交通事故示談のテクニック7つ|自力で示談金増額を成功させる交渉術
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故の示談交渉は、被害者自身でもおこなえます。
ただし、相手となるのはプロである加害者側の保険会社であることが多いです。
示談を成功させるためのテクニックは以下の7つです。
- どれくらいの増額を求めるのか具体的に提示する
- 専門性・権威性・客観性のある証拠を提示する
- わからないことには即答しない
- 交渉の経過は記録する
- 相手の態度は戦略だと割り切り気にしない
- 相手が示談成立を焦るタイミングを狙う
- 相手の心証を損なわずうまくテクニックを使う
この記事では、上記のテクニックについて詳しく解説していきます。
専門知識や示談交渉経験の少ない被害者自身でもスムーズに行動に落とし込める、実践的な内容になっているので、参考にしてみてください。
目次
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自分で交渉するなら知っておくべき示談の基本
示談交渉とは|交渉の相手や方法について知っておくべき点
自分で示談交渉をしようと思っているなら、交渉テクニックのことを考える前に、示談交渉とは何なのかを理解しておく必要があります。
示談交渉に関する基本的な情報は、次の通りです。
- 示談交渉とは
- 交通事故の示談金、過失割合について加害者側と話し合って決めること
- 示談交渉の相手
- 基本的には加害者が加入している保険会社の担当者であることが多い
- 被害者側の交渉人
- 被害者自身で交渉することも可能
- 被害者が加入する保険の「示談代行サービス」を使えば、自身の保険会社に交渉を任せられる(※被害者の過失が0の場合を除く)
- 示談交渉の方法
- 電話やFAX、メールが多く、対面で交渉することはあまりない
示談交渉の相手は、加害者本人ではなく加害者が加入する保険会社の担当者であることが多いです。
保険会社の担当者は仕事として、日々さまざまな被害者・弁護士と示談交渉をしているプロです。
自分で示談交渉しようと思っている場合は、相手はプロであるということをよく理解し対策を立てる必要があります。
この記事で紹介する交渉テクニックも参考にして、準備を進めてください。
示談金額は弁護士基準で計算する
示談金の金額を計算する基準として、以下の3つの基準が存在します。
- 自賠責基準
自賠責保険が保険金を支払う際に利用する計算基準 - 任意保険基準
任意保険会社が保険金や示談金を支払う際に利用する計算基準 - 弁護士基準
弁護士が示談金の金額を計算する際に用いる計算基準
上記の3つの基準の内、最も適切なのは、過去の裁判例をもとにしている弁護士基準です。
また、弁護士基準で計算すると最も高額な金額となることからも、弁護士基準によって計算した金額を示談金として請求するべきでしょう。

もっとも、基本的に示談交渉の相手方となる保険会社の担当者は、任意保険基準で計算された示談金を支払うと提案してきます。
そのため、保険会社からの提案を安易に信用せず、弁護士基準により計算された示談金を支払うように交渉を行う必要があるのです。
交通事故被害者が請求できる費目の内訳や、弁護士基準によって計算される相場額について知りたい方は『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目・相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。
示談代行サービスでは弁護士基準の示談金を得られない恐れ
「示談代行サービス」を利用すれば、自身の代わりに保険会社の担当者が示談交渉を行ってくれますが、以下のような問題が生じる恐れがあります。
- 示談代行サービスを使うと、保険会社同士の示談交渉になるため、これまで・これからの関係性を考慮して交渉が甘くなる場合がある。
- 被害者の保険会社が、自社の任意保険基準にもとづいて示談金額を計算し、主張するため、示談金が弁護士基準で計算した金額より低額になる。
弁護士基準で計算した示談金額の獲得を目指すのであれば、専門家である弁護士に示談交渉を依頼すべきでしょう。
よって、「できるだけ多くの示談金額を獲得したい」「増額の余地を残したくない」と思っている場合は、弁護士も検討してみることをおすすめします。
弁護士を立てることで獲得が見込める示談金額については、アトム法律事務所の無料相談で確認できます。
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自力でも保険会社に負けない示談交渉テクニック
(1) 「もっと増額」より「〇〇万円増額」と主張
示談交渉の際、加害者側の保険会社は基本的に低めの示談金額を提示してくるため、増額の主張が必要になります。
しかし、それに対して漠然と「もっと増額すべきだ」と主張することは、次の理由から避けるべきです。
- 交通事故の損害賠償金に関する知識や相場感がないことが相手に伝わってしまい、加害者側の保険会社が一層強気な態度に出てくる可能性がある
- 相手方に思い込みや感情論で増額を求めていると判断されてしまい、主張が聞き入れられにくくなる
被害者自身も、具体的にどれくらい増額すべきか把握していないと落としどころがわからなくなってしまうでしょう。
よって、自分で示談交渉する場合は、事前に適切な損害賠償金額を確認しておき、具体的に「○○万円増額すべきだ」と主張することがポイントです。
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さらに実践的なアドバイス
具体的な金額を示して増額を求めた場合、加害者側の保険会社からは「どのようにしてその金額を導き出したのか」と聞かれるでしょう。
この際、専門家ではない被害者が自分で計算したというと、金額の根拠・正当性に欠けるとして主張を退けられる可能性が高いです。
よって、主張に説得力を持たせるためにも、どれくらいの増額を主張すべきかは弁護士に相談してみてください。
▼電話やLINEで被害内容を伝えると、弁護士から折り返しの電話やLINEが届きます。相談のみでの終了も可能です。
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(2)主張の根拠は専門性・権威性・客観性重視で探す
示談交渉で主張を通すには、主張の正当性を裏付ける証拠が必要です。
特に交通事故の被害者は、加害者側の保険会社から見れば「損害賠償金に関する専門知識が浅い素人」です。
「専門家でもない被害者の主張には説得力がない」として主張を退けられる可能性が高いので、必ず専門性・権威性・客観性のある証拠を揃えておきましょう。
具体的には次のような証拠が有効です。
- 損害賠償金に関する証拠
- 診療報酬明細書
- 給与明細書
- 源泉徴収票や確定申告書の控え
- 休業損害証明書
- 診断書、後遺障害診断書
- 交通事故によって生じた出費の領収書
- 類似事故の慰謝料額を示す判例、事例の資料
- 専門書の記載:「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部)
- 過失割合に関する証拠
- 専門書の記載警察が作成する実況見分調書(取り寄せ方:実況見分の流れや注意点は?過失割合への影響も踏まえて解説)
- ドライブレコーダーや防犯カメラの映像
- 目撃者の証言
- 類似事故の過失割合を示す判例、事例の資料
- 専門書の記載:「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)
上に挙げた専門書は弁護士も実務で参照する書籍なので、示談交渉の際に持ち出しても十分に通用するでしょう。
ただし、専門書の記載や判例を主張の根拠として挙げた場合、加害者側の保険会社も別の判例や専門書の記載を示して反論してくることがあります。
判例や専門書の出し合いになると、どうしても知識が豊富な保険会社側が有利となってしまうため、弁護士への相談も検討することをおすすめします。
(3)わからないことは無理に即答せず持ち帰る
加害者側の保険会社から聞かれたことにどう答えたら良いのかわからない、加害者側の保険会社からの提示内容を承諾して良いのかわからないという場合、無理にその場で答える必要はありません。
回答を保留して、じっくり考えたり弁護士に相談したりしましょう。
加害者側の保険会社は、被害者側が示談交渉に不慣れであることを見越して意思決定を急かしてくることがあります。
それに乗せられてその場しのぎの回答や曖昧な回答をしてしまうと、交渉において不利になってしまうので、毅然とした態度で回答を保留することが重要です。
(4)示談交渉の内容は書面に残し水掛け論を防止
示談交渉は電話やFAXなどでおこなわれますが、お互いの発言に関して言った・言っていないと争いになる可能性があるので、できるだけFAXなど書面に残る方法でやり取りすることが望ましいです。
電話でやり取りする場合は、その内容をメモしたり、録音しておきましょう。
これまでの経緯が記録として残っていると、弁護士に相談・依頼することになった場合にも役立ちます。
(5)保険会社の態度は戦略だと割り切り気にしない
示談交渉の際、加害者側の保険会社は次のような言動をとってくることが多いです。
- 専門用語を用いるなど難しい話し方をする
- 頑なで高圧的な態度をとる
- 被害者側の質問にきちんと答えない
- 提示内容について「これが精いっぱいの金額です」「これが一般的な相場です」と言う
上記はいずれも加害者側の保険会社のテクニックです。
相手の態度に戸惑って流されてしまっては加害者側の保険会社の思うつぼですし、腹を立てて感情的になると、加害者側の保険会社が弁護士を立ててくる可能性もあります。
よって、相手の言動は戦略のひとつだと割り切り、冷静に次のような対応をしましょう。
- 分からないことはそのままにせず、きちんと答えてもらえるまで質問する
- 提示内容が適切だと言える根拠をたずねる
- 高圧的な態度をとられても、感情的・けんか腰にならない
なお、加害者側の保険会社の態度があまりにも冷淡、連絡を入れた時の反応が遅すぎるということがあれば、そんぽADRに相談してみることもおすすめです。
そんぽADR
保険会社に関する苦情・相談を受けると、その保険会社に対して対応を求めてくれる。
詳しくは、そんぽADRのホームページをご覧ください。
(6)相手方が示談成立を焦るタイミングを利用する
交通事故が刑事事件として起訴される可能性がある場合、加害者側はできるだけ早く示談を成立させようと焦る傾向にあります。
被害者との示談が成立していれば、起訴されなかったり、起訴されても刑罰が軽くなったりする可能性があるからです。
加害者側が示談成立を焦っている場合、示談内容にこだわるよりも示談の早期成立の方を選ぶことが考えられます。
刑事処分が下る前で相手が示談成立を焦っているようであれば、少し強気な態度をとってみるのもテクニックの1つです。
(7)保険会社の心証を損なわないようテクニックを駆使する
ここまで紹介してきたテクニックはいずれも、被害者が自分で示談交渉する際に重要なものばかりです。
しかし、加害者側の保険会社にとっては当然「されて嫌なこと」ばかりなので、テクニックの使い方次第では加害者側の保険会社の心証を損ねてしまい、次のリスクが生じる可能性があります。
- 加害者側の保険会社の態度がかえって頑なになり、本来なら簡単に通るはずの主張も通らなくなってしまう
- 加害者側の弁護士が出てきたり、裁判に持ち込まれたりしてしまう
たとえば「何もかもすべて一旦持ち帰るため示談の進みが遅くなる」、「刑事処分が下る前に過剰に強気な態度に出る」、「ことあるごとにそんぽADRへの相談をちらつかせる」という状態では、かえって加害者側の保険会社の態度が頑なになるリスクがあります。
「保険会社が嫌がることをしよう」という意図を露骨に出すことなく、うまくテクニックを使いこなすことも、重要なテクニックの1つなのです。
自分で示談交渉する場合の注意点
示談交渉を早めに持ちかけられても応じない
示談交渉は、以下のタイミングで開始してください
- 傷害事故の場合は治療終了後(完治後)
- 後遺症が残った場合は後遺障害等級認定後
- 死亡事故の場合は葬儀後(四十九日終了後)から開始できます。
これより前のタイミングだと、まだ損害額が確定しておらず、あとから新たな損害が生じる可能性があります。
示談は一度成立すると、原則として示談内容の撤回・追加の賠償請求ができません。
よって、損害確定前に相手方から示談交渉の開始を持ちかけられても、応じないようにしましょう。
ただし、物損に関する示談交渉なら一足先に始めることも可能です。
なお、示談は口頭でも成立してしまいます。
うかつに合意する旨の発言をしてしまわないよう、注意してください。
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粘ることもテクニックの1つだが時効も意識する
示談交渉のテクニックには、「相手が折れるまで粘る」というものもあります。
示談の早期成立を望まない場合には実践する価値のあるテクニックですが、「損害賠償請求権の消滅時効」が成立すると、そもそも損害賠償請求ができなくなってしまいます。
よって、時効が成立するまでに示談を成立させるか、時効の延長措置をとりましょう。
損害賠償請求権の消滅時効
費目 | 時効 |
---|---|
物損分 | 事故翌日から3年 |
傷害分 | 事故翌日から5年* |
後遺障害分 | 症状固定翌日から5年* |
死亡分 | 死亡翌日から5年* |
*被害者請求や保険会社に対する保険金請求の時効は3年
損害賠償請求権の消滅時効や、時効を延長する方法については『交通事故示談は期限(時効)までに成立を!期限の長さや時効の延長方法を解説』にて詳しく解説しています。
テクニックを使っても示談成功が厳しいケース
加害者側の弁護士が出て来た
加害者側の保険会社が弁護士を立ててきた場合は、被害者自身での示談交渉が厳しくなります。
弁護士は保険会社の担当者よりもさらに豊富な専門知識と示談交渉経験・テクニックを持つプロです。被害者自身がいくら知識やテクニックを身につけて交渉しても、太刀打ちするのは非常に難しいです。
意見が対立し示談交渉が停滞している
加害者側の保険会社と意見が対立し、示談交渉が停滞してしまった場合、その後は被害者側に不利な状況に傾いていく可能性があります。
その理由は次の通りです。
- 交渉が停滞している間に、加害者側の保険会社が弁護士や裁判の準備をしている可能性がある
- 交渉の停滞を受けて、加害者側の保険会社は、被害者側の根負けを狙う作戦に出る可能性がある
加害者側の保険会社が被害者の根負けを狙う作戦に出てきた場合、最終的には被害者側が折れざるを得ない状況になりがちです。
示談交渉が進まない状況が続くと時効が近づいてきますし、治療費や休業損害などをなかなか回収できず、被害者側の家計も圧迫されていくからです。
少しの間粘ってみるのもテクニックの1つですが、あまりにも示談交渉が進まない場合は、弁護士を立てるなど状況を打破する作戦を考えてみてください。
示談金を最大限に増額させたい
示談金を最大限に増額させたいという希望も、被害者自身の示談交渉では実現が難しいです。
もちろん、被害者自身でも、テクニックをおさえて効果的に交渉すれば、ある程度の示談金増額は期待できます。
しかし、弁護士基準に沿った金額まで増額させることはほぼ不可能です。
弁護士基準は本来裁判において認められる金額であるため、互いの譲歩が必要となる示談交渉においては、弁護士基準からある程度減額を行った金額による解決になります。
そのため、被害者自身で示談交渉を行う場合には、裁判になることまではないとして、増額交渉を行っても、弁護士基準からすると少ない金額で示談するように加害者側の保険会社は交渉してくるでしょう。
もっとも、弁護士を立てれば、裁判に発展する可能性が高くなることから、弁護士基準に近い金額による示談を成立できる可能性が上がります。
よって、最大限に示談金を増額させたい場合は、弁護士を立てる必要があるのです。
弁護士を立てた方の声
提示された金額が適正なのかどうか分からず話だけでもと思い、法律事務所に相談することにしました。結果、納得できずにいた問題もすっきり解決して頂き示談金は3倍にもなりました。
右足高原骨折の増額事例
保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。
右手人差指神経断裂の増額事例
最速で示談を成立させたい
示談を最速で成立させることも、被害者自身による交渉では難しいでしょう。
テクニックを駆使すれば被害者自身でも最終的に主張を通せる可能性はありますが、すんなりと通ることはほとんどありません。
加害者側の保険会社は「被害者は専門家ではないから反論を繰り返せば折れるだろう」と考えるため、どうしても交渉が長引きがちなのです。
被害者側の主張をスムーズに通し、示談を最速で成立させるには、交渉テクニックよりも専門家という肩書・示談交渉の経験量が重要です。
よって、急ぎで示談を成立させる必要がある場合は、テクニックを考えるよりも専門家である弁護士に交渉を任せる方が効果的だと言えます。
弁護士に依頼した方の声
申し込み後は、交渉は4日で終わり、当初保険会社提示額のおよそ二倍に増額されました。(略)申し込みから慰謝料受け取りまで二週間ちょっとで終わったのは驚きでした。
肩骨折、左膝骨折の増額事例
自分が加入している保険会社より(略)通常2~3ヶ月はかかる所、1ヵ月で解決及び弁護士費用の計算式まで書いてあるなんてアトム法律事務所ってすごいですね、と自分がほめられているような恥ずかしい気持で聞いておりました。
むちうちの増額事例
加害者が任意保険に入っていない
加害者が任意保険に入っていない場合は、加害者・被害者同士で示談交渉をおこなうことになります。
この場合、テクニックのことを考える以前に専門知識を持つ者を間に入れることが重要です。その理由は次の通りです。
- 互いに専門的な知識がないため不適切な内容で示談が成立していても気づけない
- 感情的になって争いになる、脅しが発生するなどのトラブルの可能性がある
- 加害者が示談交渉に応じない、決まった示談金を支払わないといったリスクがある
相手が加害者本人なら、テクニック次第で有利に交渉を進められると思いがちですが、そうではありません。
相手が専門的な知識を持たないからこそのリスクがあるため、「正しく安全に示談交渉をして、確実に示談金を受け取る」という大前提のために、専門家である弁護士を挟むことをおすすめします。
加害者が任意保険に入っていない場合の対処法は、『交通事故の相手が無保険ならどうする?慰謝料請求6つの対応』で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。
保険会社が一番嫌がるのは弁護士を立てること
弁護士なら示談が成功しやすい3つの理由
示談交渉において加害者側の保険会社がもっとも嫌がるのは、被害者側が弁護士を立てることです。
すでに被害者自身での示談交渉が難しいケースをいくつか紹介してきましたが、弁護士を立てることで示談交渉が成功しやすくる理由は、次の3つです。
- 専門知識と国家資格に基づく説得力がある
- 相手方保険会社に裁判への発展を警戒させられる
- 相手の戦略や心理を踏まえた交渉ができる
それぞれについて詳しく解説していきます。
専門知識と国家資格に基づく説得力がある
弁護士は専門知識と国家資格を持っているので、主張に説得力があると判断されやすいです。相手方保険会社もプロである弁護士の主張をないがしろにはできません。
実際、「被害者に増額を求められても一定額までしか応じないが、弁護士が出て来たらそれ以上の増額も認める」という方針をとる保険会社もいます。
相手方保険会社に裁判への発展を意識・警戒させる
示談交渉で被害者側が弁護士を立てると、相手方保険会社は民事裁判への発展を警戒するようになります。
すると、示談交渉時点で被害者側の主張が受け入れられる可能性が高まります。
保険会社は、次の点から裁判を避けたいと考えるからです。
- 裁判になると、示談交渉よりも多くの労力や時間がかかる
- 裁判になればどのみち弁護士基準の金額が認められる可能性が高い
- 敗訴すると、以下のような費用の負担も生じてくる
- 裁判費用
- 遅延損害金
- 被害者側の弁護士費用の一部
被害者側が弁護士を立てていない場合、加害者側の保険会社は「裁判は視野に入っていなさそうだ」「このまま交渉を引っ張れば、相手の方が折れそうだ」と判断するので、かたくなな態度を貫き通すでしょう。
相手方の心理・戦略を踏まえたかけひきをする
弁護士なら、これまでの示談交渉経験を生かし、加害者側の保険会社の戦略や心理を見抜いたうえで示談交渉することも可能です。
かつて保険会社側の弁護士として活動した経験がある弁護士ならなおさら、保険会社の内部事情にも精通しているため、効果的な交渉ができます。
とくに以下のポイントは、相手方保険会社の状況を理解していないと判断しにくい部分です。
- 譲歩と主張のバランスをどうとるか
示談交渉では最終的に被害者側の利益になるよう配慮しながら、ある程度譲歩することも必要
譲歩するポイント・程度・タイミングをおさえれば、相手方の態度を軟化させるきっかけにもなる - ある程度譲歩をすることを見据えたうえで、初めにどれくらいの示談金額を主張すべきか
上記のような判断は示談交渉に慣れていない被害者本人では難しいので、弁護士だからこそできるテクニックだと言えます。
「弁護士費用がかかるから逆に損」は勘違い
弁護士への相談・依頼にかかる費用を差し引くと、かえって獲得示談金額が少なくなると思われがちです。
これを費用倒れと言いますが、費用倒れが起きることは以下の理由からほとんどありません。
- 事前の法律相談の際に、費用倒れの可能性があればその旨を教えてもらえる
- よって、弁護士との契約まで進む事案においては、弁護士費用を差し引いてもなお、弁護士を立てた方が多くの金額が手元に入ることが多い
弁護士費用を敬遠する前に、まずは一度、弁護士に費用倒れの可能性を確認することが重要です。
もし費用倒れの可能性が発覚し、依頼まで至らなかったとしても、相談の中で目指すべき示談金額や交渉のアドバイスなど、有益な情報を得られるでしょう。
弁護士費用特約を利用すれば費用倒れの心配なし
費用倒れの危険性があるようなケースでも、弁護士費用特約を利用すれば、費用倒れの恐れを気にすることなく弁護士への相談や依頼を行えます。
弁護士費用特約とは、弁護士への相談料や依頼によって生じる費用を限度額まで保険会社が代わりに負担してくれるというものです。
弁護士費用特約の多くは相談料が10万円、依頼による費用については300万円を上限としているため、弁護士費用特約を利用すれば、自身では相談料や依頼による費用をほとんど負担せずに依頼することができます。
費用倒れが気になるのであれば、自身の加入している保険において弁護士費用特約が利用できないかどうかを確認してください。
示談成立以外にもメリットあり
また、早い段階で弁護士に相談・依頼を行えば、以下のような多様なサポートも受けられます。
- 治療中に発生しがちな相手方保険会社とのトラブル対応
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弁護士に依頼するかどうかは、事前の相談と関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選』の内容を踏まえ、総合的に考えてみてください。
▼弁護士を立てるかは、費用倒れのリスクを確認してからの判断がおすすめです。
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この記事で解説したテクニックを使えば、被害者自身でも示談交渉をすることは可能です。
ただし、たとえば以下のようなテクニックを使おうと思うと、どうしても専門的な知識が必要になってきます。
- 「○○万円増額すべき」と具体的に主張する
- どれくらいの増額が妥当なのか、正確に把握しておかなければならない
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了