ながらスマホによる事故|罰則があるのはどんな行為?被害にあったら?

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ながらスマホによる交通事故|罰則あるのはどんな行為?

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

スマートフォンの普及にともない、運転中にスマートフォンを操作するいわゆる「ながらスマホ」が問題視されるようになりました。

警察庁の統計によると、運転中に携帯電話等を使用したことに起因する交通事故は、令和元年に1,065件発生しています。
ながらスマホの厳罰化により、令和3年には753件まで減少したものの、依然として発生件数が多い状況が続いています。

この記事では、ながらスマホの定義や危険性ながらスマホをしたときに科される罰則などを紹介します。また、ながらスマホによる事故の被害にあったときの対応もあわせて解説します。

ながらスマホに当てはまるのはどんなケース?

「通話のための使用」と「画像注視」はながらスマホになる

ながらスマホに当てはまるのは、車の運転中における以下のような行為です。

ながらスマホに当てはまる行為

  • 運転中にスマホを通話のために使用した
  • 運転中にスマホに表示された画像を注視した

画像をどの程度の時間見ていれば「注視」とみなされるかは、とくに明記されていません。
「2秒以上見ていたら注視とみなされる」とする意見もありますが、これに法的根拠はありません。運転中に一瞬でもスマホを見ると、ながらスマホとみなされる可能性があります。

ながらスマホに関する規制を定めているのは、道路交通法第71条です。

自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。

道路交通法第71条第5号の5

上記のとおり、スマホ以外の機器を操作したり注視したりした場合も、ながら運転として処罰されます。スマホ以外の機器としては、カーナビやタブレット端末などがあげられます。

また、ながら運転の規制対象は「自動車又は原動機付自転車」とあるように、自動車やオートバイ、原付バイク、一定の出力を超えた電動キックボードなどです。

自転車のながらスマホも罰則の対象になる

先述の道路交通法第71条を見ると、自転車のながらスマホは処罰されないように思えます。しかし、実際には自転車も罰則の対象となり得るのです。

各都道府県の公安委員会は、自転車のながらスマホを規則で禁じています。

たとえば、東京都公安委員会が定める東京都道路交通規則第8条第4項では、「自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持して通話し、又は画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」と定められています。

道路交通法第71条第6号では、公安委員会が制定した事項を車両等の運転者は守らなければならないことが定められています。よって、自転車も罰則の対象となり得るのです。

ながらスマホで事故が起こったときの罰則

ながらスマホは令和元年に厳罰化

ながらスマホで事故が起こったとき、「携帯電話等使用(交通の危険)」として、加害者に以下のような罰則が科せられます。

携帯電話等使用(交通の危険)の罰則

罰則1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
反則金適用なし
基礎点数6点

ながらスマホの罰則は、令和元年12月1日の道路交通法の改正でより厳しくなりました。

道路交通法の改正におけるポイントは「反則金の適用なしとなった」「基礎点数が増加した」の2点です。

改正前は、ながらスマホによる事故は「交通反則通告制度」の対象であり、反則金を支払えば刑事手続きに移行しない可能性がありました。
しかし、改正後は反則金の適用なしとなったため、基本的に刑事事件として処理されるようになったのです。

また、改正により、ながらスマホによる事故の基礎点数は2点から6点に増加しました。
改正後は、ながらスマホで事故を起こした場合、いわゆる「一発免停」になります。

なお、事故の態様によっては、過失運転致死傷罪が成立する場合もあります。
過失運転致死傷罪の罰則は、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。

また、ながらスマホによる事故の加害者は、上記のような刑事責任・行政責任に加えて、被害者側の損害を賠償する民事責任も果たす必要があります。

ながらスマホは事故が起こらなくても罰則あり

ながらスマホは、事故が起こらなくても、「携帯電話使用等(保持)」として以下のような罰則の対象となります。

携帯電話等使用(保持)の罰則

罰則6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
反則金大型車:25,000円
普通車:18,000円
二輪車:15,000円
原付車:12,000円
基礎点数3点

携帯電話等使用(保持)の罰則も、令和元年12月1日の法改正によって厳格化されています。

改正後の大きな特徴は、罰金刑ではなく懲役刑も加えられたことです。
改正前は携帯電話等使用(保持)の罰則は「5万円以下の罰金」でしたが、改正後は「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」となっています。

また、改正によって反則金や基礎点数も引き上げられています。

ながらスマホの事故の実例と対策

スマホで通話しながら運転していた事例

事例の概要

トラックの運転手がスマホの通話に気を取られ、赤信号を無視して交差点に進入。右折してきたタクシーと衝突し、乗客を死亡させ、運転手に重傷を負わせた。トラックの運転手には禁錮3年6か月の実刑判決が下された。

(神戸地方裁判所尼崎支部 令和3年(わ)第235号 過失運転致死傷被告事件 令和3年11月22日)

上記の事例では、ながらスマホの結果、指定最高速度が時速40キロであったにも関わらず、トラックは時速60キロのスピードを出したまま交差点に進入しています。また、運転手は以前にも同様のながらスマホを複数回行っていたと供述しました。

運転中のスマホによる通話は注意力がそがれ、大変危険です。
運転中はドライブモードに設定しておくなど、着信に気を取られない工夫をしましょう。やむを得ず通話しなければならないときは、必ず安全な場所に停車するようにしましょう。

なお、ハンズフリー通話については、道路交通法では明確に規制されていません。

ただし、各都道府県の公安委員会によっては「安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」と定められていることがあり、ハンズフリー通話はこれに違反する可能性があります。
また、道路交通法第70条に定められている安全運転義務に違反しているとみなされる場合もあるでしょう。

スマホのカーナビを見ながら運転していた事例

事例の概要

トラックの運転手がスマホのカーナビに脇見をし、赤信号を無視して交差点に進入。2台の車と衝突して歩道に乗り上げた。この事故で歩道を歩いていた母子のうち母親が死亡し、1歳の子供も負傷した。また、衝突した2台の車の運転手もケガを負った。トラックの運転手には禁錮2年6か月の実刑判決が下された。

(さいたま地方裁判所 平成29年(わ)第271号、平成29年(わ)第567号 過失運転致死傷,道路交通法違反被告事件 平成29年7月3日)

上記の事故では、運転手は赤信号になったことに約20秒も気づいていませんでした。事故当時、トラックは時速46キロの速度が出ていたため、250メートル以上も前を見ずに運転していたことになります。

スマホのナビゲーションアプリをカーナビ代わりに使用する方は近年増えています。ナビゲーションアプリを使うとき、操作や確認は必ず安全な場所に停車してから行うようにしましょう。

なお、スマホホルダーにスマホを置いていたとしても、走行中に操作したり画面を注視したりすると、ながらスマホになります

また、音声操作ができるナビゲーションアプリを使用することは道路交通法で明確に規制されていませんが、アプリに気を取られすぎないよう注意が必要です。大音量でアプリを使用したり、イヤホンで音声を聞いていたりすると、各都道府県の条例違反になる可能性もあります。

スマホでゲームをしながら運転していた事例

事例の概要

乗用車の運転手がスマホゲームに脇見をし、信号機のない交差点に進入。横断していた歩行者を2人はね、1人を死亡させ、1人に重傷を負わせた。乗用車の運転手には禁錮1年4か月の実刑判決が下された。

(徳島地方裁判所 平成28年(わ)第240号 過失運転致死傷被告事件 平成28年10月31日)

上記の事故では、運転手は被害者にまったく気がついていなかったと供述しています。事故が発生したのは夜間ではあるものの、現場は直線道路であり、ながらスマホがいかに注意力を散漫にさせるかがわかります。

ゲームをしながら運転し、事故を発生させた事例は他にも多くあります。運転中はドライブモードに設定するスマホをカバンに入れておくなどの工夫が必要です。

なお、ゲームアプリ側でも、運転中に操作できないようにするなどの対策が進んでいます。

スマホを見ながら自転車を運転していた事例

事例の概要

電動自転車で歩道を走行していた学生が被害者に衝突。被害者は病院で死亡した。事故当時、学生は左手にスマホ、右手に飲み物を持ち、耳にイヤホンをつけていた。学生の家族が加入する保険により賠償が見込まれること、前科がないことなどの事情が考慮され、学生には禁錮2年、執行猶予4年の判決が下された。

(横浜地方裁判所川崎支部 平成30年(わ)第166号 重過失致死被告事件 平成30年8月27日)

上記の事故では、裁判官は学生の運転態度を「自転車の運転が衝突等により人を死傷させ得るものであるとの自覚を欠き、周囲の者の安全を全く顧みない自己本位なもの」と評価しました。

自転車を運転している場合も、ながらスマホは絶対に避けましょう。スマホを操作する際は必ず安全な場所に停車するほか、ながらスマホの防止アプリを利用するといった工夫もおすすめです。

なお、自転車にスマホホルダーをつけてナビとして利用している場合も、運転中に操作したり注視したりすれば、ながらスマホとなります

ながらスマホはなぜ危険なのか?

ほんの一瞬でも車は数十メートル進む

ながらスマホが危険である理由は、通話や画面に注意をとられた結果、周囲の確認がおろそかになるからです。

「ほんの一瞬なら大丈夫だろう」と運転手がスマホに脇見をしてしまうと、その間に信号が変わったり、歩行者が道路を横断したりして、重大な事故につながってしまうのです。

自動車が時速60キロで走行していると、2秒間で約33.3メートル進むとされています(警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」より)。

周囲が見えていない状態で車が数十メートルも走行すると、何らかの危険がせまっても回避行動をとれなかったり、回避行動をとるのが遅くなったりしてしまうでしょう。

ながらスマホは死亡事故の発生率が高い

警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」によると、ながらスマホをしていた場合、ながらスマホをしていなかった場合と比べて、被害者が死亡する可能性が約1.9倍になります。

先述のとおり、ながらスマホは周囲の確認がおろそかになります。その結果、危険が迫っても回避行動が間に合わなくなり、重大な事故につながりやすくなるのです。

自転車を運転中にながらスマホをしていた場合、運転者の視野は通常時よりも大幅に減少することが知られています。このことからも、ながらスマホがいかに周囲の確認をおろそかにさせ、重大な事故につながりやすいのかがわかるでしょう。

ながら運転による死亡事故は、令和元年に42件発生しています。
ながら運転が厳罰化されたあと、令和3年には21件まで減少していますが、それでも多い状況であることに変わりはありません。

ながらスマホによる事故の被害にあったら?

(1)まずは警察に連絡する

もし、ながらスマホによる事故の被害にあったら、まずは事故現場の安全とけが人の救護を行ったうえで警察に連絡しましょう。これらはいずれも道路交通法に定められている義務です。

警察が事故現場に到着したあとは、通常は実況見分が行われます。ただし、被害者がケガをしていて立ち会えない場合は、後日に実況見分が行われることもあります。

実況見分においては、事故現場の状況や事故発生時の状況などについて警察から確認されます。その際に、加害者側がながらスマホをしていたことについてはっきりと伝えておくとよいでしょう。

実況見分の流れや確認される内容については、『実況見分の流れや注意点は?過失割合への影響も踏まえて解説』の記事をご覧ください。

(2)ケガの治療をする

警察による実況見分が終われば、すぐに病院で診察を受けるようにしましょう。

比較的軽い事故では、事故の直後に痛みを感じなかったため、診察を受けなくてもよいと判断する被害者の方もいます。しかし、むちうちなどはあとから痛みが出てくることもあるため、必ずすぐに受診するようにしましょう。

初診後は、「完治」または「症状固定(これ以上治療しても症状が改善しないこと)」と診断されるまで、医師の指示を守って治療を続けるようにしましょう。

交通事故にあって治療を受けるときは、『交通事故の治療の流れ|整骨院と整形外科のどちらに通うのが正解?』の記事をお役立てください。治療の流れや注意点、治療費の支払いなどについて解説しています。

(3)加害者側に損害賠償を請求する

ケガが完治するか、症状固定となって後遺障害等級認定(後遺症が一定の等級に認められること)の審査結果が出たら、交通事故で生じた損害がすべて算定できるようになります。よって、このタイミングで加害者側に損害賠償請求を行うことになります。

加害者が任意保険に加入している場合、基本的には任意保険会社の担当者と交渉をすることになるでしょう。

加害者側に請求できる損害賠償金の費目は、主に以下のとおりです。

損害賠償金の費目

  • 事故によってケガを負った場合
    • 治療費
    • 休業損害
    • 入通院慰謝料 など
  • 事故によって後遺障害を負った場合
    • 後遺障害逸失利益
    • 後遺障害慰謝料 など
  • 死亡事故の場合
    • 死亡逸失利益
    • 死亡慰謝料 など

交通事故における損害賠償請求についてより詳しく知りたい方は、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目・相場・計算方法を解説』の記事をご参考ください。

ながらスマホは慰謝料の増額事由になり得る

交通事故が起きたとき、加害者側がながらスマホをしていたことは、慰謝料が増額される事由になる可能性があります。

交通事故の慰謝料には一定の相場がありますが、加害者側や被害者側の事情により、相場より増額されることがあるのです。

以下に、ながらスマホが慰謝料の増額の事由となった判例を紹介します。

トラックの運転手がスマホゲームをしながら運転していたところ、横断歩道を渡っていた小学生に衝突し、死亡させた事故。加害者が事故を起こした原因がゲームに夢中になっていたという極めて不合理かつ幼稚なものであり、事故後に被害者の救護もしなかったことから、本人分2,500万円、父母各200万円、事故を目撃した兄100万円、同居の祖父母各50万円、計3,100万円の死亡慰謝料が認められた。

(名古屋地方裁判所一宮支部 平成30年(ワ)第19号 損害賠償請求事件 平成31年3月28日)

加害者がながらスマホをしていたことを事由に慰謝料の増額を主張したい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。弁護士なら、過去の判例にのっとった法的に適正な慰謝料額の請求が可能です。

交通事故の慰謝料について、どのくらいの金額を受け取れるか知りたい方には『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』の記事がおすすめです。

ながらスマホは過失割合に影響する

ながらスマホによる事故の損害賠償請求で気をつけたいのが、「ながらスマホは過失割合に影響する」ということです。

過失割合とは、「事故が起きた責任(過失)が加害者と被害者にそれぞれどれくらいあるかを示した数値」のことです。被害者にも過失割合がついた場合、その分だけ受け取れる損害賠償金が減額されます。

過失割合を決める際は、事故の類型ごとに決まっている「基本の過失割合」に、事故の個別事情をふまえた「修正要素」をくわえることになります。

ながらスマホは、この「修正要素」として認められる可能性があります。具体的には、「著しい過失」として、ながらスマホをしていた側の過失割合が10%増えることが多いでしょう。

たとえば、横断歩道外において、直進する車と道路を横断する歩行者の基本の過失割合は「80:20」となっています。このとき、車の運転手がながらスマホをしていた場合、修正要素を反映して過失割合が「90:10」になる可能性があるのです。

過失割合については、『交通事故の過失割合とは?決め方と示談のコツ!』の記事で網羅的に解説しています。過失割合の決め方をより具体的に知りたい方は、ぜひご一読ください。

なお、過失割合は、加害者側の任意保険会社との交渉によって決まることが多いです。
もし、加害者側がながらスマホによる過失割合の修正を認めないのであれば、弁護士を立てることをおすすめします。

ながらスマホの事故まとめ

  • 運転中にスマホで通話したり、画面を注視したりするのは禁止されている
  • ながらスマホは周囲の確認がおろそかになり、重大な事故につながりやすい
  • ながらスマホは令和元年に厳罰化され、刑罰や違反点数が引き上げられている

ながらスマホは、死亡事故にもつながりやすい大変危険な行為です。

運転中はドライブモードに設定する、スマホの操作をするときは必ず安全な場所に停車するなど、ながらスマホを避ける行動を普段から徹底しておきましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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