交通事故の示談はその場でしてはいけない!理由や示談を求められた時の対処法
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この記事でわかること
交通事故にあったら、その場で示談しては絶対にいけません。
その場で示談すると十分な示談金を受け取れなかったり、その後に加害者側とトラブルになったりするリスクがあります。
気が動転しているかもしれませんが、納得のいく示談内容にするためにも、その場で示談しないことが大切なのです。
本記事では、交通事故後にその場で示談してはいけない理由を詳しく解説します。加害者側から示談を求められた際の対処法や示談の正しいタイミングもわかるので、確認していきましょう。
目次

交通事故の示談をその場で行ってはいけない理由
示談とは、当事者同士が損害賠償金についてお互いの主張をぶつけて話し合いをした上、合意して解決する手続きのことで、民法上の和解契約の一種です。
交通事故では、以下の理由から示談をその場で行ってはいけません。
交通事故直後はまだ正確な示談金額がわからない
交通事故後、示談をその場でしてはいけない大きな理由は、「その時点ではまだどのような費目をどれくらい請求できるかわからない」からです。
交通事故において示談金として請求できる費目には、以下のものがあります。
示談金の費目
- 治療の内容や期間に応じて金額が決まるもの
- 入通院慰謝料
- 治療関係費(治療費、入院費、通院交通費など)
- 休業損害
- 後遺障害の程度に応じて金額が決まるもの
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 交通事故で被害者が亡くなった場合に請求するもの
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 交通事故で車両や積載物が損壊した場合に請求するもの
- 車両買い替え費用(時価額)または車両修理費用
- 代車費用
- 破損・損壊した積荷の弁償費用または修理費用
上記を見ても分かるとおり、どのような示談金をどの程度請求できるかは、治療が終わり、後遺障害の有無・程度(後遺障害等級)などが判明するまでわからないのです。
それにもかかわらず交通事故後にその場で示談してしまうと、本来請求できるはずの金額よりも大幅に少ない金額しか補償されないリスクがあります。
反対にあとから多すぎる示談金を受け取っていたことが判明した場合には、加害者側から返金を求められトラブルになる危険性もあるのです。
事故直後には痛みが自覚症状が無かったり、軽傷だと思っていても、興奮状態で感覚が鈍くなっているからの可能性があり、実際には病院に行って予想以上に重いケガが判明することもあります。
そうなると、示談金は最終的に数百万に上ることもあります。「軽傷なのに加害者側が良い条件で示談を提案してくれた」と思っても、その場では示談せずに慎重に判断しましょう。
口約束でも示談成立となり、原則として再交渉できない
示談は、示談書を交わさない口約束でも成立してしまい、原則として再交渉や撤回はできません。
示談は民法に規定されている「和解契約」であり、示談を以て争いを終わらせる効力があるからです。
(和解)第六百九十五条
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
民法695条(e-Gov)
もし後日、「莫大な治療費や手術費が必要になった」「後遺障害で仕事ができなくなり無収入になった」などの状況が生じても、示談が成立していると追加の賠償請求は困難なのです。
なお、例外的に示談成立後の撤回・再交渉が可能なケースもあります。詳細を知りたい方は『交通事故の示談後、撤回や追加請求は可能?後遺障害があとから発覚したら?』にてご確認ください。
早く示談して加害者との関係を断ちたい方へ
加害者と関わり合いになりたくないから、その場で示談してこれきりにしてしまいたい、という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、その場で示談するリスクはここまで解説した通りです。
もし示談まで加害者側との関係が続くことが不安なら、弁護士にご相談ください。
弁護士が間に入れば加害者側と直接やりとりせずに済み、不安が軽減されます。示談交渉も弁護士を立てたほうがスムーズに進みやすいので、必要であれば弁護士の介入の検討をおすすめします。

軽い接触事故でもその場で警察に連絡しないとデメリットが生じる
軽い接触事故なら、その場で和解(示談)をして、警察を呼ばずに済ませた方が面倒にならずによいと思う方もいるかもしれません。
しかし、警察に交通事故を報告しないと以下のようなデメリットが生じます。
- 道路交通法違反となり罰則を受ける可能性がある
- 保険金請求や示談金請求で必要な書類が作成されない
それぞれについて解説します。
道路交通法違反となり罰則を受ける可能性がある
車両の運転者等が交通事故を警察に報告することは、道路交通法に定められた義務です。
警察への報告義務違反には、3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金という刑事罰を科されます。
たとえ、ケガ人がいない軽い接触事故であっても、そのことが理由で、警察への報告義務が免除されることはありません。
さらに、物損事故では通常、運転免許証の違反点数は加算されないのですが、警察に連絡をしないと、当て逃げという扱いになり、違反点数が加算されます。
具体的には、「安全運転義務違反」2点、「危険防止措置義務違反」5点の合計7点が加算され、少なくとも免停(場合によっては免許取消)になってしまいます。
保険金請求や示談金請求で必要な書類が作成されない
警察に事故処理されると、自動車安全運転センターから、事故の発生を証明する「交通事故証明書」が発行されます。
これは、事故後に被害者自身の保険を利用したり、自賠責保険会社に被害者請求したり、加害者が自身の保険を使って示談金の支払いをしたりする際に必要になる書類です。
つまり、警察に事故の届出をしていないと、保険金請求や示談金請求に支障が出るのです。
また、人身事故の場合は警察に届け出ると、現場の捜査内容をまとめた「実況見分調書」も作成されます。これは事故現場の状況を証明する重要な書類で、加害者側と過失割合について交渉するときに活用されることがあります。
こうした書類が作成されないことも、警察に届け出ずにその場で示談するデメリットと言えます。
加害者がその場で示談をしたがる理由と対処法
加害者がその場で示談をしたがる理由|応じると損する
事故現場で、加害者からその場での示談を懇願されるケースは少なくありません。
警察に連絡せずその場で示談すれば、加害者にとっては以下のメリットが生じるからです。
- 免許停止などの行政処分や、刑事処分を免れられる
- 適切なタイミングで示談交渉するよりも、少ない示談金で済む可能性がある
人身事故であれば、加害者は過失運転致傷罪や危険運転致傷罪などの罪に問われることがあります。
これらの刑事事件になることを避けるため、警察を呼ばずにその場の示談で済まそうと考える加害者もいるでしょう。
その場での示談に応じてしまうと、加害者にはメリットが大きい一方、被害者にはデメリットばかりが残ります。
たとえ一見相手が反省しているように見えても、その場での示談に応じてはいけません。
加害者がその場で示談を提案してきた際の対処法
加害者がその場で示談を提案してきたら、明確に断りましょう。先ほどもお伝えをしたとおり、示談は口頭でも法的には成立するので、その場しのぎでとりあえず話を合わせることも厳禁です。
ただし、その場での示談を断ることで加害者側が逆上するなどの危険性もあるので、断り方には注意が必要です。
交通事故発生時の適切な事故対応
交通事故発生時には、その場での示談を断る以外にも、下記のように各種さまざまな適切な対応を取る必要があります。
負傷者の救護活動
具体的には、必要であれば救急車を呼び、応急処置をとるなどの対応が必要となります。
現場の安全確保
具体的には、事故車両を放置したままだと、後続車との二次事故を引き起こすリスクがある場所で事故が発生した場合には、車両を移動させるなどの対応を行いましょう。
また、場合によっては、発煙筒や三角停止板を活用して、後続車に注意喚起を行うことも必要です。
上記の救護義務や安全確保を怠った場合は、道路交通法72条1項前段違反となり、処罰を受ける可能性があります。
警察への通報
救護活動や現場の安全確保が終わったら、先ほどもお伝えのとおり、速やかに警察に通報しましょう。
相手方の情報確認
その場で示談ができないと分かった加害者が逃げてしまう可能性もありますので、早めの段階で下記のような方法で下記のような相手方の情報を確認し、メモをしておくと安心です。
- 加害車両
- 車のナンバー
- 運転免許証
- 氏名
- 住所
- 名刺
- 連絡先(電話番号、メールアドレスなど)
- 勤務先
- 車検証
- 加入の自賠責保険会社
事故状況の証拠集め
衝突した車両の位置関係や事故現場の様子、車両の損傷状況の写真を撮影するなど、事故状況の証拠を収集しておくと、後々の示談交渉で過失割合や車両の修理費等が争いになったときに有益です。
また、ドライブレコーダーを搭載している場合には、時間が経つと映像記録が消えてしまうことがあるので、事故直後にデータの保存も忘れずにしておきましょう。
さらに、後々証言をしてもらう可能性があるので、目撃者がいる場合は連絡先を聞いておきましょう。
保険会社に事故報告
その後は、加入する任意保険会社に事故報告しましょう。
事故報告をすると、事故の受付をしてくれると共に、ロードサービスの手配を行ったりしてくれます。
さらに、停車中の追突事故など被害者側に過失割合がない場合以外には、任意保険会社の担当者が間に入ってくれ、加害者側と直接やりとりせずに済みます。
病院で受診
交通事故直後に受診していないと、示談交渉で事故との因果関係が争いになる可能性があるので、少しでも違和感がある場合には必ず受診しましょう。
診断は医師しかできないので、最初は必ず整骨院ではなく、病院に行くようにしてください。
診断の結果ケガをしていた場合には、診断書を警察署に提出して人身事故に切り替えをしてもらう必要があります。
交通事故の示談はいつすべき?注意点は?
示談のタイミングは事故の種類により異なる
適切な示談のタイミングは、事故の種類により以下のように異なります。
事故の種類 | 示談の適切なタイミング |
物損事故 | 修理工場などの修理費の見積もりが出てから |
人身事故 (完治) | 治療終了(症状固定)後 |
人身事故 (後遺症あり) | 後遺障害認定後 |
死亡事故 | 葬儀後 ※四十九日後が一般的 |
上記のタイミングであれば、交通事故で生じた損害が確定するため適切な示談金を計算できます。
なお、人身事故や死亡事故でも、物損に関する示談金に関してのみ早く示談交渉することもあります。
示談を成功させるための注意点
示談交渉では、加害者側の保険担当者が出てくることが多いです。
そして、加害者側の保険担当者は、国が定めた最低限の基準(自賠責基準)や自社独自の基準(任意保険基準)に基づく低い示談金を提示してきます。
被害者が本来受け取るべきなのは過去の判例に基づく基準(弁護士基準/裁判基準)の金額ですが、交渉のプロを相手に十分な増額交渉をすることは困難と言わざるを得ません。

しかし、弁護士を立てれば弁護士費用に近い金額の獲得が見込めます。
示談交渉を成功させるためにも、ぜひ弁護士への相談・依頼をご検討ください。
弁護士費用特約が使える場合には、弁護士費用を負担することなく、弁護士に依頼できる可能性が高いので、ご自身の自動車保険などの契約内容をよく確認してみて下さい。
また、アトム法律事務所では、24時間365日予約受付対応の無料電話・LINE相談を実施しています。厳密な示談交渉は個々の事故の状況に応じて柔軟に算定されるので、ぜひ弁護士にお問い合わせください。
無料相談のみのご利用も可能です。
弁護士無料相談で期待できる
5つのメリット
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まとめ
- その場で示談をすると、撤回できないうえ正確な賠償金も得られない
- 事故を警察に報告することは、正確な賠償金請求のためにも不可欠
- 加害者がその場で示談を懇願する理由には悪質なものもある
- 加害者の対応は弁護士に依頼がスムーズ
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了