交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れも解説
この記事でわかること
交通事故にあった場合、警察への連絡・報告は道路交通法上の義務なので、必ず110番通報や事故発生の届け出をしましょう。
違反すると懲役や罰金刑が科される可能性がありますし、今後の保険金・賠償金請求でも不都合が生じてしまいます。
この記事では、まず交通事故が起こった後に警察に連絡・報告しないとどうなるのか、警察にはどんなことを伝えればいいのかについてまとめています。
記事の後半では警察に連絡した後にすべきことを解説しているので、警察への連絡が終わった後に落ち着いて読んでみてください。
交通事故後はまず警察に連絡と報告
まずは、交通事故後に警察へ連絡する際、どのようなことを伝えれば良いのかを解説します。
また、交通事故を警察に連絡することは義務です。連絡しなかった場合どうなるのかについても、見ていきましょう。
交通事故を警察に連絡する際、伝えるべき内容
交通事故が発生したら、ケガ人の救護や事故現場の安全確保をした後、110番通報をして警察に連絡しましょう。
交通事故を警察に連絡すると、基本的には警察側から以下の点を聞かれます。
- 交通事故の発生日時と場所
場所がよく分からない場合は、自動販売機などに貼られているステッカーや信号機、電柱の地名表示を確認してみてください。 - 交通事故による負傷者と死傷者の人数
- 負傷者の負傷の程度
- 損壊した物と、損壊の程度
- 交通事故の車両等の積載物
- 交通事故について講じた措置
負傷者がいる場合には、負傷者や事故現場の安全を確保したうえで、警察だけでなく救急車への通報もおこないましょう。
交通事故は警察への報告義務がある|報告しないとどうなる?
交通事故を警察に連絡・報告することは、道路交通法72条に定められた義務です。
小さな事故だとしても、事故相手から警察に連絡しないよう言われたとしても、必ず警察に交通事故の発生を報告しましょう。
警察への連絡・報告を怠ると、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処される可能性があります。
また、警察に事故の連絡・報告をしないと「交通事故証明書」や「実況見分調書」が作成されません。
その結果、損害賠償請求・保険金請求において不都合が生じる恐れもあります。
交通事故証明書とは?賠償請求にどう影響する?
交通事故証明書とは、交通事故の発生を証明する書類です。
警察に交通事故を届け出ると、作成されます。
交通事故証明書は、損害賠償請求や保険金請求の際に提出を求められることが多いです。
そのため、警察に交通事故を報告しておらず、交通事故証明書を提出できない場合は、スムーズに請求手続きが進まない恐れがあるのです。
交通事故証明書については、関連記事『交通事故証明書とは?もらい方と目的、後日取得の期限やコピーの可否』の記事もあわせてご覧ください。
実況見分調書とは?賠償請求にどう影響する?
実況見分調書とは、交通事故後に警察が行う「実況見分」の結果をまとめたものです。
事故当事者の立ち会いのもと、事故現場で実際に確認した事故状況などが記載されています。
この書類は、事故時の状況を示す証拠として重要です。
たとえば示談交渉では、被害者側と加害者側の過失の割合を示した「過失割合」を決めます。
この際に正しい事故状況がわからないと、被害者側の過失割合が不当に大きくなる恐れがあります。
被害者の損害賠償金は被害者の過失割合分減額されるので、この場合、受け取れる賠償金が不当に少なくなってしまうのです。
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交通事故を警察へ連絡・報告した後の流れを解説
交通事故を警察に連絡・報告したあとは、以下のことをおこないましょう。
- 警察の到着を待つ間に加害者と情報交換・証拠保全
- 警察到着後は実況見分・聞き取り捜査に協力
- 自分の保険会社に連絡
- 痛みがなくても病院へ行き、治療
- 示談交渉で損害賠償請求
特に、病院での治療までは速やかに進めていくことが重要です。詳しく見ていきましょう。
(1)警察の到着を待つ間に加害者と情報交換・証拠保全
警察への連絡が終わったら、警察が到着するまでの間に加害者との情報交換や証拠保全をしてください。
加害者に確認する情報
- 氏名、住所、電話番号、勤務先、加入している保険など
加害者の情報は口頭で確認するだけでなく、免許証や保険証書など公的な書類でも確認し、写真を撮っておくことがおすすめです。
証拠保全の方法
- 事故現場の写真を撮る
- ドライブレコーダーの映像を確認する
ドライブレコーダーを警察に提出することは、義務ではありません。
ドライブレコーダー提出でメリットが生じることもあれば、デメリットが生じることもあります。
映像を確認したら、関連記事『ドラレコは警察に提出すべき?過失割合への影響や証拠能力も解説』も参考に、提出を検討してみてください。
合わせて、巻き込み事故の危険性がある場合は車両を移動させる、発煙筒で後続車に注意を促すといった対応もしましょう。
なお、警察が到着するまでの間は警察の方から折り返し連絡があるかもしれないので、なるべく他の場所への電話は控えてください。
家族などに連絡をしたい場合は、メールなどを利用することがおすすめです。
また、高速道路上で交通事故が発生した場合には、後続車による二次災害の危険性が高いため、特に慎重な対応が必要になります。
詳しく知りたい方は『高速道路で事故にあった時の対処法|料金所付近の事故の過失割合は?』の記事をご覧ください。
(2)警察到着後は実況見分や聞き取り捜査に協力
警察が到着すると、事故処理のために実況見分や聞き取り捜査がおこなわれます。
捜査内容をまとめた書類は後の示談交渉でも重要になってくるので、しっかり協力しましょう。
なお、大きなケガをしていて速やかに受診する必要がある場合は、後日捜査がおこなわれることもあります。
実況見分とは
実況見分とは、警察が実際に事故現場を見ながら、以下のような内容を確認することです。
- 事故の日時と場所
- 事故車両の車両番号、損傷した部位、損傷の程度など
- 路面の状態や交通規制の有無といった事故現場の道路状況
- 事故当事者が相手を認識した場所
- ブレーキを操作した地点
実況見分は、基本的には人身事故の場合にのみおこなわれます。
任意ではありますが、事故当事者の立会いも求められるので、基本的には協力しましょう。所要時間は一般的に、数十分~2時間程度です。
実況見分が終わると、捜査の内容をまとめた「実況見分調書」が作成されます。
実況見分調書は示談交渉の際、事故時の状況を証明する重要な書類となるので、警察から何か聞かれたときは、冷静かつ正確に答えるようにしましょう。
実況見分捜査の詳しい内容や流れ、注意点は『実況見分の流れや注意点!聞かれる内容や過失割合への影響、現場検証との違い』の記事で説明しています。
聞き取り捜査とは
聞き取り捜査とは、警察署にて警察官が事故当事者に、交通事故に関することを聞き取る捜査です。人身事故であっても物損事故であっても、聞き取り捜査はおこなわれます。
主に聞かれる内容としては、以下の通りです。
- 事故状況の再確認
- 事故時の現場の見通しはどうだったか
- 自分や相手車両の走行速度はどれくらいだったか
- 信号は何色だったか
- 事故のどれくらい前に相手車両を認識し、危険を感じたか
- 車両に何か問題はなかったか
- 事故相手に対する処罰感情
聞き取り捜査では、当事者の主観的な認識についても聞かれ、その内容は「供述調書」という書類にまとめられます。
主張が二転三転したり、実況見分調書の内容と異なっていると信用を失ってしまうので、注意しましょう。
捜査協力時のポイント
交通事故について警察の捜査に協力する場合は、把握していることを正確かつ誠実に伝えることが大切です。
ただし、自分にとって不利益になる可能性がある情報まで積極的に供述する必要はありません。
示談交渉や裁判で不利になる可能性があるので、「自分にも非があったかもしれない」と思ったとしても、それを口に出す必要はないのです。
なお、実況見分調書や供述証書が作成されると、内容を確認したうえで署名を求められます。
自分の言ったことと食い違う内容が記載されている場合には、うやむやにせずにきちんと主張しましょう。
(3)自身の保険会社に連絡
警察対応がひと段落したら、自身の保険会社に連絡を入れてください。
今後の治療や車の修理などで使える保険、これからの対応の流れなどについて案内してもらえる可能性があります。
また、保険会社には示談交渉を代理してもらったり、加害者から請求された損害賠償金を支払ってもらったりする場合もあるので、保険を使うつもりがなくても連絡を入れておきましょう。
(4)痛みがなくても病院へ行き、治療
警察の事故処理などが終わったら、ケガがないように思えても病院を受診しましょう。
事故直後、特にむちうちの場合には痛みを感じないことも多いです。
しかし、事故から数日後に痛みを感じて病院に行っても、事故とケガとの関連性が曖昧になり、損害賠償請求できない可能性があります。
そのため、交通事故にあったのであれば、痛みの有無にかかわらず病院を受診してください。
- 交通事故の治療費はどう支払う?:交通事故被害者の治療費は誰が支払う?立て替えは健康保険を使う!過失割合との関係は?
- 後から痛みが出た場合は必読:事故で後から痛み…因果関係が疑われないためには?
後遺症が残った場合は後遺障害認定も必要
治療の結果、後遺症が残った場合は、「後遺障害等級」の認定を受けなければ後遺障害関連の慰謝料・賠償金がもらえません。
詳しくは『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』をご覧ください。
(5)示談交渉で損害賠償請求
ケガが完治した段階、あるいは後遺障害認定の結果が出た段階で、示談交渉が始められるようになります。
基本的には加害者側から示談案を提示されて交渉が始まります。加害者側の提示内容は正しくないことも多いので、被害者側でも慰謝料や損害賠償金、過失割合を確認したうえで示談交渉に臨むことが重要です。
示談交渉については、『交通事故の示談の流れと手順!示談交渉が進まない時の対処法』の記事が参考になります。
警察への交通事故の報告義務に関するよくある疑問
交通事故を警察に連絡・報告する際によくある疑問として、以下の3つにお答えします。
- 駐車場の事故でも警察に連絡・報告すべき?
- 交通事故後、警察に連絡・報告しなかった場合はどうすべき?
- 警察に連絡・報告したあとの注意点は?
駐車場の事故でも警察への報告義務はある?
私有地である駐車場の事故でも、スーパーやレジャー施設、コインパーキングなど不特定多数の人が出入りする駐車場なら、警察への報告義務があります。
一方、月極駐車場や個人の駐車場などは不特定多数の人による出入りがない私有地なので、警察への連絡・報告は義務ではありません。
ただし、当て逃げ・ひき逃げの場合は加害者特定の捜査がおこなわれる可能性もあるので、警察に連絡・報告の上、届け出をおこなうことがおすすめです。
当て逃げならこちらも要確認:駐車場での当て逃げの対処法
交通事故後、警察に連絡・報告しなかった場合はどうすべき?
交通事故後、警察に連絡・報告しないまま帰ってしまった場合、後日になってもよいので警察に報告のうえ、届け出てください。
警察への届け出には、いつまでにすべきという明確な決まりはありません。
しかし、たとえば人身事故の場合、事故から10日以上経つとケガと事故との関連性が曖昧になります。
診断書を提示しても警察に事故の届け出を受理してもらえない可能性があるので、早めに警察へ届け出ましょう。
警察に連絡・報告せずに示談で済ませて良い?
もし、事故の相手方から「示談金として○○円支払うので警察に連絡しないでください」と言われたとしても、応じてはいけません。
事故発生直後の時点では正確な示談金額はわからないからです。
口頭であっても示談に応じてしまうと、あとから「もっと高額な賠償請求ができたはず」と判明しても、原則として再交渉はできません。
その場で示談することで後々大きな不利益を受ける恐れがある以上、警察への連絡・報告を行い、正確な示談金額が判明してから示談交渉をすべきでしょう。
詳しくは『示談後、撤回や追加請求は可能?後遺障害があとから発覚したら?』をご覧ください。
また、示談交渉を行う場合には、事前に専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
アトム法律事務所では、無料電話・LINE相談を実施しています。
警察に連絡・報告後の流れについては弁護士に相談を
弁護士に相談・依頼をするメリット
弁護士には、示談交渉の代理や慰謝料・賠償金の計算以外にも、交通事故後の流れについて幅広い相談が可能です。
例えば以下のような質問も可能であり、法律相談で疑問や不安が解消すれば、依頼まで進む必要はありません。
- 示談交渉までの流れについて詳しく知りたい
- 治療期間に関して加害者側から言われたことに納得できず、どうしたら良いかわからない
また、依頼まで進めば示談交渉の代理のみならず以下のことも一任できます。
- 後遺障害認定の手続き・対策
- 加害者側からの治療費打ち切りへの対応
今後の流れの中で少しでも疑問に思う点があれば、お気軽に弁護士にご相談ください。
弁護士へ相談・依頼することで生じるメリットを詳しく知りたいか方は『交通事故の解決は弁護士に頼むべき?大げさではない理由|軽微な事故でも必見』の記事をご確認ください。
弁護士費用特約を利用すれば費用負担も気にならない
弁護士に相談・依頼をおこなう際には弁護士に支払う費用が気になる方は多いでしょう。
しかし、弁護士費用特約を利用すれば、自己負担なく弁護士への相談や依頼をおこなえる可能性があります。
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や依頼により生じる費用を保険会社に負担してもらえるというものです。
負担の限度額は基本的に相談料が10万円、依頼による費用が300万円となっており、多くのケースで限度額内に収まるため、自己負担なく弁護士への相談・依頼をおこなえます。
弁護士に相談・依頼する際には、弁護士費用特約を利用できるのかご確認ください。
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アトム法律事務所では、交通事故の被害者を対象とした無料相談をおこなっています。
相談料を気にすることなく、交通事故案件の経験が豊富な弁護士に相談することがで可能です。
また、その後ご依頼に進んだ場合でも、初期費用である着手金は原則として無料になっております。
そのため、弁護士費用特約が利用できなくとも、金銭面について気にすることなく相談や依頼を行うことができるのです。
相談予約の窓口は24時間対応のため、ぜひお気軽にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了