交通事故証明書のもらい方は?後日取得やコピーの可否も解説
更新日:
交通事故証明書は交通事故が起きたことを公的に証明する書類で、損害賠償金や保険金の請求時などに必要になります。
交通事故証明書のもらい方は、加害者が任意保険に入っているか入っていないかによって変わってきます。
また、ケガをしているのに物損事故として警察に届け出ている場合は別の書類を用意することが必要です。
交通事故証明書の記載内容や用途、取り寄せ方などについて詳しく見ていきましょう。
50件以上の
お問合せ
交通事故証明書とは?
交通事故証明書がなぜ必要なのか、どのような場面で用いられるのかについて解説します。
交通事故証明書は事故の事実を証明するもの
交通事故証明書は、交通事故が発生した事実を客観的に証明するための書類です。
自動車安全運転センターという警察庁所管の機関で、警察が提供した証拠資料を基に交付されます。
交通事故証明書は、交通事故の被害者が正当な補償を受けるために重要な役割を果たす書類です。
交通事故証明書の発行には警察への事故届け出が必須
交通事故証明書を発行してもらうには、前提として事故の発生を警察に届け出ていることが必須となります。
交通事故証明書は警察が提供した情報をもとに作成されるため、そもそも警察が事故を確認していなければ、交通事故証明書の作成は不可能なのです。
交通事故が起きた後の対応は警察への連絡以外にもいくつかあります。
詳しく知りたい方は『交通事故にあったら初期対応の手順は?事故を起こしたらまずすること』の記事をご覧ください。
ケガをしているなら人身事故としての証明書発行が重要
交通事故証明書には、人身事故か物損事故かを書く欄があります。
ケガをしているのに物損事故として届け出ていると、交通事故証明書には「物損事故」と書かれてしまい、のちの保険金請求・賠償請求で不利益を被る可能性があります。
ケガをしているのに交通事故証明書に「物損事故」と書かれているとどうなる?
- 自身の保険への保険金請求がスムーズにできない可能性がある
- 加害者側から人身被害に関する賠償金を十分に受け取れない可能性がある
たとえ警察や加害者から物損事故として届け出るようすすめられても、ケガをしているなら人身事故として届け出たうえで交通事故証明書を取得しましょう。
すでに物損事故として届け出ていても、人身事故への切り替えは可能です。詳しい手続きは以下の関連記事をご確認ください。
交通事故証明書に記載される内容|見本あり
交通事故証明書の見本は、次のとおりです。
出典:自動車安全運転センター
見本からもわかるとおり、交通事故証明書には以下の内容が記載されます。
- 事故照会番号
交通事故の処理を担当した警察署に照会する際に必要な番号 - 交通事故の発生日時と発生場所
交通事故がいつどこで発生したかを証明するための情報 - 交通事故の当事者の情報
事故の当事者に関する情報を記載したもの
当事者の氏名・住所・生年月日・運転をしていたか同乗していたかなど
当事者が2人いる場合は、甲・乙として記載される - 当事者の車両の情報
当事者が搭乗していた車両に関する情報
車種・車両番号・証明書の番号・自賠責保険の有無など - 交通事故の事故類型
事故がどのような状況で発生したのかを示すもの
車両同士の事故か、人との接触事故かなどの当事者の関係、正面衝突、側面衝突、追突などの事故の形態、単独事故かなどが記載される - 照合記録簿の種別
人身事故か物損事故(物件事故)かが記載される
交通事故証明書の記載内容に誤りがある場合は、事故を管轄する警察署に連絡することで訂正してもらえます。
過失割合や事故原因などは記載されない
交通事故証明書はあくまで交通事故が発生した事実を証明するための書類なので、以下のような情報は記載されません。
- 事故発生の原因
- 事故の目撃者や証言
- 事故の損害の内容や損害額
- 当事者のどちらが加害者か被害者か
- 当事者の過失割合
過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか、割合で示したものです。
過失割合は示談交渉にて事故当事者同士の話し合いで決められるため、交通事故証明書には記載がありません。
交通事故証明書の他に取得しておきたい書類
過失割合を決める際は、事故の原因や事故状況、目撃者の証言などが参考にされます。これらは警察が作成する「実況見分調書」や「供述調書」に記載されているので、示談交渉前に取り寄せておきましょう。
過失割合の決め方や実況見分調書の取り寄せ方については、以下の記事をご確認ください。
ただし、実況見分調書や供述調書は事故当事者にケガが生じてるいる人身事故の場合にのみ作成されるので、物損事故では作成されません。
物損事故の場合には、警察が作成する簡易的な報告書である「物件事故報告書」が作成されるだけであることに注意してください。
交通事故証明書はいつ何のために必要?
交通事故証明書の基本的な概要がわかったところで、次はどのような場面で交通事故証明書を使うのか解説します。
使う場面がわかれば何部取り寄せれば良いのかもわかります。
交通事故証明書が必要な場面|ないとどうなる?
交通事故証明書は、主に保険会社に対して損害賠償請求・保険金請求をする際に必要になります。具体的には次のような場面です。
- 加害者側の任意保険から示談金を受け取るとき
- 自賠責保険から自賠責保険金を受け取るとき
- 被害者自身が加入する自動車保険を利用して保険金を受け取るとき
- 交通事故の治療で健康保険を利用するとき
- 労災保険から補償を受け取るとき
- 民事調停や民事訴訟の手続きを行うとき
- 実況見分調書・供述調書といった刑事記録を取り寄せるとき
など
損害賠償請求や保険金請求、訴訟や刑事記録の取り寄せ時には、本当に交通事故が発生したことを証明しなければなりません。交通事故証明書は、そうした場面で使われるのです。
交通事故証明書が発行されない場合のリスク
交通事故証明書が発行されない場合、交通事故が発生したことを公的に証明できません。
そのため、例えば交通事故の相手方に対して損害賠償請求を行う際には、以下のようなリスクが生じる危険性があります。
- 交通事故が本当にあったかどうか調査を行うことにより、損害賠償金の支払いが遅れる
- 大きなケガではないと推定され、治療費用の支払いを一部拒否される
- 交通事故により残った後遺症が後遺障害に該当しないと主張される
以上のようなリスクが生じることを避けるためにも、交通事故が発生した場合には、速やかに警察への届け出を行い、交通事故証明書を発行できるようにしておきましょう。
交通事故証明書は何通必要?コピーも使える?
交通事故証明書が必要になる場面は上で紹介したとおりです。同一の交通事故証明書を使い回すことはできないので、必要な分だけ用意しましょう。
なお、交通事故証明書は「原本証明印」が押されていればコピー(写し)でも使えることが多いです。
賠償請求や保険金請求などでは、基本的に交通事故証明書原本の提出を求められます。
しかし、コピーであっても原本証明印があれば原本と同等に扱われるのです。
単に原本をコピーしただけのものでは受理されないので、注意しましょう。
原本証明印が押されたコピーの取得方法は、原本の取得方法と合わせてこの次の章で解説します。
交通事故証明書はどうやって入手する?
交通事故証明書の申請方法と手数料
交通事故証明書の申請方法と手数料は、加害者が任意保険に入っているか否で異なります。
交通事故証明書の申請方法
- 加害者が任意保険に入っている場合
- 加害者側の任意保険会社に提出するための交通事故証明書:被害者側での用意は不要。手数料0円。
- 上記以外のために必要な交通事故証明書:加害者側の任意保険会社に連絡すると、原本証明印を押した写しがもらえる。手数料0円。
- 加害者が任意保険に入っていない場合
- 自動車安全運転センター、郵便局またはゆうちょ銀行、インターネットいずれかで申請。手数料800円。
※交付手数料は2022年4月1日に改定された金額です。今後も改定される場合がありますのでご注意ください。
- 自動車安全運転センター、郵便局またはゆうちょ銀行、インターネットいずれかで申請。手数料800円。
まず前提として、交通事故証明書は加害者側の任意保険会社が取得していることが多いです。
よって、加害者側の任意保険会社へ損害賠償請求する場合は、基本的に被害者側で交通事故証明書を用意する必要はありません。
その他の目的で交通事故証明書が必要になった場合でも、加害者側の任意保険会社に連絡すれば、原本証明印を押した写しを送ってもらえるでしょう。この際、料金はかかりません。
加害者が任意保険に入っていない場合などは、被害者自身で交通事故証明書の原本を取り寄せる必要があります。以下の窓口で発行の申請をしましょう。
- 自動車安全運転センター
- 郵便局またはゆうちょ銀行
- インターネット
いずれの窓口であっても交付手数料は1通800円です。
手数料については、加害者側に請求することができます。
交通事故証明書を自分で申請する方法と取得にかかる日数
交通事故証明書の取得にかかる日数は、申請から最短で即日、最長で10日程度です。
自動車安全運転センターの窓口で申請すれば最短で交通事故証明書がもらえるので、急ぎであればセンターの窓口がおすすめです。
ただし、交通事故証明書は事故直後に申請してもまだ完成していません。
事故の情報が警察から自動車安全運転センターに渡り、その内容をもとに交通事故証明書が作成されるまでには少なくとも1週間程度はかかる点にはご注意ください。
ここからは、申請窓口別に取得までにかかる日数や申請書がもらえる場所などを紹介します。
なお、いずれの窓口であっても申請書には基本的に以下の内容を記入します。申請前に確認しておきましょう。
- 人身事故か物損事故か、事故の種別
- 事故の発生日時と発生場所
- 事故の報告をした警察署の名称
- 事故の報告をした年月日
- 事故の当事者の氏名
- 申請者の氏名や住所
(1)自動車安全運転センターの窓口で申請
自動車安全運転センターで証明書の申請をする場合は、各都道府県の事務所窓口に行きましょう。
申請書(交通事故証明書申込用紙)はセンター内に備え付けてあります。
早く交通事故証明書を受け取りたい場合は、事故の発生場所を管轄する運転センターで申請しましょう。原則として即日発行をしてもらえます。
事故の資料がまだセンターに届いていない場合や、発生場所の管轄以外のセンターで申請した場合、交通事故証明書は後日郵送となります。
(2)郵便局またはゆうちょ銀行で申請
郵便局やゆうちょ銀行で交通事故証明書の申請をする場合は、最寄りの運転センターの事務所、警察署、駐在所などで「交通事故証明書申込用紙」を入手し、必要事項を記載します。
申込用紙を持って窓口に行き、郵便振替またはATMで交付手数料と払込料金を支払ってください。
申請手続きと支払いが完了すると、申請から10日程度で交通事故証明書が郵送されます。
(3)インターネットで申請
交通事故の当事者限定ですが、自動車安全運転センターのホームページで交通事故証明書の申請ができます。
申請用紙に記入する場合とほぼ同じように、申請者の氏名・住所・事故の発生場所などの情報を入力してください。
交付手数料は、申請後にコンビニの店舗や金融機関のネットバンク(ペイジー)などで支払いが可能です。
交付手数料の支払いが完了すると、入金の確認後10日程度で交通事故証明書が郵送されます。
インターネットでの申請では、以下の点に注意してください。
- 交付手数料のほか、払込手数料や各金融機関が定める費用も申請者負担となる
- 申請から7日以内に交付手数料を支払わないと、申請が自動的にキャンセルされる
- 事故発生時に警察署に届け出た住所地以外に交通事故証明書を郵送することはできない
人身事故用の交通事故証明書を入手できなかった時の対処法
先述の通り、ケガをしているのに物損事故として警察に届け出ているなら、まずは人身事故に切り替えてから交通事故証明書を取得すべきです。
しかし、場合によっては人身事故への切り替えができないことがあります。
この場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」を入手しましょう。
「人身事故証明書入手不能理由書」を提出すれば、警察で物損事故として処理されていても、通常の人身事故と同じように治療費や慰謝料を補償してもらいやすくなります。
人身事故証明書入手不能理由書は加害者側の任意保険会社に問い合わせると送ってもらえるので、必要事項を記入しましょう。
人身事故証明書入手不能理由書の注意点
人身事故証明書入手不能理由書は、やむを得ない場合のみ活用するようにしましょう。
正規の人身事故の証明書を入手していない場合、「それほど重大なケガはしていない」と判断されやすくなり、以下のようなデメリットが生じるおそれがあるからです。
- 加害者側の任意保険会社から、治療費を早々に打ち切られる
- 後遺症が残っても後遺障害認定されず、後遺障害残存に対する補償を受けられなくなる
人身事故証明書入手不能理由書を用意する前に、一度警察で人身事故として処理してもらうための手続きを取ってみるようにしましょう。
人身事故証明書入手不能理由書についてさらに詳しくは『人身事故証明書入手不能理由書の書き方と記入例!誰が書く?拒否してもいい?』の記事をご覧ください。
交通事故証明書は後日でも取得可能|期限に注意
交通事故証明書は、後日取得することも可能です。すでに警察に事故を届け出ている場合は、先に紹介した流れで交通事故証明書の申請をしてください。
まだ警察に事故を届け出ていない場合や、人身事故なのに物損事故として届け出ている場合は、先に警察にて適切に事故の届け出をしましょう。
交通事故証明書の取得には期限がある
交通事故証明書はいつまででも取得できるわけではなく、物損事故なら事故が発生してから3年間、人身事故なら事故が発生してから5年間の取得期限があります。
取得期限 | |
---|---|
物損事故 | 事故発生から3年間 |
人身事故 | 事故発生から5年間 |
物損事故よりも人身事故のほうが期間が長いのは、人が死傷した事故は情報を保管する必要性が高いからです。
交通事故証明書の取得後に示談交渉をはじめるなら弁護士相談
交通事故の示談交渉で弁護士を立てるべき理由
交通事故証明書を取得したのであれば、他の資料などもそろえて、交通事故の相手方に損害賠償請求を行うことになります。
まずは示談交渉での請求を試みることになるでしょう。
ただし、被害者自身の交渉で加害者側の任意保険会社から十分な示談金を得られることは少ないです。
加害者側の任意保険会社は示談金を低めに提示してくるのですが、日々さまざな被害者や弁護士と交渉しているプロなので、被害者側が適正な金額を主張しても退けられてしまうのです。
そこで重要なのが、示談交渉で弁護士を立てるということです。弁護士を立てれば、以下の点から示談金の大幅アップが期待できます。
- 交渉力と専門知識のある弁護士であれば、加害者側の任意保険会社が納得する主張ができる
- 弁護士を立てると、加害者側の任意保険会社は裁判への発展を恐れて態度を軟化させる傾向にある
- 弁護士が出てきたら示談金の大幅増額にも応じる、という方針の保険会社もある
示談金増額以外にも、弁護士に依頼することで保険会社とのやり取りで生じるストレスや時間的負担を軽減できたり、必要な書類の入手を手伝ってもらえたりするといったメリットを受けることが可能です。
弁護士に依頼することで生じるメリットについては『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』の記事で確認できます。
無料相談で示談金相場を確認するだけでも価値あり
アトム法律事務所では、電話やLINEにて無料相談を行っております。
示談交渉の依頼を検討されている方の事前相談はもちろん、依頼するかは未定だがひとまず示談金の増額見込みについて聞いてみたいといったご相談も可能です。
無料相談時に無理に依頼をすすめることはなく、無料相談のみのご利用でももちろん大丈夫です。示談交渉時の参考にしていただけます。
アトム法律事務所では交通事故事件を多く取り扱っており、示談交渉の経験が豊富な弁護士が相談にあたっています。一度気軽にご連絡ください。
50件以上の
お問合せ
弁護士費用を保険会社が負担してくれる『交通事故の弁護士費用特約』についても併せてお読みください。弁護士費用特約が付帯されていれば、多くのケースで自己負担0円で弁護士を立てられます。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了