家族が事故にあったら?被害者家族や遺族がすべき法的手続きと対応の基本
更新日:
大切な家族が事故の被害にあったとき、家族としてできることをしたいと考えても、なにから始めればいいのかと悩んでしまうものです。
原則として知っておきたいことは、家族が成人であるときには、自身で法的行為を行うものとみなされるため、家族の代理対応には限界があることです。
もっとも、重傷・死亡事故であったり、成人していない子どもが被害者だったりするときには、家族によるサポート範囲が広くなってきます。
このように、家族が事故にあったら通院や損害賠償のサポートをしていくことになりますが、サポートできる範囲は被害者の属性や事故の内容次第ということです。
こうした場合分けによってわかりやすくガイドをしていきますので、本記事をお役立てください。
目次
家族が事故にあったときの対応の基本
大切な家族が事故にあったときには支えたいという気持ちがあっても、家族としてできることには一定の範囲があり、被害者の年齢や事故後のご容態により様々です。
【原則】家族ができる事故のサポート範囲
事故にあった家族がケガの影響で意思表示すらできない状態に陥っていたり、亡くなられたり、成人しておらず親が親権者として対応できたりするときには、家族のサポート範囲は大きく広がります。
こうした状況を除いて、家族(夫婦や親子)や恋人同士といっても、すべての対応を本人に代わってやってあげるということは難しいといえます。
重要ポイント
交通事故の解決に向けた法的手続きは、被害にあった当事者が成人しているなら、当事者みずからでおこなわねばならないことが原則です。
家族によるサポートの一例
家族によるサポートとしては、治療に専念しやすい体制づくりや、決断をするうえでの助言や励まし、あるいは専門家への相談といった選択肢のアドバイスなどが最適でしょう。
家族によるサポートの一例
- 情報収集と整理の補助
- 通院や手続きの付き添い
- 日常生活の支援(家事、育児など)
- 精神的な支え(励ます、話し合うなど)
- 専門家相談の助言(弁護士や医療機関など)
なお、仕事を休んで付き添いや家事手伝いをしたとしても、そのためにかかった費用を事故相手に請求することは原則として難しいです。
この点は本記事内「治療に関してできること|付き添いは注意」にてくわしく説明します。
事故現場での対応でできること
事故の一報は、被害者であるご家族本人から入ることもあれば、警察関係者から入ることも考えられます。
比較的軽傷であるときには、ご家族から連絡を受けて事故現場へ駆けつけるという対応が考えられるでしょう。
交通事故の現場ですべき対応は以下のとおりです。
事故現場での対応の一部
- 負傷者の安全確保と応急処置
- 二次事故の防止(発煙筒の準備、三角停止板の設置)
- 目撃者の連絡先確認
- 事故現場の写真撮影
また、交通事故の発生は必ず警察へ通報せねばなりません。
すでに事故現場に警察が到着している場合には、気が動転している家族に付き添い、落ち着いて話をするようにサポートしてください。
なお、交通事故発生後の流れについては関連記事でわかりやすく説明しています。
今後の流れがわかっていると先々のことが見通せて、安心感につながるでしょう。
治療に関してできること|付き添いは注意
家族が「大したケガではない」と言っても、病院で診察を受けるようにすすめましょう。
交通事故の直後は興奮状態にあって、身体が痛みや異変を気づきにくい状態になっていることがあります。
また、医療機関での記録は、保険会社との交渉や裁判においても重要な証拠です。診断書や治療費の領収書を必ず保管するように被害者へ促してください。
ワンポイントメモ
交通事故においては、相手の任意保険会社が病院に直接治療費を支払ってくれるため、被害者は窓口負担しなくていい場合があります。この手続きを「任意一括対応」といいます。
通院の付き添いには注意点がある
交通事故の損害賠償においては、家族が通院付き添いのために会社を休んだり、交通費を支払ったりして付き添っても、その費用を相手方に請求できるかどうかはケースバイケースです。
医師から付き添いの必要性が認められる場合、重傷を負った場合、交通事故の被害者が子どもであった場合などの限られたときにのみ、付き添い費が認められる可能性があります。
事故の被害は目に見えるものだけではない
交通事故の影響は、身体的な怪我や物的損害だけではありません。
被害者とその家族は、しばしば目に見えない心理的な影響に苦しむことがあります。
交通事故の心理的影響
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
フラッシュバック(事故の記憶が突然蘇る) 不眠や悪夢、過度の緊張や警戒、事故を思い出させる状況の回避など - 不安障害
運転や乗車への極度の恐怖、パニック発作、社会的状況への不安 - うつ症状
持続的な悲しみや絶望感、興味や楽しみの喪失、疲労感や集中力の低下
これらの影響を理解し、専門の医療機関や専門家のカウンセリングを受診するように促すサポートもできます。
こうした目に見えない傷に対して家族だけですべて対応することは難しい恐れもあるので、専門家のサポートを受けることをためらわないでください。
交通事故と因果関係が認められれば、こうした心理的影響による通院治療の費用や補償が認められる可能性があります。
家族が死亡・重体となった|家族が主体となって進める
家族の死亡事故の対応
交通事故で被害者が死亡した場合、お葬式をとりおこなう、遺族年金・生命保険などの給付申請手続きをすることのほか、事故相手との損害賠償請求の交渉も必要になります。
ただし死亡した被害者の代わりとなって手続きをおこなえる人物は相続人に限られます。
相続人とは、配偶者を第一優先として、子どもの有無、孫の有無などで決まっていく次のように決まる流れです。
相続人の決まり方
- 被害者に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となる。
以下のようにさらに相続人を選出する。 - 子供がいる場合は子供(養子も含む)。子供がいなければ孫。
- 子供も孫もいなければ、両親など直系尊属。養父母も含む。
- 直系尊属もいなければ兄弟姉妹。
このように死亡事故の損害賠償請求権を相続した家族によって、請求を進めていきます。
交通死亡事故の損害賠償請求内容は?
交通死亡事故では、死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用などを請求可能です。
とくに死亡慰謝料や死亡逸失利益は、亡くなられた被害者の家庭内での立場、事故前の収入、年齢などで変動するため、適正な相場を見極めて請求していきましょう。
以下の関連記事では死亡事故の遺族がとる手続きの全体像や、慰謝料の相場を解説しています。遺族としてやるべき賠償の対応を整理したい方は参考にお読みください。
家族が重体となった事故の対応
ご家族が交通事故で重体となった場合、その損害賠償請求には家族の対応も必要です。もっとも、原則として、成人は自身で法的行為を行う能力があるとみなされるため、家族が代理して対応することには限界があります。
家族が寝たきりで意思表示が難しい場合
しかし、被害者が重体で寝たきりになってしまい意思表示が困難な場合、家族が「後見人制度」を利用することになるでしょう。
後見人制度とは
後見人制度とは、病気や障害により判断能力が不十分な成人を保護し、その権利を守るために法的に認められた代理人(後見人)を選任する制度のこと。
その被害者の状態に応じて、後見人、保佐人、補助人の3段階があり、法律行為の代理をするには最も役割の広い後見人となることが必要です。
後見人になるためには、家庭裁判所への申し立てをおこないます。そして、医師の診断書や財産目録といった各種書類の確認ののち、家族、弁護士などが主に選任される流れです。
後遺障害等級認定も重要
寝たきりになってしまった場合、後遺障害1級や2級といった非常に重篤な障害等級認定の対象となる可能性があります。
後遺障害等級認定を受けられれば、後遺障害が残ったことへの慰謝料、後遺障害によって働けなくなったことへの収入の補償、介護費用などの請求も認められる可能性が高まるのです。
家族が後見人として対応するのか、あるいは被害者本人が後遺障害認定をおこなうのかは被害者の状況次第になります。もし対応に迷いのある方は、弁護士との法律相談で助言を受けてみてください。
関連記事では、後遺障害認定の申請方法や寝たきりになってしまった家族に対してどういったことができるのかについて解説しています。
子どもが事故にあった|親は子の親権者として対応できる
交通事故で被害者にケガを負わせた加害者は、ケガの治療費や慰謝料といった損害賠償責任を負います。
そして、成人していない子どもが事故の被害者になったときには、損害賠償請求という法的な対応において、親権者である親の対応が必要不可欠です。
子どもが事故被害者にあったとき、親が次のような事柄に対応・検討しましょう。
親が子どもの事故ですべきこと
- 親権者が法定代理人として手続きを行う
- 将来の成長を考慮した損害賠償の算定
- 学業への影響を考慮した補償
親権者が法定代理人として手続きを行う
親は子どもの親権を持っています。親権に含まれている財産管理権のなかには、子どもの法律行為に対する同意権(民法第5条)もあるのです。
よって、親は子の法定代理人として、保険会社とのやり取りや弁護士への相談といった法的対応を、子の代わりにおこなえます。
子どもが事故の被害者となったとき、事故発生時の状況をうまく説明できないこともあるでしょう。そうすると、相手方の言い分が一方的に通ってしまう事態も起こりえます。
まずは子どもから事故状況を聞き取ること、そして相手方と主張が食い違っているときには、交通事故にくわしい弁護士への相談を検討することも親のできる一つの対応です。
弁護士であれば、客観的な証拠の集め方、交渉の仕方など具体的にアドバイスできます。
将来の成長を考慮した損害賠償の算定
子どもの場合、将来の可能性が大きいため、長期的な影響を考慮した補償交渉が重要になります。
とくに後遺症が残った場合には後遺障害認定の申請を受ける必要がありますが、その申請時期の見極めがポイントです。
後遺障害認定の申請時期は、医師より「症状固定」と診断された時期になります。症状固定とは、これ以上は治療を続けても良くも悪くもならない状態のことです。
子どもの場合はその成長により症状の改善がみられる可能性があったり、将来的に後遺症の影響が出たりすることもあるのです。
もっとも後遺症に関する補償を受けるためには申請期限(時効)もあるため、医師との連携だけでなく、法律のプロである弁護士に時効の相談をしておくことで安心につながります。
長期化する場合には時効対策が必要になることもあるので、弁護士の見解を聞いてみましょう。
学業への影響を考慮した補償
交通事故のケガの影響で長期休業や留年で必要になる学費・教育費など、相手に請求が認められる可能性があります。
ただし、交通事故との因果関係について争いになり、相手方がスムーズに認めてくれるかどうかはケースバイケースです。
家族が事故にあったときのよくある質問
お見舞いに行った時の交通費はもらえる?
家族の入院先にお見舞いに行った時の交通費は、必要・相当な範囲で認められます。
被害者の容態や見舞い人との関係、心情、事故態様などが考慮されるため、基本的に家族のお見舞いにかかった費用は認められる可能性は十分あります。
もっとも、すべての交通費がすんなり認められるわけではなく、お見舞いに行くことが当然であろうと推定できる事情が認められることがポイントです。
関連記事
死亡事故でこちらが悪いと言われたが過失割合はどう決まる?
交通事故の過失割合は、警察が決めるものではなく、当事者同士の話し合いで決まるものです。
しかし、死亡事故においては、亡くなってしまった家族が意見を述べることができず、加害者側の主張が通りやすいことが懸念されます。
ドライブレコーダーの記録、事故現場付近の防犯カメラ映像、目撃者の証言などの客観的な証拠を集めて保険会社と交渉することが必要です。
関連記事
家族は慰謝料をもらえる?
家族も近親者慰謝料をもらえる場合があります。ただし、被害者が死亡した場合と、被害者に重度の後遺障害が残った場合に認められることが原則です。
たとえば、裁判でも認めれうる死亡慰謝料の相場は、死亡した被害者の家庭内における立場によって変わります。
死亡した被害者および家族に対する近親者慰謝料を含んだ相場は以下のとおりです。
被害者の立場 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱※ | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
独身者・子ども | 2,000万~2,500万円 |
※収入により家族の生計を支えている者のこと
こうした近親者慰謝料が認められるケースや相場以上の慰謝料が認められるケースについて知りたい方は、関連記事をあわせてお読みください。
関連記事
交通事故の賠償問題は弁護士に相談
交通事故の賠償問題は弁護士に相談するメリットが多くあります。解決における各段階で、法律の専門家である弁護士のサポートは大きいです。
交通事故の解決の流れと弁護士の役割
交通事故の解決は、事故発生から治療を経て、相手方の加入する保険会社との示談交渉による解決を目指す流れが基本です。
弁護士は、交通事故の被害者の代理人として様々な法的対応がとれます。
入通院治療時には、弁護士が相手の保険会社との連絡の窓口となることで、被害者が治療に専念しやすい体制を整えることが可能です。
また、治療が終了した段階で後遺症が残っているときには、後遺障害申請のサポートもできます。後遺障害申請に必要な書類の準備を手伝えるので、被害者の負担は大きく軽減される見込みです。
そして、相手の保険会社との示談時には、被害者の利益の最大化を目指してねばり強い交渉を続けます。
ご家族だけではカバーしきれない「法的知識」を備えた弁護士に交渉を任せることで、相手の保険会社が提案する示談内容が妥当なのかを見極めることが可能です。
まずは弁護士に相談をしてみて、ご家族の事故について弁護士に対応を任せるメリットをよりくわしく聞いてみましょう。
弁護士無料相談で期待できる
5つのメリット
慰謝料のメリット
保険会社独自の
低い基準の提示額
→
裁判所が認める
適正な金額に増額
示談交渉のメリット
保険会社の
言いなりに
→
示談交渉のプロである
弁護士が交渉窓口に
各種手続のメリット
書類や資料を
揃えるのが大変
→
弁護士にお任せで
スムーズに完了
治療のメリット
示談や手続きに
煩わされる
→
治療に
専念できる
後遺障害認定のメリット
後遺障害等級が
認定されない・低い
→
納得のいく
後遺障害等級認定
あなたの弁護士費用特約が使えるかもしれない
交通事故の解決を弁護士に依頼することには、弁護士費用がかかるというデメリットが生じます。弁護士費用とは、法律相談料、着手金、報酬金、実費などです。
しかし弁護士費用特約が使えれば、保険会社が弁護士費用を支払ってくれます。
弁護士費用特約とは
交通事故やその他の法的トラブルに巻き込まれた際の、弁護士費用を補償するもの。法的支援を受ける際の経済的負担を軽減する保険オプションのひとつ。
弁護士費用特約は、被害者側の加入する任意保険会社や、クレジットカード、火災保険などに付帯されている可能性があります。そして、約款次第では家族が加入する特約を利用できるのです。
以下の図は、弁護士費用特約の補償対象者の一例を示しています。たとえば、妻が交通事故にあったとき、同居している夫が被保険者であれば、夫の弁護士費用特約が利用できるのです。
高額になりがちな弁護士費用を保険でカバーできるため、被害者の経済的負担が大幅に軽減されます。
ご加入内容次第になりますので、ご家族として利用できる弁護士費用特約の有無やその補償内容を確認してみてください。
アトム法律事務所の無料法律相談
アトム法律事務所では、交通事故の被害に関するご相談を受け付けています。まだ依頼するか決めていないという方からのご相談も多いので、気兼ねなくご連絡ください。
弁護士費用特約の有無にかかわらず、無料の法律相談を実施しています。
法律相談のご予約は年中無休で受け付けていますので、電話・LINEのいずれかにてまずご予約をお取りください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了