飲酒運転の法律知識|同乗者・自転車・二日酔いでも罰則の対象になる

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飲酒運転の法律知識

飲酒運転はきわめて危険な行為であるだけでなく法律違反であり、違反行為には刑事罰が科されたり、免許取り消しや免許停止といった行政処分を受けたりする罰則の対象です。

また、飲酒運転が取り締まられたら、運転者本人だけではなく、同乗者や車両提供者、お酒を提供した人など周辺者も罰則の対象になり、身柄拘束(逮捕・勾留)されてしまう可能性すらあります。

この記事では、飲酒運転について知っておきたい法律知識を解説しています。
飲酒運転とみなされる範囲や、飲酒運転をしたときの罰則などを紹介しているので、ぜひご一読ください。

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飲酒運転の法律知識

飲酒運転は道路交通法で禁止されている

飲酒運転は、道路交通法第65条において禁止されています。

(酒気帯び運転等の禁止)
第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。

3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。

4 何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

道路交通法

上記の条文からわかるとおり、酒気を帯びて車を運転するだけではなく、酒気を帯びた人に車を提供すること、車を運転する可能性がある人に飲酒をすすめること、酒気を帯びた人が運転する車に同乗することも明確に禁止されています。

これに違反すると、後ほど紹介する罰則が科されることになります。

法律上の「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違い

飲酒運転には、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。

酒気帯び運転とは、血液1ミリリットルにつき0.3mg以上または呼気1リットルにつき0.15mg以上のアルコール量が検出された状態のことをいいます。

(アルコールの程度)
第四十四条の三 法第百十七条の二の二第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。

道路交通法施行令

一方、酒酔い運転とは、血中や呼気中のアルコール濃度にかかわりなく、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態(酩酊状態)のことをいいます。

酒酔い運転に該当するのかどうかは、警察による飲酒検問などを受けた際の状態によります。「酒気帯び運転」に該当する基準値を超えないものの、以下のような状態であると、酒酔い運転に該当する可能性があるでしょう。

酒酔い運転に該当する可能性がある状態

  • 直線の上をふらつかずまっすぐに歩けない
  • ろれつが回っていない
  • 質疑応答ができない

飲酒運転の罰則

飲酒運転をした場合には、以下のような人が刑事罰や行政処分といった罰則の対象となりえます。

  • 飲酒運転者本人
  • 飲酒運転をした車両の同乗者
  • 飲酒運転をした人に車両を提供した人
  • 飲酒運転をした人に酒類を提供した、または、飲酒をすすめた人

それぞれ、具体的にどのような罰則(刑事罰や行政処分)が科されるのかについて解説を行います。

飲酒運転者本人への罰則

飲酒運転をした場合、運転者本人の罰則内容は以下の3つに分けられます。

なお、本記事の行政処分内容は、前歴や累積点数がない場合のものになります。

酒酔い運転の罰則

刑事罰5年以下の懲役または100万円以下の罰金
(道路交通法117条の2第1項1号)
行政処分違反点数35点
免許取消し(欠格(再取得禁止)期間3年)

酒気帯び運転の罰則(呼気中アルコール濃度0.25ミリグラム以上)

刑事罰3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(道路交通法117条の2の2第1項3号)
行政処分違反点数25点
免許取消し(欠格期間2年)

酒気帯び運転の罰則(呼気中アルコール濃度0.25ミリグラム未満)

刑事罰3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(道路交通法117条の2の2第1項3号)
行政処分違反点数13点
免許停止(停止期間は90日間)

上記のとおり、飲酒運転は1回で必ず行政処分(最低でも免許停止)を受けることになります。

また、飲酒運転の取締りのために警察官が実施している呼気検査(飲酒検問)を拒否した場合、以下のような罰則が科されるでしょう。

呼気検査拒否の罰則

刑事罰3か月以下の懲役または50万円以下の罰金
(道路交通法118条の2)

飲酒運転による事故を起こした場合の罰則

飲酒運転をして死傷事故を起こした場合は、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪または過失運転致死傷罪が適用される可能性があります。

また、人身事故を起こしたあとに飲酒していたことを隠そうとした場合は、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が成立することもあるでしょう。
それぞれの罰則は以下のとおりです。

適用される可能性のある罰則※

  • 危険運転致死傷罪
    • 人を負傷させた場合(危険運転致傷罪):12年以下または15年以下の懲役
    • 人を死亡させた場合(危険運転致死罪):15年以下の懲役または1年以上の有期懲役
      アルコールにより走行中に正常な運転に支障が出る恐れがある状態で運転を始めたのか、正常な運転が困難な状態で運転を始めたのかで異なる
  • 過失運転致死傷罪
    • 7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金
  • 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪
    • 12年以下の懲役

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

なお、無免許運転の場合、自動車運転処罰法6条により、上記よりも重い刑事罰が科されます。

また、ひき逃げをした場合、道路交通法の救護義務違反(10年以下の懲役又は100万円以下の罰金)も同時に成立し、より重い罰則(懲役だと最長30年)が科されます。

そして、飲酒運転で交通事故を起こした場合、上記の違反点数(基礎点数)に加えて、交通事故の種別(被害の程度)と不注意の程度により、2点~20点の付加点数が加算されます。

呼気中アルコール濃度0.25ミリグラム未満の酒気帯び運転の違反点数(基礎点数)は13点であり、15点以上は1回で免許取り消し処分なので、飲酒運転で交通事故を起こした場合は、必ず免許取り消し処分を受けることになります。

同乗者への罰則

飲酒運転が検挙された場合、飲酒運転者本人だけではなく、飲酒運転に関わった周囲の人々にも罰則が科されます。

以前は刑法上の共同正犯、教唆犯、幇助犯(ほう助犯)として罰則が科される可能性がありましたが、平成19年(2007年)の道路交通法改正で、飲酒運転の周辺者への特別の罰則規定が新設されました。

具体的には、飲酒運転の車の同乗者には、以下のような罰則が科されます。

酒酔い運転の罰則

刑事罰3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(道路交通法117条の2第1項6号)
行政処分免許取消しや停止処分の対象

酒気帯び運転の罰則

刑事罰2年以下の懲役または30万円以下の罰金
(道路交通法117条の3の2第3号)
行政処分免許取消しや停止処分の対象

乗車位置は問わないため、助手席に座っていても後部座席に座っていても「同乗者」となります。

ただし、同乗者の飲酒運転同乗罪が成立するのは、以下の2つの要件を満たす場合です。

  1. 運転者が飲酒していた事実を認識していた
  2. 運転者に送ってくれるよう依頼・要求した

1については、客観的な事情から判断されるので、運転者が飲酒していた事実は知らなかったと主張しても、酒の匂いが運転者からしたり、運転者の顔が赤らんでいたりすることを認識していれば、1の要件を満たすと判断される可能性が高いです。

2については、寝ている時にいつの間にか乗せられていたというような、同乗者の意思に反する状況なら当然要件を満たしませんが、自身が積極的に依頼・要求していなくても、同乗の状況から暗黙の依頼・要求があったと判断されることもあります。

そして、飲酒運転の同乗者は、刑事罰だけでなく、道路交通法103条1項6号の「重大違反唆し等をしたとき」に該当し、運転免許取り消しや免許停止などの行政処分を受ける可能性もあります。

実際に、知人が運転していることを知りながら車で送るように依頼して同乗し、2年間の運転免許取消となった事例もあります。

また、飲酒運転の取締りのために警察官が実施している呼気検査(飲酒検問)を同乗者が妨害した場合には、3か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるでしょう。

車両提供者への罰則

酒気を帯びている人に車両を提供した人には、以下のような罰則が科されます。

酒酔い運転の罰則

刑事罰5年以下の懲役または100万円以下の罰金
(道路交通法117条の2第1項2号)
行政処分免許取消しや停止処分の対象

酒気帯び運転の罰則

刑事罰3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(道路交通法117条の2の2第1項4号)
行政処分免許取消しや停止処分の対象

上記からわかるように、飲酒運転車両提供罪は、飲酒運転罪と実質同罪扱い(同様の法定刑の刑事罰)を受けることになります。

自動車運送事業者に対する罰則

道路交通法75条1項は、自動車の使用者は、その業務に関し、自動車の運転手が飲酒運転などをすることを容認してはならないと定めており、違反した場合には3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

また、一定台数以上の自動車の使用者(企業)は、安全運転管理者を選任しなければならず、令和5年(2023年)12月1日からは、安全運転管理者に対するアルコールチェッカーの常時保持及びアルコールチェッカーを用いた運転者の酒気帯び確認が義務化されています。

酒類提供者への罰則

車を運転するおそれのある人に酒類を提供した人には、以下のような罰則が科されます。

酒酔い運転の罰則

刑事罰3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(道路交通法117条の2の2第1項5号)
行政処分免許取消しや停止処分の対象

酒気帯び運転の罰則

刑事罰2年以下の懲役または30万円以下の罰金
(道路交通法117条の3の2第2号)
行政処分免許取消しや停止処分の対象

飲酒運転酒類提供罪は、「飲酒運転をするおそれがある者に対して、酒類を提供または飲酒をすすめる行為」が該当します。

そのため、客が車で来店したことを知りながらお酒を提供した飲食店には、飲酒運転酒類提供罪が成立する可能性が高いです。

また、相手が車で来ていることを知りながらお酒を飲ませた同席者も、飲酒運転酒類提供罪が成立する可能性が高いです。

飲酒運転についてよくある質問

Q1.飲酒運転はなぜ法律で禁止されている?危険性とは?

警察庁が発表している統計によると、令和5年の飲酒運転による死亡事故率は、飲酒していない場合の約6.1倍となっています(参考:警察庁「みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」」)。

また、令和5年度に発生した飲酒運転による交通事故件数は、2,346件で、そのうち、死亡事故件数は、112件にのぼっています。平均すると、約3日に1度は飲酒運転による死亡事故が発生しているのです。

このように飲酒運転によって重大事故が発生する原因は何なのでしょうか。

科学警察研究所交通安全研究室「低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究」によると、一般的に酒気を帯びることで脳の一部が麻痺し、知覚や運動能力が制限されるため、安全運転に必要な注意力、判断力、情報処理能力などが低下してしまいます。

その結果、「気が大きくなり速度超過などの危険運転をする」、「赤信号や標識に気付かず信号無視や一時不停止等をしてしまう」、 「車間距離の判断を誤る」、「危険察知が遅れ、ブレーキペダルを踏むのが遅くなる」など交通事故につながる可能性が高くなってしまうのです。

「自分は酒に強いから運転しても大丈夫だろう」と判断することは危険です。お酒に強い人であっても、弱い人と同じように脳にアルコールの影響が生じることが明らかになっています。

酒に強い弱いにかかわらず、飲んだらアルコールが抜けるまで運転しないようにしましょう。

Q2.自転車で飲酒運転をした場合はどうなる?

自転車での飲酒運転も罰則の対象になります。

自転車は、道路交通法上の軽車両として「車両」に含まれるため、道路交通法65条により、飲酒運転をすることは禁止されています。

ただし、従来、自転車運転者に対しては、酒酔い運転をしていた場合のみ罰則が科され、酒気帯び運転をしていた場合は、罰則までは科されませんでした。

道路交通法改正前は、酒気帯び運転の罰則を定めた第117条2の2に「軽車両を除く」との規定があったため、酒気帯び運転については、自転車は罰則の対象外だったのです。

しかし、自転車事故の増加傾向を受け、改正道路交通法では自転車の酒気帯び運転に対する罰則が新設(道路交通法第117条2の2が「軽車両を除く」から「自転車以外の軽車両を除く」に改正)され、令和6年(2024年)11月1日からは自転車を酒気帯び運転した者も罰則の対象になっています。

これに伴って、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供したり、自転車を提供したりすること(酒気帯び運転のほう助)も罰則の対象になっています。

【コラム】自転車利用者が知っておくべき交通ルールの改正

改正道路交通法では、自転車の交通違反に対する厳罰化として、酒気帯び運転の罰則の新設だけでなく自転車運転中のながら運転(ながらスマホ)の罰則強化も行われています。

具体的には、自転車運転中にスマホを保持して通話したり、スマホに表示された画面を注視したりする行為が罰則の対象となります。

上記違反行為に対する罰則につき、改正前は5万円以下の罰金(公安委員会規則違反)だったのが、道路交通法改正後には6月以下の懲役又は10万円以下の罰金(交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は1年以下の懲役又は30万円以下の罰金)まで罰則が引き上げられました。

また、自転車運転で一定の違反行為(危険行為)を繰り返す違反者に講習の受講を義務付ける「自転車運転者講習制度」が導入されたり、青切符(反則金)制度の新たな導入が予定されていたりするなど、近年、自転車関連の交通ルールの整備が進められています。

詳細については、関連記事『自転車の青切符・反則金はいつから?自転車の交通ルールや罰則を解説』をご覧ください。

なお、近年気軽な移動手段として利用されることの多いLUUP(電動キックボード)やモペット(ペダル付き電動バイク)は、電動アシスト自転車とは異なり、法律上は「原動機付自転車」として、自転車の交通ルールとは別の規制を受けるので注意が必要です。

Q3.二日酔いでも飲酒運転として検挙されることはある?

二日酔いでも飲酒運転として検挙される可能性はあります

先ほど解説したとおり、法律上は、検査によって明らかになる血中や呼気中のアルコール濃度の数値や正常な運転が可能かが飲酒運転の判断基準だからです。

たとえお酒を飲んだのが前日でも、血中や呼気中のアルコール濃度が規制の数値を超えていたり、正常な運転ができないおそれのある状態と判断されれば、飲酒運転として検挙されるのです。

アルコールが体内から抜ける時間は、缶ビール(アルコール度数5%)1本で3時間から4時間、日本酒(アルコール度数15%)1合で3時間から6時間が目安ともいわれます。

また、国土交通省の「飲酒運転防止対策」では、勤務開始前少なくとも8時間以内は飲酒しないことを徹底するよう運送事業者に通達しています。

もっとも、飲酒後に上記の時間が経過したからといって、安心とは言い切れません。

肝臓のアルコール分解能力には個人差があり、体重や体調、体質にも大きく左右されるからです。

飲酒した翌朝の出勤の運転は「一晩寝たから大丈夫だろう」と安易に判断せず、酔いが残っていないか慎重に検討しましょう。少しでもアルコールが残っているならば、絶対に運転してはいけません。

もし、車を運転する予定があるならば、それを考慮して飲酒量や飲酒時間をコントロールしましょう。特に、睡眠中はアルコールの分解が遅くなるため、翌朝に運転する場合は寝る前の飲酒には注意が必要です。

Q4.ノンアルコール飲料なら飲酒運転にならない?

ノンアルコール飲料でも飲酒運転になる可能性はあります。

法律上、アルコール度数が1%未満であればノンアルコール飲料として発売できるため、ノンアルコール飲料には、アルコール0.00%の商品もあれば、0.1%から0.9%の微量のアルコールが含まれているものもあるからです。

そのため、運転の予定がある場合には、ノンアルコール飲料であっても、商品のアルコール分の表記をよく確認することが重要です。

Q5.飲酒運転が後を絶たないのはなぜ?

飲酒運転をする人には、以下の3つのタイプの人がいるといわれています。

  1. 法律遵守の意識が低く、取り締まりに遭わず事故さえ起こさなければよいと考えてする人
  2. 飲酒して気が変わってする人
  3. アルコール依存症またはそれに近い人

1のタイプの人は、飲酒運転の危険性を理解していないから飲酒運転をしてしまうのです。

2のタイプの人は、意志を抑制できなくなるアルコールの性質を理解していないことが理由といえます。

3のタイプの人は、常習の飲酒運転者に多く、常習の飲酒運転の背景には、「アルコール依存症」という病気が隠れている可能性が高いです。

実際、神奈川県警察の調査では、免許取消処分者の中で飲酒運転検挙歴がある200人の約4割に依存症の疑いがあるというデータが出ています。

3のタイプの人は、自身でアルコール依存症と気付いていない、または気付いていても治療をするつもりがないことが飲酒運転をしてしまう理由といえます。

飲酒運転根絶のためにできること

鉄則は「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」

飲酒運転根絶のために、まず何より「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」を徹底するのが大原則です。

具体的な対策として、まずあらかじめ飲酒することがわかっているならば、車以外の方法で向かうようにしましょう。
また、車を運転して向かった先で飲酒することになった場合は、公共交通機関やタクシー、運転代行などを利用して帰宅する必要があります。

「乾杯だけならいいだろう」「アルコール度数が低いお酒しか飲んでないから大丈夫だろう」といった判断は非常に危険です。アルコール分が含まれているお酒を少量でも摂取した場合は、絶対に運転してはいけません。

グループで飲むときはハンドルキーパーを決める

グループで飲むときは、「ハンドルキーパー」を決めることも有効です。ハンドルキーパーとは、飲酒をせず、帰路は車を運転して他の人を家まで送り届ける役目の人のことです。

飲食店によっては、ハンドルキーパーがわかる目印を提供していたり、ハンドルキーパーに限りソフトドリンクのサービスを実施していたりするなど飲酒運転防止の取組みを推進している店舗もあります。

また、ハンドルキーパーを決める場合は、不公平感が生じないよう、グループ内で配慮することも大切です。

アルコールチェッカーを使用する

酔いが残っているかを確認するために、アルコールチェッカー(アルコール検知器)を使用することも有効です。

市販のアルコールチェッカーも安いものであれば2,000円代で販売されているため、お酒を飲んだ翌日の朝などに使用するのもよいでしょう。

ただし、簡易型のアルコールチェッカーは制度が低いものもあるため、過信は禁物です。少しでも酔いが残っている感覚があるのであれば、車を運転してはいけません。

飲酒運転による事故の被害にあったときの対応

(1)ケガ人の救護・安全確保・警察へ通報

飲酒運転による事故の被害にあったら、まずはケガ人を救護し、現場の安全を確保します。そのうえで、人身事故・物損事故どちらのケースでも必ず警察への通報を行いましょう。これらはいずれも道路交通法第72条第1項に定められた義務です。

警察が現場に到着したあとは、ケガが軽微なら実況見分に立ち会いましょう。このとき、加害者が飲酒をしていた旨を必ず報告するようにしましょう。

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事故直後の対応や事故相手と交換しておきたい情報は?:交通事故にあったら初期対応の手順は?

(2)病院で治療

事故直後の対応が終われば、すみやかに病院で診察を受けましょう。

事故の直後は興奮していて痛みなどに気づかないことがあります。自覚症状の有無にかかわらず、すぐに医師の診察を受けることが大切です。

事故によるケガの治療は、医師から「完治」または「症状固定」と診断されるまで継続しましょう。症状固定とは、これ以上治療しても症状が改善しない状態のことです。

症状固定と診断されたら、残った症状について「後遺障害認定」を受けることになります。症状固定後の対応については、『症状固定とは?時期や症状固定と言われたらすべき後遺障害認定と示談』の記事をご参考ください。症状固定の判断時期や、後遺障害認定の申請方法について解説しています。

(3)慰謝料などを請求

ケガが完治するか、症状固定となって後遺障害認定の結果が出たら、加害者側に慰謝料を含む損害賠償金の請求を行います。

飲酒運転事故における自動車保険は、運転者本人の損害は保険金の補償範囲外ですが、被害者の損害は保険金の補償範囲内ですので、加害者側の保険会社に請求が可能です。

基本的には、加害者側の任意保険会社との示談交渉で損害賠償金の金額が決まることになるでしょう。示談が不成立となった場合は、裁判やADRで解決を図ることになります。

注意すべきは、加害者側の任意保険会社は相場より大幅に低い金額を提示してくることが多いことです。損害賠償金の金額が相場より低くないか、増額の余地があるかを知りたいときは、交通事故に精通した弁護士からアドバイスを受けることをおすすめします。

損害賠償請求できる費目や、損害賠償金の相場については、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。

飲酒運転は慰謝料の増額事由になり得る

損害賠償責任を負う加害者が悪質な運転を行っていた場合には、慰謝料が増加する可能性があるため、加害者側が飲酒運転をしていたことは慰謝料の増額事由になることがあります。

実際に加害者側が飲酒運転をしていたため慰謝料が増額された裁判例を2つ紹介します。

裁判例(1)

加害者の運転するトラックが被害者側の車両に追突して炎上させ、子供2人を焼死させた事故。事故当時、加害者はあらかじめ車内に持ち込んでいたウイスキーや缶酎ハイなどを飲酒しており、呼気1リットルあたり0.63mgのアルコール濃度で運転していた。また、加害者は縁石や中央分離帯にぶつかりかねないほどの蛇行運転をしており、料金所の職員から注意されるも運転を続行している。

この事故で、被害者の子供それぞれについて、本人分2,600万円、父母各400万円、合計3,400万円の慰謝料が認められた。

(東京地方裁判所 平成14年(ワ)第22987号 損害賠償請求事件 平成15年7月24日判決)

裁判例(2)

加害者の運転するトラックが歩道上で信号待ちをしていた被害者の中学生に衝突し、遷延性意識障害や肺挫傷などを負わせた事故。事故前、加害者は飲酒することをわかっていながらトラックを運転して宴会場に向かい、妻から飲酒を控えるよう言われているにも関わらずかなりの量の飲酒に及んだ。また、帰宅時には家族か運転代行を呼ぶように言われていたにも関わらず、自らトラックを運転した。事故後の調査で、加害者からは呼気1リットルあたり0.55mgのアルコールが検出されている。

この事故で、入通院慰謝料500万円に加えて、後遺障害慰謝料として本人分3,000万円、両親各400万円、合計3,800万円が認められた。

(仙台地方裁判所 平成20年(ワ)第321号 損害賠償請求事件 平成21年11月17日判決)

また、加害者側が飲酒運転をしていたことは過失割合にも影響するため、そのことにより受け取れる慰謝料が増えることもあるでしょう。

実際に慰謝料が増額されるかどうかは、加害者側の任意保険会社との示談交渉や裁判で決まります。
ただし、加害者側の任意保険会社は支払う金額を抑えたがる傾向があるため、積極的に慰謝料の増額を認めることは少ないでしょう。

加害者側の飲酒運転のため慰謝料を増額させたいときは、弁護士を立てることをおすすめします。弁護士であれば、過去の判例をもとに適切な慰謝料を算出し、交渉を進められます。

アトム法律事務所では交通事故被害者の方に対する無料相談を行っております。相談の受付は24時間対応となってるので、いつでも気軽にご連絡ください。

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飲酒運転による慰謝料の増額については、『飲酒運転は事故被害者の慰謝料が相場より増額される!増額のコツを解説』の記事もあわせてご一読ください。慰謝料増額のための示談交渉のポイントについても紹介しています。

まとめ

  • 飲酒運転をした場合、運転者本人だけではなく、同乗者、車両提供者、酒類提供者なども罰則対象になる
  • 自転車の飲酒運転も罰則対象となる
  • 飲酒運転による事故に遭ったのであれば警察に連絡し、弁護士への相談を行おう

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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