主婦でも慰謝料を請求できる|相場や知っておくべき情報を紹介
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主婦が交通事故にあった場合、慰謝料や治療関係費はもちろん、休業損害も請求できます。
後遺障害が残った場合には、逸失利益も請求可能です。
本記事では、主婦が交通事故の被害者となった場合に請求できる慰謝料や損害賠償金の内容、金額、請求を行う際に知っておくとお得な情報について解説しています。
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主婦が請求できる慰謝料と金額相場
ケガの治療により入院、通院した場合の慰謝料
交通事故にあい入院・通院した場合、その間に生じた精神的苦痛に対して「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」が支払われます。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故により入院・通院し、治療する中で生じる痛みや苦しみ、時間的・身体的拘束などによる精神的苦痛を補償する慰謝料。
1日でも通院していれば請求できる。
入通院慰謝料は、治療期間や実通院日数などから算定されます。
たとえばむちうちなどの軽傷で通院した場合の慰謝料相場は、以下の通りです。
治療期間 | 慰謝料額 |
---|---|
1ヶ月 | 19万円 |
2ヶ月 | 36万円 |
3ヶ月 | 53万円 |
4ヶ月 | 67万円 |
5ヶ月 | 79万円 |
6ヶ月 | 89万円 |
12ヶ月 | 119万円 |
ただし、ケガが重傷の場合や入院をした場合などは、上記よりも慰謝料が高額になります。
なお、上記は過去の判例に基づく法的正当性の高い相場額ですが、示談交渉の際、相手方任意保険会社はもっと低い金額を提示してくることが多いです。
増額交渉を成功させなければ上記よりも低額な慰謝料しか得られない可能性が高い点には、注意してください。
関連記事『主婦の交通事故|慰謝料が計算機ですぐ計算できる』も参考にして、適正な慰謝料の獲得を目指しましょう。
交通事故で後遺障害が残った場合の慰謝料
交通事故で負ったケガが完治せず、後遺障害が残った場合には、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料がもらえます。
後遺障害慰謝料
交通事故によって後遺症が残ったことで生じる、精神的苦痛に対する補償。
後遺症に対して「後遺障害等級」が認定されればもらえ、金額は等級に応じて決まる。
後遺障害慰謝料の相場は次のようになっています。
等級 | 慰謝料 (万円) |
---|---|
1級・要介護 | 2,800 |
2級・要介護 | 2,370 |
1級 | 2,800 |
2級 | 2,370 |
3級 | 1,990 |
4級 | 1,670 |
5級 | 1,400 |
6級 | 1,180 |
7級 | 1,000 |
8級 | 830 |
9級 | 690 |
10級 | 550 |
11級 | 420 |
12級 | 290 |
13級 | 180 |
14級 | 110 |
たとえばむちうちによって痛みやしびれといった後遺症が残れば、認定されうる等級は12級(290万円)または14級(110万円)です。
ただし、入通院慰謝料と同様、相手方任意保険会社はもっと低い金額を提示してくるので、上記の金額を得るには増額交渉を成功させる必要があります。
なお、後遺障害等級は必ずしも認定されるとは限りません。
また、後遺障害等級が認定されても、妥当な等級でなければその分慰謝料は低額になります。
よって、しっかりと対策をしたうえで等級認定の審査を受けることが重要です。
合わせて読みたい
- 後遺障害等級認定の申請をする方法▶交通事故で後遺障害を申請する
- 後遺症別に後遺障害等級を紹介▶【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準
死亡事故の場合の慰謝料
死亡事故の場合には、死亡慰謝料を相手方に請求します。
死亡慰謝料
交通事故により死亡した被害者本人と遺族の精神的苦痛に対する補償。
死亡までの間に入通院期間があれば、入通院慰謝料も合わせて請求できる。
慰謝料は基本的に被害者本人に対してしか支払われませんが、死亡事故の場合は遺族に対しても支払われます。
金額は生前の被害者の家族内における立場によって決まり、主婦の場合は2500万円です。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他の場合 | 2000万円~2500万円 |
ただし、相手方任意保険会社はもっと低い金額を提示してくることが多いので、十分な金額を得るには増額交渉が必要です。
死亡事故向けの記事はこちら
『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』
死亡事故の場合、被害者本人分の賠償金は誰の間でどのように分配するのか、加害者側の葬儀への参列・香典を受け入れるかといったことを考えなければなりません。
他にも葬儀関連費の請求など死亡事故特有の注意点があるので、上記記事にて確認してみてください。
主婦が慰謝料以外に請求できる賠償金と金額相場
治療費
治療のためにかかった費用は、基本的に実際にかかった金額を相手方に請求できます。
ただし、以下の点についてはよく確認しておきましょう。
- 治療費の支払われ方
- 相手方保険会社が病院に直接支払ってくれる場合と、被害者が一旦治療費を立て替えなければならない場合がある
- 詳しくはこちら:交通事故の任意一括対応とは?
- 整骨院や接骨院への通院、転院するときの手続き
- 整骨院・接骨院への通院や転院は可能ですが、適切な手順に乗っ取らないと、十分な治療費・慰謝料を支払ってもらえない可能性がある
- 詳しくはこちら:交通事故の治療を整骨院で受けても慰謝料はもらえる
入院や通院でかかった交通費
入院・通院のためにかかった交通費も、加害者側に請求可能です。
請求できる交通費
- 基本的に請求可能
- 電車代
- バス代
- 自家用車のガソリン代
- 必要性・相当性があれば請求可能
- 新幹線代
- タクシー代
- 自家用車の駐車料金、高速道路料金
他にも、付添い人や見舞客の交通費・宿泊代なども請求できる場合があります。
各交通費の計算方法や、「必要性・相当性が認められるケース」については以下の記事をご覧ください。
交通費をもれなく請求したい
入院や通院する際の付添費用
入院や通院の際に付添い人が必要だと判断されれば、付添い人に対する付添費用も相手方に請求できます。
入院付添費・通院付添費の相場は以下の通りです。
入院付添費 | 6500円/日 |
通院付添費 | 3300円/日 |
他にも状況に応じて自宅付添費が認められることもあります。
なお、付き添いを職業人に任せた場合には付添費がより高額になる傾向にあること、相手方保険会社はもっと低い金額を提示してくることも知っておいてください。
さらに詳しく
『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?慰謝料との違いも解説』では、以下の内容を解説しています。
- 各付添費の相場や請求が認められるケース
- 付添人が付き添いのために仕事を休んだケースについて
- 症状固定後も付添いが必要な場合の付添費について
家事を休んだことへの賠償金|休業損害
交通事故によるケガのせいで家事ができなかった場合、その日数に応じた「休業損害」を請求できます。
休業損害
交通事故によるケガで仕事を休むことによって生じる減収を補償するもの。
収入を伴わない家事労働も交通事故ではその他の労働と同じように扱われるため、専業主婦でも休業損害を請求できる。
休業損害は「1日当たりの収入×休業日数」で計算されます。
専業主婦の1日当たりの収入は女性の全年齢平均から計算され、令和2年発生の交通事故であれば約1万466円です。
ただし、以下の点には注意しましょう。
- 相手方保険会社は、収入や休業日数を少なく見積もった金額を提示してくることが多い
- 兼業主婦の場合は、仕事を休んだ休業損害か、家事を休んだ休業損害のいずれかしか請求できない
もっと詳しく
『専業・パート主婦(家事従事者)の休業損害|主婦手当の計算と請求方法』では、次の内容を解説しています。
- 主婦の休業損害はいくらが相場なのか
- 主婦の休業日数を数える方法
- 主婦の休業損害請求に必要な書類と請求先
後遺障害で家事に支障が出た賠償金|逸失利益
交通事故で後遺障害が残り、将来にわたって家事に支障が出る場合には、逸失利益も請求可能です。
逸失利益
- 交通事故による後遺障害が労働能力に影響することで減ってしまう、生涯収入に対する補償。
- 休業損害と同様の理由により、家事に支障が生じた専業主婦でも請求できる。
- 計算式は「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」
専業主婦の基礎収入は女性の全年齢平均とされ、令和2年に発生した事故であれば約382万円です。
ただし、兼業主婦の場合は給与所得者としての逸失利益か専業主婦としての逸失利益どちらかしか請求できません。
逸失利益の計算式で用いられる各数値については、『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法』で解説していますが、以下の計算機を使えば大まかな金額が簡単にわかります。
あくまでも目安程度の金額となりますが、利用してみてください。
物的損害に対する賠償金
交通事故によって車や荷物などが損壊した場合には、弁償代や修理代も相手方に請求できます。
物的損害に対する賠償金として請求できる主な費目は、次の通りです。
- 車の損壊に対する賠償金
- 車の修理費、買い替え費用
- 格落ち損(評価損)
- 代車費用
- 休車損害
- その他の損壊物に対する賠償金
- 荷物、設備、建物などの修理費、弁償代
- ペットの治療費 など
なお、物的損害から生じる精神的苦痛に対する慰謝料は、原則として請求できません。
交通事故の慰謝料は、基本的に身体の被害によって生じる精神的苦痛を補償するものだからです。
例外的に物的損害に関して慰謝料が認められたケースもありますが、あくまでも例外的なケースです。
よって、物的損害に対する慰謝料を請求したい場合には、まず弁護士に相談してみてください。
ただし、人身事故に関する事案のみを受け付けている事務所もあるので、物損事故の場合はその点も確認したうえで、弁護士にコンタクトを取りましょう。
- 物的損害に対する各費目の詳しい解説はこちら▶物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由
主婦の慰謝料・賠償金の得する情報
治療費の立て替え負担は健康保険で軽減できる
治療費を一旦被害者側で立て替えなければならない場合は、健康保険を使えば負担を軽減できます。
健康保険を使う手順
- 加入している保険組合に連絡を入れる
- 治療の際、病院で保険証を提示し、健康保険を使いたい旨を伝える
- できるだけ早く、「第三者行為による傷病届」などの書類を保険組合に提出する
健康保険を使うことで立て替える治療費が減れば、家計への影響も抑えられるうえ、次のようなメリットもあります。
- 治療や示談交渉の長期化により、立て替えた治療費の回収が遅れても安心
- 過失相殺により治療費が一部自己負担となっても、健康保険を使わなかった場合より負担額が少なくなる
ただし、健康保険を使っての治療にはデメリットがあるケースもあります。
健康保険を使うメリットやデメリットなどについては以下の関連記事で詳しく解説しているので、治療費を立て替える場合には確認してみてください。
健康保険利用を詳しく知る
「被害者請求」なら示談金を一部早くもらえる
主婦の場合、示談金のほとんどは相手方との示談が成立した後に支払われます。
そのため、治療や後遺障害認定が長引いて示談開始が遅れた場合や、示談交渉が長引いた場合は、示談金の受け取りが遅くなってしまいます。
しかし、「被害者請求」という手続きをとれば、示談金の一部を示談成立前に受け取れるので安心です。
被害者請求
相手方自賠責保険会社から支払われる賠償金を、示談成立前に請求すること。
交通事故の示談金には、相手方任意保険会社(もしくは加害者本人)から支払われる部分と、相手方自賠責保険会社から支払われる部分がある。
そのうち相手方自賠責保険会社から支払われる部分については、示談成立前であっても請求が可能。
ただし、自賠責保険への被害者請求については、以下の注意点があります。
- 支払われる金額は、「自賠責基準」と呼ばれる国が指定した計算方法によって算定される。
- 自賠責基準の金額はあくまでも最低限のものなので、十分とは言えないことが多い。
- 自賠責保険から支払われる金額には上限がある。
- 自賠責保険に請求できる費目は、人身被害に関するもののみ。
被害者請求の詳しい手続き方法や請求できる費目・上限額、期限などについては『交通事故の被害者請求とは?』で解説しています。
早く示談金が必要な場合には、参考にしてみてください。
自身や家族の保険も有効活用しよう
交通事故にあった場合には、自身や配偶者が加入している保険を有効活用することもポイントです。
交通事故の被害に遭った場合に使える保険としては、たとえば以下のようなものがあります。
- 人身傷害補償保険
示談成立前にまとまったお金が必要な場合や、過失相殺による減額をカバーしたいときに役立つ。 - 搭乗者傷害保険
自身や搭乗者のケガの補償を受けたいときに役立つ。 - 車両保険
車の損壊に対する保険金を請求でき、契約内容によっては自損事故や当て逃げ事故でも使える。 - 他車運転特約
借用中の車で交通事故にあった場合に役立つ。 - 示談代行サービス
示談交渉を自身の保険会社の担当者に任せられる。 - 弁護士費用特約
弁護士に相談・依頼する場合の費用を保険会社に負担してもらえる。
ただし、上記の保険は契約内容や交通事故の形態によっては使えないことがあります。
また、保険を利用する代わりに翌年からの保険料が上がってしまうこともあるので、保険利用時には契約内容をよく確認しましょう。
弁護士費用をおさえる方法はこちら▶交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介
使える保険を詳しく知りたい
主婦が慰謝料を請求する方法
示談交渉による慰謝料請求が一般的
主婦に限らず、交通事故の慰謝料は示談交渉を通して請求することが一般的です。
示談交渉を始められる時期になると、基本的に相手方任意保険会社から示談金額や過失割合の提示があるので、納得いかない点があれば交渉しましょう。
このときの注意点は、次の通りです。
- すべての損害が確定する前に示談交渉を始めない
- 示談交渉は、ケガが完治した人身事故なら治療終了後、後遺症が残った人身事故なら後遺障害認定後に開始できる
- 上記より前に示談交渉を開始し、示談が成立すると、あとから新たな損害が発覚するリスクがある
- 相手方が提示する示談金額は低めに見積もられていることが多いので鵜呑みにしない
- 相手方任意保険会社は保険会社独自の計算方法(任意保険基準)で示談金を計算するが、この計算方法では低めの金額が算定されてしまう
- 相手方の提示額を法的正当性の高い計算方法(弁護士基準)で算定し直すと、大幅に高額になることがある
※自賠責基準は、交通事故被害者に補償される最低限の金額相場
示談交渉の相手となる加害者側の任意保険会社は、日々仕事としてさまざまな被害者・弁護士と示談交渉をおこなうプロです。
相手方任意保険会社は交渉を有利に進めるためのテクニックに長けていますし、知識も被害者より豊富なので、交渉が思うように進まないことは十分に考えられます。
少しでも不安に思うことや困ったことがあるのであれば、専門家である弁護士に相談してみてください。
役立つ記事
- 『交通事故の慰謝料は弁護士基準で計算』
- 弁護士基準での慰謝料計算方法
- 弁護士基準における慰謝料計算機
- 弁護士基準と他基準との相場額の比較 など
示談交渉がうまくいかないなら裁判も検討
示談交渉で合意形成ができない場合は、裁判も検討することになります。
裁判を起こせば相手方の合意の有無にかかわらず損害賠償の問題を解決できますし、法的正当性の高い賠償金額が認められることも期待できます。
しかし、裁判には以下のようなリスクもある点は知っておかなければなりません。
- 訴訟の手続きが煩雑
- 解決までに時間がかかる可能性がある
- 主張の立証や尋問の準備が必要
- 敗訴すれば主張が退けられるうえ、訴訟費用が被害者側の負担となる
よって、裁判を起こすかどうかは慎重に判断すべきです。
裁判以外にも調停やADR機関の利用によって問題が解決するケースもあるので、示談が成立しない場合に取るべき手段については弁護士に相談してみることをおすすめします。
裁判について詳しく知りたい
交通事故の裁判の起こし方や流れ|費用・期間や裁判になるケースを解説
主婦の慰謝料請求は弁護士に相談をしよう!
主婦の慰謝料請求を弁護士に相談すべき理由
主婦の慰謝料請求は、次の理由から弁護士に相談することがおすすめです。
- 相手方が提示する示談金額を十分に増額させることは、主婦に限らず被害者自身では難しい
- 適正な示談金額や過失割合は事情に応じて柔軟に調整されるので、弁護士でないと算定が難しい
- 主婦の場合、休業損害の日額や休業日数について相手方ともめやすい
- 示談交渉は家事や育児の合間を縫って、電話やFAXなどでおこなわれるため、時間的負担が大きい
慰謝料請求について弁護士に相談・依頼すれば、上記のような心配をする必要はありません。
弁護士相談については無料で受け付けている事務所もあり、正式な依頼はせず、相談のみでの利用も可能です。適正な示談金額や過失割合の見通しは相談の時点で確認可能なので、まずは弁護士相談だけでも利用してみることをおすすめします。
- 弁護士に相談・依頼するメリットは?▶交通事故を弁護士に依頼するメリット8選
- 実際に示談交渉や弁護士相談・依頼をした人の体験談▶交通事故の体験談8選
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了