保険会社が示談書を送ってこない理由と対処法|交通事故の示談書が届くまでの期間も解説

交通事故の示談が成立したのに、保険会社から示談書がなかなか届かない…そんな状況に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
示談書の作成や郵送には保険会社内での手続きが必要なため、通常は1〜2週間ほどかかるのが一般的です。
しかし、それ以上遅れる場合は注意が必要です。この記事では、示談書が届くまでの期間や、保険会社が送ってこないときの理由と対処法、届いたあとの対応まで、わかりやすく解説します。
目次

保険会社から交通事故の示談書が届くまでの期間は?
保険会社から示談書が届くまでの期間は1~2週間で、示談成立後すぐに届くわけではありません。
また、示談書が届くと思っていたら免責証書や損害賠償計算書など別の書類が届いて戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
まずは、保険会社から示談書が届くまでの期間について詳しく解説するとともに、免責証書や損害賠償計算書についても説明していきます。
示談書が届くまでの期間は1~2週間ほど
示談が成立し、保険会社から示談書が届くまでは通常1~2週間ほどかかります。
すぐに届かないのは、保険会社の中でいくつかの手続きを踏む必要があるためです。
示談書が届くまでの流れ
- 保険会社が示談書を作成する
- 社内で内容のチェックや承認が行われる
- 加害者が署名する
- 被害者に郵送される
こうした流れを経るため、示談が成立してもすぐに示談書が届くわけではありません。
社内手続きや郵送のタイミングによっては数日〜1週間程度のズレがあることもあるため、目安として1~2週間と考えておくと良いでしょう。
示談書ではなく免責証書が届くこともある
示談書が届くと思っていたら、見慣れない「免責証書」という書類が届いて驚いた方もいるかもしれません。
任意保険会社からは、示談書ではなく「免責証書」が送られてくるケースも多くあります。
免責証書は、被害者のみの署名・押印で完結する書類で、加害者の署名は必要ありません。内容としては、示談書と同様に「今後これ以上の請求はしない」旨が記載されており、これによって示談が成立したことになります。
- 免責証書のメリット
- 加害者の署名を待たずに手続きを進められる
- 示談までのスピードが早い
- 注意点
- 被害者の署名のみで成立するため、加害者個人に対する拘束力は弱い
- 加害者本人との示談ではなく、保険会社との手続きで使用されるのが一般的
加害者側の保険会社と示談した場合は、免責証書でも示談金はきちんと支払われるでしょう。
しかし、加害者本人と直接示談するケースでは、加害者の署名・捺印のない免責証書だけでは「示談金を支払う約束なんてしていない」と言われてしまうリスクもあります。
加害者本人との示談では、加害者の署名・押印が入った「示談書」を取り交わすことが大切です。
示談前に送られてくる損害賠償額計算書(示談案)とは?
示談書が届く前に、保険会社から「損害賠償額計算書」あるいは「示談案」といった書類が送られてくるのが一般的です。
この書類は、賠償金の内容や金額の内訳に関する「加害者側の保険会社からの提案」をまとめたもので、ケガが治ったあとや後遺障害の認定が終わってから1ヶ月程度で届くことが多いです。
損害賠償額計算書の記載内容は次のとおりです。
- 事故の概要
- 損害の種類と金額(治療費、慰謝料、休業損害など)
- 過失割合
- 保険会社が支払う予定の損害賠償額
内容に間違いや訂正すべき点はないか確認し、問題があれば示談交渉に入ります。問題がなければそのまま示談成立となるでしょう。
ただし、損害賠償計算書に記載されている金額は、相場よりも低く計算されていることが多いです。
アトム法律事務所のように無料で相談を受けている事務所もあるので、不適切な提示内容を受け入れてしまわないよう、弁護士に確認を取ることが重要です。

関連記事『損害賠償額計算書や示談書が届いたら示談前にチェック|交通事故の示談金はいくら?』では、相手方からの提示内容をどのようにチェックすればいいかを解説していますので、参考にしてみてください。
保険会社が示談書を送ってこない理由
保険会社が示談書を送ってこない場合、考えられる理由はいくつかあります。代表的な理由を3つ解説するので、確認していきましょう。
担当者が忙しくて示談書作成が遅れている
保険会社の担当者が多忙で、示談書の作成や郵送が後回しになっている可能性があります。
通常、保険会社の担当者は複数の交通事故案件を同時に担当しており、交渉対応や社内の処理に追われていることも珍しくありません。
特に他の案件でトラブルや交渉の長期化が起きている場合、すでに示談が成立している案件は優先度が下がり、対応が遅れることもあります。
保険会社内での手続きに時間がかかっている
保険会社では、示談書を送付する前に社内での承認手続き(稟議)を経る必要があります。
この稟議の過程で時間がかかっていると、被害者への示談書の郵送が遅れてしまうことがあります。
特に、示談金が高額だったり、当初より大幅な増額があったりすると、保険会社内での確認がより慎重に行われるため、承認に時間がかかる傾向があるのです。
加害者が示談書に署名しない
示談書は、被害者と加害者の双方が署名することで正式に成立します。
そのため、保険会社から示談書が送られてこないときは、加害者の署名手続きが滞っている可能性があります。
示談書は通常、加害者が署名したうえで保険会社から被害者に郵送される流れになるため、加害者側の対応が遅れると、そのぶん発送も遅れることになります。
保険会社が示談書を送ってこないときの対処法
保険会社が示談書を送ってこない場合は、保険会社に問い合わせるようにしましょう。
しかし、「保険会社のどこに連絡すればいい?」「タイミングは?」「問い合わせて何と伝えればいい?」などの不安もあるでしょう。
そこでここでは、示談書を送ってこない保険会社に連絡を入れる時のポイントを解説します。
保険会社に問い合わせる|連絡先とタイミングは?
示談成立から2週間以上経っても保険会社から示談書が届かない場合は、担当者に連絡を入れてみましょう。
通常は、示談交渉中にやり取りしていた電話番号やメールアドレス宛に直接問い合わせるのがスムーズです。
担当者から返答がない場合は、保険会社のカスタマーサポート窓口に問い合わせることで、別の担当者に対応してもらえる可能性があります。
保険会社への問い合わせ時に伝えるべきこと
保険会社に問い合わせる際は、いつまでに示談書が届く予定かを具体的に確認しておくのがおすすめです。
目安の期日を聞いておくことで、他の業務に追われている担当者にも優先的に対応してもらいやすくなります。
また、「いつ届くのか」「そもそも届くのか」という不安も軽減され、今後の対応が見通しやすくなります。
保険会社から交通事故の示談書が届いたらすべきこと
保険会社から示談書が届いたら、内容をチェックして署名し、返送します。
ただし、署名・返送の前にはしっかり示談書の内容を確認することが重要です。具体的なポイントを解説します。
内容確認を確認して署名・返送する
示談書が保険会社から届いたら、まず記載内容に間違いや不明点がないかを丁寧に確認しましょう。
問題がなければ署名・押印して返送しますが、少しでも不明な点があれば、保険会社に連絡して説明を求めるのが安心です。
一度署名して返送すると、その内容で正式に示談が成立したとみなされ、原則としてあとから賠償請求や内容変更はできません。
示談内容に納得しているかどうかを冷静に判断し、慎重に署名することが大切です。
示談書でチェックすべき項目
示談書の書式は保険会社によって異なりますが、主に次のような項目が記載されているのが一般的です。
以下に、それぞれの項目で確認すべきポイントを一覧にまとめましたので、見落としがないようチェックしましょう。
示談書の内容とチェックポイント
項目 | チェックポイント |
---|---|
事故概要 | 事故の日時、場所、状況など |
損害額 | 示談交渉で決まった各費目の金額 |
過失割合 | 示談交渉で決まった過失割合 |
示談金額 | 損害額、既払い金の控除、その他の減額事由・増額事由を踏まえた支払い額 |
支払期日 | 保険会社が示談金を支払う期日 |
違約条項 | 期日までに示談金の支払いがなかった場合の違約金など |
清算条項 | 原則としてこれ以上は損害賠償問題について話し合わない旨 |
留保条項 | 示談時に知り得なかった損害が新たに発覚した場合など、例外的に再交渉が認められる条件 |
示談交渉の中で話し合っている内容との齟齬がないかを見てみてください。
示談書を返送したあとの流れ
示談書を保険会社に返送すると、相手に書類が到着してからおよそ2週間以内に示談金が支払われるのが一般的です。
ただし、示談書に記載されている支払期日を過ぎても入金がない場合は、速やかに保険会社に問い合わせて確認しましょう。
示談書を待つ間に弁護士に相談するメリット
示談書を待つ間に、弁護士に相談しておくことがおすすめです。弁護士に相談して得られるメリットを見ていきましょう。
示談書の最終チェックを頼める|無料相談でも可能
示談書が届くまでの間に、弁護士に相談できる準備をしておくと安心です。
示談書が到着した直後にすぐ内容をチェックしてもらえるため、サイン前に不安を解消できます。
一度示談書に署名してしまうと、原則として内容の変更や賠償請求の追加はできません。
示談金の増額の余地があるか、不利な条項が含まれていないか、弁護士の目で確認してもらうことで後悔のない判断ができます。
なお、示談書のチェックは委任契約なしでも対応できる場合があり、無料相談で受け付けている法律事務所もあります。
ポイント
アトム法律事務所では、相手方の保険会社から届いた損害賠償額計算書や示談書のチェックも対応しています。示談書に署名押印して返送する前であれば間に合う可能性も高いので、一度ご相談ください。

弁護士から見ればまだ増額余地があることも
示談書に記載された金額は、相場より低く見積もられていることがあります。
特に、慰謝料や逸失利益、休業損害といった費目は、弁護士が関わることで増額の可能性が高くなる部分です。
たとえば示談書の中に必要な賠償項目が含まれていなかったり、金額が不当に低く設定されているケースもあります。
交通事故に詳しい弁護士であれば、適正な水準かどうかをチェックし、交渉による見直しを提案することも可能です。
慰謝料について
たとえば、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料においては、相手の保険会社とは用いる算定基準が異なり、弁護士基準(裁判基準)のときに最も高額になります。
そのため相手の任意保険会社に算定を任せていると不当に低い金額になっていたり、これ以上は出せないなどと増額を断られるケースが多いのです。

逸失利益について
逸失利益とは、交通事故による後遺障害に対する補償のひとつです。数百万円から数千万円になることもあるなど損害賠償金のなかでも高額化しやすく、保険会社は少しでも低くしたい補償ともいえます。
そのため弁護士が交渉にかかわることで増額される可能性は十分あるでしょう。
休業損害について
休業損害とは、交通事故の治療のために仕事を休んだことへの補償です。
サラリーマンであれば会社に休業損害証明書を書いてもらい、提出することで、比較的実態に近い金額が認められることもあります。
しかし、自営業の方や主婦の方においては適正額がもらえなかったり、そもそも休業損害が認めてもらえなかったりと損をしてしまっている可能性もあるのです。
示談書のお困りごと・確認はこちら【無料相談】
「示談書が届かない」「届いたけど内容が適切か分からない」といったお悩みは、一人で抱え込まず、弁護士に相談するのが安心です。
アトム法律事務所では、損害賠償額計算書や示談書の内容チェックについて、無料相談で対応しています。
示談書を返送する前であれば、増額の可能性が見つかるケースも多くあります。
無料相談は契約とは別なので、まずはお気軽にお問い合わせください。
ポイント
- 示談書はサイン・押印して返送すると撤回が非常に難しいので、示談書の内容をチェックする最後のタイミングは示談書の返送前になる
- 弁護士に示談書のチェックを依頼すると、増額の余地が見つかることは多い
- 法律相談と契約は別なので、無料相談なら気軽に利用できる
アトム法律事務所では、電話・LINEからの無料法律相談を受け付けています。
示談書にサインする前に不安を解消したい方は、下記バナーからご予約のうえ、お気軽にご相談ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了