交通事故の示談の流れと手順!うまく進めるポイントも解説

交通事故後の手続きは事故直後の初期対応から始まり、その後はケガの有無によって示談に至るまでの進み方が変わってきます。
この記事では、物損事故と人身事故それぞれについて、示談がどのような手順で進み、各段階でどんな争点や注意点が生じやすいのかを順番に解説します。
示談は一度成立すると原則として内容をやり直したり後から条件を追加することはできません。
後悔のない示談にするためにも、示談の流れを押さえ、各段階で何を確認すべきか理解しておくことが大切です。
目次
交通事故から示談までの流れ
交通事故が発生した直後は冷静さを欠きやすいものです。
しかし、初動対応はその後のトラブルや損害賠償の内容に大きく影響します。
交通事故直後にとるべき行動は、次のステップに整理できます。
事故の初期対応の流れ
- ケガ人の救護
- 事故現場の安全を確保
- 警察へ通報
- 相手との情報交換
- 写真・録音などで証拠を保全
- 警察の捜査に協力
- 保険会社への連絡
- ケガがなくても病院を受診
- 自動車の損傷があれば修理依頼
事故直後の対応について詳しく知りたい場合は、『交通事故対応の流れ|交通事故にあった・起こしたときの初期対応〜後日対応までを解説』をご覧ください。
示談交渉開始から示談成立までの流れ
事故現場での対応がひと段落した後、「この先どう手続きが進むのか」「示談までに何を準備すればいいのか」という悩みに直面します。
以下では交通事故の初期対応後から示談成立までの流れを、物損事故と人身事故に分けてより専門的・実務的に解説します。
物損事故(モノの損害のみ)の流れと争点
物損事故は、修理費の妥当性や全損判断、過失割合など意外と争点が多いのが特徴です。
事故後の対応を誤ると、相手からの賠償金額に大きく影響します。
物損事故の示談は、早ければ数週間〜1ヶ月程度でまとまることもありますが、過失割合等に争いがあると長引く場合もあります。
物損事故の初期対応や全体像をより詳しく知りたい方は、『物損事故の流れと被害者がやるべき対応|解決までの期間は?』も併せてご覧ください。
(1)損害額の確定(修理費・評価損・代車費用などの整理)
示談交渉をスムーズに進めるためには、事故で発生した損害をあらかじめ整理し、「いくらの損害があったのか」を明確にしておく必要があります。
具体的な金額の算定は保険会社や修理工場が行い、見積書などは当日〜数日程度で手元に届くことが多いです。
- 修理見積書
修理工場が作成する見積書で、部品代や作業工賃を記載。事故車の損傷状況と修理に必要な費用を示す、最も基本的な資料。 - 時価額の根拠資料(全損の可能性がある場合)
修理費が車の価値を上回る場合は全損扱いとなるため、車の時価を示す資料が必要になる。保険会社が用意することが多い。 - 代車費用の領収書・見積書
代車が必要だった期間や費用を示す資料。
これらの資料は、示談交渉で損害額を正確に主張するための基本となるため、漏れなく準備して整理しておくことが大切です。
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(2)示談交渉の開始(過失割合の検討)
損害額の整理ができると、通常、事故から1〜3週間程度で過失割合(責任割合)の協議に入ります。
過失割合は示談金額に直結するため、事故状況を客観的に示す資料を揃えておくことが大切です。
- 交通事故証明書
事故を警察に届け出ていれば発行される基本資料。 - 実況見分調書
刑事事件になった場合などに作成される。通常は保険会社が取得する。 - ドライブレコーダー映像
- 現場や損傷部位の写真
- 目撃者の証言
これらは過失割合を判断する根拠となるものであり、自分でも内容を把握しておくと交渉時に役立ちます。
物損事故に限らず、特に過失割合で争われやすいポイントは次のとおりです。
- 信号の見落とし
- 一時停止義務違反
- 車線変更のタイミング
- 急ブレーキの適否
- 直進車と右折車の衝突
過失割合は保険会社同士が調整しますが、提示された割合に納得できない場合は、これらの証拠をもとに異議を唱えることも可能です。
状況次第では、賠償額に大きな差が生じることもあります。
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(3)損害賠償額の算定・提示(保険会社から示談案が届く)
過失割合がある程度固まると、それをもとに保険会社が損害賠償額を算定し、示談案として提示します。
物損の場合、事故から数週間程度経過してから示談案が届くケースが一般的です。
物損事故で賠償の対象となりやすい主な項目は次のとおりです。
- 修理費(または車の時価額)
- 代車費用
- レッカー代
- 評価損(格落ち)※車種・事故態様によっては認められにくい場合もあります
特に評価損(格落ち)は、保険会社が必ずしも積極的に提示してくる項目ではないため、必要であれば自ら主張することも重要です。
提示される金額は、各資料をもとに保険会社が独自に計算したもので、内容に不明点があればどのような基準で算定したのか説明を求めることができます。
(4)示談案の検討・合意(妥当性の精査)
提示額を検討し、以下の観点から妥当かどうかを判断します。
- 過失割合が一般的な基準と照らして適切か
- 修理費の内容に不自然な点はないか
- 全損扱いの基準に問題はないか
- 評価損が正しく盛り込まれているか
- 代車費用の計算が適切か
妥当でなければ交渉を継続しますが、難しい場合は弁護士へ依頼する選択肢もあります。
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交通事故の過失割合が納得いかない!おかしいと感じたら弁護士を通じて交渉を
(5)示談書の取り交わし
示談内容に双方が合意したら、その内容を正式な書面で確認するために示談書(免責証書)を取り交わします。
示談書は「この内容で全て解決する」という最終合意書にあたるため、署名・押印後に内容を変更することは基本的にできません。
提出前に、誤記や金額の間違いがないか、細かい部分まで丁寧に確認することが重要です。
- 当事者名
- 事故日・事故状況
- 示談金額
- 支払い方法・期限
- 清算条項(これで全て解決とする旨)
特に「清算条項」は、後から追加請求ができなくなる重要な文言です。
不明点があれば保険会社や弁護士に確認してから署名するようにしましょう。
(6)示談金の支払い
示談書が正式に締結されると、いよいよ示談金が支払われます。
示談金は示談書提出後数日〜数週間以内に振り込まれることが多く、これをもって手続きが完了します。
振込予定日や振込金額に誤りがないか確認し、入金後は控えとして通帳記帳や画面保存をしておくと安心です。
万が一、予定日に振り込まれない場合は、保険会社の担当者に早めに連絡して確認しましょう。
人身事故(ケガあり)の場合の流れと争点
人身事故の示談は、治療の経過や後遺障害の有無によって進むタイミングが大きく変わり、物損事故より長く複雑になりやすい点が特徴です。
示談が本格的に動き始めるのは治療終了後で、一般的には数ヶ月〜半年以上かかることもあります。
主な流れは以下の通りです。
- 治療と症状固定/後遺障害等級認定
- 損害額の確定
- 示談交渉の開始(過失割合・賠償額の協議)
- 示談案の検討・合意
- 示談書の取り交わし
- 示談金の支払い
損害項目も多いため、各段階で必要な準備を把握しておくことが示談をスムーズに進め、正当な金額を受け取る上でも重要です。
(1)治療と症状固定/後遺障害等級認定
人身事故ではまず治療を継続し、「完治」または痛みや不調が改善しなくなる「症状固定」まで通院します。
治療期間はケガの程度により異なりますが、一般的には数週間〜数ヶ月ほどかかり、この経過が後の賠償額に大きく影響します。

症状固定後は、後遺症が残るかどうかによって提出する資料や手続きが分かれます。
症状固定後、後遺症が残らなかった場合は後遺障害の審査は不要で、保険会社が損害額を計算するために必要な情報を整理しておきます。
保険会社は医療機関へ診療情報の照会を行うことが多いため、次の資料は必ずしも被害者が提出する必要はありませんが、内容を把握しておくとスムーズです。
- 診断書
医師が作成。人身事故届に必要。 - 診療報酬明細書
医療機関が作成。多くの場合は保険会社が取得。
一方で、費用関係の資料は被害者自身が収集・提出する必要があります。
- 治療費の領収書
医療機関から受け取る。 - 通院交通費の記録・領収書
自分で記録・保管。 - 休業損害の証明書
勤務先が作成、自営業は確定申告書。
痛み・しびれ・可動域制限など、症状が残る場合は後遺障害等級認定を申請します。
上記のような治療経過を示す診療情報に加え、次のような後遺症の状態を示す資料の追加提出が特に重要になります。
- 後遺障害診断書(医師に作成を依頼)
- レントゲン・MRIなどの検査資料(医療機関で取得)
これらの資料をもとに等級認定の審査が行われ、およそ1〜2ヶ月程度で認定結果が出ます。
認定結果によって後遺障害慰謝料や逸失利益が大きく変わるため、この段階の資料収集は非常に重要です。
なお、後遺障害申請の方法については『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』をご覧ください。
(2)損害額の確定(治療費・慰謝料・逸失利益など)
損害が確定したら、保険会社が資料を基に賠償額の計算を行います。
基本的には保険会社からの連絡を待ちますが、費用資料の追加提出を求められた場合にはその都度対応が必要です。
損害額が確定し、示談書が届くまでの期間は後遺障害申請の有無によって大きく変わります。
- 後遺障害申請をしない場合
資料提出後約1~2ヶ月程度 - 後遺障害申請をする場合
認定結果確定後約1.5~3.5ヶ月程度
上記は一般的な目安期間ですが、書類不足や専門的審査が必要なケースではさらに長期化することもあります。
また、後遺障害申請後に非該当だった場合は、まず保険会社から「非該当」の結果通知が届きます。
その後、非該当の結果を踏まえて損害額が再計算され、申請から示談案が届くまでの期間はおおむね 1.5〜3.5ヶ月程度となるのが一般的です。
認定結果に不服がある場合は「異議申立て」により再審査を求めることも可能ですが、その場合はさらに期間が延びる点に注意が必要です。
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後遺障害の異議申し立てを成功させる方法と再申請の流れ!失敗や納得できない結果への対策
(3)示談交渉の開始(過失割合・賠償額の協議)
保険会社から示談案が提示されると、ここから示談交渉が始まります。
まずは、どの項目がどのように計算されているのかを丁寧に確認することが重要です。
示談案を見る際は、まず事故状況や過失割合が正しく反映されているかを確認します。
そのうえで、治療期間や通院頻度、仕事への影響、後遺障害の有無などが各損害項目に適切に反映されているかをチェックしていきます。
交渉の中心となるのは、次のような項目の妥当性を確認することです。
- 治療費
医療機関で発生した費用 - 通院交通費
公共交通機関や自家用車での移動費 - 休業損害
- 会社員:勤務先の休業損害証明書
- 自営業:確定申告書など収入の資料
- 主婦:賃金センサスまたは実際の給与所得
- 入通院慰謝料
治療期間・通院日数に応じた精神的苦痛の補償 - 後遺障害慰謝料
該当する場合のみで、等級ごとに基準額が設定されています。 - 逸失利益
該当する場合のみで、後遺障害による将来の減収に係数をかけた金額
保険会社が提示する任意保険基準で算出された金額は、相場の金額を算出する弁護士基準(裁判基準)と比較すると低額になる傾向があります。

提示額に不安がある場合や、自分で判断するのが難しい場合は、弁護士に相談して内容を確認してもらうことも有効です。
(4)示談案の検討・合意
交渉を重ねた結果、保険会社から最終的な示談案が提示されます。
ここでは、示談書の取り交わしに進んでよい内容かどうかを落ち着いて確認します。
この段階ではすでに過失割合や各損害項目の金額について大枠の調整は終わっていますが、次のような点はあらためてチェックしておきましょう。
- 交渉の中で合意した内容(過失割合・金額・対象期間など)が、そのまま反映されているか
- 賠償の対象となる項目に抜け漏れがないか(一部の通院交通費や休業損害が落ちていないか等)
- 将来にわたる請求の余地が残っていないか、説明と金額が一致しているか
示談に合意すると、その内容を後から変更することは基本的にできません。
金額の妥当性に不安がある場合や、自分だけで判断するのが難しいと感じる場合は、最終的な示談案の内容について弁護士に意見を聞いておくと安心です。
内容に納得できたら、次のステップである示談書の取り交わしに進みます。
(5)示談書の取り交わし
示談内容に合意することを決めたら、保険会社から示談書(免責証書)が送られてきます。
示談書は、今回の交通事故に関する賠償問題を最終的に解決するための正式な書面であり、署名・押印すると原則として追加の請求はできなくなります。
一般的な示談書には、次のような内容が記載されます。
- 当事者名(加害者・被害者)
- 事故日・事故の概要
- 示談金額(内訳が記載されることもあります)
- 支払い方法・支払期限・振込先情報
- 清算条項(本件事故に関する一切の請求をしないことを確認する文言)
特に清算条項は、将来の追加請求ができなくなる重要な条項です。
示談書に記載された金額や条件が、示談案として説明された内容と一致しているか、誤字や数字のミスがないかをよく確認してから署名・押印する必要があります。
不安があれば、この段階でも弁護士に内容を確認してもらうことができます。
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交通事故の示談後、撤回や追加請求は可能?後遺障害があとから発覚したら?
(6)示談金の支払い
示談書の取り交わしが完了すると、いよいよ示談金が支払われます。
多くの場合、相手方の任意保険会社から被害者名義の銀行口座に振り込まれる形で支払いが行われます。
このときは、次の点を確認しておきましょう。
- 支払期日までに入金されているか
- 振込金額が示談書に記載された金額と一致しているか
支払いが完了すれば、今回の交通事故に関する損害賠償手続きは基本的に終了となります。
入金後は、通帳の記帳や振込明細のスクリーンショットなどを控えとして保存しておくと、後日確認が必要になった場合にも安心です。
示談交渉の手続きを進める5つのポイント
示談交渉の手続きを進める際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 示談金相場や過失割合は弁護士に確認しておく
- 過失割合はもめやすいことを認識しておく
- 加害者側の保険会社との付き合い方を押さえておく
- 示談金を早く受け取る方法を知っておく
- 示談書で注意すべき項目を知っておく
それぞれについて解説します。
示談金相場や過失割合は弁護士に確認しておく
示談の手続きを進めるにあたっては、事前に示談金や過失割合を弁護士に確認しておくことがおすすめです。
示談金や過失割合は事故の細かい状況や事情を考慮して柔軟に算定されるため、厳密には弁護士に確認しなければわかりません。
ネットや本で算定方法を調べてご自身で計算しても、それはあくまでおおまかな目安にすぎず、加害者側との示談交渉では「説得力がない」と一蹴されてしまう可能性が高いです。
アトム法律事務所では、示談案の内容に関する相談を無料で受け付けています。電話・LINEでの相談予約が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
過失割合はもめやすいことを認識しておく
過失割合は最終的に受け取ることになる賠償額に影響するため、相手方との意見も対立しやすい部分です。過失割合の決定は慎重に進めるべきでしょう。
もし相手方の主張する過失割合に納得がいかない場合は、弁護士の見解をたずねてみましょう。過失割合は事故形態、事故時の現場の状況などから総合的な判断が必要なもので、被害者お一人で判断するのはやや困難です。
加害者側の保険会社との付き合い方を押さえておく
交通事故発生から示談までの間は、加害者側の任意保険会社とのやりとりをすることが多くなります。やりとりをする際には、以下の点を押さえておきましょう。
- 高圧的な態度や冷たい態度を取られても感情的にならない
- 不用意な発言はしない
- わからないことはその場で答えず一旦持ち帰る
それぞれについて解説します。
高圧的な態度や冷たい態度を取られても感情的にならない
加害者側の任意保険会社は高圧的な態度や冷たい態度を取ってくることがあります。それに対して感情的になり関係性が拗れると、示談交渉が進みにくくなる恐れがあるので注意しましょう。
不用意な発言はしない
たとえば会話の中で「こちらも悪かった」「ケガも随分良くなった」などの発言をすると、加害者側の任意保険会社は「示談金の減額を主張する良い口実だ」と判断することがあります。
不用意な発言はしないよう意識してください。
わからないことはその場で答えず一旦持ち帰る
示談交渉などで加害者側の主張に対し、どう答えたら良いかわからない場合は、一旦持ち帰って慎重に判断しましょう。
加害者側はあえて専門用語を多用してわかりにくく話をしてくることもあります。無理にその場で答えると不利な状況になってしまいかねないため、一旦持ち帰ることが重要です。
弁護士を代理人として立てれば、加害者側の任意保険会社とのやりとりは弁護士に一任できます。
相手の態度に耐えられるか、不用意な発言をしてしまわないかなどの不安がある場合は、弁護士を立てることもご検討ください。
示談金を早く受け取る方法を知っておく
交通事故の示談金は基本的に示談成立後に支払われますが、「被害者請求」や「仮渡金請求」をすれば、示談前でもまとまったお金を受け取れます。
早くお金を受け取る方法を知っておけば、金銭的な理由で示談を急いで妥協した内容で合意せずに済むので、チェックしておきましょう。
- 被害者請求
交通事故の示談金のうち、一部を示談前に請求できる制度
関連記事:交通事故の被害者請求|自賠責保険に請求するには?やり方とデメリット - 仮渡金請求
ケガの程度に応じた金額を、示談金からの前払いの形で請求できる制度
関連記事:内払い金・仮渡金を解説
ご自身の保険を有効に使い、金銭的負担を軽減させることも可能です。詳しくは『人身傷害補償特約は必要?いらない?補償内容や他の保険との違いとは』をご覧ください。
示談書で注意すべき項目を知っておく
示談書に書くべき主な項目としては、事故の当事者双方の名前や住所、事故の発生日時や事故状況といった基本的な情報をはじめとし、既払い金や示談金額といった示談条件があげられます。しかし、この他にも注意すべき項目がいくつかあります。
- 示談金が支払い期日までに支払われなかった時の違約金に関する「違約条項」の記載
- 示談成立後に発覚した新たな損害に対する追加の請求を認める「保留条項」の記載
- 示談成立後はお互いに金銭を請求したりせず損害賠償に関する争いは終結して解決したという「清算条項」の記載
一つずつ見ていきましょう。
違約金に関する「違約条項」の記載
相手方本人が示談金を支払う場合は支払いが遅れてしまうリスクがあります。このようなリスクを回避するために、支払いが遅れた場合の違約条項を記載しておくのが大切です。
保険会社が示談金を支払う場合は支払いが大幅に遅れてしまうことはあまりないので特段、気にする必要はないでしょう。
追加の請求を認める「保留条項」の記載
示談した後から交通事故による損害が発覚した場合は別途、協議するという保留条項を設けておくことが大切です。
例えば、示談成立後に事故が原因のケガでさらなる手術が必要になったような場合、示談成立後に後遺障害に発展したような場合、示談が成立したからといって一切示談金がもらえないのは不合理と言えるからです。
争いは終結して解決したという「清算条項」の記載
示談書に記載されている内容以外、お互いに請求するようなものは一切ないと確認しておくものが清算条項です。清算条項を設けておくことで、紛争の蒸し返しをふせぎます。
示談書の項目まとめ
示談書に記載された内容に納得し、交通事故で受けた被害に関して漏れがないようであれば示談書に署名・捺印した示談書を双方で取り交わすことで示談は成立します。
示談書の主な項目
- 事故の当事者情報:事故当事者の名前・住所・車両番号
- 事故の詳細:事故発生日時・場所・状況
- 示談の条件:既払い金・示談金額・支払い方法・支払期日
- 違約条項
- 保留条項
- 清算条項
示談書の書き方についてさらに詳しく知りたい方は『交通事故の示談書の書き方と記載事項!テンプレート付きで注意点も解説』の記事をご覧ください。
【コラム】自分で増額交渉できるのか?
被害者自らで増額交渉することは可能ですが、任意保険会社がすんなり受け入れてくれることはほぼありません。
任意保険会社は仕事として示談交渉をしているプロです。被害者おひとりでは交渉力や知識の差から不利になりがちなので、弁護士を立てて交渉するほうが安心でしょう。
被害者の独力だけで保険会社に増額を主張しても、受け入れられる可能性は限りなく低いです。

任意保険会社は「主張の金額には何の根拠もない」「主張の金額は裁判を行った場合に得られる金額だ」などと言葉巧みに話を進め、再度任意保険基準での金額をベースに提示されることでしょう。
弁護士を立てて交渉すれば、裁判を起こした場合に近い示談金額を獲得できる可能性があります。
弁護士費用の負担は、ご自身の保険の「弁護士費用特約」を使えば大幅に軽減できます。
関連記事
交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説
示談までの流れでよくあるトラブルと対処法
交通事故が起きてから示談までの間には、以下のようなトラブルが起きる可能性があります。
- 治療中に示談交渉を持ち掛けられた
- 加害者側から示談に関する連絡がこない
- 交渉が行き詰まり示談が進まない
- 示談後に再交渉したい事情が出てきた
それぞれのケースにおける対処法を解説します。
治療中に示談交渉を持ち掛けられた
まだ治療中であるにもかかわらず、加害者側の保険会社から「これ以上の治療費は支払わないので治療を終えてください」「そろそろ示談にしましょう」と言われることがあります。
しかし、医師に相談してまだ治療が必要だと判断された場合には、その旨を加害者側の保険会社に伝えて示談開始を待ってもらい、治療を続けましょう。
それでも治療費を打ち切られてしまったら、被害者側で治療費を立て替えつつ残りの治療を受けましょう。
治療費に関しては、健康保険を利用することで負担を減らす工夫もできます。立て替えた分は示談交渉時に加害者側に請求しましょう。
関連記事
交通事故で治療費打ち切りの連絡が保険会社から来た!阻止するための対応方法
加害者側から示談に関する連絡がこない
加害者側の保険会社から示談金額や過失割合の提示が来ない場合は、被害者側から連絡を入れてみましょう。
加害者側の保険担当者は、複数の案件を同時並行で進めていることがあります。
よって、とくに被害が軽い交通事故の場合は対応が後回しにされてしまうことがあるのです。
被害者側から確認の連絡を取ることなく待ち続けていると、数ヶ月経っても何も連絡がこないこともあります。
なかなか示談案の提示が来ない場合は、直接問い合わせるなどの対処が必要です。
加害者側からの連絡がない場合の対処法について詳しく知りたい方は『交通事故の示談で保険会社・加害者から電話や連絡がない・遅いときの対処法』の記事をご覧ください。
交渉が行き詰まり示談が進まない
示談交渉は始まったものの、加害者側の対応が遅かったり、揉めたりすると話し合いが進まなくなります。
このような場合は、以下のように対応しましょう。
- 加害者側の対応が遅い場合
- 加害者側の保険会社のお客様相談センターや、そんぽADRに連絡を入れる
- 弁護士を通して対応を催促する
- 話し合いで揉めた場合
- 弁護士を立てて示談交渉をする
話し合いで揉めて示談交渉が進まなくなった場合は、弁護士を立てることで事態が進展しやすくなります。
被害者が弁護士を立てた場合、加害者側の保険会社は裁判になることを避けるため、譲歩の姿勢をとることが多いためです。
実際に、次のような体験談もあります。
(略)加害者側保険会社が当方に対していいかげんな対応をされつつも精神的に参っている中、気軽にLINEで相談できた上、10ヶ月間何も進まなかった示談交渉がすんなり終わった上、増額までしていただきました。LINEでのやりとりなので、仕事などにも支障がなかった事も非常にありがたかったです。(略)
アトム法律事務所のご依頼者様の声
示談交渉が進まない場合の対処法は、『交通事故で示談が進まない・難航したときどうする?原因と対処法まとめ』でさらに詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
示談後に再交渉したい事情が出てきた
示談は一度成立すると、原則としてやり直しはできません。ただし、以下の場合は示談の撤回や再交渉ができる可能性があります。
- 示談当初は予測しえなかった損害が発覚した場合
- 示談内容が公序良俗に反する場合
- 示談を成立させる意思がないまま成立してしまった場合
- 示談内容を勘違いしていた場合
- 示談で脅迫・詐欺があった場合
たとえば軽いケガだと思っていた症状について、示談成立後に重大な問題が見つかり後遺障害が残った場合、後遺障害関連の賠償請求のため再び示談交渉できることがあります。
ただし、たとえ上記のケースに当てはまったとしても、加害者側がスムーズに再交渉に応じるとは限りません。
再交渉について加害者側が良い反応をしなかった場合は、弁護士に相談して見解を聞いてみましょう。
関連記事
交通事故の示談後、撤回や追加請求は可能?後遺障害があとから発覚したら?
【コラム】追突事故・もらい事故の示談交渉の注意点
交通事故の示談をうまく進める方法として、被害者に過失がない場合は注意です。具体的には、追突事故やもらい事故といった過失割合10対0になる事故類型のときに注意しましょう。
被害者に過失がつかない場合、被害者自身で加入している任意保険会社の示談代行サービスは使えません。そのため、相手方には任意保険会社がつくのに、被害者は被害者自らが示談交渉の最前線に立たざるを得なくなるのです。
非のない被害者に同情して、相手方の保険会社が多額の示談金を提案してくれるわけではありません。あくまで自社の基準に則った金額を提案するのみです。追突事故やもらい事故といった「被害者が悪くない事故」ほど、弁護士に依頼して示談交渉をスムーズに進め、適正な示談金の請求が必要といえます。
示談で困った時の相談先は?
示談に関して困ったときは、1人で抱え込まず専門家に相談することがおすすめです。具体的にどこに相談すれば良いのか解説します。
示談の悩みは弁護士や紛争処理センターに相談
示談交渉をスムーズに進めるためには、弁護士への相談・依頼や紛争処理センターの利用も視野に入れてみましょう。
弁護士への相談・依頼
弁護士への相談では、示談金や過失割合の算定、示談交渉の進め方についてのアドバイスを受けられます。
相談後に依頼まで進んだ場合は、弁護士が代理人として示談交渉をすべて代理可能です。示談時の慰謝料増額や過失割合の交渉も、被害者の味方となって対応できることが、弁護士の強みといえます。
アトム法律事務所では、交通事故被害者からのケガの慰謝料や過失割合に関する相談などを無料で受け付けています。下記バナーよりまずは相談の予約をお取りください。年中無休でご予約の受付窓口がつながります。
紛争処理センター
弁護士に損害賠償問題について相談でき、解決策を提案してもらえます。必要性が認められた場合、弁護士は示談のあっ旋も行い、双方の合意を目指します。
ただし、弁護士は中立的な立場をとるため、必ずしも被害者の味方とは限りません。
紛争処理センターでは弁護士はあくまでも第三者の立場で介入し、問題が解決に向かうよう話し合いをサポートします。
弁護士に被害者側の立場に立ってほしい、被害者側の主張を加害者側に認めてほしいという場合には、個人的に弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
参考になる記事
示談を弁護士に任せるメリットと体験談
本記事内でも「示談交渉の際は弁護士への依頼も検討してみてください」とお伝えしましたが、実際に弁護士に交渉を依頼するとどのようなメリットがあるのか2つ解説していきます。
メリット(1)「弁護士基準」の主張で示談金増額
示談交渉を弁護士に依頼すると、「弁護士基準」の金額を主張できるため示談金の大幅アップが期待できます。
弁護士基準とは?
過去の判例に基づく慰謝料相場を算定するための基準。
加害者側の保険会社は「自賠責基準」や「任意保険基準」に沿った金額を提示してくるが、弁護士基準はそれより2倍~3倍程度高額であることが多い。

弁護士基準の金額は、本来であれば裁判を起こして獲得するようなものです。
よって、裁判も起こさずに被害者自身の交渉で弁護士基準の金額を獲得するのは非常に難しいとされています。
しかし、示談交渉を弁護士に依頼すれば、以下の理由から弁護士基準の金額が認められやすくなります。
弁護士基準が認められる理由
- 専門家である弁護士の主張なので、根拠がないなどと言って否定できない
- 弁護士の主張を否定し続けて示談が決裂になると裁判に発展し、結局弁護士基準の金額を支払うことになるおそれがある
よって、「弁護士基準の金額を主張することで示談金の大幅アップが期待できる」という点は、弁護士が交渉の場に出た場合ならではのメリットと言えるでしょう。
なお、弁護士基準で請求できる金銭は慰謝料だけではなく、損害賠償額全体の引き上げが期待できます。
関連記事では損害賠償額の相場や慰謝料の弁護士基準について解説していますので、参考にしてみてください。
増額交渉に苦戦した体験談
実際にアトム法律事務所へ相談・依頼された方の中には、ご自身で交渉してきた示談金額と比べて、弁護士に交渉を依頼したときの金額との増額分に驚きの声をいただいています。お声の一部を紹介します。
(略)示談金に納得いかず、インターネットで弁護士事務所を探し多々、弁護士事務所に相談しましたが、アトム法律事務所の方だけがとても親切・丁寧に話を聞いて下さいました。(略)保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。(略)
アトム法律事務所のご依頼者様の声
最初に主人と一緒に保険会社からの示談金の説明を受けた時、疑問点を質問しましたが、「こういうもの」と言われたらどうしようもなく上積みできたのはせいぜい20万程度でした。提示された金額が適正なのかどうか分からず話しだけでもと思い、法律事務所に相談することにしました。(略)示談金は3倍にもなりました。
アトム法律事務所のご依頼者様の声
交通事故の被害者の方のお声・体験談については、関連記事『交通事故の体験談8選|示談交渉や後遺障害認定の様子』で紹介しているので、参考にしてみてください。
メリット(2)ストレスなく合意・示談成立が期待できる
示談交渉にはストレスや不安がつきものです。
被害者側の主張が通らなかったり、加害者側の保険会社が高圧的な態度を取ってきたり、仕事や家事をしているときに交渉の電話がかかってきたりすることがあるからです。
初めは粘り強く頑張って納得のいく示談にしようと思っていても、だんだんと疲れてしまったり、何が正解なのかわからなくなったりすることもあるでしょう。
しかし、示談交渉を弁護士に任せればこうしたストレスを感じずに済みます。
実際に自身で示談交渉した体験談
(略)事故相手の誠意のなさと保険会社のさっさと幕引きを図ろうとする姿勢に戸惑いを感じました。仕事中にも関わらず電話してきたりととても困っていました。(略)
アトム法律事務所のご依頼者様の声
交通事故被害にあい、元々、自賠責基準と弁護士基準、会社により保険会社基準があるのは知っていましたが、相手側保険会社が自賠責のみですませようとしたあげく、保険会社基準も「当社にはない」「そんなもの(弁護士さん出てこなければ)払わない」「治療費かかってるのに過失引いたらマイナスになるかもしれませんよ?」などと不遜で高圧的だったため、何が何でも弁護士さんにたのむ事にしました。
アトム法律事務所のご依頼者様の声
弁護士費用の負担は特約で減らせる!まずは無料相談
示談交渉を弁護士に任せたいと思っても、弁護士に支払う費用の負担が気になる方は多いでしょう。
弁護士費用の負担については、弁護士費用特約を利用することで大きく減らすことが可能です。
弁護士費用特約を利用すると、弁護士との法律相談料や弁護士への報酬金を保険会社が負担してくれます。
負担額には上限がありますが、上限額を超える負担が生じることは少ないため、多くのケースで負担なく弁護士への依頼が可能となるのです。

弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説』の記事をご覧ください。
アトムなら無料で相談可能
アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料相談を受け付けています。
適切な示談金額や過失割合はいくらか、自分の場合弁護士への依頼は必要かなど、金銭的な負担なく相談が可能です。
ご依頼まで進んだ場合でも、以下のいずれかの方法によって弁護士費用の負担が軽減されます。
- 弁護士費用特約が使える場合、自身の保険会社が弁護士費用を支払うため、自己負担ゼロ
- 弁護士費用が使えない場合、初期費用である着手金が原則無料
弁護士費用特約が利用できない方でも、お手元のお金を気にせず依頼することができます。
無料相談のみのご利用も可能なので、お気軽にご連絡ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
