車と自転車の事故|過失割合と慰謝料相場は?おかしいと思ったら要確認
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車と自転車の事故では車側の過失割合が大きくなることが多いですが、場合によっては自転車側の過失割合のほうが大きくなります。
過失割合は被害者が請求できる損害賠償額に大きく影響するため適切に把握する必要があり、少しでもおかしいと思ったのであれば、確認を取るべきでしょう。
この記事では、車と自転車の事故における事故状況ごとの過失割合や、過失割合がおかしいと思ったときに知っておくべきこと、請求できる慰謝料の相場を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、加害者側からすでに慰謝料を提示されている方は、以下の計算機で「提示された慰謝料が正しい金額か」を確認できます。
ただし、慰謝料額は過失割合や事故特有の事情などにも左右されるので、この記事の解説もあわせて確認していただくことをおすすめします。
目次
車と自転車の事故における過失割合
過失割合とは、事故が起きた責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのかを割合で示したものです。
過失割合は事故発生時の状況によって決められ、ついた割合分、請求できる損害賠償金が減額されます。
本記事内では、車と自転車における事故の過失割合を以下の6つの事故状況に分けて見ていきましょう。
この記事で紹介する過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。
過失割合を誰がどのように決めるかについては、『交通事故の過失割合は誰が決める?いつ決まる?算定方法と注意点』の記事もあわせてご参考ください。
過失割合(1)道路外から道路に進入する際の衝突事故
道路沿いにある店舗などで用事を済ませ、道路上に出ようとした際に衝突したケースが該当します。
道路外から道路上に出ようとする車両と、車道や歩道または路側帯を直進する車両との衝突事故の場合、基本の過失割合は以下の通りです。過失割合は、車:自転車で表します。
- 車側が外から道路へ侵入=90:10
- 自転車側が外から道路へ侵入=60:40
いずれにせよ自動車側の過失割合が高いとされます。
ただし、侵入しようと頭を出して車両を待機させていたり、既にある程度侵入が完了していたりするケースでは、侵入した側の過失割合は低くなる可能性があるでしょう。
過失割合(2)横断歩道での事故
横断歩道を渡っていた自転車と、横断歩道を通過する車とが衝突した場合、過失割合は信号機の色により決まってきます。
具体的には、以下の通りです。
車の信号 | 自転車の信号 | 過失割合* |
---|---|---|
赤 | 青 | 100:0 |
赤 | 青点滅 | 90:10 |
赤 | 赤 | 75:25 |
黄 | 赤 | 45:55 |
青 | 赤 | 25:75 |
*車:自転車
車の信号 | 自転車の信号 | 過失割合* |
---|---|---|
青 | 青 | 90:10 |
青 | 赤 | 40:60 |
*車:自転車
過失割合(3)交差点で直進車同士の事故(出会い頭事故)
信号がない交差点の場合
信号がない交差点では、道路の状況によって過失割合が以下のように変わります。
なお、過失割合は「車:自転車」で表します。
- 道幅
- 双方同程度の道幅=80:20
- 車側の道幅が広い=70:30
- 自転車側の道幅が広い=90:10
- 一時停止規制
- 車側にあり=90:10
- 自転車側にあり=60:40
- 一方が優先道路
- 車側が優先道路=50:50
- 自転車側が優先道路=90:10
- 一方が一方通行違反
- 車側が違反=90:10
- 自転車側が違反=50:50
信号のない交差点で起こった出会い頭の事故では、優先車はどちらか、交差点に先に侵入したのはどちらか、自転車側が自転車横断帯を通行していたかなど、様々な状況によって過失割合が変化します。
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信号のある交差点の場合
信号がある交差点の場合、車と自転車が出会い頭に衝突した事故の過失割合は以下の通りです。
車の信号 | 自転車の信号 | 過失割合* |
---|---|---|
赤 | 青 | 100:0 |
赤 | 黄 | 90:10 |
赤 | 赤 | 70:30 |
黄 | 赤 | 40:60 |
青 | 赤 | 20:80 |
*車:自転車
過失割合(4)交差点での右折車と直進車の事故
信号のない、互いの道幅が同程度の交差点における右折車と直進車の事故では、過失割合は以下の通りです。
車 | 自転車 | 過失割合* |
---|---|---|
右折 | 直進 | 90:10 |
直進 | 右折 | 50:50 |
*車:自転車
基本的に「右折」と「直進」では直進が優先です。
そして、車と自転車の事故では基本的に車の方に過失割合が重くつくことを知っておきましょう。
車 | 自転車 | 過失割合* |
---|---|---|
右折 | 直進 | 80:20 |
直進 | 右折 | 70:30 |
*車:自転車
右折車と直進車が交差点などで衝突する「右直事故」の過失割合に関しては、こちらの記事『右直事故の過失割合は?交差点での早回り右折・速度超過など修正要素も解説』でさらに事例を増やして解説しています。あわせてご覧ください。
過失割合(5)右折自動車と同一道路を直進する自転車との事故
自動車が右折しようとしたところ、同じ道路を直進する自転車と衝突した場合の過失割合を示します。
右折車の信号 | 自転車の信号 | 過失割合* |
---|---|---|
青 | 青 | 85:15 |
黄 | 黄 | 65:35 |
右折青 | 赤 | 15:85 |
赤 | 赤 | 65:35 |
なし | なし | 85:15 |
*車:自転車
自転車にも一定の過失はつきますが、自動車の過失割合が高くなります。
もっとも、自転車が赤信号を守らず、自動車側の右折矢印が青信号であった場合には、自転車側に重い過失がつくでしょう。
このような巻き込み事故の過失割合についてさらにくわしく解説した記事もお役立てください。
過失割合(6)進路変更時の接触事故
進路変更しようとした前方車と後続車が衝突した場合、過失割合は以下の通りです。
過失割合は、車:自転車で表します。
- 車側が進路変更=90:10
- 自転車側が進路変更=80:20
- 自転車側が進路変更(障害物をよけるため)=90:10
基本的には車よりも自転車側の過失割合が低いとされますが、進路変更をしている以上は過失割合が一定程度つく可能性があります。
【重要】過失割合は修正要素まで確認しよう
ここまで車と自転車の事故の過失割合を解説してきましたが、過失割合は各事故の細かい状況を踏まえて柔軟に調整されます。
このように、過失割合を調整する要素となるものを「修正要素」と言います。
一見同じような事故類型でも、適用すべき修正要素はそれぞれ異なるため、ご自身のケースにおける過失割合を知るには修正要素のチェックも欠かせません。
ここでは、自転車側の過失割合が増える修正要素と、車側の過失割合が増える修正要素を紹介します。
自転車側の過失割合が増える修正要素
車と自転車の事故では、交通弱者である自転車の過失割合が低くなる傾向があります。
しかし、次のようなケースでは自転車側の過失割合が増加すると判断される可能性があるでしょう。
- 自転車が右側を走行していた
- 夜間の事故である
- 自転車側に著しい過失がある
酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、片手運転など - 自転車側に重過失がある
酒酔い運転、制御装置不良など
夜間の事故で自転車側の過失割合が増加するのは、夜間では自動車のライトにより自転車側は自動車を認識しやすい一方、自動車側から自転車を認識することが難しくなるためです。
なお、坂道をノーブレーキで下るなどの明らかな高速度侵入については、過失割合の検討時に自転車扱いではなく単車扱いとされるなど、自転車と比べて重い過失割合が前提となります。
車側の過失割合が増える修正要素
車と自転車の事故では、原則として自動車側の過失割合が高くなります。
さらに、以下のような事情が認められると、自動車側の過失割合が増加することとなるでしょう。
- 自転車を運転していたのが児童や高齢者である
- 右左折の際に合図を出さなかった
- 右左折時に徐行運転ではなかった
- 右折時に交差点の中心の直近の内側を進行しなかった
- 直進車の至近距離で右折を開始した
- 自動車側に著しい過失がある
酒気帯び運転、脇見運転、時速15km以上30km未満の速度違反など - 自動車側に重過失がある
居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反など
「児童」とはおおむね13歳未満の者を、「高齢者」とはおおむね65歳以上の者をいいます。
児童や高齢者が自転車を運転している場合には、自動車側に慎重な運転を行うことが求められるため、自動車側の過失割合が増加するのです。
もっとも、示した修正要素は一例であり、過失割合は事故ごとに検討されることを知っておきましょう。
修正要素の有無や過失割合の変動の程度は弁護士に確認を
どの修正要素を適用し、過失割合をどの程度変動させるかはケースによりけりです。
そのため、修正要素まで踏まえた厳密な過失割合は、専門家である弁護士に確認を取るべきでしょう。
アトム法律事務所は無料の法律相談を行っているので、金銭的な負担なく、過失割合に関して相談が可能です。
車と自転車の事故の過失割合がおかしいと思ったら確認したいこと
車と自転車の事故で被害者になった場合、過失割合は基本的に加害者側の任意保険会社が算定して提示してくれます。
しかし、提示された過失割合をおかしいと思うことは多いです。
そこで、過失割合がおかしいと感じた時に確認したいことを解説していきます。
車より自転車の過失割合が大きいのはおかしい?
車と自転車の事故において、自転車のほうが過失割合が大きくなることはあります。具体的には、以下のようなケースで自転車のほうが過失割合が大きくなりやすいです。
- 自転車側が赤信号を無視して進行した結果、事故が発生した
- 自転車側の過失割合が増える修正要素が多くあった
車と自転車の事故では、車体の大きい車のほうが強いとされます。
よって、一般的には車のほうが交通安全に注意すべきとして過失割合が大きくなることが多いです。
しかし、場合によっては自転車のほうが過失割合が大きくなることもあるので、「自転車のほうが過失割合が大きいのはおかしい」とは言い切れません。
加害者側が提示する過失割合がおかしいことはある
車と自転車の事故において、加害者側が提示してくる過失割合がおかしいということはあります。
加害者側が提示する過失割合がおかしい理由としては、以下が挙げられます。
- 車と自転車の事故は、自動車事故に比べて判例が少なく算定が難しいため
- 過失相殺により被害者に支払う示談金を減額するため
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
判例が少なく過失割合の算定が難しいため
車と自転車の事故は、自動車事故に比べて判例が少ないので過失割合の算定が難しい傾向にあります。
過失割合は通常、過去の判例を基に作られた事故類型別の「基本の過失割合」に、細かい事故状況を反映させて決めていきます。
しかし、車と自転車の事故ではその判例数自体が少ないので、過失割合についてゼロベースから考える必要が生じることがあるのです。
ゼロベースで過失割合を考える際は、どうしても知識が豊富な加害者側の任意保険担当者の主張の方が通りやすくなります。
公平に過失割合を算定するためには、被害者側も知識が豊富な弁護士を立てることが重要です。
過失相殺により被害者に支払う示談金を多く減額するため
過失割合は、示談交渉の際に加害者側の任意保険会社が算定して提示してくるでしょう。
しかし、加害者側の任意保険会社は、過失による減額を大きくするため、あえて被害者側の過失割合を多めに見積もっていることがあります。
よって、保険会社による算定だから間違いないと考えるのではなく、被害者側でも正しい過失割合を確認するようにしましょう。
ポイント
過失割合は民事の損害賠償に関わる部分です。
そのため、警察が決めるものではなく、あくまで交通事故の当事者同士で話し合い決定します。
警察から「あなたは完全な被害者だ」とか「あなたは悪くない」と声をかけられても、その発言自体は過失割合を決定づけるものではありません。
過失割合がわかる記事
過失割合がおかしい場合にできること
過失割合がおかしいために不利な結果となることを防ぐには、「正しい過失割合を把握すること」「交渉のプロである加害者側の任意保険会社に対して効果的に交渉すること」の2点が重要です。
いずれも、弁護士を立てておこなうと効果的でしょう。
弁護士なら過失割合に関する専門知識や事例に精通しているため、判例が少なく算定が難しい車と自転車の事故であっても厳密な過失割合の算定が可能です。
また、加害者側の任意保険会社は日々仕事として示談交渉をするプロですが、弁護士ならこうした相手とも効果的な交渉ができます。
アトム法律事務所では、電話・LINEによる無料相談にて過失割合の見通しもご質問いただけます。まずは相談の予約をお取りください。
関連記事
車と自転車の事故における慰謝料や損害賠償金は?
車と自転車の事故における慰謝料や損害賠償金の内訳
車と自転車の事故で請求できる慰謝料などの損害賠償金の内訳は、次の通りです。
交通事故によりケガをした場合
- 治療費:治療のために必要であった投薬費、手術代、入院費用等
- 通院交通費:入通院のために生じた交通費
- 入院雑費:入院中の生活用品や通信費用等
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- 入通院慰謝料:治療のために入院や通院したことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料
交通事故により後遺障害が生じた場合
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が生じたことによる精神的苦痛に対する慰謝料
- 後遺障害逸失利益:後遺障害により生じる減収に対する補償
※ケガをした場合に請求できる損害についても請求可能
死亡事故となった場合
- 死亡慰謝料:死亡したことにより生じる精神的苦痛に対する慰謝料
- 死亡逸失利益:死亡したことで得られなくなった将来の収入に対する補償
- 葬儀費用:死亡した被害者の葬儀に関する費用
※死亡前に入通院があった場合には、治療費や入通院慰謝料等を請求可能
他にも、例えば重い後遺障害が残り将来にわたる介護が必要になった場合には、将来介護費を請求できます。
事故によって学生である被害者が留年・休学した場合は、余分に必要になった学費や下宿代、勉強の遅れを取り戻すための家庭教師代なども示談金に含まれるでしょう。
ただし、費目によっては金額以前に請求自体を加害者側から否定されることもあります。
請求の可否が問題になりやすい費目については以下の関連記事でも解説しているので、合わせてご覧ください。
関連記事
- 交通手段によっては交通費の請求可否が問題になることがある:交通事故の通院交通費|請求できる条件
- 被害者が学生の場合特有の費目も解説:学生(大学生・中高生)の交通事故
- 請求可否が問題になりやすい介護費用を解説:交通事故で介護費用が請求できる2ケース
車と自転車の事故における慰謝料相場
ここでは、損害賠償金の中でも高額になりやすい慰謝料の相場額について解説していきます。
慰謝料以外の主な費目の計算方法については、関連記事『交通事故の示談金の計算方法・相場は?』をご覧ください。
なお、交通事故慰謝料には3つの算定基準がありますが、ここでは過去の判例をもとにし、相場額を算出する「弁護士基準」の金額を紹介していきます。
慰謝料算定に用いられる3基準
- 自賠責基準
交通事故被害者に補償される最低限の金額 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が示談交渉で提示してくる金額 - 弁護士基準
過去の判例に基づいた相場額であり、3基準の中でもっとも高額
(1)入通院慰謝料の相場
相場額である弁護士基準の入通院慰謝料の金額は、通院と入院の期間ごとに決められています。算定表にまとめられているので、表を確認することで慰謝料の金額を知ることが可能です。
もっとも、算定表は軽傷用と重傷用の2通りあり、ケガの状況に応じて使い分けられているので注意が必要になります。
こちらの軽傷用の表は、むちうち、打撲、すり傷などのケガで用います。
こちらの重傷用の表は、むちうち、打撲、すり傷など以外のケガで用います。
表の見方
- 通院期間がたて列、入院期間がよこ列
- 通院期間と入院期間の該当する月が交差する箇所が慰謝料の相場
- 「1月」は30日
- 30日に満たない端数の日数がある場合、日割計算を行う
また、ケガの治療で仕事を休んだ場合には休業損害の請求も可能です。
関連記事『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』では、職業別の休業損害計算方法や休業損害を請求する流れを解説しているので、あわせてお読みください。
(2)後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料は、事故により生じたケガが完治せずに後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けた場合に請求できる慰謝料です。
後遺障害は障害の程度ごとに1~14級の後遺障害等級に分けられ、等級に応じて以下のように後遺障害慰謝料の相場額が設定されています。
等級 | 相場額 |
---|---|
要介護 1級 | 2,800万円 |
要介護 2級 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害慰謝料の金額については、より詳しい解説記事『後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定で支払われる金額と賠償金の種類』もあわせて確認することがおすすめです。
また、後遺障害の程度に応じて後遺障害逸失利益も請求できます。逸失利益とは、後遺障害によって失われた「本来もらえるはずの利益」への金銭補償のことです。
逸失利益の計算方法について詳しくは『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』の記事をご確認ください。
さらに、重篤な障害であれば介護費用も認められる場合があります。
重い後遺障害が残ったら
- 交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった。賠償金と家族がすべきこと
- 交通事故で脊髄損傷|後遺障害等級と慰謝料は?等級認定の対策も解説
- 事故後の記憶障害・性格が変わる・言語障害…高次脳機能障害の症状とは?
(3)死亡慰謝料の相場
死亡慰謝料は、事故により被害者が亡くなった場合に請求できるものです。
死亡慰謝料には被害者本人に対する金額とご遺族に対する金額があります。
弁護士基準では初めから本人分とご遺族分を合わせた金額となっており、具体的な金額は被害者の家庭における立場により異なるのです。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他の場合 | 2,000万円~2,500万円 |
死亡事故における被害者本人分の損害賠償金は誰がどれくらい受け取るのか、事故後の流れはどうなるのかについては『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』の記事をご覧ください。
慰謝料は相場より増額・減額されることがある
交通事故の慰謝料は、ここまで解説した方法で算定されています。
ただし、事故個別の事情を踏まえて慰謝料が増額・減額されることもあります。
慰謝料が増額されるケースと減額されるケースは、以下のとおりです。
慰謝料が増額されるケース
- 加害者側に故意や重大な過失があった
- 事故後、加害者側に著しく不誠実な対応があった
- 被害者のケガの部位・程度が大きい
- 被害者の遺族が精神疾患にかかった
慰謝料が減額されるケース
- 素因減額
事故前から持っていた素因(精神的傾向・既往歴等)が事故によって被害が拡大した場合に適用される - 損益相殺
労災保険金や傷病手当金等をすでに受け取っている場合に適用される - 過失相殺
被害者側にも過失がある場合における、過失の割合に応じた減額
ただし、上記のような事情により本当に慰謝料が増減されるか、どれくらい増減されるかは過去の判例や加害者側との示談交渉次第です。
被害者自身で増減額の判断をするのは難しいため、弁護士に問い合わせることをおすすめします。
関連記事
- 素因減額による減額のケースについて
『素因減額とは?減額されるケースや判断基準がわかる【判例つき】』 - 過失相殺の計算方法について
『過失相殺をわかりやすく解説!計算方法や交通事故判例の具体例も紹介』
被害者側(自分)が自転車の場合に注意すべきこと
被害者側が自転車の場合の注意点としては、以下の2つが挙げられます。
- 軽自動車扱いにより過失割合が想像より多くなることがある
- 慰謝料が高額化しやすく、示談交渉でもめやすい
順に詳しく解説していきましょう。
軽自動車扱いにより過失割合が想像より多くなることがある
自転車は車よりも交通弱者として扱われるため、一般的に車側よりも過失割合が少なくなりがちです。
しかし、分類上は軽車両に当たるため、以下の理由から思っていたよりも過失割合が多くなる恐れがあります。
- 歩行者ほど弱い存在とは判断されず、たとえ被害者であっても軽車両として安全運転に一定の責任があるとされやすい
- 軽車両という自覚が低いため、知らない間に交通ルール違反を犯していることがある
被害者側の過失割合が不当に高くなることは避けるべきですが、自身が歩行者だった場合と比べると過失割合が高くなる可能性がある点は、おさえておきましょう。
慰謝料が高額化しやすく、示談交渉でもめやすい
自転車は身体が露出した状態になるため、交通事故に遭うと重大な被害を受けやすいといえます。治療期間が長引いたり重い後遺障害が残ったりして、慰謝料が非常に高額になることもあるのです。
この場合、加害者側は少しでも慰謝料を低額にしようと厳しい態度で示談交渉に臨んでくる可能性があります。
慰謝料だけでなく、治療費や介護費などさまざまな費目についてもシビアに交渉してくるおそれがあるため、入念な示談交渉対策が必要です。
被害者側(自分)が車の場合に注意すべきこと
被害者側(自分)が車、加害者側が自転車の場合の注意点として、以下の2点を解説していきます。
- 相手(自転車)が無保険の場合は示談や示談金支払いに要注意
- 後遺障害の認定機関が存在しない
相手(自転車)が無保険の場合は示談や示談金支払いに要注意
加害者が自転車の場合、無保険であることが十分に考えられます。
自転車保険は一部の自治体においてのみ加入が義務付けられているに留まっており、加入義務がある自治体でも、未加入だからと言って罰則があるわけではないからです。
加害者が無保険であれば示談交渉の相手は加害者本人となるため、次のようなトラブルに注意する必要があります。
- 示談金を支払いたくないという気持ちから、加害者が示談交渉に応じない
- 加害者・被害者ともに示談交渉に不慣れであることから、落としどころがつかめず示談がまとまらない
- 加害者が示談交渉時に逆上してトラブルになる
示談で決まったはずの示談金をきちんと支払わないというトラブルも考えられます。
こうしたトラブルを防ぐには、個人的に弁護士を立てる、ADR機関を利用する、調停や裁判をおこすなどして第三者を挟むことが効果的です。
示談金踏み倒しのリスクに対しては、自身の保険などを有効活用したり、示談書を公正証書にしたりといった対策もできます。
詳しくは『交通事故相手が無保険でお金がない!賠償請求の方法とリスク対策』の記事にてご確認ください。
第三者を挟む方法はどれがベスト?
示談交渉がうまくいかないため第三者を挟む場合は、個人的に弁護士を立てて示談交渉を行ってもらうのがベストでしょう。その理由は次の通りです。
- 調停や裁判をするときのような複雑な手続きが不要であり、調停・裁判より早く問題が解決することが多い
- あくまでも中立的な立場で弁護士が介入するADRとは違い、個人的に立てた弁護士は被害者側の立場に立つ
- 自身の保険に弁護士費用特約が付いていれば、保険会社が弁護士費用を支払ってくれ、多くのケースで自己負担0円となる
※関連記事:交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介
早期の問題解決・納得のいく示談内容の両方を望む場合は、個人的に弁護士を立てることが最適なのです。
調停・裁判・ADRについては『交通事故の民事調停|示談・裁判との違いは?』の記事で詳しく解説しているので、ご確認ください。
相手が自転車だと後遺障害の認定機関が存在しない
交通事故で後遺症が残った場合、通常は「損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)」という専門機関よる後遺障害認定審査を受けます。
審査を経て後遺症の症状が「後遺障害」に該当すると判断されれば、後遺障害関連の賠償金を請求できるようになるのです。
しかし、加害者が自転車の場合、被害者はこの審査機関による審査を受けられません。
そのため、被害者は以下のいずれかの方法によって自身の後遺症の症状が後遺障害に該当することを証明する必要があります。
- 加害者が加入している自転車保険に後遺障害認定をしてもらう
- 被害者が加入している人身傷害保険に後遺障害認定してもらう
- 裁判を起こし、後遺症の症状が後遺障害に該当するか裁判所に判断してもらう
ただし、加害者の自転車保険や被害者の人身傷害保険に後遺障害認定してもらった場合、専門機関による認定ではないため認定結果について加害者側と争いになる可能性があります。
また、裁判を起こすにしてもさまざまな煩雑な手続きが必要です。
よって、後遺症が残った場合は、後遺障害認定について一度弁護士に相談することをおすすめします。
どのような方法で後遺障害認定を受けるべきか、どのような点に気を付けるべきかアドバイスをもらえます。
車と自転車の事故が起きたのなら弁護士に相談しよう
弁護士に相談すると適正な過失割合や慰謝料を主張できる
弁護士に相談・依頼することで適正な過失割合や慰謝料の主張が認められやすくなり、適切な結果となる可能性が増加します。
加害者側が提示してくる過失割合や慰謝料などの損害賠償金額は適切でないことが多いです。
ところが、被害者自身で正しい慰謝料額や過失割合を提示しても、加害者側の任意保険会社は「このくらいでみなさん納得されています。」「保険会社として支払える上限を提示しています。」などといって、聞き入れないことがほとんどです。
しかし、弁護士が介入すれば、加害者側の任意保険会社は交渉の手間を考えたり、訴訟の可能性を懸念したりして、相場額である弁護士基準で計算した金額を認めてくれる可能性が高まります。
過失割合の交渉や慰謝料の増額以外にも、そもそも相手方との交渉を弁護士に任せることで被害者の負担は大きく軽減されるでしょう。
弁護士を立てるメリットは多くあるので、ぜひ『交通事故を弁護士に依頼するメリットと必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事もご一読ください。
なお、弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほどいいです。
なぜなら、早期に相談することで弁護士が力になれることが増えますし、早く依頼したからといって基本的に弁護士費用は変わらないからです。
アトム法律事務所は無料で電話・LINE相談ができる
アトム法律事務所は、電話・LINE・メールによる無料相談を実施しています。
治療に関する不安なこと、慰謝料の金額のこと、過失割合のことなど、なんでも弁護士に相談してください。
アトム法律事務所には交通事故の解決実績が豊富な弁護士が在籍しており、経験にもとづいた適切な回答をお返しします。
依頼となった場合でも着手金は原則無料であり、費用の支払いは慰謝料などの損害賠償金を回収した後となるため、お手元のお金が不安な方でも依頼可能です。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
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