脇見運転による事故の罰則や過失割合。安全不確認・前方不注意との違いは?

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脇見運転の事故

脇見運転は前方不注意という安全運転義務違反のひとつで、重大な交通事故につながりやすい事故原因となっています。

脇見運転で人身事故を起こせば、違反点数や罰則が科せられることになり、損害賠償請求の際に過失割合が加算されるでしょう。

本記事では、具体的にどういう状況を脇見運転というのかという基本的な内容から、脇見運転で追突されて被害を被った時の対処法まで解説していきます。

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脇見運転とは?

前方から視線を外して運転すること

脇見運転とは、前方から視線を外して車を運転する非常に危険な運転です。

脇見運転によって事故が生じやすい状況は以下のような場合が考えられます。

  • 運転中に足元に落ちた物を拾おうとして前方から視線を外した
  • カーナビに注視しすぎて前方から視線を外した
  • 目的地を探すのに夢中になったり、外の景色や道路標識に気をとられ前方から視線を外した

たとえ数秒でも前方から視線を外して運転するのは非常に危険です。
運転中に気になることが生じたら、車を止めてから確認するようにしましょう。

脇見運転は事故につながりやすい

脇見運転がどのくらい事故につながりやすいのか、統計資料から探ってみます。

警察庁「交通事故の発生状況(2022年)原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別交通事故件数の推移」によれば、法令違反で生じた交通事故のうち、安全不確認に次いで脇見運転が2番目に多くなっています。

法令違反別交通事故件数の推移

構成率※
信号無視3.7%
通行区分0.8%
最高速度0.1%
横断・転回等0.9%
追越し0.3%
踏切不停止0%
右折違反0.5%
左折違反0.8%
環状交差点違反0%
優先通行妨害2.8%
交差点安全進行7.4%
歩行者妨害等3.6%
徐行違反0.9%
一時不停止4.4%
整備不良0%
酒酔い運転0.1%
過労運転0.2%
運転操作不適6.9%
漫然運転8.4%
脇見運転13.1%
動静不注視10%
安全不確認30.7%
安全速度0.6%
その他1.6%
その他の違反2.3%
違反不明0.1%

※ 小数点第二位を四捨五入

直進中に脇見運転しやすい

特に、脇見運転は直進道路で起きやすいです。直進道路では運転が単調なため緊張感が欠けてしまい、少しくらい目を離しても大丈夫だろうと感じやすくなってしまいます。

運転がつづくと集中力も低下するので、車を止めて休憩するようにしましょう。

脇見運転と安全不確認・前方不注意との違い

脇見運転も安全不確認も安全運転義務違反に区分される

脇見運転も安全不確認も、道路交通法70条に規定されている安全運転義務の違反行為に区分されます。道路交通法を確認しておきましょう。

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

道路交通法70条

安全運転義務違反は、以下のように区分されます。

安全運転義務違反の一覧

  • 運転操作不適
  • 前方不注意
    • 漫然運転
    • 脇見運転
  • 動静不注視
  • 安全不確認
  • 安全速度違反
  • 予測不適
  • その他

安全不確認は、一時停止や徐行を行ったものの確認が不十分であったために、相手車両を見落としたり発見が遅れたりして事故が起こったケースをいいます。

前方不注意のひとつが脇見運転

安全運転義務違反の一覧を見ればわかるとおり、脇見運転は安全運転義務違反のうち「前方不注意」のひとつに該当します。

脇見運転と同じく前方不注意に分類される漫然運転は、前方は見ているけれどぼんやりした状態で運転することです。同じ前方不注意でも、前を見ていたかどうかで漫然運転か脇見運転か異なります。

前方不注意(脇見運転・漫然運転)のまとめ

前方不注意概要
脇見運転前方から視線を外して運転すること
漫然運転前方は見ているがぼんやりした状態で運転すること

運転する際、単純に前を向いているだけでは不十分で、しっかりと交通状況を把握しなければなりません。

前方不注意をはじめとした安全運転義務違反は、いずれも事故率の高い危険運転になっています。

脇見運転の違反点数と罰則

事故を起こすと違反点数と罰則がある

脇見運転を原因として、事故の相手方を死傷させるような人身事故を起こしてしまった場合、運転免許の違反点数と反則金という行政処分が科されます。

具体的には、運転免許の違反点数2点の付加と、車両の種類に応じた6000円~1万2000円の反則金です。

行政処分の内容

内容
違反点数基礎点数2点※
反則金原付:6000円
二輪:7000円
普通:9000円
大型:1万2000円

※ 人身事故は相手方の怪我の度合いに応じてさらに2~20点の付加点数が加算される

もっとも、物だけが壊れたような物損事故や、単独でガードレールにぶつかるような自損事故の場合では、違反点数や反則金は科されません。

次に、過失の程度が重い脇見運転で事故を起こしたり、事故相手の人身損害の程度が重かったりすると、起訴されて懲役刑や罰金刑といった刑事処分を受ける可能性もあります。

脇見運転による事故で適用される可能性がある刑事処分は、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪です。

刑事処分の内容

内容
過失運転致死傷罪7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪人を負傷させた場合:15年以下の懲役
人を死亡させた場合:1年以上の有期懲役

過失の程度が軽かったり、事故相手の人身損害の程度が軽かったりすると、不起訴で終わることもあるでしょう。不起訴になれば、違反点数と反則金の行政処分のみが科されます。

ながらスマホの脇見運転は事故がなくてもNG

先述した脇見運転の罰則は、事故が発生した場合に適用されることになります。

ただし、スマホを操作しながら脇見運転を行っていた場合は、たとえ事故が発生していなくても罰則対象となるので注意してください。
スマホだけでなく、カーナビやタブレット端末のながら運転も罰則対象となります。

運転中、どのようにスマホを使うとながらスマホになるのかや、実際にながらスマホを原因として生じた交通事故の判例などについて詳しくは、関連記事『ながらスマホによる事故|どんな行為が罰則の対象?被害にあったら?』をご確認ください。

脇見運転の過失割合への影響は?

脇見運転は過失割合の修正要素として扱われる

交通事故における過失割合とは、事故が発生することになった責任の割合を示したものです。

交通事故の多くは当事者双方に責任があるケースが多いので、責任の割合をわかりやすく数値化して、お互いがどのくらい事故に対する責任を負うかが示されます。

過失割合は、過去に発生した事故の中からよく似た事故類型をまず選定します。つづいて、事故類型ごとに定められた「基本の過失割合」を確認し、そこに事故個別の事情を反映するための「修正要素」を加えて決めていきます。

脇見運転は、この修正要素のひとつとして扱われているのです。自動車に認められる修正要素をいくつか確認しておきましょう。

修正要素一例(自動車について)

  • 徐行なし
  • 明らかな先入
  • 早回り右折
  • 大回り右折
  • 合図なし
  • 夜間
  • 著しい過失
  • 重過失

このうち、脇見運転は「著しい過失」にあたります。著しい過失とは、事故類型ごとに通常想定される過失の程度を超えていることです。

過失割合のもっと基本的な情報については、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』が役立ちます。

脇見運転の過失割合はどのくらい?

脇見運転による著しい過失があると、大体5~15%程度の過失が加算されることが多いでしょう。

もっとも、脇見運転によって加算される過失は事故類型ごとにさまざまです。

事故類型別の著しい過失(脇見運転)で加算される過失割合

加算される過失割合
歩行者と四輪車・単車の事故5~10%
四輪車同士の事故5~10%
単車と四輪車の事故5~20%
自転車と四輪車・単車の事故5~20%

※ 高速道路上の事故などは除く

脇見運転は通常想定される過失の程度ではない運転として扱われていると考えれば、いかに危険な運転なのかがわかるでしょう。

追突事故が脇見運転で発生したら過失は100%

脇見運転は修正要素として扱われると先述しましたが、事故類型が追突事故だった場合は追突した側に100%の過失があったと判断されることになるでしょう。

追突された側に急ブレーキやブレーキランプの故障がみられる場合は、また過失割合も変わってきますが、基本的には脇見運転であろうと追突事故なら10対0の過失割合になると考えていいでしょう。

脇見運転や前方不注意による車に追突されたら?

慰謝料や示談金が妥当か確認しよう

脇見運転や前方不注意の車に追突されたら、多くの場合は追突してきた相手方が加入する任意保険会社と示談交渉することになるでしょう。

任意保険会社が示談交渉を通じて提示してくる示談金は、被害者が本来もらえるはずの金額よりも相当低くなっています
また、任意保険会社が提示する過失割合についても、相手方に不利な修正要素を考慮していない可能性があります。

安易に合意するのではなく、提示された金額が妥当なものかを確認しましょう。

示談金の内、慰謝料の相場額については、以下の慰謝料計算機を使用することで確認可能です。

使い方は簡単です。

  1. 人身損害の程度に応じて「重傷」「打撲、むちうち等」「死亡」のいずれかのタブを選ぶ
  2. 年齢や収入など必要な項目を入力する
  3. 「慰謝料を計算する」ボタンを押す

これだけで、被害者がもらえるはずの妥当な金額の慰謝料がわかります。

もし、任意保険会社が提示してきた金額よりも、慰謝料計算機の結果の方が高額であった場合は、弁護士が示談交渉に介入することで増額の可能性が高まります

弁護士に増額の可能性があるか聞いてみよう

慰謝料計算機は、慰謝料について個別の事情を考慮せずに一般的な計算方法に基づいて計算した結果にすぎません。
また、慰謝料以外の費目や具体的な過失割合について計算していないので、正確な請求金額を知ることまではできないのです。

事故個別の事情を考慮したリアルな金額を知りたい方は、弁護士に聞いてみましょう。弁護士なら、どのくらい増額の可能性があるのか算定可能です。

増額の可能性がある場合には、弁護士への依頼をおすすめします。
依頼することで増額の可能性が高まるだけでなく、証拠の収集や示談交渉を代わりに行ってもらえるといったメリットを受けることができます。

依頼する際の弁護士費用が気になる方は、弁護士費用特約を利用することで費用の負担を大きく減らすことが可能です。詳しくは『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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