学生(大学生・中高生)の交通事故慰謝料は?計算方法や相場を解説

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学生が交通事故に!

学生が交通事故の被害にあった場合、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の金額には、基本的に「学生であること」は影響しません。

ただし、休業損害や逸失利益の計算では学生という立場が計算に影響します。

また、学生の場合は交通事故により休学・留年や就職遅れなどが発生することがありますが、これによる損害も基本的に請求可能です。

学生が交通事故で請求できる慰謝料・賠償金の内容や計算方法を詳しく見ていきましょう。

目次

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1分でわかる学生の慰謝料【自動計算機つき】

この記事で解説する「学生の交通事故の慰謝料」の要点は以下のとおりです。

学生の交通事故の慰謝料

  • 入通院慰謝料:入院期間・通院期間に応じて決まる
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害等級ごとに決まっている
  • 死亡慰謝料:学生の場合、2,000万~2,500万円
  • その他、以下の損害も別途請求できることが多い
    • 交通事故でアルバイトを休んだり就職が遅れたりした
    • 後遺障害により労働能力が低下した
    • 休学や留年で学費や下宿代が余分に必要になった
    • 学習の遅れを取り戻すため塾や家庭教師を利用した
    • 両親が入院や通院、通学に付き添った
    • 交通事故の影響で通学手段が変わった

具体的な各費目の計算方法や金額は本記事内で解説していきますが、慰謝料の大まかな金額は以下の計算機からも確認できます。

入通院期間や後遺障害等級などがわかっていれば使えるので、お気軽にご利用ください。

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学生が請求できる慰謝料

交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があります。

また、各慰謝料の計算方法は3種類あるため、どの計算方法を用いるかによって相場が違います。

詳しく見ていきましょう。

交通事故の慰謝料は3種類|相場も3パターンある

慰謝料は交通事故の賠償金の一部で、「精神的苦痛」を金銭に換算したものです。

先述の通り慰謝料には3つの種類があります。

交通事故の慰謝料3種

  • 入通院慰謝料
    交通事故によって通院したり入院したりした場合に請求できる。
    ケガや治療によって生じる精神的苦痛に対する補償。
  • 後遺障害慰謝料
    交通事故で後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けると請求できる。
    後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛に対する補償。
  • 死亡慰謝料
    死亡事故の場合に請求する。
    死亡した被害者本人と遺族の精神的苦痛に対する補償。

そして、各慰謝料には以下の3つの算定基準があり、それぞれで計算方法が異なっています。

  • 自賠責基準:交通事故被害者に補償される最低限の金額の算定基準
  • 任意保険基準:示談交渉で加害者側が提示してくる金額の算定基準(各保険会社が独自に設定しており非公開)
  • 弁護士基準:過去の判例に基づいた正当性の高い金額の算定基準
慰謝料金額相場の3基準比較

なかなかピンときにくいと思うので、実際の慰謝料請求においてこの3つの相場がどう関わってくるのかわかりやすく解説します。

交通事故の慰謝料は「示談交渉」という話し合いで決まることが多いです。多くの場合、交渉相手は、加害者が加入する任意保険会社となります。

加害者側の任意保険会社は、「任意保険基準」に沿った金額を提示してきます。しかし適正なのは弁護士基準に沿った金額なので、被害者側は増額を求めます。

交渉の結果、互いが合意する金額に決まったら示談は成立。

決まった金額のうち「自賠責基準」に沿った金額分は加害者側の自賠責保険から、それ以上の金額は加害者側の任意保険から支払われるのです。

任意の自動車保険と自賠責保険の関係

なお、通常は自賠責保険分の金額もまとめて加害者側の任意保険から一括で支払われることが多いです。

示談交渉については『交通事故の示談手順|流れや手順通りに進まない時の対処法』で解説しているので、参考にしてみてください。

ここからは、交通事故被害者が本来得るべき金額(弁護士基準)の計算方法を解説していきます。自賠責基準や任意保険基準が気になる場合は以下の記事をご覧ください。

入通院慰謝料の計算方法

入通院慰謝料が補償するのは「ケガを負って入通院したことが原因で生じる精神的な苦痛」です。
たとえば次のような精神的苦痛は、入通院慰謝料によって補償されます。

  • ケガの痛みによる苦痛
  • 交通事故時に怖い思いをした
  • 治療や手術の際に恐怖や苦しみ、不安を感じた
  • 入通院によって時間的・身体的拘束が生じ、不便な思いをした

入通院慰謝料は算定表で計算する

弁護士基準の入通院慰謝料は、算定表を用いて計算します。
算定表には軽傷用と重傷用の2種類があり、以下のように使い分けます。

  • 軽傷用:むちうちや軽い打撲、挫創などの場合に用いる
  • 重傷用:軽傷に当たらないケガの場合に用いる

入通院慰謝料の算定表(軽傷用)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

入通院慰謝料の算定表(重傷用)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

算定表の使い方

  • 入院月数と通院月数の交わる箇所が慰謝料の相場
  • 月数は暦にかかわらず「1月=30日」とする
  • 入院期間が40日など、30日で割り切れない場合は、日割計算を行う

脳の損傷や内臓の損傷、生命の危険が非常に高く長期間の絶対安静を必要とする傷害などは、慰謝料額が2割程度増額されることがあります。

後遺障害慰謝料の計算方法

ケガが完治せず、後遺症が残った場合には、後遺障害慰謝料の請求が可能となる場合があります。

後遺障害慰謝料が補償するのは、「後遺障害を負ったことによる精神的な苦痛」です。
具体的には次のような精神的苦痛が、後遺障害慰謝料によって補償されます。

  • 後遺障害が残った悔しさや不安、怒り
  • 将来にわたって感じ続ける不便さや苦痛

後遺障害慰謝料は後遺障害等級で決まる

後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級に応じて変わります。
弁護士基準における後遺障害慰謝料の金額は、以下のとおりです。

等級 慰謝料金額
1級・要介護2800万円
2級・要介護2370万円
1級2800万円
2級2370万円
3級1990万円
4級1670万円
5級1400万円
6級1180万円
7級1000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

たとえば、むちうちで後遺症が残った場合、後遺障害等級12級または14級に認定される可能性があります。後遺障害慰謝料の金額は、12級なら290万円、14級なら110万円です。

等級が1級違うだけで、請求できる慰謝料の金額に大きな違いが生じるため、正確な後遺障害等級の認定を受けることが大切になります。

症状別に該当しうる後遺障害等級を知りたい場合は、『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準を解説!自賠責保険金もわかる』をご確認ください。

後遺障害等級の認定を受ける方法

後遺障害慰謝料は、単に後遺症が残っただけでは請求はできません。

後遺症に対して「後遺障害等級」が認定されてはじめて、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。

後遺障害等級の認定を受けるには、必要書類を審査機関に提出し、審査を受ける必要があります。

詳しい方法は以下の関連記事で解説しています。

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死亡慰謝料の計算方法

死亡慰謝料が補償するのは、「被害者が死亡したことによる、被害者本人と近親者の精神的苦痛」です。

被害者本人だけではなく、法律上で近親者とされる父母、配偶者、子の精神的苦痛に対しても個別の慰謝料が支払われます。

死亡慰謝料は家庭内の立場で決まる

弁護士基準では、死亡慰謝料の金額は家庭内における被害者の立場を考慮して決まります。

被害者が学生の場合は、遺族分の金額も合わせて2,000万円~2,500万円が死亡慰謝料の相場です。

被害者の立場金額
一家の支柱2,800万円
母親・配偶者2,500万円
その他の場合(学生を含む)2,000万円~2,500万円

なお、先述の通り遺族とは基本的に、法律上で近親者とされる父母、配偶者、子を指します。

しかし、兄弟姉妹など他の親族であっても、父母、配偶者、子と実質的に同じような身分関係があり、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、補償の対象になった事例があります。

また、以下のような場合は上記の相場がさらに増額されることもあるので、心当たりがある場合は一度弁護士にご連絡ください。

  • 事故の加害者に故意や重大な過失がある
  • 加害者の態度が著しく不誠実であるといった事情が認められる

死亡した被害者本人文の慰謝料は誰が受け取る?

死亡した被害者本人に対する慰謝料・賠償金の請求・受け取りは、遺族から選ばれる「相続人」がおこないます。

死亡事故の慰謝料について解説した記事『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』では、相続人の選出方法も解説しているのでご確認ください。

学生という立場が影響しやすい費目

交通事故にあったときに請求できる損害賠償金には、慰謝料以外に以下のものがあります。

  • 休業損害
    交通事故の影響により収入が減ったことへの補償
  • 逸失利益
    後遺障害の影響により将来的な収入が減ったことへの補償
  • 治療関連費
    診察費、投薬費、手術費、入通院交通費、入通院付添費など
  • 物損に関する補償
    車・バイク・自転車の修理費用など

中でも被害者が学生であることが金額に影響するのは休業損害、逸失利益です。また、他にも学生ならではの費目もあるので詳しく見ていきましょう。

(1)休業損害|アルバイトや就職遅れに関する減収を補償

休業損害は、基本的に「事故当時、家事や労働に従事していたが、交通事故による治療のために仕事ができず収入が減ってしまった人」に支払われるものです。

一見学生は対象外のようにも思えますが、以下のケースに当てはまるなら休業損害を請求できる可能性があります。

  • 交通事故によりアルバイトができない期間が生じ、収入が減ったケース
    • 生活費や学費だけではなく、交際費や遊興費を得るためのアルバイトも対象となる
  • 交通事故による留年や内定取り消しなどにより、就職時期が遅れたケース
    • 仮に就職が1年遅れたとすると1年分の収入が得られなくなってしまうので、その補償として休業損害を請求できる

実際に就職が遅れたりアルバイトができなくなったりして休業損害が認められた判例を紹介します。

就職遅れによる休業損害

専門学生(男・事故時18歳、右目失明・外貌醜状等で併合5級)につき、事故がなければ翌々年4月から就労開始予定であったとして、賃セ男性高専短大卒20歳から24歳平均を基礎に、就労開始予定時から症状固定までの約40月分、989万円余を認めた

大阪地判平24. 7. 30 交民45・4・933

アルバイト収入に関する休業損害

高校生(男・固定時22歳、後遺時脳機能障害等7級)につき、事故当時のアルバイト収入及び事故後進学した大学の同級生のアルバイト収入を参考に、月額6万2000円を基礎に、症状固定までの1113日間、229万円余を認めた

福岡地判平28. 4. 25 自保ジ1980・20

就職遅れによる休業損害の請求は、加害者側ともめることも多いです。

たとえば、「事故にあってなくても留年していた可能性が高い」と主張されたり、「参考にする基礎収入はもっと低いはずだ」と反論されたりすることがあるでしょう。

交渉力や過去の判例、専門書の記述などに関する知識は、加害者側の任意保険会社のほうが圧倒的に豊富でしょう。加害者側の反論を覆すのは難しいため、もめてしまった場合は弁護士のアドバイスを受けてみてください。

学生の休業損害の計算方法

学生の休業損害は、「1日あたりの収入(アルバイトの収入や内定先の給料などから算定)×休業日数」で計算されます。

休業損害の計算式

基礎収入(日額)×休業日数

基礎収入日額の計算方法と、休業日数の考え方を確認していきましょう。

基礎収入日額の計算方法

学生の基礎収入日額は、次のように計算します。

  • アルバイトを休業した場合
    • 事故前3ヶ月分の給与÷90日
    • 勤務が週1~2日の場合は「事故前3ヶ月分の給与÷事故前3ヶ月間の勤務日数
  • 就職が遅れた場合
    • 就職先が決まっていた場合は就職先で得られたはずの給料から算定
    • 就職先が未定だった場合は学歴別・男女別の平均賃金をもとに算定

就職先が決まっていなかった場合の基礎収入日額は、大卒ならば20歳~24歳の平均値、高卒ならば18歳~19歳の平均値を参照されることが多いです。

なお、平均賃金は厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」に基づいた「賃金センサス」を参考にします。

休業日数の考え方

休業日数は、実際に仕事を休んだ日数ではなく、治療のために仕事を休むことが相当と言える日数を対象とします。

具体的には、入院した日や通院した日などが休業日数として認められます。
自己判断で休業した日は休業日数に含まれない可能性があるので、注意しましょう。

また、就職が遅れた場合の休業日数は、「ケガがなければ仕事を始めていたと言える日から治療終了日または症状固定日まで」となります。

症状固定とは、「これ以上治療を続けてもケガの大幅な改善は見込めないと判断されること」、つまり、後遺症が残ったと判断されることです。

症状固定

学生の休業損害請求で必要な書類

休業損害の請求には源泉徴収票と休業損害証明書が必要になります。

源泉徴収票とは、事故前の収入を証明するための書類です。

アルバイトをしている場合は、勤務先に発行してもらいましょう。
源泉徴収票がない場合は、給与明細など事故前3か月間の収入がわかる書類でも代用できます。

休業損害証明書とは、実際に休業したことを証明するための書類です。

加害者側の任意保険会社から送られてくるので、勤務先に記入してもらいましょう。休業損害証明書についてさらに詳しくは『休業損害証明書の書き方を解説!誰が書くのか、いつ提出するかもわかる』の記事が参考になります。

(2)逸失利益|年齢や学歴が影響

逸失利益とは、交通事故にあわなければ将来働いて得られていたであろう収入のことです。

逸失利益には、次の2種類があります。

  • 後遺障害逸失利益
    交通事故による後遺障害により労働能力が減少したため減った将来的な収入
  • 死亡逸失利益
    交通事故で亡くなったことで得られなくなった将来的な収入
逸失利益とは

すでに働いている社会人の場合、後遺障害が残ったため異動や転職を余儀なくされたり、出世が難しくなったりして生涯収入が減る可能性があります。
また、死亡してしまった場合は、それ以降の収入が一切得られなくなります。
このような損害を補償するのが逸失利益です。

学生であっても、基本的に逸失利益を請求できます。
学生の場合、交通事故の時点では働いていないことが多いですが、以下のような点から将来の収入に影響が出ると想定されるためです。

  • 後遺障害の影響で就ける仕事の幅が狭まる
  • 後遺障害の影響で本来の労働能力を発揮できない
  • 死亡してしまっため働いて収入を得ること自体ができない

学生の逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益の計算式は「基礎収入×労働能力喪失率×(労働能力喪失期間の終期までの年数に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数)」です。

死亡逸失利益の計算式は「基礎収入×(1-生活費控除率)×(労働能力喪失期間の終期までの年数に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数)」です。

基礎収入は以下のように算定します。

  • 被害者が高校生以下の学生:原則として賃金センサスの学歴計・男女別・全年齢平均の金額を基準にする
  • 被害者が大学生、高校生以下でも大学進学の可能性が高かったと認められる場合:大卒者の平均賃金を基準として採用するケースも多い

令和4年の調査における平均賃金は、以下の通りです。

学歴計(男性)554万9,100円
学歴計(女性)394万3,500円
大卒者(男性)640万2,700円
大卒者(女性)462万4,600円

逸失利益については、『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき』でより詳しく解説しています。
ただし、学生の場合、ライプニッツ係数の確認方法が社会人とは異なり複雑です。

よって、逸失利益については弁護士に計算してもらうことをおすすめします。
アトム法律事務所ではLINEや電話で無料相談を実施しているので、気軽にご相談ください。

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(3)休学や留年で余分に必要になった学費や下宿代

交通事故の影響で学校を長期間にわたって休んだり留年したりした場合は、次のような費目も加害者側に請求できる可能性があります。

  • 余分に必要になった学費や教材代
  • 余分に必要になった下宿代

実際に休学や留年によって生じた損害額の請求が認められた判例を見てみましょう。

事故のため1年間留年した大学生につき、学費97万円余及び1年分のアパート賃借料55万円余を認めた

岡山地判平9.5.29 交民30・3・796

(略)大学生(男・事故時33歳)につき、秋学期の欠席はやむを得ないとし、支払った大学授業料83万円余を認めた

東京地判平22.10.13 交民43・5・1287

休学や留年による賠償金の請求がどの程度認められるかは、加害者側との示談交渉によって決まります。

加害者側は少しでも支払う慰謝料・賠償金を少なくしたいと考えています。
被害者自身による示談交渉では十分な金額を支払ってもらえない可能性が高いので、弁護士に相談することをおすすめします。

(4)学習の遅れを取り戻すための塾や家庭教師の費用

中学生や高校生などで治療のためしばらく学校を休んだ場合、学習の遅れを取り戻すために塾や家庭教師が必要になることもあるでしょう。

こうした場合は、費用を加害者側に請求できることがあります。

(5)入院や通院、通学に付き添った両親への補償

入院や通院の際に付添が必要であると判断された場合には、入通院の日数に応じた付き添い費用を請求できます。

付添費用は、入院付添費が1日6500円、通院付添費が1日3300円として計算されます。

被害者が小さい場合には、入院生活や通院の際に両親の付添が必要と判断される可能性が高いといえるため、学生が被害者の場合には付添費用が認められやすいでしょう。

また、ケガのために親が通学に付き添った場合でも付添費を請求できることがあり、この場合の金額は個々に判断されます。

付添費には他にもさまざまなものがありますし、両親ではなく職業人に付き添ってもらった場合は金額が変わってきます。詳しくは『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?』をご確認ください。

(6)ケガのために余分に必要になった通学交通費

交通事故によるケガのために以下のような通学手段の変更が生じた場合は、余分に必要になった交通費を加害者側に請求できます。

  • 普段は徒歩通学だったが一時的にバス通学をした
  • 本来は電車通学だが治療中はタクシー通学をした
  • もとは自転車通学だったが、事故後に恐怖心で自転車に乗れなくなりバス通学に変更した

基本的には通学手段の変更の妥当性などを証明する必要があります。もしこうした妥当性の証明に困ったら、お気軽に弁護士にご相談ください。

実際に通学交通費の請求が認められた事例を紹介:交通事故にあったら【交通費】と慰謝料を請求できる?

学生の交通事故慰謝料・賠償金の実例

次に、学生の交通事故で慰謝料・賠償金がどのくらいになったかの実例を紹介します。

過去の判例から、被害者が大学生のケースと高校生のケースをそれぞれ紹介しますので、参考にしてみてください。

(1)大学生の例|就職に影響が出てしまったケース

事故の概要

  • 被害者:21歳男性・大学生
  • 事故状況
    加害車両(普通乗用自動車)が交差点を左折しようとしたところ、同じ車線の左後方から交差点を直進しようとしてきた被害車両(自動二輪車)と衝突。
  • 被害
    右肩甲骨骨折、右肩挫滅創、腕神経叢麻痺
  • 後遺障害等級:4級
  • 裁判所・判決日:大阪地方裁判所・平成17年12月9日

事故の被害者は、もともとの能力があれば希望する職種に就ける可能性が高かったものの、後遺障害によりその職種に就けなくなりました。

この事故における慰謝料と賠償金の金額は以下のとおりです。

慰謝料1910万円
休業損害70万8282円
逸失利益8573万3796円
その他費目*を含めた合計額8973万2627円

*過失相殺による減額、既払い金の差し引きあり

なお、過失相殺とは、被害者側に過失があった場合、その過失割合の分を慰謝料や賠償金から減額することを言います。

(2)高校生の例|丁字路での衝突事故のケース

事故の概要

  • 被害者:16歳男性・高校生
  • 事故状況
    交通整理の行われていないT字路交差点で、加害車両(普通乗用車・直進)と被害者(原付自転車・右折)が出会いがしらに衝突。
  • 被害
    • びまん性脳損傷で約7ヶ月間入院し、1年間リハビリのため通院
    • 高次脳機能障害、右同名半盲及び複視の後遺障害が残る
  • 後遺障害等級:4級
  • 裁判所・判決日:東京地方裁判所・平成16年9月22日

この交通事故では、被害者が2人乗りであったことや、右方を十分注視していなかったことなどから、被害者側に7割の過失があるとされました。

慰謝料や賠償金の金額は以下のとおりです。

慰謝料350万円
逸失利益9370万5433円
将来介護費1381万8316円
その他費目*を含む合計額4421万6382円

*過失相殺による減額あり

上記の例からもわかるとおり、被害者の学生に後遺症が残った場合、逸失利益が高額になりやすいです。金額をめぐって示談交渉が難航し、民事裁判に発展するケースもあるでしょう。

後遺症が残るような事故では、弁護士に弁護活動を依頼することをとくにおすすめします。

学生の交通事故でよくある質問

次に、学生が交通事故にあった場合のよくある質問に回答していきます。

Q1.慰謝料を請求するのは学生本人と親のどちら?

交通事故にあった学生が未成年(18歳未満)の場合は、基本的に親権者が法定代理人として慰謝料・賠償金を請求します。

未成年者は法律行為(契約など)に制限がかけられています。
交通事故に関する示談も法律行為にあたるので、法定代理人を立てる必要があるのです。

親権者を法定代理人にするにあたり、委任状などの特別な手続きは必要ありません。

一方、交通事故にあった学生が成人している場合は、学生自身で慰謝料を請求します。

18歳未満のときに事故にあい、治療を終えて示談交渉を開始するときには18歳以上になっていたようなケースでは、学生自身で慰謝料・賠償金を請求することになるでしょう。

Q2.学生に多い「自転車事故」の慰謝料請求での注意点は?

自転車に乗っていて交通事故にあった場合の慰謝料請求では、以下の点に気をつけるべきです。

  • 過失割合の参考となる判例が少ないため、加害者側ともめやすい
  • 慰謝料・賠償金が高額になりやすいため、加害者側ともめやすい
  • 加害者も自転車に乗っていた場合、無保険の可能性がある
  • 加害者も自転車に乗っていた場合、後遺障害等級認定の受け方が異なる

それぞれについて詳しく解説します。

過失割合について

過失割合とは、「事故が起きた責任が被害者と加害者にどれくらいあったのか」をあらわす割合のことです。自身についた過失割合分、もらえる慰謝料や損害賠償金が減額されます(過失相殺)。

自転車事故の場合、過失割合を決めるにあたって参考にする判例が少なく、ゼロベースで交渉をする必要があるため、加害者側ともめやすくなるのです。

過失割合の決め方については『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』で詳しく解説しています。

慰謝料・賠償金の高額化について

自転車に乗っていて事故にあった場合、衝撃が身体に直接伝わる可能性が高くなります。その結果、頭や脊髄を損傷し、重大な後遺障害が残ることがあるのです。

後遺障害が残ると、慰謝料・賠償金が高額化しやすいため、支払う金額を下げたい加害者側と対立が起こりやすくなります。

加害者側も自転車の場合について

加害者も自転車に乗っていた場合、保険に加入しておらず慰謝料・賠償金の支払いがなされない可能性があります。

自転車事故にあい、加害者側とトラブルが生じている場合は、交通事故に精通した弁護士に相談し、対策してもらうことをおすすめします。

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Q3. 歩行者・自転車・自動車で慰謝料額に違いはある?

被害者や加害者が徒歩・自転車・自動車のどれであっても、それを理由に慰謝料自体の金額が変わることはありません。

しかし、先にも挙げた過失割合は増減することがあります。例えば「加害者が自動車・被害者が自転車」の場合よりも、「加害者が自動車・被害者が徒歩」の方が、加害者に対する被害者の立場は弱くなります。

このことが考慮され、被害者側の過失割合が少なくなることがあるのです。

先述の通り自身についた過失割合分、受け取れる慰謝料や賠償金は減額されます。よって、過失割合が少なくなることで結果的に受け取れる慰謝料・賠償金額が多くなることはあるでしょう。

Q4.学生に多い「初心者ドライバー」は何らかの配慮を受けられる?

基本的に、ドライバーが初心者だったり学生だったりしたことで特別な配慮を受けられることはありません。

ただし、初心者マークをつけていたなら被害者側の過失割合が減り、過失相殺による慰謝料・賠償金の減額幅が小さくなることはあります。

具体的には、以下のような事故では加害者側の過失割合が10%高くなり、被害者側の過失割合が10%低くなります。

  • 前方の車が進路変更・幅寄せをして後方の車(初心者マークつき)と事故を起こした場合

※「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)を参照

「学生だから弁護士には頼れない」と諦める前に知っておきたいこと

交通事故にあったら、今後の流れや示談金額、示談交渉などについて専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

学生の場合は弁護士費用が心配で弁護士相談を躊躇したり、弁護士ではなく自身の保険会社に対応を任せることで安心したりするかもしれません。

しかし、弁護士費用の負担を軽くする方法はありますし、弁護士に相談・依頼しなければ得られないメリットもあるため、一度詳細の確認だけでもしておくほうが良いでしょう。

弁護士費用や弁護士に相談・依頼するメリットを詳しく解説していきます。

(1)学生でも弁護士費用の負担を軽くする方法がある

弁護士費用が理由で弁護士への依頼を迷っているなら、ご自身やご家族が加入する自動車保険に「弁護士費用特約」がついていないか確認してみてください。

弁護士費用特約があれば、一般的に着手金や報酬金は合計300万円まで、相談料は合計10万円まで保険会社に負担してもらえます。

弁護士費用特約を使っても、保険の等級が下がり翌年からの保険料が上がることはありません。

弁護士費用特約

ご家族の保険やクレジットカードの保険、火災保険についている弁護士費用特約でも使えることがあるので、忘れず確認してみましょう。

ただし、自動車保険以外の保険についている弁護士費用特約を使う場合は、交通事故も対象になっているか確認してください。

弁護士費用特約の補償対象者

弁護士費用特約の内容や補償対象者などについては、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事でより詳しく解説しています。

無料相談だけでもしてみる価値はある

弁護士費用特約が使えても使えなくても、アトム法律事務所では無料の電話・LINE相談を受け付けています。

示談交渉のコツや注意点、妥当な示談金額や過失割合などについてご相談可能です。今後の慰謝料・賠償金請求において役に立つでしょう。

また、弁護士費用特約無しで依頼に進んだ場合の費用や、弁護士費用を差し引いて最終的に手元に残る示談金額の目安などについてもご確認いただけます。

無理に依頼をおすすめすることはありませんので、弁護士への依頼に少しでも興味がある場合はひとまずご連絡ください。

(2)自力・自身の保険会社の交渉より示談金が増える可能性が高い

本記事でも解説した通り、示談交渉の際、加害者側の任意保険会社は弁護士基準の金額よりも大幅に低い金額を提示してきます。

弁護士を立てずに増額を求める方法としては以下の2つがあり、どちらも費用こそかからないものの、それほど大きな増額は期待できないでしょう。

  • 自力で示談交渉する
  • 自身の自動車保険・自転車保険の示談代行サービスを利用する

なぜこの2つの方法では十分な増額が期待できないのか、なぜ弁護士の方が大幅な増額が見込めるのか詳しく解説します。

自力で示談交渉した場合

示談交渉相手となる加害者側の任意保険会社は、交渉経験も専門知識も豊富なプロです。いくら被害者側が適正な金額を主張しても、経験・知識に圧倒的な差があるため簡単に主張を退けられてしまうでしょう。

あえて高圧的な言動を取り被害者側を萎縮させたり、被害者側が折れるまで頑として動かない作戦をとったりする保険会社もあります。

被害者側は「損害賠償請求権の消滅時効」までに示談を成立させなければならないので、相手が動かなくなった場合は泣く泣く折れるしかなくなってしまうこともあります。

「損害賠償請求権の消滅時効」ってどういうこと?:交通事故の示談は時効期限に注意!

示談代行サービスを利用する場合

示談交渉をプロに任せる方法としては、自身の自動車保険の「示談代行サービス」を使うという手段もあります。自身が加入する保険の担当者に示談を任せられるため、自力で増額交渉するよりは多くの示談金獲得が見込めます。

しかし、示談代行サービスでも以下の点から、最大限に示談金を増額できるとは言い難いです。

  • あくまでも自身の保険会社における「任意保険基準」の金額を主張できるだけなので、弁護士基準ほど高額な金額を主張するわけではない
  • 保険会社同士の交渉となるため、これまで・今後の付き合いを考え交渉が甘くなる場合もある

また、追突事故などのもらい事故で被害者側の過失が0の場合は、そもそも示談代行サービスは利用できません。

弁護士を立てることで最大限の増額が見込める理由

示談交渉で弁護士を立てると、自力・保険会社の示談代行サービスによる交渉よりも大幅な示談金増額が期待できます。その理由は次のとおりです。

  • 弁護士なら弁護士基準の金額を主張できる
  • 弁護士なら豊富な交渉経験と専門知識がある
  • 弁護士が出てくると加害者側の任意保険会社は裁判への発展を恐れ、譲歩の姿勢を取る傾向にある
  • 弁護士が出てきた場合は大幅な示談金増額も認めるという方針の保険会社もある
弁護士ありの示談交渉は増額幅・増額可能性が高い

実際に、アトム法律事務所へのご依頼で示談金が大幅に増額したご依頼者様のお手紙を紹介します。

(略)保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。今回、アトム法律事務所へ相談できて本当に良かったです。本当にありがとうございました。

アトム法律事務所のご依頼者様のお手紙

最初に主人と一緒に保険会社からの示談金の説明を受けた時、疑問点を質問しましたが、「こういうもの」と言われたらどうしようもなく上積みできたのはせいぜい20万程度でした。提示された金額が適正なのかどうか分からず話しだけでもと思い、法律事務所に相談することにしました。結果、納得できずにいた問題もすっきり解決して頂き示談金は3倍にもなりました。(略)

アトム法律事務所のご依頼者様のお手紙

(3)おおごとにしたくない・早く解決したいならなおさら弁護士が効果的

交通事故に遭った場合、あまりおおごとにはしたくない、早く解決させたいと思う人も多いでしょう。学生の場合は「就活や実習などでただでさえ忙しいので、余計なストレスは受けたくない」という人もいるのではないでしょうか。

しかし、交通事故後は示談交渉以外にも以下のような手続きをする必要があり、どうしても書類集め・作成に時間を取られたり、加害者側とのやり取りでストレスを感じたりしやすいです。

  • 休業損害の申請
  • 治療費打ち切りなどのトラブル対処
  • 後遺障害等級認定の申請
  • 示談交渉で過失割合を主張するための証拠の収集
  • 示談交渉

こうした手続きも、弁護士に任せることができます。先述の通り、弁護士費用特約を使う場合なら費用はかかりません。治療やリハビリ、日常生活への復帰に専念できるでしょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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