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交通事故の慰謝料に税金はかかるのか|課税対象になる事例と税務上のポイント

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故により支払われる慰謝料に税金はかかるのか?

交通事故後、相手方から慰謝料を受け取った場合、あるいは被害者側の任意保険から保険金を受け取った場合、原則として税金はかかりません。
ただし、一部例外があります。

これからその例外についても解説していくので、交通事故の被害に遭われた方はぜひご参考になさってください。

交通事故の慰謝料に税金はかからない

交通事故の慰謝料は原則として非課税になります。

それは、交通事故によって与えられた精神的損害を慰謝料という形で補てんしてもらっているだけで、被害者の方は利益を得ているわけではないためです。マイナスをゼロに戻しているだけと考えましょう。

慰謝料と同様に、休業損害・修理費・死亡慰謝料・後遺障害慰謝料・逸失利益といった賠償項目も非課税となります。

所得税法第9条1項17号所得税法施行令第30条1号~3号で損害賠償金は非課税とする規定が定められているため、気になる方は参考にしてください。

慰謝料の計算方法を知りたい方は『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』の記事で確認可能です。

税金がかからない保険金を紹介

交通事故においては、加害者からではなく、加害者や被害者が加入している保険から保険金の支払いを受けることが多いでしょう。
以下の保険金については、支払いを受けても税金がかかりません。

自賠責保険の保険金

自賠責保険はすべての車の所有者に加入が義務付けられている保険です。

人身事故にあった交通事故被害者に対して最低限の補償をすることを目的として運用されています。
被害者や被害者遺族が相手方の自賠責保険から保険金を受け取った場合、全額非課税です。

対人賠償保険の保険金

対人賠償保険とは、人身事故を起こしてしまった際、自賠責の限度額を超えた分の賠償金を支給してくれる保険のことです。

事故の相手方の任意保険に対人賠償保険が付いている場合、被害者の方は相手方の対人賠償保険から保険金を支払ってもらうことができます。
対人賠償保険から受け取った保険金も全額非課税です。

無保険車傷害保険の保険金

無保険車傷害保険とは、加害者が任意保険に未加入であったり、ひき逃げされたために加害者が明らかでない場合の交通事故により、被害者が死亡または後遺障害を負った場合に保険金を支払ってくれる保険をいいます。

無保険車傷害保険から受け取った保険金も全額非課税です。無保険車相手の事故や、当て逃げ・ひき逃げの対処法や慰謝料請求について詳しく知りたい方は関連記事をお役立てください。

税金がかかってしまうケースについて紹介

交通事故により被害者が得られる金銭のすべてに税金がかからないわけではありません。
交通事故後に、以下のような金銭を受け取った場合は課税対象になりうる点にご注意ください。

明らかにケガの態様と釣り合っていない高額すぎる慰謝料を受け取った

加害者本人から高額すぎる慰謝料や見舞金をお詫びとして受け取った場合、課税対象になる可能性があります。

むちうちや骨折程度で数万円の慰謝料が支払われたのであれば課税されるようなことは通常ありません。
しかし、加害者本人が強い反省の意を示し、数百万円もの明らかに高額すぎる慰謝料を支払ってきたような場合だと、課税されることがあります。

事業所得の補てんに保険金を受け取った

被害者が所有するトラックに加害車両が突っ込んできて商品が破損した場合、商品代を相手方に補償してもらうことが可能です。

しかし、以下の国税庁ホームページにおける『(1)商品の配送中の事故で使いものにならなくなった商品について損害賠償金などを受け取ったケース』で解説されている通り、相手方から受け取った商品代は収入金額と代わる性質を持つものであるため、税金がかかります。

上記判断の根拠となる条文は、所得税法施行令第30条2号の除外事由≪第九十四条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。≫および所得税法施行令第94条です。

30条2号では、「事業所得の収入金額とされる保険金等」は課税対象になると示されているため、事業所得として算定される棚卸資産・商品代を補てんするために支払ってもらった保険金には税金がかかることがわかります。

そして以下に引用する94条でどういった項目が「事業所得の収入金額とされる保険金等」に該当するのか具体的に示されているため、気になる方はぜひお目通しください。

第九十四条 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので、その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは、これらの所得に係る収入金額とする。

一 当該業務に係るたな卸資産(第八十一条各号(譲渡所得の基因とされないたな卸資産に準ずる資産)に掲げる資産を含む。)、山林、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの又は著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)につき損失を受けたことにより取得する保険金、損害賠償金、見舞金その他これらに類するもの(山林につき法第五十一条第三項(山林損失の必要経費算入)の規定に該当する損失を受けたことにより取得するものについては、その損失の金額をこえる場合におけるそのこえる金額に相当する部分に限る。)

二 当該業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの

所得税法施行令第94条

被害者の勤め先から収入と同様の性質を持つ見舞金を受け取った

被害者が事故のケガで休業せざるをえなくなった場合、相手方から休業損害が支払われます。この休業損害については原則非課税です。

ただ、休業損害だけでは元々の給与所得を全額カバーでるとは限りません。
その際、休業損害では補償しきれない差額を補てんするために被害者の勤め先が見舞金を支払ってくれることがあります。

しかし、被害者の勤め先が支払ってくれた見舞金は収入と同様の性質を持っているため、課税対象となる可能性が考えられるのです。

示談金を受け取る前に被害者が死亡し、遺族が債権を相続した

稀なケースですが、被害者の方が示談を締結した後、示談金を受け取る前に亡くなってしまう場合があります。
その際、遺族が示談金の請求権を相続して示談金を受け取ることになるのですが、受け取った示談金には相続税がかかるのです。

事故の際に被害者が死亡し、遺族が死亡慰謝料を受け取るのであれば税金はかかりません。
しかし、示談金の請求権を遺族が相続した場合は課税対象となる点にご注意ください。

交通事故の被害者が死亡した場合には、被害者の遺族のうちの誰が相続人となるのかについては『交通事故の慰謝料|遺産分割できる相続人は?相続分はどれくらい?』の記事で確認可能です。

搭乗者傷害保険から死亡保険金が支払われる

搭乗者傷害保険とは、契約車両に乗車していた方が交通事故により死傷した際、乗車していた方に対して保険金が支払われる保険のことです。

搭乗者傷害保険も原則的には全額非課税ですが、死亡時に支払われる死亡保険金は課税対象となります。

被保険者・保険料の負担者・保険金受取人の関係性に応じて、死亡保険金には所得税・相続税・贈与税のいずれかが課税されます。

死亡保険金の課税関係の表

被保険者保険料の負担者保険金受取人税金の種類
ABB所得税
AAB相続税
ABC贈与税
引用:No.1750 死亡保険金を受け取ったとき(国税庁)

上記の表は、A、B、Cをそれぞれ異なる人物としています。
例えば、被保険者と保険料の負担者が別人であり、負担者が保険金受取人と同一人物の場合は所得税が課されることになるのです。

なお、搭乗者傷害保険の死亡保険金だけではなく、後述する他の保険の死亡保険金も同様に課税されます。
課税額の算出方法については、以下の国税庁公式サイトをご参考になさってください。

自損事故保険から死亡保険金が支払われる

自損事故保険とは、被保険者本人が自損事故を起こしてしまった際に保険金が支払われる保険のことです。

自損事故保険も原則的には原則非課税ですが、死亡時に支払われる死亡保険金は課税対象となります。

医療保険・生命保険から死亡保険金が支払われる

被害者によっては、自動車保険とは別に医療保険・生命保険に加入している場合があります。
医療保険・生命保険では、交通事故に限らず事故で死傷した際に保険金が支払われます。

両保険ともに原則非課税ですが、死亡時に支払われる死亡保険金は課税対象となるのです。

なお、医療保険や生命保険については、相手方からの賠償金や被害者の自動車保険と関係なく保険金を受け取ることができます。
保険会社に請求しなければ保険金を受け取ることができないので、事故後は自分が加入している保険の内容をしっかりと確認するようにしましょう。

人身傷害保険の死亡保険金や被害者過失分の支払いを受けた

人身傷害保険とは、被保険者や契約車両に乗っていた方が死傷した際に支払われる保険金のことです。

人身傷害保険も原則的には全額非課税ですが、死亡時に支払われる死亡保険金は課税対象となります。
加えて、被害者側の過失があった場合に支払われる「過失分に相当する保険金」は損害賠償金ではないため課税対象です。

たとえば、被害者20:加害者80という過失割合の交通事故が起こり、1000万円の損害が生じたとします。
過失割合に基づき、被害者は相手方から800万円の賠償金を受け取ることができ、この800万円は非課税です。
しかし、自身の人身傷害保険から支払われる過失分の200万円は課税されます。

まとめ

事故で生じた損害を元に戻しているだけなので、基本的には交通事故の慰謝料税金はかからない、ということがおわかりになったでしょうか。

ただし、例外的に課税される可能性がある点にご注意ください。
また、保険金に関する課税の有無については、以下のようにまとめられます。

保険の種類と課税の有無

請求先保険の種類課税・非課税
相手方の自賠責保険自賠責保険非課税
相手方の任意保険対人賠償保険非課税
被害者の任意保険無保険車傷害保険非課税
被害者の任意保険搭乗者傷害保険原則非課税
死亡時は課税
被害者の任意保険自損事故保険原則非課税
死亡時は課税
被害者の任意保険医療保険
生命保険
原則非課税
死亡時は課税
被害者の任意保険人身傷害保険原則非課税
死亡時は課税
被害者の過失割合相当分には課税

自身が受け取ることのできる慰謝料や保険金のどの部分が課税対象となるのかを詳しく知りたい方は、交通事故事件を多く取り扱っている弁護士に聞いてみることをおすすめします。
弁護士であれば、課税対象の有無だけではなく、適切な金額の慰謝料を得る方法についても相談することが可能です。

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

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