交通事故の示談テクニック8つ!自分でできる交渉術と慰謝料増額の近道

交通事故における慰謝料や治療費といった損害賠償金の金額は、示談交渉によって決まることが多いでしょう。
示談交渉の相手は、加害者側の任意保険会社であることがほとんどです。
仕事として示談交渉をするプロを相手に自分で交渉する場合は、交渉テクニックを意識することが大切になります。
本記事では、専門知識や示談交渉の経験が少ない方でもスムーズに行動に落とし込める、実践的な交渉術を8つ紹介します。
示談交渉の流れや慰謝料増額の近道も解説するので、ご確認ください。

目次

交通事故の示談交渉とは?自分でできる?
示談交渉のテクニックについて見ていく前に、まずは示談交渉とはどういうものなのか、被害者の方が自分でもできるものなのかを解説していきます。
交渉術を身につける前に示談交渉に関する基礎知識を知っておくことが重要なので、確認していきましょう。
示談交渉で話し合う内容と流れ
示談交渉とは、交通事故の加害者と被害者が話し合い、損害賠償問題を解決することを指します。
示談交渉で話し合う主な内容は、次のとおりです。
- 損害賠償金
慰謝料、治療費、休業損害、逸失利益など。具体的な内訳は、被害の内容により異なる。 - 過失割合
交通事故発生に対する責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか割合で示したもの。自身についた過失割合分、受け取れる損害賠償金が減額される。
実際には加害者や被害者の代理人が示談交渉にあたることもあります。
特に加害者側は、任意保険の担当者が代理人となることが多いです。被害者も、自分の任意保険担当者や弁護士を代理人にできる場合があります。
示談交渉の方法と流れは次のとおりです。
- 示談の交渉方法
- 電話やFAX、メールが多く、対面で直接交渉することはあまりない
- 示談交渉の流れ(相手が任意保険会社の場合)
- 1. 加害者側から示談案が届く
- 2. 示談案の内容について交渉する
- 3. 双方の合意後、示談が成立する
- 4. 加害者側から示談書が届き、署名・捺印
- 5. 示談書の返送後、約2週間で示談金が振り込まれる
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示談交渉を自分でやるメリット・デメリット
交通事故において、自分で示談交渉をすることは可能です。
自分で示談交渉するメリットとデメリットは次のとおりです。
- メリット
- 自分の判断で示談交渉を進められる
- 費用がかからない
- デメリット
- 交渉で不利になりやすい
- 時間的・精神的負担がかかりやすい
メリット・デメリットそれぞれについて、詳しく解説します。
自分で示談交渉するメリット
交通事故の被害者が自分で示談交渉するメリットの1つが、「自分の判断で交渉を進められる」ことです。
保険担当者や弁護士を代理人として立てると、代理人から「こうした方が良いのではないか」という提案・助言を受けることがあります。
もちろん代理人は被害者のことを思って提案・助言をしますが、被害者の方にとっては「自分の思うように示談交渉を進められない」と感じてしまう場合があるのです。
また、代理人を弁護士とする場合には、弁護士費用がかかります。
ただし、この点は「弁護士費用特約」という任意保険の特約を使うことで解決可能です。
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自分で示談交渉するデメリット
交通事故の被害者が自分で示談交渉をすると、不利になりやすいというデメリットがあります。
示談の交渉相手は、加害者が加入する任意保険会社の担当者であることが多いです。
保険会社の担当者は仕事として、日々さまざまな被害者や弁護士と示談交渉をしているプロです。
知識量でも経験量でも、被害者は不利と言わざるを得ません。
さらに、加害者側の保険担当者は交渉術として、被害者に対して高圧的な態度をとったり、専門用語を多用してわかりにくく話をしたりすることがあります。
こうした点で精神的負担を感じてしまう方も少なくありません。
以下は、実際に弁護士にご依頼いただいた方々からのお手紙です。
交通事故で担当して頂きました。仕事が忙しい為、個人で保険会社と話し合いを行うのは時間的にも精神的にも負担になるところを、すべて担当して頂き、短い時間で納得のいく解決をして頂けました。有難うございました。
アトム法律事務所 ご依頼者様からのお手紙
(略)相手保険会社とのやり取りが一番心の負担になる所を弁護士さんにお願いする事で安心して通院する事ができました。(略)
アトム法律事務所 ご依頼者様からのお手紙
示談交渉を自分でやらないといけないケース
交通事故では、被害者の方が自分で示談交渉をせざるを得ないケースもあります。それが、被害者側の過失割合が0の場合です。
被害者側にも一定の過失があれば、自身の保険の「示談代行サービス」を使って保険担当者に示談交渉を任せられます。
しかし、被害者の過失が0の場合、保険担当者が示談交渉にあたると非弁行為になるため、「示談代行サービス」は使えないのです。
自分でできる保険会社に負けない示談交渉テクニック8選
交通事故の示談交渉を自分で行いたい場合の、保険会社に負けない示談交渉テクニックは以下の8つです。
- 損害賠償金や過失割合に関する証拠を揃えておく
- 請求金額は弁護士基準で計算して具体的に示す
- 類似する判例から裁判所の判断を主張する
- 示談金額はある程度譲歩することを前提とする
- わからない内容は無理に反論せず一旦持ち帰る
- 示談交渉の過程・結果は書面や録音に残す
- 示談交渉中に冷静さを保つ
- 示談交渉のテクニックを露骨に使いすぎない
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
(1)損害賠償金や過失割合に関する証拠を揃えておく
示談交渉で主張を通すには、主張の正当性を裏付ける証拠が必要になります。
特に交通事故の被害者は、相手方の任意保険会社から見れば「損害賠償金に関する専門知識が浅い素人」です。
「専門家でもない被害者の主張には説得力がない」として主張を退けられる可能性が高いので、必ず専門性・権威性・客観性のある証拠を揃えておきましょう。
具体的には以下のとおりです。
- 損害賠償金に関する証拠
- 診療報酬明細書
- 給与明細書
- 源泉徴収票や確定申告書の控え
- 休業損害証明書
- 診断書、後遺障害診断書
- 交通事故によって生じた出費の領収書
- 類似事故の慰謝料額を示す判例、事例の資料
- 専門書の記載:「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部)
- 過失割合に関する証拠
- 専門書の記載警察が作成する実況見分調書(取り寄せ方:実況見分の流れや注意点!聞かれる内容や過失割合への影響、現場検証との違い)
- ドライブレコーダーや防犯カメラの映像
- 目撃者の証言
- 類似事故の過失割合を示す判例、事例の資料
- 専門書の記載:「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)
(2)請求金額は弁護士基準で計算して具体的に示す
加害者側に請求する損害賠償金額は、「弁護士基準」と呼ばれる基準に沿って計算しましょう。
弁護士基準は、過去の判例に沿った法的正当性の高い算定基準であるため、この基準により算出された金額に近い金額の獲得を目指すことになるのです。
また、加害者側が算出した金額よりも低い金額を提示してきた場合は、しっかりと根拠を示したうえで増額の交渉を行う必要があります。
漠然とした金額や根拠のない金額を主張すると、以下の点から交渉で不利になることも考えられます。
何となく増額を主張するリスク
- 交通事故の損害賠償金に関する知識や相場感がないことが相手に伝わってしまい、相手方の任意保険会社が一層強気な態度に出てくる可能性がある
- 相手方に思い込みや感情論で増額を求めていると判断されてしまい、主張が聞き入れられにくくなる
ただし、損害賠償金は事故に関するさまざまな事情を考慮して柔軟に増減されます。単に弁護士基準の計算方法に従うだけでは厳密な相場はわかりません。
よって、自分で示談交渉するとしても、損害賠償金については弁護士に相談し、厳密な相場を確認しておくことがおすすめです。
アトム法律事務所では、電話・LINEで無料相談を実施しています。

自分で計算方法を確認したい方へ:交通事故の示談金の計算方法・相場は?
(3)類似する判例から裁判所の判断を主張する
交通事故において、どれくらいの損害賠償金や過失割合が正しいのかは、類似事故の判例をもとに判断されることが多いです。
よって、ご自身の事故と似た事故の判例を探し、以下の点を確認しておくことも重要な交渉テクニックとなります。
判例を見るときの着目点
- 類似する事故では損害賠償金・過失割合はどれくらいなのか
- 裁判所はどのような点をどのように判断して、判決を出したのか
上記を確認し、手元に資料を用意しておけば、加害者側から反論されたときに「過去に裁判所はこのように判断している」ということを主張できます。
判例は、「赤い本」と呼ばれる書籍やインターネット上で調べることがおすすめです。
ただし、判例については加害者側の任意保険会社も豊富な知識と判例調べの手段を持っています。さらに別の判例を提示して反論してくることがある点には要注意です。
「赤い本」の内容や入手方法はこちら:赤い本の損害額算定基準で慰謝料を確認!青い本との違いもわかる
(4)示談金額はある程度譲歩することを前提とする
示談はお互いが譲歩したうえで、金額について合意することにより成立します。
そのため、頑なに相場の金額からの減額について譲らない姿勢を取っていると、示談交渉による解決は難しいでしょう。
加えて、以下のようなリスクが生じます。
頑なに譲歩しないリスク
- 交渉が進まない
- 加害者側の任意保険会社が弁護士を立ててきたり、裁判を起こしたりして、かえって不利になる
よって、裁判基準で算出される相場額からある程度減額した金額で示談することを前提とした交渉を行うことが大事になります。
どの程度譲歩することが妥当かどうかについては事案により異なってくるため、専門家である弁護士に確認を取ると良いでしょう。
(5)わからない内容は無理に反論せず一旦持ち帰る
相手方の任意保険会社から聞かれたことにどう答えたら良いのかわからない、相手方の任意保険会社からの提示内容を承諾して良いのかわからないという場合、無理にその場で答える必要はありません。
「すぐに反論できなかったから加害者側の主張が通る」というものではありませんし、無理にその場で反論することで余計に不利な立場に追いやられてしまう可能性もあります。
どう対応してよいかわからない内容については即答せずに回答を保留して、じっくり考えたり弁護士に相談したりしましょう。
(6)示談交渉の過程・結果は書面や録音に残す
示談交渉は、電話による口頭での話し合いになることがあります。
しかし、口頭だけで進めると、お互いの発言に関して言った・言わないの争いになる可能性があるので、できるだけFAXなどの書面に残る方法でやり取りすることが望ましいでしょう。
電話でやり取りする場合は、電話を録音して書き起こしたりするのも有効です。
また、示談交渉で決まった内容は、必ず「示談書」としても残すようにしましょう。示談書については、関連記事『交通事故の示談書の書き方と記載事項』が参考になります。
一度でも示談書にサインしてしまうと、原則として後から示談内容を覆すことはできません。
サインする前に、示談内容が妥当なものか、弁護士に確認してもらうようにしましょう。

(7)示談交渉中に冷静さを保つ
示談交渉の際、相手方の任意保険会社は次のような言動をとってくることが多いです。
- 専門用語を用いるなど難しい話し方をする
- 頑なで高圧的な態度をとる
- 被害者側の質問にきちんと答えない
- 提示内容について「これが精いっぱいの金額です」「これが一般的な相場です」と言う
このような言動は、全て任意保険会社の交渉術です。
相手の態度に戸惑って流されてしまっては相手方の任意保険会社の思うつぼですし、腹を立てて感情的になると、相手方の任意保険会社が弁護士を立ててくる可能性もあります。
よって、相手の言動は戦略のひとつだと割り切り、冷静に次のような対応をすることが重要です。
- わからないことがあればきちんと答えてもらえるまで質問する
- 提示内容が適切だと言える根拠をたずねる
- 高圧的な態度をとられても、感情的・けんか腰にならない
加害者側の任意保険会社の態度が悪いときの対処法は、『保険会社の対応が悪い!対処法と取ってはいけない対応』で詳しく解説しています。
そんぽADRなど相談窓口も複数紹介しているので、困ったときにはご活用ください。
(8)示談交渉のテクニックを露骨に使いすぎない
ここまで紹介してきたテクニックはいずれも、被害者が自分で示談交渉する際に重要なものばかりで、相手方の任意保険会社にとっては当然「されて嫌なこと」ばかりでもあります。
テクニックの使い方次第では相手方の任意保険会社の心証を損ねてしまい、さまざまなリスクが生じる可能性があるでしょう。
たとえば、以下のようなリスクです。
交渉術を露骨に使うリスク
- 相手方の任意保険会社の態度がかえって頑なになり、本来なら簡単に通るはずの主張も通らなくなってしまう
- 相手方の弁護士が出てきたり、裁判に持ち込まれたりしてしまう
たとえば「何もかもすべて一旦持ち帰るため示談の進みが遅くなる」、「ことあるごとにそんぽADRへの相談をちらつかせる」という状態では、かえって相手方の任意保険会社の態度が頑なになるリスクがあります。
「保険会社が嫌がることをしよう」という意図はうまく隠してテクニックを使いこなすことも、重要なテクニックの1つなのです。
自分で示談交渉する場合の注意点
自分で示談交渉する場合は、交渉テクニックを使うと同時に以下の点にも注意すべきです。
- 時間を忘れて交渉を粘りすぎない
- すべての損害が出揃うまで示談交渉を始めない
いくら交渉術を駆使しても、上記の点に注意しなければ納得いく示談ができない可能性があります。どちらもしっかり確認していきましょう。
時効を忘れて示談交渉を粘りすぎない
示談交渉では、納得できる内容になるまで粘り強く交渉を続けることが重要です。
ただし、「損害賠償請求権の消滅時効」をすぎてしまうと、そもそも損害賠償請求ができなくなってしまう恐れがあります。
よって、時効が成立するまでに示談を成立させるか、時効の延長措置をとりましょう。
損害賠償請求権の消滅時効
費目 | 時効 |
---|---|
物損分 | 事故翌日から3年 |
傷害分 | 事故翌日から5年* |
後遺障害分 | 症状固定翌日から5年* |
死亡分 | 死亡翌日から5年* |
*被害者請求や保険会社に対する保険金請求の時効は3年
損害賠償請求権の消滅時効や、時効を延長する方法について詳しくは『交通事故の示談に期限はある?時効期間と時効の延長方法』の記事が参考になります。
長期間の示談交渉で生活が不安な場合は
示談交渉を長期間行う場合は、示談金が支払われないために自身や家族の生活が困難となる恐れがあります。
示談交渉中における生活費の補てんについては、以下のような方法が考えられるでしょう。
- 相手方の保険会社に示談金の一部を支払ってもらう
- 相手方の自賠責保険に対する被害者請求や仮払金の請求を行う
被害者請求の方法については『自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説』の記事で確認可能です。
すべての損害が出揃うまで示談交渉を始めない
示談交渉は、全ての損害が出揃う以下のタイミングで開始してください。
- 人身事故の場合は治療終了後(完治後)
- 後遺症が残った場合は後遺障害等級認定後
- 死亡事故の場合は葬儀後(一般的には四十九日終了後)
これより前のタイミングだとまだ損害額が確定しておらず、示談交渉中や示談成立後に新たな損害が生じる可能性があります。
示談は一度成立すると、原則として示談内容の撤回・追加の賠償請求ができません。
よって、損害確定前に相手方から示談交渉の開始を持ちかけられても、応じないようにしましょう。
ただし、物損に関する示談交渉のみ、車の修理費の見積もりが終わったなど、物損部分の損害額については確定した場合には、一足先に始めることも可能です。
なお、示談は口頭でも成立してしまいます。
うかつに合意する旨の発言をしてしまわないよう、注意してください。
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自分で示談交渉しても慰謝料増額は可能?
自分で示談交渉をしようか考える時、気になるのは「十分に慰謝料を増額させられるだろうか」ということではないでしょうか。
この点について、結論から言えば「増額は可能だが最大限の増額は厳しい」ということになります。
その理由と、特に自分での示談交渉に限界があるケースを5つ見ていきましょう。
慰謝料の増額自体は可能だが「最大限の増額」は厳しい
被害者が自分で示談交渉した場合でも、慰謝料が増額される可能性はあります。
しかし、弁護士基準に近い金額まで最大限に増額させることは難しいと言わざるを得ません。
弁護士基準は本来裁判を起こした場合に認められうる金額であり、示談交渉の時点で専門家ではない被害者が主張しても、加害者側は受け入れないのです。
どれだけ根拠を揃えて主張しても、「あなたには専門知識がなく、主張には間違っている部分がある」などと言われてしまいます。
実際、本当ならまだ増額の余地があるのに、加害者側の任意保険会社に「これ以上は増額できない」と言われるケースは珍しくありません。
(略)保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。今回、アトム法律事務所へ相談できて本当に良かったです。本当にありがとうございました。
右手人差指神経断裂で470万円の増額に成功した事例
最大限の増額を望むのであれば、自分で示談交渉するのではなく弁護士を立てることもご検討ください。
自分での示談交渉に限界がある5つのケース
特に以下のケースでは、ここまでに紹介したテクニックを使っても、自力で納得のいく慰謝料・示談内容にするのは難しいことが多いです。
- 相手方が弁護士を立ててきた
- 意見が対立し示談交渉が停滞している
- 早期に示談を成立させたい
- 相手方が任意保険に入っていない
それぞれ確認していきましょう。
相手方が弁護士を立ててきた
相手方の任意保険会社が弁護士を立ててきた場合は、被害者自身での示談交渉が厳しくなります。
弁護士は保険会社の担当者よりもさらに豊富な専門知識と示談交渉経験・テクニックを持つプロです。被害者自身がいくら知識やテクニックを身につけて交渉しても、太刀打ちするのは非常に難しいでしょう。
意見が対立し示談交渉が停滞している
相手方の任意保険会社と意見が対立し、示談交渉が停滞してしまった場合、その後は被害者側に不利な状況に傾いていく可能性があります。
その理由は次の通りです。
- 交渉が停滞している間に、相手方の任意保険会社が弁護士への依頼や裁判の準備をしている可能性がある
- 交渉の停滞を受けて、相手方の任意保険会社は、被害者側の根負けを狙う作戦に出る可能性がある
相手方の任意保険会社が被害者の根負けを狙う作戦に出てきた場合、最終的には被害者側が折れざるを得ない状況になりがちです。
「損害賠償請求権の消滅時効」が近づいてきますし、治療費や休業損害などの回収が遅れると、被害者側の家計も圧迫されてしまうからです。
少しの間粘ってみるのもテクニックの1つですが、あまりにも示談交渉が進まない場合は、弁護士を立てるなど状況を打破する作戦を考えてみてください。
早期に示談を成立させたい
示談交渉について早期解決を図ることは、被害者自身による交渉では難しいでしょう。
テクニックを駆使すれば被害者自身でも最終的に主張を通せる可能性はありますが、すんなりと通ることはほとんどありません。
相手方の任意保険会社は「被害者は専門家ではないから反論を繰り返せば折れるだろう」と考えるため、どうしても交渉が長引きがちなのです。
被害者側の主張をスムーズに通し、早期に示談を成立させるには、交渉テクニックよりも専門家という肩書・示談交渉の経験量が重要です。
よって、早期の示談成立を希望するなら、テクニックを考えるよりも専門家である弁護士に交渉を任せる方が効果的だと言えます。
弁護士に依頼した方の声
申し込み後は、交渉は4日で終わり、当初保険会社提示額のおよそ二倍に増額されました。(略)申し込みから慰謝料受け取りまで二週間ちょっとで終わったのは驚きでした。
肩骨折、左膝骨折の増額事例
自分が加入している保険会社より(略)通常2~3ヶ月はかかる所、1ヵ月で解決及び弁護士費用の計算式まで書いてあるなんてアトム法律事務所ってすごいですね、と自分がほめられているような恥ずかしい気持で聞いておりました。
むちうちの増額事例
相手方が任意保険に入っていない
相手方が任意保険に入っていない場合は、事故の当事者同士で示談交渉をおこなうことになります。
この場合、テクニックのことを考える以前に専門知識を持つ者を間に入れるべきでしょう。
その理由は次の通りです。
- 互いに専門的な知識がないため不適切な内容で示談が成立していても気づけない
- 感情的になって争いになる、脅しが発生するなどのトラブルの可能性がある
- 相手方が示談交渉に応じない、決まった示談金を支払わないといったリスクがある
交渉相手が相手方本人なら、テクニック次第で有利に交渉を進められると思いがちですが、そうではありません。
相手が専門的な知識を持たないからこそのリスクがあるため、「正しく安全に示談交渉をして、確実に示談金を受け取る」という大前提のために、専門家である弁護士を挟むことをおすすめします。
相手方が任意保険に入っていない場合の対処法は、『交通事故の相手が無保険?お金がない場合の賠償請求と政府保障事業等での対策』の記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。
示談金増額の近道は弁護士への相談・依頼
示談交渉で相手方の任意保険会社が最も嫌がるのは、「被害者側の弁護士が示談交渉に介入すること」とです。弁護士の介入は、示談金増額の一番の近道といえます。
自分では難しく弁護士ならできる交渉術とは?
弁護士ならではの強み・交渉術としては、以下のものがあります。
- 専門知識と国家資格に基づく説得力がある
- 相手方に裁判への発展を意識・警戒させる
- 相手の戦略や心理を踏まえた交渉ができる
それぞれについて詳しく解説していきます。
専門知識と国家資格に基づく説得力がある
弁護士は専門知識と国家資格を持っているので、主張に説得力があると判断されやすいです。相手方の任意保険会社もプロである弁護士の主張をないがしろにはできません。
実際、「被害者に増額を求められても一定額までしか応じないが、弁護士が出て来たらそれ以上の増額も認める」という方針をとる保険会社もいます。
相手方に裁判への発展を意識・警戒させる
示談交渉で被害者側が弁護士を立てると、相手方の任意保険会社は民事裁判への発展を警戒するようになります。
すると、保険会社は次の点から裁判を避けたいと考えます。
- 裁判になると、示談交渉よりも多くの労力や時間がかかる
- 裁判になればどのみち弁護士基準の金額が認められる可能性が高い
- 敗訴すると、以下のような費用の負担も生じてくる
- 裁判費用
- 遅延損害金
- 被害者側の弁護士費用の一部
よって、示談交渉段階で示談金の増額が受け入れられる可能性が高まるのです。
被害者側が弁護士を立てていない場合、相手方の任意保険会社は「裁判は視野に入っていなさそうだ」「このまま交渉を引っ張れば、相手の方が折れそうだ」と判断するので、かたくなな態度を貫き通すでしょう。
相手方の心理・戦略を踏まえたかけひきをする
弁護士なら、これまでの示談交渉経験を生かし、相手方の任意保険会社の戦略や心理を見抜いたうえで示談交渉することも可能です。
かつて保険会社側の弁護士として活動した経験がある弁護士ならなおさら、保険会社の内部事情にも精通しているため、効果的な交渉ができます。
とくに以下のポイントは、相手方の任意保険会社の状況を理解していないと判断しにくい部分です。
- 譲歩と主張のバランスをどうとるか
示談交渉では最終的に被害者側の利益になるよう配慮しながら、ある程度譲歩することも必要
譲歩するポイント・程度・タイミングをおさえれば、相手方の態度を軟化させるきっかけにもなる - ある程度譲歩をすることを見据えたうえで、初めにどれくらいの示談金額を主張すべきか
上記のような判断は示談交渉に慣れていない被害者本人では難しいので、弁護士だからこそできるテクニックだと言えます。
「弁護士費用がかかって損」は勘違い
弁護士への相談・依頼にかかる費用を差し引くと、かえって獲得示談金額が少なくなることがあります。
これを費用倒れと言いますが、費用倒れが起きることは以下の理由からほとんどありません。
- 事前の法律相談の際に、費用倒れの可能性があればその旨を教えてもらえる
- 弁護士との契約まで進む事案においては、弁護士費用を差し引いてもなお、弁護士を立てた方が多くの金額が手元に入ることが多い
弁護士費用を敬遠する前に、まずは一度、弁護士に費用倒れの可能性を確認することが重要です。
もし費用倒れの可能性が発覚し、依頼まで至らなかったとしても、相談の中で目指すべき示談金額や交渉のアドバイスなど、有益な情報を得られるでしょう。
弁護士費用特約を利用すれば費用倒れの心配なし
費用倒れの危険性があるようなケースでも、弁護士費用特約を利用すれば、費用倒れの恐れを気にすることなく弁護士への相談や依頼を行えます。
弁護士費用特約とは、弁護士への相談料や依頼によって生じる費用を限度額まで保険会社が代わりに負担してくれるというものです。

弁護士費用特約の多くは相談料が10万円、依頼による費用については300万円を上限としているため、弁護士費用特約を利用すれば、自身では相談料や依頼による費用をほとんど負担せずに依頼することができます。
費用倒れが気になるのであれば、自身の加入している保険において弁護士費用特約が利用できないかどうかを確認してください。
弁護士費用特約についてさらに詳しくは『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事が参考になります。
【コラム】弁護士ではなく保険の「示談代行サービス」でも良い?
被害者が加入する任意保険で「示談代行サービス」が利用できれば、自身の代わりに保険会社の担当者が示談交渉を行ってくれます。
弁護士を立てずとも交渉慣れした人に示談を頼めるのです。
しかし、示談代行サービスでは、以下のような問題が生じる恐れがあるでしょう。
- 示談代行サービスを使うと、保険会社同士の示談交渉になるため、今後の関係性を考慮して交渉が甘くなる場合がある。
- 被害者の任意保険会社は自社基準にもとづいて示談金額を計算し、主張する。任意保険の自社基準による金額は弁護士基準より低額であるため、弁護士基準に近い金額の獲得は基本的に望めない。
また、早い段階で弁護士に相談・依頼を行えば、以下のような多様なサポートも受けられます。
- 治療中に発生しがちな相手方の任意保険会社とのトラブル対応
- 後遺症が残った場合の後遺障害認定の手続き
- 示談成立前にまとまったお金が欲しい、などの相談に対するアドバイス
示談金額を最大にしたい、示談交渉以外のサポートも受けたいという場合は、示談代行サービスではなく弁護士への依頼がおすすめです。
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示談交渉に必要な情報を無料で弁護士に聞いてみよう
この記事で解説したテクニックを使えば、被害者自身でも示談交渉をすることは可能です。
ただし、どのようなテクニックを使おうと、自力だけの示談交渉では厳しいものがあります。
- 自力では弁護士基準まで示談金を増額させることはむずかしい
- 相手方の弁護士と交渉しなければならないこともある
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示談交渉で弁護士を立てない場合でも、事前に弁護士から示談成功に必要な情報を聞き出しておくことは安心につながるでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了