【弁護士解説】車の時価額の調べ方|納得できない提示額の増額事例も紹介
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「どうしてこんなに安いの?」「中古車市場ではもっと高く売られているのに…」
保険会社から提示された車の時価額(賠償額)があまりに低く、納得できない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
車の時価額は、自分で調べて根拠をもって反論できます。
この記事では、保険会社が使うレッドブックの仕組みと時価額の調べ方、増額が認められた事例を解説します。
目次
【車の時価額とは?】保険会社の提示額が低い理由
まず、保険会社との交渉の土台となる「時価額」という言葉の意味を正確に理解しておくことが重要です。
時価額・買取価格・販売価格の違いとは?
交通事故における車両の時価額とは、簡単に言うと事故が起きたその時点での、その車の客観的な市場価値のことです。
時価額は、車両本体価格を指します。
中古車販売サイトの表示価格(支払総額)では、消費税や登録・整備などの諸費用が含まれていることが多いです。
時価額は、これらの諸費用を差し引いた金額となるため、中古車販売サイトの表示価格よりも低くなることもあります。
(1)中古車販売価格
お店がユーザーに車を売る値段です。
車両本体価格+販売店の利益、消費税、整備費用、保証費用などが上乗せされています。
(2)買取価格
買取業者がユーザーから車を仕入れる値段で、販売価格よりも低くなるのが一般的です。
(3)時価額
事故時点での客観的な車両価値になります。
裁判実務では、同じ条件の車を中古車市場で買うのに必要な価格、つまり(1)の販売価格に近い水準で考えます。
ただし、中古車サイトの支払総額に含まれる登録や整備などの諸費用は、時価額には入りません。
保険会社が(2)の買取価格や業者間の卸売価格に近い金額を時価額として提示してくることもあり、その場合は小売価格を基準に見直しを求める余地があります。
時価額とレッドブック
実務では、レッドブックなどの中古車小売価格をもとに時価額を認定することもよくあります。
レッドブックの小売価格は税抜のため、これに消費税相当額を加えた金額が時価額とされるケースもあります(名古屋地判令和5年6月14日)。
レッドブックの価格より、中古車販売サイトの販売価格のほうが高いことが多いです。
保険会社がレッドブックで車の時価額を提示してきた場合には、自身で中古車販売サイトを検索し、妥当な金額なのかチェックする必要があるでしょう。
時価額と購入価格
中古車として購入後間もない車については、購入代金等を基に時価額が算定されることがあります(名古屋地判平26・ 7 ・ 8 交民集47巻 4号881頁)。
これは、購入から事故までの期間が短く、その間の価値の下落が小さいと考えられるためです。
経済的全損と物理的全損の違い
車が物理的に修理不可能な状態を「物理的全損」といいます。
一方、修理は可能でも「修理費が車両の時価額を上回る」場合があり、これを「経済的全損」と呼びます。
物理的全損
車が炎上したり、フレームが修復不可能なほど歪むなど物理的に修理が不可能な状態です。
この場合は車の価値(時価額)が賠償額となります。
経済的全損
技術的には修理が可能でも、修理費が車の価値(時価額)を上回ってしまう状態を指します。
経済的全損の場合、原則として、賠償額の上限は修理費ではなく、事故時の車両の時価額となります。
だからこそ時価額がいくらになるのかは非常に重要なポイントになります。
時価額が受け取れる「総額の上限」を決める
時価額がなぜこれほど重要かというと、それが最終的に受け取れるお金の「総額の上限」を決めるといっても過言ではないからです。
車の買い替えに必要な金額が時価額を上回っていても、その差額を相手に請求できるとは限らず、新車への買い替えには自己資金が必要になることがあります。
相手からの賠償金のほかに、ご自身の車両保険を使ったとしても、時価額を超えた金額は原則として受け取れません。
全損でも時価額を超える補償を受けられる例外
自分の車両保険に新車特約(車両新価特約)などが付いている場合は、所定の条件を満たすことで、事故車の時価額を超える補償を受けられることがあります。
なお、自分の車両保険と相手への賠償請求で、同じ損害について二重に補償を受けることは原則としてできません。
自分の車両保険から保険金を受け取った場合、その保険金に相当する範囲で、相手への損害賠償請求権が保険会社に移るためです(保険法第25条第1項)。
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レッドブックとは?車の時価額が低くなる3つの理由
保険会社が時価額を提示する際、大きな根拠としているのが「レッドブック」です。
保険会社が使うレッドブックとは
レッドブック(正式名称:オートガイド自動車価格月報)とは、中古車の標準的な価格が車種・年式・グレードごとに掲載されている月刊誌です。
1958年(昭和33年)に創刊され、60年以上の歴史を持つ日本で最初の中古車価格情報専門誌です。有限会社オートガイドが発行しています。
2026年5月1日には、デジタル版の「RED Book Digital」も提供され始めました。
レッドブックによる時価額の調べ方
レッドブックには、同じ車でも「小売価格」「卸売価格」「下取価格」の3つの中古車価格と、新車価格が載っています。裁判実務で時価額の基準になるのは、原則として小売価格です。
車の時価額はレッドブックの「小売価格」を見る
- 小売価格
販売店が一般の消費者に販売する価格。3つの中でもっとも高い - 卸売価格
業者間オークションなど、業者同士で取引する価格。小売価格より低い - 下取価格
消費者が販売店に売却・下取りに出すときの価格。3つの中でもっとも低い
このほか、新車価格を参考にするケースもあります。
- 新車価格
新車として販売された当時の価格
※年式が古く、レッドブックに中古車価格が載っていない車は、新車価格をもとに減価償却で時価額が算定され、新車価格の1割程度にとどまることもあります(大阪地判平25・6・25)。
なお、掲載価格は消費税を含まない車両本体価格で、走行距離や車検の残存期間が標準と異なる場合は加算減算表で調整する前提になっています。
保険会社の提示額がどの価格をもとにしているか、消費税相当額や加算が反映されているかを確認しましょう。
レッドブックは一般の人は見られない
レッドブックは自動車業界や損害保険会社、法曹関係者など向けの専門誌で、購入は年間契約に限られるため、自分の車の価格を確かめるために1冊だけ買うといった使い方は原則できません。
国立国会図書館には所蔵されてはいますが、一般の人が手軽に内容を確認できる資料とはいえないでしょう。
そのため被害者側は「本当にその金額が妥当なのか?」を客観的に判断するのが難しい状況に置かれてしまいます。
レッドブックでの価格が低い3つの理由
レッドブックの価格は客観的な基準の一つではありますが、必ずしも愛車の本当の価値を正確に反映しているとは限りません。
その理由は以下の通りです。
(1)標準状態の時価額が基準
レッドブックの価格は、あくまで「標準的な走行距離で、目立つ傷や凹みがない」という標準状態の車両を前提とした、時価額に近いものです。
つまり、個別の車の状態や、実際に中古車サイトで売られている価格まで反映していない数字です。
(2)個別のプラス要素が反映されにくい
レッドブックの価格には、個別のプラス要素が十分に反映されないことがあります。
具体的には、次のような市場価値を上げるための重要なポイントが見過ごされがちです。
- 走行距離が極端に少ない
- 人気の限定グレードや特別仕様車
- 高価なメーカーオプション(サンルーフ、本革シートなど)
- 定期的なメンテナンスが行き届いたコンディション
- 人気のボディカラー
(3)市場の急な価格変動に対応しきれない
近年、特定の旧車やスポーツカーの価格が高騰していますが、レッドブックの価格改定がそうした急激な価格変動に追いついていないケースがあります。
これらの理由から、レッドブックの価格が自分の車の実際の価値より低くなっているケースは少なくありません。
自分でできる車両時価額の4つの調べ方
保険会社の提示額に納得できない場合、まずはご自身で客観的な証拠を集めることが重要です。
ここでは時価額を調べるための具体的な方法を4つご紹介します。
(1)中古車情報サイトで調べる
まずは大手中古車情報サイトで、ご自身の車と同じ車種・年式・型・グレードで、同程度の使用状態・走行距離の車両が、現在いくらで販売されているかを調べてみましょう。
グーネットやカーセンサーなどが、代表的な中古車情報サイトになります。
ポイント
複数の類似車両をリストアップし、価格帯を把握します。スクリーンショットやページの印刷をして、証拠として残しておきましょう。
事故時の時価額を証明する必要があるため、可能な限り早急に時価額を調査し、プリントアウトしておくこともポイントです。
注意点
これはあくまで「販売価格」であり、時価額そのものではありません。しかし「市場ではこれくらいの価格で取引されている」という有力な参考資料になります。
(2)買取業者のオンライン査定を利用する
複数の買取業者のサイトで、車種や年式などを入力して査定額を調べることができます。
一括査定サイトを利用すると、一度の入力で複数の業者の概算価格が分かるので便利です。
ポイント
大まかな買取相場を把握するのに役立ちます。
注意点
オンライン査定はあくまで概算です。正確な金額ではないため、これ単体で交渉材料とするのは少し弱いかもしれません。
(3)買取業者に「事故前の車両価値」の査定を依頼する
最も有効な対抗策の一つが、プロの買取業者に「事故がなかったと仮定した場合の、本来の車両価値」を査定してもらうことです。
ポイント
買取業者に依頼すれば「もし事故がなく、中古車として市場で売買されていたらいくらだったか」を査定してくれます。
この査定書は「本当の価値」を客観的に示す証拠となり、保険会社との強力な交渉材料になります。
できれば3社以上から査定書を取得し、時価額の根拠を固めましょう。
注意点
業者によって査定額に幅が出たり、事故前の価値査定(意見書作成)が有料、または対応不可の場合もあります。
依頼する際は、必ず「交通事故の賠償交渉で使う事故前の時価額の査定書が欲しい」と明確に伝え、対応可能か事前に確認しましょう。
(4)日本自動車査定協会(JAAI)の査定を受ける
より公平で中立的な価格証明が必要な場合は、一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)に査定を依頼する方法があります。
ポイント
JAAIは中立的な第三者機関であり、その査定結果は裁判でも証拠として認められるほど信頼性が高いものです。
保険会社もこの査定結果を無視することは難しくなります。
注意点
査定には数千円~1万円程度の費用がかかります。
時価額に納得できない場合の対処法
証拠が集まったら、それらを基に保険会社と交渉します。
(1)客観的な証拠を提示する
ご自身で集めた中古車サイトのデータや買取業者の査定書を提示し、「市場で同等の車両を購入するには、貴社の提示額では不足している」と具体的に主張します。
証拠となるページのURLやスクリーンショットも忘れずに添付します。
(2)相手の計算根拠を明確にさせる
「今回の時価額は何を根拠に、どのように算出したのか」を保険会社に書面で回答するよう求めます。
回答が来たら、次の3点を確認します。
- レッドブックの小売価格・卸売価格・下取価格のどれを使っているか
- 消費税相当額が加算されているか
- 走行距離・車検の残存期間・オプションの加算減算が反映されているか
もし相手がレッドブックの一部だけを提示してきたら、その価格が走行距離や人気のオプションを考慮しているかどうか、集めた証拠を基に具体的な反論をしましょう。
(3)安易に示談書にサインしない
一度示談書にサインしてしまうと、原則として後から覆すことはできません。
納得できない場合は、決してその場で同意しないでください。
たとえ後日、より高額な賠償が妥当だと分かっても、追加の請求は極めて困難になります。焦らず、じっくりと検討することが重要です。
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(4)時価額以外に請求できる費用も確認する
全損の場合に受け取れるのは、車両の時価額だけではありません。時価額とは別に、次の費用を請求できる場合があります。
- 買替諸費用(登録費用、車庫証明費用、納車費用など)
- 事故現場から修理工場などへのレッカー費用
- 買い替えまでの代車費用
保険会社が「登録諸費用は時価額に含まれる」として一括で処理しようとするケースもあります。
後述の裁判例(1)では時価額に加えて買替諸費用が認められ、解決事例(2)では時価額とは別の損害として賠償が認められています。
また、車両価格にかかる消費税は、時価額に含めて計算するのが原則ですが、中古車の取引価格がわからず減価償却などで時価額を出した場合は、買替諸費用として別に加算されることもあります。
弁護士の無料相談
保険会社に根拠を求めても提示額が変わらないときは、弁護士が中古車市場の調査結果と裁判例をもとに交渉することで見直される余地があります。
弁護士費用特約があれば物損のみの事故でも無料相談をご利用いただけます。
ケガをされた場合は、特約がなくてもご相談ください。
車両損害で増額が認められた3つの裁判例
車の時価額は「レッドブックが全て」ではありません。保険会社の主張は、絶対的なものではないのです。
裁判所は、より実態に即した公平な判断によって、保険会社の提示額を覆すケースも存在します。
(1)買替諸費用が時価額に加算されたケース
時価額が低くても買替諸費用の加算で約3倍の車両損害が認められた裁判例
大阪地判平25・6・25(平成24年(ワ)3514号・8908号)
原告Aが運転する普通乗用車(原告Bが所有。初度登録から約14年、走行距離約6.8万km)が、交差点に進入したところ、一時停止規制のある道路を走行するC運転の原付と出会い頭に衝突した事故。
原告側の車両は中古車市場に出回っておらず、レッドブックにも価格の記載がなかった。
原告Bは修理費(72万5728円)を前提に損害賠償を求めたのに対し、被告Cは車両の時価額は10万5000円の経済的全損であると争い、時価額の算定方法と、買替諸費用をどこまで加算できるかが問題となった。
裁判所の判断
「…単純な車両時価額だけではなく、買換において必要となる諸費用も算入するのが相当である。」
大阪地判平25・6・25(平成24年(ワ)3514号・8908号)
- 具体的な中古取引価格を示す証拠がないため、減価償却法で時価額を算定せざるを得ないとし、時価額を10万5000円と認定。修理費を下回るため経済的全損と判断。
- 時価額に消費税・登録費用・車庫証明費用・納車手数料・車検整備費用・解体処分費用・抹消登録費用を加えた31万6250円を車両損害と認定(修理の見積費用は否定)。
損害賠償額
10万5千円→31万6250円(時価額の約3倍)
※過失相殺(15%)後の認容額は26万8813円
減価償却による時価額の算定は、特段の事情のないかぎり許されないとされています(最判昭和49年4月15日・民集28巻3号385頁)。
本件は、中古車市場での取引価格を示す資料がなかったため、例外的に減価償却の方法で時価額が算定された例です。
(2)オプション装備が時価額に加算されたケース
オプション装備が時価額に加算された裁判例
京都地判平26・8・26(平成24年(ワ)1087・2182号)
ハーレーダビッドソン購入約半年後に交差点事故で全損。修理見積198万円に対し、被告は時価額133万5千円の経済的全損と主張。
原告は購入時に19インチフロントホイール(20万5千円)、18インチリアホイール(24万円)等、総額54万円超のタイヤ回り純正オプション装備を付けており、モデルチェンジで希少な2008年モデルの付加価値を主張した。
裁判所の判断
「…タイヤ回りの装備品…を付加価値として加算した金額である160万円を原告二輪車の時価額と評価するのが相当である」
京都地判平26・8・26(平成24年(ワ)1087・2182号)
- タイヤ回りの純正装備品を付加価値として認定。
- 修理費、購入時期、モデルの希少性を考慮。
時価額の増額
133万5千円→160万円
(3)レッドブックの4倍超の時価額が認められたケース
レッドブック評価の4倍超の時価額が認められた裁判例
東京地判平30・12・20(平成28年(ワ)22120・36775号)
首都高速で1996年式ポルシェ911ターボ(新車価格1680万円、走行距離約3.8万km)が事故で全損。
加害者側はレッドブック記載の480万円を時価額と主張したが、被害者は日米の中古車市場での実勢価格や希少性を根拠に高額評価を主張。修理用パーツは生産中止で修理不可能、仮に可能でも新車価格の4~5倍の費用がかかる状況だった。
裁判所の判断
「…本件事故当時の被告車の時価は2000万円を下らないと認められる。」
東京地判平30・12・20(平成28年(ワ)22120・36775号)
- 日米の中古車市場での実勢価格を重視。
- 「実取引での価格水準を反映してない」としてレッドブックの評価を否定。
時価額の増額
480万円→2000万円(レッドブック評価額の約4.2倍)
増額が認められた3つの解決事例
裁判例で示されているように、時価額の算定は一律ではなく、市場価格や車両の利用状況などを踏まえて判断されることがあります。
ここでは、実際にアトム法律事務所が担当し、保険会社の提示額を大きく見直すことに成功した時価額交渉の解決事例をご紹介します。
(1)時価額15万円→70万円に増額された事例
事業用サクシードの時価額を4.5倍に増額させた
首都高速で社用車のトヨタ・サクシードが事故により全損。過失割合は相手方10:当方0で、こちらに一切の過失はなかった。
事故のわずか数か月前に約50.6万円で購入したばかりの車だったが、加害者側保険会社は時価額をわずか15万円と提示。
購入価格や市場実勢から大きく乖離した金額に、ご依頼者は「中古市場では60〜70万円が相場なのに」と強い不信感を抱いた。実際、同型車は業務用途として需要が高く、供給も限られており、提示額では到底代替車を確保できない状況だったため、適正な評価を求めてアトム法律事務所へ相談された。
弁護士の活動
弁護士が自ら複数の大手中古車販売サイトを調査し、同程度の年式・走行距離・状態の車両が実際にいくらで販売されているのかを徹底的に洗い出した。その客観データを根拠に、提示額15万円が購入価格や市場実勢から大きく乖離していると具体的に指摘し、粘り強く交渉した。
成果
- 車両の時価額は4.5倍以上の70万円に増額。
- 増額された車両損害額にレッカー費用や代車費用などを加え、総額約95万円の賠償金を受け取る内容で解決。
ポイント
中古車としての価格だけでなく、事業用車両としての需要や市場価値を踏まえて評価した点が交渉の鍵となりました。
(2)時価額10万円→総額55万円超に増額された事例
登録諸費用を時価額に含むとする保険会社の主張を覆した
赤信号で停車中、後方から来たバイクに追突される事故。過失割合は相手方10:当方0で、ご依頼者に一切の過失はなかった。
事故により首と肩を負傷し、通院を余儀なくされたほか、車両右側面が大きくへこみ、テールランプも破損。修理費は40万円超だったが、相手方保険会社は「12年経過車のため時価10万円」と提示。
修理も買い替えもできない金額にご依頼者は強い不満を抱き、適正な賠償を求めてアトム法律事務所へ相談された。
弁護士の活動
弁護士が自ら中古車市場を調査し、同年式・同程度の車両価格を比較。提示額10万円が市場実勢と大きく乖離している点を根拠に増額を求めた。
交渉の過程で、保険会社が「登録諸費用は時価額に含まれる」として一括処理しようとしたため、弁護士はこれを明確に指摘。「車両の時価と登録諸費用は性質の異なる損害であり、別途賠償されるべき」と反論し、独立項目としての賠償を認めさせた。
成果
- 車両の時価額を大幅に増額。
- 増額された車両損害額にレッカー費用や代車費用などを加え、総額約55万円超の賠償金を受け取る内容で解決。
ポイント
保険会社の一括処理に対し、登録諸費用の性質を明確に区分して主張したことが、適正な賠償につながりました。
(3)修理費178万円→賠償額229万円超に増額された事例
修理から全損扱いへの転換を実現した
高速道路上で、前方の事故を回避するために急ブレーキを踏んだところ、後続車に追突される事故が発生。過失割合は相手方10:当方0で、こちらに一切の過失はなかった。
ご依頼者は頚椎捻挫などのケガを負い、車も大きく損傷。相手方保険会社は修理費178万円を提示したが、ご依頼者は「フレームが歪んでいるかもしれず、安全に乗り続けられない」と不安を抱いていた。
メーカーからも「修理後の使用は推奨できない」との回答があり、修理扱いではなく全損としての賠償を希望。当初請求した260万円は認められず、交渉が難航するなかでアトム法律事務所に相談された。
弁護士の活動
弁護士はまず、メーカーから「修理して乗り続けることは推奨しない」との正式な文書を取得し、修理扱いが不当であることを客観的に裏付けた。さらに中古車市場を詳細に調査し、車両の適正な時価額を算出。修理費ではなく時価額に基づく全損処理が妥当であると主張し、買い替えに必要な諸費用も含めて粘り強く交渉した。
成果
- 修理扱いから全損扱いへの転換を実現。
- 当初提示の修理費178万円から、229万円超の物損賠償を獲得。
- 人身損害も含め、総額261万9,774円で解決。
ポイント
修理の可否だけでなく、安全性やメーカーの見解を踏まえて全損処理の妥当性を示したことが決め手となりました。
車の時価額に関するよくある質問
Q.車の時価額は誰が決めるのですか?
車の時価額は、法律で一律に決まる金額ではなく、最終的には当事者の合意または裁判で決まります。
保険会社の提示額は相手方の主張の一つにすぎず、根拠資料を示して見直しを求めることができます。走行距離、整備状態、装備、同種車の中古車市場での流通価格などが分かる根拠資料を示すことが重要です。
Q.レッドブックに載っていない古い車の時価額はどうなりますか?
レッドブックに掲載がない古い車は、新車価格の10%程度を時価額とする扱いがされることがあります(東京地判平15・ 8 ・ 4 交民集36巻 4 号1028頁)。
ただし、同じ車種の中古車が市場で流通していれば、その価格を根拠に主張できます。
Q.レッドブックの他に、車の時価額を調べられる専門書はありますか?
日本自動車査定協会(JAAI)も中古車価格のガイドブックを発行しています。
ただし、通称「イエローブック」(中古車価格ガイドブック 卸売版)に載っているのは卸売価格で、小売価格が載っているのは「シルバーブック」(小売版)です。参考にする場合は、どちらの価格かを確認してください。
Q.自分で車の時価額は調べられますか?
はい。ご自身でも調べられます。中古車販売サイトで、同じ車種・年式・グレードで走行距離が近い車の販売価格を調べる方法は、実務でもよく使われます。実際の市場価格を示す資料として、保険会社との交渉や裁判でも用いられます。
Q.改造車の時価額の調べ方は?
改造車の場合、改造部分を無価値として車両本体のみの時価額を調べる方法があります(大阪地判平8年3月22日交民29巻2号467頁)。
また、改造部分について、減価償却の方法により価格を算定し、車両の本体価格に加算する方法も考えられます(東京地判平29年10月3日交民50巻5号1220頁)。
Q.ボロボロな車の時価額の調べ方は?
使用状態や整備状態が良くない車の時価額についても、レッドブックや中古車市場の価格を調べるのが基本です。ただし、車両の状態、走行距離、車検残月数等に応じて、一定額減額される可能性があります(神戸地判平27年11月19日自保ジ1968号46頁)。
Q.特殊な車両の時価額の調べ方は?
中古車市場にあまり流通していない特殊な車両については、まず取得価額を調べ、一定の方法で減価して時価額を算定する方法が考えられます。
レッドブックの市場価額を参考にベース車両の減価率を算定し、霊柩車(クラウンエステート改造・初度登録から10年経過)の取得価額を減額して算定した裁判例があります(名古屋地判平28・2・17 交民集49巻1号204頁)。
Q.自転車の時価額の調べ方は?
自転車の時価額については、レッドブックや中古車サイトで時価額を調べることができません。
自転車については、購入価格を基準に耐用年数を加味しつつ、減価償却の方法で時価額を算定する方法が考えられます(東京地判平27・7・29交民集48巻4号923頁)。
物損事故の時価額交渉は弁護士に依頼しよう
ご紹介した事例のように、保険会社の提示する時価額が実際の市場価値や車の利用状況に見合っていないケースは少なくありません。
保険会社は一般的に「レッドブック」など業界の価格資料をもとに金額を算定しますが、通常、レッドブックの価格は、実際の中古車サイトでの販売価格よりも低くなります。
実務では、市場価格や車両の需要、使用状況を踏まえたより実質的な評価が適切なケースもあります。
このような場合、弁護士が市場データや法的根拠をもとに交渉することで、提示額の見直しや、より適正な金額での解決を実現できる可能性があります。
時価額交渉を弁護士に依頼するメリット
時価額の交渉は単に金額の話し合いではなく、法的根拠や実勢価格の裏付けが求められます。
そのため、弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。
- 保険会社と対等な立場で交渉できる
- 裁判例や法的根拠に基づき適正な時価額を主張できる
- 精神的・時間的な負担を軽減できる
弁護士に依頼することで、専門的な根拠をもとにより納得感のある解決を目指せます。
物損事故を【自己負担0円】で解決する方法
弁護士に依頼したくても、賠償金より費用が高くなる「費用倒れ」を心配して、ためらってしまう方は少なくありません。
しかし、弁護士費用特約を使うことができれば、自己負担0円で弁護士に、物損事故の時価額等の交渉を依頼できる可能性があります。
弁護士費用特約とは、一般に、保険会社が弁護士費用を300万円まで支払ってくれる特約のことです。
ご自身やご家族の自動車保険や、火災保険、クレジットカードに付帯していることが多いです。
実際に先ほどご紹介したアトム法律事務所の解決事例も、この特約によって費用のご負担なく解決に至っています。

物損事故の時価額・ケガのお悩みは24時間予約受付中
アトム法律事務所では、弁護士費用特約が利用できる物損事故について、お電話での無料相談を受け付けております。
弁護士費用特約がなく、ケガもない物損のみの事故では、弁護士費用が増額できる金額を上回る「費用倒れ」になるおそれがあるため、無料相談はお受けしておりません。
ご自身の自動車保険に特約が付いているかどうかは、保険証券や保険会社への問い合わせで確認できます。
なお、事故によって体に少しでも痛みや違和感がある場合は、人身事故として対応できる可能性があります。
その場合は、弁護士費用特約の有無にかかわらず無料相談で今後の対応をご案内できますので、まずはお気軽にご相談ください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国16拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
