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自賠責保険の慰謝料計算や限度額を解説|任意保険からも両方もらえる?

自賠責保険からもらえる慰謝料の金額は、入通院慰謝料は日額4,300円、後遺障害慰謝料は32万円~1,850万円、死亡慰謝料は400万円~1,350万円です。
自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限のケガの補償をします。つまり、上記の金額は慰謝料の本来の相場よりも大幅に低いことに留意しておきましょう。
この記事では、自賠責保険からもらえる人身事故の慰謝料の金額や計算方法、慰謝料の請求方法、交通事故の被害者が本来受け取れる金額まで増額する方法を紹介しています。
交通事故の被害に遭った方は、慰謝料で損をしないためにも、ぜひご一読ください。
骨折の増額事例
弁護士相談の段階で後遺障害等級が既に認定済だったものの、慰謝料などの金額に増額の余地があったケース。

弁護活動の成果
提示額の354万円から、最終的な受取金額が750万円まで増額された。
年齢、職業
40~50代、自営業
傷病名
肩骨折、左膝骨折
後遺障害等級
12級13号
目次

自賠責保険の補償内容と請求できる慰謝料
そもそも自賠責保険とはどんな保険?
自賠責保険は「自動車損害賠償責任保険」の略であり、交通事故の被害者を救済するために設けられた保険制度のことを指します。
自賠責保険は強制加入の保険なので、交通事故が起きた場合、被害者は基本的に加害者の自賠責保険から補償を受けられます。
すべての自動車は自賠責保険に加入していなければ運行の用に供してはならない
自動車損害賠償保障法
ただし、自賠責保険は被害者に最低限の補償をするための保険です。
自賠責保険からの支払額は、国が定めた基準(自賠責基準)に沿って計算されますが、最低限の金額となります。
被害者が本来受け取るべき金額は、過去の判例に基づく基準(弁護士基準)に沿った金額なので、不足分は加害者側の任意保険や加害者本人に請求する必要があります。
また、物損被害に関する補償は自賠責保険の対象外なので、これについても加害者側の任意保険や加害者本人に請求しましょう。
自賠責保険のポイント
- 支払われる金額は、自賠責基準に沿った最低限のもの。
被害者が本来受け取るべきなのは弁護士基準に沿った金額なので、自賠責保険からの支払額だけでは足りないことが多い。 - 自賠責保険では物損被害に関する賠償金は支払われない。
交通事故において自賠責保険に請求できる慰謝料とは?
交通事故の被害者は、加害者が加入している自賠責保険に対して、以下の3種類の慰謝料を請求することが可能です。

- 入通院慰謝料
交通事故によるケガが原因で入院や通院をしたことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料 - 後遺障害慰謝料
交通事故により後遺障害を負ったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料
後遺障害等級の認定を受けることで請求可能 - 死亡慰謝料
交通事故により死亡したことで生じる本人や遺族の精神的苦痛に対する慰謝料
死亡事故の場合に請求可能
以下において、それぞれの慰謝料額の計算方法を紹介します。
自賠責保険の慰謝料計算(1)入通院慰謝料
自賠責保険から受けられる補償の1つが、入通院慰謝料です。
入通院慰謝料とは、事故で入通院をした精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
まずは自賠責保険から支払われる入通院慰謝料の金額を、相場の金額を算出する弁護士基準との比較とともに見ていきましょう。
合わせて、自賠責保険から支払われる入通院慰謝料の上限額も解説します。
自賠責保険の入通院慰謝料は日額4,300円
自賠責保険からもらえる入通院慰謝料の金額は、4,300円×対象日数で計算されます。
ただし、2020年3月31日以前に起こった事故については、日額4,200円です。
対象日数としては、以下のいずれか短い方が用いられます。
- 治療期間
- 実治療日数×2
たとえば、2020年4月1日以降に発生した事故で、治療期間90日・実治療日数30日の場合、対象日数としては30日×2=60日が採用され、入通院慰謝料は4,300円×60日=25.8万円となるでしょう。
ここで、自賠責保険と弁護士基準の入通院慰謝料の金額を表にして見てみましょう。
入通院慰謝料の金額
治療期間 実治療日数 | 自賠責基準 | 弁護士基準 (重傷/軽傷) |
---|---|---|
1ヶ月 (5日) | 4.3万円 | 28万/19万 |
1ヶ月 (10日) | 8.6万円 | 28万/19万 |
1ヶ月 (15日) | 12.9万円 | 28万/19万 |
2ヶ月 (10日) | 8.6万円 | 52万/36万 |
2ヶ月 (20日) | 17.2万円 | 52万/36万 |
2ヶ月 (30日) | 25.8万円 | 52万/36万 |
3ヶ月 (20日) | 17.2万円 | 73万/53万 |
3ヶ月 (40日) | 34.4万円 | 73万/53万 |
3ヶ月 (60日) | 51.6万円 | 73万/53万 |
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
弁護士基準の慰謝料が本来は通院1日あたりいくらになるかについては、『交通事故の慰謝料は通院1日いくら?8600円の真実と通院6ヶ月の相場』の記事でご確認いただけます。
入通院日数の数え方は「7日加算」に注意
自賠責保険指定の診断書で、治療最終日に「治癒見込」「継続」「転医」「中止」と記載されている場合は、治療期間が7日間加算されます。
例えば治療期間が30日でも、7日加算が適用されれば37日になるのです。
各項目の意味合いは以下のとおりです。
- 治癒見込
診断書を発行した時点で治癒していないが、今後治癒する見込みである - 継続
長期的・計画的な治療が今後も必要である - 転医
通院先および医師を変更する - 中止
治癒していないが治療を中止する
なお、治療期間が7日加算されたとき、必ずしも慰謝料が増えるとは限りません。7日加算されたあとの治療期間より実治療日数×2の方が短ければ、そちらが対象日数として採用されるからです。
7日加算されたときの慰謝料の具体的な計算例を知りたい方は、関連記事『交通事故の慰謝料の7日加算とは?適用ケースや自賠責保険の慰謝料の特徴』をお読みください。
入通院慰謝料など傷害分の費目は上限120万円
自賠責保険では、交通事故の賠償金を「傷害分」「後遺障害分」「死亡分」に分けてそれぞれに上限額が定められています。
入通院慰謝料は治療費や休業損害など、治療終了までに発生する費目とともに「傷害分」に分類され、上限は合計120万円までです。
限度額を超えてしまいそうなときは、健康保険を使って治療し、自己負担額を抑えるとよいでしょう。健康保険の利用については、『交通事故で健康保険は使える!メリットや健保に切り替えてと言われた時の対処法』の記事をあわせてお読みください。
自賠責基準における休業損害の計算方法も紹介
休業損害とは、事故の影響で仕事を休んだため減った収入の補償です。
自賠責保険からは、休業損害として日額6,100円×休業日数が支払われます。
ただし、2020年3月31日以前に起こった事故については日額5,700円です。
また、実際の損害が日額6,100円を超えていることを立証資料で明確に示せるなら、日額19,000円まで認められることもあります。
休業損害の計算方法や請求の流れ、請求にかかる必要書類など網羅的に解説していますので、以下の関連記事もお役立てください。
自賠責保険の慰謝料計算(2)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、事故で後遺障害を負った精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料を請求するには「後遺障害等級」の認定が必要で、認定された等級に応じて慰謝料額が変わります。
自賠責保険から支払われる後遺障害慰謝料の金額と、後遺障害分の支払額の上限額を確認していきましょう。
なお、どの後遺障害で何級に認定されるかは、『【後遺障害等級表】認定される後遺症・症状の一覧と等級認定の仕組み』の記事をご参照ください。
後遺障害慰謝料は32万円~1,850万円
自賠責基準の後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級と被扶養者の有無によって決まり、金額は32万円~1,850万円と幅があります。
各等級ごと・被扶養者の有無ごとの慰謝料額を、相場である弁護士基準の金額も合わせて確認していきましょう。
自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料
(単位:万円)
後遺障害等級 扶養の有無* | 自賠責** | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 (あり) | 1,850 (1,800) | 2,800 |
1級・要介護 (なし) | 1,650 (1,600) | 2,800 |
2級・要介護 (あり) | 1,373 (1,333) | 2,370 |
2級・要介護 (なし) | 1,203 (1,163) | 2,370 |
1級 (あり) | 1,350 (1,300) | 2,800 |
1級 (なし) | 1,150 (1,100) | 2,800 |
2級 (あり) | 1,168 (1,128) | 2,370 |
2級 (なし) | 998 (958) | 2,370 |
3級 (あり) | 1,005 (973) | 1,990 |
3級 (なし) | 861 (829) | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94 (93) | 290 |
13級 | 57 (57) | 180 |
14級 | 32 (32) | 110 |
*4級~14級は被扶養者の有無で金額が変動しない
**()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
後遺障害慰謝料も、自賠責保険から受け取れる金額と弁護士基準の金額に大きな開きがあります。認定された等級によっては、1,000万円以上の違いが生じることもあるのです。
また、後遺障害慰謝料は、後遺障害等級が1級異なるだけで大幅に金額が変わります。後遺障害認定の申請をすれば必ず適切な等級に認められるわけではないので、申請にあたっては入念な事前準備をすることをおすすめします。
後遺障害認定の受け方や認定の確率を上げる方法、被害者にとってメリットが大きい申請方法については、関連記事で詳しく解説しています。
後遺障害分の費目は上限75万円~4,000万円
後遺障害慰謝料は、逸失利益とともに「後遺障害分」に分類され、自賠責保険からの支払い上限額は等級に応じて75万円~4,000万円です。
自賠責保険の後遺障害部分限度額
等級 | 金額 |
---|---|
1級・要介護 | 4,000万円 |
2級・要介護 | 3,000万円 |
1級 | 3,000万円 |
2級 | 2,590万円 |
3級 | 2,219万円 |
4級 | 1,889万円 |
5級 | 1,574万円 |
6級 | 1,296万円 |
7級 | 1,051万円 |
8級 | 819万円 |
9級 | 616万円 |
10級 | 461万円 |
11級 | 331万円 |
12級 | 224万円 |
13級 | 139万円 |
14級 | 75万円 |
逸失利益とは、事故の影響で労働能力が減った、または、労働自体ができなくなったことで将来的に失う収入の補償をいいます。
事故前の収入や症状固定時の年齢などから金額が決まり、高額になることも多いです。
自賠責保険の支払い上限額では足りないことも珍しくないため、上限額を超える部分については、加害者の任意保険や加害者本人への追加請求を行いましょう。
逸失利益の計算方法は?

逸失利益は、以下の式を用いて計算します。
- 有職者または就労可能者の場合
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 - 症状固定時に18歳未満の未就労者の場合
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 67歳までのライプニッツ係数 – 18歳に達するまでのライプニッツ係数
逸失利益の計算式には専門的な用語も含まれているため、実際にどの程度の金額になるかイメージしづらい方も多いと思われます。以下の関連記事や計算機を活用して、逸失利益の具体的な金額を知ってください。
- 逸失利益の計算方法をより詳しく知りたい▼
関連記事:交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法!早見表・計算機で相場も確認 - 手軽に慰謝料や逸失利益の相場を知りたい▼
自賠責保険の慰謝料計算(3)死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、事故で亡くなった精神的苦痛に対する慰謝料のことです。
死亡慰謝料には、亡くなった本人への慰謝料と遺族への慰謝料が含まれます。
なお、遺族への慰謝料を受け取れるのは、原則的に被害者の配偶者、父母・養父母、子です。
自賠責保険から支払われる死亡慰謝料の金額や、死亡分の上限額を見ていきましょう。
死亡慰謝料は400万円~1,350万円
自賠責基準の死亡慰謝料は、本人分が400万円、遺族分が550万円~950万円です。
死亡慰謝料の相場
死亡慰謝料※ | |
---|---|
被害者本人分 | 400万円 (350万円) |
遺族分(遺族1名) | 550万円 |
遺族分(遺族2名) | 650万円 |
遺族分(遺族3名) | 750万円 |
遺族分(被害者に被扶養者あり) | 上記に加えて200万円 |
※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
たとえば、2020年4月1日以降に発生した事故で、被害者に遺族が2名おり、かつ被扶養者もいるときは、死亡慰謝料の金額は400万円+650万円+200万円=1,250万円となります。
これに対して被害者が本来受け取るべき金額の相場である「弁護士基準」では、死亡慰謝料は、生前の被害者の家族内における立ち位置によって決まります。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他の場合 | 2000万円~2500万円 |
遺族分の金額も、基本的には上記に含まれるとされます。
死亡分の費目は上限3,000万円
死亡慰謝料は、死亡逸失利益や葬祭費などとともに「死亡分」に分類され、自賠責保険からの支払い上限額は3,000万円です。
死亡逸失利益とは、「死亡によって得られなくなった、その後の収入」を補償するもので、計算式は次のとおりです。
- 有職者または就労可能者の場合
基礎収入 × (1 - 生活費控除率) × 就労可能年数に対するライプニッツ係数 - 症状固定時に18歳未満の未就労者の場合
基礎収入額 × (1 – 生活費控除率) × 67歳までのライプニッツ係数 – 18歳に達するまでのライプニッツ係数
死亡慰謝料や死亡逸失利益については『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』で詳しく解説しています。
なお、死亡事故の場合、示談交渉など事故後の対応はご遺族がしなければなりません。
具体的に何をすべきか、何に注意すべきかは、『家族が事故にあったら?被害者家族や遺族がすべき法的手続きと対応の基本』にてご確認ください。
自賠責保険への慰謝料請求で知っておくべきポイント
自賠責保険からの賠償金には、以下の特徴があります。
- 過失相殺による減額は過失7割から適用される
- 損害賠償請求権の時効は3年
それぞれについて解説します。
過失相殺による減額は過失7割から適用される
自賠責保険の大きな特徴として、被害者の過失割合が7割未満の場合、保険金が減額されないことが挙げられます。
過失割合とは?
事故が起きた過失(責任)が被害者と加害者にそれぞれどのくらいあるかを示す数値のこと。
被害者にも過失割合がついた場合、通常は過失割合の分だけ受け取れるお金が減額される(過失相殺)。
たとえば、過失割合が「加害者:被害者=8:2」となったとき、被害者の損害が100万円だとすると、受け取れるお金は100万円×2割=20万円減額となる。
自賠責保険では、被害者の過失割合が7割未満であり、損害が限度額以下である場合は、保険金を満額受け取れます。
過失が7割以上ある場合の減額は、以下のとおりです。
被害者の過失割合に応じた減額
被害者の過失割合 | 傷害の場合 | 後遺障害・死亡の場合 |
---|---|---|
7割~8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割~9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
9割~10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
このような措置が取られているのは、自賠責保険が被害者を救済することを目的とした保険だからです。
被害者の過失割合が高い事案であるなら、自賠責保険のみから慰謝料を受け取った方がお得なこともあります。
ただし、実際にどのように保険を使えば受け取れる金額が最も大きくなるかはケースによって異なるので、ご自身のケースではどうすればよいか知りたい場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。
自賠責保険における過失相殺の減額制度について詳しく知りたい方は『自賠責保険なら過失割合の減額が軽減。限度額や慰謝料計算には注意を』をご確認ください。
自賠責保険への請求の時効は3年
自賠責保険に対する請求については、3年の時効期間が定められています。
時効期間が経過してしまうと、自賠責保険への請求が認められなくなるため注意が必要です。
損害の内容ごとの時効期間は以下の通りとなります。
損害の種類 | 時効期間 |
---|---|
傷害による損害 | 事故の翌日から3年 |
後遺障害による損害 | 症状固定の翌日から3年 |
死亡による損害 | 死亡日の翌日から3年 |
加害者本人や任意保険への人身損害に関する損害賠償請求権の消滅時効は5年で、自賠責保険への請求権の方が時効が短くなっています。
自賠責保険に直接賠償請求する場合は、注意しましょう。
何か問題があって時効までの請求が難しい場合は、早めに弁護士に相談し対処法を確認することがおすすめです。

自賠責保険と任意保険|慰謝料は両方からもらえる
交通事故の加害者は、強制加入である自賠責保険だけでなく、任意加入である任意保険に入っていることも多いです。
加害者が自賠責保険と任意保険に加入している場合は、両方に賠償請求が可能です。
それぞれの違いや、両方に賠償請求する時の仕組みを解説します。
自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険と任意保険の主な違いは、加入義務の有無、保険金の支払い基準を誰が設定しているか、物損の補償の有無の3つです。
自賠責保険と任意保険の主な違い
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
加入義務 | あり | なし |
保険金の基準 | 法令で設定 | 保険会社が独自に設定 |
物損の補償 | なし | あり (保険内容による) |
任意保険から支払われる保険金の基準を詳しく知りたい方は、『交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは?慰謝料3つの基準と計算方法を解説』をお役立てください。
自賠責保険で足りない分は任意保険に請求
ここまで解説したとおり、自賠責保険には補償の限度額が定められています。
事故の加害者が任意保険に加入している場合、自賠責保険の限度額を超えた部分は、任意保険から支払われます。

なお、事故の被害者が賠償請求においてやりとりするのは、基本的に加害者側の任意保険会社だけです。
賠償金は任意保険会社から自賠責保険分もあわせて一括で支払われ、あとから保険会社間で精算されることが多いからです。
自賠責保険から慰謝料をもらう方法と時期
自賠責保険への慰謝料請求の方法は加害者請求と被害者請求の2種類
自賠責保険から慰謝料をもらう方法には、大きくわけて「加害者請求」と「被害者請求」の2種類があります。
加害者請求|任意一括対応を選ぶ場合に適用される
加害者請求とは、加害者側の任意保険会社や加害者本人が被害者に賠償金を支払った後、自賠責保険の支払い分を自賠責保険会社に請求する方法です。
加害者請求は、加害者側の任意保険会社による「任意一括対応」を受けるために適用されるケースが多いでしょう。
任意一括対応とは、加害者側の任意保険会社が、自賠責保険の支払い分も含めて慰謝料・賠償金を一括して支払ってくれるサービスです。

このとき、任意保険会社は被害者への支払い完了後、自賠責保険会社に加害者請求をして、肩代わりしていた自賠責保険の支払い分を回収します。
これが、加害者請求です。
任意一括対応では、基本的に任意保険会社との示談成立後に慰謝料などが支払われることになります。よって、示談が難航すると支払いが遅くなることには注意が必要です。
事故で受けた損害ごとの示談を始めるタイミングや、示談の流れについては『交通事故の示談とは?進め方や損しないためのポイント』の記事をお役立てください。
任意一括対応のメリットや注意点を詳しく知りたい方は、関連記事をご参考ください。
関連記事
交通事故の一括対応とは?注意点や拒否・打ち切りへの対処法も解説
被害者請求|被害者自身で自賠責保険に請求する方法
被害者請求とは、被害者が直接、自賠責保険会社に対して慰謝料などを請求する方法です。
加害者側の任意保険会社を経由せずに慰謝料などを受け取れるため、任意保険会社との示談が成立する前でも自賠責保険分の慰謝料などを受け取れるといったメリットがあります。
なお、請求できる金額は自賠責保険の補償の範囲内になります。自賠責保険から支払われる金額は法令で定められているため、増額交渉はできません。
また、次のような場合では被害者請求を拒否されるため、注意しておきましょう。
- 加害者に過失がないとき
- 事故と損害に因果関係がないとき
- 加害者が故意に起こした事故であるとき
被害者請求のメリットや必要書類については、関連記事で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。
関連記事
自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説
自賠責保険のみ加入している場合は被害者請求がおすすめ
加害者が自賠責保険のみに入っている場合は、一旦被害者請求で自賠責保険分の支払額を確保し、残りを加害者本人に請求することがおすすめです。
加害者が自賠責保険のみに加入しており、任意保険に加入していない、いわゆる「無保険」の場合は、加害者本人と示談交渉して慰謝料などの支払いを受けることになります。
しかし、全額を加害者に支払ってもらうのでは資力の問題上、支払いが分割になったり踏み倒されたりする可能性があります。
そのため、加害者に請求する前に被害者請求で自賠責保険分について支払いを受けておく方が良いでしょう。
なお、加害者本人からの賠償金の支払いが滞ったり、踏み倒されたりすることを想定し、以下の対策をしておくと安心です。
- 被害者自身の保険(人身傷害保険、搭乗者傷害保険等)を利用して賠償を受ける
- 労災保険を利用する(勤務中、通勤中の交通事故である場合)
- 保証人を立ててもらう
関連記事では、加害者が無保険だったときに適切な補償を受け取るための方法についてまとめています。加害者が無保険でお困りの方は、ぜひご一読ください。
関連記事
交通事故の相手が無保険?お金がない場合の賠償請求と政府保障事業等での対策
早めに補償の一部を受け取れる方法|仮渡金制度
仮渡金とは、損害額が確定しない段階でも自賠責保険に請求できる前払い金のことです。
仮渡金制度を使えば、加害者側の任意保険会社との示談成立を待たずに一定の金額を受け取れます。
また、仮渡金の金額はあらかじめ決まっているため、被害者請求よりも申請から受け取りまでの期間が短くなるのです。
ただし、仮渡金を請求できるのは1回限りになります。
仮渡金として受け取れる金額は以下のとおりです。
仮渡金の金額
- 被害者が死亡した場合:290万円
- 被害者が次のいずれかの傷害を受けた場合:40万円
- 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの
- 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
- 大腿又は下腿の骨折
- 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
- 14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
- 被害者が上記を除き次のいずれかの傷害を受けた場合:20万円
- 脊柱の骨折
- 上腕又は前腕の骨折
- 内臓の破裂
- 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
- 14日以上病院に入院することを要する傷害
- 被害者が上記を除き11日以上医師の治療を要する障害を受けた場合:5万円
請求後、書類に不備がなければ1週間程度で仮渡金を受け取ることができるでしょう。
なお、仮渡金はあくまで前払い金であるため、仮渡金として受け取った金額は最終的に支払われる慰謝料などの金額から差し引かれます。
また、最終的な損害額が仮渡金よりも低くなった場合は、仮渡金の返還を求められることもあるため注意しましょう。
関連記事では、仮渡金を請求する際の必要書類や、仮渡金や被害者請求以外で交通事故の補償を早めに受け取る方法を紹介しています。
関連記事
内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法
自賠責保険よりも高額な慰謝料を得る方法
弁護士に依頼すると高額な慰謝料(弁護士基準)を請求できる
自賠責保険の慰謝料は、被害者が本来もらえる金額の「半分~3分の1程度」と言われています。自賠責保険から支払われる金額は「自賠責基準」に沿った最低限のものです。
一方、過去の判例に基づく、交通事故の被害者が本来もらうべき金額は「弁護士基準」に沿ったものであり、自賠責保険から得られる金額よりも高額になります。
したがって、差額は示談交渉にて加害者側の任意保険会社に請求する必要があるのです。
しかし、加害者側の任意保険会社はこの際、自社基準(任意保険基準)に基づく金額を提示してきます。これは、自賠責基準とほぼ同水準であることが多く、不十分です。

しかし、被害者自身が弁護士基準の慰謝料を主張しても、加害者側の任意保険会社には「根拠に乏しい」「うちではこの金額が限度だ」と受け入れてもらえないことが多いです。
弁護士を立てると被害者側の主張が認められやすい理由
弁護士を立てると加害者側の保険会社は裁判への発展を懸念することから、被害者側の主張を認めることが多くなります。
この背景をさらに深掘りすると、以下のようになります。
- なぜ保険会社は裁判を嫌がり、被害者の主張を受け入れるのか?
- 裁判になれば、弁護士基準の慰謝料が認められる可能性が高い。
それならば、示談の段階で認めてしまった方がよいと判断される。 - 裁判で敗訴すれば、遅延損害金といった追加の支払いも必要になる。
- 裁判をするとなると、示談よりも大幅に時間や労力がかかる。
- 裁判になれば、弁護士基準の慰謝料が認められる可能性が高い。
- なぜ保険会社は弁護士が出てくると裁判への発展を懸念するのか?
- そもそも、弁護士なしで裁判を起こすことは難しい。
よって、被害者本人が相手だと、保険会社は裁判への発展をほぼ懸念していない。 - 被害者が一度弁護士に依頼すれば、追加費用をあまりかけずに裁判の提起も頼める。
よって、弁護士が出てくると、裁判への発展はかなり現実的になったと捉えられる。
- そもそも、弁護士なしで裁判を起こすことは難しい。
また、弁護士は法律の専門知識を持っており主張に説得力があることや、交渉に慣れており主張を認めさせるためのテクニックを持っていることも、慰謝料の増額を認めてもらえやすい理由と言えるでしょう。

弁護士になじみがなく、「交通事故で弁護士を立てるなんて大げさでは…」と考える方も少なくありません。
しかし、適切な補償を得るために弁護士を立てるのは、必要なことであり、決して大げさなことではありません。
慰謝料の増額を目指すなら、まずは気軽に弁護士にご相談ください。

本来もらえる金額はいくら?慰謝料の自動計算機
以下の慰謝料計算機では、弁護士基準で算定した慰謝料の金額を確認できます。
ご自身が本来もらえる可能性のある金額を確認するために、ぜひご利用ください。
交通事故の慰謝料の全般的な知識や、弁護士基準での慰謝料の計算方法は、以下の関連記事にもまとめています。加害者側から適正な金額を受け取るためにも、ぜひご一読ください。
後遺障害慰謝料の増額には適正な等級認定と弁護士基準の適用が重要
後遺障害が残った場合、認定された等級が慰謝料額に大きく影響します。
たとえば、むちうちで12級に認定される可能性があったにも関わらず、14級にしか認定されなかったとすると、本来であればもらえたはずの後遺障害慰謝料がもらえなくなってしまうのです。弁護士に依頼することで、後遺障害等級の適正な認定につながる可能性がより高まります。
また、弁護士は弁護士基準を適用して交渉を行うため、弁護士基準に近い額で慰謝料を請求することが可能です。後遺障害等級の認定と後遺障害慰謝料の請求を弁護士に任せることで、後遺障害による損害賠償を最大化することができます。
適正な通院頻度を維持して慰謝料増額につなげる
適正な治療を受けるためには、医師の指導に従い、通院頻度を守るようにしてください。慰謝料の額を決定する際、通院頻度や治療期間も重要な要素となるからです。
また、治療の進行具合や効果について医師の意見書をしっかりと作成してもらうことで、通院期間中における慰謝料が適切に評価されます。弁護士が間に入ることで、これらの条件を保険会社に強く主張することができます。
過失割合を適正に見直して慰謝料減額を防ぐ
交通事故において、過失割合は慰謝料の金額を大きく左右します。もし不当に高い過失割合が認定されてしまうと、慰謝料が減額されることになってしまうでしょう。しかし、過失割合を適正に見直すことで、慰謝料の減額を防ぐことができるのです。
弁護士に依頼すれば、過失割合について適正な過失割合を主張してもらうことができます。
たとえば、加害者側の任意保険会社から被害者の過失割合を誤って高く主張されている場合には、事故の状況や証拠をもとに交渉を行います。これにより、不当な減額を防ぎ、最終的に適正な慰謝料を受け取ることが可能になるでしょう。
相場額の慰謝料を得るためには弁護士に相談を
そもそも自賠責保険だけでは受け取れる慰謝料の金額は不足しています。
相場額の慰謝料を得たいのであれば、弁護士への依頼が1番の近道です。
弁護士に依頼するメリットや、弁護士依頼の費用負担を減らす方法をご紹介します。
弁護士に相談・依頼すると慰謝料増額などさまざまなメリットあり
弁護士に相談・依頼することで慰謝料増額をはじめとし、以下のようなメリットがあります。
- 自賠責保険よりも高額な慰謝料が見込める弁護士基準で請求できる
- 慰謝料以外に請求できる損害賠償金についても適切な請求を行える
- 示談交渉自体を弁護士に行ってもらえる
- 後遺障害等級認定に必要な手続きをサポートしてもらえる
弁護士に依頼することで生じるメリットについて詳しく知りたい方は『交通事故を弁護士に依頼するメリット10選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。
弁護士費用特約を使えば自己負担なしで依頼も可能
「弁護士に依頼すると弁護士費用がかかるので、依頼する労力のわりに大した成果を得られないのでは?」という疑問もよくおうかがいします。
そのような方には、弁護士費用特約が利用できないかどうかを検討してください。
弁護士費用特約とは、自動車保険や火災保険などに付帯できる、保険会社に弁護士費用を負担してもらえる特約のことです。
弁護士費用特約を使えば、多くの場合、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社にまかなってもらえるので、よほど重篤な事故でなければ自己負担なしで弁護依頼が可能になります。
もちろん、重篤な事故でも弁護士費用の負担を大きく軽減できるので、非常に役立つ特約と言えるでしょう。

弁護士費用特約は被害者本人の保険だけではなく、被害者の家族の保険に付帯されているものも利用できる可能性があります。
弁護士費用特約についてさらに詳しく知りたい方は、『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご参考ください。
なお、弁護士費用特約を使えないときは、各法律事務所が実施している無料相談を利用し、慰謝料の増額幅と弁護士費用の見積もりをとってもらうことがおすすめです。
まずは電話・LINEでスキマ時間に無料相談!
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方にむけて、電話・LINEによる無料相談を実施しています。

下記のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。ご来所いただかなくとも、スキマ時間で弁護士のアドバイスを受けられるのがアトムの強みです。
- 慰謝料の増額見込みはどれくらい?
- 弁護士を立ててかえって損することはない?
- 加害者が無保険で困っている など
もちろん、無料相談のみのご利用、セカンドオピニオンとしてのご利用も大丈夫です。
どうなるのかの説明が明快で分かりやすかった為とても安心できました。
また難しいことは難しいとちゃんと伝えてくれたことも信頼できると感じました。
アトム法律事務所の特徴は、以下のとおりです。
- 交通事故問題に強い弁護士が多数在籍
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了