モペットで交通事故が起こったら?交通ルールや罰則も網羅的に解説

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モペットで事故

近年、ペダル付きの原付バイク「モペット」を街中で見かけることが増えています。

モペットは道路交通法では原動機付自転車として扱われます。そのため、公道を運転する際は免許が必要であり、自賠責保険への加入やヘルメットの着用なども義務となるのです。

しかし、電動アシスト自転車と似ていることも相まってか、モペットで交通違反をして取り締まりを受ける運転者は少なくありません。「モペットはエンジンを切ってペダルで走るときも原付バイク扱い」といった交通ルールを知らない運転者も時折見受けられます。

この記事では、モペットを公道で運転する際の交通ルールや、モペットで交通事故が起こったときどうすればいいかをまとめています。モペットによる交通トラブルを防ぐためにも、ぜひご一読ください。

この記事では、モペットを「総排気量50cc以下または定格出力600w以下のペダル付き原動機付き自転車」ととらえ、解説を行います。

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モペットで公道を走るときの交通ルール|違反時の罰則は?

モペットの運転には免許が必要

モペットは道路交通法では原動機付自転車として扱われます。そのため、モペットで公道を走るときは運転免許(普通自動車免許、原動機付自転車免許など)が必要です。

エンジンを切ってペダルだけで走行する場合も、モペットの法的な扱いは変わらないので、免許が必要であることに注意しましょう。

免許を持っていない人や免許停止中の人がモペットを運転した場合、無免許運転として罰則が科されます。また、無免許運転をする可能性がある人にモペットを貸した人にも、無免許運転幇助行為として運転者と同様の罰則が科されるので注意してください。

無免許運転の罰則

刑事処分3年以下の懲役または50万円以下の罰金
行政処分違反点数25点

また、免許を携帯せずにモペットを運転した場合は、免許証不携帯として以下の罰則が科されます。

免許証不携帯の罰則

行政処分反則金3,000円

モペットを運転する際の装備|ヘルメット・ナンバープレート必須

モペットを公道で運転する際は、原動機付自転車と同様にヘルメットを着用したり、ナンバープレートをつけたりする必要があります。それぞれの交通ルールと罰則を確認していきましょう。

ヘルメットの着用について

モペットを運転する際は、道路交通法第71条の4 第2項で定められているとおり、ヘルメットを着用する必要があります。

ヘルメットを着用せず公道を運転した場合は、乗車用ヘルメット着用義務違反として以下の罰則が科されるでしょう。

乗車用ヘルメット着用義務違反の罰則

行政処分違反点数1点

ナンバープレートの取り付けについて

モペットは原動機付自転車と同様に、各市町村の条例で定められたとおりにナンバープレート(標識)を見やすい場所に取り付けなければいけません。

ナンバープレートを取り付けずに公道を走行した場合は、公安委員会遵守事項違反として以下の罰則が科されることになります。

公安委員会遵守事項違反の罰則

刑事処分5万円以下の罰金
行政処分反則金5,000円

その他に必要な装備について

モペットは原動機付自転車として取り扱われるため、道路運送車両法および道路運送車両の保安基準に基づき、以下の部品を装備している必要があります。

  • 前照灯、番号灯、尾灯、制動灯及び後部反射器
  • 警音器
  • 消音器
  • 方向指示器
  • 後写鏡
  • 速度計

なお、最高速度が時速20キロメートル未満のモペットの場合、番号灯、尾灯、制動灯、方向指示器、速度計については装備義務がありません。ただし、制動灯や方向指示器を装備していない場合は手信号によって合図を行う必要があります。

法令どおりの装備をしていない場合は、整備不良として以下の罰則が科されるでしょう。

整備不良の罰則

刑事処分3月以下の懲役または5万円以下の罰金
行政処分【制動装置等の場合】
違反点数2点、反則金6,000円
【尾灯等の場合】
違反点数1点、反則金5,000円

モペットは自賠責保険への加入が義務

モペットは原動機付自転車として扱われるため、自賠責保険への加入義務があります

自賠責保険は自動車損害賠償保障法ですべての自動車(原動機付自転車含む)に加入が義務付けられている強制保険です。

自賠責保険には支払い限度額があるため、万が一交通事故を起こしたときのために任意保険にも加入しておくようにしてください。

無保険の状態でモペットを運転した場合、無保険運行として以下の罰則が科されます。違反点数が6点なのでいわゆる「一発免停」となること、反則金の適用がないので基本的に刑事事件として処理されることに注意が必要です。

無保険運行の罰則

刑事処分1年以下の懲役または50万円以下の罰金
行政処分違反点数6点

モペットで歩道を走行するのは違反

モペットを自転車と同じような乗り物と考え、モペットで歩道を走行する運転者も散見されます。しかし、モペットは原動機付自転車として扱われるため、歩道を走行すると交通違反になります

エンジンを切ってペダルだけで歩道を走行した場合も交通違反となるので注意しましょう。なお、エンジンを切ったモペットを押して歩道を歩く場合は、歩行者として扱われるため違反にはなりません。

モペットで歩道を走行した場合、通行区分違反として以下の罰則が科されるでしょう。

通行区分違反の罰則

刑事処分3月以下の懲役または5万円以下の罰金
行政処分違反点数2点、反則金6,000円

モペットとはそもそもどんな乗り物?

モペットとはペダルが付いた原動機付自転車のこと

モペットとは、一般的にペダルが付いた原動機付自転車のことを言います。メディアによっては「モペッド(Moped)」や「フル電動自転車」と呼ばれることもあります。

モペットの特徴は、電動モーターなどの原動機だけで走ることも、ペダルをこいで人力だけで走ることも可能なことです。

その利便性から、近年は日本国内でも注目を集め、普及するようになりました。しかし、同時に運転者が交通ルールを遵守していないことも問題視されるようになっています。

警視庁が注意喚起しているとおり、モペットは道路交通法では「原動機付自転車」に分類されます。モペットを運転する際は、原動機付自転車を運転する場合と同じルールを守らないと処罰を受けるので注意しましょう。

なお、法律上の原動機付自転車の定義は以下のとおりです。

原動機付自転車 内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、軽車両、身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のものをいう。

道路交通法第2条第1項第10号

法第二条第一項第十号の内閣府令で定める大きさは、二輪のもの及び内閣総理大臣が指定する三輪以上のものにあつては、総排気量については〇・〇五〇リットル、定格出力については〇・六〇キロワットとし、その他のものにあつては、総排気量については〇・〇二〇リットル、定格出力については〇・二五キロワットとする。

道路交通法施行規則第1条の2

モペットはエンジンを切っても原付扱い

モペットに関する誤解として多いのが、「エンジンを切ってペダルだけで走行するなら原付ではなく自転車として扱われるのでは?」というものです。

しかし、モペットはエンジンを切って走行する場合も原動機付自転車として扱われます

たとえば、バイクを運転する際は、エンジンをかけて走行しているときだけではなく、スピードが出たあとにエンジンを止めて惰性で走行しているときも「バイクを運転している」と扱われます。走行しているバイクが「一定以上の排気量を持ってレールなどによらず運転できる車」という属性を持つことに変わりはないからです。

これと同様に、モペットはエンジンを切って人力で走行する際も、原動機付自転車という属性を持つことに変わりはありません

よって、エンジンを切ってペダルだけで走行するときも、モペットは原動機付自転車の交通ルールを守る必要があるのです。

ごく一部のモペットはエンジンを切ったら自転車扱い

モペットはエンジンを切って走行する際も原動機付自転車として扱われます。しかし、車両の構造を切り替えられるごく一部の商品に限り、構造の切り替えに応じて道路交通法上の車両区分が変わることがあります

警察庁によると、構造の切り替えに応じて車両区分の評価が変わるとされる要件は、以下のとおりです。

・ 乗車している者が、車が停止していない状態で、EVモードから人力モードに切り替えることができず、かつ、人力モードからEVモードに切り替えることができないこと。


・ 人力モードは、地方税法(昭和25年法律第226号)及び市町村(特別区を含む。)の条例に基づいて交付された原動機付自転車の標識を表示することができず原動機付自転車として適法に走行させることができない構造であり、かつ、それが明らかな外観となっていること。

「車両区分を変化させることができるモビリティ」について(通達)

ただし、2022年時点で上記の要件を満たすモペットはごく一部の商品に限られます

警察庁による通達では、都道府県警に対し「車両区分を変化させられる車の要件を満たすかどうかは警察庁において判断するため、そのような商品を認知した場合は警察庁に報告してほしい」といった旨の要請がされています。

「この商品はエンジンを切ったら自転車扱いになるかも?」といった楽観的な判断は禁物です。警察庁が把握している製品以外は基本的にいつでも原付扱いと考え、交通ルールを遵守するようにしましょう。

モペットと電動アシスト自転車の違い

モペットと見た目が似ており、混同されやすい乗り物として、電動アシスト自転車が挙げられます。

モペットと電動アシスト自転車の違いは、主に以下のとおりです。

  • モペット
    • 電動モーターのみでの走行が可能。
    • 道路交通法上は「原動機付自転車」として扱われる。
  • 電動アシスト自転車
    • 電動モーターのみでの走行が不可能。
    • 道路交通法上は「軽車両」(自転車)として扱われる。

電動アシスト自転車は、人がペダルをこいだ際にモーターが補助力として作用するように設計されています。モーター(原動機)のみでの走行はできません。よって、モペットと異なり、軽車両(自転車)として扱われることになるのです。

なお、法律上の自転車の定義は以下のとおりです。

自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであつて、内閣府令で定める基準に該当するものを含む。)をいう。

道路交通法第2条第1項第11号の2

モペットで交通事故が起こったら?

(1)まずは必ず警察に連絡

モペットで交通事故が起こった場合、まずはケガ人の救護と現場の安全確保を行います。そのうえで、必ず警察に通報しましょう

警察への通報は、道路交通法第72条で定められている義務です。怠った場合、事故報告義務違反として3月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。

なお、ケガをしている場合は必ず人身事故として届け出るようにしてください。

もし、ケガをしているにも関わらず物損事故として届け出てしまった場合は、すみやかに診断書を提出して人身事故に切り替えましょう。物損事故のままだと、過失割合などの証拠になる「実況見分調書」が作成されず、示談交渉で不利になる可能性があります。

警察に伝える内容や連絡しない場合のデメリットについては、関連記事『交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れも解説』で確認できます。

(2)痛みがなくても病院で診察

事故現場での対応が終わったら、すぐに病院で診察を受けましょう。痛みやしびれといった自覚症状がなくても受診することが大切です。

交通事故にあった直後は、身体が興奮状態にあって自覚症状に気づけない場合があります。また、交通事故で多いむちうちは、しばらく経ってから症状が現れることも多いです。

事故によってケガを負った場合は、医師から「完治」または「症状固定」と診断されるまで治療を続けます。症状固定とは「これ以上治療しても症状が改善しないと見込まれる状態」のことです。

なお、交通事故による治療費は、加害者が任意保険に加入している場合は保険会社から病院に直接支払ってもらえることが多いです。加害者が無保険の場合は、被害者自身の健康保険を使って負担を軽減しましょう。

交通事故の治療費の支払われ方や、治療費として補償される範囲については『交通事故の治療費は誰が支払う?被害者が立て替えるなら健康保険を使おう』の記事でまとめています。

後遺症が残った場合は?

もし、医師から症状固定と判断された時点で何らかの後遺症が残っていれば、後遺障害認定の申請を行いましょう

後遺障害認定とは、事故で負った後遺症が1級~14級まである「後遺障害等級」に認定されることを言います。後遺障害認定を受ければ、新たな損害賠償金の費目を請求できるようになります。

後遺障害認定を受けられる条件や、後遺障害認定の手続きについては『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』の記事をご確認ください。

(3)加害者側に損害賠償を請求|無保険やひき逃げの場合は?

事故で負ったケガが完治するか、症状固定を経て後遺障害認定の結果が出たら、事故による損害をすべて算定できるようになります。この段階で、加害者側への損害賠償請求をはじめます。

加害者側に請求できる損害賠償金の費目は、主に以下のとおりです。各費目の計算方法については、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。

交通事故損害賠償の内訳
  • 事故でケガを負った場合の費目
    • 治療費
    • 休業損害(事故で仕事を休んだため減った収入の補償)
    • 入通院慰謝料(事故でケガを負った精神的苦痛の補償)
    • その他、通院交通費、器具・装具費など
  • 事故で後遺障害を負った場合の費目
    • 逸失利益(後遺障害の影響による将来的な減収の補償)
    • 後遺障害慰謝料(事故で後遺障害を負った精神的苦痛の補償) など
  • 物損部分の費目
    • 車両(モペット含む)の修理費 など

交通事故の損害賠償請求をする際は、「示談」という当事者間の話し合いで解決を目指す方法で金額を決めていくことが多いです。示談の基本的な情報や、示談で損しないポイントについては、『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点』の記事をご確認ください。

加害者が任意保険に入っている場合、示談の相手は任意保険会社の担当者になるでしょう。このとき、保険会社が提示してくる損害賠償金の金額は相場より大幅に低いことに注意する必要があります。

損害賠償金のうち、慰謝料や逸失利益については、以下の自動計算機で過去の判例をもとにした法的に適切な相場を確認することができます。

もし、加害者側の任意保険会社が計算結果よりも低い金額を提示してきている場合は、弁護士にご相談ください。損害賠償金を適正な相場まで増額できる可能性が高いです。

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加害者側が無保険の場合や、ひき逃げされた場合は?

もし、モペットによる交通事故の被害にあったとき、加害者側が無保険だったり、ひき逃げで加害者がわからなかったりする場合は、以下のように損害の補償を受けましょう。

  • 加害者が任意保険に未加入・自賠責保険に加入
    • 自賠責保険から補償を受ける
    • 自賠責保険の限度額を超えた分は、加害者本人に請求する
    • 加害者に資力がない場合、被害者自身の保険を利用する
  • 加害者が任意保険・自賠責保険ともに未加入
    • 加害者本人に損害賠償を請求する
    • 加害者に資力がない場合、被害者自身の保険や政府の保障事業を利用する
  • 加害者が不明(ひき逃げなど)
    • 被害者自身の保険や政府の保障事業を利用する

加害者側が無保険だった場合の対応については、『交通事故相手が無保険でお金がない!賠償請求時の対処法6つ』の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

また、交通事故で使える保険については、『交通事故で使える保険の種類と請求の流れ|被害者自身の保険も使える?』の記事で網羅的に紹介しています。

まとめ

モペットは道路交通法上で「原動機付自転車」として扱われる乗り物です。

そのため、モペットの運転には免許の取得、保険への加入、ヘルメットの着用、ナンバープレートの装着などが必要になります。

モペットは電動アシスト自転車と見た目が似ていることもあり、「自転車と同じようなものだろう」と誤解して交通ルールを破ってしまう利用者も少なくありません。近年ではモペットにより重傷事故を起こし、過失運転致傷罪として書類送検された方もいます。

交通事故を起こさないためにも、モペットの本来の使い方を守り、安全運転を心がけましょう。

モペットが関わる交通事故の被害にあったときは、損害賠償問題でもめてしまう可能性もあります。その場合は、気軽にアトム法律事務所にご相談ください。交通事故の解決実績豊富な弁護士が、適切な損害賠償金の獲得に向け、被害者の方をサポートします

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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