モペット事故の対処法と交通ルール|罰則・損害賠償も徹底解説

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モペットで事故

ここ最近、モペットによる交通事故や取り締まりの件数が急増しています。
「電動アシスト自転車に見えるから大丈夫だと思った」などの誤解から、免許なし・保険未加入で運転し、重大な違反や事故に繋がるケースが増えているのです。

モペットは、見た目に反して法律上は「原動機付自転車(原付)」として扱われる乗り物です。

運転には免許の取得や自賠責保険の加入、ナンバープレートの装着、ヘルメットの着用などが義務付けられており、知らずに公道を走ると罰則の対象になります。

本記事では、モペットの法律上の扱いや交通ルール、事故が発生した場合の対応について、わかりやすく解説します。
モペットによるトラブルを未然に防ぎ、安全に利用するために、ぜひ最後までご覧ください。

この記事では、モペットを「総排気量50cc以下または定格出力600w以下のペダル付き原動機付き自転車」ととらえ、解説を行います。

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モペットとは?法律上の扱いや電動アシスト自転車との違い

モペットは見た目が自転車に似ていることから、電動アシスト自転車と混同されやすい乗り物です。
しかし、法律上は「原動機付自転車(原付)」に分類され、公道を走るにはさまざまな義務が課されています。

ここではまず、モペットとはどのような乗り物なのかを整理し、法律上の扱いや電動アシスト自転車・電動キックボードとの違いをわかりやすく解説します。

モペットは原付扱い|道路交通法上の扱いを解説

「モペット(moped)」とは、ペダルが付いた原動機付自転車のことで、人力による走行と電動モーターによる走行の両方が可能な車両です。
外見は自転車に似ていることもあり、「電動アシスト自転車」や「フル電動自転車」などと混同されやすい点が特徴です。

しかし、モペットは道路交通法上、原則として「原動機付自転車(原付)」に分類されます。
そのため、公道での走行には運転免許が必要であり、ナンバープレートの装着・自賠責保険の加入・ヘルメットの着用なども義務とされています。

また、モペットはエンジンを切ってペダルだけで走行している場合でも、「原付」として扱われるのが原則です。
2024年11月に施行される改正道路交通法でも、ペダル走行も運転と見なされることが明確にされています。(道路交通法第2条第1項第17号

ごく一部のモペットはエンジンを切ったら自転車扱い

モペットはエンジンを切って走行する際も原動機付自転車として扱われます。しかし、車両の構造を切り替えられるごく一部の商品に限り、構造の切り替えに応じて道路交通法上の車両区分が変わることがあります

ただし、エンジンを切ると自転車扱いになるモペットは、ごく一部の商品に限られます。(「車両区分を変化させることができるモビリティ」について(通達)

「この商品はエンジンを切ったら自転車扱いになるかも?」といった楽観的な判断は禁物です。警察庁が把握している製品以外は基本的にいつでも原付扱いと考え、交通ルールを遵守するようにしましょう。

モペットと電動アシスト自転車の違い

モペットと見た目が似ており、混同されやすい乗り物として、電動アシスト自転車が挙げられます。

しかし、モペットが基本的に原付扱いになるのに対して、電動アシスト自転車は軽車両(自転車)として扱われます。

電動アシスト自転車は人がペダルをこいだ際にモーターが補助力として作用するように設計されており、モーター(原動機)のみでの走行はできません。この特徴は、道路交通法第2条第1項第11号の2が定める自転車の定義に該当するのです。

これにより、交通ルールにおいても違いがあります。

モペットと電動アシスト自転車の違いをまとめると、以下の通りです。

モペット電動アシスト自転車
モーターのみの走行可能不可(補助のみ)
法律上の扱い原動機付自転車軽車両(自転車)
公道走行時の義務免許・保険・ナンバー・ヘルメットなど基本的に不要

【電動キックボードはモペットと同じ原付扱い】

電動キックボードは、モペットと違いペダルがついていないものが一般的です。

もっとも、電動キックボードも道路交通法上は「原動機付自転車」としての扱いを受ける点はモペットと共通しています。

そのため、この後紹介するモペットで公道を走るときの交通ルールは、基本的に電動キックボードにも適用されます。

モペット事故の法的責任と損害賠償|加害者・被害者の立場から解説

モペットは法律上「原動機付自転車」として扱われるため、事故を起こすとバイクや車と同様に法的責任が問われます。
加害者には刑事罰や行政処分が科されることもあり、被害者に対しては損害賠償の義務が発生します。

また、被害者側も適切な手続きや証拠の準備を行うことで、治療費や慰謝料などの補償を正当に受け取ることが可能です。

ここでは、加害者としての責任と罰則、被害者が受け取れる補償とその請求の流れについて、両方の視点からわかりやすく解説します。

モペット事故の加害者側の責任

モペットに乗っていて事故を起こしてしまった場合、加害者側には大きな法的責任が発生します。
モペットは原動機付自転車として扱われるため、通常のバイク事故と同様に、以下の3つの観点から責任を問われることになります。

  • 民事責任(損害賠償義務)
  • 刑事責任(罰則や刑罰)
  • 行政処分(違反点数や免許停止など)

たとえば、無免許運転や整備不良、歩道の走行などが原因で事故を起こした場合、重大な違反行為として懲役刑や高額な罰金処分につながることもあります。

さらに、加害者が自賠責保険に未加入だった場合は、「無保険運行」として刑事罰+一発免停になる可能性もあるため注意が必要です。

被害者が受けられる補償と請求の流れ

モペット事故の被害者となった場合は、加害者に対して損害賠償を請求する権利があります。
補償される損害は、主に以下のような項目に分かれます。

  • 治療費や通院交通費
  • 休業損害(仕事を休んだ分の収入減)
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料・逸失利益(後遺障害が残った場合)
  • 物損(モペットや衣類の修理・買い替え費用など)

事故直後から、警察への通報や診断書の取得などの対応を適切に行っておくことで、損害賠償請求をスムーズに進められます

なお、加害者が任意保険に加入していない場合や、ひき逃げで相手が不明な場合でも、被害者自身の保険や政府の「自動車損害賠償保障事業」を通じて補償を受けられるケースがあります。

モペットの交通ルールと罰則|知らないと違反になるポイント

以下は、モペットに関する主な交通ルールと違反時の処罰内容のまとめです。

違反内容点数反則金刑事罰(例)
無免許運転25点懲役3年以下・罰金50万円以下
自賠責未加入6点懲役1年以下・罰金50万円以下
ナンバー未装着5,000円罰金5万円以下
整備不良1〜2点5,000〜6,000円懲役3か月以下・罰金5万円以下
ヘルメット未着用1点
通行区分違反2点6,000円懲役3か月以下・罰金5万円以下

それぞれについて解説します。

(1)モペット運転には免許が必要

モペットは道路交通法上、「原動機付自転車(原付)」として分類されます。そのため、運転には原付免許や普通自動車免許などが必要です(道路交通法85条1項、64条1項)。

「エンジンを切ってペダルで走るだけなら免許不要では?」と誤解されがちですが、たとえペダル走行であっても“運転”に該当し、免許が必要となる点に注意が必要です。

無免許の可能性がある人にモペットを貸した場合も「幇助」として処罰対象となることがあります。

無免許運転の罰則

刑事処分3年以下の懲役または50万円以下の罰金
行政処分違反点数25点

また、免許を携帯せずにモペットを運転した場合は、免許証不携帯として以下の罰則が科されます。

免許証不携帯の罰則

行政処分反則金3,000円

(2)モペットは自賠責保険への加入が義務

モペットは原動機付自転車として扱われるため、自賠責保険への加入義務があります

自賠責保険は自動車損害賠償保障法ですべての自動車(原動機付自転車含む)に加入が義務付けられている強制保険です。

無保険の状態でモペットを運転した場合、無保険運行として以下の罰則が科されます。

反則金を支払えば刑事責任を問われない、いわゆる「青切符」の適用はありません。

無保険運行の罰則

刑事処分1年以下の懲役または50万円以下の罰金
行政処分違反点数6点
※一発免停になる点数

なお、自賠責保険に入っていれば、万一事故を起こしても、自賠責保険金で損害賠償金を支払えます。しかし、自賠責保険金には限度額があるため、足りない分を補うために任意保険にも加入しておくことが重要です。

(3)ナンバープレートを装着し、保安基準を満たす

モペットには市区町村で交付されるナンバープレートを装着する義務があります。これを取り付けずに公道を走ると「公安委員会遵守事項違反」となります。

公安委員会遵守事項違反の罰則

刑事処分5万円以下の罰金
行政処分反則金5,000円

また、モペットは原動機付自転車として取り扱われるため、道路運送車両法および道路運送車両の保安基準に基づき、保安基準に適合した装備も必要です。

モペットに必要な主な保安装置は以下のとおりです。

  • 前照灯(ヘッドライト)、後部反射器
  • 警音器(クラクション)
  • 消音器
  • 後写鏡(バックミラー)
  • 以下は、最高速度が時速20キロメートル以上のモペットで義務
    番号灯、尾灯、制動灯(ブレーキランプ)、方向指示器(ウインカー)、速度計

最高速度が時速20キロメートル未満のモペットで制動灯や方向指示器を装備していない場合は、手信号によって合図を行う必要があります。

法令どおりの装備をしていない場合は、整備不良として以下の罰則が科されるでしょう。

整備不良の罰則

刑事処分3月以下の懲役または5万円以下の罰金
行政処分【制動装置等の場合】
違反点数2点、反則金6,000円
【尾灯等の場合】
違反点数1点、反則金5,000円

(4)ヘルメットを着用する

モペットを運転する際は、道路交通法第71条の4 第2項にもとづき、ヘルメットを着用する義務があります。

ヘルメットを着用せず公道を運転した場合は、乗車用ヘルメット着用義務違反として以下の罰則が科されます。

乗車用ヘルメット着用義務違反の罰則

行政処分違反点数1点

(5)モペットでの自転車道・歩道走行は禁止

モペットは原動機付自転車として扱われるため、自転車道・歩道走行は禁止されています

エンジンを切ってペダルだけで歩道を走行した場合も交通違反となるので注意しましょう。

なお、エンジンを切ったモペットを押して歩道を歩く場合は、歩行者として扱われるため違反にはなりません。

モペットで歩道を走行した場合、通行区分違反として以下の罰則が科されるでしょう。

通行区分違反の罰則

刑事処分3月以下の懲役または5万円以下の罰金
行政処分違反点数2点、反則金6,000円

「特定小型原動機付自転車」のモペットはルールが一部異なる

モペットのなかには、構造や性能が特定の条件を満たすことで「特定小型原動機付自転車」として扱われる車両もあります。

この場合、以下の交通ルールが緩和されます。

  • 運転免許が不要(※16歳未満の運転は禁止)
  • ヘルメットの着用は努力義務
  • 自転車道の走行が可能(歩道走行も条件付きで可)

特定小型原動機付自転車の要件(主な条件)

条件内容
車体サイズ長さ190cm以下/幅60cm以下
原動機電動モーター(定格出力0.60kw以下)
最高速度時速20km以下
走行中の最高速度の設定変更は不可
変速方式AT限定(自動変速)
その他装備最高速度表示灯が付いている

ただし、これらをすべて満たすモペットは非常に限定的で、警察庁が個別に確認しているケースがほとんどです。
「自分のモペットが該当する」と判断するのは非常に危険で、基本的には原付として扱われる前提でルールを守る必要があります。

モペットで事故を起こした・巻き込まれたら|対応マニュアル

万が一モペット事故が発生した場合、その場での対応や事故後の手続きによって、損害の大きさや責任の有無が大きく変わることもあります。

このパートでは、事故が起きたときの正しい対応手順、損害賠償の請求方法、加害者が無保険だった場合の対処法までを、被害者・加害者両方の立場からわかりやすく解説します。

(1)事故が起きたらすぐ警察に通報する

事故が発生したら、まずはけが人の救護と安全確保を最優先に行いましょう。

その後、必ず警察に通報してください。
これは道路交通法第72条で定められた義務であり、怠ると「事故報告義務違反」に問われ、懲役や罰金が科される可能性があります。

また、事故によってけがをした場合は必ず人身事故として届け出ましょう。

警察に伝える内容や連絡しない場合のデメリットについては、関連記事「交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れも解説」で確認できます。

(2)自覚症状がなくても病院で診察を受ける

事故直後に痛みや違和感がなくても、必ず医療機関で診察を受けましょう。
交通事故では「むちうち」など、数日たってから症状が現れるケースが少なくありません。

また、診断記録がないと、損害賠償請求の際に因果関係が認められず、慰謝料が支払われない可能性もあります。
将来的なトラブルを防ぐためにも、早めの受診が大切です。

その後は医師の指示に従って通院し、後遺症が残った場合は後遺障害認定を受けましょう。

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(3)損害賠償は加害者に請求できる

モペット事故によってけがや物損が発生した場合、加害者に対して損害賠償を請求できます。

交通事故損害賠償の内訳

【主な損害賠償の内訳】

  • 治療費・通院交通費
  • 休業損害(仕事を休んだことによる収入の減少)
  • 入通院慰謝料(精神的苦痛に対する補償)
  • 後遺障害慰謝料・逸失利益(後遺症が残った場合)
  • モペットや衣類などの物損費用

示談金の内訳や金額は示談交渉で話し合われます。

保険会社との示談交渉で提示された金額が相場より低いこともあるため、不安な場合は弁護士に相談しましょう。

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【補足】加害者が無保険・ひき逃げでも補償を受けられる

加害者が任意保険に入っていない場合や、ひき逃げで加害者が不明な場合でも、被害者救済の制度が整備されています。

  • 加害者が自賠責のみ加入
    →自賠責保険の限度額内で補償/超過分は加害者本人へ請求
  • 加害者が無保険/賠償困難
    →被害者自身の任意保険(人身傷害など)で対応可能
  • ひき逃げなど加害者不明
    →政府の「自動車損害賠償保障事業」に申請できる

このように、補償の選択肢を知っておくことで、泣き寝入りを防げる可能性が高くなります。

まとめ|モペットは「原付」として正しく扱おう

モペットは、その見た目や構造が電動アシスト自転車に似ていることから、つい「自転車と同じようなもの」と思われがちです。
しかし、法律上は原則として「原動機付自転車(原付)」に分類され、公道を走るには運転免許・自賠責保険・ナンバープレート・ヘルメットなどが必要です。

ルールを知らずに運転すれば、無免許運転や整備不良、通行区分違反などの違反に該当し、罰則の対象になる可能性があります。

実際に近年では、モペットに関する交通違反の摘発件数や事故件数が急増しており、ペダル付き原動機付自転車に関連する人身事故は2023年で57件と、2022年の27件から2倍以上に急増しています。

モペットを安全に利用するためのポイント

  • 保険未加入やひき逃げの場合でも、救済制度があるので泣き寝入りはしないこと
  • モペットは常に原付として扱う前提で運転する
  • 一部の特定小型原動機付自転車は例外だが、該当車両はごく一部のみ
  • 事故が起きたら、警察への通報・病院受診・損害賠償請求などの対応をすぐ行う

モペットを安全に使うには、「自転車に似ている」ではなく「原付と同じルールで動かすべき乗り物」という認識が欠かせません。
正しい知識と意識を持つことで、事故やトラブルを防ぐことができます。

もしモペット事故の加害者・被害者となってしまい、損害賠償や示談交渉に不安がある場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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