交通死亡事故の過失割合はどう決まる?被害者が亡くなっても過失はつく?

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交通事故死亡

交通事故をおこした責任の大きさのことを「過失割合」といいます。

交通死亡事故の場合、被害者が死亡しているため加害者側の主張が通りやすく、「被害者にも過失割合があった」と主張される可能性があります。

交通事故で大切な家族を失ってしまった被害者遺族の精神的ショックは当然ですが、それに加えて亡くなった被害者まで悪く言われてしまえば、悲しみや怒りの感情は計り知れません。

また、被害者の過失割合が大きくなれば、遺族が受け取れる損害賠償金の金額が大きく減ってしまいます。

このページでは、交通死亡事故における過失割合がどのように決まるのか、なぜ被害者が亡くなっても過失がつくのか、過失割合を適正にするためにどのような方法があるのかを詳しく解説します。

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交通死亡事故で過失割合はどうやって決まる?

交通死亡事故で過失割合はどうやって決まるのか、被害者が亡くなっていても過失割合がつく可能性があるのかについて解説します。

交通事故の過失割合は主に示談交渉で決まる

過失割合は、基本的に示談交渉(事故の賠償問題について和解するための話し合い)を通じて決まります。

交通死亡事故で賠償請求をする場合でも、すべてのケースが裁判になるわけではありません。

多くの場合は、まず示談交渉をして、解決を目指します。

示談交渉では、交通事故の賠償金(≒示談金)を決める前提として、事故の過失割合も決めます。

その際、過去の裁判例(例:「別冊判例タイムズ38」等の書籍)を参考にして、過失割合を検討します。

死亡したから過失割合が0%になるというわけではなく、事故がおきた状況によって、過失割合が決まります。

交通死亡事故の過失割合の例(3対7の場合)

過失割合3対7@交通死亡事故の過失割合:歩行者(死亡)30%のイメージ図

※参考:別冊判例タイムズ38【37図】

なお、交通事故が起きた現場で実況見分を行うのは警察ですが、警察が事故の過失割合を決めるわけではありません。

示談交渉で過失割合を決める手順・流れ

基本的に、加害者側の任意保険会社が過失割合を算定して、示談交渉時に提示してくる流れになるでしょう。もっとも、任意保険会社が提示してきた過失割合の内容が正しいとは限りません。

交通死亡事故の過失割合は、以下の流れで算定します。

過失割合の算定の流れ

  1. 「基本の過失割合」の確認
    追突事故」「交差点の出会い頭事故」など、事故のおおまかな事故類型ごとに決められている「基本の過失割合」を確認する
  2. 「個別の修正要素」で調整
    信号の色やスピード違反の有無・程度、安全不確認などその事故固有の要素(修正要素)に応じて、基本の過失割合を調整する

交通死亡事故の被害者側がすべきこと

被害者側でも「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)と呼ばれる冊子や過去の判例などを参考に、適切な過失割合を確認しておきましょう。

ただし、厳密な過失割合の確認は難しいので、弁護士に確認を取ることをおすすめします。

死亡の場合でも状況に応じて過失割合はつく

そもそも過失割合とは、交通事故が生じた責任が被害者と加害者のどちらにどのくらいあったのか数値で示したものをいいます。

したがって、死亡事故かどうかにかかわらず、事故が発生した責任(過失)が被害者と加害者の双方にあった場合、たとえ被害者が亡くなられていたとしても過失割合はつくことになるのです。

民法では、被害者にも過失があれば、損害賠償金の額に影響すると定められています。

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

民法 第722条2項

交通事故で被害者が亡くなっているにもかかわらず、被害者に過失割合がつくこと自体に納得できない気持ちになるのは当然でしょう。

しかしながら、亡くなられてしまったことと、交通事故が発生した責任については別問題になるのです。

過失割合の基本的な考え方や、事故パターンごとの過失割合を知りたい方は『交通事故の過失割合とは?』の記事もあわせてご覧ください。

過失割合は受け取れる賠償額に影響する

過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか、割合で示したものです。

死亡事故であっても被害者側にも一定の過失がつくことはあり、過失割合がつくとその割合分、損害賠償金が「過失相殺」によって減額されます。過失相殺について詳しくは『過失相殺とは?計算方法の具体例や判例でわかりやすく解説』の記事をご確認ください。

特に死亡事故では損害賠償額が大きくなりやすいので、過失割合が1割変わるだけでも金額が大きく変動することも多いです。

こうした点から加害者側は、あえて被害者側の過失割合を多めに見積もることがあります。示談交渉では過失割合の交渉にも、しっかり対応していきましょう。

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交通死亡事故の被害者は過失割合が不利になりがち

最終的に過失割合がいくらになるかは加害者側との示談交渉で決められますが、交通死亡事故の場合、どうしても被害者の過失割合が不利になりがちです。

なぜ交通死亡事故の被害者の過失割合が不利になりやすいのか解説します。

死亡事故では加害者の主張が通りやすい

交通死亡事故は被害者が亡くなっているため、事故に関する言い分を被害者から聞くことができません。

加害者の主張が通りやすくなってしまいやすい交通死亡事故では、被害者の過失割合が不利になりやすいです。

事故が起きると警察による捜査が行われるのですが、実況見分調書という書類に捜査結果がまとめられます。実況見分調書は過失割合を算定する際に用いられる資料の一つですが、事故時の状況を知る人物が加害者のみになると、加害者の言い分のみをもとに事故状況がまとめられてしまいやすいです。

たとえば、「被害者が信号無視をした」などと言われても反論が難しく、加害者に有利な実況見分調書の内容となってしまいかねません。

保険会社から亡くなった被害者の過失を大きく見積もられる

保険会社は亡くなった被害者の過失が大きくなるよう見積もってきます。

そもそも保険会社は、死亡事故であろうと、軽傷や物損のみの事故であろうと、保険会社が支払うことになる金額をできる限り抑えようと考えて行動しているものです。

前述の通り、過失割合は最終的な損害賠償金の金額に影響するため、被害者の過失が大きくなるように保険会社は算定してくるでしょう。加害者の主張が通りやすいという状況も相まって、保険会社が提示するままの過失割合をそのまま被害者遺族が受け入れてしまっているケースも多いです。

しかし、保険会社が提示する過失割合は事故状況を適切に反映できたものとは限りません。

交通死亡事故の過失割合を適正にする方法

交通死亡事故の過失割合が不利なままだと、被害者遺族が受け取る損害賠償金の取り分が減ってしまいます。過失割合を適切にする以下の方法で、損害賠償金の減額リスクに備えておきましょう。

  1. 警察の捜査に被害者遺族として協力する
  2. ドラレコや防犯カメラ映像などが残っていないか確認する
  3. 事故の目撃者を探す
  4. 実況見分調書や供述調書を取り寄せる
  5. 示談交渉で弁護士を立てる

それぞれについて解説します。

(1)警察の捜査に被害者遺族として協力する

事故後に行われる警察による捜査(実況見分、聞き取り捜査)の結果は、過失割合の交渉時にも参考にされます。

事故時の状況を知るご遺族がいなかったとしても、以下の点を意識してできる限り捜査に協力しましょう。

  • 加害者が警察に対し、明らかにおかしい証言をしていないか確認する
  • 「被害者はこの道を通る際、常に安全確認を丁寧にしていた。ここで一時停止せずに進行したとは考えにくい。」などの意見を警察に伝える

警察の捜査結果は実況見分調書・供述調書にまとめられ、示談交渉だけでなく刑事裁判でも参考にされます。

加害者側に都合の良い内容にならないよう、被害者遺族として捜査に協力することがポイントです。

実況見分の流れについては『実況見分の流れや注意点』にてご確認いただけます。

86歳加害者の供述信用性が争点の死亡事故

東京地判平29・8・28(平成27年(ワ)21236号)

社会福祉法人理事(86歳)が運転する車が、信号機のない丁字路交差点を右折中に横断歩道を渡っていた女性(79歳)に衝突し死亡させた事故。加害者は「被害者が歩道から突然飛び出してきた」と主張し30%の過失相殺を求めたが、加害者が「認知症を伴うパーキンソン病」で供述の信用性が問題となった。


裁判所の判断

「…被告Y1の供述は信用することができない」

東京地判平29・8・28(平成27年(ワ)21236号)
  • 加害者の供述における移動速度の計算が物理的に不合理
  • 事故直後の実況見分と後の供述内容に矛盾
  • 加害者の年齢(86歳)と認知症を伴うパーキンソン病による影響
  • 検察審査会がY1の供述が不合理である等を理由として、不起訴処分を「不当」と議決
過失割合

被害者の過失0%

(2)ドラレコや防犯カメラ映像などが残っていないか確認する

被害者の車や周辺にいた車のドライブレコーダー、周囲の防犯カメラなどに事故時の状況が映っていないかも確認してみましょう。

もし映像として証拠が残っていれば、加害者側が嘘の証言をしても反論できます。

ただし、周囲の駐車場や店の防犯カメラは、見せてもらえないことがあります。弁護士を通して閲覧をお願いすると見せてもらえることもあるので、お困りの場合は弁護士にご相談ください。

ドラレコ映像にもとづく死亡事故の過失割合認定事例

東京地判令和5・3・27(令和3年(ワ)22655号)

77歳男性が犬を連れて夜間散歩中、反射材を身に着けてバイパス道路を横断していたところ、犬に引かれて体勢を崩し、時速50kmで走行してきた乗用車と衝突し死亡。被告運転者は、約15m手前で発見し急ブレーキをかけたが間に合わなかった。過失割合が争点となった。


裁判所の判断

「…ドライブレコーダーの映像によっても、衝突に至る前から、亡Aと思しき人物がセンターライン付近から横断している様子は確認できる」

東京地判令和5・3・27(令和3年(ワ)22655号)
  • ドラレコ映像で被害者の「直前横断」を否定
  • 被告の前方不注視による過失を客観的に立証
  • 死亡慰謝料2000万円、賠償額は妻約1105万円、子3人各約368万円
過失割合

被害者の過失30%

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交通事故で集めるべき証拠は?保全の重要性と立証に必要な書類・証明資料

(3)事故の目撃者を探す

交通事故の目撃者が他にもいないか探してみましょう。通常、警察の捜査である程度の目撃者は集められているものですが、それでも捜査から漏れた他の目撃者がいる場合もあります。

事故の利害関係がない第三者である目撃者の証言は信用性が高いと判断されやすいです。

被害者遺族がみずから聞き込みをして目撃者を探すケースもありますが、非常に労力のかかる作業でしょう。場合によっては、目撃者を探している内容を掲示した立て看板を警察に要請して設置してもらうこともできます。

無理のない範囲で、できることからはじめて目撃者を探しましょう。

目撃者証言にもとづく死亡事故の過失割合認定事例

横浜地判平19・6・19(平成17年(ワ)606号・平成18年(ワ)342号)

被害者・Aが原付で走行中、自転車で走行中のBと接触後、Cの運転する10トンダンプに轢過され死亡。C(ダンプ)は、Aの原付を全く認識せず、Cの自転車は後方確認を怠っていた。過失割合が争点となったが、当事者の主張が対立する中、利害関係のない第三者目撃者・Dが事故の瞬間を詳細に目撃しており、認定に寄与した。


裁判所の判断

「…過失が競合した一つの交通事故というべきものであり、三者間の関係に照らし、本件事故の原因となったすべての過失割合を認定することができる」

横浜地判平19・6・19(平成17年(ワ)606号・平成18年(ワ)342号)
  • 目撃者は「事故及びその直前の状況を偶然に目撃したもの」であって、原告・被告・参加人らとは「何らの利害関係を有するものでない」
  • 目撃者は「事故の具体的状況を目撃した」
  • 目撃者は「事故直後に実施された実況見分に立ち会って、その目撃状況を指示説明し」「取調べにおいても、同様の供述をした」から、「認識記憶に大きな誤りがあるとは考え難い」
損害賠償額

被害者(原付)A:30%、 大型車運転者B:60% 、 自転車C:10%

(4)実況見分調書や供述調書を取り寄せる

警察の捜査が終わっている場合、実況見分調書や供述調書を取り寄せましょう。

加害者の言い分のみが反映された実況見分調書が作成されている可能性もありますが、内容を精査することで、事故状況についての新事実を発見したり、供述調書とあわせて確認することで加害者が主張する内容の矛盾点に気づけたりすることもあります。

実況見分調書の取り寄せ方法は、加害者の刑事処分の段階によって異なりますが、おおむね検察官か裁判所に申請することで取り寄せ可能です。

なお、供述調書の取り寄せに関しては、実況見分調書と比べるとハードルが高いと言わざるを得ません。もっとも、訴訟を提起して、供述調書が事故状況を証明するために必要不可欠な書類であると判断されれば、開示されることもあります。

弁護士がついていれば必要な証拠集めについても一任できるので、交通死亡事故の過失割合で争いになっている場合は、弁護士への依頼も検討しましょう。

実況見分調書にもとづく死亡事故の過失割合認定事例

横浜地判平24・4・26(平成21年(ワ)5052号)

被害者Aが原付で、信号機のない交差点を直進中、Bの運転する対向右折車と接触。その弾みで違法駐車のCのトラックに激突し、トラックの下に挟まれ気管損傷等で死亡した。右折車運転者Bは渋滞の隙間を慌てて通過しようとしていた。トラック運転者Cは缶コーヒー購入のため交差点の側端から5m以内に違法駐車していた。A・B・Cの三者の責任割合が争点となった。


裁判所の判断

…実況見分調書、被告乙山供述及び被告丙川供述を総合すると、以下の事実が認められる。」

横浜地判平24・4・26(平成21年(ワ)5052号)
  • Bは、被害者Aを発見したが、もはや衝突を回避することができなかった
  • Aのバイクは、滑走してトラックに衝突した
  • トラックは交差点の側端から5メートル以内に駐車していた
損害賠償額

被害者30%、被告乙山60%、被告丙川10%

(5)示談交渉で弁護士を立てる

対策をしたとしても、事故時の状況を知る被害者ご本人がいない以上、過失割合の交渉は不利になりがちです。

そうした状況でもしっかり交渉するには、交渉のプロである弁護士を立てることがおすすめです。

弁護士であれば、不利になりやすい状況でも実況見分調書の中身を分析・精査するなどし、事故状況に見合った過失割合に導ける可能性を高められます。

交通死亡事故の遺族がすべき賠償請求の対応については、関連記事でもくわしく解説しているので、あわせてお読みください。

交通死亡事故の過失割合でお困りなら弁護士相談

交通死亡事故の過失割合のまとめ

交通死亡事故における過失割合は、過去の裁判例を参考に、事故状況を検討して決定されます。

被害者にも過失がある場合、損害賠償額が減額(=過失相殺)されるため、過失割合の決定は重要です。

特に死亡事故の場合は、被害者が死亡しているため、加害者側の主張が通りやすく、被害者側が不利になりがちです。

過失割合に納得がいかない場合は、有利な証拠を集め、反論することが有効です。

悩んだときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。

アトムの解決事例(交通死亡事故)

こちらでは、過去に、アトム法律事務所の弁護士が解決した交通死亡事故についてご紹介します。

横断歩道ひき逃げ死亡事故の賠償事例

横断歩道を渡っていた男性が直進の軽トラックに轢かれ亡くなったひき逃げ事件。


弁護活動の成果

過失割合での争点を有利に進め、粘り強い示談交渉により、3162万円の賠償金を獲得。

年齢、職業

80代以上、高齢者

傷病名

死亡事故

後遺障害等級

死亡事故

過失割合8割でも3580万円獲得した事例

T字路交差点で大型トラックと衝突し、自動車を運転していた男性が亡くなった死亡事故。加害車両が優先道路を走っていたため、被害男性の過失が8割とされる厳しい状況。


弁護活動の成果

人身傷害特約の活用と裁判での主張により、保険会社の支払い拒否を覆して和解に至りました。18か月の弁護活動で、最終的に3580万円を回収(過失相殺・既往症減額後の金額)。

年齢、職業

60~70代、パート

傷病名

死亡事故

後遺障害等級

死亡事故

アトムの無料相談(24時間受付中)

ご家族が交通事故で亡くなられ、過失割合で争いになっている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

死亡事故は、大切な家族を亡くした悲しみの中で事故後の対応や損害賠償請求をしていかねばなりません。そのうえ、加害者側の保険会社から亡くなった被害者にも事故の原因(過失)があったような対応を取られると、心身の負担が大きいでしょう。

弁護士に手続きを一任してしまえば、心身の負担も軽減でき、亡くなったご家族を送り出すことにも専念できます。

アトム法律事務所では、弁護士による無料の電話相談・LINE相談を実施しています。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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