専業・パート主婦(家事従事者)の休業損害|主婦手当の計算と請求方法
更新日:
主婦(家事従事者)が交通事故にあい、治療のため家事ができなかった場合、休業損害として「基礎収入日額×休業日数」の金額を請求できます。
専業主婦の場合なら基礎収入日額は約1万円ですが、パートなどをしている兼業主婦の場合はこの限りではありません。
この記事では、専業主婦・兼業主婦の具体的な基礎収入日額や休業日数の数え方を詳しく解説します。請求の方法やタイミングも紹介しているので、ご確認ください、
目次
主婦の家事は休業損害(主婦手当)の対象になる
主婦が交通事故に遭い、家事ができない期間が生じた場合、休業損害を請求できます。休業損害とは、交通事故による休業で生じた減収を補償するものです。
主婦の家事労働では報酬は発生しないため、家事ができなくても減収は生じません。しかし、交通事故の損害賠償では家事も賃金労働と同等に扱われるため、休業損害を請求できるのです。
主婦の休業損害は「主婦手当」と呼ばれることもあります。主婦の休業損害については以下の点に注意が必要です。
- 加害者側からは日額6,100円や5,700円程度の休業損害を提示されることがあるが、本来は日額約1万円で請求が可能
- 主婦として休業損害を請求するためには、「家事従事者」として認められることが必要
ここからは、主婦の休業損害の計算方法・相場や家事従事者の定義・証明方法などを詳しく解説していきます。
注意
主婦の休業損害(主婦手当)と慰謝料は別物です。
交通事故の慰謝料とは、事故で負った精神的苦痛を緩和するための金銭で、休業損害とは別に請求できます。
休業損害同様、慰謝料も加害者側との示談交渉でもめやすいポイントなので、『主婦が交通事故にあったときの慰謝料の計算方法や相場』にて詳細をご確認ください。
専業主婦の休業損害|計算方法と相場は?
主婦の休業損害の計算方法は、専業主婦なのか兼業主婦・パートなのかによって異なります。
まずは専業主婦の休業損害について解説します。兼業主婦・パートの方は、本記事内「兼業主婦・パートの休業損害|計算方法と相場は?」をご確認ください。
専業主婦の休業損害の計算方法
主婦の休業損害は、基礎収入日額に休業した日数をかけて計算します。
専業主婦の休業損害計算式
基礎収入日額×休業日数=休業損害
基礎収入がいくらになるのか、休業日数はどう数えるのか見ていきましょう。
専業主婦の基礎収入・休業日数の確認方法
専業主婦の基礎収入と休業日数は、以下のように確認します。
- 基礎収入:女性の全年齢平均賃金から算定
- 休業日数:事故発生から治療終了までの入院日数・実通院日数とする
それぞれについて詳しく解説します。
専業主婦の基礎収入日額
実際には金銭収入を得ていない専業主婦(専業主夫)の場合、賃金センサスの「女性の全年齢平均賃金(年収)」を365日で割ったものが基礎収入日額となります。
賃金センサスとは、厚生労働省が毎年発表している統計資料です。
最新の2022年の統計結果を含め、近年の賃金センサスの結果は以下の通りです。
年度 | 賃金センサス |
---|---|
2016年 | 約376万円 (日額1万301円) |
2017年 | 約378万円 (日額1万356円) |
2018年 | 約383万円 (日額1万493円) |
2019年 | 約388万円 (日額約1万630円) |
2020年 | 約382万円 (日額1万466円) |
2021年 | 約386万円 (日額1万575円) |
2022年 | 約394万円 (日額1万795円) |
※参考:厚生労働省「賃金センサス」
例えば、交通事故の発生が2019年の場合には、2019年の賃金センサスから基礎収入日額は約1万630円とされます。
注意!
加害者側の任意保険会社は上記とは別の方法で日額を算定することがあります。
各保険会社独自の計算方法で日額を算定していたり、国が定めた最低限の金額である6,100円または5,700円を採用していたりすることがあるのです。
加害者側から休業損害を提示されたら、日額が正しいか確認してみてください。
専業主婦の休業日数の数え方
専業主婦の休業日数は、交通事故が起こった日から治療が終了するまでの入院・通院日数と考えるのが原則です。
家事ができなかったことを客観的に証明することは難しいため、入院・実通院日数を休業日数とするのです。
その他、以下の点を証明できる医師の意見書や診断書などがあれば、入院・実通院日数以外も休業損害の対象となる可能性があります。
- ケガの状態から家事ができない状態だった
- 医師が家事をせず自宅療養するよう命じた
兼業主婦・パートの休業損害|計算方法と相場は?
パートや他の仕事をしながら家事労働に従事する主婦の場合、休業損害は「主婦として計算する」か「労働者として計算する」かのいずれかになります。
詳しい計算方法を見ていきましょう。
兼業主婦・パートの休業損害の計算方法
正社員・パートといった雇用形に関係なく、兼業主婦の休業損害は「基礎収入日額」に休業日数をかけて算出します。
基礎収入日額は給与所得者としての金額か、主婦としての金額のうち高い方を採用します。
兼業主婦の休業損害計算式
基礎収入日額×休業日数=休業損害
※基礎収入日額は、給与所得者としての日額か主婦としての日額のうち高い方を採用
給与所得者としての日額と主婦としての日額の計算方法、休業日数の確認方法を見ていきましょう。
兼業主婦・パートの基礎収入・休業日数の確認方法
兼業主婦・パートの基礎収入や休業日数について見ていきましょう。
兼業主婦・パートの基礎収入日額
兼業主婦の場合、休業損害の基礎収入日額は以下のうち高い方となります。
兼業主婦の基礎収入日額
- 賃金センサスにおける女性の全年齢平均から算定した金額(約1万円)
※具体的な金額は本記事内「専業主婦の基礎収入・休業日数の確認方法」参照 - 実際の給与所得から算定した金額(事故前3ヶ月分の収入を日割り計算した金額)
賃金センサスから算定した日額のほうが高ければ主婦として、給与所得から算定した日額のほうが高ければ給与所得者として休業損害を請求するのです。
兼業主婦・パートの休業日数の数え方
兼業主婦の休業日数は、主婦として休業損害を請求するのか、給与所得者として休業損害を請求するのかによって異なります。
主婦の場合は基本的に入院日数・実通院日数が休業日数とされます。一方、給与所得者の場合は「休業損害証明書」に記載された日数(実際に仕事を休んだ日数や有給休暇を使った日数)が休業日数とされることが基本です。
休業日数の根拠 | |
---|---|
主婦として請求 | 治療期間中の入院日数・実通院日数 |
給与所得者として請求 | 休業損害証明書に記載の日数 |
給与所得者としての休業損害の計算については、『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』でも詳しく解説しています。
主婦が休業損害を請求できる条件・方法
主婦として休業損害を請求するには、「家事労働者」として認められることが必要です。
単に日頃家事をしているというだけでは、家事動労者としては認められないことがあります。
家事労働者とは具体的にどのような人を指すのか、家事労働者であることを証明するにはどうしたら良いのかを、休業損害の請求方法とともに解説します。
主婦手当の請求条件である「家事従事者」の定義・証明方法
家事従事者とは、家族のために家事労働に従事する人のことを指します。
つまり、たとえ日頃家事をしている人でも、一人暮らしで自分のために家事をしている人は家事動労者としては認められません。
なお、家族のために家事労働に従事している人であれば、性別関係なく家事従事者として認められます。主婦はもちろん、主夫でも家事従事者として休業損害を請求できるのです。
自身が家事従事者であることを証明するには、家族構成表や住民票の提出が必要です。
主婦が休業損害を請求する際の必要書類
主婦が休業損害を請求する際の必要書類は、主婦として請求するのか給与所得者として請求するのかで違います。
それぞれのケースにおける必要書類を見ていきましょう。
- 専業主婦
主婦として休業損害を請求 - 兼業主婦・パート
- 主婦の基礎収入日額のほうが高い:主婦として休業損害を請求
- 1日あたりの給与のほうが高い:給与所得者として休業損害を請求
主婦としての休業損害を請求する場合の必要書類
賃金センサスに基づいて請求する専業主婦あるいは兼業主婦(正社員・パート含む)は、以下の書類を用意しましょう。
- 家族全員分の記載がある住民票:家事従事者であることを証明するため
- 診断書や診療報酬明細書:入院・実通院日数を証明するため
- 非課税証明書・配偶者の所得証明:主夫の場合に提出を求められることがある
給与所得者としての休業損害を請求する場合の必要書類
兼業主婦・パートで給与所得者として休業損害を請求する場合は、以下の書類が必要です。
- 勤め先に作成してもらった休業損害証明書
- 事故前年度の源泉徴収票
休業損害証明書は、相手方の保険会社または自賠責保険会社に連絡すれば書式をもらえます。
勤め先が休業損害証明書の作成に協力してくれない場合は、「休業損害証明書を作成したからといって損害賠償問題に巻き込まれることは基本的にない」ことを説明してみてください。
休業損害証明書の書き方を詳しく知りたい方は、関連記事『休業損害証明書の書き方を解説!誰が書くのか、いつ提出するかもわかる』も併せてお読みください。
主婦が休業損害を請求する方法・タイミング
休業損害は、相手方の任意保険会社あるいは自賠責保険会社に請求します。それぞれのケースにおける請求方法やタイミングを解説します。
相手の任意保険会社に請求する場合
相手の任意保険会社が治療費などの対応にあたってくれている場合には、相手の任意保険会社に必要書類を提出して休業損害を請求します。
主婦として休業損害を請求する場合は、その他の損害賠償金と一緒に示談交渉時に請求することが一般的です。
給与所得者として休業損害を請求する場合は、毎月休業損害証明書を提出することで、示談前でもその月分の減収を回収できることがあります。これを「内払い」と言います。
内払いについては『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』で解説しているのでご確認ください。
相手の自賠責保険会社に請求する場合
「被害者請求」という手続きを取り、加害者側の自賠責保険に休業損害を請求すれば、休業損害を示談成立前に受け取れます。
被害者請求とは?
交通事故の損害賠償金は、多くの場合、加害者側の自賠責保険・任意保険から支払われます。
基本的にはすべてまとめて示談成立後に、加害者側の任意保険から支払われます。
しかし、加害者側の自賠責保険から支払われる分を、直接自賠責保険会社に請求することも可能です。これが、「被害者請求」です。被害者請求は示談成立前でもできます。
請求できる金額は休業損害・治療費・入通院慰謝料を含めて120万円までで、上限に達するまでなら何度でも請求できます。120万円を超える部分については、示談交渉で加害者側の任意保険会社に請求しましょう。
なお、被害者請求ではその他の費目も示談成立前に請求できます。
被害者請求の詳しい仕組みや手続き方法については、『交通事故の被害者請求とは?自賠責への請求のメリット・やり方がわかる』をご覧ください。
主婦の休業損害|家事従事者のよくある質問集
主婦の休業損害請求について、以下の質問にお答えします。
- むちうちなど軽傷だと休業損害は減額される?
- 2世帯家庭で父母と家事を分担していても休業損害はもらえる?
- 母子家庭でも休業損害はもらえる?
- 無職の高齢者でも主婦と認めてもらえる?
- 病院に行っていないと休業損害には請求できない?
むちうちなど軽傷だと休業損害は減額される?
むちうちなどの軽傷の場合、治療が進み徐々に家事や仕事ができるようになるにつれ、1日あたりの休業損害が減っていく可能性があります。
最初は基礎収入日額が満額認められていても、治療が進むごとに基礎収入日額の8割、5割、など1日あたりの金額が減っていくことがあるのです。
この場合、休業損害の総額が「基礎収入日額×休業日数」より少なくなります。
2世帯などで家族と家事を分担していても休業損害はもらえる?
2世帯住宅などで家事従事者が他にもおり、被害者本人の家事負担割合が少なくなっている場合には、主婦としての休業損害が減額される可能性があります。
もっとも、家事従事者としてではなく給与所得者として休業損害を請求するならば2世帯でも影響を受けにくいでしょう。
家族構成によっても適正な休業損害額は変わるので、不当な減額を受けないためにも、弁護士への相談がおすすめです。
母子家庭でも休業損害はもらえる?
母子家庭でも休業損害は請求できます。
ただし、家計のためにケガをしていても休まず無理して家事や仕事を頑張った結果、減収が発生しないこともあるでしょう。この場合、加害者側から「減収は生じていないから休業損害は支払わない」と言われることがあります。
しかし、本来なら減収が生じるところ、ケガをした本人の努力や周囲のサポート・理解によって収入が減らずに済んでいるというケースでは、休業損害の請求が認められることもあります。
お困りの場合は一度弁護士にご相談ください。
無職の高齢者でも主婦と認めてもらえる?
無職の高齢者であっても、家事従事者として認められれば休業損害を請求できます。
ただし、家事労働は家族のためにおこなわれるものに限られているため、一人暮らしの場合は主婦としての休業損害は認められないでしょう。
病院に行っていないと休業損害には請求できない?
自己判断で仕事を休んだものの、病院には行っていないという場合、休業損害は認められない可能性が高まります。
休業損害を認めてもらうには、休業が医師の判断や指示によるかどうかが重要になります。できるだけ病院にかかり、その日のケガの治り具合や体調を記録してもらいましょう。
主婦の休業損害は示談前に弁護士に相談
主婦が休業損害の請求をする際には、以下のような疑問やお困り事が生じがちです。
- パートなどをしている兼業主婦であり、休業損害を主婦として請求すべきか、給与所得者として請求すべきか判断が難しい
- 加害者側の任意保険会社が提示する休業損害は低額だが、思うように増額交渉ができない
上記のような点でお困りの場合は、専門家である弁護士にご相談ください。
ここでは、弁護士への相談・依頼で懸念されがちな弁護士費用について解説するとともに、アトム法律事務所の実績について紹介します。
なお、実績についてはアトム法律事務所の解決事例ぺージから主婦が被害者となった交通事故事案を抜粋しています。
弁護士費用の負担は軽減できる
弁護士費用を不安視される方も多いですが、実際には以下の形で費用を抑えることも可能です。
弁護士費用を抑える方法
- 無料法律相談を受け付けている法律事務所を利用する
無料法律相談のみのご利用も可能です。休業損害の算定や、増額交渉のアドバイスについて相談できます。 - 弁護士費用特約を使う
自動車保険などに付帯している特約です。相談料や依頼後の弁護士費用を保険会社に負担してもらえます。 - 着手金無料の法律事務所に依頼する
弁護士に依頼した時点で生じる着手金が無料なので、すぐに大きなお金を用意できない方でも安心して弁護士に依頼ができます。
アトム法律事務所では相談料・着手金が無料であり、弁護士費用特約を使っての相談・ご依頼も可能です。
弁護士費用特約はご家族の保険に付帯しているものでも使えることがあるので、確認してみてください。
アトムの解決実績(1)骨折の示談金が2.9倍に増額
被害者は40~50代の主婦の方でした。歩行中に右前方から車に衝突され、右足高原骨折の重傷を負い、膝のしびれなどで後遺障害14級の認定を受けておられました。相手の任意保険会社から提示された後遺障害慰謝料と逸失利益が低いのではないかと疑問を持ったことから、アトム法律事務所の無料相談を利用いただいたのです。
弁護士の見解では、どちらも100万円ほど増額の可能性があったため、ご依頼のうえ示談交渉を開始しました。その結果、示談交渉開始から1ヶ月で、154万円から449万円へ2.9倍へ増額されたのです。
アトムの解決実績(2)むちうちなどで378万円の示談成立
被害者は20代~30代の主婦の方でした。ご家族が運転する車に乗っている途中、対向のバイクがカーブを曲がり切れず、正面衝突してきたのです。その結果、首と腰のむちうちや坐骨神経痛などを負い、約半年間の治療を経て後遺障害14級に認定されました。
弁護士への依頼を考え始めたころ、アトム法律事務所のLINE無料相談サービスが目に留まり、弁護士相談を開始頂いたのです。弁護士が示談交渉を進めたところ、わずか2週間ほどで176万円の増額となり示談が成立しました。
無料の相談予約窓口|24時間365日受付中です
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼することで、家事や仕事に専念しやすい環境がうまれます。さらには、休業損害だけでなく慰謝料を含む損害賠償金全体の引き上げにつながる可能性が高いです。
ご自身の損害賠償金をもっと具体的に知りたい方は、まず無料の法律相談を活用して、増額の見込みや解決までに取るべき方策を聞いてみませんか。きちんとお話をお伺いするため、ご相談枠の予約取りからお願いしています。電話・LINE・メールいずれも、ご相談の予約は24時間365日受付中です。
弁護士費用特約なしの場合
弁護士費用特約がない場合も法律相談は無料です。損害賠償金の見通しと、弁護士費用の見積もりを依頼してみませんか。弁護士費用はかかるけれど、弁護士に依頼するほうが手元に入るお金が増える可能性もあります。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了