人身事故の慰謝料を多くもらうための計算方法|相場や増額事例を紹介

更新日:

人身事故の慰謝料

「人身事故の慰謝料はいくらが妥当?」
「人身事故でつらい思いをしたので、少しでも多く慰謝料をもらいたい」

このような悩みをお持ちの方にまずお伝えしたいのは、加害者側の任意保険会社が提示する慰謝料額を鵜呑みにするのは危険ということです。

加害者側の任意保険会社の提示をそのまま受け入れると、相場よりも大幅に低い金額しか受け取れない可能性があります。

この記事では、人身事故の慰謝料を十分に獲得するために必要な情報をまとめています。
人身事故の被害にあった方は、ぜひご確認ください。

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人身事故の慰謝料についての基礎知識

交通事故の慰謝料は「人身事故で受けた精神的苦痛の補償」

人身事故の被害にあうと、「治療において苦しい思いをした」「後遺障害が残って将来が不安」といった精神的苦痛を感じることになります。

このような精神的苦痛を金銭に換算し、補償するものが慰謝料です。

慰謝料は「人身事故にあったとき加害者側から受け取れるお金のすべて」と理解されていることもありますが、これは誤りです。

実際には、慰謝料は交通事故における示談金(損害賠償金)の一部になります。

交通事故の慰謝料は損害賠償金(示談金)の一部

示談金には、慰謝料のほかにも、治療費、休業損害、逸失利益、修理費用などが含まれます。

人身事故で請求できる示談金(損害賠償金)の内訳は、『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!』で確認できます。

慰謝料が認められるのは人身事故のみ|物損事故は対象外

慰謝料は、原則的に人身に損害が生じた「人身事故」のみ認められます。

物損のみが発生した「物損事故」では、慰謝料は原則として認められません。

物が壊れたことによる精神的苦痛は、修理費といった財産的な補償を受けることで慰められると考えられています。

よって、物損事故は原則的に慰謝料の対象外となるのです。

人身の損害が発生しているなら必ず人身事故として届け出よう

交通事故で人身の損害が発生しているなら、必ず警察に人身事故として届け出ましょう。

物損事故として届け出ている場合、慰謝料やケガの治療費などが認められない可能性があります。

人身事故として届け出るには、病院が発行した診断書を警察に提出することが必要です。

すでに物損事故として届け出ている場合は、人身事故への切り替えを行いましょう。
ただし、事故の発生から時間がたつと、警察に人身事故への切り替えを渋られてしまうことがあります。

上記のような事態を避けるためには、事故の発生から3日以内に病院で診察を受けること、7日~10日以内に切り替え手続きを行うことを心がけるとよいでしょう。

【補足】実務上の取り扱い

実務上は、警察に物損事故として届け出ていても、加害者側の任意保険会社が人身事故と認めれば、慰謝料やケガの治療費などの請求は可能です。

しかし、物損事故で処理していると、警察による「実況見分調書」が作成されないというデメリットがあります。

実況見分調書は、加害者側との示談交渉において事故状況を証明する重要な書類です。
示談交渉で争いが生じたとき、実況見分調書がないと、主張を認めてもらえない可能性が高くなります。

示談交渉で不利にならないためにも、交通事故でケガをしたら人身事故として届け出ることが大切です。

交通事故における慰謝料は3種類あり

人身事故で請求できる慰謝料は以下の3種類です。

人身事故の慰謝料の種類

  • 入通院慰謝料
    人身事故で入院・通院する中で生じる精神的苦痛に対する補償
  • 後遺障害慰謝料
    人身事故により後遺障害(※)が残ったことで生じる精神的苦痛に対する補償
  • 死亡慰謝料
    死亡事故の被害者と遺族の精神的苦痛に対する補償

※後遺障害とは、事故で残った後遺症のうち、一定の等級に認められた症状のこと

上記のとおり、人身事故で受けた精神的苦痛によって請求できる慰謝料の種類が変わります。

たとえば、人身事故でケガを負い、治療によって完治した場合は、「入通院慰謝料」が請求可能です。

また、人身事故でケガを負い、治療しても完治せずに後遺障害が残ってしまった場合は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類を請求することができるでしょう。

慰謝料の種類や増額・減額されるケースなど、交通事故の慰謝料に関することは『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』の記事で包括的に解説しています。あわせてご覧ください。

慰謝料は「算定基準」で金額が変わる

人身事故の慰謝料は、計算する際に用いる「算定基準」によって金額が変わります。

人身事故の慰謝料の算定基準には、以下の3種類があります。

人身事故の慰謝料の算定基準

自賠責基準自賠責保険会社が用いる基準。
交通事故の被害者に補償される最低限の金額。
任意保険基準任意保険会社が用いる基準。
自賠責基準と同程度か、やや高額な程度。
弁護士基準
(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる基準。
過去の判例をもとにしており、3つの基準の中で最も高額。
慰謝料金額相場の3基準比較

それぞれの基準について、さらに詳しく紹介していきます。

自賠責基準

自賠責基準は、加害者側の自賠責保険会社から支払われる慰謝料を計算する基準です。

自賠責保険は、交通事故の被害者に最低限の補償をする保険です。
よって、自賠責基準で計算した慰謝料は、最低限の金額になっていまいます。

第一条 この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。

自動車損害賠償保障法

なお、自賠責保険の支払額は「自動車損害賠償保障法施行令」によって決められています。

任意保険基準

任意保険基準は、加害者側の任意保険会社が慰謝料を計算する際に用いる基準です。

任意保険基準は、各任意保険会社が独自に設定し、公開されていません。

これまでの事例から見ると、任意保険基準で計算された慰謝料は、一般的に自賠責基準と同じ金額か、自賠責基準よりやや高額な程度となることが多いです。

弁護士基準

弁護士基準は、弁護士や裁判所が慰謝料を計算する際に用いる基準で、裁判基準とも呼ばれます。

弁護士基準はこれまでの裁判の結果(判例)に基づいて定められた、適正な金額といえるでしょう。
弁護士基準で計算した慰謝料は、自賠責基準・任意保険基準で計算したときよりも高額になります。

示談交渉で弁護士を立てれば、他の基準で計算した慰謝料を提示してくる加害者側に対して、弁護士基準で計算した金額を主張してもらうことが可能です。

人身事故の慰謝料の相場と計算方法

(1)入通院慰謝料|入通院したら請求

入通院慰謝料の計算方法は、算定基準ごとに異なります。
それぞれの算定基準における計算方法を見ていきましょう。

自賠責基準の入通院慰謝料

自賠責基準で入通院慰謝料を計算するときは、以下の計算式を用います。

自賠責基準の計算式

日額4,300円(※)×対象日数

対象日数としては、以下のうちいずれか少ない方を用います。

  • 治療期間(最初に受診した日~通院を終えた日)
  • 実際に治療した日数×2

※2020年3月31日以前に発生した事故の場合、日額4,200円

例として、2020年4月1日以降に発生した事故で、治療期間が90日、実際に治療した日数が50日の場合を考えてみましょう。

このとき、対象日数は、治療期間(90日)の方が実際に治療した日数×2(50日×2=100日)よりも少ないので、治療期間(90日)を採用します。

よって、入通院慰謝料は、4,300円×90日=38.7万円になります。

任意保険基準の入通院慰謝料

任意保険基準は、加害者側の任意保険会社が独自に定めています。

任意保険基準の詳細は公開されていませんので、ここでは説明を割愛します。

任意保険基準で計算した入通院慰謝料は、自賠責基準と変わらない程度になると考えてください。

弁護士基準の入通院慰謝料

弁護士基準では、日額ではなく、入通院の期間に応じて入通院慰謝料の目安が設定されています。

弁護士基準で入通院慰謝料の計算するときは、以下の算定表を用います。
算定表については、赤い本と呼ばれる「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」という書籍でも確認可能です。

算定表は2種類ありますが、基本的には重傷用の表を使います。
むちうち・打撲・かすり傷などの場合は、軽傷用の表を参照してください。

弁護士基準の慰謝料算定表(重傷用)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

弁護士基準の慰謝料算定表(軽傷用)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

算定表の使い方

  • 入院月数と通院月数の交わるところが慰謝料の目安。
  • 「1月=30日」として計算する。
  • 入通院日数に30日で割り切れない端数がある場合は日割計算を行う。

例として、入院0日・通院90日であるとき、弁護士基準で入通院慰謝料を計算すると、重傷の場合は73万円、軽傷の場合は53万円になります。

自賠責基準で計算した入通院慰謝料は、治療日数が90日の場合、38.7万円でした。

このことから、慰謝料を計算するときは、弁護士基準を用いるのが望ましいことがわかります。

自身の入通院慰謝料額を自動計算機で確認

自身の入通院期間から相場の入通院慰謝料の金額を知りたい方は、以下の自動計算機をご利用ください。

治療の開始日と終了日を入力するだけで相場の入通院慰謝料の金額を知ることが可能です。
ただし、交通事故の個別の事情を考慮すると金額が変わる場合がある点にご注意ください。

(2)後遺障害慰謝料|後遺障害が残ったら請求

後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級ごとに相場が定められています。

弁護士基準で算定したときの後遺障害慰謝料の相場は、110万円から2,800万円程度です。
後遺障害等級が一つ違うだけで、金額が何百万円も変動する可能性もあります。

なお、同じ等級でも自賠責基準は弁護士基準より大幅に低額であり、決して十分なものとはいえません。

自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料の目安は、以下の表のとおりです。
なお、任意保険基準の金額は、各保険会社ごとに異なり非公開なので、ここでは割愛します。

後遺障害慰謝料の相場(単位:万円)

等級 自賠責※弁護士
1級・要介護 1,650
(1,600)
2,800
2級・要介護1,203
(1,163)
2,370
1級1,150
(1,100)
2,800
2級998
(958)
2,370
3級861
(829)
1,990
4級737
(712)
1,670
5級618
(599)
1,400
6級512
(498)
1,180
7級419
(409)
1,000
8級331
(324)
830
9級249
(245)
690
10級190
(187)
550
11級136
(135)
420
12級94
(93)
290
13級57
(57)
180
14級32
(32)
110

※()内の金額は2020年3月31日までに発生した事故に適用

例えば、後遺障害10級に認定された場合、弁護士基準の後遺障害慰謝料は550万円です。
一方、自賠責基準で計算すると、後遺障害慰謝料は190万円になり、360万円も低くなってしまいます。

後遺障害がさらに重くなると、弁護士基準と自賠責基準で1,000万円以上の差が生じることもあります。

ご自身の症状が後遺障害何級に認定され、後遺障害慰謝料をいくら請求できるか確認したい方には、『交通事故の慰謝料相場|症状別の相場金額を網羅!』の記事がおすすめです。
後遺障害に認定され得る症状ごとに慰謝料の相場を解説しているので、あわせてご覧ください。

(3)死亡慰謝料|死亡事故で請求

死亡事故で請求できる「死亡慰謝料」には、亡くなった被害者本人に対する慰謝料と、遺族に対する近親者固有の慰謝料が含まれます。

自賠責基準では、被害者本人分の慰謝料と遺族分の慰謝料の目安が別々に設定されています。
一方、弁護士基準ではあらかじめ遺族分まで含めた慰謝料の目安が設定されています。

自賠責基準と弁護士基準の死亡慰謝料の目安は、以下のとおりです。

なお、任意保険基準の金額は各保険会社ごとに異なり非公開なので、ここでは割愛します。
これまでの傾向では、任意保険基準の金額は自賠責基準と同額~やや高額な程度です。

死亡慰謝料の目安(単位:万円)

被害者自賠責※弁護士
一家の支柱400(350)2,800
母親・配偶者400(350)2,500
独身の男女400(350)2,000~2,500
子ども400(350)2,000~2,500
幼児400(350)2,000~2,500
以下は該当する場合のみ
+ 遺族1名※※550
+ 遺族2名650
+ 遺族3名以上750
+ 被扶養者あり200

※()内の金額は2020年3月31日までに発生した事故に適用
※遺族とは、被害者の配偶者、子、両親(認知した子、義父母などを含む)を指す

死亡事故では、被害者本人が本来受け取るべき慰謝料・損害賠償金は遺族が分割して受け取ります。
詳しい分割の配分については、『交通事故の慰謝料|遺産分割できる相続人は?相続分はどれくらい?』をご確認ください。

また、死亡事故の慰謝料や、死亡事故で遺族がすべきことについては『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』の記事で解説しているので、お役立てください。

それでは、それぞれの基準の死亡慰謝料について、さらに詳しく見ていきましょう。

自賠責基準の死亡慰謝料

自賠責基準では、亡くなった被害者本人への慰謝料は400万円(2020年3月31日以前に発生した事故の場合は350万円)です。

上記の金額に加えて、遺族の人数ごとに加算される慰謝料(近親者固有の慰謝料)が認められます。また、被害者に扶養者がいればさらに200万円が加算される仕組みです。

自賠責基準で計算したとき、死亡慰謝料は最も高額でも1,350万円になります(被害者に扶養者を含む遺族が3人以上いる場合:400万円+750万円+200万円=1,350万円)。

弁護士基準の死亡慰謝料

交通事故の死亡慰謝料を弁護士基準で計算する場合には、被害者の家庭における立場により金額が異なります。

具体的には、一家の支柱の死亡時に2,800万円、母親・配偶者の死亡時に2,500万円、独身の男女・子ども・幼児の死亡時に2,000万円~2,500万円です。
この金額は弁護士基準で算定した場合の相場で、近親者・家族への慰謝料を含みます。

一家の支柱とは、経済的に家庭を支えていた人のことです。残された家族への影響の大きさから、一家の支柱に支払われる死亡慰謝料の相場が最も高くなります。

自賠責基準で計算した死亡慰謝料の最高額が1,350万円であったのに対し、弁護士基準で計算した死亡慰謝料の最高額は2,800万円です。

このことから、死亡慰謝料も、自賠責基準と弁護士基準で大きく金額の差が生じることがわかります。

人身事故の慰謝料を増額させるポイント

(1)人身事故後すぐに治療をはじめ、適切な頻度で通院する

人身事故に遭ったのであれば、事故後速やかに病院で医師の診断を受け、治療終了まで継続的に通院しましょう。

入通院慰謝料は入院・通院期間に応じて金額が決まるため、仕事や家事などを理由に通院を怠ると、適切な金額を請求できない恐れがあります。

また、通院の頻度が少ないと慰謝料が減額するおそれもあるため、医師の指示に従って適切な頻度で通院を行いましょう。

基本的には、週に2~3日、月に10日程度の通院を意識してください。

整骨院や接骨院への通院は医師の許可を得たうえで

病院ではなく整骨院や接骨院の治療を希望する場合は、病院において医師の許可を受けたうえで通院を行って下さい。

整骨院や接骨院では医師による治療を受けられないため、適切な治療でないとして、入通院慰謝料の対象となる通院とは扱われない恐れがあります。

しかし、医師の許可があれば、適切な治療であると主張できるため、整骨院や接骨院への通院についても入通院慰謝料の対象となるのです。

接骨院や整骨院で治療を受ける際の注意点について詳しく知りたい方は『交通事故の治療を整骨院で受けても慰謝料はもらえる|慰謝料の計算と注意点』の記事をご覧ください。

(2)後遺症が残ったら後遺障害の申請準備に力を入れる

後遺症が残ったら、後遺障害の申請準備を入念に行うことも、慰謝料を増額させるポイントになります。

後遺障害とは、「後遺症のうち、一定の等級に該当すると認められた症状」のことです。

後遺障害等級認定の申請準備をおろそかにすると、後遺障害等級に認定されなかったり、本来よりも低い等級に認定されたりする可能性があります。

たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級に認定されなければ後遺障害慰謝料は請求できません。
また、本来よりも低い等級に認定されると、その分後遺障害慰謝料が低額になってしまいます。

よって、適切な後遺障害慰謝料を受け取るためにも、正しい後遺障害等級に認定されることが非常に重要になるのです。

また、人身事故に多い「むちうち」は、症状が客観的にわかりづらいことから、後遺障害等級認定の申請をする際にとくに入念な準備を行う必要があります。

むちうちで認められ得る後遺障害等級は14級と12級です。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるポイントは、以下の記事にまとめてあるので、あわせてご確認ください。

(3)加害者側が提示する過失割合を疑う

過失割合とは、事故が起きた責任が、加害者と被害者それぞれにどれくらいあるのかを示したものです。

被害者側に過失割合が付くと、受け取れる慰謝料や損害賠償金がその分減額されてしまいます。
これを、「過失相殺」と言います。

示談交渉において、加害者側の任意保険会社は、被害者側の過失割合を高めに見積もって提示してくることがあります。
被害者側の過失割合が高くなれば、過失相殺によって、慰謝料や損害賠償金を多く減額できるからです。

では、被害者側に過失割合がつくと慰謝料・損害賠償金にどのように影響を与えるか、モデルケースから確認してみましょう。

モデルケース

事故状況図

信号のない交差点において、A車は直進、B車は右折しようとして衝突しました。
上記のような状況では、過失割合はA:B=20:80となります(修正要素がない場合)。

このとき、人身事故で生じたすべての損害について、Aは20%、Bは80%の責任を持たなければなりません。

上記のケースで、被害者であるAが本来受け取れる慰謝料・損害賠償金が400万円だった場合、加害者であるBからは400万円×80%=320万円しか受け取れません。

そればかりか、Bから損害賠償請求されていた場合は、Bに生じた損害の20%を支払わなければならなくなります。

もし、上記の事故で加害者側の任意保険会社から「A:B=30:70」といった過失割合を提示されており、そのまま受け入れてしまったら、被害者であるAが受け取れる慰謝料・損害賠償金はさらに減ってしまいます。

よって、加害者側から提示された過失割合が適切かは、慎重に検討する必要があるでしょう。

交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』では、事故パターン別に過失割合を紹介しています。過失割合に関する交渉のコツも解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

(4)過去の判例から慰謝料の増額事由を把握する

人身事故の慰謝料には、一定の計算方法や相場が設けられています。

しかし、場合によっては事故ごとの事情を反映し、慰謝料が増額されることがあります。

慰謝料増額の可能性のある事情とは、以下のようなものです。

  • 重傷により精神的苦痛が大きいと考えられた事例
  • 無免許運転や酒酔い運転など加害者側に故意もしくは重過失がある事例
  • 加害者の虚偽の証言をするなど態度が著しく不誠実だった事例

ただし、加害者側の任意保険会社は「今回の事故では通常よりも慰謝料が増額されます」と教えてくれるとはないでしょう。

そのため、被害者側が過去の判例などから慰謝料の増額事由を把握しておき、増額を主張していく必要があるのです。

(5)慰謝料が減額されてしまうケースも知っておく

人身事故の慰謝料は、増額されることもありますが、逆に減額されることもあります。

たとえば、以下のようなケースでは、慰謝料が減額されてしまう可能性があるでしょう。

  • 被害者にも過失割合がついた(過失相殺)
  • 被害者に持病があり、そのために被害が拡大した(身体的素因減額)
  • 被害者が治療に消極的だったため、治療が長引いた(心因的素因減額)
  • 通院頻度が低かった
  • 医師の許可なく整骨院に通っていた など

慰謝料の減額を防ぐためには、あらかじめ弁護士に相談しておくことをおすすめします。

上記の減額事由からもわかるとおり、人身事故の慰謝料は、治療期間中の経過によって減ってしまうことがあります。

知らず知らずのうちに慰謝料が減額されてしまうことを防ぐためには、事故が発生したら早めに弁護士に相談し、アドバイスを受けておくことが有効なのです。

(6)弁護士を立てて最高水準の金額を主張する

人身事故の慰謝料を増額させる方法としては、弁護士を立て、弁護士基準で計算した金額を主張することが挙げられます。

先述のとおり、弁護士基準は過去の判例にのっとった基準です。
弁護士基準で計算した慰謝料は、加害者側の保険会社が用いる自賠責基準や任意保険基準で計算した慰謝料よりも大幅に高額になります。

なお、被害者自身でも弁護士基準の主張をすることは可能ですが、加害者側の任意保険会社に聞き入れられない可能性が高いです。

一方、弁護士が交渉すれば、慰謝料の増額に成功する可能性が高くなります。
その理由は以下のとおりです。

  • 弁護士なら専門知識と資格を持っているので、説得力のある主張ができる
  • 弁護士が出てくると加害者側の任意保険会社は裁判に発展することを恐れ、示談交渉での態度を軟化させる

よって、人身事故の慰謝料の増額交渉は弁護士に任せることをおすすめします。

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人身事故の慰謝料を受け取るまでの流れ

治療開始から示談成立までのフローチャート

人身事故の発生から治療開始、示談成立までの流れは、大まかに次の通りです。

人身事故における治療開始から示談成立までの流れ

治療開始から示談成立までの流れ

  1. 治療の開始
  2. ケガが完治した場合、示談交渉を開始
  3. ケガが完治しない場合、症状固定(※)を経て後遺障害等級認定の申請
    後遺障害等級認定の審査結果が出たら、示談交渉を開始
  4. 双方が合意する示談内容が確定し、示談成立

※症状固定とは、これ以上治療しても症状の改善が見込めないと判断されること

示談とは、当事者同士(被害者と加害者)で慰謝料や損害賠償金などの問題について話し合い、合意によって解決を図ることを言います。

人身事故の示談がどのように進むのか詳しく知りたい方は、関連記事『人身事故の示談の流れや示談金額、注意点|基本からよくある疑問まで徹底解説』をご覧ください。

示談交渉で合意に至れなかった場合は?

示談交渉で納得のいく結果が得られず合意に至れなかった場合は、ADRや民事裁判などで損害賠償問題の解決を図ることになるでしょう。

ADRとは?

裁判外紛争解決手続きのこと。

裁判所以外の機関が第三者として当事者同士の話し合いを仲介し、問題解決のための提案を行ってくれる。解決には当事者同士の合意が必要。

民事裁判とは?

裁判所に判決を受けることで損害賠償問題の解決を図る手続きのこと。

示談やADRと異なり、当事者同士の合意がなくても解決を図れる。

ただし、被害者にとって不利な判決が出る可能性もあることや、手続きに費用や時間がかかることには注意が必要。

とくに民事裁判は、示談とくらべて多くの手間がかかってしまいます。

もし、示談交渉で行き詰まった場合は、ADRや民事裁判を検討する前に、弁護士への相談・依頼も検討してみるとよいでしょう。

弁護士の介入を受けることで、示談交渉で満足のいく解決に至れる可能性があります。

慰謝料が受け取れるのは示談成立から約2週間後

人身事故の慰謝料・損害賠償金は、示談成立から2週間程度で受け取れます。

示談成立から慰謝料・損害賠償金を受け取るまでの流れは、以下のとおりです。

慰謝料受け取りまでの流れ

  1. 加害者の任意保険会社から示談書が届く
  2. 示談書の内容に問題なければ署名や押印をして示談書を返送する
  3. 保険会社での事務処理が行われ、慰謝料・損害賠償金が振り込まれる

示談成立後すぐに慰謝料・損害賠償金を受け取れるわけではないので、その点に気を付けておきましょう。

人身事故の慰謝料の見積もり・請求は弁護士にご相談ください

電話・LINEによる無料相談で増額の見込みがわかる

人身事故の慰謝料の見積もり・請求については、交通事故問題に精通した弁護士に一度ご相談いただくことをおすすめします。

アトム法律事務所では、電話・LINEによる弁護士への無料相談を実施しています。

ご自宅にいながらスキマ時間で相談できるので、事故によるケガで外出が難しい方、弁護士への相談に敷居の高さを感じる方はぜひご利用ください。

弁護士にご相談いただくことで、個別の事情を反映した慰謝料の見積もりや、加害者側から提示された慰謝料の増額見込み、慰謝料を減額されないための方法などを知ることが可能です。

無料相談のみのご利用や、セカンドオピニオンとしてのご利用でも問題ありませんので、まずはお気軽にご連絡ください。無料相談の予約は24時間365日受け付けています。

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弁護士を立てるメリットを詳しく知りたい方、弁護士を立てて後悔しないか不安な方は、ぜひ以下の記事もお役立てください。

アトム法律事務所の慰謝料増額を実現した事例3選

アトム法律事務所にご依頼いただき、実際に慰謝料の増額を実現した事例を3つご紹介します。

むちうちで後遺障害非該当の事例

事例の概要

傷病名むちうち、腰捻挫
後遺障害等級非該当
当初の提示額47万円
最終回収金額157万円

上記の事例は、後遺障害等級に非該当であり、比較的軽傷と言えるものでした。

加害者側から提示された慰謝料・損害賠償金の金額に増額の余地があったため、弁護士が弁護活動を行ったところ、約3.3倍の157万円まで増額させることができました。

後遺症が残らない比較的軽傷の事例でも、慰謝料・損害賠償金が増額させられる可能性はあるので、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

むちうちで後遺障害12級の事例

事例の概要

傷病名頸椎捻挫
後遺障害等級12級
当初の提示額256万円
最終回収金額670万円

上記の事例は、弁護士にご相談いただいた時点で後遺障害12級に認定されていたものです。

加害者側の任意保険会社から提示された慰謝料・損害賠償金は、弁護士基準の3分の1程度と非常に低い水準でした。弁護士が弁護活動を行ったところ、わずか1ヶ月で約2.6倍の670万円まで増額が叶いました。

弁護士を立てることで、スピード解決を目指すことも可能になります。

鎖骨骨折で後遺障害10級の事例

事例の概要

傷病名鎖骨骨折
後遺障害等級10級
当初の提示額621万円
最終回収金額2,300万円

上記の事例では、被害者の方が重傷を負われているうえ、遠方のため来所が困難であったことから、アトム法律事務所のLINE相談をきっかけにご依頼をいただきました。

弁護士が交渉したところ、当初の提示額の約3.7倍である2,300万円まで増額が叶っています。この他にも、アトムの弁護士が実際に解決した事例を知りたい場合は「交通事故の解決事例」のページをご確認ください。

これまでご紹介してきたように、弁護士を立てることで慰謝料・損害賠償金が増額される可能性は高くなります。人身事故の慰謝料について加害者側と交渉する際は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

弁護士費用は保険のオプションで大きく軽減

弁護士を立てる際の弁護士費用が不安な方には、「弁護士費用特約」の利用をおすすめします。

弁護士費用特約は、自動車保険や火災保険などにつけられるオプションのひとつです。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を一定金額まで保険会社に負担してもらえます。

弁護士費用特約を利用することで、被害者自身が負担する弁護士費用が0円になることも珍しくありません。

弁護士費用特約

ご家族の保険に付帯されている弁護士費用特約も使えることがあるので、まずは保険の契約状況を確認してみることをおすすめします。

なお、弁護士費用特約を使っても、保険等級が下がり、翌年以降の保険料が上がることは基本的にありません。

弁護士費用特約については、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事において詳しく解説しています。

まとめ

  • 慰謝料は、原則的に人身事故の場合のみ請求できる。
  • 人身事故の慰謝料には「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3つがある。
  • 人身事故の慰謝料を少しでも多く受け取りたいなら、弁護士を立てて「弁護士基準」で計算した金額を主張するとよい。

人身事故の慰謝料は、被害者自身で交渉すると低額になってしまうことが少なくありません。

加害者側から適切な金額を支払ってもらうためにも、無料相談を利用し、一度弁護士からアドバイスを受けてみることをすすめします。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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