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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
「人身事故にあったけど、慰謝料ってどれくらいが妥当?」
「少しでも多く慰謝料をもらいたい」
そんな方にまずお伝えしておきたいことは、相手方保険会社の提示額を鵜呑みにするべきではないということと、被害者ご自身も慰謝料の相場や計算方法、増額されるケースを把握しておくべきだということです。
慰謝料計算を相手方の保険会社任せにしていては、十分な金額は受け取れません。
この記事では、十分な慰謝料額を得るために知っておくべきことをまとめています。
これから示談交渉を始める方にも、現在示談交渉で苦戦している方にも役立つ内容となっているので、ぜひご確認ください。
目次
交通事故の慰謝料請求は、示談によって行われることが多いです。人身事故の発生から治療開始、示談までの流れは、大まかに次の通りです。
治療開始から示談までの流れ
示談とは、当事者同士(被害者と加害者)で慰謝料や損害賠償金などについて話し合い、合意することをいいます。
示談成立のためには、被害者・加害者双方の譲歩が必要不可欠であり、片方だけの主張を通すことを示談とはいいません。
なお、示談交渉は、ケガが完治すれば完治後に始められます。
しかし、完治しなければ症状固定のあと、示談交渉の前に後遺障害等級認定を受けなければなりません。
医学上一般的に承認された治療方法をもってしても、効果が期待できない状態
これ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態に達したこと
後遺障害等級認定によって等級が認定されれば、後遺障害に対する慰謝料・損害賠償金を請求できます。
示談交渉は、加害者側の保険会社から慰謝料や損害賠償金の金額をまとめた「示談案」を提示されて始まることが多いです。
人身事故の示談交渉がどう進むのか・示談交渉の流れについて詳しく知りたい方は、関連記事『人身事故の示談|このまま示談していいのか最終チェック』をご覧ください。
示談が成立すると、慰謝料を含む示談金は2週間程度でもらえます。
示談成立した直後にもらえるわけではないので、注意してください。
示談成立から示談金の獲得までの流れは、以下の通りです。
示談成立から示談金振り込みまでには、示談書の郵送期間や、保険会社側での事務処理期間があります。示談金をもらうまでは、およそ2週間はかかると思っておきましょう。
示談交渉によって損害賠償問題を解決するには、当事者双方の合意が必要です。
示談交渉で合意に至れなかった場合には、ADR機関の利用や民事裁判に移っていくことになるので、それぞれがどういうものか、紹介しておきます。
ADR機関では、弁護士などが第三者として中立的な立場から、被害者側と加害者側それぞれの主張を聞きます。そして、聞き取った内容をもとに問題解決のための提案を行ってくれます。
ADR機関を利用するメリットは、費用がかからない点、裁判よりスピーディな解決が望める点です。
しかし、問題解決のためには当事者双方の合意が必要なので、ADR機関を利用しても合意に至れず、問題が解決できない可能性もあります。
民事裁判とは、損害賠償問題について裁判所で主張を行い、裁判官から判決を受けることです。
判決の内容に当事者双方の合意は必要ないので、どうしても合意形成ができない場合には有効でしょう。
ただし、被害者にとって不利な判決が出る可能性もあること、手続きに費用・時間・手間がかかることには要注意です。
なお、民事裁判では判決に至る前に「裁判上の和解」によって問題が解決することもあります。
裁判上の和解とは、裁判官の関与によって当事者双方の合意が形成されて、判決を受けずに問題が解決されることです。
弁護士を立てない状態で示談交渉を行い、行き詰った場合は、ADR機関の利用や裁判を検討する前に、弁護士への相談・依頼も検討してみてください。
弁護士の介入を受けることで、示談交渉によって満足のいく合意ができる可能性があります。
一定の回数・時間内なら無料で法律相談を受け付けている法律事務所も多数あり、アトム法律事務所でも、無料の電話・LINE相談を行っています。
慰謝料は、人身事故の場合のみ支払われるのが原則です。
人身事故とは、交通事故のなかでも、人に何らかの死傷が発生した事故をいいます。一方、物損事故とは、物的損害のみが発生した交通事故のことです。
具体的な状況を例にして、人身事故と物損事故の違いをみてみましょう
人身事故の事例
物損事故の事例
人身事故と物損事故における損害の内容をまとめると、以下の通りです。
表:人身事故と物損事故の違い
事故 | 人の損害 | 物の損害 |
---|---|---|
人身事故 | あり | あり |
物損事故 | なし | あり |
人身事故の場合、人の損害・物の損害の両方が該当しますが、物損事故は物の損害のみです。
慰謝料は、事故で負った精神的苦痛を緩和するための金銭です。
この「精神的苦痛」は、ケガを負った苦痛や治療中に感じる苦痛、後遺障害が残った苦痛など、身体の損傷から生じるものを指しているので、「物が壊れた」ことによる精神的苦痛は含まれていません。
よって、身体の損傷が生じていない物損事故は原則慰謝料の対象外となります。
愛車や大切な自動車の損壊でも精神的苦痛が生じると考えられますが、それは修理費の支払いによって補償されるとされます。
これまでの裁判では、物の損害に対する慰謝料が認められたケースもありますが、原則は認められないと考えておきましょう。
表:慰謝料の有無
人身事故 | 物損事故 |
---|---|
慰謝料あり | 原則慰謝料なし |
補足|実務上のはなし
実務上は、物損事故として警察に届け出ていても、相手の保険会社が人身事故であると認めれば、慰謝料などの請求は可能です。
しかし、物損事故で処理していると、基本的に「実況見分調書」が作成されません。
実況見分調書は示談交渉の際、正しい事故状況を証明する重要な書類です。
示談交渉で事故状況についてもめた時、この書類がなければ交渉で不利となる可能性があります。
よって、示談交渉で不利にならないためにも、ケガをしたのであれば人身事故として届け出ることが大切です。
人身事故として警察に処理してもらうためには、病院で作成してもらった診断書を警察署に提出する必要があります。
人身事故として届け出る方法
事故にあったら、できるだけ早く病院を受診し、診断書を出してもらってください。
事故から時間が経ってから受診すると、事故とケガとの関連性がはっきりせず、人身事故として認められないリスクがあります。
病院への受診は、人身事故発生から3日以内が望ましいです。
一度は「物損事故」として届け出たものの、人身事故に切り替えたい人もいるでしょう。
交通事故で多いむちうちは、事故から数日後に発症することも多いです。
あとから痛み・しびれなどの症状が後から出てきて、物損事故として届けたことを後悔する人もいらっしゃいます。
そんな方でも、以下のように手続きをすれば、物損事故から人身事故への切り替えができます。
物損から人身への切り替え
ただし、事故からしばらく経って診断書を提出しても、その症状と事故の因果関係が証明しづらくなります。長くても、人身事故の発生日から7日から10日までには切り替え手続きを行ってください。
人身事故で請求すべき慰謝料は3種類あります。
たとえば、ケガが治療によって完治した場合には「入通院慰謝料」のみ請求できます。
一方で、後遺障害が残ってしまった場合には「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類が請求できる慰謝料です。
このように、被害者が負った損害によって請求すべき慰謝料が変わります。
慰謝料とは、交通事故の被害者が加害者に対して請求できる損害賠償金の一部です。
損害賠償金は示談交渉で金額が決められることが多いので、「示談金」と呼ばれることも多くあります。
示談金には、慰謝料のほかにも、治療費、休業損害、逸失利益、修理費用などが含まれています。示談交渉の際には、慰謝料以外の金額もしっかり確認して、示談金全体として適正な金額になるよう気を付けましょう。
人身事故で請求できる示談金(損害賠償金)の内訳は、『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!』で確認できます。
ポイント
人身事故の慰謝料には、3通りの計算方法があります。
それが、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準と呼ばれるものです。
それぞれの基準がどのようなものなのか、詳しく紹介します。
自賠責基準は、相手方の自賠責保険会社から支払われる慰謝料額を計算する基準です。
自賠責保険は交通事故被害者に最低限の補償をする保険です。
第一条 この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。
自動車損害賠償保障法
自賠責保険の支払額は法令「自動車損害賠償保障法施行令」によって決められており、あくまで最低限の水準となります。
任意保険基準とは、相手方の任意保険会社が慰謝料を計算する際に用いる基準です。
かつてはすべての任意保険会社で基準が統一され、公開されていました。しかし、現在は各任意保険会社が独自に金額設定し、非公開になっています。
これまでの事例から見ると、任意保険基準で計算された慰謝料は、自賠責保険の基準と同じ金額か、すこし高い金額になる傾向があるでしょう。
弁護士基準は、弁護士や裁判所が慰謝料を計算する際に用いる基準で、裁判基準とも呼ばれます。
これまでの裁判の結果(判例)に基づいて定められており、自賠責基準・任意保険基準の金額よりも、高額になります。
示談交渉で弁護士を立てれば、任意保険基準の金額を提示してくる相手方保険会社に対して、弁護士基準の金額を主張してもらうことが可能です。
弁護士基準は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」とばれる書籍もでも確認可能です。その書籍は表紙が赤いことから、通称「赤い本」ともいわれます。
自賠責基準では、入通院慰謝料は日額(4,300円または4,200円)に対象日数をかけて計算されます。法改正に伴い、人身事故の発生日によって日額が変わりますので注意してください。
表:自賠責保険の基準による慰謝料
2020年4月1日以降 | 2020年3月31日まで |
---|---|
日額4,300円 | 日額4,200円 |
日額をかける対象日は、次のいずれか短い方になります。
治療期間とは、最初に病院を受診した日から通院終了までと考えてください。
治療日数とは、治療期間のうち、実際に病院へ通って治療を受けた日のことです。
治療期間が2ヶ月、通院日数が22日の場合を例に、対象日数を考えてみましょう。
入通院慰謝料の計算
(1)治療期間・・・2ヶ月(60日)
(2)実治療日数・・・22日× 2=44日
(1)と(2)を比較すると、(2)44日の方が少ないです。
計算に用いる「慰謝料の対象日数」は44日になります。
任意保険基準は、相手方の任意保険会社における自社ルールとなっています。
詳細は公開されていませんので、明確に説明はできません。
あくまで自賠責保険の基準と変わらない程度になると考えてください。
弁護士基準では、日額ではなく、治療期間に応じて入通院慰謝料の目安が設定されています。
慰謝料の算定には、以下の算定表を使ってください。
算定表は2種類ありますが、基本的には重傷の表を使い、むちうち・打撲・かすり傷などの場合は軽傷の表を参照してください。
表:弁護士基準の慰謝料(重傷)
表:弁護士基準の慰謝料(軽傷)
慰謝料は、入院・通院の月数が交わるところが慰謝料額です。
「1月」は「30日」という意味です。
「1ヶ月」ではありませんので、暦によって左右されることはありません。
弁護士基準で算定したときの後遺障害慰謝料相場は、110万円から2,800万円程度です。後遺障害等級ごとに金額の目安が決められており、後遺障害等級が一つ違うだけで、何百万円も金額が変動する可能性もあります。
なお、同じ等級でも自賠責保険基準は弁護士基準より大幅に低額であり、決して十分なものとはいえません。
任意保険基準の金額は、各保険会社ごとに異なり非公開なので、ここでは割愛します。
等級 | 自賠責* | 弁護士 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650 (1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203 (1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150 (1,100) | 2,800 |
2級 | 998 (958) | 2,370 |
3級 | 861 (829) | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94(93) | 290 |
13級 | 57(57) | 180 |
14級 | 32(32) | 110 |
※()内の金額は2020年3月までに発生した交通事故に適用
※慰謝料の単位:万円
例えば、後遺障害10級に認定された場合、弁護士基準の後遺障害慰謝料は550万円です。しかし、自賠責基準で計算すると、後遺障害慰謝料は190万円程度になるでしょう。同じ後遺障害等級であるのに、算定基準が異なれば約360万円も違ってしまいます。
該当する後遺障害等級や慰謝料相場を後遺障害の症状別に確認したい場合は、『交通事故の慰謝料相場|症状別の相場金額を網羅!』をご覧ください。
上記の表を見てもわかる通り、適切な後遺障害慰謝料を得るためには、正しい後遺障害等級に認定されること、弁護士基準の金額を請求することの2点が大切です。
正しい後遺障害等級の認定を受けるためには、認定審査の申請方法、認定を受けるためのポイント、認定されない場合に考えられる理由などをしっかりおさえておかなければなりません。
詳しくは『交通事故の後遺障害認定とは?認定されるには?認定の条件やポイント』で解説しています。
また、加害者側の保険会社から提案される金額は弁護士基準より大幅に低いことが多いので、決してうのみにせず、弁護士基準の金額獲得に向けて交渉することが重要です。
弁護士基準の金額は被害者自身による交渉では獲得が難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。
死亡事故で請求できる慰謝料には、亡くなった被害者本人に対する死亡慰謝料と、遺族に対する近親者固有の慰謝料が含まれます。
死亡慰謝料の一覧表は、以下の通りです。
自賠責基準では被害者本人分の金額と遺族分の金額が別々に設定されているのに対し、弁護士基準ではあらかじめ遺族分の金額まで含めた金額が設定されています。
なお、任意保険基準の金額は各保険会社ごとに異なり非公開なので、割愛します。
これまでの傾向から、自賠責基準の死亡慰謝料と同じか、やや高くなる可能性はあります。しかし、弁護士基準の死亡慰謝料の金額には届きません。
表:死亡慰謝料の比較
被害者 | 自賠責 | 弁護士 |
---|---|---|
一家の支柱 | 400(350) | 2,800 |
母親・配偶者 | 400(350) | 2,500 |
独身の男女 | 400(350) | 2,000~2,500 |
子ども | 400(350) | 2,000~2,500 |
幼児 | 400(350) | 2,000~2,500 |
以下は該当する場合のみ | ||
+ 遺族1名 | 550 | – |
+ 遺族2名 | 650 | – |
+ 遺族3名以上 | 750 | – |
+ 被扶養者あり | 200 | – |
※慰謝料の単位:万円
※※遺族:被害者の配偶者、子、両親(認知した子、義父母などを含む)
※※※弁護士基準は、2020年3月31日までに発生した死亡事故については、()内の金額となります。
死亡事故の場合、通常の人身事故なら被害者自身が対応するようなことに遺族が対応しなければなりません。
他にも通常の人身事故とは違う点が多々あるので、死亡慰謝料の金額と合わせて確認しておく必要があります。
死亡事故の慰謝料や、遺族の方がすべきことについては『死亡事故の慰謝料相場はいくら?遺族が請求すべき損害賠償金の解説』で解説しているので、お役立てください。
人身事故による死亡慰謝料の相場は、弁護士基準で計算したとき、一家の支柱の死亡時に2,800万円、母親・配偶者の死亡時に2,500万円、独身の男女・子ども・幼児の死亡時に2,000万円~2,500万円が相場です。
この金額は弁護士基準で算定した場合の相場で、近親者・家族への慰謝料を含みます。
一家の支柱とは、経済的に家庭を支えていた人のことです。残された家族への影響の大きさから、一家の支柱に支払われる死亡慰謝料の相場が最も高くなります。
死亡した本人への慰謝料は400万円(法改正前:350万円)です。
さらに、死亡した本人への慰謝料とは別に、遺族の人数ごとに加算される慰謝料(近親者固有の慰謝料)が認められるほか、被害者に扶養者がいれば200万円が加算される仕組みがあります。
最も多くの死亡慰謝料がもらえるのは、被害者に扶養者を含む遺族が3人以上いる場合で、400万円+750万円+200万円=1,350万円です。
自賠責基準の金額は弁護士基準よりも低額に設定されています。また、自賠責基準では被害者の属性(社会的立場)に応じた金額差は設けられていません。
死亡事故では、本来被害者本人が受け取るべき慰謝料・損害賠償金は遺族が分割して受け取ります。
詳しい分割の配分については、『交通事故の慰謝料|遺産分割できる相続人は?相続分はどれくらい?』をご確認ください。
相手方の保険会社から提示される慰謝料は、自賠責基準か任意保険基準で計算されています。
しかし、同じ事故であっても、弁護士基準で算定した金額が最も高額です。
相手方の保険会社から提示された金額から増額したいなら、弁護士に依頼して、弁護士基準での金額獲得を目指しましょう。
被害者自身でも弁護士基準の主張をすること自体は可能ですが、相手方保険会社に聞き入れられない可能性が高いです。
弁護士なら以下の理由から、慰謝料増額を成功させられる可能性が高いので、増額交渉は弁護士に任せることをおすすめします。
後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料が請求できるようになります。
たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級が認定されなければ後遺障害慰謝料は請求できないので、認定を受けることは非常に大切です。
また、この記事で紹介した通り、後遺障害慰謝料の金額は後遺障害等級に応じて変わります。
本来認定されるべき等級よりも低い等級に認定されると、その分後遺障害慰謝料が低額になってしまうので、ただ等級の認定を受けるだけでなく、適切な等級に認定されることが重要です。
後遺障害等級には1級から14級までがあります。
各等級の認定基準や後遺障害等級認定の申請方法については、『後遺障害等級の一覧表|認定基準と認定の流れ、具体的な症状がわかる』をご覧ください。
後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料だけではなく逸失利益も請求できるようになります。
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで労働能力が下がり、収入が減ってしまった分への補償です。
後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害慰謝料・逸失利益という2つの費目が新たに請求できるようになるので、示談金全体の金額が大きく上がります。
表:後遺障害有無による慰謝料の違い
後遺障害 | 入通院慰謝料 | 後遺障害慰謝料 | 逸失利益 |
---|---|---|---|
あり | 〇 | 〇 | 〇 |
なし | 〇 | × | × |
逸失利益は、後遺障害によって労働能力が低下した期間(労働能力喪失率)における減収分を補償します。
労働能力喪失期間は原則として67歳までです。
逸失利益の具体的な計算方法が知りたい方は『逸失利益の計算|後遺障害14級や12級の逸失利益はいくら?』の記事をご覧ください。
むちうちの場合の注意点
むちうちの場合は、逸失利益の対象となる労働能力喪失期間が短く設定されます。
むちうちで認定されうる後遺障害等級は14級と12級ですが、労働能力喪失期間は14級で5年、12級で10年程度とされることが多いのです。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるポイントは、以下の記事にまとめてあります。
あわせてご確認ください。
過失割合とは、交通事故が起きた責任が、加害者と被害者それぞれにどれくらいあるのかを割合で示したものです。過失割合は、慰謝料や損害賠償金の金額とともに示談交渉で決められます。
被害者側に過失割合が付くと、受け取れる慰謝料や損害賠償金はその割合分減額されてしまいます。これが「過失相殺」です。
被害者側の過失割合が不当に高くなってしまうと、必要以上に示談金が減額されるということなので、過失割合は慎重に検討しなければなりません。
では、過失割合による示談金額への影響を考えてみましょう。
過失相殺が適用されないケース
上図は、適切に停車していたB車に対して、A車が後方から追突した状況を示しています。事故の責任はA車のみに認められ、過失割合はA:B=100:0です。
過失割合が100:0のとき、人身事故で生じたすべての損害について、A車側に賠償の責任があります。
よって、B車が受け取れる示談金は過失相殺されません。
過失相殺が適用されるケース
上図では、信号のない交差点において、A車は直進、B車は右折しようとして衝突しました。直進車が優先のため、過失割合はA:B=20:80となります。
つまり、人身事故で生じたすべての損害について、Aは20%、Bは80%責任を持たなくてはいけません。両者に過失割合が付くので、過失相殺が適用されます。
たとえばAが本来受け取れる示談金が400万円だったとしても、Bからは400万円の80%、つまり320万円しか受け取れません。残りの80万円分は、A自身の加入保険を使うなどして、自分でまかなう必要があります。
そればかりか、Bから損害賠償請求されていた場合は、相手に生じた損害の20%を支払わなければなりません。
きちんとした過失割合を確定させることが、適正な損害賠償金の獲得への第一歩となるでしょう。
過失割合は事故ごとに異なります。
『交通事故の過失割合|決め方と示談交渉のコツ』では、基本の過失割合をイラスト付きで紹介しています。過失割合に関する交渉のコツも紹介していますので、一度目を通してみてください。
この記事でも紹介したように、交通事故の慰謝料は次の基準にのっとって金額が決められます。
しかし、実際の交通事故にはそれぞれ特有の事情があります。
場合によっては事故ごとの事情を反映して、慰謝料が増額されることがあるのです。
慰謝料増額につながる事情のことを「増額事由」といいます。
ただし、相手方保険会社がわざわざ「今回の事故ではこういう事情により慰謝料が増額されます」と教えてくれるとは限りません。
そのため、被害者側が慰謝料の増額事由を把握しておき、被害者の方から増額を求める必要があります。
次の章では、慰謝料の増額事由を一部、事例を添えて紹介します。
ただし、増額事由はここで紹介するもの以外にも多くあるので、心当たりがある場合は弁護士に問い合わせてみてください。
弁護士基準の入通院慰謝料については、次のとおり増額の可能性に触れています。
生死が危ぶまれる状態が継続したとき,麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき,手術を繰返したときなどは,入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。
民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)2020
上記で言及されているケース以外にも、手術や治療の過程で感染症・合併症などのリスクがあった場合は、弁護士基準における入通院慰謝料が増額される可能性があります。
実際に慰謝料が増額された事例は、以下の通りです。
脛骨開放骨折による下肢機能障害(7級)及び下肢短縮(13級8号、併合6級)の会社員(男・固定時36歳)につき、(略)手術を受けたものの、左下肢の軟部組織の著しい欠損により感染の危険が高く、長期間にわたる入院を要したほか、骨癒合にも長期間を要する中で骨髄炎を発症し、再度入院加療を要したことなどから、傷害分360万円を認めた。
事故日平21.6.24 名古屋地裁平25.8.5 自保ジ1910・131
次のような行為は、加害者の故意もしくは重過失と判断され、慰謝料が増額される可能性があるので、見落とさないようにしましょう。
裁判では、次のような判決となった事例があります。
会社員(男・30歳)につき、加害者は無免許飲酒運転で合った上、逃走し、約2.9㎞にもわたり故意に引きずり死亡させたという殺人罪にも該当する極めて悪質かつ残酷なものであること、引きずられながら絶命した被害者の苦痛苦悶は筆舌に尽くしがたいこと、30歳にして妻、子を残して突然命を奪われた無念さを考慮し、本人分3500万円、妻子各250万円、合計4000万円を認めた
事故日平20.10.21 大阪地判平25.3.25 自保ジ1907・57
事故の概要
加害者のきわめて悪質な行為により、被害者の被った苦痛は相当なものであったと判断されました。また、被害者は30歳で、妻と子を残して突然命を奪われた無念さが考慮されました。
その結果、標準的な一家の支柱の死亡慰謝料は2,800万円ですが、4,000万円(本人分3,500万円、妻子各250万円)が認められたのです。
次のような加害者による不誠実な態度も、増額の事由となりえます。
ひとつの事例をみてみましょう。
被害者(男・9歳)につき、加害者は朝まで量が分からないくらい飲酒し、事故後救護せずコンビニで強力な口臭消しを購入し、衝突まで全く被害者に気がついていなかったにもかかわらず捜査段階ではこれを隠す供述をし、父母が事故後心療内科に通院したことから、基準額の3割増しを相当とし、本人分2750万円、父母各250万円、合計3250万円を認めた
事故日平16.12.2 大阪地判平20.9.26 自保ジ1784・15
事故の概要
この事例では、加害者の無責任かつ不誠実な態度や、父母が受けた精神的ショックの大きさを考慮し、慰謝料が3割増えました。
ここまで、人身事故の慰謝料が増額される事由と事例を紹介してきました。しかし、たとえ似たケースであっても、本当に増額されるか、どの程度増額されるかは示談交渉次第です。
まずは弁護士にお話を聞かせてください。内容をお伺いしたうえで、慰謝料の増額の見通しを伝えます。
なお、慰謝料が増額されるケースや減額されるケースなど、交通事故の損害賠償金に関することは『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』で包括的に解説しています。
合わせてご覧ください。
弁護士基準における人身事故の慰謝料は、慰謝料計算機を使って算定すると簡単に分かります。
上記のような方は、ぜひご利用ください。
結果は弁護士基準で表示されますので、増額交渉を検討している方は、目標金額に設定するのもオススメです。
計算機でわかるのはあくまでも機械的な計算結果なので、細かい事情まで反映した厳密な見積もりを知りたい場合は、弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所では、人身事故の慰謝料に関するお問い合わせを電話・LINE・メールにて無料で受け付けています。
弁護士による見積もりやアドバイスを聞いた後、必要ならば示談交渉や後遺障害等級認定の依頼をお受けします。
依頼にはご自身が費用がかかりますが、加入している保険に「弁護士費用特約」がついていれば、弁護士費用は保険会社に負担してもらえます。
弁護士費用特約が使えないご依頼者様でも、アトム法律事務所なら着手金が無料なので、示談金獲得前に費用をお支払いいただく必要はありません。
すぐにお金を用意できない方でも、安心してご相談ください。
弁護士費用特約や弁護士に依頼するメリットは、関連記事で解説しています。合わせて読んでみることをおすすめします。
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人身事故の慰謝料に関して、24時間・365日、無料相談予約を受け付けています。アトム法律事務所にお任せください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
英語:TOEIC925点
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