交通事故の慰謝料を多く貰うには?NG行動18選|慰謝料増額と減額防止が鍵

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交通事故の慰謝料多く貰う方法は?

交通事故で慰謝料を多く貰うには、示談交渉で加害者側からの提示額を増額させることが重要、と考えている人は多いでしょう。

確かにそれも必要なことですが、本当に慰謝料を多く貰いたいなら、「加害者側に慰謝料減額の口実を与えないこと」も非常に重要です。

慰謝料をできるだけ多く貰うには、「慰謝料の増額」と「慰謝料の減額防止」を掛け合わせる必要があるのです。

この記事は、慰謝料を多く貰うためのポイントを3つ紹介したあと、慰謝料減額につながるNG行動を18個紹介していきます。

慰謝料増額と慰謝料の減額防止を効果的に行う方法も解説するので、最後までご確認ください。

目次

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慰謝料をできるだけ多く貰うためのポイント

慰謝料をできるだけ多く貰うには、弁護士基準で計算した慰謝料を主張すること、慰謝料の増額事由を主張すること、慰謝料減額の原因となる行動をしないことの3点が重要です。

この3つのポイントを掛け合わせることで、慰謝料をできるだけ多く貰える可能性が高まります。

それぞれのポイントについてより詳しく見ていきましょう。

弁護士基準の慰謝料額を主張する

慰謝料をできるだけ多く貰うためには、示談交渉の際に「弁護士基準」に沿って計算した慰謝料を求めることが重要です。

交通事故の慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの算定基準がありますが、弁護士基準に沿って計算した金額がもっとも高額になります。

交通事故慰謝料の3つの算定基準

自賠責基準自賠責法によって定められた、最低限の金額基準
任意保険基準加害者側の任意保険会社が慰謝料計算で用いる金額基準
各社で異なり非公開だが、自賠責基準と同等~少し高額な程度であることが多い
弁護士基準過去の判例に沿った慰謝料額がわかる金額基準
裁判でも用いられるため、裁判基準とも呼ばれる
慰謝料金額相場の3基準

示談交渉の相手は多くの場合、加害者側の任意保険会社です。
自賠責基準や任意保険基準の金額を提示してくることがほとんどなので、弁護士基準の金額に近くなるよう交渉する必要があります。

慰謝料の増額事由を主張する

交通事故の慰謝料は、「事故により身体に被害を受けたことで生じる精神的苦痛」を補償するものです。

よって、精神的苦痛がことさらに大きいと判断されれば慰謝料がさらに多くなることもあります。

慰謝料アップにつながる増額事由はさまざまですが、代表的なものとして以下の5点があります。

  • 交通事故の加害者に故意・過失があった
  • 加害者の交通事故後の態度が不誠実
  • 交通事故により特殊な被害が生じた
  • 交通事故の治療期間中、自宅療養期間があった
  • やむを得ない事情で入院・通院期間を短くした

上記5つについてさらに具体的な内容を紹介するので、該当する場合はさらなる慰謝料増額を主張してみましょう。慰謝料が数十万~数百万円増える場合もあります。

なお、ここで紹介するもの以外にも慰謝料増額につながる事情はあるため、心当たりがある場合は弁護士までお問い合わせください。

交通事故加害者に故意・重過失があった

交通事故の加害者に、わざと事故を引き起こした(故意)、本来注意すべきことを漫然と看過した(重過失)などの事情があった場合、その悪質性から慰謝料が増額することがあります。

具体的な事例は以下の通りです。

  • 無免許運転
  • ひき逃げ
  • 酒酔い運転
  • 居眠り運転
  • 無灯火運転
  • 煽り運転
  • 著しいスピード違反
  • 赤信号に従う意思がまったくなかった
  • 薬物の影響を受けた状態での運転

加害者の交通事故後の態度が不誠実

交通事故後の加害者に著しく不誠実と言えるような態度がある場合も、慰謝料が増額する可能性があります。

加害者の態度により、被害者側の精神的苦痛がいっそう増すと考えられるためです。
加害者に以下のような態度が見られる場合は、慰謝料の増額交渉をしましょう。

  • 事故後逃走、黙秘を続ける
  • 被害者に謝罪をしない
  • 約束を反故にする
  • 取り調べ段階で虚偽の供述をする
  • 危険な運転の証拠を隠蔽する
  • 過度の過失相殺の主張をする

交通事故により特殊な被害が生じた

交通事故が発生したことにより、被害者やその近親者に特殊な影響があったと言える場合も、慰謝料の増額理由となることがあります。

具体的には、以下のような事情が該当します。

いずれも、交通事故が原因となって発生したと言えるような場合に限るので注意が必要です。

  • 被害者の親族が精神疾患に罹患した
  • 退職、退学を余儀なくされた
  • 中絶、離婚に至った

さらに被害者が死亡した事故の場合、結婚したばかりだった・子供がいたなどの事情があれば、被害者および遺族の無念さはよりいっそう大きなものであると判断され、慰謝料が増額することもあります。

交通事故の治療中、自宅療養期間があった

通常、入院・通院したことに関する慰謝料は入通院期間に応じて支払われます。

ですが、病院のベッドが空いておらず待機していた期間、ギプスなどを固定して自宅で安静にしていた期間などは、実際には入通院していなくても入通院期間に含めることがあります。

また、病院の指示により、自宅で超音波治療器を使っていた期間についても、一部が通院期間と認められたことがあるので、確認が必要です。

実際に入院・通院をしていたとは言えないけれども「治療に専念していた」と言えるような期間がある場合は、それらを入通院期間に含められる可能性があるので、気になる場合は弁護士にお問い合わせください。

やむを得ない事情で入院・通院期間を短くした

家族や仕事の事情から、やむを得ず入院・通院を短く切り上げたと言えるような場合も慰謝料の計算のうえで考慮されることがあります。

具体的には、被害者が幼児を家に残している母親である場合や、被害者にしかできないような仕事上の要請があった場合などが該当します。

慰謝料を上乗せする方法については関連記事『交通事故の慰謝料は増やせる?上乗せの方法をまとめて公開』でも解説しているので、合わせてご確認ください。

慰謝料減額につながるNG行動をしない

交通事故の慰謝料を多く貰うためには、慰謝料減額につながる行動をしないことも非常に重要です。

交通事故発生~示談成立までの間に不適切な行動をしてしまうと、示談交渉時にいくら弁護士基準の慰謝料や慰謝料の増額事由を主張しても、得られる金額は少なくなってしまいます。

慰謝料減額につながる行動についてはこの次に、交通事故後のフェーズ別に解説していきます。

NG行動をしてしまった場合の対処法も紹介するので確認していきましょう。

慰謝料を多く貰うため【交通事故発生時】にしてはいけないこと

慰謝料減額の原因となりうる行動は、事故発生時から取ってしまう可能性があります。すでにNG行動を取ってしまっていても、あとから対処できる場合もあるので確認していきましょう。

(1)交通事故現場で示談する

事故現場で、交通事故相手が「おおごとにしたくないから、今示談してしまわないか」と言ってくることがあります。

ですが、これに応えてはなりません。
あとから新たな損害が発覚したり、示談内容に誤りがあることがわかったりしても、追加の賠償請求や再交渉ができなくなってしまうからです。

示談とは

当事者間の争いについて、話し合いで解決し、これ以上争わないとする最終的な合意。

交通事故の場合は「加害者は被害者に●万円支払うので、その交通事故についてそれ以上金銭を請求しない」という形の示談が行われることが多い。

例えば、交通事故現場で示談して10万円受け取ったものの、その後10万円以上の治療費や自動車の修理代がかかってしまったとします。
被害者としては当然、足りないぶんを加害者に請求したいところです。

ですが、既に示談してしまっているので「既に支払った10万円のほかには支払わない」と加害者から突っぱねられてしまうでしょう。

このように、まだ自身の受けた損害を計算できていない時点で示談をすると、十分な慰謝料が受け取れないことがあるのです。

示談は口頭でも成立してしまうため、注意が必要です。

すでに示談に応じてしまった場合の対処法

脅しによって無理やり示談させられたなど特殊な事情がある場合は、すでに成立した示談の内容を撤回し、再交渉ができる可能性があります。

詳しくは関連記事『示談後、撤回や追加請求は可能?』をご覧いただくか、弁護士までご相談ください。

(2)交通事故現場に警察を呼ばない

交通事故が発生した場合、道路交通法により運転手らには警察に届け出る義務があります。
これに違反すると、交通事故の発生を証明する「交通事故証明書」が発行されません。

すると、「その事故が発生したという証拠がない」として慰謝料が支払われないことがあるのです。

第七十二条 交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者~は、直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

道路交通法 第72条1項

自身の自動車保険に保険金請求する際にも支障が出る可能性があるので、交通事故は必ず警察に届け出てください。

まだ警察に連絡していない場合の対処法

もしもその場で警察に行かなかったとしても、後日出来るだけ早いうちに事故発生現場の最寄りの警察署に届け出れば交通事故証明書が発行されるでしょう。

事故から日が経っていると事故の痕跡を見つけたり、交通事故により怪我をしたと証明したりすることが難しくなる可能性があるので、できるだけ早く手続きをしてください。

(3)交通事故後、すぐ病院に行かない

交通事故発生後は、特に体が痛くないと思っていても念のため整形外科などの病院にかかるべきです。

後から痛みが出てきて病院へ行っても、事故から時間が経っていると怪我と交通事故との因果関係を証明できず、治療費や慰謝料を請求できない可能性があるからです。

事故から少し時間が経ってから体が痛み始める、ということは交通事故ではよくあります。

事故現場では大変興奮し、一時的に体の不調を感じにくくなっているからです。また、怪我の種類によっては、時間が経ってから痛みが出てくるものもあります。

事故発生直後の身体の状態を医師に確認してもらい、診断書や画像に記録しておくことは非常に重要です。たとえ自覚症状がなくても、まずは病院で検査を受けるべきでしょう。

(4)交通事故後、最初に整骨院に行く

交通事故後の初診は整骨院(接骨院)ではなく、整形外科などの病院で受けるべきです。

整骨院では診断書・MRI画像などが手に入りません。
その結果、治療費や慰謝料の請求時に受傷当時の状態や治療経過を証明できず、十分な金額を得られない可能性があるのです。

また、整骨院は病院ではないので、そもそも整骨院通院に対する費用や慰謝料が認められない可能性もあります。

通院のために仕事を休んでも原則そのぶんの収入は補償されますので、整骨院の方が通いやすかったとしても病院に行きましょう。

なお、整骨院には絶対に通院してはいけないわけではありません。
ただし、病院への通院も継続する、医師の許可を得て通うなどの対策が必要となります。詳しくは以下の関連記事もご確認ください。

(5)怪我をしているのに物損事故する

警察に届出をした場合、物損事故か人身事故のどちらかで処理をすることとなります。

このとき、怪我をしているのであれば人身事故として処理してもらうべきです。
怪我の治療費や慰謝料は、原則として人身事故の場合でなければ請求できないからです。

物損事故損害が物のみの交通事故
人身事故損害が人体にも及んでいる交通事故

たとえ怪我をしていても、物損事故として処理していると「この事故は物損事故で人体の怪我は生じていないため、治療費や慰謝料などは支払いません」と相手方に言われてしまう可能性があります。

特に軽い怪我だけだった交通事故では、加害者側から物損事故として処理するよう頼まれることがあります。警察からも、人身事故の処理手続きの大変さから、物損事故としての処理をすすめられるかもしれません。

しかし、損害賠償金の観点から、少しでも怪我をしているのであれば人身事故として届け出るようにしましょう。

人身事故と物損事故における損害賠償金の違いについて詳しくは、関連記事『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!物損事故との違いは何?』をご覧ください。

怪我があるのに物損事故として届け出てしまった場合の対処法

もしもすでに物損事故として届け出てしまっていても、後日警察に診断書を提出することで人身事故への切り替えができます。

ただし、加害者と一緒の出頭を求められることがある、事故から日が経つと診断書受け取りを拒否されることがあるなど、被害者の方にとってはハードルが上がってしまいます。

人身事故へ切り替えることを考えているのならば、弁護士などに依頼して協力を仰ぐのもよいでしょう。

(6)交通事故で損害を受けた自動車をすぐに修理する

交通事故後、相手方の保険会社に無断ですぐに車を修理してしまうのは避けるべきです。

加害者側の保険会社に修理費の見積もりを共有してから修理しないと、「その修理は本当に必要だったのか」「修理方法は適切だったのか」と疑われ、修理費の一部が支払われなくなる可能性があるからです。

よって、修理費の見積もりを受けた時点で相手方保険会社に連絡し、金額が適正かどうかを確認するとよいでしょう。

また修理工場の担当者には、出来るだけ事故態様を詳細に伝えるべきです。フレームの歪みなど、外部から発見するのが困難な損傷を見つけ出す手がかりになります。

加害者側に確認を取る前に修理してしまった場合の対処法

加害者側に「その修理は事故とは関係ない」と言われた時に反論できるよう、証拠を集めておきましょう。

事故時の様子がわかるドライブレコーダーや防犯カメラの映像、事故直後に撮影した車の写真、事故前に撮影した車の写真などを探してみてください。

慰謝料を多く貰うため【治療中】にしてはいけないこと

ここからは交通事故後に病院へ行き、治療を続ける際にしてはいけないポイントをまとめていきます。

怪我の治療中の行動は、慰謝料の金額に大きくかかわってくるので注意が必要です。

(7)無断で整骨院に通院する

交通事故による怪我で整骨院に通院する、というのはよく聞く話ですが、医師の了解をとったうえで通院するのがベターです。

整骨院へは健康維持のために通院する人もいるので、交通事故による怪我の治療のためだったと証明するには、「医師の指示・了解のもと整骨院へ通った」という形をとる必要があるのです。

医師の了解を得ずに整骨院のみに通院していた場合、被害者本人としては数ヶ月間きちんと定期的に治療を受けたつもりでいても、相手方保険会社からは「病院には数回しか行っていない」と主張され、慰謝料などが減額されることがあります。

そのような事態を避けるため、担当医師に「整骨院で施術をしてもらってもいいか」と確認しておくと安全でしょう。

許可を得ず整骨院通院を始めてしまっている場合の対処法

今からでも整形外科に行き、整骨院での治療が有効である旨を確認したうえで、月に1回以上の頻度で整形外科にも通院しましょう。

(8)交通事故の怪我の治療で健康保険を利用しない

治療費を一旦被害者側で立て替える場合は、健康保険を利用しましょう

治療費を健康保険を使わずに立て替えていた場合、以下のようなケースで慰謝料や損害賠償金を十分に貰えない可能性があります。

  • 被害者側にも過失割合がついた
  • 加害者が任意保険に入っていない

それぞれのケースに分けて解説します。

被害者にも過失割合がついた場合

過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側にそれぞれどれくらいあるのか割合で示したものです。

被害者側にも過失割合が付くと、その割合ぶん慰謝料や損害賠償金が減額されます。しかし、治療費の一部を健康保険を使って賄っていれば、減額によるダメージを軽減させられます。

加害者が任意保険未加入の場合

加害者が任意保険に入っていない場合、被害者は「加害者側の自賠責保険の支払い上限額」を超える部分をすぐには受け取れない可能性があります。

加害者が任意保険未加入の場合の損害賠償請求

  • まず加害者側の自賠責保険に損害賠償請求する
    • 上限がある
    • 例:傷害分(治療費、休業損害、入通院慰謝料など)は合計120万円まで
  • 自賠責保険の上限額を超える部分は加害者本人に請求
    • 加害者の資力などによっては分割払いになったり、支払いが踏み倒されたりするおそれがある

しかし、治療費の一部を健康保険で支払っておけば、そのぶん加害者本人からの未回収額が少なくなり、多くの金額を確実に貰えるのです。

自賠責保険における各費目の上限額や、上限額を超えてしまった場合の対処法については『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額』の記事をご覧ください。

健康保険の利用方法や、利用すべきケースについての詳細は『交通事故で健康保険は使える!メリットや健保に切り替えてと言われた時の対処法』の記事で確認可能です。

治療の途中から健康保険を使い始めることも可能

すでに健康保険を使わずに治療費を立て替えている場合でも、途中から健康保険を使って以降の治療費負担を減らすことは可能です。

交通事故の治療でも健康保険が使えると積極的に言わない医療機関や、交通事故の治療で健康保険が使えることを知らない医療機関もありますが、実際には使えるので活用していきましょう。

なお、勤務中や通勤中の交通事故に関しては、労災保険の利用が優先されます。労災保険については『交通事故で労災保険は使える?慰謝料は?任意・自賠責併用のメリット・デメリット』の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

(9)保険会社に言われるがままに治療を打ち切る

治療のために通院していると、相手方の保険会社から「そろそろ治療を打ち切りにしましょう」と言われることがあります。
この打診は、これ以降の治療に対する治療費や慰謝料は支払わないという保険会社側からの意思表示でもあります。

しかしこれに従ってまだ必要な治療をやめてしまうと、治療期間が短くなるぶん入通院慰謝料が低額になりますし、治るはずの怪我が治らないという事態にも陥りかねません。

また、後遺症が残っても「後遺障害等級」が認定されにくくなり、後遺障害慰謝料や逸失利益が貰えない可能性が高まります。

よって、慰謝料を多く貰うためにはたとえ治療費の打ち切りを打診されても、治療を終えるべきではありません。

治療費打ち切りを打診された時の対処法

治療終了の時期は医師と相談のうえ決めるものなので、以下のように対応し、保険会社からの指示で治療を終えることは避けましょう。

治療費打ち切りへの対応

  • 担当医師に診断書や意見書を作成してもらい、それをもとに治療費打ち切りの延長を交渉する
  • 打ち切り以降の治療費は被害者側で立て替えておき、示談交渉時に加害者側に請求する

※いずれの対応も、弁護士を通した方が成功率は高くなります。

治療費打ち切りで治療を終えるリスクや対処法は、『交通事故の治療費打ち切りを阻止・延長する対応法!治療期間はいつまで?』の記事でより詳しく解説しています。

(10)過剰に通院する

通院回数が多ければ多いほど、治療期間が長ければ長いほど慰謝料は多くなるのではと考えて、過剰に通院するのも良くありません。

確かに入通院慰謝料は通院日数や治療期間に応じて金額が決まりますが、無理に過剰に通院した場合は保険金詐欺を疑われ、かえって慰謝料を減らされるおそれがあるのです。

慰謝料計算の点から言うと通院頻度は3日に1回程度が望ましいとされますが、重要なのは「医師の指示に基づいた医学的根拠のある通院頻度」であることです。

必ず医師の指示通りに通院してください。

過剰に高額な治療・入院にも要注意

どうせ加害者側に費用を負担してもらえるから、と必要以上に高額な治療や入院をすることは避けましょう。

入院中の部屋に関していえば、大部屋の使用が原則とされています。
個室の使用は、医師の指示があった・症状が重篤・空き室がなかったなど、特別な事情がある場合に限られます。

それらの事情がなかった場合、必要・相当でない部分の治療費は被害者自身の負担となる可能性があるため注意が必要です。

たとえば以下のような理由による個室の使用においては、個室使用料が認められなかった事例があります。

  • 幼い子供が面会に来ることを考慮した
  • 仕事の関係上、部屋で携帯電話を使う必要があった
  • 当初は個室が妥当だったが、当時既に症状が相当回復していた
  • 被害者が視覚障がい者だった
  • 被害者が選挙立候補者だった
  • 被害者が精神的に不安定だった(※5割のみ認める)

過剰請求によって治療費の打ち切りが早まったり、交通事故との因果関係が認められないと治療費や慰謝料の支払いを拒否されることも有り得ます。

交通事故の過剰請求について詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故で痛くないのに通院・検査してもいい?不正請求や嘘はバレる?』の解説も参考に、適正な治療を受けるようにしましょう。

慰謝料を多く貰うため【加害者の見舞対応】でしてはいけないこと

(11)加害者の見舞の際、金銭に関する話をする

治療中、交通事故の加害者がお見舞いに来る場合がありますが、損害賠償に関する話題は避けましょう。
自らの過失を認める発言をしたり、金銭に関する話をしたりすると、後の示談交渉でその発言を持ち出され、交渉が不利になる可能性があるからです。

特に相手に対する処罰感情が薄い場合、加害者から直接の謝罪を受けて「こちらこそすみませんでした」「こちらももっと気を付けていれば…」などと言ってしまいがちですが、こうした何気ない発言も交渉材料とされてしまうおそれがあります。

治療が終了して損害額が確定し、正式に示談交渉が始まるまでは過失や金銭面に関わる話はしないようにしましょう。

なお、謝罪・反省の意を示すのは事故加害者として当然の姿勢ですが、被害者側は無理に会う必要はありません。
会いたくない場合にはお見舞いを断りましょう。

(12)目的や意味合いを確認せず見舞金を受け取る

見舞金とは、交通事故の加害者から被害者に対して、謝罪や誠意を示すために支払われる金銭です。

見舞金の支払い自体は社会的な行為としてよくあることですが、安易に受け取ると後から「あれば慰謝料として渡したものだ」と言われ、慰謝料から差し引かれてしまう可能性があります。

見舞金を受け取る場合は、慰謝料とは別物であることを明確に確認するようにしましょう。

なお、見舞金を受け取ると「加害者は被害者に誠心誠意謝罪した」として加害者の刑事罰が軽くなる可能性があります。加害者への処罰感情が強い場合は、見舞金の受け取りを拒否することがベターです。

(13)過度に高額な見舞金を受け取る

見舞金を安易に受け取ると慰謝料から差し引かれるおそれがある、ということは先にお伝えした通りですが、見舞金が高額であるほどそのリスクは高くなります。

また、社会通念上「見舞金」として考えられる金額以上の金額を受け取ると、贈与税の対象となる可能性もあります。
納税により見舞金額が減ったり納税手続きの手間が生じたりするので、過度に高額な見舞金は受け取らないようにしましょう。

見舞金や損害賠償金に税金がかかるケースについては、関連記事『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース』で詳しく解説しています。

そもそも、見舞金の相場はいくら?

加害者からの見舞金は謝罪の気持ちを示すものであり、明確な相場が定められているわけではありません。

2万~20万円、5万~10万円などが相場と言われますが、いずれにしても100万円ほどになると明らかに高額なので、受け取りには慎重になった方が良いでしょう。

見舞金を受け取っても良いか困った場合は、弁護士に確認を取ることがおすすめです。

慰謝料を多く貰うため【後遺障害申請】でしてはいけないこと

十分な治療を経ても痛みや痺れ・変形などの後遺障害(後遺症)が残った場合、「後遺障害等級」の認定を受ければ後遺障害慰謝料・逸失利益などがもらえます。

後遺障害慰謝料・逸失利益の金額は認定された等級に応じて決まります。示談金の中でも特に高額になりやすい費目なので、適切な後遺障害等級に認定されることは慰謝料を多く貰うために非常に重要だといえるでしょう。

適切な後遺障害等級の認定を受けるために、「やってしまいがちだけれどしてはいけないこと」について解説します。

(14)保険会社に言われるがままに症状固定にする

後遺障害等級認定の申請は、「症状固定」という診断を受けた後に行います。

症状固定とは

これ以上通常の治療を行っても、症状がよくも悪くもならない状態

ただし、治療期間6ヶ月未満で症状固定となった場合、後遺障害等級の獲得が非常に難しくなります。(※四肢の切断など明らかに後遺障害が残っていると分かる場合を除く)
よって、加害者側の保険会社から治療期間6ヶ月未満のタイミングで症状固定を催促されたとしても、応じないようにしましょう。

なお、症状固定以後に治療を受けたり休業したりしても、原則として治療費や休業損害は支払われません。この点も考慮して、症状固定の時期は医師と相談のうえ決めましょう。

(15)後遺障害診断書の作成を医師に任せる

後遺障害診断書は、後遺障害認定の審査で重視される書類です。

「後遺障害等級の認定基準を満たしていること」が明確に分かるような書き方をする必要がありますが、医師の中には後遺障害認定に詳しくない人も少なくありません。

後遺障害認定の審査対策としては不適切な記載内容があったり、後遺症に関する記録が不十分だったりすることがあるのです。

後遺障害等級の認定基準や過去の事例に詳しいのは、医師ではなく弁護士です。医師から後遺障害診断書を受け取ったら、等級認定の審査で通用する内容になっているか、弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

後遺障害診断書については、関連記事『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認』も参考にしてみてください。

(16)事前認定で後遺障害等級を申請してもらう

後遺障害等級認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2種類がありますが、事前認定は審査対策がしにくいです

「事前認定」では後遺障害診断書以外の書類は全て相手方の任意保険会社が準備してくれます。
楽な一方で必要最低限の書類しか提出してもらえなかったり、改善の余地がある記載内容のまま書類を提出されてしまったりして適切な等級認定がなされないリスクがあるのです。

後遺障害申請の手続き:事前認定の流れ

それに対して被害者請求では提出書類はすべて被害者側で用意します。
手間はかかりますが、後遺症の症状・程度をより正確に伝えるための追加書類を添付したり、提出書類の内容をブラッシュアップしたりすることが可能です。

後遺障害認定は基本的に書類審査なので、この点は非常に重要でしょう。

後遺障害申請の手続き:被害者請求

さらに適切な認定の可能性を上げる方法

「被害者請求ではすべての書類に関与できるため審査対策がしやすい」といっても、いざ被害者請求しようと思うと以下の点で悩みがちです。

  • どんな記載内容なら良いのか
  • 必要最低限の書類に加えてどんな書類を添付すれば効果的なのか

よって、後遺障害等級認定の申請は、弁護士に一任して被害者請求をすることがベストです。
これなら書類集めの負担も減りますし、書類の質・種類を吟味できるという被害者請求の利点を最大限に生かせます。

具体的な方法や必要書類などをお知りになりたいときは、以下の記事をご参照ください。

慰謝料を多く貰うため【示談交渉】でしてはいけないこと

治療が終了、または後遺障害等級の認定結果が定まると、相手方保険会社から示談金の提示があり、その後示談交渉が開始されます。

示談交渉は慰謝料・損害賠償金を大きく左右するフェーズなので、しっかりと注意点をおさえておくことが大切です。

(17)示談書にすぐサインする

交通事故の示談交渉では、多くの人が相手方保険会社から提示された示談書にそのままサインしてしまいます。
しかし、相手方の任意保険会社は、慰謝料が低額になるような計算方法を用いているため、鵜呑みにするのは危険です。

一度示談書に署名・捺印をすると、原則として再交渉・追加の賠償請求はできません。サインする前に、本当に提示された金額に増額の余地はないのか、請求漏れはないかきちんと確認することが重要です。

交通事故の態様にもよりますが、弁護士が介入することで提示額の2倍、3倍の示談金を受け取れることも珍しくはありません。
無料相談できる法律事務所も多いので、まずは弁護士に相談して金額が妥当かどうか確認してみましょう。

増額の余地は計算機でも確認できる

相手方保険会社の提示額に増額の余地があるのかは、以下の「慰謝料計算機」からも確認できます。
慰謝料や逸失利益についてはこの計算機からも確認してみてください。

ただし、実際の適正額は事故の個別的な事情を反映し、この計算機の結果以上もしくは以下になることがあります。
より厳密な適正額を知りたい場合は、弁護士までお問い合わせください。

慰謝料計算の仕組みについては『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる』の記事で解説しています。

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(18)自身の職業や収入の特殊性を考慮しない

交通事故の休業損害・逸失利益は、被害者自身の収入に基づいて計算されます。
もし被害者の職業や属性が、交通事故による怪我・後遺障害の影響を特に大きく受けるものであれば、以下のような配慮がなされる可能性があります。

  • 顔の傷については、男性よりも女性の方が慰謝料増額につながりやすい
  • 手先を使う仕事について、手先の震えなどの後遺障害があると逸失利益が増えやすい
  • 現在は無職だが、将来的に就職する可能性が高ければ、休業損害が認められうる

しかし、上記のような特殊な事情があったとしても、被害者側から主張をしなければ相手方がそれを積極的に考慮してくれるとは限りません。

また、その特殊性が考慮される費目もさまざまなので、まずは弁護士に相談し、被害者が抱える事情に配慮するよう相手方に交渉してもらうと良いでしょう。

休業損害・逸失利益の計算方法については以下の関連記事をご覧ください。
休業損害については、以下の記事内に計算機も載せています。

関連記事

弁護士を立てれば効率的に慰謝料を多く貰いやすい

慰謝料を多く貰うには「弁護士基準の慰謝料の主張」「慰謝料の増額事由の主張」を通して加害者側の提示額を増額させること、慰謝料減額につながる行動をしないことが重要です。

弁護士を立てれば、慰謝料の増額も減額防止も効率的かつ効果的に行なえます。

弁護士費用特約を使ったり相談料・着手金無料の事務所を選んだりすれば弁護士費用の負担は軽減できるので、慰謝料を多く貰いたいなら弁護士への依頼も検討してみましょう。

弁護士を立てれば慰謝料を多く貰いやすい理由と弁護士費用の負担軽減について詳しく解説します。

理由(1)うっかり失言・NG行動をすることを防げる

ここまで紹介してきたようなNG行動に気をつけていても、うっかり良くない行動をしてしまう可能性は排除できません。

加害者側の任意保険会社は高圧的な態度やそっけない態度を取ることもあるため、ストレスが溜まってうっかり失言をしてしまうこともあるでしょう。

加害者側の任意保険会社は少しでも被害者に支払う示談金を少なくしたいと思っているので、何気ない発言でもあとから慰謝料減額の口実にされてしまうかもしれません。

それなら、弁護士を立てて被害者ご自身は加害者側の任意保険会社とやりとりしないという形を取ったほうが、より慰謝料減額を防ぎやすくなります。

治療~示談成立までの間に気をつけるべきNG行動についても弁護士に確認できるため、「NG行動が多くてすべてを避けられるか心配」という方でも安心です。

理由(2)増額はプロに頼むか否かで結果に大きく差が出やすい

慰謝料の減額は、ある程度被害者ご自身の意識で防ぐこともできます。しかし、慰謝料増額については弁護士を立てるか否かで大きく差が出やすいのが実情です。

弁護士は専門知識と交渉スキルを持っていますし、「弁護士が出てこない限り大幅な増額には応じない」という方針をとっている加害者側の任意保険会社もあるからです。

ここで実際に、自力で示談交渉に臨んだ後に弁護士を立てた方の体験談を紹介します。

(略)弁護士事務所に相談に行くのは人生初めてで。示談交渉までスムーズでした。保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。(略)

アトム法律事務所のご依頼者様のお手紙

最初に主人と一緒に保険会社からの示談金の説明を受けた時、疑問点を質問しましたが、「こういうもの」と言われたらどうしようもなく上積みできたのはせいぜい20万程度でした。提示された金額が適正なのかどうか分からず話しだけでもと思い、法律事務所に相談することにしました。結果、納得できずにいた問題もすっきり解決して頂き示談金は3倍にもなりました。(略)

アトム法律事務所のご依頼者様のお手紙

残念ながら、被害者の方がいくら正しい内容を根拠を持って主張しても、それだけでは十分に聞き入れられにくいことが多いです。

できるだけ多く慰謝料を貰いたいと考えている場合は、弁護士を立てることもご検討ください。

弁護士に任せれば安心|費用の負担は軽減できます

弁護士を立てると慰謝料の大幅増額が期待できるとはいえ、弁護士費用が気にかかる方も多いでしょう。

しかし、自身の保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用は保険会社に負担してもらえるため費用の負担が軽くなります。

弁護士費用特約が付いていない場合は、アトム法律事務所なら基本的に着手金が無料となります。
成功報酬は生じますが、それを差引いても、弁護士を立てた方が多くの慰謝料が貰えることが多いです。

無料の電話・LINE相談でも今後の流れで気をつけるべきことや弁護士基準の慰謝料相場、ご自身のケースにおける増額事由などについてご相談いただけるので、まずはお気軽にご相談ください。

電話・LINE無料相談のポイント

示談金が提示されたタイミングですと、より具体的な見積もりが行えます。
重傷で通院期間が長引きそうなお怪我の場合は、ぜひ、通院中に注意すべき点について、お問い合わせください。

交通事故にあってしまったので、とりあえずLINEでメッセージを送っておき、必要になったら連絡する、などのご活用方法も可能です。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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