追突事故の過失割合は?急ブレーキでも被害者に過失が必ずつくとは限らない

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追突事故の過失割合

追突事故の過失割合は10:0であり、追突された側は一切過失がないことが基本です。しかし、急ブレーキを踏んだなどの事情があれば、追突された側にも過失割合がつくことがあります。

もっとも、急ブレーキを踏んだからといって必ずしも過失割合がつくわけではありません。急ブレーキで過失割合がつくケース、つかないケースについて具体的に解説します。

他にも追突された側に過失割合がつくケースはあるので、詳しくみていきましょう。

なお、本記事で紹介する過失割合は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

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追突事故の過失割合は10:0が原則

追突された側に過失がつかない理由

追突事故では、追突した車に100%の過失があるという判断が原則になります。追突事故の過失割合が10:0になる理由は以下のとおりです。

  • 前方車両が後方からの追突を想定して回避することは難しい
  • 後方車両は前方車両の存在を確認しやすい
  • 事故回避のため、後方車両は前方と一定の距離を保つことが求められている(道路交通法第26条)

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

道路交通法第26条

もっとも、被害者に過失がなくても適切な事故対応が求められます。たとえば、負傷者の救護や二次被害を防ぐための対策、警察への通報は必ず行わねばなりません。

また、追突事故後には特に痛みを感じなくても、後から痛みが出てくることも考えられます。事故当日または遅くても翌日には病院を受診することが望ましいでしょう。

追突事故後の対応については関連記事もお読みください。

なお、10:0はあくまでも基本的な追突事故の過失割合です。

実際はさまざままな要素が考慮されて、追突された側に過失割合がつくこともあります。ここからは被害者が急ブレーキをかけたことが過失割合に与える影響をみていきましょう。

急ブレーキによる追突事故は10:0でないこともある

被害者側に過失がつくかは急ブレーキの原因による

追突事故であっても、追突された被害者側にも過失割合がつくことはあります。その一例は、被害者が急ブレーキを踏んで追突事故が発生した場合です。

被害者が不適切・不必要な急ブレーキを踏んだことで追突事故が発生した場合、過失割合は「追突車:被追突車=7:3」となるでしょう。

この理由としては、後続車が前方車の予期しない急ブレーキに反応し追突事故を回避するのは難しいこと、道路交通法第24条で急ブレーキが禁じられていることが挙げられます。

第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

道路交通法第24条

ただし、急ブレーキがやむを得ない状況だった場合は被害者側に過失がつかなかったり、ついても3割以下になったりします。

被害者側の急ブレーキについて、過失割合に加算される急ブレーキと、加算されない急ブレーキに分けてみていきましょう。

被害者側の過失割合に影響しうる急ブレーキの原因

以下のような急ブレーキで追突された場合は、被害者側にも過失割合がつくことが多いです。

  • 信号の見間違いによる急ブレーキ
  • 道を間違えたことによる急ブレーキ
  • 小動物の飛び出しによる急ブレーキ

信号の見間違いや道の間違いは明らかに被害者側の不注意・過失です。よって、こうした原因で急ブレーキを踏み追突された場合は、被害者側にも過失割合がつきます。

動物との事故について

小動物の飛び出しによる急ブレーキは、過失割合加算の対象となるか議論の余地があるでしょう。

イノシシや鹿のような大型動物が飛び出してきた場合は、急ブレーキをかけて衝突を避けなければ大きな被害が生じるおそれがあります。よって、この場合は急ブレーキにより追突事故が生じても、被害者側は過失に問われない傾向です。

一方、猫や鳥のような小動物は大型動物よりも回避の必要性が低いと考えられるため、「急ブレーキをかけざるを得ない状況ではなかった」として過失割合がつく可能性があります。

過失割合はもめやすい

過失割合は損害賠償額に直結するため、相手方と意見が対立しやすい部分といえます。

とくに被害者側に急ブレーキをかけたという事実があったり、加害者が「前の車が急ブレーキをかけた」などと主張していると、過失割合の交渉は難航する恐れがあるでしょう。

加害者側と過失割合についてもめているなら、弁護士からアドバイスを受けることをおすすめします。

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被害者側の過失割合に影響しづらい急ブレーキの原因

以下のような急ブレーキはやむを得ないものとされるため、急ブレーキによる追突事故で被害者側の過失割合加算にはつながらないことが多いです。

  • 前方に飛び出してきた歩行者や自転車などを避けるための急ブレーキ
  • 道路の損傷や道路上の障害物を避けるための急ブレーキ

ただし、こうした事情も相手方から反論を受ける可能性もあり、様々な証拠を用いての交渉・立証が必要になる場合もあります。

過失割合でもめている場合や、今後もめそうな場合は、弁護士への相談・依頼も早めに検討をする方が良いでしょう。

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急ブレーキによる追突事故のよくある疑問

あおられて急ブレーキをかけ追突されても被害者側に過失がつく?

後続車からのあおり運転を受けて急ブレーキをかけ追突された場合、被害者側にも過失割合が付く可能性があります。

あおり運転をされた場合の急ブレーキは危険を回避するためのやむを得ないものとはいえないことが多いためです。

渋滞で停車中に追突された場合の過失割合は?

渋滞中に追突された場合でも、基本的には過失割合は「追突車:被追突車=10:0」です。

なお、渋滞中の追突事故が玉突き事故に発展した場合、一番うしろから順にぶつかったなら基本的に一番うしろの車両の過失が100%となります。

玉突き事故の過失割合

ただし、前方車の急ブレーキが原因の玉突き事故に関しては、前方車にも過失がつく見込みです。

玉突き事故のパターンごとの過失割合も解説している関連記事『玉突き事故の過失割合や損害賠償責任を負う人は?追突の順番や原因別に解説』も併せてご覧ください。

高速道路で急ブレーキをかけ追突された場合の過失割合は?

高速道路で急ブレーキをかけ追突された場合、過失割合は基本的に「追突車:被追突車=5:5」となります。

一般道の場合よりも被追突車側の過失割合が多くなるのは、高速道路では停車してはならないという決まりがあるからです。

また、追い越し車線ではより一層、停車による危険度が高いと考えられています。

追い越し車線上で急ブレーキをかけ追突された場合は、追突した側よりも追突された側のほうが過失割合が大きくなる可能性もあるでしょう。

高速道路で事故にあった時には、車の中にとどまったり、道路上を歩き回ったりする行為は危険です。高速道路上での事故対応は関連記事『高速道路で事故にあった時の対処法』で詳しく解説しています。

急ブレーキで追突された場合の過失割合の注意点

追突事故の損害賠償金相場と過失割合による影響

追突事故にあった場合に請求できる損害賠償金の内訳と相場は以下のとおりです。

  • ケガに対する費目
    • 治療費:基本的に実費
    • 入通院慰謝料:ケガの程度や治療期間を元に計算
    • 休業損害:1日あたりの収入✕休業日数 など
  • 後遺障害に対する費目
    • 後遺障害慰謝料:後遺障害等級ごとに110万円から2,800万円
    • 後遺障害逸失利益:被害者の事故前収入や後遺障害の内容などで計算
  • 物損に関する費目
    • 車の修理費、弁償代:基本的に実費
    • 積載物の修理費、弁償代:基本的に実費 など

なお、追突事故の示談金の内訳や相場については関連記事を読むとさらに理解が深まります。

加害者側は低い賠償金額を提示してくることが多いです。適切な金額を得るためには増額交渉が欠かせません。

法律の専門家である弁護士から交渉することで増額が実現される可能性が高まります。

法的に正当性の高い慰謝料や逸失利益の相場は、以下の「慰謝料計算機」でも確認できるので、お気軽にご利用ください。

過失割合は損害賠償金額の減額に影響する

急ブレーキをかけたあと追突事故にあい、被害者側に過失割合がついた場合、その割合分、受け取れる損害賠償金が減額されます。これを過失相殺といいます。

たとえば損害賠償金が本来200万円でも、急ブレーキにより被害者側に3割の過失割合がつけば、受け取れる金額は140万円になってしまうのです。

少しでも被害者側に支払う損害賠償金を減らしたい加害者側にとって、こうした点から過失割合は非常に重要です。「被害者が急ブレーキを踏んだ」という事実があるならなおさら、それを口実に被害者側の過失割合を大きくしようとするでしょう。

「低い損害賠償額と大幅な過失相殺」を防ぐためには?

加害者側は損害賠償額を低く計算して提示してくることが多いです。そのうえ被害者側の過失割合が大きくなってしまえば、実際に受け取れる金額は本来の相場よりも大幅に低くなってしまいます。

多くの場合、示談交渉の相手は加害者側の保険担当者です。示談交渉経験も知識も豊富なので、被害者による交渉はうまくいかないことがほとんどでしょう。

示談交渉で弁護士を立てれば、加害者側の提示額を適切な金額まで増額させ、さらに被害者側の過失割合が極力小さくなるよう交渉できるのです。

増額交渉(弁護士あり)

弁護士は示談交渉経験も専門知識も豊富に持っていますし、いざとなれば裁判も起こせます。よって、弁護士が出てくると交渉態度を弱める保険担当者も多くいます。

ご自身の急ブレーキにより追突事故が起きてしまった場合は、ぜひ弁護士までご相談ください。

急ブレーキ以外で被害者側に過失割合がつく要因

追突事故では、急ブレーキ以外にも以下のような場合に、被害者側に過失割合がつくことが多いです。

  • 追い越そうとする車両を妨害した
  • 夜間に灯火なしで駐車していた
  • 駐車の場所・方法が不適切だった

それぞれの具体例や、加算される過失割合を見ていきましょう。

追い越そうとする車両を妨害した

自車を追い越そうとする車両に気づいていながら速度を落とさなかったり、追い越そうとする車両に追い越されまいとあえて速度を上げたりすると、追い越し妨害と判断されることがあります。

追い越し妨害により追突された場合、被害者側には20~40%の過失割合が加算される見込みです。

夜間に灯火なしで駐車していた

夜間にヘッドライトやスモールライト、テールランプ、ハザードランプなどを適切に灯火させていなかった場合、灯火義務違反になります。

これにより追突事故が起きた場合、被害者側には10~20%の過失割合が加算されるでしょう。

夜間に適切な灯火をしていなければ後続車から存在を認識されにくくなります。こうした点から、被害者側にも追突事故に対する責任があるとされるのです。

なお、ランプが故障していて灯火できていなかった場合も、同様に過失割合が加算されることがあります。

駐車の場所・方法が不適切だった

駐車禁止場所やトンネル、交差点・道路の曲がり角・横断歩道・踏切などの近くといった不適切な場所に駐車していて追突された場合、被害者側には10~20%程度の過失割合が加算されることがあります。

車道を塞ぐ形で駐車していた場合や交通量の多い場所に駐車していた場合など、駐車方法が不適切だった場合も同様です。

以下の記事は路上駐車との事故に関する解説記事ですが、路上駐車側に過失がつく可能性も解説していますので参考にしてください。

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アトム法律事務所では、追突事故にあってケガをされた方を対象に、無料の電話・LINE相談を受け付けています。

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弁護士費用特約が使えない場合は原則として着手金が無料です。お気軽にご連絡ください。

弁護士費用特約とは?

弁護士費用特約を利用できれば、保険会社に契約者の弁護士費用を代わりに支払ってもらえます。約款次第ですが、法律相談料10万円、弁護士費用300万円までを補償上限としているものが多いです。

弁護士費用特約とは何か

弁護士費用特約の補償外の部分は、被害者自身で支払う必要があります。

しかし、交通事故の弁護士費用は特約の補償内でおさまることも多く、被害者が弁護士費用を自己負担する必要がないケースも多いです

交通事故の弁護士費用特約について詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?』も参考にしてみてください。

過失割合10:0の被害者も弁護士依頼は有効!

停車中に後ろから追突されるような事故類型は「もらい事故」とも呼ばれます。

もらい事故は、原則被害者側に過失がないので、「満額の慰謝料がもらえるだろう」と考えるものでしょう。

たしかに過失割合に応じた減額はないので、相手の保険会社から提示された金額は満額もらえます。しかし、そもそも相手の提示額が不十分なので、たとえ満額もらえても、法的に正当な金額とはかけ離れている可能性が高いです。

10:0の過失割合の場合、被害者は賠償責任を負いません。賠償責任がないとき、被害者は自身の加入する任意保険会社に示談交渉を任せることはできず、自身が交渉の矢面に立たなくてはならないのです。

  • 相手の保険会社とのやり取りに疲れた
  • 弁護士基準まで増額してほしいと言ったが聞き入れてもらえない
  • まだ痛みがあって治療を続けたいのに治療費を打ち切られそう

こうしたお困りごとがある方は、一度弁護士にご相談下さい。交通事故の賠償問題に精通した弁護士であれば、適切なアドバイスが可能です。

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もらい事故の被害者が読んでおきたい関連記事もご紹介します。弁護士への相談を迷っている方は、あわせてご覧ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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