頚椎捻挫で仕事は何日休む?補償や休めない場合の対処法も解説

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交通事故による頚椎捻挫(首のむちうち)は、首の痛み、頭痛、吐き気、めまい、上肢の痺れなどの症状を引き起こすことがあります。

頚椎捻挫になったら、仕事を休んで安静にすべき期間は約2週間程度です。

その後は、必要に応じて仕事を休みつつ、通院を続ける期間が数か月続きます。

仕事を休んで減った収入は、休業損害として補償を受けられる可能性があります。ただし、保険会社に「仕事を休む必要性」を疑われ、十分な休業損害がもらえない場合もあります。

また、仕事を休むことができず、通院を後回しにすると慰謝料も減るなどのリスクもあります。

この記事では、治療で仕事を休んだ場合の補償、治療と仕事を両立させるポイントなどを解説します。

目次

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頚椎捻挫(むちうち)で仕事を休む期間は?

交通事故による頚椎捻挫(けいついねんざ)とは?

頚椎捻挫とは、いわゆる「むちうち」のことです。

交通事故(特に自動車の追突事故)などで強い衝撃を受けると、首が鞭(むち)のようにしなり、頭部が激しく振られます。この動きによって、首まわりの筋肉や靭帯が損傷し、頚椎捻挫(むちうち)を発症します。

頚椎捻挫の症状としては、以下のようなものがあります。

頚椎捻挫(むちうち)の症状

  • 首の痛みやしびれ
  • 腕・指先にかけての痛みやしびれ
  • 頭痛
  • めまい
  • 吐き気
  • 耳鳴り
  • 肩こり、腰痛、背中の痛み など

頚椎捻挫は、主に4つのタイプに分けられます。

頚椎捻挫(むちうち)の類型

  • 捻挫型
  • 神経根型
  • 脊髄型
  • バレ・リュー型

頚椎捻挫の症状があらわれた場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

そして、MRI検査や神経学的検査(例:ジャクソン、スパーリング)を受け、「頚椎捻挫」の診断を受けます。

その後は、一定期間の安静を取った後、週3日程度の頻度で整形外科に通院し、治療を継続します。

頚椎捻挫の治療や検査などについて、もっと詳しく知りたい方は『交通事故によるむちうちの症状・治療期間・後遺症|慰謝料相場も解説』の記事もあわせてご覧ください。

むちうちの安静期間は2週間。その後も通院で休む期間が続く

頚椎捻挫を負った場合、一般的には急性期や安静期と呼ばれる受傷後2週間は仕事を休むことが望ましいとされ、その後は治療が終了するまで最低でも月に1回は通院をします。

急性期や安静期のあとでも、通院日が仕事の日と重なる場合は仕事を休めます。

治療が終了するまでの期間は急性期を含め平均で3ヶ月程度ですが、後遺症が残る場合は、6ヶ月以上治療することが望ましいです。

ただし、実際に仕事を休む日数は、医師の判断や頚椎捻挫の程度にもよります。担当医の指示に従うようにしましょう。

頚椎捻挫(むちうち)の具体的な治療方法については、『交通事故によるむちうちの症状・治療期間・後遺症』で解説しています。

安静期に仕事をすべきでない理由

安静期は患部が炎症を起こしており、通勤や業務の中で生じる以下のような動きでも、刺激となって症状を悪化させる恐れがあります。

  • 自動車やバス、自転車に乗っているときに、車体の揺れを受けて首が動く
  • パソコン作業などで長時間首を傾けた姿勢をとる
  • 人と話していて相槌を打つ

よって、自分では仕事ができると感じても、自己判断で仕事に出ないようにしましょう。

むちうちで仕事を休みたい時の手続き|通院日以外でも休める?

交通事故によるむちうちで仕事を休みたい場合、会社の就業規則によっては診断書の提出を求められることがあります。担当部署に確認し、必要な手続きをとってください。

なお、医師からの休業指示や通院の予定がない日でも、症状の影響で仕事をするのが辛ければ勤め先に連絡を入れることで仕事を休めます。

ただし、自己判断で仕事を休んだ場合、休業の必要性・相当性を証明できず、その日分の収入を補償する「休業損害」が支払われない可能性があります。

症状が辛くて自己判断で仕事を休むことにした場合は、可能であれば病院へ行って医師に診察してもらい、「その日は仕事を休まざるを得ないほど症状が強かった」という証明ができるようにしておきましょう。

詳しくは、『交通事故で後から痛みが…対処法と因果関係の立証方法は?判例も紹介』をご覧ください。

むちうちの休業損害はいつまでもらえる?

むちうちに限らず、交通事故では治療終了(完治/症状固定)まで休業損害をもらえます。むちうちなら、完治するケースで3ヶ月、後遺症が残るケースで6ヶ月が目安です。

休業損害は1日あたりの給与額を日額とし、休業した日数分もらえます。

治療のために取得した有給休暇も対象となり、治療のため遅刻・早退などした日の休業損害は、仕事を抜けた時間分となります。

むちうちの休業期間に関する裁判例

こちらでは、むちうちで仕事を休む期間が問題になった裁判例をご紹介します。

むちうちで仕事を休む期間:81日間認定

大阪地判平30・9・28(平成28年(ワ)12827号)

原付運転の主婦が停車中に、普通車に逆突され「左肩から手指にかけての痛み」を訴えて約6か月通院。主婦は「家事全般がほぼできない状態」と主張し50%の労働能力喪失を求めたが、医師らは「日常生活・業務への支障なし」と診断。

さらに事故10日後にテーマパークでアトラクションを楽しんでいた事実が判明し、家事労働への実際の支障の程度が争点となった。


裁判所の判断

「…81日間につき、30%の家事労働能力を喪失したものとして、次の計算式のとおり24万2,414円と認めるのが相当である」

大阪地判平30・9・28
  • 本件事故による受傷の影響で、掃除、洗濯、料理、ペットの犬の世話などの家事労働に支障が生じた
  • 一方、事故後(10日後)のテーマパーク利用が、実際の生活支障を否定する決定的証拠となった
休業期間

事故日から81日間(約2か月半)

むちうちで仕事を休む期間:204日認定

大阪地判平26・3・18(平成23年(ワ)3452号)

設備工事現場代理人の男性(38歳)が追突事故で頸椎捻挫を受傷。医師の意見書では「3ヶ月程度要休業」とされたが、原告は症状固定まで204日間の就労不能を主張。

現場作業の身体的負荷と残存症状(めまい、左上下肢脱力など)から、デスクワークとは異なる就労困難性が争点となった事案。


裁判所の判断

「…意見書中には、3ヶ月程度との記載があるが、一般論からの立論であって、原告の具体的な症状を踏まえたものではないから、採用し難い

大阪地判平26・3・18
  • 医師意見書の3ヶ月を退け、原告主張204日間を全面認定
  • 現場代理人業務の特殊性と症状の具体的影響を重視。復職時は事務職への配置転換が必要な状態
  • 休業損害260万3,131円を満額認定
休業期間

204日間

頚椎捻挫(むちうち)の治療より仕事を優先するリスク

頚椎捻挫は比較的軽症であることから、仕事を優先して治療が後回しになる人もいます。

人が足りないから、大切な時期だからなど仕事に穴をあけられない理由はあるにせよ、治療を後回しにするとさまざまなデメリットが生じるので、確認していきましょう。

頚椎捻挫の入通院慰謝料等が減るリスク

交通事故後、仕事を優先して初診が遅くなったり、通院の間隔があきすぎたりすると、頚椎捻挫と交通事故との因果関係を証明しにくくなります。

その結果、加害者側から支払われる治療費や慰謝料が減ってしまう可能性があります。

頚椎捻挫の入通院慰謝料の種類

頚椎捻挫でもらえる交通事故の慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つがあります。

入通院慰謝料

交通事故の治療期間中に生じた精神的苦痛に対する補償。入院・通院の日数や期間に応じて金額が決まる。
関連記事:交通事故の慰謝料は通院1日いくら?

頚椎捻挫の通院と、治療費・入通院慰謝料減額のリスク

頚椎捻挫で仕事を休むことができないと、以下のような事態におちいり、慰謝料金額が減額になってしまうおそれがあります。

  • 最初の受診が遅れた場合
    • 頚椎捻挫が本当に交通事故で生じたものなのか、交通事故後の日常生活の中で生じたものなのか判断しにくくなる
    • その結果、治療費や入通院慰謝料などがもらえないリスクがある
  • 通院中に長い空白期間が生じた場合
    • 通院が途切れた時点で交通事故による頚椎捻挫は治ったのではないかと疑われ、空白期間後の通院は交通事故とは無関係だと思われてしまう
    • その結果、通院再開後の治療費や入通院慰謝料などがもらえないリスクがある

前回の通院から30日以上経過してしまうと、実務では、事故と症状との因果関係がないと判断されてしまいます。

また、通院頻度が極端に少ない場合、慰謝料計算で不利に扱われることもあります。

頚椎捻挫の慰謝料計算の事例

月に5回、4か月間(合計20日)通院した場合の慰謝料計算の例は以下のとおり。

  • 任意保険がよくする慰謝料提示(1)
    自賠責基準(日額4,300円に、通院期間または通院日数の2倍の期間のいずれか少ない方を乗じる)で提示
    17万2,000円
  • 任意保険がよくする慰謝料提示(2)
    通院期間、または通院日数の3倍の期間のいずれか少ない方で算出
    本件の場合、60日分(=20日×3倍)を基準に算出
    36万円
  • 弁護士基準による慰謝料
    通院期間4か月(≒120日)を基準に算出
    67万円

妥当な入通院慰謝料を受けとるためには、よく医師や職場と相談し、定期的な通院ができるように努める必要があります。

仕事があっても最低でも月に1回以上、できれば月に10回程度通院することが望ましいです。

後遺障害慰謝料等の補償を受けられなくなる

交通事故による頚椎捻挫で後遺症が残った場合、後遺症の症状が後遺障害に該当すると認定されれば「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」の補償を受け取れます。

ただし、後遺障害等級は「医師の指示に従い、十分に治療したにもかかわらず残った後遺症」に対して認定されるものです。

仕事を優先して治療をおろそかにした状態で後遺症が残っても、後遺障害等級は認定されず、後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえないリスクが高くなります。

後遺障害慰謝料・逸失利益が得られない損失は大きい

後遺障害慰謝料や逸失利益は、交通事故の示談金の中でも高額になりやすい費目です。

たとえば頚椎捻挫が該当しうる後遺障害等級と後遺障害慰謝料は、以下の通りです。

  • 12級:94万~290万円
  • 14級:32万~110万円

逸失利益を合わせると金額はさらに大きくなるため、仕事を優先して後遺障害等級が認定されなくなることによる損失は大きいと言えるでしょう。

頚椎捻挫(むちうち)の慰謝料事例

こちらでは、被害者が交通事故で頚椎捻挫(むちうち)等を負った事案で、慰謝料金額が問題になった裁判例を紹介します。

タクシー運転手追突事故の慰謝料認定

東京地判平27・3・18(平成25年(ワ)8556号)

タクシー運転手(甲野太郎)が信号待ちで停車中、後方から追突される事故が発生。運転手は頚椎捻挫を負い、約6か月半通院。他覚的所見はないものの頚部痛が残存し、14級9号の後遺障害認定を受けた。慰謝料額が主な争点となった。


裁判所の判断

「…原告の後遺障害の内容及び程度に照らし、後遺障害慰謝料として一一〇万円を認めるのが相当」

東京地判平27・3・18
  • 事故後の頚椎レントゲン検査において頚椎の直線化(弯曲異常)が確認されたことが認められるが、頚椎の直線化が本件事故によって生じたことを認めるに足りる証拠はない。
  • 頚部画像上、器質的損傷は認められないが、受傷当初からの症状の一貫性、治療状況から、後遺障害は14級9号に該当
損害賠償額

通院慰謝料:90万円(約6か月半の通院期間)

後遺障害慰謝料:110万円(14級9号)

運転代行業者の追突事故後遺障害慰謝料判例

さいたま地判平29・6・1(平成28年(ワ)265号)

運転代行業の男性が中型貨物車に追突され、頸椎捻挫・腰椎捻挫で175日間通院。原告は通院慰謝料124万円(通院約7か月)、後遺障害慰謝料290万円(12級相当)を請求したが、被告は通院慰謝料53万円が限度、後遺障害は否認と反論。適正な慰謝料額が争点となった。


裁判所の判断

「…14級に至らない程度の後遺障害が残ったと認める」

さいたま地判平29・6・1
  • 本件事故と相当因果関係のある原告の通院期間は、175日間(5ヶ月と25日、実通院日数100日)
  • 画像所見や神経学的検査の他覚的所見が不十分として12級認定を否定。
  • 項背部痛と腰痛の症状に連続性・一貫性があることから、14級9号に至らない程度の後遺障害を認定。
損害賠償額

通院慰謝料:87万円(175日間通院)
後遺障害慰謝料:80万円

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頚椎捻挫(むちうち)でも仕事を休めない時の対処法

交通事故で頚椎捻挫を負って治療を受けなければならないものの、仕事を休めないという人もいます。

しかし、仕事を優先して治療を後回しにするデメリットは上で解説した通りです。
そこで、仕事を休めない人はどうしたらいいのか、対処法を解説していきます。

やむを得ない事情がある場合は弁護士に相談する

どうしても仕事を休めない重要な事情がある場合は、一度弁護士にご相談ください。

入通院慰謝料は治療期間に応じて金額が決まりますが、やむを得ない事情で治療期間を短縮した場合には増額される可能性があります。

ただし、どのような事情が「やむを得ない事情」にあたるのか明確な定義はありません。
また、事情を考慮して入通院慰謝料が増額されるかどうかは、加害者側との示談交渉にもかかっています。

よって、仕事を休めないので治療を早く終わらせたいという場合は、事前に弁護士に相談してみてください。

▼相談は、電話やLINEから無料でできます。

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休日や仕事終わりに受診する

仕事を休まず通院する方法としては、以下のものもあります。

  • 休日に受診できる病院に転院する
  • 仕事終わりに治療を受ける

それぞれについて解説します。

休日に受診できる病院に転院する

仕事のある日に通院したくない場合は、休日に受診できる病院・クリニックを探してみましょう。

休日に通院するために転院することも可能です。
ただし、治療費の支払いに関する都合上、必ず事前に相手方の任意保険会社に連絡を入れましょう。

転院時のポイントは、『交通事故の治療の流れ』の中で解説しています。

なお、整骨院や接骨院も休日に通えることが多いですが、整骨院・接骨院への通院には注意点があります。

詳しくは次の「仕事終わりに治療を行う」で解説するので続けてご確認ください。

仕事終わりに治療を受ける

平日に仕事を休まず通院したいという場合は、職場や自宅付近において遅くまで受付をしている医療機関を探しましょう。

この際に、整骨院や接骨院に通うのであれば注意が必要です。

整骨院や接骨院は病院ではないため、適切な手順を踏んだうえで通わなければ、加害者側から治療費や慰謝料が十分に支払われない可能性があります。

整骨院や接骨院に通う場合は、必ず以下の点を守りましょう。

  • 初診は病院の整形外科で受ける
  • 病院の医師の許可を得たうえで、整骨院・接骨院に通う
  • 整骨院・接骨院に通いつつ、月に1回は病院へも通う

整骨院を利用する際の注意点については『交通事故で整骨院に通院する際の注意点|整形外科との違いは?』の記事をご覧ください。

可能なら外注や代打を頼む|費用は加害者に請求可

自営業の場合は、外注や代打を頼むことも、仕事を休めない場合の対処法の1つです。

交通事故の治療のために外注・代打を頼んだ場合は、その分の費用も加害者側に請求しましょう。

実際に、代打や外注の人に支払う報酬を加害者側に請求し、認められた判例もあります。

新聞販売店経営(男・38歳)につき、事故のため新聞配達を行えなかった期間、代行の新聞配達要員に支払った派遣料を認めた

大阪地判平11.8.31 交民32・4・1322

一人で開業している歯科医師(女・39歳、事故当時の年収1049万円余)につき、一人で全患者に対する診療行為を行うことができなくなった場合に、一部代診を依頼した医師に対する38日分の給与335万円余を認めた

横浜地判平15.3.7 自保ジ1494・21

ただし、示談交渉の際には外注・代打費用をめぐって加害者側と争いになる可能性があります。

よって、ご自身のケースで本当に外注・代打費用の請求が認められるか、事前に弁護士に確認をとることが重要です。

頚椎捻挫(むちうち)が仕事に影響|損害賠償金と計算方法

交通事故で頚椎捻挫になると、仕事を休んだりパフォーマンスに影響が出たり、場合によっては内定取り消し・解雇が生じたりする可能性があります。
これらによる損害はどういった費目で加害者側に請求できるのか、見ていきましょう。

休業損害|休業、クビ、就職遅れで計算方法が違う

交通事故で頚椎捻挫を負った場合、治療のために仕事を休んだことによる損害はもちろん、以下の損害は休業損害で補償されます。

  • 治療などのために仕事を休んだことによる損害
  • 頚椎捻挫による休業や後遺症のために仕事をクビになった損害
  • 治療やリハビリのために就職が遅れたり、内定を取り消されたりした損害

それぞれについて、具体的なケースや金額を解説していきます。

仕事を休んだことによる損害

頚椎捻挫の治療やリハビリで仕事を休んだことで生じる減収分は、休業損害で補償されます。

この場合、休業損害の金額は次のように計算されます。

日額×休業日数

日額は以下のように計算する

  • 給与所得者:事故前3か月間の収入÷実労働日数
    ※90日で割ることもある
  • 自営業者:事故前年の確定申告における申告所得÷365日

※示談交渉の際、加害者側は実際の減収額よりも低い金額を提示してくる傾向にあるので、増額交渉が必要

休業損害は手順を踏んで請求すれば1か月ごとにもらえる可能性があるので、休業日数が多くて大幅な減収が発生する場合でも安心です。

なお、日額は終日休んだら1日分、半休をとった場合は半日分となりますが、ケガの治療経過に応じて金額が減らされていくこともあるので注意しましょう。有給休暇を取って休んだ日も、休業損害の対象です

休業損害の関連記事

交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方・いつもらえるか弁護士解説

仕事をクビになった場合の損害

交通事故による休業や後遺症を理由に仕事をクビになり失業したといえる場合には、休業損害が支払われます。

交通事故が原因でクビになった場合の休業損害

基本的には「次の就職先が決まるまで」あるいは「次の就職先が決まるまでの期間として妥当な期間」分の休業損害が支払われる。

ただし、失業による休業損害が認められるのは基本的に、会社都合による退職、つまり解雇の場合です。

自主的に退職した場合は、交通事故による休業が原因とした失業ではないとして休業損害が支払われない可能性が高いので、注意してください。

会社側から退職推奨を受けた場合でも、自ら退職願を出すのではなく、会社側からはっきりと退職を求められるまで待つ方がベターです。

なお、雇用保険から失業保険金を受け取れる可能性もあるので、確認してみてください。

交通事故による退職でお困りの場合は『交通事故による退職で休業損害がもらえるケースは?退職理由が重要』の記事も参考になります。あわせてご確認ください。

就職遅れ・内定取り消しの損害

交通事故で頚椎捻挫になったことを理由に内定を取り消されたり、就職時期がずれ込んだりした場合も、休業損害が支払われる可能性があります。

就職遅れ・内定取消しによる休業損害

例えばすでに内定先が決まっていたなら、内定先の給与を基準に、就職がずれ込んだ期間分の休業損害を請求できることがある。

ただし、交通事故により頚椎捻挫となったことと、内定の取り消しや休業時期がずれん込んだこととの因果関係を明らかにする必要があるため、請求することは簡単ではありません。

請求の可否については、専門家である弁護士に相談して確認すべきでしょう。

学生が交通事故にあった場合の損害賠償金については、『学生・大学生の交通事故慰謝料』で詳しく解説しています。

後遺障害逸失利益|後遺障害で仕事に支障が出た場合

頚椎捻挫の場合、慢性的な痛みやしびれが後遺症として残り、以下のように仕事に影響する可能性があります。

  • 肉体労働に従事しているのに重い物を持てなくなった
  • 痛みやしびれによる苦痛で長時間集中して仕事ができなくなった

このような場合、出世が難しくなったり異動を余儀なくされたり、労働時間を調節したりしなければならず、生涯収入が減ってしまう可能性があります。それを補償するのが「後遺障害逸失利益」です。

逸失利益とは

ただし、後遺障害逸失利益の請求には条件があるので、計算方法と一緒に確認しておきましょう。

後遺障害逸失利益がもらえる条件と計算方法

  • 後遺障害逸失利益がもらえる条件
    • 交通事故により残った後遺症に対し、「後遺障害等級」が認定されている
    • 頚椎捻挫の場合は、しびれや痛みといった神経症状が後遺障害12級または14級に認定される可能性がある
  • 後遺障害逸失利益の計算方法
    • 事故前の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
    • 労働能力喪失率は、12級なら14%、14級なら5%
    • 労働能力喪失期間は、12級なら5~10年、14級なら5年程度とされる
    • ライプニッツ係数は、「就労可能年数とライプニッツ係数(厚生労働省)」参照
後遺障害逸失利益の計算方法

頚椎捻挫による後遺症が後遺障害12級に認定されるか14級に認定されるかは、以下の基準で判断されます。
関連記事内ではくわしい等級認定基準や認定を受ける方法について解説しているので、後遺障害認定を検討している方は参考にしてください。

12級レントゲン写真やMRI画像といった他覚的所見で異常が確認できる
関連記事:後遺障害12級の症状・認定基準
14級他覚的所見で異常は見られないものの、神経学的検査の結果から後遺症があると推定できる
関連記事:後遺障害14級の認定基準と慰謝料

後遺障害逸失利益の詳しい計算方法について知りたい方は『交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認』の記事をご覧ください。

また、後遺障害逸失利益は、以下の計算機からも簡単に計算できるので、ご利用ください。

慰謝料|頚椎捻挫で受けた精神的苦痛

交通事故で頚椎捻挫を負って精神的苦痛を受けたことは、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料という種類の慰謝料で補償されます。

  • 入通院することで精神的苦痛を受けた
  • 後遺障害が生じたことで精神的苦痛を受けた

入通院慰謝料と後遺障害慰謝料は、治療を続けても完治せず、後遺障害等級に認定された場合、どちらも請求することが可能です。
それぞれについて、具体的な金額をみていきましょう。

入通院慰謝料

頚椎捻挫の治療やリハビリすることで受けた精神的苦痛は、入通院慰謝料で補償されます。

入通院慰謝料は、入通院期間に応じて金額が決まります。頚椎捻挫で想定される治療期間に応じた入通院慰謝料の相場は次の通りです。

頚椎捻挫の入通院慰謝料(入院していない場合)

通院月数慰謝料
通院1月19万円
通院2月36万円
通院3月53万円
通院6月89万円

※ 通院が1ヶ月未満の場合や、1ヶ月と10日のように端数がある場合は、日割計算が必要

こちらで紹介した相場は、弁護士が慰謝料を算定するときに用いる基準(弁護士基準)で割り出したものです。相手方保険会社が提示してくる慰謝料はこれよりも低額である可能性が高いでしょう。

以下の関連記事では、弁護士による交渉で得られる入通院慰謝料と、保険会社が提示してくる入通院慰謝料の金額差がわかります。あわせてご覧ください。

関連記事

交通事故の慰謝料は通院1日いくら?

後遺障害慰謝料

頚椎捻挫が完治せず、後遺障害が残ったことで受けた精神的苦痛は、後遺障害慰謝料で補償されます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害の程度に応じて認定された等級で金額が決まります。頚椎捻挫で想定される後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料の相場は次の通りです。

頚椎捻挫の後遺障害慰謝料

級号*慰謝料
14級9号110万円
12級13号290万円

*頚椎捻挫の後遺症が該当しうるもの

頚椎捻挫で認定しうる後遺障害等級は、後遺障害14級9号または12級13号となりますが、上記で紹介した相場は、弁護士が慰謝料を算定するときに用いる基準(弁護士基準)で割り出したものです。相手方保険会社が主張する金額はこれよりも低い可能性が高くなります。

以下の関連記事では、弁護士による交渉で得られる後遺障害慰謝料と、保険会社が提示してくる後遺障害慰謝料の金額差がわかります。あわせてご覧ください。

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後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定で支払われる金額と賠償金の種類

頚椎捻挫で請求可能な損害|治療費や物的損害

休業損害や逸失利益、慰謝料のほかにも、以下のような損害について請求することが可能です。

▼実際に受け取れる金額は加害者側との示談交渉で決まります。相手方の提示額に納得いかない場合は、お気軽に無料相談をご利用ください。

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頚椎捻挫(むちうち)を負ったが仕事がある…そんな場合は弁護士に相談

交通事故で頚椎捻挫となった場合には、弁護士に依頼をすることで、以下のようなメリットを受けられます。

  • 休業に関する損害をしっかりと請求できる
  • 仕事中に示談交渉の電話対応をしなくて済む

上記のメリットと、弁護士費用について解説します。

休業に関する損害をしっかり請求できるから安心

交通事故による頚椎捻挫で仕事に支障が出た場合、休業損害や逸失利益などを相手方に請求できます。

しかし、相手方保険会社はできるだけ支払う賠償金を少なくしたいと思っているため、次のような形で金額を下げようとしてくることが多いです。

  • 必要性のない休業だったとして、仕事を休んだ日のうち一部を休業損害の対象にしない
  • 症状が徐々に良くなっていたことを理由に、少しずつ日額を減らす

相手方保険会社は示談交渉のプロであり、損害賠償金に関する知識も豊富です。
よって、被害者自身がいくら金額の訂正を主張し、増額の交渉を行っても、専門用語や過去の判例、専門書の記載などを提示して反論されてしまい、増額ができません。

また、休業損害以外の損害に対する請求についても、同様の対応を取られるでしょう。

増額交渉(弁護士なし)

そのため、本来受け取れるはずの損害賠償金を受け取ることができなくなる可能性があります。

しかし、弁護士を立てれば、そうした相手方の反論に対してもしっかりと対応してもらえるので、休業損害を含めた損害賠償金について相場額まで増額してもらえるのです。

増額交渉(弁護士あり)

仕事中に示談交渉の電話対応をしなくて済む|体験談あり

交通事故の示談交渉は電話でおこなわれることが多いですが、交渉の電話は仕事中でもかかってきます。

実際の体験談

仕事中にも関わらず電話してきたりととても困っていました。個人で相手と交渉するのに限界を感じ、アトム法律事務所に電話で相談しました。(略)納得できる内容で交渉をまとめていただき感謝しています。

アトム法律事務所のご依頼者様のお手紙|むちうちの増額事例

せっかく治療が終わり、仕事を休む必要がなくなっても、今度は示談交渉の電話に対応するため仕事を中断しなければなりません。

また、治療終了から示談交渉開始までの期間でも、交渉に必要な書類を集めるなどの準備をすることになります。後遺症が残れば、後遺障害認定の対策・申請手続きも必要です。

このように、頚椎捻挫の治療が終わっても、しばらくは引き続き仕事に影響が出てしまいます。

しかし、弁護士を立てれば示談の準備・後遺障害認定の手続き・示談交渉を任せられるうえ、被害者自身で対応するよりも良い結果を得やすくなります。

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交通事故の慰謝料は増やせる?上乗せの方法をまとめて公開

弁護士への相談・依頼の費用をおさえることはできる

弁護士費用特約とは、弁護士に依頼する際に生じる費用を保険会社が代わりに負担するという制度です。

基本的には、相談料について10万円まで、弁護士に支払う報酬について300万円までを負担するという内容になっていることが多いでしょう。

もっとも、弁護士への報酬金額が300万円を超えることは非常に珍しいです。
そのため、弁護士費用特約によって、被害者自身の自己負担は0円となるケースがほとんどといえます。

弁護士費用特約とは

弁護士特約は自動車保険だけでなく、火災保険やクレジットカードに付帯されていることもあるので、弁護士への相談や依頼を行う前に特約の有無について確認を行うべきでしょう。

弁護士費用特約に関して詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

弁護士費用が気になる方はアトム法律事務所がおすすめ

アトム法律事務所は、交通事故でケガをしてしまった方に向けて無料の法律相談をおこなっています。

また実際にご依頼いただく場合にも、ご依頼段階には費用がかからないように、以下の料金体制で相談・依頼が可能です。

弁特料金
あり加入している保険会社が弁護士費用を負担してくれる。
よって被害者は自己負担なく弁護士に依頼できることが多い。
なし着手金が原則無料。
成功報酬は獲得示談金の11%+22万円(税込)。
成功報酬は獲得示談金から支払えるので、ご依頼者様が自費で用意する費用は0円。

弁護士費用特約が利用できない場合でも、原則として費用を負担することなく依頼を行うことが可能です。

アトム法律事務所には交通事故事件の経験が豊富な弁護士が所属しており、確かな実績と丁寧な対応により、90%以上のご依頼者様から満足の声をいただいています。

まずはLINEまたは電話による無料相談をご利用ください。

交通事故案件に関してアトム法律事務所が実際に解決した事例は、「交通事故の解決事例」のページでご確認いただけます。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。