動物との交通事故!事故後の対応や使える保険。野生動物とペットの違いは?

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動物との交通事故

動物との事故に遭遇した方、または今後の対策として知っておきたい方へ。

動物との事故は、法律上、物損事故として扱われます。免許の減点や反則金の納付はないですが、警察への連絡や危険防止措置等は必要です。

野生動物との接触事故は、自損事故となるため、車両損害はドライバー自身の負担、または加入する保険を利用することになります。

なお、愛玩動物(飼い主のいるペット)との接触事故は、ペットの飼い主との間で賠償問題が生じます。

本記事では、動物との接触事故を起こしてしまった場合の対応と保険の関係を説明していきます。

目次

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野生動物との接触事故にあったときの対応

野生動物との交通事故で最も重要なのは主に以下の3点です。

動物との接触事故の対応例

  • 二次被害防止のための安全確保
  • 警察への通報(保険請求に必要)
  • 保険会社への連絡(補償を受けるため)

など

野生動物との接触事故を起こすと、車両やドライバーの損害だけでなく、動物の命や後続車への二次被害などのリスクもあります。

また、警察に連絡するという対応を怠ると後々の補償請求時に困ることになりかねません。

以下では、上記3つのポイントを一つずつ、解説していきます。

1. 二次被害の予防と野生動物の安否確認

動物と接触事故を起こしたら、二次被害の予防と野生動物の安否確認が必要です。できるだけ路肩や非常駐車帯に車両を停車させてください。

そして、通行車両に注意しながら、二次被害を防止するために三角表示板などで後続車に異常を知らせましょう。

二次被害防止の対策後は、衝突した動物の安否を確認します。

動物がケガをしていれば、動物病院に連れて行きましょう。
感染症の危険があるため素手で触らず、タオルや段ボールなどで包んでください。

動物が暴れる等して対応が難しいときは、動物病院や保護施設に連絡し、指示をあおぎます。

野生動物の治療を無償とする施設でないかぎり、ドライバーが原則負担することになります。

すでに動物が死亡している場合は道路緊急ダイヤル「#9910」に連絡しましょう。

一般道よりも二次被害の可能性が高い高速道路上の事故においては、より慎重な安全確保が必要になります。
詳しく知りたい方は『高速道路で事故にあった時の対処法|料金所付近の事故の過失割合は?』の記事をご覧ください。

2. 警察に通報する

動物との接触事故を起こした場合は、必ず警察に通報しましょう。通報時は必ずガードレール外に出るなど安全な場所に退避してください。

警察に通報すべき理由としては、物損事故であっても交通事故発生の報告が義務付けられているからです。
この義務を怠ると、道路交通法違反に問われることもあるでしょう。

また、動物との接触事故は単独事故となるため、ドライバー自身の加入する任意保険から補償を受けることになります。

保険会社に対する保険金の請求には、警察が作成する「交通事故証明書」の提出が必要となるので、警察への通報を行い、「交通事故証明書」の作成を行ってもらいましょう。

交通事故証明書には、事故発生日時、事故発生場所、交通事故の当事者氏名などが記載されています。

交通事故証明書の入手方法

交通事故証明書をもらうには、まず「交通事故証明書申込用紙」に記入をして提出します。

各都道府県の自動車安全運転センターや郵便局またはゆうちょ銀行からの提出・支払が可能です。発行には費用が掛かるため、提出を求められた際は「原本」か「コピー」かを確かめておきましょう。

交通事故証明書の詳しい入手方法については『交通事故証明書とは?後日取得の期限やもらい方、コピーの可否を解説』の記事で確認可能です。

3. 任意保険会社に連絡する

車両の修理が必要だったり、ドライバーがケガをしたりしているときは任意保険会社に連絡しましょう。

事故の損害の範囲(車の修理のみか、ご自身もケガをしたのか)を申告して、利用できる保険や利用のメリット・デメリットを聞いておくことをおすすめします。

使用する保険次第では等級が下がり、翌年の保険料に影響を及ぼす恐れがあるためです。

野生動物との事故は単独事故あつかい

野生動物には所有者がいませんので、交通事故は単独の物損事故という扱いになります。

単独事故はいわゆる自損事故と扱われ、車両側が負った損害については自分の保険から補償を受ける必要があるので保険会社への連絡が大切になるのです。

    野生動物との事故で保険はおりる?

    野生動物との事故では、自身の車両保険人身傷害保険搭乗者傷害保険自損事故保険等の利用が考えられます。

    飼い主のいるペットとの事故と異なり損害を請求できる相手がいないため、自損事故として自身の保険を利用することとなります。

    ただし、契約内容しだいでは補償対象外となることも十分あるので、契約内容をよく確認してください。

    動物との事故で車両が損傷した場合に使える保険

    動物との事故でも車両保険は使える?

    動物と接触事故をおこして車両が破損した場合、ご自身の車両保険から補償を受けることができます。

    【要注意】エコノミー型は動物との事故に使えない?

    車両保険には一般型とエコノミー(限定)型があり、エコノミ―型の場合は(自損事故が補償対象外となることが多く、)動物事故による補償を受けられないことも多いです。

    一般型とエコノミー型の主な違い(車両保険)

    一般エコノミー
    自損事故
    他車との衝突
    当て逃げ
    台風・洪水

    エコノミー型は一般型と比べて補償範囲が狭いです。
    そのため、自損事故については補償外となっている可能性があります。

    動物事故に関連するものでいえば、鳥類が飛来して窓ガラスにひびが入ったり、ガラスが割れたりした場合の補償のみというエコノミー型も有り得ます。

    もっとも、保険商品によってはエコノミー型であっても動物事故の損害に対して保険請求できる場合があるので、詳細な補償内容は必ずご自身の保険会社に確かめるようにしてください。

    動物との事故で人がケガをした場合に使える保険

    野生動物との事故によりケガを負った場合には、人身傷害保険、自損事故保険、搭乗者保険といった保険を利用できる可能性があります。

    それぞれの保険における、一般的な補償内容は以下の通りです。

    人身傷害保険

    人身傷害保険とは、被保険者や同乗者が車の搭乗中に交通事故によって死傷した場合に、保険会社から補償がなされるという保険です。

    実際に生じた損害について、保険加入時に定めた上限額の範囲内で補償してくれます。

    人身傷害保険について詳しく知りたい方は『人身傷害保険ってどんな保険なの?慰謝料も受け取れる保険について解説』の記事をご覧ください。

    自損事故保険

    自損事故保険は、自損事故を起こしたドライバーや、同乗者が死傷した場合に補償してくれる保険です。基本的に、自動車保険には付帯されているものなので、特別な加入手続きは不要とされています。

    もっとも人身傷害保険と比べると補償金額が低水準なので、自損事故保険で全ての損害を補てんできるとは言い難いものです。

    なお、人身傷害保険と重複している場合は、人身傷害保険のほうが適用され、より広い補償を受けられます。

    搭乗者傷害保険

    搭乗者傷害保険は、保険契約者とその家族や、契約車両の同乗者に生じたケガなど、人身損害を補償する保険です。

    もっとも実際の発生損額ではなく、こういったケガの場合にはいくら、この部位ならいくら、といった定額計算による保険金支払いがなされます。

    このように、野生動物との事故である自損事故では、さまざまな保険が適用される可能性があるのです。

    関連記事である『自損事故で使える保険や補償の範囲は?』も参考にしてみてください。

    動物との事故で保険を使った場合の保険の等級

    一般的に、車両保険を利用すると等級ダウンとなり、翌年の保険料が上がります。

    動物との事故も物損事故なので、約款の範囲で保険の利用は可能です。

    しかし、保険を使って修理すべきかどうかは、修理代と保険料の増額とを比較して判断する必要があります。ご自身の保険会社の担当者と相談して検討してみましょう。

    車両保険の免責に注意

    車両保険の免責金額とは、保険会社が補償してくれるもののうち、保険者自身で自己負担する金額のことです。

    たとえば、免責金額を5万円とする契約において、事故の修理費用が30万円だった場合には、30万円から免責金額の5万円を控除した25万円が保険金となります。

    車両の損害額が免責額を下回る場合、保険金は支払われません。

    野生動物との事故で人がケガをした場合の補償は?

    人身傷害保険から治療費や慰謝料がもらえる

    動物との接触事故でドライバーや同乗していた人がケガをした場合、人身傷害保険から治療費や慰謝料を受け取ることができます。

    交通事故の損害賠償費目には、治療関係費、休業損害、慰謝料、逸失利益といった費目が該当します。

    交通事故の主な損害賠償費目

    費目内容
    治療関係費治療費、入院費、通院交通費など
    休業損害治療のために仕事を休んだことへの補償
    入通院慰謝料治療の際に生じる精神的苦痛に対する補償
    後遺障害慰謝料後遺障害による精神的苦痛に対する補償
    後遺障害逸失利益後遺障害による生涯収入減額への補償
    死亡慰謝料ケガで死亡した精神的苦痛に対する補償
    死亡逸失利益生涯得るはずの収入を失ったことへの補償

    ※請求可能な費目は被害者の負った損害により異なる

    治療費や慰謝料、休業損害として補償される金額は保険約款に基づきます。

    後遺障害(逸失利益)の保険金は増額可能!?

    野生動物との接触事故でケガを負った場合は、人身傷害保険から補償を受けることとなりますが、金額については基本的に約款に従うことになるため、増額交渉の余地はありません。

    しかし、後遺障害認定を受けた場合は別です。

    野生動物との事故でケガを負い、何らかの後遺症が残ってしまうことは十分あり得ます。

    たとえば、骨折箇所が動かしづらくなったり、変形したままだったり、指先が動かせないなどの症状があげられるでしょう。

    こうした後遺症は1級から14級までの後遺障害等級認定を受けることで、等級に応じた補償を受けることができます。

    後遺障害への補償のうち「逸失利益」という費目は、保険の約款に明確な算定基準がないことも多いです。

    逸失利益とは

    そのため、後遺障害等級に応じた適正な補償額を提示されていない可能性があります。

    後遺障害認定を受けた場合、保険会社から提示されるの逸失利益の金額については、一度弁護士に金額が適切なのかを確認してもらうことをおすすめします。

    野生動物との事故にまつわる気になる疑問

    Q.野生動物との接触事故はどのくらい起きている?

    大型動物(例:シカ、熊、イノシシ)、中型動物(例:タヌキ、犬、猫)、小型動物(例:鳥類)など野生動物との接触事故は誰にでも起こり得る事故です。国土交通省発表の「高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)」による数だけでも、ロードキルは年間5.1万件に及びます。

    Q.野生動物をはねる事故はどんな罪になる?

    偶然の事故の場合には罪に問われることはないでしょう。
    そのため、動物との事故を起こした場合にも、あわてず、速やかに警察へ事故発生を連絡するなど適切な対応を心がけてください。

    ただし、故意に動物を引いた場合には動物愛護法違反、器物損壊罪として処罰される可能性があります。

    また、ニホンカモシカやイヌワシ、奈良の鹿などは国指定の天然記念物です。こうした天然記念物への殺傷は文化財保護法違反にあたり、拘禁刑になる可能性もあります。

    Q.野生動物をはねる事故を防ぐ方法は?

    動物との事故であるロードキルを防ぐためには、以下のような対策を取るべきでしょう。

    動物との事故を防ぐ方法

    • 警戒標識が設置されている周辺では、動物との遭遇時にすぐ停止できるよう、速度を落として走行する
    • 夜間はハイビームを使用して、動物を発見しやすくする
    • ロードキルの多い地域かどうかを事前に確認する

    など

    動物たちの移動経路に、人間が車道を作ってしまい、動物たちが道路を横断せざるを得なくなったことが、ロードキルがおきる大きな原因のひとつです。

    動物たちは、車が何であるか、どのくらいのスピードが出るのか、理解できません。人間が対処しない限り、事故につながってしまいます。

    その他にも、動物ごとに事故に遭いやすい理由があります。

    動物事故になる理由
    シカ ・群れのリーダーの後を追って飛び出す
    ・車道では蹄が滑り、逃げられない
    熊 ・茂みから突然飛び出す
    ・警戒心が強く、攻撃性も強い
    イノシシ ・パニックになると突進してしまう
    タヌキ ・夜行性(夜は、ドライバーの視界が悪くなる)
    ・車のライトに驚いて固まる(タヌキ寝入り)
    きつね・夜行性
    犬、猫 ・獲物を追いかける本能が刺激され飛び出す
    ・パニックになると、立ち止まったり、突っ走ったりする
    鳥 ・夜行性の鳥も多い
    ・ロードキルにあった屍肉を食らうカラス・とびが、さらに事故に遭う

    国土交通省の「高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)」で計上される動物は、大型(例:シカ、熊、イノシシなど)、中型(例:タヌキ、キツネ、犬、猫など)、小型(例:鳥類などその他小型動物)という3分類ですが、中型の動物が事故に遭う件数がもっとも多いです。

    タヌキを例にあげると、夜行性であること、車のライトに目が眩んで道路上で立ち止まってしまうことが事故にあいやすい要因ともいわれています。

    また、動物によっては複数で移動する習性もあり、1匹を避けることが出来ても、後続をはねてしまうこともあるようです。

    動物との事故を防ぐには、ドライバー、1人ひとりが動物の習性や地域の特性を理解し、注意深い運転を心がけることが大切です。安全運転は、自分自身だけでなく、動物たちの命も守ることにつながります。

    Q.動物との事故を避けた後、ガードレールに突っ込んだら保険はおりる?

    非接触の事故であっても、自損事故として車両保険や人身傷害保険から保険金を受け取ることが可能です。

    ただし、車両保険が自損事故を対象としていることが前提といえます。

    また、警察によって「交通事故証明書」が作成されていないと、保険金請求ができない可能性が高いです。必ず事故の発生を連絡してください。

    ガードレールに突っ込んでしまった場合には、ガードレールの修理費用の支払いが必要になる可能性があります。

    弁償の手順や利用できる保険などについて詳しく知りたい方は『ガードレールにぶつかった!事故後の報告義務と点数|弁償はどうなる?』の記事をご覧ください。

    Q.野生動物との接触を避けて対向車と接触したらどうなる?

    野生動物との接触を避けようとして急ハンドルを切り、対向車と接触事故を起こした場合には、対向車から損害賠償請求をされる可能性があります。

    対向車の物的損害については対物賠償保険、人的損害については対人賠償保険を使って対応することになるでしょう。

    センターオーバーで対向車に接触している場合には、対向車側には何ら過失がないと判断される見込みです。その場合、相手方からの補償は受けられないので、自身の保険を使うことになります。

    野生動物ではなく愛玩動物(ペット)との事故はどうなる?

    愛玩動物(ペット)との事故は飼い主にも連絡する

    ペットとの事故が起きてしまった場合は、警察や保険会社だけでなく、ペットの飼い主にも連絡を行いましょう。

    ペットのケガや自身の損害に関してはペットの飼い主との間でやりとりを行う可能性があるため、飼い主の連絡先を知らない場合は、お互いの連絡先を交換する必要があります。

    愛玩動物(ペット)との事故は飼い主に損害賠償請求できる可能性がある

    ペットの飼い主がペットの管理を怠ったために交通事故が発生した場合には、ペットの飼い主に対して損害賠償請求を行える可能性があります。

    愛玩動物(ペット)との事故は飼い主から賠償請求されるリスクもある

    ご自身にも事故の責任(過失)がある場合は、逆に、ペットの飼い主への賠償が必要になります。

    ペットの治療費といった損害についてペットの飼い主に支払う義務が生じる可能性がある点に注意してください。

    この場合、ご自身の対物賠償保険が使える可能性があります。

    保険の適用範囲(愛玩動物との事故に使えるか、事故の補償範囲はどこまでか等)については、加入されている保険会社にご確認ください。

    動物との事故で悩んだら弁護士に相談を

    動物との事故で覚えておきたいこと【まとめ】

    動物との接触事故(対応まとめ)

    • 野生動物との接触事故も、必ず警察に報告する
    • 野生動物との事故は車両保険を使える(契約内容による)
    • 野生動物との事故でケガをした場合は人身傷害保険などに保険金を請求できる
    • ペットとの事故では飼い主に対して損害賠償請求できる可能性あり
    • 後遺障害が残った場合の保険金については一度弁護士に相談する価値あり

    動物との接触事故を起こした場合も、危険防止措置や警察への連絡は必要です。

    動物との接触事故は、基本的に自損事故ですが、同乗者が負傷してしまったような場合には、人身事故としての対応も必要になります。

    自身が負傷してしまった場合、人身傷害保険に対して、保険金を請求できる可能性があります。

    人身傷害保険は通常、保険の約款にしたがい、保険金を受け取ることになりますが、後遺障害について増額交渉できる可能性があります。

    動物との事故で、後遺障害が残ってしまった方は、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談して、今後の見通しを確認してみてください。

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    岡野武志弁護士

    監修者


    アトム法律事務所

    代表弁護士岡野武志

    詳しくはこちら

    高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
    現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

    保有資格

    士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

    学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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