死亡事故の被害者遺族がすべき賠償請求やお葬式の流れ|過失割合も要確認

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事故被害者の遺族

交通事故で被害者が亡くなった場合、悲しみや加害者に対する怒りがある中で、ご遺族は被害者本人に代わってさまざまな対応をしなければなりません。

示談交渉など慣れない対応も多いうえ、死亡事故の場合はお葬式の流れも、病気などで亡くなった場合とは違うことがあります。

突然のことではかり知れないショックに襲われている中、初めての対応を多くこなすことは大変だと思います。本記事では、交通事故のご遺族がすべきことを詳しくわかりやすく解説していくので、参考にご覧ください。

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交通事故の被害者遺族が賠償請求する方法

死亡事故の被害者の賠償金は誰が請求する?

死亡事故の場合、被害者に代わってご遺族から選ばれる「相続人」が示談交渉を通して損害賠償請求を行います。

相続人の選出方法は以下のとおりです。

相続人の選出方法

  • 被害者に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となる。
  • そのうえで、以下のようにさらに相続人を選出する。
    • 子供がいる場合は子供(養子も含む)。子供がいなければ孫。
    • 子供も孫もいなければ、両親など直系尊属。養父母も含む。
    • 直系尊属もいなければ兄弟姉妹。

なお、加害者側は死亡事故だからといって、交渉態度を緩めるとは限りません。

死亡事故の損害賠償金は高額になりがちだからこそ、厳しい態度で交渉に臨んでくることもあります。

死亡事故では示談交渉次第で賠償金が数百万〜1,000万円以上変わることもあります。

示談交渉は弁護士に任せることも可能なので、不安がある場合はぜひ検討してみてください。

死亡事故の被害者遺族が賠償請求する流れ

死亡事故の被害者遺族が賠償請求する流れは、次のとおりです。

  1. 葬儀が終わり、すべての損害が確定したら加害者側の任意保険会社から示談案の提示を受ける
  2. 示談案の内容について、主に電話やFAXなどで交渉
  3. 示談成立後、示談書が届くので署名・捺印して加害者側の任意保険会社に返送
  4. 2週間程度で賠償金が支払われる

示談開始のタイミングは、四十九日を過ぎた頃が一般的です。
少なくとも葬儀が終わるまでは、最終的にどのような損害がどれくらい生じたのか判断できないため、適正な賠償額を算定できません。

もし葬儀開始前に示談案が届いても、交渉を始めないようにしましょう。

示談金の一部を早く受け取る方法

交通事故では、賠償金を受け取れるのは基本的に示談成立後です。

しかし、死亡事故では示談成立前に葬儀があるなど、賠償金を受け取る前にまとまったお金が必要になりがちです。

早く賠償金を受け取りたい場合は、被害者請求や仮渡金の請求、内払い金の請求などを検討してみてください。

  • 被害者請求
    損害賠償金の一部を、示談成立前に加害者側の自賠責保険会社に請求する方法。
  • 仮渡金の請求
    被害に応じた金額を、賠償金の前払いのような形で加害者側の任意保険会社に請求する方法。死亡事故の場合は290万円。
  • 内払い金の請求
    休業損害などを、示談成立前に加害者側の任意保険会社に請求する方法。

それぞれで特徴や手続きの方法が違います。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。

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亡くなった被害者に対する損害賠償金は誰が受け取る?

死亡事故の場合、被害者本人に対して支払われる損害賠償金は、ご遺族の中で分割されてから受け取ることになります。

分割方法はご遺族の中で話し合った結果に従うか、法定相続分に従うことになります。

法定相続分に従う場合は先述の相続人の中で賠償金が分配されます。分配の割合は以下のとおりです。

  • 相続人が配偶者と子の場合
    配偶者:子=1:1
  • 相続人が配偶者と直系尊属の場合
    配偶者:直系尊属=2:1
  • 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
    配偶者:兄弟姉妹=3:1

たとえば、相続人が配偶者と直系尊属である被害者の父母だった場合、配偶者が被害者分の損害賠償金の2/3を、父母がそれぞれ1/6ずつを受け取ることになるのです。

死亡事故における相続人の選出方法や遺産分割については、『交通事故の慰謝料|遺産分割できる相続人は?相続分はどれくらい?』の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。

死亡事故で被害者遺族が請求する賠償金の内訳・相場

死亡事故で請求できる損害賠償金には、以下のものがあります。

  • 死亡慰謝料:交通事故で死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛に対する補償
  • 死亡逸失利益:被害者が死亡することで得られなくなったその後の収入に対する補償
  • 葬祭関係費:通夜・葬儀などに関する費用
  • 治療関係費・休業損害・入通院慰謝料:交通事故から死亡までの間に治療期間があった場合に請求できる

死亡慰謝料は、被害者本人分だけでなくご遺族分も支払われます。過去の判例に従った死亡慰謝料の相場は、ご遺族分の金額も含めて2,000万円~2,800万円です。

被害者の立場金額
一家の支柱2,800万円
母親・配偶者2,500万円
その他の場合2,000万円~2,500万円

なお、死亡慰謝料の支払い対象となるご遺族は、基本的には配偶者・養父母含む両親・養子を含む子です。ただし、兄弟姉妹や内縁のパートナーも対象となることがあります。

実際の被害者との関係性などによっても判断は変わるので、気になる場合は一度弁護士に問い合わせることをおすめします。

死亡逸失利益については計算が複雑なので、以下の計算機からご確認ください。葬儀費用については本記事内『被害者遺族の疑問にお答え(1)お葬式について』にて詳しく解説しています。

注意

示談交渉時に加害者側が提示してくる金額は、ここで紹介した相場より大幅に低いことが多いです。例えば死亡慰謝料なら、数百万〜1,000万円以上低いこともあります。提示された金額を鵜呑みにしないようにしてください。

死亡事故による損害賠償金の計算は、『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』でも詳しくご確認いただけます。

交通事故の被害者遺族は過失割合も交渉する

過失割合は受け取れる賠償額に影響する

過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか、割合で示したものです。

死亡事故であっても被害者側にも一定の過失がつくことはあり、過失割合がつくとその割合分、損害賠償金が減額されます。

特に死亡事故では損害賠償額が大きくなりやすいので、過失割合が1割変わるだけでも金額が大きく変動することも多いです。

こうした点から加害者側は、あえて被害者側の過失割合を多めに見積もることがあります。示談交渉では過失割合の交渉にも、しっかり対応していきましょう。

過失割合の決め方

過失割合は、以下の流れで算定します。

  1. 「追突事故」「交差点の出会い頭事故」など、事故のおおまかな事故類型ごとに決められている「基本の過失割合」を確認する
  2. 信号の色やスピード違反の有無・程度、安全不確認などその事故固有の要素(修正要素)に応じて、基本の過失割合を調整する

過失割合は基本的に、加害者側の任意保険会社が算定し提示してきます。しかし、その内容が正しいとは限りません。

被害者側でも「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)と呼ばれる冊子や過去の判例などを参考に、適切な過失割合を確認しておきましょう。

ただし、過失割合は柔軟に算定されるものです。厳密な過失割合の確認は難しいので、弁護士に確認を取ることをおすすめします。

過失割合を決めるさらに詳しい流れや修正要素については『交通事故の過失割合は誰がいつ決める?修正要素や決め方もわかる』もご参照ください。

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交渉では亡くなった被害者側が不利になりがち|3つの対策は?

最終的に過失割合がいくらになるかは、加害者側との示談交渉で決められます。

被害者が亡くなっており、事故時の状況を知る人物が加害者のみといった場合、「被害者が信号無視をした」などと言われても反論が難しく、過失割合の交渉で不利になるリスクがあります。

こうしたリスクに備える方法は、以下の通りです。

  • 警察の捜査に被害者遺族として協力する
  • ドライブレコーダー映像などが残っていないか確認する
  • 示談交渉で弁護士を立てる

それぞれについて解説します。

(1)警察の捜査に被害者遺族として協力する

事故後に行われる警察による捜査(実況見分、聞き取り捜査)の結果は、過失割合の交渉時にも参考にされます。

事故時の状況を知るご遺族がいなかったとしても、以下の点を意識してできる限り捜査に協力しましょう。

  • 加害者が警察に対し、明らかにおかしい証言をしていないか確認する
  • 「被害者はこの道を通る際、常に安全確認を丁寧にしていた。ここで一時停止せずに進行したとは考えにくい。」などの意見を警察に伝える

警察の捜査結果は実況見分調書・供述調書にまとめられ、示談交渉だけでなく刑事裁判でも参考にされます。

加害者側に都合の良い内容にならないよう、被害者遺族として捜査に協力することがポイントです。

実況見分の流れについては『実況見分の流れや注意点!』にてご確認いただけます。

(2)ドライブレコーダー映像などが残っていないか確認する

被害者の車や周辺にいた車のドライブレコーダー、周囲の防犯カメラなどに、事故時の状況が映っていないかも確認してみましょう。

もし映像として証拠が残っていれば、加害者側が嘘の証言をしても反論できます。

ただし、周囲の駐車場や店の防犯カメラは、見せてもらえないことがあります。弁護士を通して閲覧をお願いすると見せてもらえることもあるので、お困りの場合は弁護士にご相談ください。

(3)示談交渉で弁護士を立てる

対策をしたとしても、事故時の状況を知る被害者ご本人がいない以上、過失割合の交渉は不利になりがちです。

そうした状況でもしっかり交渉するには、交渉のプロである弁護士をたてることがおすすめです。

弁護士であれば、不利になりやすい状況でも実況見分調書の中身を分析・精査するなどし、事故状況に見合った過失割合に導ける可能性を高められます。

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被害者遺族の疑問にお答え(1)お葬式について

交通事故からお葬式までの流れは?

交通事故で被害者が亡くなった場合、お葬式までの流れは以下のとおりです。

  1. 検死・司法解剖
  2. ご遺体の引き渡し
  3. 死亡届の提出
  4. お葬式

それぞれのフェーズについて詳しく解説します。

1.検死・司法解剖

事故現場や救急車の中で医師に看取られずに亡くなった場合、警察による検死が必要です。

検死は事故直後におこなわれることもあれば、事故の翌日以降におこなわれることもあります。検視の結果、不審な点が見つかった場合は司法解剖も実施されます。

検死ではメスなどを使うこともありますが、外傷やレントゲン撮影などで死因が明らかになる場合は、目視のみとなることが多いです。

交通事故後に病院で医師に看取られて亡くなった場合、司法解剖は基本的におこなわれません

2.ご遺体の引き渡し

ご遺体の引き渡しについては、検死や司法解剖が必要であったかどうかで少し流れが異なります。

  • 検死・司法解剖が不要な場合
    検死や司法解剖が不要な場合は、基本的にすぐにご遺体を引き取ることが可能です。医師による死亡診断書が作成されるので、死亡届の提出用と保険会社への損害賠償請求用に2通もらっておきましょう。
  • 検死・司法解剖が必要な場合
    検死や司法解剖が必要な場合は、ご遺体の引き渡しが事故から数日後になることがあります。引き渡しの前に警察から被害者の身体的特徴や所持品などについて質問され、遺体安置室でご遺体の確認をすることもあります。
    検死や司法解剖がおこなわれた場合は死体検案書が交付されるので、受け取ってください。

3.死亡届の提出

交通事故で被害者が亡くなった場合は、死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届を提出してください。死亡届の提出は、戸籍法第86条で定められています。

死亡届の提出先は、被害者が死亡した場所、被害者の本籍地、届出人の所在地のいずれかの市区町村役場です。

死亡届の提出時には死亡診断書や死体検案書が必要なので、忘れず用意してください。

死亡届を提出すると、火葬に必要な「埋火葬許可証」という書類が発行されます。

なお、場合によっては葬儀社が代わりに死亡届を出してくれることもあります。

4.お葬式

基本的に、お葬式は葬儀社などの指示に従って進めるようにしてください。

細かい進め方は、地域や宗派などによって違うこともあるので確認しておきましょう。

加害者側に請求できる葬儀関係費の内訳は?

葬儀などに関して、一般的に加害者側に請求できる費目とできない費目は、次のとおりです。

請求項目
認められる通夜・葬儀
火葬
祭壇
墓石
位牌
認められにくい香典返し
引き出物代
遺体運送料
初7日法要など通夜・葬儀以外の法要費用

通夜・葬儀、火葬、祭壇、墓石、位牌といった葬儀関係費については、加害者側への請求が可能です。

基本的に、葬儀関係費は150万円程度を上限として実費請求できるとされますが、加害者側との交渉次第ではそれより低い金額しか補償されない可能性もあります。

もっとも、金額の正当性を証明できれば、150万円以上の金額が補償されることもあります。

一方、葬儀関係費でも、香典返し・引き出物代・遺体運送料などは加害者側に請求できない可能性が高いです。

中には交渉により加害者側への請求が認められた事例のある費用もありますが、少なくともご遺族による示談交渉では請求は難しいとお考えくだい。

いずれにせよ、葬儀関係費については実費での請求となるので、領収書は捨てずにすべて保管しておくようにしましょう。

加害者の参列や香典は拒否できる?

加害者側が通夜・葬儀への参列や香典を申し出てきても、受け入れたくなければ拒否できます。

通夜・葬儀への参列や香典を受け入れると、ご遺族側は加害者に対して一定の許しを示していると判断されることもあります。

示談交渉や刑事裁判に悪影響が出る可能性もあるので、加害者側の申し出を受け入れるかどうかは慎重に判断してください。

加害者側の申し出を受け入れるべきか迷ったときは、弁護士に相談することもおすすめです。

今後の示談交渉や刑事裁判にどのような影響が出るのか、アドバイスをもらえます。

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被害者遺族の疑問にお答え(2)刑事裁判について

遺族が刑事裁判に参加する方法は?

死亡事故で加害者が起訴され、刑事裁判が行われる場合、ご遺族は被害者参加制度を利用して裁判に参加できます。

被害者参加制度を利用すると、検察官に意見を述べたり、証人や被告人に質問したりすることが可能です。

被害者参加制度を利用する場合は事前に申し出ておく必要があるので、利用するかどうかは早めに検討しておきましょう。

なお、被害者参加制度を利用しなくても、訴訟記録を確認したり、被害者側としての心情を述べたりすることは可能です。

刑事裁判が行われる場合に注意すべきことは?

加害者が刑事裁判を受ける場合、加害者側から「刑事面の示談」を持ちかけられることがあります。刑事面での示談への対応は、慎重に判断するようにしてください。

刑事面での示談とは、加害者側が「被害者からの許し(宥恕)」を得るためのものです。刑事面での示談が成立していると、一定の和解はできているとして加害者に対する刑事処罰が軽減される可能性があります。

加害者の減刑を望まない場合は、刑事面での示談に応じないようにしましょう。

刑事面での示談と損害賠償金の示談は別物

刑事面での示談と、損害賠償金や過失割合について決める示談(民事面での示談)は別物です。

すでに民事面での示談が成立し、損害賠償金を受け取っていたとしても、必ずしも刑事面での示談に応じる必要はありません。

刑事面での示談と民事面での示談は切り離して考えるようにしてください。

家族が事故にあって亡くなったら弁護士にご相談ください

ご家族が交通事故に遭い、亡くなった場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。

死亡事故はその他の人身事故と違い、事故後の流れや損害賠償請求、受け取った損害賠償金の分割など複雑な点が多いです。

また、大きなショックを受けたばかりのご遺族が、被害者本人に代わってさまざまな手続きをするのは非常に大変です。弁護士に相談しその後の手続きを一任すれば、心身の負担も軽減できますしご家族を送り出すことにも専念できるでしょう。

アトム法律事務所では、無料で電話・LINE相談を実施しています。
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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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