交通事故を起こしたらまずする初期対応と手順!交通事故にあったらどうする?
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故は、誰にでも起こりうる身近な事故です。事故を起こしてしまった場合、冷静に適切な初期対応をとることが大切です。
とはいえ、突然の事故で慌ててしまうこともあるかもしれません。初期対応を誤ると、その後の保険対応や示談交渉に影響する可能性があります。
適切な対応がとれるように、交通事故にあったらどうすべきか解説していきます。
目次
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交通事故を起こしたらすべき初期対応の流れと手順
交通事故を起こした時に事故現場ですべき初期対応は、以下の手順で行います。
事故の初期対応の流れ
- ケガ人の救護と現場の安全確保
- 警察へ事故発生を報告
- 加害者と情報交換・証拠保全
- 警察の調査に協力
- 保険会社に連絡
- ケガがなくても念のため病院へ
それぞれの対応で気をつけるべきポイントを流れに沿って解説します。
(1)ケガ人の救護と現場の安全確保
交通事故が発生したら、まずはケガ人の救護と現場の安全確保を優先して行います。
ケガ人の救護方法
- ケガ人の意識を確認する
※身体を揺さぶらないよう軽く肩をたたきながら声をかける。 - 救急車を呼ぶ
- 必要に応じてケガ人の移動や応急処置をする
※首や頭に負担や衝撃を与えないよう注意する。
※意識がない、頭部や頸部から出血している、首の後ろに痛みやしびれがある場合などは動かさず、発煙筒などを使いその場で安全確保をする。
交通事故の現場は、できるだけ事故発生時のままにしておくことが望ましいです。
しかし、事故現場をそのままにしておくことで新たな事故が発生する危険がある場合は、事故車両を安全な場所へ移動させてください。
この際、もともとの事故現場の様子がわかるよう、あらかじめ写真や動画を撮っておいたり、事故車両があった位置に印をつけたりしておきましょう。
(2)警察へ事故発生を報告
交通事故を警察に連絡することは、道路交通法で定められた義務です。警察への報告を怠ると、懲役3ヵ月以下または5万円以下の罰金が科されます(道路交通法72条1項)。
相手に頼まれたからと事故発生を黙っていたり、自分は悪くないからと立ち去ったりすると、かえってあなたが当て逃げやひき逃げにあたるとされ、刑事罰が科せられることも十分ありえるのです。
また、警察に届け出なかった場合、損害賠償請求や保険金請求の際に必要な「交通事故証明書」を発行してもらえません。
事故直後に警察へ連絡を入れていなかったという場合は、今からでも良いので連絡を入れてください。
実際に警察へ事故を報告する時に伝えるべき内容については『交通事故後はまず警察に連絡が義務|伝える内容や連絡後の流れも解説』の記事が参考になります。あわせてご確認ください。
(3)加害者と情報交換・証拠保全
警察の到着を待つ間に加害者と情報交換・証拠保全をしましょう。加害者に確認しておくべきことは氏名や連絡先、保険会社の情報などです。
加害者に確認する情報
- 住所、氏名、電話番号やメールアドレスなどの連絡先
- 勤務先の名称、連絡先
- 加害者の自賠責保険や任意保険の会社、契約番号
単に情報を口頭で確認するだけではなく、メモを取って記録することが大事です。人によっては嘘をついていることもあるので、電話番号を聞くだけでなくその場で電話をかけ合うこともおすすめします。
また、相手に許可を取ったうえで運転免許証や車検証、自賠責保険証明書を撮影させてもらったり、名刺交換したりするのも有効といえます。
なお、加害者が他の人の車を借りていた場合は、車の所有者名、運転目的、通常の使用状況も確認するようにしましょう。
車の所有者に対しても、「運行供用者」として損害賠償請求できる可能性があるからです。詳しくは『運行供用者責任とは?わかりやすく具体例つきで解説』の記事で説明しているので、加害者が他人から車を借りて運転していた場合にはあわせてお読みください。
証拠保全のポイント
警察が到着するまでの間に、証拠の確保もおこないましょう。具体的には以下のようなことをしてください。
- 現場周辺の写真を撮る
- 加害者の発言を録音する
- 目撃者と連絡先を交換する
とくに雨や雪で現場の状況が変わりやすい場合は、ブレーキ痕や事故現場の視界の様子、雨や雪の降り具合などを写真や動画に残しておいてください。
加害者とのやりとりは、スマートフォンの録音機能やボイスレコーダーに記録しておくことも有効です。後から加害者が保身目的で主張を変えてきた場合に、当初の主張を証明する証拠となります。
目撃者には、連絡先を聞くとともに、証人として示談交渉や裁判に協力してもらう可能性があることを伝えられるとなお良いでしょう。
なお、ご自身の車両にドライブレコーダーを取り付けている場合には、データの保存を行ってください。機種によっては一定の期間が過ぎればデータが自動で上書きされてしまいます。
(4)警察の調査に協力
警察が事故現場に到着すると、そのまま実況見分が始められることがあります。実際に事故現場を見ながら事故時の様子を聞かれるので、答えてください。
ただし、ケガ人がいる場合には実況見分の実施が後日になることもあります。
実況見分の内容をまとめた「実況見分調書」は、後の示談交渉時に被害者側の主張を裏付ける大切な証拠資料です。
実況見分の詳しい内容や所要時間、実況見分調書の重要性などについては関連記事『実況見分の流れや注意点!調書内容や過失割合への影響、現場検証との違いも解説』が参考になりますので、事前に読んでみてください。
ポイント
警察による交通事故の扱いは人身事故と物損事故(物件事故)の2つに分かれます。
病院での診断書を提出すれば人身事故として受理される流れです。そして、実況見分調書は人身事故でないと作成してもらえません。実況見分調書は、後々の交渉で過失割合などのもめごとが起こった時の重要な証拠となるので、人身事故として届け出ておくことが賢明です。
(5)保険会社に連絡
交通事故が発生した旨を自身が加入している保険会社に連絡してください。
また、加害者にも加害者が加入している保険会社に連絡するように依頼しましょう。
保険約款には「交通事故が発生したら速やかに保険会社に連絡する」ことが記載されていることがほとんどです。
自身が加入している保険会社に連絡する際は、事故相手の補償に使える保険と自分のために使える保険をあわせて確認することをおすすめします。
とくに、弁護士費用特約の有無についても確認しておくと良いでしょう。
弁護士費用特約とは何か?
自身の保険にオプションとして「弁護士費用特約」がついていれば、法律相談料10万円、弁護士費用300万円までを、自身の保険会社が負担してくれる(補償内容は約款による)

弁護士費用特約を使うメリットや具体的な使い方については、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事で深掘り解説しています。あわせてご確認ください。
(6)ケガがなくても念のため病院へ
交通事故の直後の対処がひととおり終わったら、必ず病院で診察を受けてください。
ケガがないように思える場合や、病院に行く必要がないほど軽傷に思える場合も、念のため受診しておくことを強くおすすめします。
その理由は次の通りです。
- 交通事故の直後は興奮状態にあり、ケガや痛みに気づかないことがある
- 最初は軽傷でも、病院で適切な治療を受けないままだと徐々に症状が悪化することがある
- 交通事故から初診までに時間が空きすぎていると、事故とケガとの因果関係が曖昧になり、治療費や慰謝料といった補償を受けられない可能性がある
- 事故直後の検査結果が後々で必要となることがある
通院は、医師から治癒または症状固定と診断されるまで継続しましょう。
自己判断で治療をやめたり通院頻度を下げたりすると、慰謝料を含む示談金の減額につながるおそれがあります。
なお、整骨院で治療を受けたい場合は、事前に医師の承諾を得る必要があります。
医師の承諾なく整骨院に通っていると、施術費や慰謝料を請求できない場合があるので、事前に『交通事故で整骨院に通院する際の注意点』の記事も確認しておきましょう。
交通事故の治療費を支払うのは誰?
交通事故によるケガの治療費は、基本的に加害者側が負担します。
治療費が支払われる方法は、以下の2通りです。
- 加害者側が病院に直接治療費を支払う(被害者は病院窓口で支払いなし)
- 被害者が一旦治療費を立て替え、治療終了後に加害者側に請求する
加害者が任意保険に加入している場合、加害者側の任意保険会社が病院に直接治療費を支払うことが多いです。これを「任意一括対応」といいます。
加害者側の任意保険会社の方針で任意一括対応を拒否された場合や、加害者が任意保険に入っていない場合は、被害者が一旦治療費を立て替え、治療終了後に請求することになるでしょう。
任意一括対応の仕組みや、任意一括対応を拒否されるケースについては、『交通事故の任意一括対応とは?注意点や拒否・打ち切りへの対処法も解説』の記事をご確認ください。
ポイント
交通事故の治療にも健康保険が使えるので、被害者自身で治療費の負担をする場合は自己負担分を減らすためにも健康保険を利用しましょう。
交通事故で健康保険を使うための手続きや注意点については『交通事故で健康保険は使える|使えないケースや利用手続きを解説』の記事が参考になります。あわせてご確認ください。
交通事故を起こした場合の対応と注意点
交通事故を起こしたらすべき初期対応の中で、特に注意しておきたいポイントを解説します。
現場からは立ち去らない
警察への事故発生報告が義務であることは、初期対応の流れで解説した通りです。
たとえ人の死傷のない軽微な物損事故や単独事故であっても、事故現場から立ち去ってしまうと道路交通法違反になります。事故を起こしたら必ず警察に連絡してください。
事故を起こすと気が動転して冷静な判断がむずかしいかもしれませんが、だからこそ落ち着いて行動することが大切です。
事故現場で示談しない
交通事故における示談とは、事故の当事者双方が賠償金や条件などを話し合いで決めることです。話し合いに合意して一度でも示談が成立してしまうと、基本的に後からやり直すことはできません。
事故現場で示談は絶対にしないでください。
交通事故で受けた損害は、その場ですぐにわかりません。怪我をしていれば数日~数ヶ月の通院を経て治療が終了した時点で治療費の総額がわかります。事故から時間が経って痛みや何らかの症状を感じることもあるでしょう。車の修理が必要な場合も、修理工場で見積りを取ってからでないとわかりません。
事故現場で安易な示談をすると賠償金が高すぎたり低すぎたりして、損害に見合った賠償金を受け取れないリスクが生じるのです。
事故現場で示談すべきでないさらに詳細な理由や、相手から示談を持ちかけられた時の対処法については『交通事故の示談はその場でしてはいけない|リスク回避についても解説』の記事を参考にしてください。
交通事故の初期対応が終わったら弁護士相談
交通事故の初期対応が落ち着いたら、後の示談交渉を見据えて早めの弁護士相談をおすすめします。
通常、示談交渉の相手は、加害者側が加入する任意保険会社となるでしょう。保険会社は交渉に慣れた示談のプロです。支払う賠償金をできるだけおさえようと、低い金額しか保険会社は提示してきません。
弁護士が示談交渉を行えば、保険会社の提示額から被害者が本来受け取れるはずの正しい賠償金まで引き上げて増額できる可能性が高まります。

アトム法律事務所では、弁護士相談の予約受付を24時間365日対応中です。
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正しい金額の賠償金や、弁護士が介入することで実現できる増額見込みなどについて話せます。不当な賠償金で終わらないように、弁護士に一度見解を聞いておきましょう。




高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了