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交通事故示談のテクニック|示談交渉で苦労しないための交渉術とは

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交通事故の示談テクニック

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の示談交渉は、「合意」ですべてが解決します。
しかしその「合意」にいたるまでの交渉は、長い道のりをたどることも珍しくありません。

被害者は、早期に納得のいく示談・解決を望むのであれば、示談交渉のテクニックや知識を身につけるしかありません。

当記事では、弁護士の示談交渉のテクニックや、被害者の示談交渉をサポートするヒントを紹介します。

これから示談交渉をされる方にとって、まずは保険会社の提示金額をそのまま信じないことうかつに示談書にサインしないこと、このふたつは、納得のいく示談を迎えるための大前提ともいえるでしょう。

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被害者が自分で示談交渉をする場合の開始時期

示談交渉を始める時期は損害内容しだい

示談交渉は、傷害事故の場合、治療後(完治後)に始まります。
後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定後の開始です。

そのため、自分で交渉をおこなう場合、治療後すぐに保険会社と対等に戦える準備ができてなくてはいけません。

死亡事故は、葬儀が終わり次第示談を始められるタイミングといえます。しかし、精神的にも余裕のない方がほとんどでしょう。もちろん、気持ちが落ち着かれてから交渉を始めるぶんには問題ありません。

注意点としては、加害者側に示談金を請求できる権利は、5年(物的損害は3年)の消滅時効があることです。あまり悠長にかまえていては、権利を行使できなくなるため注意しましょう。
示談交渉から示談金確定までには、相当の時間を要することもあります。

被害者に過失がない場合の示談交渉

被害者側の過失がゼロの場合、被害者は自分で示談交渉をする必要があります。被害者が加入する保険会社は示談交渉に関与できません。

弁護士などの代理人に示談交渉を依頼することは法律上認められています。
弁護士に交渉を任せるメリットは大きく、ご自身での示談が難しいと感じた場合には、弁護士への相談・依頼がおすすめです。

被害者に過失のないもらい事故における弁護士への依頼については『もらい事故も弁護士特約を使わないと慰謝料が低い!特約の使い方も解説』の記事で確認してください。

示談交渉のテクニックとは?知識がカギ

示談の意味や流れ・示談金の計算方法を知る

示談とは、当事者同士の話し合いのことで、法律上は「和解契約」のことをいい、当事者の合意のみで成立します。

示談交渉は相手方から示談案の提案を受けて始まることが多く、まずはその提示内容が妥当かを見抜くテクニックが必要です。もし相手方の提示額が少ないと感じた場合には、被害者が自分で増額交渉をしなくてはなりません。そうして交渉を繰り返し、双方ともに納得のいく条件にて合意することを示談といいます。

示談金の計算

示談が成立すれば、あとからやり直しはできません。
また、示談金額は治療費、慰謝料、休業に対する補償などの損害額の合計に対して、過失割合が影響することを知っておきましょう。

過失割合とは、交通事故に対して当事者がどれだけの責任を持つかを割合で示したものであり、その割合は受けとる慰謝料額に影響します。過失が大きいほど受けとる金額は減ってしまうため、双方ともに少しでも過失が小さくなるように交渉するものです。
被害者だからといって、過失が低く見積もられるとは限りませんし、過失割合の確定にも交渉が必要です。

被害者に過失があればつねに過失相殺されるとも限りませんが、過失責任自体をまぬがれることはできませんので、内容を十分に知っておく必要があるでしょう。

過失相殺(かしつそうさい)

過失割合分を被害者の賠償金から差し引き、受取金額を減額させること

民法第七百二十二条では次のようにも定められています。

民法第七百二十二条
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

民法722条2項(e-Gov)

交通事故の示談金にはさまざまな項目があります。

示談金の内容や計算方法を知っておくことは、自分で示談交渉をするうえで非常に重要です。
正しい知識も誤った知識も、すべて「示談書」に反映されます。
被害者のもつ「正しい知識」は、示談交渉テクニックのうちもっとも重要といえるでしょう。

示談金の計算方法とは?

交通事故の示談金のうち、治療費や交通費など実費請求できるもの以外は、計算基準により金額が変わります。
たとえば慰謝料ですが、自賠責保険の支払い基準で計算される「自賠責基準」・任意保険が計算する「任意保険基準」・示談交渉で弁護士が使ったり裁判で使われたりする「弁護士基準」の3つがあります。
弁護士基準で計算された示談金はもっとも高額になります。

自分で保険会社と交渉する際は、任意保険基準で計算された示談金を上まわり、弁護士基準へ近づけるための交渉テクニックが必要です。

弁護士基準で算定するといくらになるのかがわかる書籍があります。それは『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』という書籍で、赤い本や赤本と呼ばれるものです。赤い本にはこれまでの裁判結果がまとめられているので、相場を知るヒントになるでしょう。赤い本にどんなことが書かれているかは関連記事『交通事故の慰謝料算定は赤い本が正解|慰謝料相場と算定方法』を参考にしてください。

保険会社のテクニックにも冷静に対応

加害者側が相手の任意保険である場合、保険会社の担当者が被害者に直接交渉してきます。示談交渉中においては、保険会社の心理を読み取る力も必要です。

保険会社の担当者は、事故案件の対応に慣れていて専門用語を使って話をしてくることがあります。被害者としては聞きなれない言葉も多いでしょうが、聞き流してはいけません。腑に落ちないまま合意することのないよう、意味が分からないことは確認してください。

また、保険会社の担当者が「これが精いっぱいの金額です」「これが相場です」と言ってもすぐに信じるべきではありません。被害者は相手の提示額が弁護士基準には及ばないという前提を知っておき、提示された金額の根拠を尋ねてみてください。

ただし、感情的になってはいけません。
なぜなら、示談には双方の譲歩も必要になってくるからです。被害者側からの慰謝料増額交渉だけが認められるわけではありません。

相手方の保険会社の主張に納得がいかない場合には、弁護士に見解を求めることもポイントのひとつです。特に、示談金額については、保険会社の提示額に増額の余地があるのかなど、確かめておきましょう。

示談開始前からも注意が必要

被害者の治療が長引いてしまうと、そのぶん保険会社は多くの治療費を支払わなければいけません。そのため、保険会社はできるだけ治療を早期に終わらせるよう、治療費打ち切りの打診をしてくることもあります。

そういった交渉に安易に乗らず、まずは医師へ相談することが必要です。

保険会社がいやがることは?

保険会社がおそれていることは、被害者側に弁護士がつくこと、被害者側に裁判を起こされることの2点です。

  1. 被害者側に弁護士がついての示談交渉
  2. 被害者側に裁判を起こされること

被害者側に弁護士がついての示談交渉

まず、被害者側の弁護士がつくケースを考えていきましょう。被害者の示談交渉の代理人が弁護士である場合、被害者が請求できる示談金はすべて弁護士基準で計算されます。

保険会社にとってもっとも都合がいいのは、保険会社が示談交渉の主導権を握り、保険会社の基準で計算された示談金で被害者が合意することです。
また、任意保険だからといって、任意保険の基準で最初から交渉してくるとも限りません。
最低限の自賠責基準で交渉をしてくる担当者もいますので、被害者は合意しないよう注意しましょう。

被害者側に裁判を起こされること

被害者が裁判を起こした場合、損害は弁護士基準で計算されます。保険会社の支払い金額が増額することはもちろん、裁判になれば時間と費用が発生するため、保険会社はいやがります。

被害者が自分で交渉を続ける場合は、示談金の請求額を明確にしておくことが必要でしょう。
自分で計算した請求額が明確でない場合、対抗できる材料がないのも同然だからです。

弁護士基準での慰謝料算定には、慰謝料計算機の活用をおすすめします。慰謝料計算機では、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料、逸失利益などの主要な損害項目を自動計算可能です。計算に必要な情報を入力するだけで結果がすぐ分かるので、まずは相場観を知っておきたい人にもおすすめの方法といえます。

関連記事『交通事故の慰謝料を正しく計算する方法』では、慰謝料の計算方法についてわかりやすく解説しています。基本の計算式から説明していますので、計算の仕組みからきちんと理解したい方におすすめです。

示談成立のために知っておきたいこと

示談書作成の注意点

示談は形式を問わないため、口頭でも成立します。

大切なことは、示談内容を示談書として形に残して証拠として残すことです。
後のトラブルにつながらないためにも、示談が成立したら示談書を取り交わしましょう。

示談書作成の注意点とは、まずは事実を明確にすることです。
示談書の項目はいくつかありますが、もっとも重要なのは示談の内容や条件面の記載です。
示談は、成立してしまえば当事者一方の希望で取り消しや変更ができません。

被害者にとって不利な内容になっていないかどうか、最終的に弁護士などに相談して確認しておくと安心でしょう。

また、肝心な示談金の支払いがなされていなければ意味がありません。
加害者側が保険会社であればそう心配ないですが(ただし、対人賠償保険が無制限でない場合は注意が必要)、賠償資力のない加害者個人の場合、支払方法にも留意しておく必要があります。

示談金は、分割して支払ってもらうことも可能です。加害者側に十分な資力がない場合には、一括払いではなく分割払いも検討すべきでしょう。しかし、分割払いの場合には支払いを踏み倒されるリスクがあることにも留意すべきです。

交通事故における示談書の書き方については、関連記事『交通事故は示談書の書き方が重要!テンプレートと記載すべき7項目』もお読みください。

加害者側がどうしても示談で解決したい場合とは?

加害者の事故態様によっては、刑事事件がからむこともあります。
示談交渉は民事的な交渉、つまり当事者同士の交渉をいいますが、加害者は場合によって刑事責任を負うこともあります。

刑事裁判をおこなうかどうかは検察官が決めることですが、加害者が起訴されてしまうかどうかの判断は、示談とも関係があるのです。

被害者と加害者のあいだで示談が成立しているかどうかで、起訴・不起訴におおきな影響があることを知っておきましょう。
早期の示談成立は、加害者にとっても重要なことですので、背景を知っておけば示談がスムーズにいくことも考えられます。

それらをふまえ、賠償金(示談金)の請求額を確定させましょう。
しかしその場合であっても、正当な金額で主張することが大切です。

ポイントは、弁護士基準で計算された高額な基準かつ、譲歩も視野に入れたトラブルを避けるための対応といえます。

被害者側から無茶な主張や金額交渉をしても、紛争がこじれるだけですので注意しましょう。

示談書より強力な公正証書の作成

示談書の内容をより確実にしたい場合、公正証書にするという方法もあります。

公正証書は、示談書よりも強い法的効力があり、一定の要件を備えれば、その内容にもとづいて強制執行をおこなうことが可能です。

公正証書の作成は、公証人がいる公証役場でおこなう必要があり、当事者双方が出向かなければなりません。
また費用も発生するため、作成を検討しているのであれば、公証役場に問い合わせておいたほうがいいでしょう。

弁護士の交渉テクニック

示談金の内容・範囲を明確にする

弁護士が示談交渉をおこなう場合、活用する知識は膨大になりますが、ここではその一部をご紹介します。

まずは損害の範囲を把握することです。

傷害事故の場合、治療費や入院・通院したことに対しての慰謝料などをはじめ、仕事を休んだことに対する休業の補償、後遺症が残った場合の慰謝料などがあげられます。

また、そのほかにも家事代行のため家政婦をやとった場合の費用や、障害が残ったことにより自宅を改造した場合などの費用、子供の保育費などが認められることもあります。

何をどれだけ請求できるかの把握は、示談金を確定させるために欠かせません。

また、加害者側の代理人が保険会社であっても、被害者が有利になるような損害金をすべて計上してくれるわけではありません。

被害者が損害を受けた内容は、被害者にしか請求できないことを忘れないでください。被害者が損害を受けた項目や妥当な金額は、弁護士であれば熟知しています。

金額提示は最初は大きく・相手の立場も考慮する

保険会社と示談交渉をおこなう場合、双方で示談案が取り交わされます。

弁護士は弁護士基準、保険会社は任意保険基準(もしくは自賠責基準)で交渉をおこないますが、両者は利害関係にあり対立しています。

弁護士の交渉テクニックとしては、まずはできる限り高額な算定で保険会社に金額提示することです。
保険会社としては弁護士基準自体にはあらがえないものの、自分の会社の損失を抑えることにも注力しています。
そのため、弁護士の提示金額にすぐに納得することはないでしょう。

ここから早期に示談金を確定させていくわけですが、示談交渉で忘れてはならないポイントとして、「冷静に対応すること・譲歩すること」があげられます。
たとえば被害者個人で交渉する場合、どうしても満額で請求しようとしたり、保険会社の対応に苛立ちを覚えたりすることがあります。
そのような態度で臨んでは、早期解決は難しいでしょう。

弁護士は、「大体これくらいの金額まで歩み寄れば交渉は成立するだろう」といった目安についてもある程度わかっているため、上手に歩み寄っていきます。

弁護士は、数々の裁判例や示談交渉のテクニックについて、誰よりもわかっている人物です。
被害者は示談交渉を始める前に、弁護士に相談だけでもしてみるといいでしょう。

示談テクニックまとめ

  • 示談交渉は冷静におこなうのが鉄則
  • 示談交渉には示談金の項目・計算基準の把握が重要
  • 早期解決には加害者側の背景を読み取ることも重要
  • 示談交渉の場では「正当な金額」で主張することが大前提
  • 示談交渉に必要なものはとにかく「知識」
  • 示談テクニックを熟知し示談経験が豊富なのは弁護士である

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点