レンタカーの事故の対応は?レンタカーの保険は使える?自己負担になるケースは?

レンタカー運転中、事故に遭った場合、まずは安全確認と負傷者の救護をおこない、警察に連絡します。レンタカー会社への連絡も忘れないようにしましょう。ご自身もすぐに病院で検査・治療を受けてください。
レンタカー運転中の事故で、ケガの賠償やレンタカーの修理代などが必要になった場合、原則として、レンタカー会社が加入する自賠責保険や任意保険を使います。
ただし、保険で補償される範囲が制限されている可能性(免責額、上限額、ノンオペレーションチャージなど)もあるため、注意が必要です。
この記事では、レンタカー事故について、一般的な保険の補償範囲や、補償範囲を広げるための方法、事故対応などを解説します。
レンタカーとカーシェアは別物です。カーシェアで事故に遭った場合は『カーシェアで事故が発生したら?保険の補償内容や示談交渉の注意点』をご確認ください。
目次

レンタカー事故ではレンタカーの保険を使う!
レンタカーで事故を起こした場合、原則としてレンタカー会社が加入する保険が適用されます。
レンタカーの保険では、基本的に自分・事故相手・レンタカーに生じた損害の補償が可能です。
レンタカーの保険の補償内容
補償の種類 | 補償の対象 |
---|---|
対人補償 | 相手方が死傷した場合の補償 |
対物補償 | 相手方の物的損害に対する補償 |
車両補償 | レンタカー自体の損害に対する補償 |
人身傷害補償 | レンタカー運転者の死傷による損害への補償 |
レンタカー事故の補償(1)対人補償
対人補償では、治療費、交通費、慰謝料、休業損害、逸失利益などの人身損害が、補償の対象となります。
項目例 | 内容 |
---|---|
治療費 | 事故による負傷の治療に必要かつ相当な実費 |
交通費 | 事故による負傷で病院に通う時の交通費 |
慰謝料 | 入通院、後遺障害、死亡の精神的苦痛に対する賠償 |
休業損害 | 入通院により、収入が減少した場合の賠償 |
逸失利益 | 後遺障害や死亡により、将来の収入が減少した場合の損害 |
レンタカー事故をおこしてしまい、相手がケガをした場合、こうした賠償金はレンタカー保険の対人補償でまかなえます。
レンタカー事故の補償(2)対物補償
対物補償は、レンタカー事故で、他人の車両や建物、電柱などを壊してしまった場合、その修理費用などを補償する保険です。
レンタカー事故の補償(3)車両損害
車両損害とは、レンタカーが損害を被った場合に、修理費用などを補償する保険です。
ただし、事故でレンタカーが修理中・買換え中となり、使用できなくなった場合に発生するレンタカー会社の損害については、補償されません。後述のとおり、特約に加入しない限り、レンタカー会社から、ノンオペレーションチャージを請求されます。
レンタカー事故の補償(4)人身傷害補償
人身傷害補償とは、事故をおこしたレンタカーの運転者・同乗者がケガをした場合に、その治療費、休業損害、慰謝料などの人身損害が補償する保険です。
人身傷害補償は、一般に、事故相手との示談交渉が長引いてもすぐに受け取れ、上限額に満つるまで過失割合に関係なく、賠償金を受けとることができる特徴があります。
賠償請求できる損害の内容についてもっと知りたい方は『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事も参考になさってください。
レンタカー保険で補償されないもの
レンタカーの保険ではまかないきれず自己負担となる部分が出ることもあります。こちらでは、レンタカーの保険の補償から外れるケースを確認していきましょう。
レンタカー保険の免責金額
レンタカーの保険には「損害のうち〇万円まではレンタカー利用者の自己負担とする」という免責額が定められていることが多いです。
免責額は、一般的に対人と対物でそれぞれ5万円程度となっている傾向にあります。この場合、レンタカーの保険でまかなえるのは対人・対物それぞれ5万円を超える部分のみで、免責額分はレンタカー利用者の自己負担です。
Case1
以下の場合、レンタカー利用者の自己負担額は55万円となる。
- 車の修理費
60万円 - 免責金額
5万円
レンタカー保険の上限額超過分
レンタカーの保険に補償上限額が定められている場合、その限度額を超えた分も自己負担となります。
人身傷害などで限度額がもうけられる例が多いです。
人身傷害補償
(レンタカー搭乗者)1名につき5,000万円まで
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レンタカーのノンオペレーションチャージ
ノンオペレーションチャージ(NOC)とは、「事故によりレンタカーが損壊しなければ、その車を使ってレンタカー会社が得ていたであろう利益」のことです。
事故後にレンタカーの修理・買い替えが必要になると、しばらくの間レンタカー会社は車が1台少ない状態で営業することになります。その結果、売り上げが落ちることが考えられます。
こうした損害を補償するものが、ノンオペレーションチャージです。ノンオペレーションチャージは基本的には利用者の自己負担とされ、レンタカーの保険では補償されません。
金額の目安は損傷したレンタカーが自走できる場合は2万円程度、自走できないほど損壊した場合は5万円程度になることが多いでしょう。
レンタカー保険が適用されない事故
以下のようなケースでは、事故が起きてもレンタカーの保険が使えず、生じた損害額は利用者の自己負担となる可能性が高いです。
- 契約者以外の方が運転して事故を起こした
- 無免許運転や飲酒運転で事故を起こした
- レンタカーの返却期限を過ぎて延滞している間に事故を起こした
- 警察やレンタカー会社に事故の連絡をしなかった
- 事故の相手と勝手に示談した
- レンタル契約の約款に違反した
なお、補償の対象外になる行為の詳細はレンタカーサービスによって異なる場合があるので、契約内容を事前に確認しておきましょう。
レンタカー事故と他者運転特約
レンタカー保険で補償されない部分をまかなえる?
レンタカー保険の補償が受けられない場合、自己負担分の金額は自分が加入している任意保険でまかなえる可能性があります。
使える可能性があるのは、一般に他車運転特約と呼ばれている補償です。
他車運転特約とは、自分が加入している自動車ではなく、他人の車を運転して事故を起こした場合に、自分の任意保険を使って保険金を支払える特約です。
他者運転特約でも補償されない場合
ただし、他車運転特約だけで全ての損害をまかなえるとは限りません。また、利用すると保険の等級が下がり、翌年からの保険料が増額します。
飲酒運転で事故を起こした場合など、他車運転特約の補償対象外になるケースもあります。
1日自動車保険は補償の対象外
1日自動車保険とは、他人の所有する自動車を運転する際に生じる損害を対象とした保険です。
しかし、1日自動車保険は個人間の自動車の貸し借りを対象としているため、法人が所有しているレンタカーは対象外となっています。
もしものレンタカー事故に備えて今できる3つの事前策
これからレンタカーに乗る場合は、もしもの事故に備えて以下の点を知っておきましょう。
- レンタカー保険の免責補償制度(CDW)を利用する
- レンタカー保険のNOCの追加費用を支払う
- レンタカーの状態は出発前によく確認する
それぞれについて解説します。
(1)免責補償制度(CDW)を利用
レンタカーの保険の補償内容は、オプションによって広げられることがあります。
例えば「免責補償制度(CDW)」を適用すると、レンタカーの保険の免責額がなくなります。
免責補償制度を利用するには、通常のレンタカー料金のほかに24時間ごとに1000円程度の追加費用を支払う必要がありますが、もしもの時に安心です。
(2)NOCの追加費用を支払う
ノンオペレーションチャージ(NOC)も追加費用を支払うことで免責されることがあります。レンタカーを借りる前に確認しておきましょう。
(3)レンタカーの状態を出発前に確認
レンタカーを借りる際には、出発前にレンタカーの状態を確認しましょう。
出発前に、レンタカーの状態をよく確認しておけば、レンタカーの不具合で事故を起こしてしまうケースを防止することができます。
また、レンタカーを返却した際に、出発時点で確認できなかった傷やへこみがあると、レンタカーの利用者に修理代金が請求されてしまいます。この意味でも、出発前の確認は重要です。
レンタルを始めた時点で傷やへこみがある場合は、事前にレンタカー会社のスタッフに伝えておきましょう。
こうすることで、身に覚えのない傷やへこみによる修理代について責任を負うリスクが低くなります。
レンタカー事故の正しい5つの対応
レンタカー乗車中の事故対応は、交通事故が起こったときの一般対応と基本的には同じで、以下の通りです。
レンタカー事故後の対応
- 負傷者の救護活動
- 警察に通報
- レンタカー会社へ事故を報告
- 事故状況の記録、相手方の連絡先の確認
- ケガの治療
負傷者の救護や警察への連絡を怠ると、道路交通法違反として罰則を受けることがあります。事前にそれぞれのフェーズにおける注意点を知っておきましょう。
(1)負傷者の救護活動(罰則あり)
レンタカー運転中に事故にあったら、まずは車を安全な場所に停車して、負傷者がいるかどうかを確認します。
負傷者がいれば安全な場所に移動させてすぐに救急車を呼びましょう。必要に応じて周囲の人々に助けを求めることも大切です。
(2)警察に通報(罰則あり)
事故現場での作業が一通り済んだら、必ず警察に通報しましょう。人身事故か物損事故かにかかわらず、事故の当事者は警察に報告しなければならないことが法律で義務付けられているからです。
警察に報告しなかった場合、道路交通法違反の罰則の対象になるだけでなく、レンタカーの保険が適用外となる可能性があります。損害内容や事故規模の大小問わず、必ず警察に報告しましょう。
警察への通報を行う際の注意点については『交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れも解説』の記事をご覧ください。
(3)レンタカー会社へ事故を報告
警察への通報が済んだら、レンタカー会社にも事故の報告をしてください。すみやかにレンタカー会社に連絡することが、保険適用の条件になっているケースがあるので忘れずに連絡しましょう。
ポイント
示談は事故の当事者間が合意すると口頭でも成立してしまう性質をもっています。示談が成立すると、原則的には撤回できないので注意してください。
その場の示談で生じるリスクについては『交通事故の示談はその場でしてはいけない!理由や示談を求められた時の対処法』の記事が参考になります。
(4)事故状況の記録、連絡先の確認
後日、レンタカー事故の過失割合などが問題になるケースもあります。
そのため、可能であれば、ご自身でも事故状況を写真に撮るなどして、記録しましょう。
また、事故後は、相手方本人またはその保険会社と、賠償について示談交渉を進めることになります。
そのため、必ず、相手方の連絡先を確認しておきましょう。
(5)ケガの治療
レンタカー事故に遭ってしまったら、速やかに病院を受診して、検査と治療を受けてください。
大した痛みではない、よく知らない土地だから、と病院の受診をためらう人もいるでしょう。
しかし、事故直後には分からなくてもケガをしていて、後から何らかの症状が出てきたり、実は骨折していたと後日発覚するケースもあるのです。
事故から日が空いて受診しても、事故との因果関係を疑われて、適正な損害賠償を受けられない可能性がでてきます。
また、警察に人身事故として届け出る際には診断書が必要です。
まずは事故現場付近の病院を受診しておき、後から自宅や職場付近の病院へ通院先を変更しましょう。
通院の頻度や注意点については『交通事故の被害者は毎日通院した方がいい?通院頻度や期間と慰謝料の関係』の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、こちらでご紹介した事故対応の流れは、おおまかなものです。事故の初期対応について、もっと詳しく知りたい方は『交通事故にあったら初期対応の手順は?事故を起こしたらまずすること』の記事もあわせてご覧ください。
レンタカー事故でよくある質問
Q.レンタカー事故の慰謝料の請求先は?
被害者がレンタカーを運転していた場合、加害者本人またはその保険会社に請求します。
加害者がレンタカーを運転していた場合、加害者本人、または「運行供用者」であるレンタカー会社に請求します(自動車損害賠償保障法3条)。
Q.治療費の支払いで健康保険は使える?
事故相手の任意保険会社が、病院に対して、直接、治療費を支払ってくれるケースも多いです。この場合、被害者の窓口負担はありません。
しかし、病院を受診するタイミングや事故態様によっては、被害者がいったん治療費を支払うケースもあります。そうした場合には健康保険を使うことで窓口での負担を減らすことも可能です。
健康保険の利用にあたっては一定の手続きが必要になるので、関連記事『交通事故で健康保険は使える!切り替え手続きやメリットも解説』も参考にしてください。
Q.訪日外国人が運転するレンタカーと事故にあったら?
訪日外国人が運転するレンタカーと事故があった場合も、事故後の対処法に違いはなく、レンタカー会社の加入する保険から補償を受けられます。
詳しく知りたい方は『外国人とのレンタカー事故の対処法や損害賠償の方法を解説』の記事をご覧ください。
レンタカー事故が起きたら弁護士に相談を
レンタカーの事故に関する補償について説明を行いましたが、事故に関する損害がいくらになるのかという点については、専門知識を有する弁護士に相談するのが最も確実です。
慰謝料は増額できる可能性が高い
レンタカー事故でケガをした場合、治療費や慰謝料といった損害賠償金を請求していきましょう。示談交渉は主に相手の任意保険会社と進めることになり、示談案も相手から提示されるのが基本です。
相手方が提示する慰謝料を含めた示談金額は、あくまで相手の任意保険会社が算出したもので、相場より低額であることがほとんどでしょう。
そのため、慰謝料については増額の余地がありますが、適切な法的根拠にもとづいた請求を行わないと、相場の金額へ増額することは困難です。
専門知識を有する弁護士が代わりに示談交渉を行うことで、被害者が本来なら受け取れるはずの妥当な慰謝料まで引き上げることができます。

また、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として、レンタカー会社とのやりとりや事故の相手方との示談交渉などを代わりに行うことが可能です。
トラブル時には適切な対応を取ってくれるため、精神的な負担が軽くなり、安心できるというメリットがあります。
参考になる記事
- 示談交渉の基礎:交通事故の示談とは?進め方やうまく進めるための注意点
- 慰謝料の基礎:交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ
無料相談からはじめよう
レンタカー事故でケガを負った場合は、アトム法律事務所の弁護士との無料相談も検討しましょう。
保険会社が提示するままの示談金を受け入れてはいけません。増額の余地があるか弁護士に聞いてみましょう。
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レンタカー事故についてのまとめ
レンタカーで事故を起こした場合、通常の交通事故と同様に負傷者の救助や警察への通報をするのに加えて、レンタカー会社にも連絡する必要があります。
事故の損害はレンタカー会社が加入している保険から支払われますが、免責額やノンオペレーションチャージなど、自己負担が発生する場合もあるので注意しましょう。
万が一、レンタカーの保険が適用できないケースであるとして、事故の損害を自己負担するように要請された場合は、交通事故に知見のある弁護士に相談して、最善の方法を検討することが重要です。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了