶者・親・子といった「近親者」に支払われるべき固有の慰謝料なので、近親者それぞれが慰謝料の請求権を持ちます。

ただし、死亡事故案件における実務では、被害者本人と被害者遺族の慰謝料を合計した金額を相続人が請求することが多いです。

よって、被害者遺族の慰謝料は受け取り後に分配する必要があります。分配方法については後ほど解説します。

死亡慰謝料の対象となる近親者とは誰?

近親者固有の慰謝料を請求できるのは、以下の1または2に該当する遺族です。

近親者の固有の慰謝料

  1. 被害者の父母、配偶者、子(民法711条)
  2. 被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者(最高裁判所昭和49年12月17日判決)

近親者の基準として、民法711条は以下のように定めています。

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

民法711条

つまり、被害者の父母(養父母含む)・被害者の配偶者・被害者の子(養子含む)を原則として、兄弟姉妹や内縁の妻・夫などでも、民法で定められた近親者と同視しうるような関係があると認められた場合は慰謝料が支払われる可能性があります。

具体例としては、被害者から長きにわたり庇護されてきた義理の妹・被害者を慕っていた幼い弟について、遺族固有の慰謝料請求権を認めた裁判例があります。

交通死亡事故の被害者の近親者が慰謝料をもらえるケースについては、関連記事『交通事故の被害者家族が近親者慰謝料をもらえるケースと相場』でも解説しているので、あわせてお読みください。

死亡慰謝料の金額はいくら?

死亡慰謝料の金額は自賠責基準で400万円~1,350万円と遺族の人数や扶養の有無で決まる一方弁護士基準では2,000万円~2,800万円が相場となっており、算定基準によって金額は大きく変わります。

このように、同じ交通事故の死亡慰謝料であっても以下の3つの算定基準があり、弁護士基準で請求するときに最も高額になるのです。

慰謝料算定の3基準

  1. 自賠責基準:自賠責保険で慰謝料を算定する際の基準
  2. 任意保険基準:任意保険会社で慰謝料を算定する際の基準
  3. 弁護士基準(裁判基準):裁判所で認められている基準
慰謝料金額相場の3基準比較

加害者側の任意保険会社は任意保険基準や自賠責基準の金額を提示してくることが多いです。しかし、弁護士基準より1,000万円以上も低いこともあるため、そのまま受け入れるべきではありません。

それぞれの基準における死亡慰謝料の相場についてくわしくみていきましょう。

なお、任意保険基準は各保険会社ごとに異なり非公開なので、ここでは割愛します。金額は自賠責基準と同程度なので、参考にしてみてください。

自賠責基準の死亡慰謝料相場

自賠責基準における被害者本人の死亡慰謝料は原則400万円です。ただし遺族の人数が1名なら550万円、2名なら650万円、3名なら750万円が加算されます。さらに死亡した被害者が誰かを扶養していたなら200万円が追加で加算され、最大で1,350万円となるのです。

死亡慰謝料の相場(自賠責基準)

死亡慰謝料
被害者本人の死亡慰謝料400万円
慰謝料請求権者*が1名950万円(+550万円)
慰謝料請求権者が2名1,050万円(+650万円)
慰謝料請求権者が3名以上1,150万円(+750万円)
被害者に被扶養者あり上記に加えて200万円

*被害者の父母・配偶者・子やそれらに相当する一部の近親者
**令和2年4月1日以降に発生した交通事故で死亡した場合

たとえば、被害者に配偶者1名、未成年の子2名がいるときは、請求権者が3名かつ被扶養者がいる場合となるため、400万円+750万円+200万円=1,350万円の保険金が慰謝料として支払われます。

弁護士基準の死亡慰謝料相場

弁護士基準の場合は、被害者本人分の慰謝料と遺族分の慰謝料をあらかじめ合計した金額が目安として定められています。

交通事故の死亡慰謝料の金額は、被害者の家族内での地位や属性によって異なります。

被害者が一家の支柱である場合は2,800万円、母親・配偶者の場合は2,500万円、その他の場合は2,000万円~2,500万円が死亡慰謝料の相場です。「その他」には独身の男女、子どもや幼児、高齢者などが含まれます。

死亡慰謝料(弁護士基準)

被害者の立場慰謝料相場
一家の支柱である2,800万円
母親、配偶者2,500万円
その他2,000万円~2,500万円

※上記金額のうち遺族への慰謝料は100万円~250万円ほど

ただし、加害者側は上記より低額な金額で示談交渉を進めようとしてきます。弁護士基準に近い金額を得るには、ご遺族が加害者側に対して増額交渉をしなければなりません。

十分な増額のためにはプロによる交渉が必要なので、一度弁護士にご相談ください。

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アトム法律事務所では、死亡事故で大切なご家族を亡くされた方からの慰謝料請求について相談を受け付けています。

無料相談が可能で、強引に依頼を迫ることもありません。「依頼するかは決めていない」という方でも気兼ねなくご利用ください。

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弁護士に交渉を任せるメリットは慰謝料増額にもあります。関連記事を読んで、弁護士相談と依頼を具体的に検討していきましょう。

死亡慰謝料が増額されるケースと判例紹介

被害者や遺族の精神的苦痛が増大するような事情は慰謝料増額の理由になる可能性が高いです。慰謝料が増額しうる事情としては、以下のようなものがあります。

増額につながる事情

  • 加害者の無免許運転、ひき逃げ、酒酔い、スピード違反、信号無視など
  • 事故態様が残酷であったり、殺人に近い危険性があった
  • 複数人が一度に死亡した
  • 加害者が示談交渉や裁判で著しく不相当な権利を主張した
  • 加害者や加害者の親族の態度が不誠実だった
  • 被害者遺族の健康面や業務・学業に悪影響が生じた

過去の判例から、事故の個別的な事情を反映して相場以上の慰謝料が認められたものを紹介します。

加害者側に不誠実な態度があった判例

有職主婦(32歳)につき,加害者が公判廷で謝罪したいと述べながら結局謝罪せず,さらに裁判所から示唆を受けたにもかかわらず謝罪しなかったことなどから,本人分2,400万円,夫200万円,両親各150万円,合計2900万円を認めた。

「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2021」 さいたま地判平24.10.22

上記の裁判では、加害者側が不誠実な態度をとっていたため、相場である2500万円(被害者が母親・配偶者の場合)よりも高額な2,900万円という死亡慰謝料が認められました。

被害者本人と遺族の精神的苦痛を斟酌した判例

女児(3歳)につき,まだ死の意味すら十分に理解しかねる幼少のみで突然の死を余儀なくされたこと,突然に幼子を失った父母や近親者らにおいてその死を呻吟する有様が顕著であることから、本人分2200万円,父母各300万円,合計2800万円を認めた。

「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2021」 大阪地判平20.3.13

上記の裁判では、幼くして死亡事故の被害者となった女児本人および被害者の精神的苦痛を反映し、相場である2000万円~2500万円(被害者が「その他」に該当する場合)よりも高額な慰謝料が認められました。

なお、被害者に重大な過失があった場合や、受傷と死亡との因果関係の証明が困難な場合などは、死亡慰謝料が減額されることもあります。

実際に慰謝料が増減するか、どれくらい増減するかは、事故の内容や交渉次第で変わる部分です。

ご紹介したケース以外にも慰謝料の増額につながる事由はあるので、まずは弁護士にお問い合わせください。

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死亡事故で慰謝料以外に請求できる損害賠償金

死亡事故の被害にあった場合、加害者側に請求できる賠償金は慰謝料だけではありません。以下のような費目についても、損害賠償金として請求することが可能です。

死亡慰謝料以外の賠償金

  1. 死亡逸失利益
  2. 葬儀費用
  3. 亡くなるまでに治療を受けた場合の費目

それぞれの費目の計算方法や相場を確認していきましょう。

死亡逸失利益

被害者が死亡すると、被害者が将来得られたはずの収入が得られなくなります。死亡事故によって将来得られるだったはずの収入が失われたことへの補償は「死亡逸失利益」として請求可能です。

死亡逸失利益は以下の計算式で算定されます。

死亡逸失利益の計算方法

基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

死亡逸失利益の計算方法

計算式に含まれる項目について、それぞれどのようなものか解説していきます。

基礎収入額

基礎収入額とは事故前の被害者の収入(年収)のことを指します。基礎収入の決まり方は、給与所得者であれば源泉徴収票による証明が可能です。

そのほか事業所得者や家事従事者、学生などは以下のような方法で基礎収入を決めていきます。

基礎収入額の参考表

生前の立場基礎収入
給与所得者事故前の収入
事業所得者申告所得(立証があれば実収入)
家事従事者女性の全年齢平均賃金
有職の主婦事故前の収入または女性の全年齢平均賃金の高い方
学生や幼児男女別の全年齢平均賃金
失業者※失業前の収入
高齢者※男女別・年齢別の平均賃金、あるいは年金ベース

※就労の可能性や見込みが高い場合

平均賃金は、厚労省が発表している「賃金構造基本統計調査」に基づいた「賃金センサス」を参考にします。

なお、実際の収入が賃金センサスの平均額を下回っていても、平均額を得られるという十分な見込みがある場合や、若年者でこれから収入増が見込める場合などは、基礎収入額を平均賃金として計算することもあります。

また、基礎収入額には、昇給の予定や本人の資質などが加味されることもあるでしょう。

基礎収入の額で逸失利益額は大きく左右されます。相手の保険会社に算定を任せきりにせず、交通事故にくわしい弁護士に算定を依頼することも検討してください。

生活費控除率

生活費控除率とは不要になった生活費を控除するための割合のことを指します。

交通事故で被害者が亡くなった場合、被害者が生存していればかかるはずだった生活費が不要になると考えられるため、生活費に相当する分が控除されるのです。

生活費控除率は、被害者の立場ごとに下表のとおりです。

生活費控除率

被害者の立場生活費控除率
一家の支柱かつ被扶養者1人40%
一家の支柱かつ被扶養者2人以上30%
女性(主婦、独身、幼児)*30%
男性(独身、幼児)50%

*女子年少者で男女計の全年齢平均賃金を基礎収入とする場合は、40~45%が目安

なお、被害者の収入が年金のみの場合は、生活費控除率が高くなることが多いです。一般的に、年金のほとんどは生活費として使われることが理由とされています。

就労可能年数

就労可能年数とは、交通事故にあわなかった場合、被害者が働けていたはずの年数のことを指します。原則67歳まで働くと考えたうえで、就労可能年数は下表のとおりです。

就労可能年数の計算方法

被害者の年齢・就労状況就労可能年数
就業中かつ67歳未満・67-事故当時の年齢
・平均余命の1/2
(上記のうちいずれか長い方)
67歳以上平均余命の1/2
未就労者・67-18
・67-大学卒業予定時の年齢(大学卒業を前提とする場合)

ただし、被害者の職種や地位、健康状態、能力などを考慮して、上記とは異なる年数が就労可能年数として認められることがあります。

弁護士や税理士、医師など67歳を過ぎても就労している見込みがあると判断されれば、就労可能年数は長くなって死亡逸失利益は高額になるのです。

ライプニッツ係数

死亡逸失利益は、本来であれば被害者が将来にわたって徐々に得ていたはずの収入を一括で受け取るものです。

一括で受け取ることで、本来なら生じなかったはずの利息などの運用益が生じる可能性があります。このような運用益を控除するための係数がライプニッツ係数です。

ライプニッツ係数は、就労可能年数に応じて以下のとおり定められています。

就労可能年数とライプニッツ係数(抜粋)

就労可能年数ライプニッツ係数
1年0.97
5年4.58
10年8.53
20年14.88
30年19.60

※令和2年4月1日以降に発生した交通事故に適用

このように、死亡逸失利益の計算は非常に複雑になります。

死亡逸失利益のおおよその金額を知りたい場合は、以下の計算機をご利用ください。弁護士基準で計算した死亡慰謝料と死亡逸失利益の金額が、10秒で計算できます。

具体例を当てはめて死亡逸失利益を計算している関連記事『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』もあわせてお読みください。

葬儀費用

葬儀費用とは、通夜や葬儀、火葬、墓石といった葬儀関係の費用です。葬儀費用の支払いの基準は、自賠責基準と弁護士基準で異なります。

自賠責基準の葬儀費用

自賠責基準の場合、葬儀費用として一律100万円が支給されます。

弁護士基準の葬儀費用

弁護士基準の場合、葬儀費用として、原則的に150万円を上限に実費が補償されます。

ただし、はなれた土地で葬儀をする必要があった、事故が発生した土地と被害者の地元で2度葬儀を行った、手厚い葬儀をすることに相当な理由があるといった事情があれば、150万円以上の支払が認められることがあります。

また、事情によっては通夜・葬儀・四十九日までの法要に関する費用のほか、以下のような費用も請求可能な場合があります。

請求可能な費用

  • 火葬料
  • お墓の設置、墓石の購入費
  • 仏壇、仏具の購入費用

その他にかかった費用については相手方との交渉しだいとなるため、あとから請求できるように、支払った金額がわかる領収書を保管しておくようにしましょう。

なお、香典返しは原則的に請求することができません。

亡くなるまでに治療を受けた場合の費目

交通事故の発生後、一定期間の入院や通院治療を経て被害者が亡くなることもあります。そのような場合は、以下のような治療に関する費目も請求可能です。

  • 治療費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 付添看護費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故のケガが原因で生じた肉体的・精神的苦痛を緩和するために支払われる金銭のことで、治療期間に応じて金額が決まります。

入通院慰謝料を含めたさまざまな状況における慰謝料の相場を知りたい方は『交通事故の慰謝料相場|怪我・事故状況・被害者の属性別にわかる金額』の記事をご確認ください。

死亡事故の示談の流れと注意点|賠償金の分配方法は?

死亡事故では、被害者に代わりご遺族が慰謝料請求などをします。また、本来被害者本人が受け取るはずだった慰謝料・賠償金は、ご遺族(相続人)内で分配される流れです。

慰謝料請求にあたりご遺族がすべきことや、慰謝料・賠償金の分配方法を見ていきましょう。

示談から訴訟までの流れと示談時の注意点

死亡事故発生から慰謝料を請求するまでの流れは、まず示談交渉から始まることが多いです。そして、示談交渉でお互いに一定の納得が得られたら、死亡事故の示談金を受け取ります。

一方で示談不成立となったときは、民事裁判を提起し、裁判所の判断を求める流れです。

死亡事故の示談から訴訟までの流れは以下のようになります。

適切な示談開始時期

葬儀が終わると示談交渉を始められるようになる。
四十九日を過ぎたころが多い。

示談交渉

示談交渉で死亡慰謝料・損害賠償金を決定。

示談成立の場合

双方が示談条件に合意すれば、示談書を交わして示談金を受け取る。

示談不成立の場合

示談以外の方法として民事裁判などで解決を目指す。

損害賠償金を受け取る

判決内容のとおり損害賠償金を受け取る。

死亡事故の流れ(示談交渉成立と不成立の場合)

裁判となると長期化したり、弁護士費用がさらにかかったりと、被害者にとっても一定の負担増が考えられます。よって、示談で解決できる道を検討することが第一となっているのです。

示談交渉では、相手の任意保険会社と慰謝料額や過失割合などを話し合うことになります。示談においては以下の点に注意しましょう。

示談における注意点

  • 適正な死亡慰謝料を把握しておく
  • 死亡事故によって発生した損害(支出)を証明する領収書や資料をまとめておく
  • 示談交渉を弁護士に依頼するか検討する
  • 弁護士とやり取りする遺族代表を決める
  • どの程度の金額であれば示談に応じるのか、遺族の総意をまとめる

とくに重要なのは、弁護士への相談を検討することです。

加害者側の任意保険会社との示談交渉は、ご遺族自身でも行えます。
しかし、死亡事故のような被害の大きい事故の場合、慰謝料や損害賠償金が高額になりやすい分、示談交渉も難航しやすいです。

交渉がうまくいかなければ慰謝料や損害賠償金が数百万〜1,000万円以上少なくなってしまう可能性がありますし、相手の保険会社との交渉面で大変な苦労をする可能性もあります。

よって、適正な慰謝料額の確認も兼ねて各弁護士事務所が実施している無料法律相談を利用し、弁護士への依頼をあらかじめ検討しておくとよいでしょう。

なお、適切な死亡慰謝料の計算や損害を証明する書類の収集なども、弁護士に任せることが可能です。

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慰謝料・賠償金を早く得る方法

死亡慰謝料を含む損害賠償金は、基本的に示談成立後に受け取れます。
死亡事故では示談交渉が難航することが多く、受け取りまでに時間がかかり、経済的に困窮してしまう遺族の方もいらっしゃるでしょう。

死亡慰謝料を早く受け取りたい場合は、自賠責保険の仮渡金制度を利用する自賠責保険に対し被害者請求を行うなどの方法が有効です。

仮渡金制度とは?

自賠責保険の仮渡金制度とは、示談成立前に自賠責保険から一定の金額を受け取れる制度です。死亡事故の場合、仮渡金として290万円を受け取ることが可能です。

ただし、仮渡金はあくまで損害賠償金の一部を先に受け取れる制度なので、仮渡金として受け取った金額は、最終的な慰謝料・損害賠償金から控除されます。

被害者請求とは?

また、自賠責保険に対する被害者請求とは、自賠責保険に対して慰謝料・損害賠償金を直接請求する手続きのことです。

通常、交通事故の慰謝料・損害賠償金は、示談成立後に加害者側の任意保険会社から、自賠責保険分も含めて一括で支払われます。
しかし、被害者請求を行えば、加害者側の任意保険会社との示談成立前に、自賠責保険分の金額を直接受け取れるのです。

なお、自賠責保険から支払われる慰謝料・損害賠償金には上限が定められており、被害者の死亡に関する費目については、死亡慰謝料と死亡逸失利益の合算で3,000万円が上限となります。

交通事故の被害者請求については関連記事『交通事故の被害者請求とは?』でくわしく解説しているので、参考にしてみてください。

損害賠償金の分配方法

死亡した被害者本人分の死亡慰謝料を受け取るのは、原則的に遺族の中から選出される相続人です。相続人は、被害者に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となります。

そのうえで以下の順番で相続人を選出するのです。

相続人の順番

  1. 被害者の子、子がいなければ孫
  2. 被害者の両親(養父母も含む)
  3. 被害者の兄弟姉妹

被害者本人分の死亡慰謝料は相続人の間で分配されます。一方で、被害者遺族の慰謝料に関しては、その遺族が受け取るのです。

たとえば、死亡慰謝料の内訳が被害者本人分2,200万円、父母各300万円であった場合を考えてみます。
この場合、遺族である父母がそれぞれ300万円を受け取り、被害者本人分の2,200万円を相続人である父母が分配することになるでしょう。

どれくらいの割合で分配するかは、以下のいずれかの方法によって決まります。

  • 遺産分割協議で決める
  • 遺言状の内容に従う
  • 法定相続分に沿う

それぞれについて解説します。

遺産分割協議で決める

被害者本人分の死亡慰謝料や損害賠償金を相続人の間でどのように分配するかは、相続人同士の合意により自由に決定できます。

相続人の間の協議で相続財産の分配方法を決定することを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議によって分配の割合を決める場合は、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。決まったことを書面で残しておくことで、のちのちの争いを避けられます。

遺言状の内容に従う

また、故人が正しい形式の遺言状を残していた場合は、遺言状の記載にのっとって決定することも可能です。

遺言状が正しい内容か判断できない場合は、弁護士にご相談ください。

法定相続分に沿う

民法900条では、各相続人が受け取れる遺産の割合(法定相続分)を以下の表のとおり定めています。死亡慰謝料や損害賠償金をどのように分配するか決める際は、法定相続分を基準とすることも多いです。

遺族の法定相続分の割合

相続人割合
配偶者と子配偶者1/2、子1/2
配偶者と親配偶者2/3、親1/3
配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
親と子供子供のみ
親と兄弟姉妹親のみ
配偶者のみ配偶者のみ
子のみ子のみで均等にわける
親のみ親のみで均等にわける
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹のみで均等にわける

たとえば、被害者に配偶者1人、子供2人、親1人、兄弟姉妹1人というケースで、法定相続分を基準とした場合、どのように死亡慰謝料や損害賠償金を分配するのか考えてみましょう。

上記のケースの場合、相続人は「配偶者と子」になります。
よって、配偶者に1/2、子供に1/2(子供は2人いるので、各自1/4ずつ)の割合で分配することになるでしょう。

遺産(死亡慰謝料・死亡逸失利益)の分割や相続人の決め方は、以下の記事でより詳しく解説しているので確認してみてください。

死亡慰謝料や死亡事故の保険金に関するよくある質問

次に、「死亡慰謝料に税金はかかるの?」「死亡事故の賠償金と保険金の関係」といった、死亡慰謝料に関するよくある質問にお答えしていきます。

Q1.死亡慰謝料に相続税はかかる?

遺族が受け取る死亡慰謝料は原則として非課税であり、所得税・相続税はかかりません。

また、死亡慰謝料だけではなくその他の損害賠償金も原則としては非課税になります。

ただし、例外として、以下の各項目については収入と同等に考えられ、課税対象となることがあります。

  • 搭乗者傷害保険の死亡保険金
  • 自損事故保険の死亡保険金
  • 人身傷害保険の被害者の過失割合に相当する部分の保険金

慰謝料に生じる可能性がある税金について詳しく知りたい方は、『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース|いくらまで非課税?税金別に解説』の記事をご覧ください。

Q2.自動車保険と生命保険の両方から保険金はもらえる?

交通死亡事故の被害者に対しては、相手の自動車保険による損害賠償金と、ご自身で加入している生命保険からの保険金のそれぞれが支払われる流れです。

具体的な例を挙げて説明します。

事故の相手方保険会社から6,000万円の損害賠償金の支払いを受けたとしましょう。そして、被害者自らで加入していた生命保険がある場合、保険契約にしたがって1,000万円が支払われたときには、合計7,000万円を受け取れるのです。

Q3.死亡慰謝料の請求に時効はある?

交通事故で損害賠償を請求する権利には、時効が定められています。

時効までの期間は交通事故で生じた損害によって異なり、死亡による損害については、死亡した日の翌日から5年となります。

2017年4月1日以降に発生した交通事故の場合、時効までの期間は以下のとおりです。

損害賠償請求権の消滅時効(抜粋)

損害の種類時効期間
物損に関する損害事故発生日の翌日から3年
人身に関する損害
(後遺障害による損害以外)
事故発生日の翌日から5年
人身に関する損害
(死亡による損害)
死亡した日の翌日から5年
加害者不明の損害※事故発生日の翌日から20年※※

※2017年3月31日以前に発生した事故にも適用される可能性がある。
※※途中で加害者が判明した場合は、判明した日の翌日を起算日とし、物損部分は3年、人身部分は5年で時効となる。

なお、保険会社への保険金の請求は、上記の表にかかわらず起算日から3年で時効となるので注意してください。

死亡事故では、示談交渉や民事裁判に時間がかかることが予想されます。
もし、時効の完成が近づいているのであれば、弁護士に相談し、時効の完成を阻止する措置を行うとよいでしょう。

Q4.生活保護受給者が死亡慰謝料を受け取るとどうなる?

死亡事故の慰謝料に限らず、生活保護受給者が保険金を受け取った場合には、原則として交通事故後に受け取った保護費を福祉事務所の定める額で返還しなければなりません。

補償の性質を持つ慰謝料であっても、生活保護法の定める「資力」にあたり、一時的な収入があったとみなされるためです。

なお、保護費は必ずしも全額返還しなければならないというわけではありません。返還する金額に関しては、将来の自立助長を踏まえて決定されます。

自治体によっては機械的に保護費の全額返還を指示される場合もあるようですが、その場合もすぐに返還せず、まずは弁護士やケースワーカーに相談するとよいでしょう。

死亡慰謝料の請求は弁護士にご相談ください

死亡慰謝料を請求する際は、弁護士への相談・依頼を一度ご検討ください。
ここからは、死亡慰謝料の請求について弁護士に依頼するメリットや、実際の増額事例を紹介していきます。

メリット(1)加害者側との交渉を一任できる

交通事故で近親者が亡くなった際の遺族の悲しみは計り知れません。
悲しみを少しでも軽くするためにも、適正な慰謝料を受け取ることは大切です。

もっとも、近親者が亡くなった悲しみの中で、加害者側と示談交渉を行うのは大きな負担になります。

とくに、死亡事故は賠償額が高額になるぶん示談交渉が難航することが多く、その点からも遺族の負担が重くなることが予想されます。

弁護士に依頼いただければ、法律の専門家として遺族の代わりに加害者側との交渉を弁護士が請け負います

また、もし示談交渉が決裂し、民事裁判に臨まなければならない場合も、弁護士に任せることが可能です。加害者側との交渉に振り回されないためにも弁護士への相談をご検討ください。

メリット(2)死亡慰謝料の増額が期待できる

弁護士が示談交渉をおこなうことで死亡慰謝料の増額が見込めることも、弁護士に依頼するメリットのひとつです。

加害者側の任意保険会社が用いる「任意保険基準」で計算した死亡慰謝料は、「弁護士基準」で計算した死亡慰謝料の半分~3分の1程度の金額にとどまる場合もあり、十分な金額とは言えません。

しかし、遺族自身で弁護士基準にもとづく死亡慰謝料を支払うよう求めても、加害者側の任意保険会社が受け入れることは少ないでしょう。

死亡事故では慰謝料や損害賠償金が高額になりやすいため、加害者側の任意保険会社は支払う金額を少なくしようと、強硬な態度で示談交渉に臨むことが多いのです。

しかし、弁護士が示談交渉を行えば、加害者側の任意保険会社は裁判への発展を恐れ、態度を軟化させる傾向にあります。

よって、示談交渉段階から適正な死亡慰謝料を受け取りたい、相手方の提示額から増額させたいときは、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士ありの増額交渉

弁護士に依頼して死亡慰謝料が増額された事例

実際にアトム法律事務所で解決した事案のうち、死亡事故の損害賠償金増額を実現した事故を紹介します。

この事故は、信号無視のトラックが軽自動車に突っ込み、軽自動車を運転していた女性が亡くなったという痛ましい事故です。

加害者側の刑事裁判に不服を感じたご遺族が、民事の損害賠償で報いることはできないかとアトム法律事務所のLINE無料相談から相談いただいたのがきっかけでした。

弁護士はご遺族の意向を尊重し、着手段階から民事訴訟を前提とした活動を開始しました。裁判所からは、被害者本人とご遺族への慰謝料を裁判基準まで増額し、さらに遅延損害金と弁護士費用を上乗せした和解案の提示を受けたのです。

その結果、当初の保険会社提示額から1,000万円以上増額した3,200万円にて和解に至りました。

死亡事故は被害者遺族にとって非常に無念なものです。突然命を奪われた被害者本人とご遺族の想いを十分に理解し、最善のサポートをいたしました。

アトム法律事務所では重傷・死亡事故についても多くの解決ノウハウを持っていますので、気兼ねなくお問い合わせください。

本解決実績の詳細は「死亡事故の増額事例」のページにて紹介しています。

なお、「交通事故の解決実績」のページではその他の事故解決実績をまとめていますので、アトム法律事務所の解決実績を知りたい方はご一読ください。

弁護士費用の負担軽減方法がある

交通事故の賠償請求を弁護士に任せるときには、弁護士費用が必要になります。具体的には、弁護士との法律相談料、成功報酬金、日当、実費などが必要です。

弁護士費用特約があれば、保険約款にもとづいて弁護士費用を保険会社が支払ってくれます。多くの場合で約款の範囲は300万円程度となっていることが多く、被害者が支払う弁護士費用の負担を大きく減らすことが可能です。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約の利用可否は、保険会社の契約状況を確認してみてください。

関連記事『交通事故の弁護士費用相場はいくら?弁護士費用特約を使って負担軽減』では、交通事故における弁護士費用の相場や内訳について解説しています。弁護士費用にご不安がある方は参考にしてみてください。

電話・LINEによる無料法律相談のご案内

アトム法律事務所では、無料法律相談の予約を24時間365日受け付けています

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死亡事故の慰謝料に関してお悩みであれば、まずはお気軽にお問合せください。交通事故に精通した弁護士が疑問にお答えし、適切なアドバイスが可能です。

相談は電話・LINEで実施しているため、さまざまな手続きで忙しく、来所する時間が取れない遺族の方も、手軽にご利用いただけます。

相談のみのご利用や、セカンドオピニオンとしてのご利用でも大丈夫です。皆様からのお問合せをお待ちしています。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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