交通事故によるむちうちの症状・治療期間・後遺症|慰謝料相場も解説

追突事故などの衝撃で頭が前後に大きく振れると、痛みやしびれ、めまいなどの「むちうちの症状」を感じることがあります。
むちうちは症状が出るまで時間がかかることもあるため、「本当に交通事故によるむちうちだろうか?」と病院に行くのを迷っている人もいるかもしれません。
しかし、治療方法や取るべき手続きを間違えると、むちうちで生じた損害を適切に請求できない恐れがあるため注意が必要です。
この記事では、むちうちの原因や症状を解説したのち、むちうちの治療期間や治療方法、後遺症が残ったときの後遺障害認定について解説していきます。
目次

交通事故後にむちうちかも?と思ったら
交通事故後にむちうちのような症状を感じている場合は、まずむちうちの症状と、むちうちが発生しやすい交通事故について確認してみましょう。
むちうちとは?
むちうちとは、強い衝撃によって頭部が激しく揺さぶられて首に負担がかかり、痛みやしびれなどの不調がでるものです。

むちうちは一般的に首の痛みを表す総称です。正式には以下のような診断名になるでしょう。
- 頚椎捻挫(けいついねんざ)
- 外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)
むちうちの多くは首に生じますが、腰でも生じる可能性があります。腰に生じたときはむちうちではなく「腰椎捻挫」ということが多いです。
むちうちでよくある症状
非常に重い頭部が前後に揺さぶられると、頭を支えている首には大きな負担がかかります。
また、頭部から背骨、腰にかけては神経の束である脊髄が通っています。むちうちによってこれらの神経が傷つくと、痛みだけではなく、しびれやめまいなどが併発することが多いです。
むちうちの症状は多岐にわたりますが、具体的なものとしては以下が挙げられます。
むちうちの症状例
- 首(頚部)の痛みやしびれ
- 肩から手にかけてのしびれ
- 肩こり
- 背部痛・腰痛
- 吐き気
- 耳鳴り
- めまい・ふらつき
- 疲労感・倦怠感
むちうちを発症しやすい交通事故|追突事故など
交通事故後にむちうちかもしれないと感じる場合は、その事故によってどのような衝撃を受けたか思い出してみてください。
たとえば、首のむちうちは頭部が大きく前後に振れ、首の組織が引き伸ばされて損傷したり、頚部が強く圧迫されたりすることで発症します。
交通事故だと、追突事故や、他車両・電柱との衝突など前後から衝撃が加わるケースで発症しやすいです。
ただし、交通事故では首に衝撃を受けた自覚がなくても、実際には衝撃を受けている可能性もあります。どのような交通事故であっても、念のため医師の診察を受けることをおすすめします。
むちうちの治療や通院について
むちうちと診断されたら、具体的にどのような治療をどれくらいの期間受けることになるのか、解説していきます。
むちうちの通院先は?
むちうちが疑われるのであれば、まずは病院の整形外科で診察を受けてください。
早く受診するほど、むちうちと交通事故との因果関係を証明しやすくなります。今後の慰謝料請求にもかかわってくるため、できるだけ早く病院へいきましょう。
診察の際には、MRIによる画像検査や、ジャクソンテストなどの神経学的検査を受けてその結果を記録してもらってください。
むちうちの原因である筋肉や神経へのダメージの有無はMRI検査でなければわからないため、レントゲン撮影だけでは不十分です。
MRI検査で異常が見られなかった場合でも、患部に刺激を与えて反応を見る神経学的検査でむちうちと診断されることがあります。
事故直後に適切な治療・検査を受けることは後々のためにも大切です。関連記事『【お悩み解決】むちうちはレントゲンでわかる?MRIを受けるべき理由あり』では、むちうちに関してはレントゲンよりMRI検査が適切である理由をまとめています。MRI検査を受けようか悩んでいる方は一度読んでみてください。
初診から整骨院や接骨院に行くのはNG
整骨院や接骨院では、整形外科ほど詳しい検査をしてもらえないため、加害者側からむちうちの存在を証明するよう言われても対応できないおそれがあります。
整骨院や接骨院で治療を受けたい方は、本記事内「むちうち治療を整骨院や接骨院で行う際の注意点」で解説する流れに沿って通院してください。
むちうちの治療方法は?
むちうちの治療内容は具体的な症状によっても異なりますが、基本的には牽引療法・電気療法・運動療法・温熱療法などになるでしょう。
それぞれの治療方法について詳しくは、次の通りです。
療法 | 内容 |
---|---|
牽引療法 | 器械または徒手で頸部を引っ張る。頚部の神経の圧迫が緩和され、血行がよくなり、症状の緩和が期待できる。 |
電気療法 | 身体に電気による刺激を与える。筋肉がほぐれて血行がよくなり、症状の緩和が期待できる。 |
運動療法 | 関節が拘縮しないように可動域訓練を行ったり、筋肉が弱く細くならないように筋肉強化のための運動を行う。 |
温熱療法 | ホットパックなどで筋肉を温める。血行がよくなり、症状の緩和が期待できる。 |
あまりにも痛みやしびれが酷い場合には、「神経ブロック注射」を打ってもらうこともあります。
ブロック注射とは、局所麻酔薬を神経や神経の周辺に注射して痛みをなくす治療のことです。麻酔薬により痛みが和らぐほか、血流が良くなり自然治癒力の上昇が期待できます。
自己判断で温めたりほぐしたりするのは避けるべき
むちうちで頭痛や肩こり、腰痛がすると、その部位を温めたりほぐしたりしたくなるかもしれません。
しかし、むちうちの炎症がまだ治まっていない急性期には、一般的に患部を温めたりほぐしたりするべきではないと言われています。
そのため、自己判断で温めたりほぐしたりするのは避けましょう。
自宅で痛みが気になる場合は適度なアイシングが効果的です。ただし、冷やしすぎると凍傷になってしまうおそれがあるため注意してください。
むちうちの平均的な治療期間は?
むちうちの平均的な治療期間は、2ヶ月程度です。およそ70%のむちうち患者が3ヶ月以内に治癒となっています。
参考までに、一般社団法人JA共済総合研究所が公開している、交通事故におけるむちうち治療に関する以下の研究報告をご覧ください。
むちうちの平均治療期間
データ元:各損害保険会社が受付けた事例
調査時期:1991年6月1日~8月2日
平均治療期間:入通院者全体で73.5日(中央値49日)
治療期間 | 累積治癒率 |
---|---|
1か月以内 | 39.8% |
2か月以内 | 57.1% |
3か月以内 | 71.1% |
4か月以内 | 80.0% |
5か月以内 | 85.7% |
6か月以内 | 90.3% |
参考: 一般社団法人 JA共済総合研究所「交通事故によるいわゆる“むち打ち損傷”の治療期間は長いのか―損害賠償を含む心理社会的側面からの文献考証―」 P103
治療期間は、むちうちが完治して「治癒」と診断される、あるいは後遺症が残り「症状固定」と診断されるまで続きます。
むちうちの治療期間中に気をつけるべきこと、知っておくべきことは後ほど解説するので、ご確認ください。
むちうちの適切な通院頻度は?
むちうち治療の通院頻度は、一般的に週に2、3回程度になることが多いです。
ただし症状や経過によっても変わるため、医師の指示通りの頻度で通院してください。
医師の指示通りに通院しなかった場合、むちうちの治療が進まないだけでなく損害賠償請求においても以下のデメリットが生じる可能性があります。
- 医師の指示以下の通院頻度だった場合
- 被害者が治療に消極的だったとして、慰謝料や治療費の補償が減額される
- 本当はもう治療は必要ないのではと疑われ、加害者側の保険会社から治療終了を催促される
- しっかり治療を受けていれば後遺症が残らなかったとして後遺障害認定されない
- 医師の指示以上の通院頻度だった場合
- 余分な通院が含まれているとして、一部の治療費が補償されなかったり慰謝料が減額されたりする
治療費については実際に支払った金額を請求できます。
また、治療期間に応じて「入通院慰謝料」の金額が決められるのです。
しかし、これらはあくまでも必要性・相当性の認められた通院を対象として金額が決まります。
必要以上の通院があったり、被害者側の要因で治療期間が長引いたりした場合は受け取れる治療費や慰謝料の金額が減る可能性があるので注意しましょう。
むちうちの後遺症が残ったら後遺障害認定
後遺症と後遺障害の違い
後遺症とは、治療を続けても改善が見込めない症状のことをいいます。医師から「これ以上の回復は難しい」と判断され、症状固定と診断されることで、後遺症が確定します。
一方、法令で定められた認定基準(自動車損害賠償保障法施行令別表)に当てはまるものを「後遺障害」と呼びます。
すなわち、すべての後遺症が後遺障害として認定されるわけではありません。
後遺障害の認定を受けることで、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できるようになります。
後遺症 | 後遺障害 | |
---|---|---|
意味 | 治療を続けても改善が見込めない症状 | 一定の基準を満たすと認められた後遺症 |
認定 | 医師の診断によって判断 | 審査機関からの認定が必要 |
補償 | 判断されるだけでは補償の対象とならない | 後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できる |
むちうちの後遺症とはどんな症状?
むちうちで多い後遺症の症状例は以下のとおりです。
- 首(頚椎)や腰(腰椎)の痛み
- 肩のこり
- 四肢のしびれや痛み
- 頭痛・重だるさ
ただし、むちうちの症状は多岐に渡るため、後遺症として残るものも事故の状況やそれぞれの体質によって異なります。
そのため一般的には、治療開始から6か月ほど治療したのち、これ以上の症状の改善が見られない場合に「後遺症が残る」と判断されることが多いです。
むちうちが後遺障害認定される基準とポイント
まず、むちうちの症状で認定される可能性がある後遺障害等級は、後遺障害14級9号または12級13号です。
後遺障害等級は数字が小さくなるほど症状が重く、受け取れる賠償金も高額になります。むちうちの場合は、14級9号の方が認定の難易度が比較的低いといえます。
むちうちが後遺障害認定される基準
14級9号
認定基準:局部に神経症状を残すもの
- 事故直後から入通院を継続している(目安6か月以上)
- しびれ・痛みなどの症状が一貫して継続している
- 神経学的所見*から、後遺症の存在が医学的に推定できる
*ジャクソンテスト、スパーリングテストなどでの神経学的検査の結果
『後遺障害14級9号の認定基準と慰謝料|逸失利益は5年?認定されないときは?』の記事でくわしく解説しています。
12級13号
認定基準:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号の認定基準に加えて、CTやMRI、レントゲンといった他覚的所見で異常が認められ、医学的・客観的に後遺症の存在を証明できる
後遺障害12級で認定を受けるためのポイントについては、『後遺障害12級の症状・認定基準』の記事でさらに詳しく解説しています。
後遺障害認定を受けるためのポイント
むちうちが後遺障害認定される確率を高めるためのポイントは、以下のとおりです。
- 6か月以上継続して治療を受ける
- 後遺症を証明できる検査を受ける
- 症状の常時性・一貫性・継続性を伝える
- 仕事や生活への具体的な影響も主張する
- 被害者請求という申請方法を選ぶ
- 認定の申請を弁護士に依頼する
ただし、そもそも後遺障害の認定は非常に厳しく審査されており、全体の認定率は約5.5%にとどまっています。
その中でも特に、むちうちのように外見では後遺症を証明しにくい場合は、認定を受けることが一層難しくなります。
むちうちの後遺障害認定を目指している方はぜひ、『むちうちの後遺症で後遺障害認定は難しい?認定対策や完治しない時の賠償金は?』もお読みください。認定のために治療中からできる対策や、受けるべき検査を詳しく解説しています。
むちうちの治療期間中に知っておくべきこと
交通事故でむちうちの治療を受ける場合、治療費を突然打ち切られることになったり、仕事を休んだ分の収入が減ったりして不安に感じる方が多いです。
こういった場合の対処法について知っておきましょう。
むちうちは治療費支払いを打ち切られやすい
むちうちの場合、治療期間が3ヶ月程度を過ぎると、加害者側が治療費の支払いについて打ち切りを打診してくることが多いでしょう。
また、通院が面倒になって通院頻度が著しく低かったり、湿布や薬を処方してもらうだけの漫然治療が続いたりしても治療費を打ち切られやすくなります。
というのも、加害者が任意保険に加入している場合、むちうちの治療費は基本的に加害者側の任意保険会社が病院に直接支払う「任意一括対応」をしてもらえることが多いです。任意一括対応をしてもらえれば、被害者は治療のたびに窓口で治療費を支払う必要はありません。

しかし、任意一括対応で支払ってもらっている場合、まだ治療が終わっていないのに、任意保険会社から「そろそろ治療費の支払いを打ち切ります」と一方的に言われることがあるのです。
任意保険会社から治療費の打ち切りを打診されたら、次のように対処してください。
治療費打ち切りの対処法
- 主治医にまだ治療が必要である旨を確認して意見書を書いてもらい、加害者側の任意保険会社に提示して治療費打ち切りの延長を求める
- 治療費が打ち切られたら、健康保険を利用するなどして立て替えながら治療を続け、示談交渉時に立て替え分を請求する
たとえ治療費が打ち切られたとしても、治療自体の終了を意味するものではありません。治療自体を終了するかどうかは医師と相談して決めてください。
治療費を打ち切られても、後に慰謝料や賠償金を請求する観点から治療は最後まで続けるべきです。
- 最後まで治療をせず後遺症が残っても、後遺障害残存に対する慰謝料・賠償金がもらえない可能性が高い
- 治療期間が短くなる分、治療期間に応じて請求できる慰謝料が減ってしまう
最後まで治療を続けないと慰謝料や賠償金という面で不利になるのはもちろん、体にもよくありません。治療費が打ち切られても、体をしっかり治すことと慰謝料や賠償金をしっかり受け取ることを考えて行動しましょう。
治療費打ち切りの対処法については、関連記事『交通事故の治療費打ち切りを阻止・延長する対応法!治療期間はいつまで?』でより詳しく説明していますので、あわせてご確認ください。
治療費が打ち切られてしまったら、弁護士に相談することも重要
治療費の支払いが途中で打ち切られても、以降の費用を立て替えつつ治療を続け、示談交渉時に立て替え分を請求したほうがよいです。
しかし、治療費打ち切り以降の立て替え分をどれだけ回収できるかは示談交渉次第です。場合によっては一部を回収できない可能性もあります。
よって、治療費が打ち切られ、以降の費用を立て替えることになったら、一度弁護士に相談しておいたほうがよいでしょう。
「そもそも、治療費を全額回収できないリスクを負ってまで治療を続ける必要はあるか」を相談できるほか、ご依頼まで進んで示談交渉を任せれば、立て替え額の全額回収の可能性も高まります。
アトム法律事務所では、電話・LINEから無料相談が可能です。
▼わからないことを残したまま進んでしまうと、不利な状況に陥ってしまう可能性があります。無料で相談できるので、お気軽にご連絡ください。

むちうち治療で休んだ分の減収は補償される
むちうちの治療でも仕事を休むことは可能で、休んだことによる減収は「休業損害」として加害者側に請求できます。
「通院のために有給を取ってしまった」という場合でも休業損害の対象となるので、安心してください。
ただし、休業損害の対象となるのは、「仕事を休んで治療する必要のあった日」のみです。
具体的には医師から通院指示のあった日であり、自己判断で休んだ日は休業損害の対象とならないおそれがあります。
「今日はむちうちの症状がひどく、通院日ではないけれど休みたい」となった場合は、その日はできれば病院に行っておくことをおすすめします。
「この日は確かに症状がひどく、仕事を休まざるを得ない状態だった」と医師に証明してもらえるようにしておくと、休業損害がもらえる可能性が高まります。
ポイント
むちうちの症状は軽いものも多いため、仕事などを優先して通院を後回しにしがちです。
しかし、通院を後回しにしていると、損害賠償請求の面でデメリットが生じてきます。必ず医師の指示通りに通院してください。
仕事をしながらむちうちの治療を受ける場合の注意点については『頚椎捻挫で仕事は何日休む?補償や休めない場合の対処法も解説』の記事が参考になります。
むちうち症状が出るまで時間がかかることもある
むちうちの症状は、事故から日が経つごとに強くなったり、事故から数日~数週間経ってから出てきたりすることも珍しくありません。
あとから症状が出てくる理由としては、次のようなものがあります。
- 事故直後は興奮状態・ショックなどによって症状を感じにくい
- 交通事故後の日常生活の中で患部に負担がかかって症状が悪化する
- むちうちによる炎症が起こり始めるまでに時間がかかる
よって、「交通事故から時間が経過して出てきた症状だから、事故とは関係ない」と自己判断せず、むちうちが疑われる場合は速やかに病院で受診しましょう。
早期に受診し、各種検査結果を残してもらっておくことで、事故とむちうちとの因果関係を証明しやすくなります。
物損事故で届け出ているなら人身事故へ変更
事故直後にはむちうちの症状を感じなかったために物損事故として届け出ていた場合は、診断書などを持って警察に行き、人身事故への切り替え手続きをしましょう。
物損事故として届け出たままにしていると、加害者への賠償請求や自身の保険への保険金請求がスムーズに進まないことがあります。
人身事故として届け出直すべき理由や手続きについては、関連記事『物損から人身への切り替え方法と手続き期限!切り替えるべき理由もわかる』をご覧ください。
むちうち治療を整骨院や接骨院で行う際の注意点
むちうちの治療を整骨院や接骨院で行うには、事前に医師の許可を得てください。
むちうちの治療は、整骨院や接骨院に通って施術を受けることでも可能です。
しかし、整骨院や接骨院は病院ではないため、加害者側から十分な施術費用や通院期間分の慰謝料が支払われないリスクがあります。
このリスクを回避するために、以下の手順を踏んだうえで整骨院・接骨院に通いましょう。
- 最初に整形外科を受診する
- 整形外科の医師から許可を得たうえで、整骨院に通う
- 整骨院に通い始めてからも、月に1回以上は整形外科への通院を継続する
なお、バレ・リュー症候群を発症した場合は麻酔科やペインクリニック、神経内科などでの治療となります。
バレ・リュー症候群
むちうちが原因で発症したと考えられる自律神経失調症状。症状はめまいや耳鳴り、吐き気、頭痛など多岐に渡る。
いずれにせよまずは整形外科にかかり、神経内科などを勧められた場合は、指示に従いましょう。
詳しい治療の流れや治療費の支払い方は『交通事故の治療の流れ|整骨院と整形外科のどちらに通うのが正解?』の記事で解説しています。
交通事故によるむちうちで請求できるお金
交通事故でむちうちになった場合に請求できる費目と相場について、解説します。
むちうちで請求できる費目一覧と相場
むちうちの治療を受けた場合、主に以下の項目を加害者側の保険会社に請求できます。
損害賠償金の主な内訳
- 治療関係費(入通院費、診断書の費用など)
- 休業損害
- 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)
- 逸失利益
それぞれについて、詳しく解説していきます。
治療関係費(入通院費、診断書の費用など)
治療関係費には、主に以下の項目が該当します。
- 応急手当費
- 診察料
- 入院料
- 投薬料、手術料、処置料等
- 交通費(通院費、転院費、入院費または退院費)
- 看護料
- 入院雑費(1日、1500円として計算)
- 柔道整復等の費用
- 診断書等の費用
なお、治療関係費といっても、実際に請求できる内訳は事故により異なります。
「これは治療関係費として請求できるのだろうか」と不安に思った場合は、加害者側の保険会社の担当者か弁護士に相談して確認を取ってみると良いでしょう。
休業損害|主婦や自営業者も請求可能
休業損害とはケガのせいで休業せざるをえなくなり、減少してしまった収入のことです。
サラリーマンだけではなく、専業主婦や自営業者でも休業損害を請求できます。
休業損害は基本的に、「日額×休業日数」で計算されますが、日額の計算方法は職業によって異なります。
詳しい解説は、関連記事を参考にしてみてください。休業損害の計算方法や日額(1日あたりの休業損害額)、請求に必要な書類と流れも解説しています。
慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)
交通事故でむちうちになった場合に請求できる慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
- 入通院慰謝料:交通事故による入通院で生じた精神的苦痛に対する補償。入院期間や通院期間から算出される。
- 後遺障害慰謝料:交通事故で後遺障害が残ったことにより生じる精神的苦痛に対する補償。認定された後遺障害等級により金額が変わる。
むちうちにおける入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の相場は次の通りです。
むちうちの入通院慰謝料(入院していない場合)
通院月数 | 慰謝料 |
---|---|
通院1月 | 19万円 |
通院2月 | 36万円 |
通院3月 | 53万円 |
通院6月 | 89万円 |
むちうちの後遺障害慰謝料
級号* | 慰謝料 |
---|---|
14級9号 | 110万円 |
12級13号 | 290万円 |
*むちうちの後遺症が該当しうるもの
入通院慰謝料に関しては、通院が1ヶ月未満の場合や、1ヶ月と10日のように端数がある場合は、日割計算が必要になります。
以下の計算機でも慰謝料額の相場を確認できるので、利用してみてください。
※令和2年4月1日よりも前に発生した交通事故の場合、慰謝料計算機とは計算方法が異なる点にご注意ください。
ポイント
ここで紹介した相場は、過去の裁判例に基づく金額基準(弁護士基準)に沿ったものであり、示談交渉の際、加害者側はもっと低い金額を提示してきます。
慰謝料の詳しい計算方法や加害者側の提示額の相場は、『交通事故の慰謝料相場|むちうちの金額が倍増する計算方法をご紹介』の記事にて解説しています。
逸失利益
逸失利益は、後遺障害により労働能力が下がることで減ってしまう、生涯収入に対する補償です。
次の式から計算されます。
逸失利益
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
- 基礎収入
交通事故に遭った年の前年の年収
源泉徴収票や所得証明書などが根拠資料となる - 労働能力喪失率
14級9号の労働能力喪失率は5%、12級13号の労働能力喪失率は14% - 労働能力喪失期間
基本的には症状固定日から67歳までの期間だが、むちうちでは12級なら10年、14級なら5年程度とするのが一般的 - ライプニッツ係数
労働能力喪失期間中の中間利息(預金・運用する中で生じる利息)を控除するために使われている係数
労働能力喪失期間が10年なら8.53、5年なら4.58(年率3% 2020年4月改正)
たとえば、年収300万円の方がむちうちで14級9号に認定された場合、以下の計算式より、68万7,000円が逸失利益として認められます。
300万円×5%×8.53=68万7,000円
逸失利益の計算方法についての詳細は、関連記事『交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法!早見表・計算機で相場も確認』で解説しています。
逸失利益を増額させる方法や、逸失利益の請求事例も紹介しているので、ご覧ください。
受け取れる金額は過失割合にも左右される
交通事故の慰謝料・損害賠償額は、過失割合にも左右されます。
過失割合
交通事故が起きた責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるかを割合で示したもの。
自身についた過失割合分、受け取れる慰謝料・損害賠償金が減額される。
たとえば被害者が停車中に発生した追突事故であれば、基本的には被害者側の過失は0です。
よって、慰謝料・損害賠償金を満額受け取れます。
しかし、被害者側に過失が1割ある場合は1割、2割ある場合は2割、受け取れる金額が減らされてしまうのです。
交通事故の被害者でも過失割合が付くことは珍しくありませんし、例に挙げた追突事故でも、場合によっては被害者側にも過失が付きます。
過失割合について詳しくは関連記事『交通事故の過失割合とは?パターン別の過失割合と決め方の具体的な手順』で解説しているので、確認しておくことをおすすめします。
提示金額・過失割合に疑問がある方
加害者側から提示された金額や過失割合に疑問がある場合は、弁護士にご相談ください。
慰謝料・損害賠償額や過失割合は、事故の状況に応じて柔軟に調整されます。必ずしもここで紹介した相場の通りになるとは限りません。
しかし、それを踏まえても加害者側が提示してくる内容は、被害者側にとって不利な内容になっていることも多いです。
賠償金額や過失割合の交渉には専門知識や交渉スキルが必要になってきます。
加害者側の提示内容の正当性を確認するためにも、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士をつける効果や弁護士費用がわかる記事:人身事故は弁護士に任せて時短と増額
▼適正な賠償金額や過失割合は、無料相談で確認できます。

むちうちで弁護士に依頼するのは大げさじゃない
むちうちは比較的軽い症状のことも多いため、なにか困ったことがあっても弁護士に相談するほどではないと思われがちです。
しかし、実際にはむちうちでも弁護士に相談するのは大げさではありません。その理由を見ていきましょう。
【実例つき】むちうちでも慰謝料が大幅増額する可能性あり
「むちうちは軽傷だから弁護士に依頼するのは大げさだ」と思われがちですが、そうではありません。
むちうちであっても弁護士に依頼することで、慰謝料・損害賠償額が大幅にアップすることがあるからです。
むちうちで、後遺障害が残った場合と残らなかった場合の増額事例を見てみましょう。
いずれもアトム法律事務所にご依頼いただいた事例です。
後遺障害ありの増額事例
増額事例(1)
傷病名:むちうち
後遺障害等級:14級9号
最終回収金額:309万円*(当初の提示額:171万円/138万円の増額)
* 過失相殺・既往症による減額後の金額であり、アトム相談前に回収済の金額は含まれていません。
増額事例(2)
傷病名:むちうち
後遺障害等級:14級9号
最終回収金額:312万円*(当初の提示額:137万円/175万円の増額)
* 過失相殺・既往症による減額後の金額であり、アトム相談前に回収済の金額は含まれていません。
後遺障害なしの増額事例
増額事例(3)
傷病名:むちうち
後遺障害等級:なし
最終回収金額:147万円*(当初の提示額:19万円/128万円の増額)
* 過失相殺・既往症による減額後の金額であり、アトム相談前に回収済の金額は含まれていません。
増額事例(4)
傷病名:むちうち
後遺障害等級:なし
最終回収金額:142万円*(当初の提示額:89万円/53万円の増額)
* 過失相殺・既往症による減額後の金額であり、アトム相談前に回収済の金額は含まれていません。
慰謝料の増額以外にもあるメリット
弁護士に依頼することで、慰謝料を含む示談金の増額以外にも以下のようなメリットを受けることが可能です。
- 加害者側への対応を行ってもらえる
- 治療費の打ち切りに対して適切な対処をしてもらえる
- 適切な後遺障害等級認定を受けることができる
以下において、それぞれのメリットの解説を行います。
加害者側への対応を行ってもらえる
弁護士に依頼すると連絡の窓口が弁護士になるため、加害者側からの連絡はすべて弁護士が対応してくれます。
加害者側からの連絡を気にすることがなくなるため、治療や仕事への復帰に専念することが可能となるのです。
仕事中や治療中に加害者側からの連絡があることが苦痛であるといった悩みを解決したいのであれば、弁護士への依頼を行うべきでしょう。
治療費の打ち切りに対して適切な対処をしてもらえる
むちうちの治療期間が長期に渡ると、すでに述べたように加害者側の保険会社から治療費の支払いを打ち切る旨の連絡がなされる可能性があります。
このような場合において弁護士に依頼していると、治療費の支払期間を延長する旨の連絡をしてもらえ、仮に打ち切られた際には適切な対処法を教えてくれるでしょう。
適切な後遺障害等級認定を受けることができる
むちうちが完治せず、後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
しかし、後遺障害等級認定を受けるための手続きは専門知識が必要となり、簡単に行うことはできません。
特に、むちうち症では後遺障害等級の認定を受ける程度の症状が実際に生じているかどうかについて明確な証拠がないケースも多いので、自力で認定の申請を行うことは困難といえるでしょう。
弁護士に依頼すれば、適切な後遺障害等級を受けるための必要な証拠の収集を手伝ってもらうことが可能となります。
後遺障害等級の認定を受けることで請求が可能となる、後遺障害慰謝料や逸失利益は、高額になることが多い費目です。
そのため、後遺障害等級認定を受けるかどうかで請求できる金額に大きな差ができることになるので、後遺症が残った場合には弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士に依頼する費用を抑える方法
弁護士に依頼するメリットがあるとしても、「自分の事故内容では大幅な慰謝料の増額がないため、弁護士に依頼すると無駄に費用が掛かるだけではないのか?」と不安な方は多いと思います。
弁護士に依頼する費用に不安がある方は、「弁護士費用特約」が利用できないかどうかを検討しましょう。
ご自身の保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用を保険会社に負担してもらえます。

負担額に上限がありますが、多くのケースで上限額に収まる負担となるため、費用について気にすることなく弁護士への依頼が可能となるでしょう。
詳しくは『交通事故の弁護士特約をむちうちのケースで利用すべき3つの理由』の記事をご覧ください。
むちうちの慰謝料請求を弁護士に無料相談できる
交通事故でむちうちを負ったら、弁護士に相談し、依頼を検討しましょう。
アトム法律事務所では、弁護士による無料の法律相談を実施中です。
法律相談をご希望の方はまず、下記バナーより相談予約をお取りください。

相談予約の受付は、24時間365日いつでも専属スタッフが対応中です。事故状況や治療状況など、法律相談に必要な内容をヒアリングしています。
アトム法律事務所では、原則として相談料や依頼の時点で発生する着手金が無料となっています。
そのため、すぐに大きなお金が用意できなくても安心です。
無料相談のみのご利用も受け付けています。
適切な損害賠償請求の第一歩は、正しい情報の収集です。
具体的な慰謝料相場や今後の注意点は事案によりけりと言わざるを得ない部分も多いので、まずは一度、弁護士に状況を伝えて相談してみましょう。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了