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更新日:
新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
自賠責保険から支払われる補償はいくらなのだろうか?
交通事故に何度もあうことは珍しく、慰謝料がどれくらいになるのか見当がつかない方がほとんどでしょう。
実は、自賠責保険から支払われる慰謝料は最低限の水準となっています。
これから自賠責保険の慰謝料計算の仕組みと相場を解説していきます。
慰謝料を増額するための方法も解説するので、知識を身に着け、交通事故の賠償問題で損をしないようにしましょう。
目次
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自賠責保険とは、自動車事故の被害者を救済するための保険制度です。
「自動車損害賠償保障法」(昭和三十年法律第九十七号)に基づいて、自動車の運転者は、自賠責保険への加入が義務付けられています。義務加入であることから、自賠責保険は強制保険と呼ばれることもあります。
自賠責保険は、交通事故被害者への補償を目的としています。 自動車損害賠償法第一条には、自賠責保険の目的が定められています。
この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。
自動車損害賠償法 第一条
自賠責保険の具体的な補償範囲は、「自動車損害賠償保障法施行令(昭和三十年政令第二百八十六号)」に定められています。自賠責保険を販売している保険会社は多数ありますが、内容に差異はありません。
自賠責保険のほかに、自動車の運転手が加入する保険に、「任意保険」があります。自賠責保険と任意保険の違いを例示します。
表:自賠責保険と任意保険のちがい
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
加入 | 義務 | 自由 |
支払基準 | 法令通り | 保険内容による |
物損部分 | 補償なし | 補償あり (保険内容による) |
自賠責保険と任意保険のちがいとして、まず、任意保険への加入は義務ではありません。自動車の運転手自身の意思で加入している保険になります。
つぎに、保険の補償範囲は各任意保険会社で異なります。テレビCM・広告で「対人対物無制限」などというキャッチフレーズを一度は聞いたことがあると思います。これは、任意保険が保険会社ごと・保険商品ごとに補償内容が異なるためです。
そして、自賠責保険では、人身事故の「人身部分」への補償となります。
物損部分(修理費用・買い替え費用・評価損など)については、補償の対象外です。
任意保険について詳しく知りたい方は、『交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは?慰謝料3つの基準と計算方法を解説』をお役立てください。
もし事故相手が任意保険に未加入の無保険車であれば、被害者には次のような負担がかかります。
示談交渉は、後述の通り、加害者側の任意保険会社または加害者本人とするものです。加害者本人と連絡を取らなくてはならず、被害者にとって大きなストレスになるのです。
任意保険に加入していない運転手には、資力は期待できません。
そうなると、加害者からきちんと慰謝料を支払ってもらえるのかが問題です。
交通事故の被害者にとって、加害者が任意保険に加入しているかどうかは、適切に損害賠償を受けられるかを左右します。
無保険車との交渉は、被害者お一人で進めるにも限界があります。
弁護士への依頼もご検討ください。
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自賠責保険の目的は、自動車事故の被害者の救済です。被害者本人の過失が7割未満の場合、支払われる保険金は減額されません。
過失割合とは、交通事故に関する責任のことです。
交通事故は、どちらか片方のみに原因があるケースと、双方に原因があるケースに分かれます。 お互いの責任を割合で示したものを、過失割合といいます。
たとえば、過失割合は8:2などと表される場合を考えてみましょう。 被害者にも2割の過失があるので、被害者に発生した損害のうち、相手に請求できる金額は8割ということになります。理論上は、100万円の損害が出た場合は、80万円しか請求できないことになってしまうのです。
しかし、自賠責保険では、被害者の過失が7割未満で、自賠責保険の補償限度内に収まっている場合は、減額されずに満額の100万円を受け取ることができるのです。この補償限度とは、傷害事故であれば120万円までとなります。
被害者側に重大な過失があるときは、この限りではありません。 具体的には、被害者に7割以上の過失がある場合には、自賠責保険から受けとる金額が以下の割合で減額されてしまいます。
被害者の過失 | 後遺障害/死亡 | 傷害 |
---|---|---|
7割~8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割~9割未満 | 3割減額 | 2割減額 |
9割~10割未満 | 5割減額 | 2割減額 |
被害者本人の過失が10割の場合は、自賠責保険から慰謝料を受けとることはできませんので、適用外となります。
自賠責保険の補償内容は法律で定められています。 そして、支払われる上限も設けられているので、注意が必要です。支払い限度額は、傷害120万円、後遺障害75万円~4000万円、死亡3000万円です。物的損害については補償されません。
被害者請求の支払い限度額
特に気を付けたいのは、交通事故の傷害部分の支払い上限です。
傷害部分には、次のような費目全てが含まれます。
傷害による損害については、慰謝料、入院中の看護料・近親者による自宅看護料に関する支払基準の変更が2020年4月1日に施行されました。
金額変更は次の通りです。
費目 | 2020年4月1日以降 | 2020年3月31日以前 |
---|---|---|
慰謝料 | 日額 4,300円 | 日額 4,200円 |
休業損害 | 日額 6,100円 | 日額 5,700円 |
看護料 | 入院中:4,200円 自宅(職業人):実費 自宅(近親者) :2,100円 | 入院中:4,100円 自宅(職業人) :実費 自宅(近親者) :2,050円 |
慰謝料、休業損害、看護料以外は実費となります。 もっとも、支払額が実費とされていても、請求通りに認められるとは限りません。 必要かつ相当として認められた場合にのみ支払いを受けることができますので、注意しましょう。
休業損害は、交通事故によって働くことができず、仕事を休んだ場合の収入を補てんするものです。有給休暇をつかって会社を休んだ場合も、休業損害を請求できます。
休業損害についても、1日あたり6,100円へ引き上げられました。
もっとも、6,100円に関してはあくまで原則とされています。 立証資料などにより、実際に発生している損害が6,100円を超えていることが示せるならば、19,000円まで認められます。
これらの合計で120万円までしか認められません。
120万円を超えた分は、自賠責保険ではなく、相手方の任意保険会社に請求する必要があります。
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交通事故の休業損害はいつもらえる?相場はいくら?職業別の計算方法を解説
自賠責保険での補償内容は、次の3つとされています。
慰謝料は、交通事故によって負った精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
人身部分の被害に対して認められますので、「自動車が壊れてショック」「自転車の修理費とは別に慰謝料を請求」などは認められません。物損部分に関する慰謝料は、原則として認められません。
自賠責保険では物損についての補償は一切ないことを念頭においてください。
入通院慰謝料は、入院・通院治療にかかった通院期間、実際の治療日数に応じて請求できます。
入通院慰謝料の計算
日額(4,300円) ×対象日
日額は、自動車損害賠償法で定められています。
2020年4月の法改正に伴い、日額は事故発生日で異なります。
入通院慰謝料の日額(民法改正前後の比較)
費目 | 改正後 | 改正前 |
---|---|---|
慰謝料 | 4,300円 | 4,200円 |
入通院慰謝料の対象日は、次の2通りから少ない方を採用します。
通院期間とは、最初に病院を受診した日から治療が終了するまでの日数をいいます。
実治療日数とは、通院期間に実際に病院にかかった日数のことです。
具体的に計算してみましょう。
入通院慰謝料の計算
1.通院期間・・・3ヶ月
2.実治療日数・・・35日×2=70日
1と2を比較すると、2の「35日」の方が少ないことが分かります。
入通院慰謝料の対象日は70日です。
入通院慰謝料の計算式からもわかるように、通院すればするほど慰謝料が高くなる仕組みではありません。
通院期間を通して、2日に1回のペースで通院すると、入通院慰謝料は最も多くもらえる計算になります。通院日数に応じて慰謝料額が増えるわけではありません。
しかし、重要なことは怪我を治癒させることです。慰謝料額に関係なく、医師とコミュニケーションをとりながら、適切に通院しましょう。
7日加算についての補足
診断書の治療最終日が「治癒見込」「中止」「転医」あるいは「継続」となっている場合、治療最終日に7日加算されます。
入通院慰謝料の金額は、入院・通院の期間や、実治療日数(実際の治療日数)により異なります。
自賠責保険から支払われる入通院慰謝料の相場は次の通りです。
通院期間ごとの入通院慰謝料
通院 | 実治療日数 | 入通院慰謝料 |
---|---|---|
1ヵ月 | 5日 | 4万3,000円 |
1ヵ月 | 10日 | 8万6,000円 |
1ヵ月 | 15日 | 12万9,000円 |
2ヵ月 | 10日 | 8万6,000円 |
2ヵ月 | 20日 | 17万2,000円 |
2ヵ月 | 30日 | 25万8,000円 |
3ヵ月 | 20日 | 17万2,000円 |
3ヵ月 | 40日 | 34万4,000円 |
3ヵ月 | 60日 | 51万6,000円 |
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
後遺障害慰謝料は、自動車損害賠償法施行令で定められている後遺障害等級に認定された場合のみ請求できる損害賠償金です。後遺障害慰謝料とあわせて、逸失利益も請求可能です。
補償 | 解説 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級に応じて支払われる慰謝料 |
逸失利益 | 後遺障害によって生じた減収への補てん |
後遺障害等級認定を受ける方法は、次の通りです。
症状固定とは、一般的な医学的治療を続けても改善が期待できない状態です。
ケガが治癒しても、何らかの症状・障害が後遺症として残ることがあります。
後遺症に関する損害賠償を請求するには、後遺障害等級認定をとる必要があるのです。
後遺障害等級認定を受けるための申請方法は「事前認定」と「被害者請求」の2パターンがあります。それぞれの方法でメリット・デメリットはありますが、弁護士の視点では「被害者請求」をおすすめします。
詳しい後遺障害等級認定の申請方法については、関連記事をお役立てください。
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後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて目安が設けられています。
自賠責保険の支払基準は法令に則っています。
まずは、 自動車損害賠償保障施行令別表第1に定められている後遺障害1級と後遺障害2級の金額をみてみましょう。
この2つの後遺障害等級は、生命の維持に介護が必要であると判断されるもので、後遺障害の程度が極めて重篤なものです。
表:後遺障害慰謝料(別表第1 1級、別表第1 2級)
等級 | 改正後 | 改正前 |
---|---|---|
別表 後遺障害1級 | 1,650万円(1,850万円) | 1,600万円(1,800万円) |
別表 後遺障害2級 | 1,203万円(1,373万円) | 1,163万円(1,333万円) |
※カッコ内の金額は、死亡した被害者に被扶養者がいる場合の金額
次に、 自動車損害賠償保障施行令別表第2に定められている後遺障害1級から14級までをみていきましょう。
2020年4月の法改正に伴い、13級・14級を除くすべての後遺障害等級に関して、金額が引き上げられました。
表:後遺障害慰謝料
改正後 | 改正前 | |
---|---|---|
1級 | 1,150万円 (1,350万円) | 1,100万円 (1,300万円) |
2級 | 998万円 (1,168万円) | 958万円 (1,128万円) |
3級 | 861万円 ( 1,005万円 ) | 829万円 (973万円) |
4級 | 737万円 | 712万円 |
5級 | 618万円 | 599万円 |
6級 | 512万円 | 498万円 |
7級 | 419万円 | 409万円 |
8級 | 331万円 | 324万円 |
9級 | 249万円 | 245万円 |
10級 | 190万円 | 187万円 |
11級 | 136万円 | 135万円 |
12級 | 94万円 | 93万円 |
13級 | 57万円(変更なし) | 57万円(変更なし) |
14級 | 32万円(変更なし) | 32万円(変更なし) |
※()の金額は被害者に被扶養者がいる場合
後遺障害逸失利益とは、交通事故の後遺障害が残ったことで生じる収入減少への補てんです。
逸失利益の計算式は次の通りです。
逸失利益の計算式
有職者または就労可能者
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
症状固定時に18歳未満の未就労者
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 67歳までのライプニッツ係数 – 18歳に達するまでのライプニッツ係数
基礎収入とは、被害者が事故にあう前年の年収を用います。
労働能力喪失率とは、後遺障害等級ごとに原則の喪失率が定められています。
労働能力喪失期間とは、症状固定時の被害者の年齢から67歳までの年数にあたります。
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逸失利益については計算式が複雑ですので、慰謝料計算機の活用をおすすめします。
死亡慰謝料は、亡くなった本人への慰謝料、遺族の慰謝料に分かれます。そのほか、葬儀費用や逸失利益も認められます。
補償 | 解説 |
---|---|
死亡慰謝料 | 死亡した本人への慰謝料 |
遺族の慰謝料 | 被害者の父母(養父母)、配偶者、 子(養子・認知した子・胎児)が請求できる慰謝料 |
葬儀費 | 葬儀をおこなうための費用 |
死亡逸失利益 | 被害者が存命であれば得られたはずの収入・利益 |
つづいて、各費目で請求できる金額を見てみましょう。
費目 | 改正後 | 改正前 |
---|---|---|
死亡慰謝料 | 400万円 | 350万円 |
遺族の慰謝料 | 550万円~950万円 (変更なし) | 550万円~950万円 |
葬儀費 | 100万円 | 60万円 |
死亡慰謝料は、400万円へ引き上げられました。遺族の慰謝料については、請求権者の人数と被害者に被扶養者がいるかどうかで、金額が変わります。その金額については、法改正に伴う変更はありません。
葬儀費は、100万円へ引き上げられました。もっとも、改正前については、原則を60万円として資料提出により100万円まで認められていました。今回、法改正により、資料の提出がなくても100万円まで認められるという形になりました。
被害者が亡くなられたことで、存命であれば得られた労働による収入もなくなってしまいました。この損害への賠償を、死亡逸失利益といいます。
死亡逸失利益の計算式は、次の通りです。
有職者または就労可能者が死亡
基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
18歳未満の未就労者が死亡
男女別平均賃金 × (1 – 生活費控除率) × 67歳までのライプニッツ係数 – 18歳に達するまでのライプニッツ係数
基礎収入とは、被害者が亡くなる前年の年収のことです。
生活費控除率とは、被害者が亡くなられたことでかからなくなった生活費を、収入から差し引くものです。
労働能力喪失期間とは、死亡時の年齢から67歳までの年数をいいます。
死亡逸失利益の計算式は複雑であることから、慰謝料計算機を使った自動計算をおすすめしています。
慰謝料を受けとるタイミングは、原則、加害者側との示談後です。
交通事故の損害賠償問題を解決する手段として、広く用いられる方法が、示談交渉です。示談交渉は、被害者・加害者で話し合いをして、双方が納得できる妥当な内容を定めていく方法です。
示談交渉を通して確定した損害賠償の金額を示談金といいます。
慰謝料も示談金の一部に含まれているため、示談交渉で話し合わないと、金額は決まりません。
被害者が示談交渉をする相手は、加害者本人または加害者加入の任意保険会社の担当者の2パターンが考えられます。
任意保険会社は、保険の加入者(加害者)に対して示談代行サービスを提供しています。加害者本人が示談交渉の場に出ず、かわりに、被害者は任意保険会社の担当者と示談交渉をします。
加害者が任意保険に加入してない場合は、加害者本人と示談交渉をしなくてはいけません。なぜなら、自賠責保険会社は示談交渉代行サービスを提供しておらず、示談交渉の担当者もいないためです。
被害者の交渉相手
加害者の任意保険加入状況 | 交渉相手 |
---|---|
加入 | 加害者の任意保険会社(原則) |
未加入 | 加害者本人 |
被害者は任意保険会社の担当者と連絡を取っていても、実は、被害者に対して支払われる治療費や通院交通費は、自賠責保険会社から支払われています。
自賠責保険の支払限度額を超えて初めて、任意保険会社からの支払いがスタートする仕組みです。任意保険は、自賠責保険で支払いきれない分を補償するための保険だからです。
また、「任意一括払」という任意保険会社の対応にも注目です。
被害者に対しては、まず自賠責保険会社から治療費などが支払われます。しかし、交渉相手は任意保険会社の担当者です。被害者にとっては、治療費などの連絡窓口は任意保険会社で、支払いを請求するのは自賠責保険会社、という少し複雑な構造になってしまいます。
そこで、いったん任意保険会社が被害者に治療費などを支払い、あとから被害者へ支払った分を自賠責保険会社に請求しているのです。
示談交渉を始める時期は損害ごとに異なります。
怪我が治癒したケース、怪我の後遺障害が残ったケース、死亡事故のケースに分けることができます。
損害 | 示談開始の時期 |
---|---|
怪我(治癒・後遺障害なし) | 治療終了後 |
怪我(後遺障害あり) | 後遺障害等級認定通知後 |
死亡 | 四十九日などの法要後 (早期に開始するなら葬儀後) |
示談を待つということは、慰謝料などの受け取りは、原則治療終了後になります。
重傷ほど通院期間は長引きますし、被害者にとっての負担も大きいものです。
加害者側と意見が対立すれば示談交渉は長期化し、慰謝料受け取りはさらに遠のきます。
少しでも早くもらいたいと思うのは当然のことです。
しかし、慰謝料を早くうけとるために、示談を急ぐことは得策ではありません。なぜなら、一度結んだ示談内容の変更はできないからです。
早く慰謝料が欲しいという理由だけで示談は急ぐべきではありません。
実は、慰謝料の一部に関しては、示談を結ぶ前でも請求可能です。
その方法は「被害者請求」という請求方法です。
適切な金額の慰謝料を受け取るためには、主に以下の2つのポイントを押さえる必要があります。
交通事故に遭った際は、事故直後に必ず病院へ行って診断を受けましょう。
すぐに病院へ行けない事情があったとしても、近日中に受診してもらうことをおすすめします。
なお、交通事故の後は通常は整形外科で診断を受けることになります。
頭部を強く打ったり脊髄を痛めた場合などは脳神経外科で診断を受ける場合もありますが、基本的には整形外科で問題ありません。
受診後に医師から診断書を発行してもらったら、その診断書を警察へ提出して人身事故扱いにしてもらいます。
人身事故扱いにしてもらえば、相手方に対して慰謝料を請求することができるようになります。
慰謝料は精神的な損害に対する金銭的補償です。
そのため、交通事故でケガを負って痛い思いをした・治療のために手間がかかってしまった、などの人身事故ならではの苦痛・損害を被っていない限り、相手方から慰謝料が支払われることは通常ありません。
なお、いつまでに診断書を警察へ提出しなければならないという期限はありませんが、遅くなりすぎると交通事故と受傷の因果関係が明確でなくなり、警察が診断書をなかなか受け取ってくれなくなる可能性があります。
そのため、交通事故に遭ってから数日以内には診断書を提出することを心がけましょう。
交通事故の治療は治癒または症状固定を迎えるまで続けるようにしましょう。
「治癒」とはケガが完全に治った状態のことで、「症状固定」とはこれ以上治療を続けても症状の改善が期待できなくなった状態を指します。
自分の判断で治療を中断してしまうと、本来は治癒するはずだったケガが上手く治らなかったり、治療期間が短いことを理由に慰謝料を減額されるおそれがあります。
そのため、主治医から治癒・症状固定の判断が下されるまでは継続して通院する必要があります。
また、通院頻度が低すぎると、症状が軽いと相手方に判断されて慰謝料を低く計算される可能性があります。
そのため、治癒・症状固定を迎えるまでは主治医から指示された通院頻度・通院期間を守るようにしましょう。
慰謝料の支払いが示談後になる理由は、自賠責保険から支払われる慰謝料も、任意保険会社を通して受けとる流れにあるためです。
自動車の運転手が加入する保険は、自賠責保険と任意保険の2種類があります。任意保険加入率は100%ではありませんが、加入している人の方が多いです。
任意保険とは、自賠責保険では補償しきれない慰謝料・損害賠償金をカバーするものです。まずは「自賠責保険」の保険金が被害者に支払われるのですが、このとき、被害者に対応をするのは、相手方の任意保険会社の担当者になります。
任意保険には、「任意一括払」というサービスがあります。 また、自賠責保険会社には示談の担当者がいません。 これらのことから、任意保険会社が自賠責保険の分も一括して、被害者に対応をしていることになります。
被害者にとっては、自賠責保険と任意保険の両方とやり取りをする必要がない点はメリットです。しかし、示談がまとまるまでは、自賠責保険会社から支払われる保険金についても、支払われない流れともいえます。
慰謝料が支払われるのは基本的には示談後である、と前述しましたが、仮渡金制度を利用するか、被害者請求を行えば、示談前であっても損害額(の一部)の補償を受けることができます。
仮渡金制度は自動車損害賠償保障法第十七条で次のように定められています。
保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を第十六条第一項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。
自動車損害賠償保障法第十七条第一項
また、仮渡金制度を利用できる条件・金額は、「自動車損害賠償保障法施行令 第五条」に、次のように定められています。
第五条 法第十七条第一項の仮渡金の金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。
一 死亡した者 二百九十万円
自動車損害賠償保障法施行令第五条
二 次の傷害を受けた者 四十万円
イ 脊せき柱の骨折で脊せき髄を損傷したと認められる症状を有するもの
ロ 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
ハ 大腿たい又は下腿たいの骨折
ニ 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
ホ 十四日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの
三 次の傷害(前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者 二十万円
イ 脊せき柱の骨折
ロ 上腕又は前腕の骨折
ハ 内臓の破裂
ニ 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの
ホ 十四日以上病院に入院することを要する傷害
四 十一日以上医師の治療を要する傷害(第二号イからホまで及び前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者 五万円(保険会社に対する仮渡金の支払の請求等)
具体的な損害賠償金額が確定する前でも請求することができます。 とつぜん交通事故の被害者になってしまっても、当面の資金として充てることが可能です。
仮渡金請求に必要な書類は、次の通りです。
事故 | 書類 |
---|---|
死亡 | 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書、 交通事故証明書、事故発生状況報告書、死体検案書(死亡診断書)、 損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書)、 戸籍謄本 |
傷害 | 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書、 交通事故証明書、事故発生状況報告書、医師の診断書、 損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書) |
交通事故証明書は、自動車安全運転センターから取り寄せることができます。 医師の診断書や死体検案書(死亡診断書)は、医師から受けとってください。 それ以外の資料については、相手方の任意保険会社から取り付けることが可能です。
死亡事故などで請求権者が複数名いる場合、委任状などが必要になります。 くわしくは、国土交通省・自動車総合安全情報をご覧ください。
被害者請求とは、被害者が相手方の任意保険会社を経由せずに、直接相手方の自賠責保険会社に対して傷害分の損害賠償金を請求する方法です。
被害者請求の場合も、仮渡金制度と同様に、相手方との示談を待たずに請求することが可能です。
もっとも、次のような交通事故については被害者請求の対象外となる点にご注意ください。
請求できる金額は、あくまで自賠責保険の補償の範囲内になります。 先の通り、自賠責保険会社には示談交渉の担当者はいません。 自賠責保険会社には、損害賠償金額の増額交渉や、過失割合の交渉をする相手はいませんので、増額の交渉ができるわけではありません。
自賠責保険会社に対して必ず提出する資料は、次の通りです。 なお、仮渡金制度を利用している場合、すでに提出済の資料は不要になります。
事故 | 書類 |
---|---|
死亡 | 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書、 交通事故証明書、事故発生状況報告書、死体検案書(死亡診断書)、 診療報酬明細書、通院交通費明細書、損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書)、戸籍謄本 |
後遺障害 | 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 交通事故証明書、事故発生状況報告書、医師の診断書 損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書) 後遺障害診断書 |
傷害 | 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 交通事故証明書、事故発生状況報告書、医師の診断書 診療報酬明細書、通院交通費明細書 損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書) |
交通事故証明書は、自動車安全運転センターから取り寄せることができます。 医師の診断書や死体検案書(死亡診断書)は、医師から受けとってください。 印鑑証明、戸籍謄本などは住民登録をしている市区町村、本籍の市区町村で入手してください。
休業損害を請求する場合は、休業損害証明書なども必要になります。 給与所得者は事業主から、自営業者や確定申告者は税務署または市区町村から納税の証明書を入手することになります。
それ以外の資料については、相手方の任意保険会社から取り付けることが可能です。
自賠責保険会社へ提出する書類に不備があると、適正に受けとれない恐れがあります。
被害者請求については、法律の専門家である弁護士などのサポートが有効です。関連記事も併せてお役立てください。
関連記事
自賠責保険以外にも、自賠責保険から支払われる慰謝料について解説してきました。 しかし、実際に自賠責保険から受けとる金額だけでは、適正な慰謝料相場とは言えないのです。
交通事故の慰謝料は、その苦しみ・精神的苦痛を負った期間の長さに基づいて金額計算されます。 しかし、だれが計算するのかで金額が変わるのです。
自賠責保険で算定した結果は、自賠責保険の基準による金額ということです。つまり、法で定められている最低限のラインといえます。
そして、自賠責保険以外にも、慰謝料を算定する基準が存在します。それは、任意保険の基準と弁護士基準(裁判基準)とされています。
同じ交通事故であっても、基準が違えば慰謝料の金額は変わります。 そして、弁護士基準で算定した時に、慰謝料の相場は最も高額になります。
任意保険の基準というのは、各任意保険会社が独自で定めている社内基準のことです。 以前は、全保険会社で共通の算定ルールに基づいていましたが、自由化がすすみ、各保険会社で異なるようになりました。
詳細は社外秘となっており、基準は明確には示されていません。 しかし、これまでの経験上、自賠責保険の基準と同等か、やや上回る程度の金額とお考え下さい。
交通事故慰謝料の関連記事
交通事故の慰謝料計算機を使えば、簡単に弁護士基準の慰謝料を計算できます。 情報入力だけで、登録は不要です。
いかがでしたか? 保険会社からの提案額がいつも正しいとは限りません。交通事故の被害者に代わり、慰謝料の増額交渉は弁護士にお任せください。
アトム法律事務所は、24時間・365日・年中無休で被害者からのご相談予約を受け付けています。
「慰謝料計算機を使ってみたけど、本当にこの金額もらえるの?」
「自賠責保険の慰謝料計算がよく分からないんだけど…」
アトム法律事務所にお寄せいただく声としても、とても多いものです。
悩んでいるのはあなただけではありません。
そして、些細な悩みでもないのです。
一度結んだ示談は、後から内容を変更することは原則できません。
示談前は、適正な損害賠償内容かどうかをチェックする最終段階ともいえる重要なタイミングです。
示談案の提示を受けている人は、その示談内容が適切かの診断もおこないます。
診断後に契約するかどうかをご判断下さい。
こちらか契約を強制するようなことは絶対にございません。
弁護士に問い合わせるためのファーストステップを3つご用意しています。
電話、LINE、メールのどの方法でも構いません。
まずはお気軽に、慰謝料のお悩み、疑問をお聞かせください。
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24時間365日!全国対応
交通事故の被害でお困りの方は、アトム法律事務所までご相談下さい。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
英語:TOEIC925点
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