後遺障害申請は被害者請求と弁護士依頼が正解|必要書類も紹介

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後遺障害申請は被害者請求と弁護士依頼

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

後遺障害認定における被害者請求とは、加害者側の自賠責保険会社を介し、被害者自身で後遺障害認定の申請をする方法のことです。

被害者請求を行うときは、被害者自身で後遺障害診断書や診療報酬明細書といった書類を集める必要があります。手間がかかる一方で、適切な後遺障害等級の認定を受けやすいというメリットがあります。

交通事故の被害者が示談交渉をしたり、損害賠償金を請求したりする相手は、基本的に加害者側の任意保険会社です。そのため流れで相手の任意保険会社に任せるならば事前認定という方法になります。「自分の場合はどちらの方法が適しているのか」と悩んでしまうでしょう。

この記事では、被害者請求の流れや必要書類、もうひとつの申請手続き「事前認定」との比較を解説しています。後遺障害の申請を弁護士に依頼するメリットや実例も紹介しているため、ぜひ最後までお目通しください。

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岡野武志弁護士

後遺障害認定を被害者請求で申請する流れ

後遺障害認定における被害者請求とは何か|事前認定との違い

後遺障害に関する慰謝料・損害賠償金を自賠責保険会社に請求する方法は、自賠責保険会社に直接請求する被害者請求、相手の任意保険会社を介する事前認定(加害者請求)の2通りがあり、被害者が自由に選択できます。

被害者請求と事前認定の大きな違いは「誰が必要書類を主に用意するのか」「どこに申請書類を提出するか」の2点です。

被害者請求と事前認定の違い

被害者請求事前認定
誰が準備するか被害者加害者の任意保険会社
どこに提出するか加害者の自賠責保険会社加害者の任意保険会社

被害者請求は「自賠責保険分の慰謝料・損害賠償金を、加害者側の自賠責保険会社に直接請求する方法」で、16条請求ともいわれる被害者が自由に行使できる法的権利です。

後遺障害認定を被害者請求で申請するということは、被害者自身が主体的に後遺障害申請を行うものと考えてください。

つづいて後遺障害認定の申請から等級通知・保険金の獲得までの流れをみていきましょう。

被害者請求の流れ|被害者自身が自賠責保険会社へ申請

後遺障害認定を被害者請求で申請する流れは、以下のとおりです。

  1. 症状固定の診断を受ける
  2. 審査に必要な書類を用意する
  3. 必要書類を加害者側の自賠責保険会社に送付し、審査機関に提出してもらう
  4. 審査結果は加害者側の自賠責保険会社を介して通知される
被害者請求の流れ

被害者請求とは本来、「自賠責保険分の慰謝料・損害賠償金を加害者側の自賠責保険会社に直接請求する方法」のことです。被害者請求により後遺障害に関する慰謝料・損害賠償金を請求する過程で、後遺障害認定が行われると考えてください。

そのため、後遺障害認定された旨の結果通知を受ける際に、同時に自賠責保険から後遺障害分の慰謝料・損害賠償金を受け取ることになります。つまり、示談成立より前に自賠責保険から保険金を受けとることが可能です。

補足

「傷害(けが)」の慰謝料や治療費、休業損害なども、被害者請求によって請求可能です。相手方の保険会社との示談成立より前に、傷害部分の保険金を請求したい方は『交通事故の被害者請求とは?メリットや請求方法、必要書類を解説』の記事も参考にしてみてください。

それでは、後遺障害認定に関する被害者請求の方法についてもっと詳しく見ていきましょう。

(1)症状固定の診断を受ける

症状固定とは、これ以上治療しても症状の改善が見込めないと判断された状態のことです。なお、症状固定の時期に関しては、次のような注意点があります。

  • 症状固定までの治療期間が半年以下の場合は、後遺障害に認定されにくい。
    (指の切断など、治療期間に関わらず明らかに後遺症が残っている状態を除く。)
  • 症状固定は原則として医師が判断する。
    加害者側の保険会社から症状固定の催促があっても応じるべきではない。

医師により症状固定と判断されたら、残った後遺症について後遺障害等級認定の手続きをはじめていくことになります。

加害者側から症状固定や治療の終了を催促されても、被害者自身で判断をするのは避けましょう。症状固定の判断は医師の見解が尊重されます。症状固定とは何かをもっと詳しく知りたい方は『症状固定とは?タイミングや症状固定後の流れ、誰が決めるかを解説』の記事も参考にしてください。

(2)審査に必要な書類を用意する

症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定の審査機関に提出する書類を用意します。
書類の集め方は以下の通りです。

  1. 加害者側の自賠責保険会社から請求セットを取り寄せる。
  2. 請求セットの各書類を完成させる。
    ※被害者自身で記入するもの、担当医や病院などに記入を依頼するものがある。
  3. 請求セットに含まれない書類を各所から取り寄せる。

加害者側の自賠責保険会社名は「交通事故証明書」に記載されています。加害者側の任意保険会社に依頼すれば交通事故証明書を手配してくれるので、手間をかけずに準備できるでしょう。また、ご自身で取り付ける方法もあります。

被害者請求の必要書類を集めたり、初めて見る書類を作成することは非常に手間がかかるので、弁護士に任せることも検討しましょう
弁護士に任せれば、被害者自身の手間が省けるだけでなく、審査の実情や過去の事例をもとにした有効な審査対策が可能になり、納得のいく審査結果を得やすくなります。

(3)必要書類を加害者側の自賠責保険会社に提出する

必要書類をすべて用意できたら、加害者側の自賠責保険会社に提出しましょう。提出後、必要書類は自賠責保険会社から審査機関(損害保険料率算出機構)に渡り、後遺障害認定の審査が行われます。

ポイント

審査機関から、審査に必要な書類や画像データ、レントゲン写真などの追加提出を求められる場合もあります。そうして提出依頼を受けた場合には、適正な後遺障害等級認定を受けるためにも協力すべきでしょう。原則審査機関が準備費用を負担してくれるので、依頼の書面をよく読んで対応してください。

(4)審査結果が通知される

後遺障害認定の審査が終わると加害者側の自賠責保険会社を介して結果が通知されます。そして、ほぼ同時に自賠責保険分の後遺障害慰謝料が振り込まれる流れです。

なお、自賠責保険分の金額はあくまで最低限のもので上限額があり、被害者が受け取れる本来の金額より大幅に低い水準にとどまっています。必要最低額でしかないため、不足部分は加害者側の任意保険会社と示談交渉して請求していくことになります。

自賠責保険分の金額がいくらか知りたい方は、『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?』の記事をご覧ください。

結果に納得できない時は再審査などが可能

後遺障害申請をしたものの非該当と認定されてしまったり、認定された等級が低かったりして納得がいかない場合、以下のような方法で認定結果を争うことができます。

  • 後遺障害の異議申立て
  • 自賠責保険・共済紛争処理機構への申請
  • 民事裁判

各方法の詳しい内容や流れについては『後遺障害の異議申し立てを成功させる方法|納得する等級認定を得よう』をご覧ください。

被害者請求の期限|症状固定の翌日から原則3年

自賠責保険への被害者請求の期限は、症状固定の翌日から3年です。3年経過すると請求権を失い、被害者請求ができません。なお、事故の発生日が2010年3月31日以前の場合はさらに短く、症状固定から2年で時効となります。

被害者請求を検討している場合は、上記の期間内に手続きを行いましょう。期限を超えてしまいそうな場合は、自賠責保険会社に時効中断申請書を提出すれば時効期間を中断できます。

被害者請求の必要書類|作成時のポイントと書類一覧

後遺障害認定を被害者請求でおこなうために必要な書類は、以下のとおりです。

(1)自賠責保険から取り寄せる請求セットに含まれるもの

書類作成者
支払請求書被害者
事故発生状況報告書被害者
人身事故証明書入手不能理由書
※物損事故として届け出ている場合
原則加害者
診断書担当医
後遺障害診断書担当医
診療報酬明細書医療機関
通院交通費明細書被害者
施術証明書・施術費明細書
※整骨院に通った場合
医療機関
委任状
※申請を弁護士など第三者に任せる場合
委任者
看護料領収書・付添看護自認書
※看護・介護が生じた場合
看護・付添人
休業損害証明書
※事故が理由で休業した日がある場合
勤務先

ポイント

第三者に作成してもらう書類は、相手に書式を渡して必要事項を記入してもらいましょう。

後遺障害診断書は、どの自賠責保険でも同じ書式が使われます。
請求セットが届くより前に担当医に作成を頼んでおきたい場合は、インターネット上でダウンロードするとよいでしょう。以下に書式を用意したので、ご活用ください。

(2)その他の必要書類

書類作成者
交通事故証明書自動車運転安全センター
被害者(請求者)の印鑑証明書市町村
委任者の印鑑証明書
※申請を弁護士など第三者に任せる場合
市町村
住民票または戸籍抄本
※申請者が未成年の場合や主婦として休業損害を請求する場合
市町村
後遺症を詳しく伝える追加資料
※必要に応じて
医療機関
自動車検査証
標識交付証明書または軽自動車届出済証
※原動機付自転車または軽自動車(二輪)、車検対象車でない場合
加害者
写しも可
確定申告書や所得証明書
※治療のため休業した日がある場合
被害者・勤務先
確定申告書は写しも可

書類を作成する際のポイント

被害者請求で提出する書類のうち、後遺障害診断書と後遺症を詳しく伝える追加資料は、審査結果に影響する重要なものです。

後遺障害認定の審査は基本的に提出書類のみを見て行われます。よって、後遺障害診断書や追加書類を通して、事故と後遺症の因果関係を明らかにできるよう、以下の点をアピールする必要があるのです。

  • 後遺症の存在や程度が医学的・客観的に証明できるものであること
  • 交通事故と後遺症との関連性が明らかであること(因果関係の証明)
  • 受傷後、同じ症状が一貫して続いていること
  • 後遺症の症状が後遺障害等級の認定基準を満たしていること

後遺障害診断書を作成するのは医師です。追加資料も、基本的にはレントゲン写真やMRI画像、その他医師の指示のもと受けた検査の結果を添付することになります。

後遺障害診断書を作成するのは医師ですが、医師は治療の専門家です。そのため、よほど交通事故の被害者の治療経験が豊富な医師でない限り、後遺障害認定について詳しく把握していない可能性が高いといえます。

審査対策として有効な書類を作るために必要な以下の知識については、医師より弁護士の方が詳しいことが多いのです。

  • 後遺障害等級の認定基準
    • 公表されている認定基準は表現が難しく理解しにくいことが多い
    • 複数の後遺障害が残存していれば等級が繰り上がるなどのルールがある
    • 弁護士なら過去の認定事例にも精通している
  • 後遺障害等級の認定率を上げる診断書の書き方
    • 今後の見通しなど、書き方が不適切だと等級認定が厳しくなる項目もある
  • 適切な追加資料
    • 医学的視点で見て必要な検査と、後遺障害認定対策で必要な検査は違うこともある
    • 検査結果以外にも、後遺症や目指す等級に応じて追加資料が必要になることもある

よって、被害者請求の書類作成は弁護士にアドバイスを求め、検査や診断書の記載については医師にも協力してもらうことが大切です。

▼効果的な審査対策をするためには、弁護士への依頼がベストです。弁護士費用特約があれば弁護士費用は実質無料。

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岡野武志弁護士

被害者請求の審査期間|1ヶ月~2ヶ月が目安

後遺障害の被害者請求の審査期間は、1ヶ月~2ヶ月が目安です。

申請が審査機関で受付されてから調査が完了し、認定結果が出るまでの期間については、以下のとおり損害保険料率算出機構による統計データが公表されています。

自賠責損害調査事務所における後遺障害事案の損害調査所要日数

期間割合
30日以内73.8%
31日~60日13.7%
61日~90日6.7%
91日以上5.8%

参考:損害保険料率算出機構「2022年度 自動車保険の概況」より

表にまとめた統計結果から、およそ85%の事案では、2ヶ月以内に調査が完了することがわかります。

ただし、重い後遺障害や神経系統・精神に関する後遺障害は、調査期間が長くなる傾向があります。

補足

高次脳機能障害は、後遺障害の審査結果が出るまで相当時間がかかる後遺障害のひとつです。自賠責損害調査事務所の上部機関で詳しく調査する事案であり、先の統計結果には含まれていません。

高次脳機能で後遺障害認定を受けるためには特有の対策が必要です。
交通事故で高次脳機能障害を負った場合は、『交通事故で高次脳機能障害|症状や今後の対応は?慰謝料や後遺障害認定もわかる』も合わせてご確認ください。

被害者請求と事前認定の比較|どちらが後遺障害認定に向いている?

被害者請求のメリット

被害者請求のメリットは以下のとおりです。

メリット

  • 示談成立前に示談金の一部を受け取れる
    • 被害者請求で後遺障害認定を受けると、結果通知と同時期に自賠責保険分の後遺障害慰謝料が振り込まれる
    • 後遺障害分以外の費目も、必要書類を提出すれば自賠責保険金を示談に先行して受け取れる(16条請求)
  • 追加資料の添付ができるため、認定率を上げやすい
    • 必要に応じて追加資料を添付できるため、審査機関に後遺症の存在・程度を詳しく伝えやすい
  • 後遺障害認定の申請手続きが速やかに完了しやすい
    • すべての書類をそろえたうえで加害者側の自賠責保険会社に提出するので、書類が審査機関に速やかに届きやすい

被害者請求によって後遺障害等級認定を受けることができれば、その分の自賠責保険分の賠償金は示談の成立前に振り込んでもらえます。当座の生活費にもなることで、手元に金銭がないために加害者側との示談交渉で妥協して早期にお金を受けるといった事態を防ぐことができるのです。

被害者請求のデメリット

被害者請求のデメリットは以下の通りです。

デメリット

  • 書類の用意に手間がかかる
  • 書類を取得する際に生じる費用を負担する必要がある
  • 有効な審査対策には専門知識が必要

被害者請求は、被害者自身で書類を集める必要があります。手間がかかるだけでなく、書類収集にかかった費用は負担しなくてはなりません。また、どういった資料や検査結果を提出するべきかも判断が難しいでしょう。

こうした「書類用意の手間」や「専門知識が必要」といったデメリットは弁護士依頼で解消します。弁護士に依頼して被害者請求をおこなえば、被害者請求のデメリットはほぼなくなるといえるでしょう。

事前認定のメリットは限定的である

事前認定では、加害者側の任意保険会社がほとんどの必要書類を準備します。被害者は「後遺障害診断書」を医師に書いてもらい、加害者側の任意保険会社に送るだけで手続きを完結できるのです。

事前認定の具体的な流れを見てみましょう。

  1. 症状固定の診断を受ける
  2. 医師に後遺障害診断書を作成してもらう
  3. 後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出すると、残りの書類は任意保険会社が用意して、審査機関に提出してくれる
  4. 審査結果が出れば、加害者側の任意保険会社を介して被害者に通知される
事前認定の流れ

事前認定のメリットやデメリットは以下のとおりです。

メリット

  • 後遺障害診断書以外の書類を加害者側の任意保険会社が用意してくれるので、手間がかからない

デメリット

  • 後遺障害認定の審査対策が不十分になりがち
    • 追加資料の添付が難しいため、後遺障害診断書のみで審査対策をする必要がある
  • 後遺障害認定の申請手続き完了が遅くなることがある
    • 加害者側の任意保険会社側での書類の用意が遅れると、審査機関に書類が届くのが遅くなる
  • 後遺障害認定が終わっても、示談成立まで慰謝料・賠償金が支払われない
    • 自賠責分も任意保険分もすべて示談成立後に、加害者側の任意保険会社から支払われる

保険会社の担当者は多くの事故を担当しているため、他の事故との兼ね合いから、事前認定で保険会社に最低限の内容・種類の書類だけを用意して審査請求を行うことがあり、請求自体が遅れることもあります。

よって、納得いく等級に認定される可能性が被害者請求よりも低くなりますし、結果が明らかになるまでの期間が長期化する恐れがあるのです。

被害者請求と事前認定のどちらを選ぶべき?ケース別に解説

被害者請求と事前認定にはそれぞれメリット・デメリットがあります。後遺障害認定において、被害者申請と事前認定のどちらを選ぶべきかは、被害者の状況によっても異なります。

基本的には以下のように考えるとよいでしょう。

  • 被害者請求の方が適切なケース
    • 最低限の書類では後遺症の症状・程度・存在を十分に証明できない場合
    • 一度の審査で納得のいく結果を得たい場合
    • 早くまとまったお金を受け取りたい場合
    • 加害者側が支払いを拒絶しているなど事前認定が行えない場合
  • 事前認定の方が適切なケース
    • 指や四肢の切断など、最低限の書類でも後遺症の症状・程度・存在が十分に伝わる場合
    • 弁護士を立てたくないが、申請準備に手間もかけたくない場合
    • 納得いかない結果になった場合には再審査をしてもよいと考えている場合

特に、むちうちを原因とする神経症状での後遺障害認定は、客観的な証明が難しいことが多いので、被害者請求により証拠書類を万全にするべきです

もっとも、適切な後遺障害等級への認定されやすさ、申請準備の手間、提出書類の透明性を考えれば、どのようなケースでも弁護士を立てたうえで被害者請求をすることがベストと言えます。

適切な後遺障害等級を得なければ、受け取れる慰謝料・損害賠償金の金額が減ってしまいます。加害者側から適切な金額を受け取るためにも、どの方法で後遺障害認定を受けるかは慎重に検討するとよいでしょう。

後遺障害慰謝料は被害者請求だけでは不十分?弁護士の有無で比較

むちうちで後遺障害の申請をするケースを例に、後遺障害認定の結果がどのくらい慰謝料に影響するか見てみましょう。

むちうちの場合、後遺障害12級または後遺障害14級に該当する可能性があります。

後遺障害12級に認定されると、まずは自賠責保険における後遺障害部分の支払限度額224万円の範囲で、認められた金額を受けとります。後遺障害14級の場合は支払限度額が75万円です。

自賠責保険会社の支払限度額の比較

後遺障害等級自賠責保険金の支払限度額
12級224万円
14級75万円

自賠責保険金の支払限度額には、慰謝料や逸失利益といった「後遺障害に関するすべてのお金」が含まれています。後遺障害慰謝料だけではなく、すべて含むことに注意しましょう。

自賠責保険金を受け取った後に大事なことは、相手方の任意保険会社との示談交渉で不足分を請求することです。このとき、相手方の任意保険会社は自社基準で計算した金額を提示してきますが、自賠責保険の基準と大差ないものが多く、示談交渉での増額は期待できない可能性があります。

同じ後遺障害等級でも弁護士なら増額が期待できる

弁護士であれば、自賠責保険金を受け取った後の示談交渉において、弁護士基準で交渉します。そのため、同じ後遺障害等級でも弁護士を立てると金額が大きく変わるのです

後遺障害に認定された場合に請求できる「後遺障害慰謝料」は、後遺障害等級ごとに目安の金額が決まっています。弁護士を立てた場合に得られる後遺障害慰謝料の相場を見てみましょう。

後遺障害12級と14級|後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級後遺障害慰謝料の相場
12級290万円
14級110万円

※金額は弁護士基準

後遺障害等級12級と14級のどちらに認定されるかによって、慰謝料の金額は180万円も異なります。弁護士基準の後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険会社の保険金を上回っていることがわかるでしょう。さらには逸失利益も別途請求するので、自賠責保険金や任意保険会社の自社基準では不十分だということがわかります。

よって、被害者請求によって適切な等級に認定される確率を少しでも上げること、そして弁護士を立てることが増額においても非常に重要になるのです。

弁護士に依頼するメリットについて、続けて詳しく解説します。

後遺障害認定の被害者請求を弁護士に頼むメリット

後遺障害認定の被害者請求の手続きは、弁護士に頼むこともできます。
弁護士に手続きを依頼することで得られるメリットは、次のとおりです。

  • 手続きを任せて治療に専念できる
  • 適切な後遺障害等級に認定される可能性が高くなる
  • 被害者請求後の示談金が増額される

それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。

(1)手続きを弁護士に任せて治療に専念できる

被害者請求は、準備に手間も時間もかかります。

各所から書類を取り寄せ、被害者自身で書類に記入をしたり、さまざまな人に記入を頼んだりしなければならないため、仕事やリハビリと並行して準備することに負担を感じる方も少なくありません

被害者請求の負担の大きさから事前認定を選ぶ被害者の方もいますが、事前認定では適切な後遺障害等級を得られない可能性もあります。

弁護士に依頼すれば、大量の必要書類の収集・作成や、関係者への作成依頼を被害者に代わって行います

被害者は煩雑な手続きの負担から解放され、仕事やリハビリに専念できるようになるのです。

また、被害者請求に関する経験が豊富な弁護士であれば、書類の作成・収集方法を熟知しているため、速やかに申請を完了させられる点もメリットとなるでしょう。

(2)適切な後遺障害等級に認定される可能性が高くなる

後遺障害等級は、原則として提出された書類から判断されます。同じ症状でも、提出した書類の書き方や内容によって、認定結果が変わる可能性があるのです。

被害者請求は提出書類の内容をブラッシュアップしたり追加書類を添付したりできる点がメリットです。しかし、適切な書き方や記載すべき内容についての知識がないと、メリットを十分に活かすことができません。

この点、後遺障害の知識が豊富な弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書の内容に不備がないかどうかをチェックし、認定に有利に働く追加資料を過不足なく添付してくれるでしょう

その結果、実際の症状に見合った適切な等級に認定される可能性が高くなるのです。

先述のとおり、後遺障害等級は受け取れる慰謝料などの金額に大きく影響します。適切な後遺障害等級の認定に不安であれば、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。

(3)被害者請求後も示談金の増額といったメリットがある

被害者請求を弁護士に依頼する場合、通常はその後の示談交渉も依頼することになります。

示談交渉で示談金の増額が期待できる、保険会社のやり取りを任せられる、スムーズな示談成立を目指せるといった点も、弁護士に依頼するメリットです。

示談交渉の際、加害者側の任意保険会社は、自社基準(任意保険基準)に基づく低額な示談金を提示してきます。

しかし、弁護士に示談交渉を依頼すると、訴訟を起こした場合に認められる適正な金額(弁護士基準)を主張してもらえます。

その結果、後遺障害に関する費目はもちろん、その他の費目についても増額が期待でき、最終的に受け取れる示談金が大幅に増額される可能性が高くなるのです。

裁判で認められる適正な金額の弁護士基準による示談交渉で示談金が大幅に増額する

交通事故で弁護士に依頼するメリットについては『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』の記事でまとめています。ぜひあわせてご一読ください。

補足

後遺障害認定を受けることで請求できる後遺障害部分の損害賠償のうち、逸失利益には注意しましょう。逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下したり、完全に働けなくなったりして、「失われた本来受領するはずの収入」をいいます。

後遺障害等級に加えて被害者の年収や年齢など複数の要因で算定されるため、逸失利益の計算式は少々複雑です。(逸失利益の計算の仕組みを理解しておきたい方は、関連記事『逸失利益の計算をわかりやすく解説』をご確認ください。)

また、相手方の任意保険会社が低く見積もってくることも多く、気づかないうちに低額な逸失利益を受け入れることになりかねません

弁護士基準における各種慰謝料・逸失利益の相場は、以下の計算機からでも確認できるので、利用してみてください。そして、不明点があれば示談成立前に弁護士に相談して、適正な金額を見積もってもらいましょう。

デメリットの弁護士費用は保険でまかなえる

ここまで解説してきたとおり、弁護士に依頼すると多くのメリットを得られますが、「弁護士費用がかかる」といったデメリットも発生します。

弁護士費用を理由に弁護士への相談・依頼を躊躇している場合は、弁護士費用特約への加入の有無を確認してみてください。

弁護士費用特約とは、弁護士費用を自身の保険会社に支払ってもらえる保険のオプションのことです。具体的な補償内容は保険によって異なりますが、多くの場合、300万円を上限として、弁護士費用を保険会社が負担してくれます。

最終的な示談金が数千万円にのぼらない限り、弁護士費用が300万円を超えることはほとんどありません。よって、弁護士費用特約を使えば、実質無料で弁護士に依頼することも可能なのです。

弁護士費用特約があれば、限度額300万円まで弁護士費用を保険会社が負担

自身や家族の自動車保険、火災保険、クレジットカードなどに弁護士費用特約が付帯されていれば、利用できる可能性が高いです。
なお、弁護士費用特約を使っても基本的に保険料は上がりません。

弁護士費用特約についてさらに詳しくは、関連記事『交通事故の弁護士費用特約|使い方や補償対象になる家族、加入のメリットもわかる』をご確認ください。

特約を使えなくても弁護士を立てた方がお得なことも多い

残念ながら弁護士費用特約が使えない方でも、後遺障害等級に認定される可能性が高い方は、弁護士に依頼した方が金銭的なメリットが得られる可能性が高いです。

後遺障害等級を獲得すると後遺障害慰謝料や逸失利益などを受けとることができますが、それらの金額は何百万円、何千万円、さらに高くなると何億円という単位にもなります。

弁護士費用を差し引いても、弁護士に依頼して適切な後遺障害等級を獲得し、示談金を増額させた方が、最終的に得られる金額が増える可能性が高くなるのです。

弁護士費用特約がなくても、弁護士に依頼することでどのくらい示談金が増えるのか一度確認しておきましょう。

アトム法律事務所では、後遺障害等級認定の申請を検討されている被害者の方を対象に無料相談を実施しています。

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岡野武志弁護士

後遺障害に関する弁護士の解決事例

(1)右足踵骨折などで後遺障害14級を獲得した事例

ここからは、実際にアトム法律事務所が受任した、後遺障害に関する弁護士の解決事例を紹介していきます。

事例の概要

傷病名右足踵骨折、首の痛み
後遺障害等級14級
示談金295万円

こちらの事例は、被害者の方からLINE無料相談で「事前認定と被害者請求のどちらを選ぶべきか」「どのように申請すればいいのか」といった悩みを弁護士にご相談いただいたことが、受任のきっかけになったものです。

ご依頼いただいたあとは、弁護士が被害者請求による後遺障害認定の申請を進め、14級に認定されました。

最終的に、弁護活動の開始から4か月で、示談金295万円獲得となりました。

(2)むちうちなどで後遺障害14級を獲得した事例

事例の概要

傷病名頚椎捻挫、腰の打撲
後遺障害等級14級
示談金356万円

こちらの事例は、後遺障害等級に認定されていない状態で、示談金として当初62万円が提示されていたものです。適正な金額はいくらなのか弁護士にご相談いただき、受任することとなりました。

弁護士が詳しく事故後の状況を調査したところ、後遺障害等級に認定される見込みが十分あることがわかりました。弁護士が後遺障害認定の申請にあたって適切なサポートを行い、14級に認定されたものです。

結果として示談金は356万円となり、当初提示されていた金額の約5.7倍となりました。

(3)弁護士による再申請で後遺障害12級を獲得した事例

事例の概要

傷病名肩腱断裂、むちうち
後遺障害等級併合12級
示談金1090万円

こちらの事例では、当初に後遺障害認定の申請をされた際は、自賠責保険会社から「症状固定は時期尚早である」との見解を伝えられていました。後遺障害診断書に、手術で可動域が改善する可能性が示唆されていたためです。

しかし、被害者の方は手術を受ける意向はありませんでした。弁護士が「手術を受けるか否かは個人の自己決定の問題である」といった内容の意見書を添えて再申請を行ったところ、無事に受け付けられ、併合12級に認定されました。

その結果、最終的に1000万円を超える示談金を獲得することも叶ったのです。

【まとめ】後遺障害認定は被害者請求と弁護士依頼!

後遺障害認定で妥当な結果を得て、適切な金額の後遺障害慰謝料・逸失利益を獲得するためには、被害者請求がおすすめです。

しかし、被害者請求には「準備に手間がかかる」「後遺障害認定に関する知識がなければメリットを活かしきれない」という課題もあります。

弁護士に被害者請求の手続きを任せれば、上記のような課題を克服できます。
また、示談交渉にて後遺障害分以外の費目も増額させられる可能性もあるでしょう。

被害者請求のアドバイスを聞くだけなら相談でも可能です。

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岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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