追突事故の慰謝料はいくらが相場?示談金の計算方法と損しないポイント

この記事でわかること
信号待ち中に後ろから衝突されたような追突事故では、「過失がないから十分な慰謝料や示談金を受け取れるだろう」と思う被害者の方もいらっしゃいます。
しかし、追突事故は被害者に過失がないからこそ示談金が低額になるリスクがあるのです。
この記事では、追突事故の示談金の相場や計算方法を紹介しています。提示された金額が妥当か知りたい方、今後どのくらいの金額を受け取れる見込みなのか知りたい方は、ぜひご参考ください。
また、追突事故で請求できる示談金額を左右する、示談交渉のポイントもあわせて解説しています。
▼すぐに大まかな慰謝料相場が知りたい場合は、計算機をご活用ください。
目次

追突事故で請求できる慰謝料・示談金は?
追突事故で請求できる慰謝料・示談金の内訳は、被害の内容によって異なります。
具体的な内訳と、追突事故でむちうちになった場合の慰謝料・示談金の相場を解説します。
追突事故で請求できる慰謝料・示談金の内訳
追突事故で請求できる慰謝料・示談金の内容は、人身事故、死亡事故、物損事故により異なります。それぞれに分けてみていきましょう。
人身事故の示談金
追突事故によって被害者がケガをした場合、主に以下のような費目を請求できます。
傷害分の主な費目
- 治療費
- 器具・装具費
松葉づえや車いすなどの器具・装具の費用 - 入院雑費
入院中に必要な消耗品費・通信費などの補償 - 通院交通費
通院にかかった交通費
(関連記事:交通事故の通院交通費|請求できる条件や慰謝料との違い) - 付き添い看護費
家族や職業看護人が入通院に付き添った場合の補償
(関連記事:交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?) - 休業損害
交通事故により仕事を休んだため発生した減収の補償 - 入通院慰謝料
交通事故によって入通院をした精神的苦痛の補償
追突事故によって後遺症が残り、後遺障害等級に認定された場合は、以下のような費目もあわせて請求可能です。
後遺障害分の主な費目
- 後遺障害慰謝料
交通事故によって後遺障害が残った精神的苦痛の補償 - 後遺障害逸失利益
後遺障害の影響で減る将来的な収入の補償 - 将来介護費
将来にわたる介護で必要な費用の補償
(関連記事:交通事故で介護費用が請求できる2ケース)
死亡事故の示談金
追突事故で被害者が死亡した場合、示談金の内訳は主に以下のとおりです。
死亡事故の主な費目
- 死亡慰謝料
死亡した被害者と遺族の精神的苦痛の補償 - 死亡逸失利益
死亡したため得られなくなった将来的な収入の補償 - 葬儀費用
なお、交通事故にあってから亡くなるまでの間に一定期間の入通院をしていれば、上で紹介した「傷害分の費目」も請求可能です。
物損事故の示談金
車などの物品のみに損害が生じ、人体には損害が生じなかった「物損事故」の場合、示談金として請求できる費目は主に以下のとおりです。
物損事故の主な費目
- 車の修理費用・買い替え費用
- 評価損
車に修復歴が残ったことで低下した市場価格の補償
(関連記事:評価損(格落ち)を勝ち取る方法!保険会社が請求を拒否・認めない)
なお、物損事故では基本的に慰謝料を請求できません。
慰謝料は「精神的苦痛をなぐさめるために支払われるお金」であり、交通事故では基本的に「ケガをした」「亡くなった」といった人体に損害が生じたことによる精神的苦痛のみが対象です。
物が壊れたことによる精神的苦痛は、賠償を受けることでなくなると考えられているため、物損事故では基本的に慰謝料を請求できないのです。
物損事故の示談金について詳しく知りたい方は、『物損事故の示談の流れと示談金相場|交渉時の注意点』の記事をご参照ください。
追突事故でむちうちになった場合の相場
追突事故でむちうちになり6ヶ月通院し、後遺障害14級に認定された場合の慰謝料・示談金の相場は以下のとおりです。
- 治療費:実費
- 通院交通費:実費
- 休業損害:1日あたりの収入×休業日数
- 入通院慰謝料:89万円
- 後遺障害慰謝料:110万円
- 逸失利益:数十万〜数百万円(被害者の事故前の収入などにより変動)
ケースごとに金額が変わる費目も多いですが、入通院慰謝料の相場は89万円、後遺障害慰謝料の相場は110万円です。
このことから、追突事故でむちうちになり6ヶ月通院し、後遺障害14級に認定された場合の示談金相場は、少なくとも200万円以上になると考えられます。
ただし、加害者側は示談交渉の際、相場以下の示談金額を提示してくることが多いです。
示談交渉で提示額を増額させられなかったり、慰謝料が減額される要因があったりすると相場以下の金額しか受け取れない場合もあります。
追突事故で請求できる慰謝料の相場
追突事故で請求できる慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
また、これらの慰謝料には3つの計算方法があり、どれを採用するかで金額は大きく変わります。
追突事故で請求できる慰謝料の相場・計算方法を詳しく見ていきましょう。
追突事故の慰謝料には3つの計算方法がある
追突事故に限らず、交通事故の慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの金額基準があり、それぞれで計算方法が異なります。
慰謝料の3種類の算定基準
自賠責基準 | 交通事故の被害者に補償される、最低限の金額を算定する基準 自動車損害賠償保障法によって定められている (関連記事:自賠責保険の慰謝料計算や限度額を解説) |
任意保険基準 | 加害者側の任意保険会社が用いる算定基準 各任意保険会社が独自で定めており、公開されていない |
弁護士基準 | 弁護士や裁判所が用いる算定基準 裁判基準とも呼ばれ、過去の判例をもとにしている (関連記事:交通事故の慰謝料は弁護士基準(裁判基準)で請求) |

3つの基準の中でもっとも高額かつ法的に正当と言えるのは、過去の判例をもとにした「弁護士基準」の金額です。
一方、加害者側の任意保険会社は「自賠責基準」や「任意保険基準」で計算した慰謝料額を提示してくるでしょう。
この金額は、弁護士基準の半分~3分の1程度であることが多く低額なので、正しい相場である弁護士基準の金額を確認しておくことが重要です。
以上の前提知識を踏まえ、各慰謝料の計算方法を見ていきましょう。
なお、任意保険基準は非公開なので割愛しますが、自賠責基準とほぼ同等~やや高額な程度であると考えてご覧ください。
(1)入通院慰謝料の相場・計算方法
入通院慰謝料は、自賠責基準なら「日額×対象期間」で計算され、弁護士基準なら入通院期間ごとに金額が定められています。
例えばむちうちで通院3ヶ月した場合、自賠責基準と弁護士基準の金額は以下のように違います。
通院3ヶ月の入通院慰謝料
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
最大38万7,000円* | 53万円 |
*実通院日数によって変動する場合あり
それぞれの計算方法を解説します。
自賠責基準の入通院慰謝料
自賠責基準では、入通院慰謝料は以下のように計算します。
日額4,300円×対象日数
対象日数は、以下のうちいずれか少ない方を採用する。
- 治療期間(初診~完治または症状固定まで)
- 実際の治療日数×2
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
たとえば、治療期間90日、実際の治療日数30日の場合、対象日数はより短い「30日×2」が採用されるでしょう。そのため、自賠責基準の入通院慰謝料は4,300円×60日=25.8万円となります。
弁護士基準の入通院慰謝料
弁護士基準で入通院慰謝料を計算する時は、以下の算定表を用います。
むちうち・打ち身・擦り傷など、比較的軽傷の場合は「軽傷」の算定表を、それ以外は「重傷」の算定表をご覧ください。
弁護士基準の算定表(軽傷)

弁護士基準の算定表(重傷)

入院月数・通院月数が交わる部分が、入通院慰謝料の相場です。
なお、「1月」は1か月ではなく30日を意味します。入院日数・通院日数を30日で割り切れず端数が生じる場合は、日割計算を行います。
たとえば、追突事故で治療期間90日のケガをした場合、軽傷なら53万円、重傷なら73万円が相場となります。
弁護士基準では、自賠責基準のように実通院日数は基本的に考慮されません。ただし、通院の頻度があまりに低いと、慰謝料が減額される可能性があるので注意しましょう。
(2)後遺障害慰謝料の相場・計算方法
後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級に応じて以下のように設定されています。
後遺障害慰謝料の相場
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650万円 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 1,203万円 | 2,370万円 |
1級 | 1,150万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
例えばむち打ちの場合、後遺障害12級または14級に認定される可能性があります。
具体的な症状別に慰謝料の相場を把握したい方は、関連記事『交通事故の慰謝料事例|いくらもらった?実例から症状別の相場と増額方法を解説』もあわせてお読みください。
(3)死亡慰謝料の相場・計算方法
死亡慰謝料には、被害者本人分と被害者の家族分があります。
自賠責基準では、被害者本人分の金額に、遺族の人数や扶養の有無に応じた家族分の金額を足し、死亡慰謝料が決まります。
一方、弁護士基準では、被害者本人分と遺族分の金額を合算した金額があらかじめ設定されている仕組みです。
死亡慰謝料の相場
被害者 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
一家の支柱 | 400万円 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 400万円 | 2,500万円 |
独身の男女 | 400万円 | 2,000万円~2,500万円 |
子ども | 400万円 | 2,000万円~2,500万円 |
幼児 | 400万円 | 2,000万円~2,500万円 |
以下は該当する場合に加算 | ||
遺族1名 | 550万円 | – |
遺族2名 | 650万円 | – |
遺族3名 | 750万円 | – |
被扶養者あり | 200万円 | – |
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
自賠責基準の死亡慰謝料は、最高でも「遺族3名かつ被扶養者あり」のケースにおける1,350万円です。同様のケースの弁護士基準の死亡慰謝料とは、1,000万円以上の差が生じます。
なお、上記の表における「一家の支柱」とは、家計を支えていた人のことを指します。
たとえば、母子家庭において家計を支えていた母親が追突事故で亡くなった場合は、一家の支柱として認められ、弁護士基準の死亡慰謝料は2,800万円となります。
死亡慰謝料についてより詳細に知りたい方は、『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』の記事をご覧ください。死亡事故で慰謝料以外に請求できる費目についても解説しています。
弁護士が休業損害について解説
追突事故の示談交渉で損しないための注意点
追突事故で弁護士基準の慰謝料・示談金を得るには、示談交渉を成功させ、加害者側からの提示額を増額させなければなりません。
追突事故での示談交渉を成功させるための注意点は、次のとおりです。
- 過失割合10対0だと保険会社に示談を頼めない
- 通院頻度・通院先は慰謝料減額につながることがある
- 治療費打ち切りで治療をやめると示談に悪影響がある
- 後遺障害認定は示談金への影響が大きい
それぞれのポイントを確認していきましょう。
(1)過失割合10対0だと保険会社に示談を頼めない
交通事故の示談交渉は、「示談代行サービス」により、被害者自身が加入する任意保険会社に代行してもらえることが多いです。
しかし、追突事故で被害者側の過失割合が0だと、示談代行サービスを利用できません。よって、被害者自身で交渉にあたる必要があります。
この場合、被害者は以下の2点から示談交渉で不利になりがちです。
- 加害者側は、交渉のプロである任意保険会社の担当者が示談交渉にあたることがほとんど
- 過失割合10:0で過失相殺ができない分、加害者側の姿勢がシビアになりやすい
追突事故で被害者側の過失割合がない場合、過失割合に応じて示談金を減額する「過失相殺」が適用されません。
そのため、加害者側は示談金そのものを低額に抑えようという意識が強くなり、より厳しい態度で示談交渉に臨んでくることが多いです。
このような状況で、被害者だけの力で十分な示談金を受け取ろうと交渉しても、なかなか納得できる結果にならないことも多いです。また、被害者が交通事故の損害賠償問題に疎いことが伝わると、さらに強気な態度で交渉を進められることもあります。
示談金の増額が認められなかったり、加害者側の任意保険会社の交渉態度にストレスを感じていたりする場合は、交通事故に詳しい弁護士への相談・依頼を検討するとよいでしょう。
弁護士は法律のプロであり、過去の裁判例や法的に認められる請求の範囲も熟知しています。弁護士が出てくれば裁判への発展も現実的になるため、加害者側の任意保険会社は示談金の増額を認めることが多いです。

追突事故の被害者となった場合にはどう対応すべきか、過失割合の決まり方などの関連記事を読んでおくことをおすすめします。
(2)通院頻度・通院先は慰謝料減額につながることがある
治療中の通院頻度が低かったり、通院先が不適切だったりすると、入通院慰謝料が減額される可能性があります。
通院頻度や通院先を理由に慰謝料を減額されないためには、以下の点に注意しましょう。
- 通院頻度は月10回以上を目安とし、医師と相談しながら決める
- 整骨院への通院は医師の許可を得てからにする
それぞれのポイントを解説します。
通院頻度は月10回以上を目安とする
治療中の通院頻度は、月に10回以上を目安としましょう。
月10回よりも通院頻度が低いと、加害者側の任意保険会社に「すでにケガは治っているのに通院期間を引き延ばしているのではないか」「通院期間が長くなったのは被害者が治療に消極的だったからではないか」と疑われる可能性があります。
その結果、「治療期間が長引いた原因は被害者にもある」として、入通院慰謝料が減額されたり、治療費の一部が補償されなかったりするリスクがあるのです。
ケガの完治が近づいて通院頻度が下がった場合でも、最低でも月に1回以上は通院するようにしてください。
過剰通院や漫然治療にも要注意
医師の指示なしで毎日通院している場合、過剰通院を疑われ、「通院日数を多くして慰謝料を不正に多く受け取ろうとしているのではないか」として慰謝料が減らされるおそれがあります。
また、通院頻度が適正でも、薬や湿布を処方してもらうだけといった「漫然治療」を受けている場合も、慰謝料が減額されるおそれがあるので注意が必要です。
整骨院への通院は医師の許可を得てからにする
交通事故では基本的に、まずは整形外科などの病院に通ってください。
整骨院(接骨院)に通う場合は、以下の点をおさえるようにしましょう。
- 病院の医師から許可を得たうえで通う
- 保険会社にもあらかじめ連絡しておく
- 整骨院への通院と並行して、病院にも月に1回以上通う
整骨院での施術は、交通事故のケガを治すために必要なものと認められづらいです。そのため、整骨院に通院した分の治療費・入通院慰謝料は、認められなかったり減額されたりする可能性があります。
ただし、医師の許可を受けたうえで整骨院に通うなら、交通事故のケガを治すために必要なものと認められやすくなります。整骨院に通うことをあらかじめ保険会社に連絡しておけば、治療費などが減らされる可能性をさらに低くできるでしょう。
整骨院を利用する際の注意点について詳しく知りたい方は『交通事故で整骨院に通院する際の注意点|整形外科との違いは?』の記事をご覧ください。
(3)治療費打ち切りで治療をやめると示談に悪影響がある
交通事故では治療中、加害者側の任意保険会社が病院に直接治療費を支払ってくれることが多いです。しかし、途中で「治療費の支払いを打ち切る」と言われることがあります。
治療費打ち切りで治療を中断すると、慰謝料・示談金に関して以下のデメリットが生じます。
- 治療期間が短くなる分、入通院慰謝料が低額になる
- 後遺症が残っても、「十分に治療したうえで残った症状とは言えない」として後遺障害認定されず、後遺障害関連の慰謝料・示談金を受け取れない
もし治療費打ち切りを打診されたら、受け入れて治療をやめるのではなく、以下のように対応しましょう。
- 医師の意見を仰ぎ、まだ治療が必要なら意見書を書いてもらったうえで、加害者側の任意保険会社に治療費打ち切りの延長を求める
- もし治療費を打ち切られたら、残りの治療は一旦費用を立て替えながら受け、示談交渉時に立て替えた分を加害者側に請求する
治療費を立て替える際は、健康保険を使うと負担を軽減できます。交通事故における健康保険の使い方については、関連記事『交通事故で健康保険は使える!切り替え手続きやメリットも解説』をご覧ください。
(4)後遺障害認定は示談金への影響が大きい
交通事故で後遺症が残った時に受ける「後遺障害認定」は、慰謝料・示談金の総額に大きく影響します。
後遺障害認定の結果次第で、後遺障害慰謝料・逸失利益を請求できるか、金額はいくらになるかが変わるからです。
後遺障害認定を受ける際は、以下の点を意識した対策をしましょう。
- 後遺障害認定は基本的に書類審査である
- 後遺障害等級の認定基準や過去の認定事例を参考に、個々の症状に合った対策をする
具体的な認定対策は具体的な症状により異なるため、個別に判断しなければなりませんが、基本的には弁護士によるサポートのもと、「被害者請求」という方法で後遺障害申請することがポイントです。
詳しくは『後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由』をご覧ください。
追突事故の慰謝料・示談金についてよくある質問
続いて、追突事故の慰謝料・示談金についてよくある以下の質問にお答えします。
- 追突事故の慰謝料・示談金を受け取るまでの流れは?
- 追突事故でも過失割合が10:0にならないことがある?
- 追突事故でむちうちに。後遺障害認定対策は?
- 友人や家族の運転する車に同乗中に追突されたら?
Q1.追突事故の慰謝料・示談金を受け取るまでの流れは?
追突事故の発生から慰謝料・示談金を受け取るまでの流れは、以下のとおりです。
追突事故の流れ
- 追突事故が発生する
- ケガをしている場合、病院で治療を行う(完治したら示談交渉へ)
- 後遺症が残った場合、症状固定後に後遺障害認定の申請を行う
- 示談交渉を行う
- 示談が成立したら慰謝料・示談金を受け取り
- 示談が不成立ならADRや裁判で解決を目指す

なお、示談交渉は、以下の流れで進められます。
示談交渉の流れ
- 加害者側の任意保険会社から、示談金額や過失割合の提示を受ける
- 提示された内容について、交渉する
- 示談が成立したら、加害者側の任意保険会社から示談書が送られてくる
- 示談書に署名・捺印をして返送すると、2週間程度で示談金が振り込まれる
関連記事『交通事故の示談とは?進め方や損しないためのポイント』では、示談をスムーズに進めるための注意点を紹介しています。あわせてご一読ください。
示談成立前にお金を受け取る方法もある
示談金は基本的に示談成立後に振り込まれます。よって、治療や示談交渉が長引いた場合、経済的な不安を抱えてしまう被害者の方も多いと思われます。
もし、示談成立前に一定の金額を受け取りたいなら、加害者側の自賠責保険会社に「被害者請求」を行うとよいでしょう。
交通事故の示談金は、通常は任意保険会社から一括して支払われますが、その内訳には「自賠責保険会社が支払う分」と「任意保険会社が支払う分」が含まれています。

自賠責保険会社に被害者請求を行えば、この自賠責保険分を先に受け取ることが可能です。自賠責保険分の慰謝料などの金額は法令で定められているため、示談で決める必要がないからです。
被害者請求の手続きの方法は、『自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説』の記事で説明しています。
Q2.追突事故でも過失割合が10:0にならないことがある?
過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか、割合で示したものです。
追突事故の場合、基本的に被害者側の過失は0ですが、以下のような場合は被害者側にも過失割合がつく可能性があります。
- 被害車両の急ブレーキにより追突事故が起きた
- 被害車両が灯火義務を怠って停車したことで追突事故が起きた
- 被害車両が正しい場所・方法で駐停車していなかったために追突事故が起きた
被害者にも過失割合が付くと、その分、示談金が減らされてしまうので注意が必要です。
過失割合の決まり方や、追突事故の過失割合については、以下の関連記事をご覧ください。
納得いかない過失割合を提示されたら?
追突事故の過失割合は、基本的に示談交渉で決められます。
もし、加害者側の任意保険会社から納得いかない過失割合を提示されたら、事故状況を証明する資料を用意して反論しましょう。資料の例としては、以下のものがあげられます。
- ドライブレコーダーや現場周辺の防犯カメラ映像
- 警察が作成した実況見分調書
- 目撃者の証言
そもそも加害者側の提示する過失割合が不当なのか確認しておきたい、他にどのような証拠が有効なのか知りたいといった場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
Q3.追突事故でむちうちに。後遺障害認定対策は?
追突事故でむちうちになり、後遺症が残った場合の後遺障害認定対策としては、以下が挙げられます。
- 神経学的検査などで、症状の有無・程度を客観的に証明する
- 自覚症状とともに、その症状による生活や仕事への影響もアピールする
- 症状の一貫性・継続性を伝える
- 6ヶ月以上治療を続ける
むちうちの場合、認定される可能性がある後遺障害等級は12級13号または14級9号です。
12級13号に認定されるには「症状が残っていると明確に証明」する必要があり、14級9号に認定されるには「症状が残っていると推定」される必要があります。
そのために、上記のポイントを押さえた対策が必要です。詳しくは、後遺障害認定に精通した弁護士に相談することがおすすめです。
過去の認定事例や専門知識をもとに、的確なアドバイスを受けられます。
関連記事
むちうちの後遺症で後遺障害認定は難しい?認定対策や完治しない時の賠償金は?
Q4.友人や家族の運転する車に同乗中に追突されたら?
友人や家族の運転する車両に同乗していたとき、追突事故の被害者になってしまうケースもあるでしょう。
同乗者の立場であっても、慰謝料や治療費などの請求は通常どおり可能です。同乗者だからといって請求できる示談金が減ることはありません。
なお、被害車両の運転手にも過失がある場合は、損害賠償請求の相手は加害者と運転手である友人・家族になります。
運転手が友人であり、損害賠償を請求しづらいなら、事故の加害者に全額請求するとよいでしょう。加害者からの支払い後、加害者と友人の間で損害賠償に関する調整がされます。
運転手が家族の場合は、同じ家計となるため損害賠償を請求するメリットは少ないです。また、家族の加入する任意保険からは支払いを受けられません。
なお、以下のような場合では、同乗者の過失が問われたり賠償責任が生じたりする可能性があるので注意してください。
- 安全運転の妨害をした
- 事故車の所有者だった
- 好意同乗とみなされた
(好意により無償で自動車に同乗させることを言うが、一般的には好意同乗が原因の減額は行われない)
同乗者の慰謝料請求について詳しく知りたい方や、好意同乗による慰謝料減額をせまられている方は、以下の関連記事を参考にしてください。
追突事故の慰謝料・示談金については弁護士相談も検討しよう
弁護士への相談・依頼で叶う3つのこと
追突事故の示談金を請求する際は、弁護士への相談・依頼もご検討ください。
弁護士に相談・依頼をすると、次の3つのメリットが得られます。
- 慰謝料・示談金の増額
- 加害者側とのやりとりからの解放
- 専門的なアドバイス
すでに解説した通り、示談交渉で加害者側は低い示談金を提案してきます。十分な金額まで引き上げるためには、弁護士を立てることが重要です。
また、弁護士に示談交渉を任せれば、自分で加害者側とやりとりをする必要がなくなります。追突事故でありがちな、高圧的な言動をとられる、強引に交渉を進められるといったストレスから解放され、日常生活への復帰に集中できるようになるのです。
そして、依頼を受けた弁護士は、より良い示談を目指すパートナーとなります。示談だけではなく後遺障害などについても、法律家の視点からアドバイスを受けられます。より安心して示談成立を迎えられるようになるでしょう。
弁護士の検討に役立つ記事
- 示談金をいくら増額できる見込みがあるかわかる
『損害賠償額計算書や示談書が届いたら示談前にチェック|交通事故の示談金はいくら?』 - 弁護士に相談・依頼するメリットがわかる
『交通事故を弁護士に依頼するメリット10選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』
追突事故こそ弁護士費用特約の使いどころ!
弁護士費用特約とは、弁護士に依頼したときにかかる弁護士費用を保険会社が負担してくれる特約のことです。通常、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを負担してもらえます。

被害者の過失なしとなりやすい追突事故こそ、弁護士費用特約の使いどころと言えます。
先述のとおり、被害者の過失がない事故では保険会社の示談代行サービスを使えず、被害者自身で示談交渉を進めなければなりません。そのうえに、被害者側にとって不利な条件を提示され、なかなか増額を認められないことが多いのです。
このような場合、弁護士費用特約を使って弁護士を味方につけることが効果的に働きます。
法律の国家資格と専門知識を持つ弁護士の主張なら、加害者側の任意保険会社もないがしろにはできません。また、弁護士が出てくると任意保険会社は裁判への発展をおそれ、被害者側の主張を受け入れる傾向があります。
なお、弁護士費用特約を使う場合も、保険会社に紹介された弁護士に依頼する必要はありません。むしろ、保険会社に紹介された弁護士は加害者側のサポートの方を得意としていることも多いため、被害者自身でも交通事故に強い弁護士を探すことをおすすめします。
追突事故のようなもらい事故で弁護士費用特約を使うべき理由は、関連記事『もらい事故こそ弁護士特約を使って慰謝料増額!特約のメリットや使い方』で詳しく解説しています。
示談成立後は撤回不可のため「合意前の確認相談」が大切
示談が一度成立すると、原則的に撤回することはできません。
あとから「本来ならもっと多くの慰謝料・示談金を受け取れていたはずなのに…」と知っても、示談金を再度請求しなおすことはできないのです。
交通事故の損害賠償問題のような法的な問題は、「知らない人が損をしてしまう」ことが時としてあります。加害者側の任意保険会社と合意する前に、法律の専門家である弁護士に相談し、示談金が妥当か確認しておきましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了