交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点!示談の完全ガイド
交通事故の賠償問題は、基本的に加害者側との示談によって解決されます。
しかし、具体的にどのような内容を、どのような流れで話し合うのかわからない人は多いでしょう。
この記事では、交通事故の示談について被害者が知っておきたいことを網羅的に解説しています。
この記事を読んで示談の進め方や注意点を理解し、示談交渉に備えておきましょう。納得のいく示談をむかえるためにも、交通事故の被害者の方はぜひご一読ください。
交通事故の示談とは?|決めることやかかる期間
交通事故の被害者がおさえておくべき「示談の基礎知識」を簡単にまとめています。交通事故の示談がもつ意味や、示談で決めること、示談にかかる期間をみていきましょう。
示談とは示談金や過失割合について話し合うこと
交通事故における示談とは、裁判ではなく当事者同士の話し合いによって、賠償問題の解決を目指す手続きです。
主に示談金や過失割合について話し合い、双方が合意したら示談は成立です。
- 示談金
- 損害賠償金のこと。示談で話し合って決める損害賠償金なので、「示談金」と呼ばれる。
- 過失割合
- 交通事故が起きた責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか割合で示したもの。
- 自身についた過失割合分、受け取れる示談金が減額される。
示談交渉の相手は、加害者が任意保険に入っているなら任意保険会社の担当者、加害者が任意保険に入っていないなら加害者本人です。
なお、示談では他にも精算条項や支払い期日について話し合います。示談内容について詳しくは『交通事故の示談内容は?』にてご確認ください。
示談金がもらえるのはいつ?
示談金を受け取れるのは基本的に、示談成立後です。それまでにまとまったお金が必要な場合は、以下の関連記事を参考に手続きをご検討ください。
関連記事
- 加害者側の自賠責保険から、示談金の一部を早く受け取る:交通事故の被害者請求とは?
- 加害者側の任意保険から、示談金の一部やケガに応じた金額を早く受け取る:内払い金・仮渡金を解説
交通事故の示談金の内訳と正しい相場を把握する方法
交通事故の示談金の主な内訳は以下のとおりです。
交通事故の示談金の主な内訳
- ケガを負ったことによる損害
入通院慰謝料、治療費、通院交通費、入院雑費、付添看護費、休業損害など - 後遺障害を負ったことによる損害※
後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益 - 亡くなったことによる損害
死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用など - 物が壊れたことによる損害
車両の修理費
※後遺障害とは、交通事故で残った後遺症のうち、定められた等級に認定された症状のこと。
示談金額は、基本的には実費を請求するか、計算式に沿った金額を請求します。
たとえば慰謝料なら、過去の判例に基づく金額基準(弁護士基準)があり、それに沿って計算すれば適正な慰謝料相場が大まかにわかります。
しかし、加害者側はそれとは別の基準に沿った金額を提示してきます。弁護士基準の金額より大幅に低いことが多いので、鵜呑みにせず増額を交渉しましょう。
示談金の相場については『交通事故の示談金相場は?一覧表や増額のコツ、示談交渉の注意点を解説』で解説していますが、以下の計算機からも慰謝料・逸失利益の相場が確認できます。
過失割合がどのように決まるかについては、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順』で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
示談にかかる期間は2か月~1年ほど
交通事故の示談にかかる期間は、物損事故や軽傷の事故では2か月~半年ほど、後遺障害が残る事故や死亡事故では半年~1年ほどが目安となります。
上記の期間はあくまで目安です。示談金の金額や過失割合について加害者側と揉めた場合は、さらに長い期間となることもあります。
特に重い後遺障害が残ったり被害者が死亡したりして示談金が高額になるケースや、事故発生時の状況について当事者間で認識の違いがある場合などは、揉めて示談が長引きやすいでしょう。
示談で揉めたくない人におすすめ
交通事故の発生から示談成立までの進め方
交通事故の発生から示談成立までは、概ね以下の通り進んでいきます。
- 事故現場で対応を行い、病院で治療を受ける
- 示談開始のタイミングまで待つ
- 加害者側から示談案の提示を受ける
- 示談交渉をする
- 示談書の取り交わし後、示談金が振り込まれる
なお、加害者が無保険の場合は示談の進め方が少し違います。関連記事『交通事故相手が無保険でお金がない!賠償請求時の対処法6つ』をご覧ください。
(1)事故現場で対応を行い、病院で治療を受ける
交通事故が発生の直後においては、以下のような対応を行いましょう。
- ケガ人がいる場合には救護を
- 車を移動して後続車による事故を防ぐ
- 警察に事故発生を報告
- 加害者と連絡先を交換
- 写真や動画により証拠保全
- 警察の捜査に協力
- 自身の加入している保険会社に連絡
- 病院でケガの有無や程度を診察してもらう
交通事故の発生を警察に報告することは、道路交通法で定められた義務であるため、事故の程度に関わらず必ず行って下さい。
ケガをしている自覚がなかったため、事故発生からしばらくして病院を受診した場合、交通事故とケガとの因果関係を疑われてしまう恐れがあります。
そのため、事故発生後は速やかに病院で医師の診断を受けることが大切です。
事故発生後にすべきことについては『交通事故にあったら初期対応の手順は?事故を起こしたらまずすること』の記事でより詳しく知ることができます。
(2)示談開始のタイミングまで待つ
交通事故の示談は請求できる損害額が確定してから始められます。
具体的には、以下のタイミングです。
事故 | 示談開始 |
---|---|
物損 | 車の修理費の見積もりなどが出たあと |
人身(完治) | 治療終了後 |
人身(後遺症あり) | 後遺障害認定後 |
死亡 | 葬儀後 (四十九日後が一般的) |
上記より早いタイミングだと、まだ損害の全貌が明らかになっておらず、適切な示談交渉ができません。上記より前に示談を開始しないようにしましょう。
なお、示談開始までに確認しておくべきポイントは以下のとおりです。
- ケガをしている場合は人身事故で警察に届け出ていますか?
物損事故で届け出ていると、治療費や慰謝料などを十分に請求できない可能性があります。 - 通院先や通院頻度は適切ですか?
適切でない場合、示談金が減額される可能性があります。 - 後遺障害認定はきちんと受けましたか?
後遺障害に関する示談金の有無・金額を左右します。
上記の点について不安がある場合は、以下の関連記事をご確認ください。
関連記事
- 物損から人身への切り替え方法と手続き期限!切り替えるべき理由
- 交通事故の治療の流れ|整骨院と整形外科のどちらに通うのが正解?
- 交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方
(3)加害者側から示談案の提示を受ける
示談できるタイミングになったら、加害者側の任意保険会社から示談金額や過失割合を提示する示談案が届きます。
内容に納得すれば署名・捺印してそのまま示談成立です。
しかし、加害者側の提示内容は適正ではないことが多いので、安易に合意せず、内容の正当性を確認してみましょう。
アトム法律事務所の無料相談では、示談金相場の確認も可能です。無料相談のみのご利用でも問題ありません。安心・納得できる示談のために、ぜひご活用ください。
(4)示談交渉をする
加害者側から提示された内容に納得できない場合は、示談交渉を行います。
示談交渉は主に電話やファックスなどで行われ、対面で話し合いの場が設けられることはあまりありません。
示談交渉の連絡は加害者側の保険会社の営業時間、つまり日中に来ることが多いので、仕事や家事・育児の妨げになることもあります。
加えて、加害者側の任意保険会社は交渉を有利に進めるため、あえて高圧的な態度や冷たい態度をとることがあります。
しかし、これで感情的になっては加害者側の思う壺です。冷静に対応しましょう。
お困りの場合は関連記事『保険会社の対応が悪い!対処法と取ってはいけない対応を状況別に解説』も参考にしてみてください。
(5)示談書の取り交わし後、示談金が振り込まれる
示談交渉で話がまとまったら、「示談書」を取り交わすことで示談成立となります。示談書の代わりに「免責証書」が送られてくることもありますが、ほぼ違いはないので同じように対応して問題ありません。
示談書にサインしてしまうと、後から訂正することは基本的にできません。
示談書に合意内容が正しく反映されているかしっかり確認しましょう。
示談書チェックポイント
- 該当事故の特定
交通事故が発生した日時・場所・当事者氏名等に間違いがないか - 過失割合が妥当か
事故状況を正しく反映した割合になっているか - 示談金の額が妥当か
慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益などの金額が妥当か、請求漏れはないか - 後遺障害に関する記載があるか
認定された等級を条件に含んでいるか
関連記事『交通事故の示談書の書き方と記載事項』では、示談書について詳しく解説していますので、気になった方はあわせてご確認ください。
その後、示談書・免責証書に記載された期日までに、示談金から既払金を差し引いた金額が振り込まれます。多くの場合は、示談成立から約2週間で振り込まれるようです。
示談でお互いに合意できなかったら?
示談交渉が難航して合意が難しい場合は、示談しないという選択肢もあります。その場合には、民事裁判やADR(裁判外紛争解決手続き)といった別の方法で解決を目指すことになるでしょう。
ADRについては関連記事『交通事故紛争処理センター利用の流れとメリット・デメリット!示談不成立時の解決法』で解説しています。
交通事故の示談で損しないための注意点・アドバイス
ここからは、交通事故の示談で注意すべきポイントについて解説します。
示談を円滑に進めるためにも、どのような点に気をつければよいか確認しておきましょう。
また、交通事故の示談では何らかのトラブルが発生することも少なくありません。関連記事『交通事故の示談交渉トラブル8つと解決方法』をご一読いただき、対処する準備をしておくこともおすすめします。
示談の合意は慎重に。撤回・再交渉は原則できない
示談による合意には法的な拘束力が生じるため、示談後にやり直しや撤回をすることは、原則的に認められません。
示談は、民法695条に規定された「和解契約」の一種であり、示談で決まった内容は法的な効力を持つのです。
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
民法695条
示談を締結する際は、本当にそのまま示談して良いのか慎重に検討するようにしましょう。被害者自身では判断に迷うなら、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
なお、詐欺や脅迫などによって結ばれた示談や、被害者の無知に付け込んだ非常識な内容での示談は、やり直しや撤回をできる可能性があります。
どのような場合に示談の撤回が認められるかについて知りたい方は、関連記事『示談後、撤回や追加請求は可能?』をお読みください。
示談は「時効」までに成立させる
示談自体には時効はありませんが、交通事故被害者が加害者に賠償請求できる権利には以下の時効があります。
損害など | 期間 |
---|---|
人身に関する (後遺障害による損害以外) | 事故発生日の翌日から5年 |
人身に関する損害 (後遺障害による損害) | 症状固定日の翌日から5年 |
人身に関する損害 (死亡による損害) | 死亡した日の翌日から5年 |
物的な損害 | 事故発生日の翌日から3年 |
加害者不明の損害 | 事故発生日の翌日から20年※※ |
保険会社に対する保険金の請求 | 起算日から3年 |
※2017年4月1日以降に発生した事故の場合。
※※2017年3月31日以前に発生した事故にも適用される可能性がある。
また、途中で加害者が判明した場合は、判明した日の翌日を起算日とし、物損部分は3年、人身部分は5年で時効となる。
一度示談が成立すると原則として撤回できないからといって、納得いくまでいつまでも交渉することはできないのです。
交通事故で示談しない場合は、民事裁判やADRで解決を目指すことになるでしょう。
ただし、弁護士を立てれば加害者側の任意保険会社の態度が軟化し、示談で解決を目指せることも多いです。
時効が迫ってきたり裁判やADRを検討したりする前に、一度弁護士に相談してみるのも良いでしょう。
関連記事
交通事故の示談は弁護士に相談・依頼すべき
弁護士なら「示談金の増額」「早期解決」が可能
交通事故において示談で解決を図る場合には、弁護士に依頼することがおすすめです。
交通事故において被害者自身で示談すると、以下の点から十分な示談金を得られない恐れが高くなります。
- 示談交渉経験や示談金に関する知識は加害者側の任意保険会社のほうが豊富なので、どうしても被害者側が不利になる
- 専門家ではない被害者が、本来裁判で認められるような相場の慰謝料額を主張しても、説得力がないとして聞き入れてもらえない
弁護士を立てれば、示談の早期解決・納得いく示談の成立が期待できます。
弁護士が相場額の慰謝料を主張すると、加害者側の任意保険会社は「この主張を退けてもしも裁判になったら、どのみち相場の金額が認められる可能性がある」と考え、示談で話をまとめようとします。
よって、示談金を大幅に増額し、早く示談を終わらせられる可能性があるのです。
示談交渉を弁護士が行うことによって加害者側がどのように対応を変えるのかは、関連記事『交通事故では弁護士に示談交渉を依頼すると相手の対応が変わる』で具体的に説明しているのでこちらも参考にしてみてください。
ここで、実際に弁護士が介入して示談金が上がった事例を紹介します。
傷病名 | 頸椎捻挫 |
後遺障害等級 | 非該当 |
当初の提示額 | 41万円 |
最終的な回収額 | 159万円 (118万円の増額) |
傷病名 | 左足関節骨折 |
後遺障害等級 | 12級13号 |
当初の提示額 | 347万円 |
最終的な回収額 | 750万円 (403万円の増額) |
傷病名 | 脳挫傷、頭蓋骨骨折など |
後遺障害等級 | 併合7級 |
当初の提示額 | 3,537万円 |
最終的な回収額 | 7,350万円 (3,813万円の増額) |
あとから「本来ならもっと多くの示談金をもらえていたのに…」と悔やまないためにも、一度弁護士へ相談し、依頼すべきか検討してみることをおすすめします。
アトム法律事務所の弁護士が実際に解決したその他の事例については「交通事故の解決事例」でも紹介していますので、あわせてご確認ください。
本記事で紹介した以外のメリットも知りたい方は、関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット』もご覧ください。
弁護士依頼のデメリット「弁護士費用」は解消可能
弁護士に依頼することのデメリットとして、弁護士費用がかかることがあげられます。
しかし、弁護士費用は「弁護士費用特約」を使うことで自己負担なしにできます。
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約のことです。
弁護士費用特約を使えば、多くの場合弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社が負担してくれます。
弁護士費用が合計300万円を超えることは、示談金が数千万円にならない限りほぼありません。
よって、弁護士費用特約を使えば、多くの場合、弁護士費用がかかることはないのです。
弁護士に依頼しようか迷っている方は、まずご自身の保険契約状況を確認してみましょう。
弁護士費用特約は、自動車保険、火災保険、クレジットカードなどに付帯されていることがあります。また、被害者自身の保険だけではなく、被害者の家族が加入している保険に付帯されている場合も、利用できることが多いでしょう。
弁護士費用特約のメリットや使い方については、『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご確認ください。
なお、弁護士費用特約を使えない場合でも、弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増えることは多いので、弁護士への無料相談で見積もりを取ってみることをおすすめします。
弁護士費用以外のデメリットは?
「弁護士に依頼するデメリットは、弁護士費用以外にもあるのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。
たとえば、「時間と手間がかかるのでは」「大げさだと思われるのでは」といった不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、デメリットと思われる事柄が、実は思い過ごしであることは多いです。
弁護士依頼のデメリットが気になる方は、『交通事故を弁護士に依頼するデメリットとは?3つのよくある懸念にお答え』の記事をご確認ください。
交通事故の示談まとめ
- 示談とは、当事者同士の話し合いで賠償問題を解決すること。
- 示談では、主に示談金や過失割合について話し合われる。
- 示談交渉は、一般的に損害確定後に開始され、示談書を交わして示談金が振り込まれることで終了する。
- 加害者側が提示する示談金は、本来の相場よりも大幅に低額であることが多い。
- 弁護士に示談交渉を依頼すれば、示談金の増額などのメリットが得られる。
ある日いきなり交通事故の被害者になってしまい、示談について不安や悩みを抱えている方は少なくありません。
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方に向けて電話・LINEによる無料相談を実施しています。
交通事故の示談でわからないことがある方、示談金をいくらもらえるか知りたい方は、ぜひご利用ください。交通事故の実務に精通した弁護士が、適切なアドバイスをさせていただきます。
もちろん、無料相談のみのご利用でも大丈夫です。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了