交通事故紛争処理センター利用の流れとメリット・デメリット!示談不成立時の解決法

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交通事故の紛争処理センター

交通事故紛争処理センターとは、交通事故において加害者側と被害者側の間に入り、示談成立のサポートをしてくれるADR機関です。

加害者側との示談が不成立になった場合の解決法の1つとして、交通事故紛争処理センターが挙げられます。

この記事では、交通事故紛争処理センターの概要やメリット・デメリット、利用の流れを解説します。参考にしてみてください。

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交通事故紛争処理センターとは。示談不成立時に使う?

紛争処理センターとは?してもらえる3つのこと

交通事故紛争処理センターはADR機関(裁判外紛争処理機関)のひとつで、交通事故の被害者と加害者双方が納得できる解決策を見つけるために、公正な立場で仲裁を行う公益団体です。

具体的には、法律相談・示談のあっ旋・審査をしてもらえます。

  • 法律相談
    示談あっ旋を前提とした相談。担当弁護士に自身の主張を伝え、書類を見ながら問題点を整理したりアドバイスをもらったりする。
  • 示談あっ旋
    法律相談の結果、必要性が認められると示談のあっ旋を受けられる。担当弁護士が当事者双方の主張を聞き、あっ旋案(解決案)を提案してくれる。
    双方があっ旋案に合意すれば解決。
  • 審査
    審査会が改めて当事者双方の主張を聞き、書類の内容も踏まえて裁定を出す。申立人が裁定に同意すれば解決、同意しない場合は未解決のままサポート終了。

紛争処理センターでは裁判のように勝敗を決めるのではなく、双方が納得できる解決策を見つけることを目指しています。
被害者・加害者双方の言い分を踏まえて解決策を提案してくれるのです。

交通事故紛争処理センターは1974年に設立され、全国に11の拠点・相談室があります。

紛争処理センター所在地一覧

  • 東京本部
  • 札幌支部
  • 仙台支部
  • 名古屋支部
  • 大阪支部
  • 広島支部
  • 高松支部
  • 福岡支部
  • さいたま相談室
  • 金沢相談室
  • 静岡相談室

※ 参考:公益財団法人 交通事故紛争処理センター「センター所在地一覧

示談不成立時に選ばれる解決方法|調停や裁判との違い

交通事故に関する紛争を解決する方法としては、大きく示談・ADR(紛争処理センターなど)・調停・裁判の4つがあります。

  • 示談:裁判外で当事者同士が話し合いによる合意で解決を目指す
  • ADR:公正な第三者が関与して当事者同士の合意で解決を目指す
  • 調停:裁判所が関与して当事者同士の合意で解決を目指す
  • 裁判:裁判所が関与して解決を目指す

交通事故のほとんどのケースでは、まず最初に示談が解決方法として選ばれます。当事者同士の話し合いでは合意に至らず、示談不成立となった場合、次の解決方法として紛争処理センターなどのADR、調停、裁判が選ばれることが多いです。

以下は、ADR、調停、裁判の違いを「利用時の費用」「問題解決における当事者双方の合意の必要性」と言った観点でまとめた表です。

費用双方の合意
ADR不要必要*
調停必要必要
裁判必要不要

*示談あっ旋の場合

ADRは無料で利用できる点が、調停や裁判との大きな違いです。

また、あっ旋案や裁定は出されるものの、解決のためには当事者双方の合意または申立人側の同意が必要です。納得いかないあっ旋案や裁定で問題解決となってしまうことはありません。

示談・調停・裁判については、以下の関連記事でさらに詳しく解説しています。

紛争処理センターが取扱わない対象外ケースもある

交通事故紛争処理センターの利用ができるのは、ケガが完治したり後遺障害認定の審査結果が出たりしてからです。つまり、交通事故による損害額がすべて確定してからでないと利用できません。

また、交通事故紛争処理センターでは以下のようなケースはサポート対象外です。

対象外のケース

  • 加害者が自動車(原付バイク含む)でない交通事故
  • 自身が加入している保険への保険金請求に関する紛争
  • 後遺障害認定に関する紛争
  • 加害者が加入している保険が不明な交通事故

以下の場合も基本的にはセンターの利用対象外となりますが、加害者側の同意があれば、利用できる場合もあります。

基本的に対象外のケース

  • 加害者が任意保険に入っていない場合
  • 加害者が契約している任意保険の約款に、被害者の直接請求権に関する規定がない場合
  • 加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連、こくみん共済 coop(全労済)、交協連、全自共又は日火連以外である場合

※ 加害者の同意があれば利用できる場合あり

交通事故紛争処理センターを利用する流れ

法律相談の流れ

交通事故紛争処理センターを利用する際は、まず法律相談をします。法律相談の流れは次のとおりです。

  1. 電話で法律相談の予約をする
  2. 紛争処理センターから利用申込書・利用規定が届く
  3. 加害者側の任意保険会社に、紛争処理センターへの申し込みを伝える
  4. 相談日当日、担当弁護士と面談

それぞれの流れについて、詳しく見ていきましょう。

(1)電話で法律相談の予約をする

まずは、「センター所在地一覧」にて、お住まいの地域または事故発生場所を管轄する紛争処理センターを調べ、電話で法律相談の予約をします。

この際、交通事故の概要や加害者側の保険会社・保険担当者、相談内容を確認されるので、答えられるように情報をまとめておきましょう。

また、紛争処理センターの方から法律相談の候補日を提示されるので、事前にご自身のスケジュールも確認しておいてください。

(2)紛争処理センターから利用申込書・利用規定が届く

法律相談の日程が決まったら、紛争処理センターから利用申込書と利用規定が届きます。

法律相談当日に、以下の必要書類と一緒に持参しましょう。

  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 加害者側の情報(任意保険会社・担当者名など)がわかるもの
  • 加害者側から提示されている内容がわかるもの
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 休業損害証明書

必要書類については、詳しい説明が書かれた書類が利用申込書・利用規定とともに届きます。そちらもよくご確認ください。

(3)加害者側の任意保険会社に、紛争処理センターへの申し込みを伝える

すでに加害者側の任意保険会社と示談交渉をしている場合は、紛争処理センターの申し込みをしたことを伝えておきましょう。

法律相談ののち示談あっ旋が始まったら、加害者側の任意保険会社にも参加してもらうことになります。

(4)相談日当日、担当弁護士と面談

法律相談当日は、担当弁護士に状況などを伝え、問題点の整理とアドバイスをしてもらいます。

ここで担当弁護士が「示談のあっ旋が必要」と判断すれば、次回の日程が決められます。

場合によっては示談のあっ旋には至らず、アドバイスや他の相談機関の利用案内で終わることもあるでしょう。

示談のあっ旋の流れ

示談のあっ旋の流れは、次のとおりです。

  1. 紛争処理センターから参加者に来所要請
  2. 担当弁護士が当事者双方から主張を聞き取り解決案を作成

それぞれの流れを詳しく解説します。

(1)紛争処理センターから参加者に来所要請

法律相談から示談のあっ旋に移る場合、加害者側の任意保険会社に対しては、基本的に紛争処理センターが来所要請を出します。

一部例外はありますが、原則として被害者自身で加害者側の任意保険会社に来所を求める必要はありません。

(2)担当弁護士が当事者双方から主張を聞き取り解決案を作成

担当弁護士が双方から話を聞き取り、その内容を踏まえ、和解案を提示します。加害者側・被害者側双方が和解案に同意すれば問題は解決とされ、示談書が作成されるという流れです。

加害者側・被害者側どちらか一方でも和解案に同意せずあっ旋が不調に終わったら、14日以内に審査の申立てを行い、受理されれば審査に進みます

なお、交通事故紛争処理センターによれば、損害賠償に関する資料が整っているケースの場合、人身事故なら3回~5回程度のあっ旋で和解が成立しているとのことです。

物損事故ならもっと早く、2回程度のあっ旋で終了するそうです。

審査の流れ

審査の申立てをして、審査の開催日が決まったあとの流れは次のとおりです。

  1. 審査会が開催される
  2. 裁定が出され、14日以内に同意・不同意を回答する

それぞれについて詳しく解説します。

(1)審査会が開催される

審査では、被害者側・加害者側双方の出席のもと、審査会が行われます。
審査会の審査員は、交通事故紛争処理センターが選出した大学教授や弁護士などです。

改めて、事故の概要や争点・主張などを伝えましょう。

(2)裁定が出され、14日以内に同意・不同意を回答する

審査会の内容やこれまでに提出された書類などを踏まえて裁定が出されます。

被害者側が裁定に同意すれば、加害者側の同意・不同意には関係なく問題は解決とされます。裁定の同意・不同意は14日以内に回答してください。

被害者側が裁定に同意しなければ、問題は未解決のまま交通事故紛争処理センターのサポートは終了です。

交通事故紛争処理センターを利用するメリット

裁判よりも費用や時間がかからない

交通事故紛争処理センターを利用する場面として、当事者同士で示談交渉したが不成立になったというケースが挙げられます。

この場合は裁判に移行することもできますが、裁判だと訴訟費用がかかりますし問題が解決して裁判が終了するまでに時間がかかりがちです。

それに対して交通事故紛争処理センターは利用料が無料であり、裁判よりも早く問題が解決できることが多いです。

裁判費用については『交通事故裁判の費用相場は?加害者が払うもの?弁護士費用も相手に請求したい』の記事が参考になりますので、気になる方はあわせてご覧ください。

加害者側との知識・経験の差を埋められる

交通事故の示談交渉において、加害者側は保険担当者を代理人として立ててくることが多いです。

保険担当者は示談交渉の経験も示談金に関する知識も豊富なので、被害者側はどうしても不利になります。

しかし、交通事故紛争処理センターを利用して中立的な立場の弁護士が介入すれば、こうした経験・知識の差を埋めやすくなるでしょう。

被害者側の同意があれば問題を解決させられる

交通事故紛争処理センターでは、まず示談のあっ旋によって問題解決を図ります。この時点では、提示された解決案に対して被害者側・加害者側双方が同意しなければ問題は解決しません。

しかし、示談あっ旋が上手くいかなかった場合は、審査に進みます。ここでは、出された裁定に対して被害者側さえ同意すれば問題は解決となります。

当事者同士での示談は双方の合意がなければ成立しないため、この点も交通事故紛争処理センターを利用する際のメリットといえるでしょう。

交通事故紛争処理センターを利用するデメリット

被害者の味方というわけではない

交通事故紛争処理センターで加害者側と被害者側の間に入る担当弁護士は、あくまでも中立的な立場を守ります。

被害者の味方ではないため、必ずしも被害者に有利な解決案を提示するとは限りません。また、担当弁護士を選ぶこともできないため、弁護士に対して不安や不満を感じる可能性もあります。

被害者側の立場に立ったサポートをお求めの場合は、個人的に弁護士を立てて示談交渉をおこなうことがおすすめです。

弁護士を立てる際は費用がかかりますが、ご自身の保険に「弁護士費用特約」がついていれば、多くの場合費用の負担がなくなります。

弁護士費用特約については『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?』をご確認ください。

示談金の最大化は見込めない

交通事故紛争処理センターによる示談あっ旋や審査により、加害者側の当初の示談金提示額は増額する可能性があります。

しかし、最大限に増額させることは難しいでしょう。

示談金を最大限に増額させるには、例えば慰謝料を「弁護士基準」と呼ばれる過去の判例に沿った相場額まで引き上げる必要があります。

しかし、弁護士基準の金額は原則として裁判を起こした場合に認められるものです。

よって、交通事故紛争処理センターが示談あっ旋や審査で、弁護士基準ほど高額な示談金を提案してくることはほぼありません。

増額の余地を残した示談金額にならざるを得ない点は押さえておきましょう。

弁護士基準の慰謝料について詳しくは『交通事故の慰謝料は弁護士基準で計算!慰謝料相場と増額成功のカギ』の記事をご覧ください。

なお、弁護士基準の慰謝料額は、示談交渉で弁護士を立てることによって獲得できる場合があります。

必ずしも問題が解決するとは限らない

交通事故紛争処理センターで問題を解決するには、示談あっ旋で提示された解決案に被害者側・加害者側双方が同意するか、審査会の裁定に被害者が同意することが必要です。

場合によっては交通事故紛争処理センターでの問題解決はできず、訴訟などに移行する必要があるでしょう。

センターに出向いての面談・手続きが必要

交通事故紛争処理センターでの面談・手続きは、センターに出向いて行わなければなりません。

センターの支部・相談室は全国11拠点にありますが、自宅から遠い場合は利用しにくいでしょう。

紛争処理センター利用前には弁護士への相談・依頼もおすすめ

被害者の味方として示談金の最大化を目指す

交通事故紛争処理センターで加害者と被害者の間に入る弁護士は、その役割上中立的な立場を保つ必要があります。

一方で、ご自身で依頼した弁護士はご自身の味方として活動します。示談成立まで二人三脚で進んでいくパートナーとして、ご依頼者様の意向をできる限り汲み取ったサポートをするのです。

また、先ほど紛争処理センター利用のデメリットとして「弁護士基準の示談金は原則として裁判で認められる金額なので、交通事故紛争処理センターの利用で獲得するのは難しい」と解説しました。

これに対して示談交渉で弁護士を立てれば、示談段階でも弁護士基準に近い金額獲得が見込めます。

弁護士は訴訟を起こすこともできる専門家であるため、弁護士が弁護士基準の金額を提示すれば加害者側は受け入れることも多いのです。

よって、弁護士に依頼すれば示談金額の最大化も期待できるでしょう。

事務所に出向かず相談・依頼が可能

先述の通り、交通事故相談センターを利用する場合は全国11ヶ所にある拠点・相談室に出向く必要があります。

それに対して弁護士のサポートは、法律事務所に出向かずとも受けられるケースが多いです。

ご依頼内容などにもよりますが、電話やメール、LINEなどのやりとりのみで相談・依頼から案件解決まで完結させることも可能です。

弁護士への依頼であれば、忙しくて依頼先まで出向く時間がない、遠方で依頼先に行くのが大変という場合でも負担なくご利用いただけるのです。

費用負担も軽減できる

交通事故紛争処理センターの利用が無料であるのに対して、弁護士への相談・依頼には費用がかかります。

しかし、ご自身の加入する保険に弁護士費用特約がついていれば、弁護士費用は保険会社に負担してもらえます。

ご家族の保険や火災保険、クレジットカードの保険などについている弁護士費用特約でも使える場合があるので確認してみてください。

また、弁護士費用特約がなくても、アトム法律事務所のように相談料・着手金を原則無料としている事務所もあります。

成功報酬は発生しますが、獲得示談金の中から支払えるため費用を工面する手間が省けるでしょう。

成功報酬を差し引いても、弁護士を立てたほうがより多くの示談金額が得られることは多いです。

どれくらいの弁護士費用がかかり、どれくらいの示談金獲得が見込めるのかは無料相談の中で確認できるので、お気軽にお問い合わせください。

サポート範囲が幅広い

交通事故紛争処理センターでは、基本的に示談成立のサポートをしてもらえます。

これに対して弁護士は、示談交渉の代理をします。弁護士なら示談成立までの交渉を一任できるため、示談成立までに生じるご依頼者様の精神的・時間的負担を大幅に軽減できるでしょう。

また、早い段階でご依頼いただいた場合は後遺障害認定の申請手続きや、治療過程で生じやすい加害者側とのトラブル対処なども一任できます。

交通事故紛争処理センターでは対応していない自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故、加害者が無保険の事故でも対応できる場合もあり、より幅広いケースに対応できるのです。

紛争処理センターへの申立ても依頼可能

交通事故紛争処理センターへの申立てを弁護士に依頼することもできます。

弁護士に依頼すれば、そもそも示談によって納得のいく示談金が得られやすくなるものの、場合によっては、弁護士による示談でも難航するケースもあります。

被害者として「裁判するほどではないが、このまま納得いかない示談で終えたくない」という気持ちがある場合、弁護士による紛争処理センターへの申立てという選択を選ばれることがあるのです。

弁護士が代わりに紛争処理センターへの申立てを行うことで、デメリットのひとつである「センターに出向いての面談・手続き」という点はカバーされます。

また、弁護士であれば、本当に紛争処理センターで済む件なのか、裁判に持ち込むべき件なのかといった点の判断も任せられるでしょう。ご自身にとって一番納得のいく結果につなげられる方向を弁護士と相談しながら決めてください。

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弁護士への相談・依頼をまだ迷われている場合は、『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』の記事がおすすめです。記事をお読みいただければ、弁護士に依頼することで得られるポイントが見えてくるでしょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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