交通事故の示談とは?交渉の流れと注意点|これだけ読めば安心!

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交通事故の示談注意点

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

示談とは、話し合いで賠償問題を解決する手続きのことです。
交通事故の被害者は、加害者側との示談で損害賠償金を決めていくことになるでしょう。

この記事では、交通事故の示談について被害者が知っておきたいことを網羅的に解説しています。

交通事故の示談の相手は、多くの場合、「示談交渉のプロ」である加害者側の任意保険会社の担当者です。示談交渉に慣れていない被害者では、思うように話し合いを進められず、不利な条件で示談成立となってしまうこともあるでしょう。

しかし、この記事を読めば流れや注意点がわかり、示談交渉に備えられます。納得のいく示談をむかえるためにも、交通事故被害者の方はぜひご一読ください。

交通事故の示談とは?

示談とは、民事上の争いごとを当事者同士が裁判外で話し合い、合意することで解決を目指す手続きのことです。示談は民法695条で定められた「和解契約」にあたります。

交通事故の示談では、示談金の金額、示談金の支払い時期、過失割合などを決めることになるでしょう。

まずは、交通事故の示談の基礎知識を確認していきましょう。

示談とは話し合いで賠償問題を解決すること

示談とは、民事上の争いごとを当事者同士が裁判外で話し合い、合意することで事件を解決する手続きのことです。

つまり、交通事故における示談とは、「交通事故で生じた賠償問題を当事者同士の話し合いで解決すること」と言えるでしょう。

示談交渉の相手は、加害者が任意保険に入っているなら任意保険会社の担当者、加害者が任意保険に入っていないなら加害者本人となります。

交通事故の賠償問題は、まずは示談によって解決を目指すことが多いです。

賠償問題は民事裁判でも解決を目指せます。しかし、民事裁判は手続きが複雑で、解決までに長い時間がかかることが予想されます。

交通事故については過去の判例が豊富に蓄積されていたり、自賠責保険による被害者への最低限の保護があったり、任意保険会社の対応が充実していたりするため、まずは示談で早期解決を図ることが多いのです。

また、示談は当事者が合意していればどのような内容でも成立させることが可能です。よって、示談は自由度が高い解決方法とも言えます。

示談交渉が難航し、合意が難しいようであれば、民事裁判やADR(裁判外紛争解決手続き)で解決を目指すことになるでしょう。

示談が成立したら法的な効力が生じる

示談は、民法695条に規定された和解契約の一種です。
よって、示談で決まった内容は法的な効力を持ちます。

和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

民法695条

示談が一度成立すると、あとから撤回や再交渉をすることは基本的にできません
示談で交通事故の解決を目指す際は、安易に合意せず、内容をしっかり吟味するようにしましょう。

示談で話し合うのは示談金や過失割合など

交通事故の示談で話し合われる主な内容は、示談金の金額、内訳、支払い方法、条件・時期や、過失割合などです。

上記のうち、とくに重要な「示談金」と「過失割合」を詳しく見ていきましょう。

示談金について

交通事故の被害者は、さまざまな財産的損害や精神的損害を受けることになります。

被害者が受けた損害については、加害者側に損害賠償金を請求することが可能です。示談で決められた損害賠償金は「示談金」とも呼ばれます。示談金についてより詳しく知りたい方は、『交通事故の示談金』の記事をご覧ください。

交通事故の示談金の主な内訳は以下のとおりです。

交通事故の示談金の主な内訳

  • ケガを負ったことによる損害
    • 入通院慰謝料
    • 治療費
    • 付添看護費
    • 入院雑費
    • 通院交通費
    • 器具・装具費
    • 休業損害 など
  • 後遺障害を負ったことによる損害※
    • 後遺障害慰謝料
    • 後遺障害逸失利益 など
  • 亡くなったことによる損害
    • 死亡慰謝料
    • 死亡逸失利益
    • 葬儀費用 など
  • 物が壊れたことによる損害
    • 車両の修理費 など

※後遺障害とは、交通事故で残った後遺症のうち、定められた等級に認定された症状のこと。

上記のうち、とくに重要な「慰謝料」「治療費」「休業損害」「逸失利益」について、詳しく解説していきます。

慰謝料

慰謝料とは、交通事故によって生じた精神的な苦痛に対する補償のことです。

慰謝料は「交通事故にあったとき受け取れるすべてのお金」と誤って理解されることがありますが、実際には示談金の一部になります。

交通事故の慰謝料は示談金の一部

交通事故の慰謝料には、以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料:事故でケガを負った精神的苦痛の補償
  • 後遺障害慰謝料:事故で後遺障害が残った精神的苦痛の補償
  • 死亡慰謝料:事故で亡くなった精神的苦痛の補償

交通事故の慰謝料の基礎知識やもらえる金額は『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

治療費

治療費とは、具体的には応急手当費、診察料、投薬料、手術料などを指します。

交通事故によって負ったケガの治療費は、交通事故と関係がある部分については実費全額を請求できます。ただし、整骨院での治療や温泉療法などは、交通事故との関係が争いになりやすいので注意が必要です。

交通事故の治療費について詳しく知りたい方は、『交通事故の治療費は誰が支払う?』の記事をご覧ください。

休業損害

休業損害とは、交通事故によるケガの影響で仕事を休んだため減った収入の補償です。

休業損害は、会社員や自営業の方だけではなく、主婦や一部の無職の方も請求可能です。

休業損害の計算方法は、関連記事『交通事故の休業損害は職業別に計算方法がある』で詳しく解説しています。休業損害の見込額がわかる自動計算機もありますので、ぜひご確認ください。

逸失利益

逸失利益とは、交通事故で亡くなったり後遺障害を負ったりしたため減ってしまう将来的な収入の補償です。

逸失利益とは本来の労働能力で得られたはずの収入のこと

逸失利益は示談金の中でとくに高額になりやすい費目のひとつです。示談で逸失利益について話し合う際は、金額や計算方法をよく吟味する必要があるでしょう。

逸失利益の計算方法を詳しく知りたい方は、『逸失利益の計算方法|計算機や計算例つきでわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

過失割合について

過失割合とは、交通事故が発生した責任が当事者双方にどのくらいあったのかを示した割合のことです。多くの交通事故では、被害者にも過失割合がつくことになります。

過失割合は、示談金の金額に大きく影響します

たとえば、過失割合9対1(加害者:被害者=9:1)の場合であれば、被害者が被った損害のうち90%を加害者が賠償し、残りの10%は被害者自身が負担することになります。加えて、被害者も加害者が被った損害のうち10%を賠償しなければなりません。

過失割合に納得できないまま示談に応じてしまうと、示談金が必要以上に減額されることになるので注意してください。

過失割合がどのように決まるかについては、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方と示談のコツ』で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

示談にかかる期間は2か月~1年ほど

交通事故の示談にかかる期間は、物損事故や軽傷の事故では2か月~半年ほど、後遺障害が残る事故や死亡事故では半年~1年ほどが目安となります。

上記の期間はあくまで目安であり、示談金の金額や過失割合で争う場合は、さらに長い期間となることもあります。

なお、交通事故の示談を開始するのは、事故によるすべての損害が確定し、示談金を計算できるようになってからです。

たとえば、軽傷の事故では治療を終えるまでは入通院慰謝料や治療費、休業損害などが確定しませんし、後遺障害が残る事故では後遺障害認定の結果が出るまでは後遺障害慰謝料や逸失利益が確定しません。交通事故の発生から解決まで長い時間がかかることは、あらかじめ留意しておきましょう。

例外的に、人身事故では物損部分については早めに損害が確定するので、人身部分に先んじて示談することもあります。

交通事故の示談にかかる期間を詳しく知りたい、示談を早く終わらせたい方は、『交通事故の示談にかかる期間の目安は?早く終わらせたいときの対処法』の記事をご参考ください。

交通事故の発生から示談成立までの流れ

交通事故の発生から示談成立までの流れは、以下のとおりです。

  1. 事故直後の対応をとる
  2. 治療を受ける
  3. 症状固定または完治の診断を受ける
  4. 後遺障害の等級認定を受ける
  5. 示談交渉をはじめる
  6. 示談成立(示談書の取り交わし)
交通事故の流れ

ここからは、上記の流れにそって、具体的にすべき対応や注意点を解説していきます。

なお、関連記事『交通事故の発生から解決までの流れ』では、交通事故の解決までの流れをコンパクトにまとめて解説しています。あわせてご覧いただければ、交通事故の流れについて理解が深まるでしょう。

(1)事故直後の対応をとる

交通事故が起こったら、負傷者の救護と現場の安全確保、警察への通報を必ず行います。これらはすべて、道路交通法72条で定められた義務です。

上記の対応と前後して、事故状況の記録、事故の加害者との情報交換、保険会社への連絡を行いましょう。

なお、事故現場で加害者と示談するのは避けてください。繰り返しになりますが、示談を開始するのは事故による損害が確定してからです。

(2)治療を受ける

交通事故にあったら、必ずすぐに病院で診察を受けましょう

痛みやケガがない場合でも、念のため受診しておくことが大切です。交通事故の発生から受診まで時間が空くと、ケガが交通事故で負ったものなのか、その後の日常生活で負ったものかわからなくなるため、治療費や慰謝料を支払ってもらえないおそれがあります。

交通事故の治療は、医師の指示を守り、独断で中断したり終了したりせずに続けてください。整骨院に通いたい場合は、あらかじめ医師の許可を受けるようにしましょう。

交通事故の治療で気を付けるべきポイントを知りたい方は、『交通事故の治療の流れ|整骨院と整形外科のどちらに通うのが正解?』の記事をあわせてご確認ください。

(3)完治または症状固定の診断を受ける

ケガの治療は、医師から完治または症状固定の診断を受けるまで続けます。

完治とは、症状が回復して事故前の状態まで戻った状態です。完治すれば損害額が確定するので、示談をはじめられます。

一方、症状固定とは、このまま治療を続けても症状が改善しなくなった状態のことです。症状固定と診断されれば、残った症状について後遺障害等級認定を受け、後遺障害分の示談金獲得を目指しましょう。

症状固定について詳しく知りたい場合は、関連記事『症状固定とは?タイミングや症状固定後の流れ、誰が決めるかを解説』の記事をご確認ください。

(4)後遺障害等級認定の申請をする

医師から症状固定と診断されたら、後遺障害認定の申請を行いましょう。後遺障害等級に認定されれば、示談金の後遺障害に関する費目を請求できるようになります。

後遺障害等級は、症状の部位や程度に応じて1級~14級まであります。どの等級に認定されるかで受け取れる示談金の金額が変わるので、後遺障害認定の申請をする際は入念な準備を行う必要があるでしょう。

交通事故の後遺障害認定に関しては、『交通事故の後遺障害認定|認定の確率を上げるポイントと手続きを解説』の記事をご覧ください。

(5)示談交渉をはじめる

医師から完治と判断されるか後遺障害認定の結果が出たら、すべての損害が確定するので、示談交渉を開始できます。

示談交渉は、通常は加害者側の任意保険会社から示談案の提示を受けてスタートします。

加害者側が提示した示談案に納得できれば、示談書の取り交わしに進みます。示談案に納得できない場合は、被害者から示談案を提示して交渉しましょう。被害者側と加害者側がそれぞれ譲歩し、双方が示談内容に納得すれば、示談書の取り交わしに進みます。

のちほど解説しますが、加害者側の任意保険会社が提示する示談金は、被害者が本来受け取れる金額よりも大幅に低いことが多い点には注意してください。

示談が一度成立すると、基本的に撤回することはできません。提示された金額を「そういうものか」と鵜呑みにせず、ご自身で相場を確認してみることが大切です。

ご自身のケースで本来受け取れる金額はいくらか正確に知りたい場合は、弁護士に相談することもおすすめです。

(6)示談成立(示談書の取り交わし)

示談交渉で取り決めた内容に当事者双方が合意したら、「示談書」を取り交わすことで示談成立となります。

なお、加害者側の任意保険会社と示談交渉している場合は、示談書の代わりに「免責証書」が送られてくることが多いです。示談書と免責証書の効果にはほとんど違いがないので、示談書の代わりに免責証書を取り交わしても問題ありません。

送られてきた示談書・免責証書の内容を確認し、問題がなければ署名・捺印のうえ、保険会社保管分を返送しましょう。

その後、示談書・免責証書に記載された期日までに、示談金から既払金を差し引いた金額が振り込まれます。多くの場合は、示談成立から約2週間で振り込まれるようです。

加害者側からの支払いが終われば、民事上の賠償問題は解決されたという扱いになります。

関連記事『交通事故の示談書の書き方|記載すべき重要7項目』では、示談書について詳しく解説していますので、気になった方はあわせてご確認ください。

交通事故の示談で損しないための注意点

ここからは、交通事故の示談で注意すべきポイントについて解説します。
示談を円滑に進めるためにも、どのような点に気をつければよいか確認しておきましょう。

また、交通事故の示談では何らかのトラブルが発生することも少なくありません。関連記事『交通事故の示談交渉トラブル8つと解決方法』をご一読いただき、対処する準備をしておくこともおすすめします。

提示された示談金額をそのまま受け入れない

加害者側の任意保険会社が提示する示談金は、適正な金額ではないことがほとんどです。

よって、提示された金額を「そういうものか」と受け入れず、被害者自身でも示談金を計算してみることが大切です。

交通事故の示談金は、以下の3つの算定基準のいずれかを用いて算出されます。

交通事故の示談金の算定基準

  • 自賠責基準
    自賠責保険会社が用いる基準。
    交通事故の被害者に補償される最低限の金額が計算される。
  • 任意保険基準
    任意保険会社が用いる基準。
    保険会社ごとに独自に定められており、公開されていない。
    任意保険基準で計算すると、自賠責基準とほぼ同額~やや高額になる。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士や裁判所が用いる基準。
    過去の判例をもとに定められている。
    法的に適正であり、被害者が受け取るべき本来の金額と言える
慰謝料相場の3基準比較

3つの算定基準のうち、もっとも高額かつ法的に適正な金額を算定できるのは弁護士基準(裁判基準)です。

一方、加害者側の任意保険会社は、任意保険基準で計算した示談金を提示してきます。この金額を弁護士基準で計算し直すと、2倍~3倍に増額されることも珍しくありません

下記の計算機を使えば、示談金のうち慰謝料と逸失利益について、弁護士基準で計算した金額がわかります。示談前に確認しておき、相場より低い金額で合意してしまうことを防ぎましょう。

交通事故の示談金の相場を詳しく知りたい場合は、『交通事故の示談金相場は?』の記事をお役立てください。

加害者側の提示額が相場より低いならどうする?

加害者側の任意保険会社が提示した示談金が相場より低い場合、増額交渉を行いましょう。

しかし、被害者自身で増額交渉を行っても、加害者側の任意保険会社が認めてくれることはほとんどありません。

加害者側の任意保険会社は、できるだけ支払う金額を減らそうとしてきます。
任意保険会社の担当者は示談交渉の経験が豊富であるため、「この金額が上限である」と断ったり、専門用語を多用してはぐらかしたりするのです。

なかなか示談金の増額が叶わない場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

被害者が弁護士を立てれば、加害者側の任意保険会社は態度を軟化させることが多いです。これは、弁護士の請求を拒否すれば、裁判に発展することがあるためです。

裁判になれば、示談よりも多くの時間がかかるうえ、示談交渉で請求された金額より高い損害賠償金の支払い義務を課される可能性があります。よって、裁判に発展するならば、示談交渉で増額に応じた方がよいと判断されるのです。

示談が成立したら基本的に撤回不可

先述のとおり、示談による合意には法的な拘束力が生じます。示談後にやり直しや撤回をすることは、原則的に認められません

示談が一度成立すると、あとから示談金に不満を覚えても、追加の請求はできないのです。示談を締結する際は、内容を慎重に検討するようにしましょう。被害者自身では判断に迷うなら、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

なお、詐欺や脅迫などによって結ばれた示談や、被害者の無知に付け込んだ非常識な内容での示談は、やり直しや撤回をできる可能性があります。

どのような場合に示談の撤回が認められるかについて知りたい方は、関連記事『示談成立後、撤回や再請求は可能?』をお読みください。

事故直後に当事者同士で示談するのは危険

交通事故の直後に当事者同士で示談することは避けてください。

示談は口頭による合意でも成立し、あとから撤回できなくなります。事故現場で焦って示談をすると、損害が確定したあとに妥当な示談金を請求できなくなってしまうのです。

繰り返しになりますが、示談は事故による損害がすべて確定してから行いましょう。

関連記事『交通事故の示談はその場でしてはいけない』では、その場で示談をすることで賠償金に与える影響を説明していますので、ぜひあわせてお読みください。

交通事故の示談に関するよくある質問

次に、交通事故の被害者の方からよくある示談についての質問にお答えしていきます。

Q1.示談交渉ではどんな伝え方をすれば効果的?

はじめて交通事故にあったため、示談交渉で加害者側にどのような伝え方をすれば効果的なのかわからない被害者の方も多いと思われます。

示談交渉をする際は、以下のような伝え方を心がけることをおすすめします。

  • 「○○円増額してほしい」といったように、具体的な表現をする
  • 領収書や過去の類似事案の判例など、主張の根拠を示す
  • 心証を悪くして交渉の難易度を上げないためにも、感情的にならない

示談交渉では、「つらい思いをしたので慰謝料をもっと増やしてほしい」「このお金も支払ってほしい」と被害者側の希望をただ伝えるだけではなかなか主張が通りづらいです。

また、被害者が交通事故の損害賠償問題に疎いことが伝わってしまうと、加害者側の任意保険会社がより強引な態度で交渉を進めようとしてくることもあります。

加害者側を納得させるためにも、具体的かつ根拠のある、説得力を持つ伝え方をすることが大切です。

交通事故の被害者が実践できる示談のテクニックについては、『交通事故示談のテクニック7つ|自力で示談金増額を成功させる交渉術』の記事でより詳しく紹介しています。ぜひあわせてご一読ください。

Q2.経済的に苦しいので示談前にお金がほしいときは?

交通事故の示談には2か月~1年程度かかりますし、示談開始までにも長い期間がかかることがあります。示談金を受け取れるのは示談が成立してからなので、経済的に苦しくなってしまう被害者の方もいらっしゃるでしょう。

示談前にお金を受け取る方法には以下のようなものがあります。

  • 加害者側の自賠責保険会社に「被害者請求」をする
  • 加害者側の自賠責保険会社に「仮渡金請求」をする
  • 加害者側の任意保険会社に「内払い金」を請求する

被害者請求とは、被害者自身で自賠責保険に支払いを請求することです。

加害者が任意保険に入っている場合、通常は任意保険会社から自賠責保険分もまとめた金額が支払われますが、被害者請求をすれば、示談に先んじて自賠責保険分のお金を受け取れます。自賠責保険から支払われる金額は法令で決まっているため、示談成立を待つ必要がないのです。

被害者請求のメリットや手続きについては、『交通事故の被害者請求とは?メリットや請求方法、必要書類を解説』の記事をご覧ください。

また、仮渡金請求とは、示談成立前でも法令で決まった金額を自賠責保険から受け取れる制度のことです。

内払い金は、任意保険から示談金の一部を示談成立前に受け取れるお金のことです。制度化されているものではないため、内払いをしてもらえるかは交渉次第になります。

内払い金と仮渡金については、『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』の記事で詳しく解説しています。

Q3.示談条件に納得できなくて示談しないとどうなる?

加害者側が提示してきた示談条件に納得できず、示談しない場合、加害者側に損害賠償する権利が時効で消滅してしまう可能性があります。

交通事故の損害賠償請求権が時効をむかえるまでの期間は、以下のとおりです。

損害賠償請求権の消滅時効※

損害など期間
人身に関する
(後遺障害による損害以外)
事故発生日の翌日から5年
人身に関する損害
(後遺障害による損害)
症状固定日の翌日から5年
人身に関する損害
(死亡による損害)
死亡した日の翌日から5年
物的な損害事故発生日の翌日から3年
加害者不明の損害事故発生日の翌日から20年※※
保険会社に対する保険金の請求起算日から3年

※2017年4月1日以降に発生した事故の場合。
※※2017年3月31日以前に発生した事故にも適用される可能性がある。
また、途中で加害者が判明した場合は、判明した日の翌日を起算日とし、物損部分は3年、人身部分は5年で時効となる。

示談の期限・時効を詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故示談は期限(時効)までに成立を!期限の長さや時効の延長方法を解説』もご覧ください。

交通事故で示談しない場合は、民事裁判やADRで解決を目指すことになるでしょう。ただし、弁護士を立てれば加害者側の任意保険会社の態度が軟化し、示談で解決を目指せることも多いです。

交通事故で示談したくないと思った場合は、『交通事故で示談しないとどうなるのか?リスクや示談拒否したいときの考え方』の記事をご一読ください。示談したくない理由ごとの考え方や、解決策がわかります。

Q4.示談と加害者の刑事処分の関係は?

交通事故の加害者には、以下の3つの責任が問われます。

交通事故の加害者が問われる責任

責任責任の取り方(例)
民事責任示談などを通じて被害者の損害を賠償する
刑事責任罰金や懲役といった刑事処分を受ける
行政責任運転免許の停止や違反点数付与といった行政処分を受ける

交通事故の民事責任と刑事責任・行政責任は別のものです。示談が成立し、民事責任が果たされたとしても、加害者に刑事処分・行政処分が科されることはあります。ただし、裁判所などが刑事処分を決定する際に「民事責任を果たしている事実」を考慮し、処分が軽くなることもあるでしょう。

なお、交通事故の加害者が問われる3つの責任のうち、被害者が直接関われるのは民事責任だけです。刑事責任や行政責任は国や行政が加害者に問うものだからです。

加害者への処罰感情があり、示談したくないと思われる方も多いですが、示談しない場合、示談金を受け取るのが遅くなる、最終的に時効をむかえて賠償をしてもらえないといった事態につながりかねません。被害者が直接関与できる民事責任の追及に注力し、しっかり責任を果たしてもらうことをおすすめします。

Q5.加害者が無保険の場合の示談はどうなる?

加害者が無保険(任意保険未加入)の場合、基本的に加害者本人と示談をすることになります。ただし、加害者が示談に応じない、お互い感情的になって示談がまとまらないといったトラブルに発展することも多いです。

また、加害者本人に示談金を支払う経済力がなく、適正な金額を受け取れない可能性も高いでしょう。

被害者本人と加害者本人で直接交渉することは難しいため、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、示談金がきちんと支払われるような工夫もしてもらえるでしょう。

加害者が無保険の場合の対応については、『交通事故の相手が無保険ならどうする?慰謝料請求6つの対応』の記事でまとめています。

交通事故の示談を弁護士に依頼するメリット3つ

交通事故に関する賠償問題を弁護士に依頼するメリットは多くあります。
この章では、数あるメリットの中でも示談に関するものを厳選して3つ紹介します。

本記事で紹介した以外のメリットも知りたい方は、関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット』もご覧ください。

(1)手続きをすべて任せられる

交通事故の示談交渉の相手は、多くの場合で加害者側の任意保険会社の担当者になります。

加害者側の任意保険会社の担当者は、示談交渉の実務に精通しています。
被害者自身で示談交渉を行うと、加害者側の主張に適切に対処できなかったり、高圧的な態度を取られてストレスを感じたりする場面が多くなるでしょう。

交通事故の示談を弁護士に依頼すれば、被害者の心理的負担は大きく減ります

面倒な示談交渉の手続きを弁護士に任せられるので、被害者は社会復帰に集中できるようになるのです。

また、示談交渉の相手が弁護士である場合、加害者側の対応が変わる可能性も高いです。
その結果、被害者側の主張を受け入れてもらいやすくなるでしょう。

示談交渉を弁護士が行うことによって加害者側がどのように対応を変えるのかは、関連記事『交通事故では弁護士に示談交渉を依頼すると相手の対応が変わる』で具体的に説明しています。

(2)示談金の大幅な増額が期待できる

先述のとおり、交通事故の示談金を計算する基準は複数あります。

加害者側の任意保険会社は、任意保険基準で計算した示談金を提示してくるでしょう。
この金額は、弁護士基準で計算し直せば2倍~3倍に増額されることが期待できます。

しかし、被害者自身で交渉をしても、加害者側の任意保険会社が弁護士基準で計算した示談金を認めることはほとんどありません。「この金額が上限」といったさまざまな理由をつけて反論されてしまうでしょう。

これに対し、弁護士が示談交渉をすれば、弁護士基準で計算した示談金を認めてもらえる可能性が高くなります

弁護士が示談交渉を行えば、加害者側の任意保険会社は裁判を恐れて態度を軟化させます。
実際にアトム法律事務所が受任した事例から、弁護士が示談交渉をして示談金が増額された例を厳選してご紹介しましょう。

事例(1)むちうちで後遺障害なし

傷病名頸椎捻挫
後遺障害等級非該当
当初の提示額41万円
最終的な回収額159万円
(118万円の増額)

事例(2)骨折で後遺障害12級

傷病名左足関節骨折
後遺障害等級12級13号
当初の提示額347万円
最終的な回収額750万円
(403万円の増額)

事例(3)脳挫傷で後遺障害7級

傷病名脳挫傷、頭蓋骨骨折など
後遺障害等級併合7級
当初の提示額3,537万円
最終的な回収額7,350万円
(3,813万円の増額)

詳しくは後述しますが、自己負担なしで弁護士に依頼することもできますし、弁護士費用がかかったとしても弁護士に依頼した方が手元にはいる金額が増えることも非常に多いです。

あとから「本来ならもっと多くの示談金をもらえていたのに…」と悔やまないためにも、一度弁護士への無料相談を利用し、依頼すべきか検討してみることをおすすめします。

弁護士の介入で示談金の増額が期待できる

(3)示談金を早めに受け取れる

交通事故の示談金は、示談成立後に支払われます。
よって、示談交渉が長引くと、示談金の受け取りが遅くなってしまいます。

被害者自身で示談交渉を行うと、示談成立まで時間がかかることが少なくありません。
示談交渉が長引く原因はさまざまですが、示談金や過失割合の妥当な相場がわからないケース、加害者側の主張のどの部分が不当か判断できないケースがとくに多いでしょう。

交通事故に精通した弁護士ならば、示談金や過失割合の妥当な相場を熟知しています。
また、加害者側の主張の不当な部分もただちに指摘し、反論することができるでしょう。

弁護士に依頼すれば、交渉を効率的に行うことで、スムーズな示談成立と示談金受け取りを目指せるのです。

示談金を早く受け取りたいため、不本意な条件でも示談してしまう方は少なくありません。
被害者側の主張を最大限に通しつつ、早期の示談金受け取りを目指すのであれば、弁護士に依頼するとよいでしょう。

デメリットの「弁護士費用がかかる」は解消可能

弁護士に依頼することのデメリットとして、弁護士費用がかかることがあげられます。

しかし、弁護士費用は「弁護士費用特約」を使うことで実質無料にできるのです。

弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約のことです。
弁護士費用特約を使えば、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社が負担してくれます。

弁護士費用が合計300万円を超えることは、示談金が数千万円にならない限りほぼありません。よって、弁護士費用特約を使えば、弁護士費用が実質無料になると言えるのです。

弁護士費用特約とは保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約のこと

弁護士に依頼しようか迷っている方は、まずご自身の保険契約状況を確認してみましょう。

弁護士費用特約は、自動車保険、火災保険、クレジットカードなどに付帯されていることがあります。また、被害者自身の保険だけではなく、被害者の家族が加入している保険に付帯されている場合も、利用できることが多いでしょう。

弁護士費用特約のメリットや使い方については、『交通事故の弁護士費用特約|使い方とメリット&デメリット!加入の必要性は?』の記事をご確認ください。

なお、弁護士費用特約を使えない場合でも、弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増えることは多いので、弁護士への無料相談で見積もりを取ってみることをおすすめします。

弁護士費用以外のデメリットは?

「弁護士に依頼するデメリットは、弁護士費用以外にもあるのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。

たとえば、「時間と手間がかかるのでは」「大げさだと思われるのでは」といった不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

しかし、デメリットと思われる事柄が、実は思い過ごしであることは多いです。

弁護士依頼のデメリットが気になる方は、『交通事故を弁護士に相談するデメリットと解決策!相談すべきかの判断基準は?』の記事をご確認ください。

交通事故の示談まとめ

  • 示談とは、当事者同士の話し合いで賠償問題を解決すること。
  • 示談では、主に示談金や過失割合について話し合われる。
  • 示談交渉は、一般的に治療や後遺障害認定が終わったあとに開始され、示談書を交わして示談金が振り込まれることで終了する。
  • 加害者側が提示する示談金は、本来の相場よりも大幅に低額であることが多い。
  • 弁護士に示談交渉を依頼すれば、示談金の増額などのメリットが得られる。

ある日いきなり交通事故の被害者になってしまい、示談について不安や悩みを抱えている方は少なくありません。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。