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交通事故の示談金相場は?計算方法や増額のコツ、示談交渉の注意点を解説

更新日:

交通事故の示談金相場

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

「交通事故の示談金の相場はどれくらいなんだろう?」
「加害者側から提示された示談金は、相場よりも高い? 低い?」

このように悩んでおられる交通事故の被害者の方は少なくありません。

実は、加害者側から提示された示談金の金額は、相場よりも低いことが大半なのです。

この記事では、実際の事例をもとに、交通事故の示談金の相場を紹介します。
また、示談金の計算方法や、増額のコツもお伝えしますので、この記事を読めば、相場に即した適切な示談金を加害者側に請求できるようになるでしょう。

また、以下の計算機を使えば、ご自身のケースにおける示談金の相場が簡単に確認できます。
ぜひ1度、ご自身の示談金の相場を計算し、増額の余地がないかチェックしてみてください。

目次

交通事故の示談金相場|軽傷から重傷までの事例集

交通事故の示談金の相場は、ケースにより数万円から1億円以上までさまざまです。
これは、被害者の年齢や家庭内での立場、入通院期間、後遺障害の重さ、休業の有無、過失割合などの多くの要素が示談金の計算に影響するためです。

そこで、この章では交通事故の内容ごとの示談金の事例を紹介します。示談金の相場観をつかむために、まずは実際の交通事故の事例を確認してみましょう。

また、後ほど説明しますが、加害者側の任意保険会社から提示される示談金は相場より低いことが多いです。
一部の事例では、加害者側の任意保険会社から当初提示された示談金の金額も紹介します。示談金の増額の余地がどれほどあるのかを知る目安としてください。

交通事故の示談金がいくらになるか知りたい方には、『交通事故の示談金はいくらが妥当?示談の前に金額をチェック!』の記事もおすすめです。

示談金 72万円|頚椎捻挫|後遺障害等級認定なし

まず紹介するのは、信号のない交差点において、出会い頭の衝突事故が起こった事例です。

交通事故の概要と示談金

被害者のケガ頚椎捻挫
被害者の後遺障害等級なし
過失割合2:8
最終的に合意した示談金72万7946円

後遺障害等級に認定されなくても、一定期間の入通院を行ったり仕事を休んだりした場合は、ある程度の示談金を受け取れることがわかります。

示談金 241万円|両腕のしびれ|後遺障害14級

次に紹介するのは、片側2車線道路の右車線を走行中、左車線からウインカーを出さずに入ってきた車両と衝突した事例です。

交通事故の概要と示談金

被害者のケガ両腕のしびれ
被害者の後遺障害等級14級
過失割合2:8
当初提示された示談金約105万円
最終的に合意した示談金約241万円
(約136万円の増額)

加害者側に提示される示談金は本来の示談金相場よりも低いことが、上記の事例からわかるのではないでしょうか。

上記の事例では、被害者の方は後遺障害逸失利益の金額に疑問があり、弁護士に相談されました。弁護士が加害者側に適切に示談金を支払うよう交渉した結果、ご依頼から2週間で増額を実現させることができたのです。

示談金 290万円|右ひざ靭帯損傷|後遺障害14級

次に紹介するのは、自転車で走行中に商業施設から出てきた車両と衝突した事例です。

交通事故の概要と示談金

被害者のケガ右ひざ靭帯損傷
被害者の後遺障害等級14級
当初提示された示談金約144万円
最終的に合意した示談金約290万円
(約146万円の増額)

上記の事例でも、加害者側は相場の約半分の示談金を提示しています。弁護士が交渉することにより、適切な示談金を受け取ることができました。

示談金 1,150万円|腰椎圧迫骨折など|後遺障害併合10級

次に紹介するのは、幹線道路の交差地点における自転車同士の事故で、ひき逃げ事案でもありました。被害者の方に既往症があり、リハビリや手術を行うのが困難だった事例です。

交通事故の概要と示談金

被害者のケガ腰椎圧迫骨折、左肩腱板断裂など
被害者の後遺障害等級併合10級
当初提示された示談金529万円
最終的に合意した示談金1,150万円
(621万円の増額)

上記の事例は、加害者側から提示された示談金の金額だけではなく、後遺障害等級認定の申請にも不明点があり、弁護士に相談されたものです。
弁護士による後遺障害等級認定のサポートや示談交渉により、示談金の大幅な増額が実現できました。

このように、後遺障害等級は、示談金の相場に大きな影響を及ぼします。

示談金 6,800万円|高次脳機能障害など|後遺障害併合6級

最後に紹介するのは、信号のない交差点に優先道路からバイクで進入した被害者が、一旦停止義務のある道路から進入した車両と衝突した事例です。

交通事故の概要と示談金

被害者のケガ大腿骨骨折、外傷性硬膜下血腫
(ケガによる後遺障害は、高次脳機能障害、視力障害など)
被害者の後遺障害等級併合6級
最終的に合意した示談金6,800万円

入通院期間が長かったり、後遺障害がより上の等級に認定されたりすれば、示談金の相場は高くなります。

ただし、加害者側の任意保険会社が相場に即した示談金を提示してくるとは限りません。
適切な示談金を受け取るためには、弁護士に相談することをおすすめします。

あなたの示談金相場はどれくらい?

前章では、軽傷から重症までの各事例ごとの示談金の相場を紹介しました。
しかし、紹介した事例にご自身の事故と類似するものがなく、示談金相場がどれくらいになるのかわからない方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、この章では、ご自身の示談金相場が簡単にわかる方法を紹介します。

あなたの示談金相場を計算機で簡単確認!

以下の計算機では、示談金のうち慰謝料と逸失利益の相場がわかります。

治療開始日・終了日や後遺障害等級、年齢、年収などを入力していただくだけで、簡単に相場を確認することができるので、ぜひ1度お試しください。

なお、上記の計算機でわかる示談金の相場は、示談交渉で弁護士を立てた場合のものです。
また、示談金の相場は、交通事故の個別的な事情に応じて増減することがあります。
厳密な示談金相場を知りたいときは、弁護士に相談することがおすすめです。

示談金相場をさらに詳しく知るための基礎知識

ここまで、事例ごとの示談金相場や、示談金を簡単に確認する方法をお伝えしてきました。

ここからは、さらに詳しく示談金相場を確認するために、示談金に含まれる損害賠償費目ごとの相場や計算方法を解説していきます。

解説にあたり、まずはそもそも示談金とは何か、示談金に含まれる損害賠償費目は何か、といったことを確認していきましょう。

そもそも示談金とは?

示談金とは、示談で決められた損害賠償金のことです。

損害賠償金とは、不法行為によって受けた損害をつぐなってもらうために支払われるお金を指します。

示談とは、裁判ではなく当事者同士の話し合いで民事上の争いを解決することです。交通事故の損害賠償問題は、加害者側に任意保険会社との示談で解決することが多くなります。よって、交通事故では「示談金」という言葉を耳にすることが多くなるのです。

なお、慰謝料とは、示談金(損害賠償金)のうち、精神的苦痛に対する補償のことを指します。慰謝料という言葉は誤って「交通事故の損害賠償金すべて」と解釈されがちなので、注意しましょう。

交通事故の示談金とは何かについて、さらに詳しく知りたい方は、『交通事故の示談金|内訳・金額から示談交渉まですべて解説』の記事をご確認ください。示談金の内訳や示談金を受け取る方法まで、交通事故の示談金に関する事柄を網羅的に解説しています。

示談金に含まれる損害費目は?

示談金(損害賠償金)に含まれる損害費目には、以下のようなものがあります。

示談金に含まれる損害費目

  • 慰謝料
    • 入通院慰謝料
      事故で負傷した精神的苦痛に対する補償
    • 後遺障害慰謝料
      事故で後遺障害を負った精神的苦痛に対する補償
    • 死亡慰謝料
      事故で亡くなった精神的苦痛に対する補償
  • 積極損害
    • 治療費
      事故によるケガの治療に要した費用の補償
    • 入院雑費
      治療のため入院した際に要するガーゼ代などの諸費用の補償
    • 通院交通費
      治療のため通院した際に要する交通費の補償
    • 付き添い看護費
      入通院に近親者などが付き添ったため受けた損害の補償
    • 介護費
      事故による後遺障害のため将来的に必要な介護費用の補償
    • 診断書作成費 など
  • 消極損害
    • 休業損害
      事故で仕事を休んだことにより失った収入の補償
    • 後遺障害逸失利益
      事故で後遺障害が残ったことにより失う将来的な収入の補償
    • 死亡逸失利益
      事故で亡くなったことにより失う将来的な収入の補償

なお、積極損害とは実際に支出として生じた損害のこと、消極損害とは事故に遭わなければ得られていたはずの利益のことを指します。

示談金相場をさらに詳しく知るために、次章では上記の費目の計算方法を解説します。

示談金相場がわかる計算方法

この章では、慰謝料、積極損害、消極損害にわけて、示談金に含まれる損害費目の計算方法を解説していきます。

前提|示談金には3つの算定基準がある

示談金に含まれる損害費目の計算方法を解説する前に、示談金の算定基準を紹介します。

示談金に含まれる慰謝料や休業損害などには、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの算定基準があります。それぞれの基準の特徴は以下のとおりです。

3つの算定基準の特徴

自賠責基準加害者側の自賠責保険会社が用いる基準。
被害者に補償される最低限の金額。
任意保険基準加害者側の任意保険会社が用いる基準。
基準は各保険会社が独自に設定しており、非公開。
自賠責基準と同額か、自賠責基準よりやや高額であることが多い。
弁護士基準弁護士や裁判所が用いる基準。裁判基準とも呼ばれる。
過去の判例に基づいた、法的に適正な金額。
3つの基準の中で最も高額
慰謝料金額相場の3基準比較

適正な相場の示談金を受け取るためには、弁護士基準で示談金を計算することが大切です。

ここからは、各基準に則った示談金の計算方法を解説していきます。なお、任意保険基準は自賠責基準と同程度になることが多いので、ここでは割愛します。

慰謝料の計算方法|入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料

まずは、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の相場や計算方法を解説しましょう。

なお、慰謝料の相場や慰謝料の基本情報については、以下の関連記事でも解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、入院および通院をした期間に応じて計算されます。
自賠責基準と弁護士基準で計算方法が異なりますが、弁護士基準で計算した方が金額が大きくなるので、ぜひ試算してみてください。

自賠責基準の計算方法

自賠責基準では、入通院慰謝料は以下の式を用いて計算します。

自賠責基準の計算式

  • 日額 × 対象日数

日額は、次のうちいずれかを採用

  • 2020年4月1日以降に発生した事故の場合、4,300円
  • 2020年3月31日以前に発生した事故の場合、4,200円

対象日数は、次のうちいずれか短い方を採用

  • 治療期間(病院を受診した日から治療終了までの期間)
  • 実際に治療した日数×2

たとえば、実治療日数が45日、総治療日数が90日だった場合、自賠責基準で計算した入通院慰謝料は4,300円×90日=38.7万円になります。

弁護士基準の計算方法

弁護士基準では、入通院慰謝料は算定表を用いて計算します。
なお、算定表には軽症の場合に用いるものと重症の場合に用いるものの2種類があります。

算定表の「入院月数」の列と「通院月数」の列が交わるマスに書かれている金額が、弁護士基準で計算した入通院慰謝料の相場となります。
月数は暦に応じるのではなく、1月を30日として考えます。通院期間65日といったように端数が生じる場合は、日割計算を行います。

2種類の算定表を確認していきましょう。

軽傷表(むちうち、打撲などに用いる)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

重傷表(骨折や脱臼を伴うケガなどに用いる)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

たとえば、事故により骨折し、入院期間が1月、通院期間が2月だった場合、弁護士基準で計算した入通院慰謝料は98万円になります。

自賠責基準で計算した金額と単純比較することはできませんが、弁護士基準で計算した入通院慰謝料の方が高い傾向にあることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料の相場は、認定された後遺障害等級に応じて決められています。
自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料の相場を、下記の一覧表にまとめました。

後遺障害慰謝料の相場一覧

後遺障害等級 自賠責基準※弁護士基準
1級
(要介護)
1,650万円
(1,600万円)
2,800万円
2級
(要介護)
1,203万円
(1,163万円)
2,370万円
1級1,150万円
(1,100万円)
2,800万円
2級998万円
(958万円)
2,370万円
3級861万円
(829万円)
1,990万円
4級737万円
(712万円)
1,670万円
5級618万円
(599万円)
1,400万円
6級512万円
(498万円)
1,180万円
7級419万円
(409万円)
1,000万円
8級331万円
(324万円)
830万円
9級249万円
(245万円)
690万円
10級190万円
(187万円)
550万円
11級136万円
(135万円)
420万円
12級94万円
(93万円)
290万円
13級57万円
(57万円)
180万円
14級32万円
(32万円)
110万円

※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用

いずれの等級であっても弁護士基準の方が高額であり、時には1,000万円以上の差が生じることがおわかりいただけるかと思います。

後遺障害慰謝料を適切な相場で受け取るには、後遺障害等級の認定を適切に受けることが大切です。後遺障害等級認定については、『交通事故の後遺障害認定とは?認定の条件や認定率を上げるポイント』の記事をご覧ください。

また、どのような症状で後遺障害等級が認められるかについては、『後遺障害等級の一覧表|症状別の等級と認定基準をわかりやすく解説』の記事で詳しく解説しています。

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料と異なり、被害者本人だけではなく被害者の遺族に対しても支払われます。

被害者の遺族分の考え方は、自賠責基準と弁護士基準で異なります。それぞれ確認していきましょう。

自賠責基準の相場

自賠責基準では、死亡慰謝料は被害者本人分と遺族分それぞれについて金額が決まっています。
本人分の金額に、遺族分の金額を足して、死亡慰謝料を計算するのです。

自賠責基準の相場一覧

本人分400万円※※
遺族1名の場合※550万円
遺族2名の場合650万円
遺族3名以上の場合750万円
被害者に被扶養者がいる場合上記の金額に加えて200万円

※遺族とは、遺族とは被害者の父母、配偶者及び子のこと
※※2020年3月31日以前に発生した事故の場合、350万円

たとえば、遺族が2名で、遺族のうち誰かが被害者に扶養されていた場合、自賠責基準で計算した死亡慰謝料は400万円+650万円+200万円=1,250万円になります。

弁護士基準の相場

弁護士基準では、死亡慰謝料の相場として、予め遺族分を含んだ金額が決められています。
実際にどの程度の金額となるかは、被害者の家庭内での立場によって異なります。

弁護士基準の相場一覧

一家の支柱※2,800万円
母親・配偶者2,500万円
その他2,000万~2,500万円

※被害者の世帯が主に被害者の収入で支えられていること

先ほどの自賠責基準の例で、被害者が一家の支柱だった場合、弁護士基準で計算すると死亡慰謝料は2,800万円となります。
弁護士基準で計算し直すことで、死亡慰謝料の相場が1,000万円以上増えることがあるのです。

死亡事故の慰謝料についてさらに詳しく知りたい方は、『死亡事故の慰謝料相場はいくら?遺族が請求すべき損害賠償金の解説』の記事をご覧ください。

積極損害の計算方法|治療費・付き添い看護費など

次に、以下の積極損害の費目の計算方法を解説していきます。

  • 治療費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 付き添い看護費
  • 介護費
  • 診断書作成費

治療費

交通事故の治療費は、基本的に実費を請求できます。

ただし、通院期間が長期化した場合や通院頻度が低い場合は、治療費を全額支払ってもらえない可能性があるので注意してください。
とくに、通院が1ヶ月以上あいたり平均的な通院期間を超えたりすると、加害者側の任意保険会社から治療費の支払いが打ち切られる可能性があります。

治療費打ち切りを打診された場合の対処方法は、『交通事故の治療費打ち切りとは?延長交渉や治療の続け方を解説』で解説しています。

入院雑費

入院雑費としては、基本的に日額1500円×入院した日数分が支払われます。

入院雑費は、入院で必要になった消耗品や通信費のことですが、実費ではなく日額で支払われるのです。

通院交通費

通院にかかった交通費は、基本的に実費が支払われます。

ただし、支払われるのは原則的に公共交通機関を利用した場合の金額になります。自家用車やタクシーを利用した場合は、足の負傷のような相当な理由がある場合のみ、支払いを受けることが可能です。

交通費の請求については、『交通事故にあったら【交通費】と慰謝料を請求できる?通院以外の交通費も解説』の記事もあわせてご確認ください。交通事故の影響で通勤や通学の費用が余計にかかった場合なども解説しています。

付き添い看護費

付き添い看護費は、被害者が入通院をする際、医師の判断により付き添い看護が必要だと認められれば請求できます。

近親者が付き添い看護をする場合、入院であれば1日あたり6,500円、通院であれば1日あたり3,300円を加害者側に請求できます。
なお、職業看護人が付き添い看護をする場合は、実費を加害者側に請求できます。

付き添い看護費の請求については、『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?慰謝料との違いも解説』の記事をご覧ください。付き添いのために近親者が仕事を休んだ場合の補償なども解説しています。

介護費

被害者に重い後遺障害が残り、将来にわたる介護が必要な場合は、介護費用も請求可能です。

介護費用は、近親者が介護をする場合は1日あたり8,000円として計算されます。
なお、職業介護人が介護をする場合は、実費を請求することが可能です。

ただし、実際には被害者の後遺障害の程度や介護体制などさまざまな要素を考慮して金額が決まります。介護費用ついてさらに詳しくは、『交通事故で介護費用が請求できる2ケース|計算方法と裁判例から金額もわかる』の記事をご確認ください。

診断書作成費

診断書作成費は、基本的に実費を請求できます。

通常の診断書の費用は3,000円程度、後遺障害診断書の費用は5,000円~10,000円程度になることが多いです。ただし、病院によって正確な費用は変わりますのでご注意ください。

消極損害の計算方法|休業損害・逸失利益

最後に、消極損害である休業損害と逸失利益の計算方法を解説します。

休業損害

休業損害は、以下の式を用いて計算されます。

休業損害の計算式

  • 基礎収入(日額) × 休業日数

休業損害の基礎収入は、算定基準によって異なります。

自賠責基準で計算する場合、基礎収入は日額6,100円(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)になります。
ただし、上記の金額が実収入よりも少ないことを立証できれば、日額19,000円を限度に請求することも可能です。

弁護士基準で計算する場合、基礎収入の計算方法は被害者の職業によって異なります。
たとえば、給与所得者の場合は、事故前3か月間の収入÷事故前3か月間の実労働日数で計算することになるでしょう。

休業損害は、給与所得者や自営業者だけではなく、学生や主婦、一部の無職者なども請求できます。休業損害の詳しい計算方法は、『交通事故の休業損害は職業別に計算方法がある|いつもらえる?相場はいくら?』をご覧ください。

逸失利益

先述のとおり、逸失利益には「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」の2種類があります。
後遺障害逸失利益は後遺障害等級に認定されれば請求可能です。一方、死亡逸失利益は被害者が亡くなった場合に請求できます。

それぞれの逸失利益の計算方法は、以下のとおりです。

後遺障害逸失利益の計算式

  • 基礎収入(年額) × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

死亡逸失利益の計算式

  • 基礎収入(年額) × (1-生活費控除率) × 労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

計算式で用いられている各用語の意味や、それぞれどのような数値を当てはめるかを確認していきましょう。

  • 基礎収入(年額)
    被害者が働いている場合、源泉徴収票や確定申告書を参考にする。
    被害者が主婦や子供などの場合、平均賃金をもとに算出する。
  • 労働能力喪失率
    後遺障害が残ったことにより失われた労働力を割合で示したもの。
    後遺障害等級によって、割合が定められている。
  • 生活費控除率
    被害者が生きていればかかるはずだった生活費を控除する割合のこと。
    被害者の家庭内での立場によって、割合が定められている。
  • 労働能力喪失期間
    事故に遭わなければ本来働けていたはずの年数。
    通常は67歳まで働くと考えて、被害者の死亡時から67歳までの年数を計算する。
    被害者が学生や子供などの場合、就労開始年齢から67歳までの年数とする。
  • ライプニッツ係数
    中間利息を差し引くための係数。
    中間利息とは、本来収入を得るはずだった時点までに発生する可能性がある利息のこと。

逸失利益については、『逸失利益の計算方法|計算機や具体的な計算例、増額のポイントも紹介』の記事で詳しく解説しています。計算式内の各項目の具体的な数値もわかるので、ぜひご一読ください。

示談金相場を実際に計算してみよう!モデルケース2つで試算

この章では、前章で解説した計算方法を参考に、示談金相場を実際に計算してみます。
2つのモデルケースで、弁護士基準で計算したら示談金相場がどのくらいになるかを確認してみましょう。

ケース(1)追突事故によるむちうちでしびれ・腰痛

まずは、被害者が自動車を運転中に交差点で交差点で信号待ちをしていたところ、後ろから別の自動車に追突されたと想定し、以下の条件で示談金相場を確認してみましょう。

モデルケース(1)

被害者30歳の会社員
治療経過通院6ヶ月(180日)、通院日数80日
治療関係費治療費60万円、通院交通費3万円
事故前の収入年収400万円、月収26万円(月20日勤務)
事故による休業日数20日
後遺障害むちうちにより強い痺れ・腰痛が残り、後遺障害14級

上記のケースにおける示談金相場は、弁護士基準で計算すると以下のとおりになります。

モデルケース(1)の示談金相場

  • 治療費:60万円
  • 通院交通費:3万円
  • 入通院慰謝料:89万円
  • 休業損害:26万円
    (1日あたり13,000円×20日分)
  • 後遺障害慰謝料:110万円
  • 後遺障害逸失利益:91.6万円
    (後遺障害14級の労働能力喪失率は5%。
     むちうちの労働能力喪失期間は5年が目安。
     年収400万円×0.05×ライプニッツ係数4.5797=約91.6万円)
  • 合計:約379.6万円

なお、上記の他に車両の修理費や診断書作成費などがかかっていた場合は、あわせて請求することが可能です。

上記のケースのような追突事故及びむちうちについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

ケース(2)歩行者が自動車に追突されて死亡

次に、被害者が歩道を歩いていたところ自動車にひかれ、残念ながら亡くなってしまったと想定し、以下の条件で示談金相場を確認してみましょう。

モデルケース(2)

被害者47歳の専業主婦
家族構成夫と子1人
治療経過入院し、30日間の治療を受けたが死亡
入院期間中は家族が付き添い看護をした
治療関係費治療費80万円
葬儀関係費葬儀費用150万円

上記のケースにおける示談金相場は、弁護士基準で計算すると以下のとおりになります。

モデルケース(1)の示談金相場

  • 治療費:80万円
  • 入院雑費:4.5万円
    (1日あたり1,500円×30日分)
  • 付き添い看護費:19.5万円
    (1日あたり6,500円×30日分)
  • 入通院慰謝料:28万円
  • 死亡慰謝料:2,500万円
  • 死亡逸失利益:4,041万円
    (平均賃金をもとに、年収を約388万円とする。
     女性の場合の生活費控除率は30%、労働能力喪失期間は20年。
     388万円×(1-0.3)×ライプニッツ係数14.8775=約4,041万円)
  • 葬儀費用:150万円
  • 合計:約6,823万円

なお、被害者は専業主婦ですが、休業損害を請求できる可能性もあります。

また、上記のケースでは、1か月間も生死の境をさまよったことにより被害者や遺族の精神的苦痛が大きいと判断され、相場よりも増額される可能性があります。

示談金は個々の事故の状況を考慮して、相場よりも増額されることがあります。「こんな事情は示談金増額の理由になる?」と疑問を持っておられる方は、弁護士に相談することをおすすめします。

示談金の交渉における注意点4つ

この章では、適切な相場で示談金を受け取るための、示談交渉における注意点を解説します。

交通事故の示談金は、示談交渉によって金額が決められます。
つまり、示談交渉次第で示談金は相場どおりにも相場より低い金額にもなり得るのです。

上記を踏まえて、示談交渉における注意点を確認していきましょう。

注意点(1)加害者側から提示される示談金は相場より低い

示談交渉は、加害者側の任意保険会社から示談金を提示されて始まることが多いです。
このとき提示される示談金は、任意保険基準で計算されているため、弁護士基準で計算した金額に比べて3分の1~半分程度でしかないことが少なくありません。

よって、提示された示談金額を鵜呑みにせず、増額交渉を行うことが重要です。

とくに、大きな事故の場合、加害者側に提示される示談金が数千万円~数億円にのぼることがあります。「提示された金額が大きいので合意してよいだろう」と考えてしまう被害者の方もいますが、実はこの金額も相場より低い可能性があるのです。
自身で相場を確認したり、弁護士に相談したりすることが大切になるでしょう。

提示された示談金が適切な相場よりも低いかどうかは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。
もし提示された示談金が適切な相場よりも低かった場合、弁護士に示談交渉を依頼すれば、増額が期待できます。

注意点(2)過失割合が示談金額を左右する

交通事故の示談交渉においては、過失割合にも注意しなくてはなりません。

過失割合とは、交通事故が起きた原因が加害者と被害者それぞれにどれだけあるかを割合で示したもので、事故当時の状況をもとに算出されます。

多くの事故の場合、過失割合は被害者にもつくことになるでしょう。過失割合がつくと、過失割合の分だけ受け取れる示談金が減額されます。

ただし、加害者側の任意保険会社は、客観的な資料を確認することなく、加害者に有利な情報のみをもとに過失割合を導き出していることがあるのです。

そのため、示談金額だけではなく過失割合も、提示されたものを鵜呑みにするのではなく、1度弁護士に相談してみましょう。

交通事故の過失割合については、『交通事故の過失割合とは?決め方と示談のコツ!事故パターン別の過失割合』の記事をあわせてご覧ください。

注意点(3)損害賠償請求権には時効がある

被害者側が加害者側に損害賠償を請求できる期間には時効があるので、注意しなくてはなりません。

交通事故で加害者側に損害賠償金の請求ができる期間は、以下の表のとおりです。

損害賠償請求権の消滅時効(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)

傷害分
(入通院慰謝料、休業損害など)
事故発生日から5年
後遺障害分
(後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益など)
症状固定日※から5年
死亡分
(死亡慰謝料、死亡逸失利益など)
死亡日から5年
物損分
(車の修理代、代車料など)
事故発生日から3年
加害者不明の場合事故発生日から20年
(加害者が判明したら判明した日から5年)

※症状固定とは、ケガがこれ以上治療しても大幅な改善は見込めないと判断されること

また、加害者側の自賠責保険や、被害者自身の保険に保険金を請求する場合、いずれも損害賠償請求権は3年で時効となってしまいます。

交通事故の示談交渉をするときは、時効が成立するまでに示談を成立させ、示談金を支払ってもらう必要があります。

もし示談成立前に時効を迎えてしまいそうな場合は、弁護士に相談し、時効を阻止する措置を取りましょう。

注意点(4)示談が成立したら原則的に撤回できない

原則的に、示談は1度成立したら撤回することが不可能です。

もし、加害者側の任意保険会社に提示された金額を鵜呑みにして示談書を作成してしまうと、あとから増額を申し出ても応じてもらえません。

示談成立となる前に、示談の内容をしっかり確認し、加害者側の主張や説明に疑問や不安がある場合は確認することが重要です。

また、示談成立となる前に弁護士に相談することも大切です。

弁護士に相談すれば、加害者側から提示された示談金が相場どおりの適切な金額か判断してもらえるでしょう。もし、加害者側から提示された示談金が相場よりも低かった場合は、弁護士に依頼すれば増額交渉をしてもらうことも可能です。

示談金を増額させるコツは弁護士への相談

加害者側の任意保険会社から提示された示談金を適正な相場まで増額させるコツは、弁護士に相談することです。
この章では、示談金の増額に弁護士が必要な理由や、弁護士費用な不安な方に向けた対処法をご紹介します。

示談金の増額に弁護士が必要な3つの理由とは?

交通事故の示談金を適正な相場で獲得するために、弁護士に相談・依頼が必要な理由は、次の3つです。順に解説していきましょう。

  1. 弁護士に適切な示談金を計算してもらえる
  2. 弁護士を立てれば被害者側の主張が通りやすくなる
  3. 弁護士ならば粘り強く効果的な示談交渉ができる

(1)弁護士に適切な示談金を計算してもらえる

弁護士に相談・依頼すると、正しい示談金の金額を計算してもらえます。
正しい示談金の金額とは、弁護士基準で計算した示談金の相場に、事故の個別の事情を反映させ、適切に増額・減額をした金額です。

弁護士基準の示談金を計算するだけなら、この記事で紹介した示談金の計算方法や簡単計算機を用いれば被害者自身でも行えます。しかし、示談金の細かい増額・減額は弁護士でないと判断が難しいです。

また、弁護士に適切に計算してもらった示談金は、根拠が明確であるため加害者側に受け入れてもらいやすいでしょう。
被害者自身でやみくもに増額を求めるよりも、適切な金額に増額される可能性が上がるのです。

(2)弁護士を立てれば被害者側の主張が通りやすくなる

示談交渉では、被害者自身が正しい主張をしても、加害者側の任意保険会社に受け入れられにくい傾向にあります。

加害者側の任意保険会社は、被害者よりも示談交渉の経験が豊富です。よって、示談交渉の主導権を加害者側の任意保険会社が握ってしまうことが多いのです。

たとえば、弁護士基準で計算した示談金を支払うよう、被害者自身が求めたとします。
これに対し、加害者側の任意保険会社は「今回の事案では難しい」「この金額が上限である」といったように反論してくるでしょう。被害者自身では、加害者側の任意保険会社の主張の穴をつくことが難しいと思われます。

弁護士なしの増額交渉は増額幅と増額される可能性が低い

一方、弁護士に依頼すれば、加害者側の任意保険会社は態度を軟化させることが多いです。
弁護士であれば明確な根拠に基づいて主張を行えることや、被害者が弁護士を立てれば加害者側は裁判に発展することを恐れるようになることがその理由です。

弁護士ありの増額交渉は増額幅と増額の可能性が高い

より多くの示談金を受け取るためには、弁護士の力を借りることが重要になるのです。

(3)弁護士ならば粘り強く効果的な示談交渉ができる

より多くの示談金を受け取るためには、加害者側の任意保険会社と粘り強く交渉を続けることが必要な場合もあります。

しかし、治療や日常生活への復帰に忙しい被害者の方にとって、交渉を続けることは負担になることも多いのではないでしょうか。
仕事や家事・育児の合間に何度も加害者側の任意保険会社から電話がかかってきたり、担当者が高圧的な態度をとってきたりすると、疲弊して「相場より低い示談金で妥協しよう」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、弁護士に依頼すれば、被害者の負担を大幅に軽減しつつ、粘り強く効果的な交渉を行えます。
その理由は下記のとおりです。

  • 加害者側とのやり取りを弁護士に一任できる。
    被害者自身は加害者側とやり取りする必要がない。
  • 増額の余地がある費目を適切に判断し、ポイントを絞って効果的に交渉できる。
  • 示談交渉以外にも、示談交渉に向けたもろもろの準備や手続きも任せられる。
  • 示談がまとまらず、裁判になった場合も、弁護士ならば適切に対応できる。

被害者自身の負担を軽減しつつ、納得できる金額の示談金を受け取るためにも、弁護士への依頼を検討してみましょう。

早めに弁護士に依頼した方が示談金が増額されやすいって本当?

弁護士へ相談するタイミングに決まりはありませんが、相談が早ければ早いほど、効果的かつ多様なサポートを受けられます。

加害者側から示談金の提示を受けたタイミングや、示談交渉が行き詰まったタイミングなどでも、弁護士に相談すれば示談金の増額を見込めるでしょう。

しかし、もっと早く依頼すれば、受け取れる示談金が増えるようなサポートをしてもらえたり、加害者側とのトラブルに対処してもらえたりするのです。

たとえば、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の申請をしなければなりません。先述のとおり、後遺障害等級が高いほど示談金は増える傾向にあります。
被害者自身が申請をするよりも、交通事故に詳しい弁護士が申請する方が、より高い後遺障害等級に認定され、示談金が高額になる可能性が上がるのです。

また、示談交渉を開始する前の治療をしているタイミングでも、加害者側の任意保険会社から治療費や休業損害の打ち切りを打診されるといったトラブルが多々みられます。
早めに弁護士に依頼していれば、このようなトラブルにも対応してもらえるのです。

よって、適切な相場で示談金を獲得するためにも、交通事故に遭ったら出来るだけ早めに弁護士に相談することが大切と言えるでしょう。

もし交通事故が起こってから時間が経過している場合でも、遅くとも示談成立前には1度弁護士に相談することをおすすめします。
先述のとおり、示談成立すれば原則的に撤回することができないためです。あらかじめ弁護士に相談し、示談金の金額が適正か確認してもらうことが重要なのです。

【弁護士費用が不安な方へ】費用倒れにならない方法を2つ紹介

弁護士に相談や依頼をしたいけれど、弁護士費用がかかることが不安と思っている被害者の方もいらっしゃるかと思います。
そこで、ここでは弁護士費用が示談金の増額幅を上回る「費用倒れ」にならない方法を2つ紹介します。

(1)弁護士費用特約を利用する

まず1つ目は、「弁護士費用特約」を利用することです。
弁護士費用特約とは、被害者が加入している保険会社に弁護士費用を負担してもらえる特約のことです。

弁護士費用特約を使えば、多くの場合、弁護士費用300万円まで、相談料10万円までを保険会社に負担してもらうことができます。
最終的に受け取る示談金が数千万円にのぼらない限りは、弁護士費用が300万円をこえることは稀です。よって、弁護士費用特約を使えば、実質無料で弁護士に依頼することができると言えるのです。

弁護士費用特約とは保険会社に弁護士費用を負担してもらえる特約のこと

弁護士費用特約は、被害者自身の保険ではなく、被害者の家族が加入している保険に付帯されているものも使える場合があります。1度保険の契約状況を確認してみましょう。

弁護士特約についてさらに詳しく知りたい方は、『交通事故の弁護士費用特約とは?加入の必要性を説く|使い方とメリット&デメリット』の記事をご確認ください。

(2)無料法律相談を利用して見積もりをとる

加入している保険に弁護士費用特約が付帯されていない方には、各弁護士事務所が実施している無料法律相談を利用することをおすすめします。

無料法律相談では、弁護士に依頼すると示談金がどれくらい増額できるか、弁護士費用はどれくらいかかるかの見積もりを取ってもらうことができます。

見積もりをもとに、弁護士に依頼した方がより多くの金額を受け取れると判断できれば、安心して弁護士に依頼することができるでしょう。

アトム法律事務所では、電話やLINEで無料法律相談を実施しています。

在宅でも法律相談を受けられるので、治療や日常生活への復帰にお忙しい方もお気軽に利用していただけます。ぜひ1度弁護士に相談し、加害者側に提示されている示談金が適切か、増額される可能性はあるか、確認してみてください。

勿論、依頼される場合は、弁護士費用特約を使っていただくことも可能です。

相談予約は24時間365日受け付けています。交通事故被害者の方からのご連絡をお待ちしております。

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

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