通院日数が少ない場合でも交通事故の慰謝料を適正額で獲得する方法
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故で通院日数が少ないと、慰謝料が低額になったり、減額されたりすることがあります。
しかし、骨折等ケガの種類によっては、治療方針としてそもそもそれほど通院を必要としないものもありますし、仕事や家事が忙しくて通院がままならないということもあるでしょう。
「きちんとした理由があって通院日数が少なくなっているだけなのに、慰謝料は減額されてしまうのだろうか」と心配されているのではないでしょうか。
このように通院日数が少ないことに事情がある場合は、慰謝料が減額されない可能性もあります。通院日数が少ない場合における交通事故の損害賠償請求のポイントを解説していきます。
目次
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通院日数が少ないと慰謝料が低くなる理由
(1)計算上、通院日数が少ないと低額になる
通院日数が少ない場合、まず計算の仕組み上、入通院慰謝料が低額になります。
入通院慰謝料とは
交通事故による入通院で生じた精神的苦痛を補償するもの
入通院慰謝料の計算方法についてはのちほど詳しく解説しますが、実通院日数に日額をかける方法や、治療期間に応じて金額を判断する方法があります。
前者の場合は通院日数が少ないともちろん低額になりますし、後者の場合でも、通院日数が少ないと治療期間より短い日数を「みなし通院期間」として計算に使うことがあるのです。
- 実通院日数とは
- 実際に通院した日数のこと。
- 通院期間
- 通院開始~通院終了までの期間の日数。
このようにして、通院日数が少ないと入通院慰謝料が低額になるのです。
(2)月10日未満の通院ならさらなる減額の可能性もある
1ヶ月あたりの平均通院日数が10日未満の場合は、以下の理由からさらに慰謝料が減らされることがあります。
- 心因的素因減額が適用される
- 過剰診療が疑われる
それぞれについて解説していきます。
心因的素因減額が適用される
通院日数が少ないと、心因的素因減額が適用されることがあります。
心因的素因減額
交通事故の被害の大きさには、被害者側の性格的・精神的要因も影響しているとして慰謝料や損害賠償金を減額すること。
たとえば仕事や家事、育児で忙しくて治療が後回しになったり、何となく通院が面倒だったりして通院日数が少なくなったとします。
この場合、「被害者が治療に消極的であったために通院日数が少なくなり、その結果、治療が長引いた。本来ならもっと早く治療を終えられたはずだ。」として心因的素因減額が適用されるおそれがあるのです。
治療よりも仕事を優先するとどのような不利益が生じるのかについては、『頚椎捻挫で仕事は何日休む?補償や休めない場合の対処法も解説』で詳しく解説しています。
どうしても仕事を休めない時の対処法もわかるので、参考にしてみてください。
過剰診療が疑われる
通院日数が少ないと、「もう治療は必要ないのに、入通院慰謝料を稼ぐために無理に通院を続けているのではないか」と疑われて慰謝料を減らされることがあります。
通院日数が少ないだけでなく、通院しても湿布や薬をもらうだけ、電気療法やマッサージを受けるだけといった治療内容だと、なおさら過剰診療を疑われやすくなるでしょう。
関連記事
- どれくらいだと通院日数が少ないと判断されるのか詳しく解説:交通事故の慰謝料は通院なしでももらえる?病院には何日以内に行くべき?
(3)通院日数が少ないと後遺障害認定にも影響する
通院日数が少ないと、入通院慰謝料だけでなく後遺障害慰謝料にも影響が出ることがあります。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛を補償するもの
後遺障害慰謝料は、後遺障害認定の審査を受けて「後遺障害等級」を獲得しなければもらえません。
通院日数が少ない場合、たとえ後遺症が残っていても「後遺障害等級に該当するほどの症状とは言えない」「十分な治療の結果残った症状とは言えない」として後遺障害等級を獲得できない可能性があるのです。
たとえ後遺障害等級が認定されても、通院日数の少なさから症状の程度が過小評価され、低い等級にしか認定されないおそれがあります。
後遺障害慰謝料の金額は後遺障害等級に応じて決まるので、低い等級にしか認定されなければその分、慰謝料は低額になってしまいます。
等級別の後遺障害慰謝料
等級 | 自賠責* | 弁護士 |
---|---|---|
要介護 1級 | 1650 (1600) | 2800 |
1級 | 1150 (1100) | 2800 |
要介護 2級 | 1203 (1163) | 2370 |
2級 | 998 (958) | 2370 |
3級 | 861 (829) | 1990 |
4級 | 737 (712) | 1670 |
5級 | 618 (599) | 1400 |
6級 | 512 (498) | 1180 |
7級 | 419 (409) | 1000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94 (93) | 290 |
13級 | 57 (57) | 180 |
14級 | 32 (32) | 110 |
※慰謝料の単位:万円
※( )内の金額:2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用
後遺障害認定されないと慰謝料以外の費目にも影響する
後遺障害認定されなかった場合、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益ももらえなくなります。
逸失利益とは、後遺障害が労働能力に支障をきたすことで減ってしまう生涯収入への補償です。

正当な事情や医師の指示がある場合は考慮されることも
以下のような事情で通院日数が少なくなった場合は、事情が考慮されて慰謝料が少なくならない可能性があります。
- 骨折でギプス固定による自宅療養期間が生じた
- 通院して治療するのではなく自然治癒を待つ治療方針が取られた
上記のような場合、通院日数が少ないのは被害者の責任でも過剰診療でもありません。
よって、治療の性質上、あるいは医師の指示により通院日数が少なくなったのであれば、慰謝料は少なくならない可能性があるのです。
通院日数が少ない時の入通院慰謝料の計算方法
通院日数が少ない場合、計算の仕組み上、入通院慰謝料が少なくなると解説しました。では具体的にどのように慰謝料が少なくなるのか、見ていきましょう。
なお、入通院慰謝料の計算では以下の点に注意してください。
- リハビリ期間も通院日数・治療期間にカウントする
- 慰謝料の計算方法には以下の3つの算定基準があり、それぞれで計算方法違う
- 自賠責基準:交通事故被害者に補償される最低限の金額基準
- 任意保険基準:加害者側の任意保険会社が用いる金額基準
- 弁護士基準:過去の判例に基づく相場がわかる金額基準
なお、任意保険基準は各保険会社ごとに異なり非公開なのでここでは割愛します。
基本的には自賠責基準と同等または少し上乗せした程度であることが多いので、参考にしてみてください。

弁護士基準|法的正当性の高い金額の計算方法
弁護士基準の場合、入通院慰謝料は「入通院慰謝料算定表」を見て計算します。
通常は「通院期間」と「入院期間」が交わる部分が入通院慰謝料となります。
しかし、通院期間に対して実通院日数が少ない場合や、検査や経過観察の通院ばかりの場合は、以下の日数を「みなし通院期間」として計算します。
- 軽傷(むちうち、打撲など):実通院日数×3
- 重傷(むちうち、打撲など以外):実通院日数×3.5
このことは、弁護士が慰謝料算定の際に用いる書籍「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」にも明記されています。
なお、通院日数が少ないからと言って通院日数を一律3.5倍や3倍に制限するという意味ではありません。あくまでも様々な要素が総合的に考慮されます。
それでは、入通院慰謝料算定表をみて見ましょう。
軽傷用|弁護士基準の慰謝料算定表

重傷用|弁護士基準の慰謝料算定表

※傷害の部位・程度によって算定表の金額から20~30%増額されることもある
たとえば重傷で入院期間1ヶ月、通院期間6ヶ月の場合、通常なら入通院慰謝料は149万円です。
しかし、通院期間6ヶ月に対して30日しか通院していなかった場合は「入院期間1ヶ月、みなし通院期間105日(30日×3.5)」で入通院慰謝料は122万5,000円になることがあります。
なお、通院期間105日は3ヶ月15日なので端数が生じています。
この場合は表を参考に別途日割計算が必要になるので、以下の計算機から確認してみてください。
関連記事
- 日割り計算の方法も解説:交通事故の慰謝料は早見表で相場がわかる!
自賠責基準|相手方の提示額に近い金額の計算方法
自賠責基準での入通院慰謝料は、1日あたり4300円として以下のように計算します。
自賠責基準の慰謝料計算式
4300円 × 対象日数
※次のうちどちらか短い方を「対象日数」として採用します。
- 治療期間
- 実際に治療した日数×2
※治療期間とは、一番最初に病院を受診した日~治療終了までの期間をさします。
※2020年3月31日までに発生した事故は日額4200円
※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まる。
実際の計算例で、通院日数が多い場合と少ない場合を比較してみましょう。
通院2ヶ月、実通院日数35日の場合
- 「治療期間(60日)」と「実通院日数×2(70日)」を比較し、少ない方である60日を採用
- 4,300円×60日=25万8,000円
通院期間2ヶ月、実通院期間15日の場合
- 「治療期間(60日)」と「実通院日数×2(30日)」を比較し、少ない方である30日を採用
- 4,300円×30日=12万9,000円
このように、通院日数が少なくなると入通院慰謝料が低額になります。
少ない通院日数でも慰謝料を多くする方法|治療中編
(1)焦って無理に多めに通院しない
通院日数が少ないと慰謝料が低額になると知り、無理に多く通院するのはおすすめしません。
無理に多く通院すると加害者側から過剰診療を疑われ、慰謝料を減額されるおそれがあるからです。
なお、自賠責基準では1ヶ月を30日とすると、1ヶ月あたりの通院日数が15日以上の場合に慰謝料が最大になります。このことから2日に1回のペースで通院しようとする人もいますが、これもおすすめしません。
自賠責基準より高額な弁護士基準では実通院日数よりも通院期間を基準に慰謝料額が決まります。
よって、自賠責基準を意識するよりも、弁護士基準に支障が出ないよう月10日程度のペースを目安に医師の指示通り通院する方が重要です。
(2)治療費打ち切りには適切に対応
通院日数が少ない場合、加害者側の任意保険会社が「もう治療を終えていい段階なのでは?」と判断して治療費の打ち切りを打診してくることがあります。
しかし、任意保険会社から治療費が打ち切られたことを理由にまだ必要な治療をやめてしまうと、次のようなデメリットが生じます。
- 治るはずのケガが治らない
- 治療期間が短くなることで入通院慰謝料が少なくなる
- 後遺症が残っても「十分な治療の末に残った症状とは言えない」として後遺障害認定されない
もし任意保険会社から治療費の打ち切りを打診されたら、まだ治療は必要である旨を書いた医師の意見書を任意保険会社に提出し、治療費打ち切りの延長を交渉してみてください。
それでも治療費が打ち切られた場合は、被害者側で費用を立て替えつつ治療を継続し、立て替えた分は示談交渉時に請求しましょう。
治療費打ち切りの延長交渉や立て替えた治療費の請求は、弁護士に任せることで成功率がアップします。
少ない通院日数でも慰謝料を多くする方法|示談交渉編
(1)通院日数が少ない事情があるなら主張
ギプス装着による自宅療養期間があった、医師の指示で通院日数が少なくなったなどの事情がある場合は、それを加害者側に伝え、通院日数が少ないのは被害者の責任ではないことをアピールしましょう。
そうすることで、心因的素因減額や過剰診療の疑いによる慰謝料減額を防げる可能性があります。
交渉の際には、以下のようなものを提示すると効果的です。
- 自宅療養や通院日数を指示したことを示す医師の証言や意見書
- 自宅療養期間中の過ごし方の記録
※自宅療養中も痛みなどの苦痛を感じていたこと、ケガのために生活に不自由が生じていたことなどを記載
(2)弁護士基準の慰謝料額獲得を目指す
加害者側の保険会社が示談交渉で提示してくる慰謝料額は、自賠責基準の金額に近い低額なものがほとんどです。
よって、法的正当性の高い弁護士基準の金額まで増額するよう交渉することで、より多くの慰謝料獲得が期待できます。
ただし、弁護士基準の金額は本来なら裁判を起こして得られるような高額なものです。
裁判なしで被害者が弁護士基準を主張しても、加害者側は根拠がないとして受け入れないでしょう。
しかし、弁護士を立てれば示談交渉でも弁護士基準の金額獲得が見込めます。その理由は次の通りです。
- 弁護士の主張であれば、加害者側も根拠がないとして否定することはできない
- 弁護士の主張を否定し続けると裁判に発展し、結局弁護士基準の金額を支払うことになりかねない
のちほど解説するように、弁護士費用は実質無料にすることもできます。
慰謝料増額の余地を残さないように、弁護士への相談・依頼を検討してみてください。
示談交渉の体験談
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アトム法律事務所のご依頼者様の声
(3)慰謝料の減額幅を縮める交渉をする
素因減額や過剰診療による減額の適用が避けられない場合には、減額幅を縮める交渉をしましょう。
具体的な減額幅について明確な決まりはなく、加害者側はあえて減額幅を大きく主張していることがあるからです。
この場合、過去の類似事例の判例や専門書の記載などを根拠に交渉していくことになるでしょう。
ただし、過去の判例や専門書の記載などについては、被害者よりも加害者側の保険会社の方がはるかに詳しいです。
どのような根拠を示して減額幅の縮小を主張しても、豊富な知識をもとに反論されてしまうでしょう。
よって、減額幅縮小の交渉に関しても、弁護士に依頼することをおすすめします。
通院日数が少ない不安は弁護士にご相談ください
アトム法律事務所は無料相談を実施中
アトム法律事務所では弁護士による無料相談を実施しています。
たとえば以下のような内容をご相談いただけるので、お気軽にご連絡ください。
- 通院日数が少ないのは医師の指示に従った結果だが、本当に大丈夫か不安
- 仕事が忙しく治療を後回しにしていた時期があり、示談交渉が不安
- 治療費打ち切りを打診されて対応に困っている
- ひとまず自力で示談交渉してみるつもりだが、交渉のコツは聞いてみたい
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ご依頼まで進んだ場合は弁護士費用が発生しますが、この後紹介する2つの方法により費用の負担は減らせます。
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委任契約まで進んでも弁護士費用の負担は減らせる
先述の通り、アトム法律事務所では無料相談を行っていますが、ご依頼まで進んだ場合は費用が発生します。
しかし、以下のいずれかの方法により費用の負担を減らすことが可能です。
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アトム法律事務所には、交通事故の経験と実績が豊富な弁護士が在籍しています。疑問や不安なお気持ちをアトムの弁護士にお聞かせください。




まとめ
- 通院日数が少ない状況が妥当なものか、それとも通院がおろそかになっているだけなのかをまずは把握する
- 月平均の通院日数が10日未満の場合は、通院日数が少ないと判断される可能性が高くなる
- 通院日数ではなく通院期間で計算する弁護士基準を採用することで、最も高い金額の慰謝料が得られる
- 適切な頻度の通院は後遺障害認定の可能性を高める
- 正当な慰謝料を得るためには弁護士に相談した方がいい
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了