交通事故で集めるべき証拠とは?訴訟・示談で重要な書類や証明資料を徹底解説【完全ガイド】

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交通事故の証拠には、警察作成の実況見分調書、供述調書、ドライブレコーダーの映像のほか、診断書や領収書、車両損害の見積書など沢山あります。

交通事故に巻き込まれたとき、最も重要になるのが「証拠」です。事故の発生や相手の過失、自分の損害を証明できる書類や記録がなければ、正当な損害賠償を受け取ることが難しくなります。

この記事では「交通事故の証拠」に関心のある方に向けて、実際に訴訟や保険会社との示談交渉で使われる具体的な証拠資料、その入手方法、注意点までわかりやすくまとめました。

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交通事故の証拠とは

交通事故の証拠【一覧表】

以下は、交通事故の訴訟や示談交渉において、実務上よく提出される証拠を一覧にしたものです。

交通事故の証拠の例

証明すること証拠
交通事故の発生交通事故証明書
事故現場の状況現場見取り図、写真、Googleマップ
事故の態様、過失割合写真(車両の損傷箇所、現場の状況)
実況見分調書
供述調書
ドライブレコーダー映像
信号サイクル表
保険会社の調査報告書
車両の修理、買替、代車、休車等車検証
見積書、領収書
中古車価格(ネット検索、レッドブック等)
症状、治療費、入通院慰謝料診断書、カルテ、診療明細書
交通費領収書、料金表、走行距離のわかるもの
後遺障害後遺障害診断書、後遺障害等級認定票
休業損害、逸失利益休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書
損益相殺自賠責・任意保険会社の支払通知書
労災給付金の支払い記録

交通事故の証拠が必要な理由

交通事故の証拠は、「誰が何をしたのか」「どのような損害が発生したのか」を裏付け、責任の有無・損害額を明確にするために不可欠です。

裁判では、証拠のない主張は認められません。示談交渉でも、最終的に裁判になる可能性を見据えて交渉が行われるため、相手に譲歩させるには証拠の有無が重要な鍵となります。

交通事故で証拠が必要な場面の例

事故の発生状況、事故態様の証明

加害者の責任を問うには、事故の態様、発生状況を客観的に証明する必要があります。
交通事故が起きたことそのものすら争われる場合もあるため、事故の証明は重要です。

当事者のどちらに、どれだけの責任があるのかも、事故の状況によって決まります。責任の度合い(過失割合)に応じて、被害者が支払ってもらえる賠償金の金額が変わります。

損害の額(治療費・修理費・慰謝料など)を立証する場面

車両の修理費、ケガの治療費、慰謝料などの損害額は、証拠がなければ減額されたり、否認されたりする可能性があります。

事故の発生・態様を証明する証拠の集め方

交通事故証明書

交通事故証明書とは、交通事故が発生した事実を証明する公的書類です。警察への届出がある事故について、発行されます。

交通事故証明書の発行を申請できる人は、交通事故の当事者(加害者・被害者)や、当事者から委任を受けた者等です。

交通事故証明書の入手方法は、以下の3通りです。

交通事故証明書の入手方法

  1. 最寄りの自動車安全運転センターの窓口で申請
  2. ゆうちょ銀行で申請
    ※申請書類は、センター事務所、警察署・交番、駐在所に備え付け
  3. インターネット申請

自動車安全運転センター「各種証明書のご案内」を参考にまとめました。

交通事故証明書の交付手数料は、1通につき800円(消費税非課税)です。ゆうちょ銀行での申請では、振込料金もかかります。

任意保険会社がすでに取得している場合もあるので、その場合は保険会社から入手することも考えられます。

交通事故証明書の交付の期限としては、人身事故については事故発生から5年、物件事故については事故発生から3年です。

実況見分調書

人身事故の届出をした交通事故については、実況見分調書が作成されます。

実況見分調書とは、警察官が事故現場の状況や事故の経緯を立会いの下で検証し、その結果をまとめた文書のことです。

実況見分調書の取り寄せが可能な時期と方法については、以下のとおりです。

時期方法
捜査中取り寄せられない
不起訴になった後・検察庁に、弁護士会照会
・交通事件が係属する民事裁判所に、文書送付嘱託の申出
起訴後、刑事裁判中・犯罪被害者保護法3条による閲覧・謄写申請
・交通事件が係属する民事裁判所に、文書送付嘱託の申出
刑事裁判の確定後・検察庁に、刑訴法53条による閲覧申請
・検察庁に、弁護士法23条の2による弁護士会照会
・交通事件が係属する民事裁判所に、文書送付嘱託の申出

物件事故報告書

物損事故の場合、またはケガをしたけれども人身事故の届出をしていない場合は、実況見分調書が作成されず、物件事故報告書になります。

物件事故報告書の入手方法

  1. 管轄の警察署に、弁護士法23条の2による照会をする
  2. 訴訟提起後、文書送付嘱託の申立てをする

供述調書

供述調書とは、刑事捜査の際に、警察や検察が被疑者や参考人等の供述内容を記録した書面のことです。事故の状況や関係者の認識を示す資料として、重要な証拠となることがあります。

供述調書の入手方法は、基本的に実況見分調書と同じです。

加害者の起訴された後は、弁護士や裁判所を通じて閲覧が可能となるケースがあります。

ただし、不起訴の場合、供述調書の開示の条件は非常に限定されており、実際に入手できるケースはごく稀です。

ドライブレコーダーの映像

ドライブレコーダーは、急激な速度変化など一定の条件のもと、自動的にその前後の記録が保存される仕組みとなっています。

代替性のない証拠であり、「動かぬ証拠」となり得るものです。

ただし、自身の車のドラレコ映像を証拠にする場合は、録画データが上書きされる前に、確実に保存することが不可欠です。

加えて、以下のような点にも気を付けましょう。

ドラレコの注意点

  • 運転席からの実際の見え方と、映像が異なることがある
    (例:録画映像は、カメラの位置やレンズの特性により、運転席から見え方と異なることがある)
  • 改ざんや紛失等がないように、もとのデータを保存しておく
  • 重要な場面は静止画(コマ割り)でプリントし、必要に応じて、補足説明を加える

また、自身の車ではなく、他者の車両のドラレコ映像を証拠としたい場合は、映像の保持者に協力を求めたり、裁判所を通じて文書送付嘱託により入手したりする方法が考えられます。

信号サイクル表

信号サイクル表とは、信号のサイクル(青→黄→赤と色が一巡するパターン)を記録した表のことです。

信号サイクル表を見ると、何色が何秒間表示されるのかがわかります。双方の主張がずれている場合、信号サイクル表を確認することで、どちらが正しいのか判断できるケースは少なくありません。

事故当時の信号サイクル表の入手方法は、警察署に対して弁護士法23条の2による弁護士会照会、調査嘱託(民訴法186条)などです。

また、場合によっては、刑事事件記録に信号サイクル表が含まれていることもあります。

事故後、自分でできる証拠収集

交通事故の証拠は、自分で集めた物でも有効です。

事故後すぐに、以下のような記録を残すことでより有利な立証を目指せる可能性が高まります。

自分で集める証拠の例

  • 現場の写真、スケッチ図、周辺地図への加筆
  • 加害者側証言と異なる箇所を視覚的に示す
  • 同時間帯の現地調査、防犯カメラ映像の確保(上書き前に対応)
  • 民間事故鑑定専門家による意見書の活用(私的鑑定)

交通事故の人身損害に関する証拠の入手

事故でケガをしたことを証明する証拠

ケガ、後遺障害、死亡について賠償請求をするには、交通事故によって受傷したことを証明する証拠が必要です。

証明に必要な証拠の入手方法については、以下のとおりです。

受傷内容・程度の証拠の例

証拠入手方法
診断書
診療報酬明細書
医療機関、保険会社から入手
カルテ医療機関に請求

後遺障害の証拠の例

証拠入手方法
後遺障害診断書医師に作成依頼
後遺障害等級認定票被害者請求または事前認定
意見書主治医や専門医に作成依頼
生活状況がわかる写真
陳述書
被害者が作成
カルテ医療機関に請求

死亡の証拠の例

証拠入手方法
除斥謄本、住民票除票市町村役場から入手
死亡診断書医療機関、保険会社から入手

治療費等を請求するための証拠

交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償を請求する場合、基本的にどのくらいの損害が発生したのかを証明する必要があります。

被害者が賠償できる損害には、以下のようなものがあります。

賠償請求できる損害の例

  • 積極損害
    • 治療関係費
    • 通院交通費
    • 葬儀関係費 など
  • 消極損害
    • 休業損害
    • 逸失利益
  • 慰謝料

それぞれの証拠の入手方法については、以下のとおりです。

治療関係費の証拠

治療関係費の証拠になるものは、診療報酬明細書、領収書等です。

通院先から入手したり、任意一括対応の場合、保険会社から入手できることもあります。

通院交通費の証拠

通院交通費の証拠になるものは、領収書、通院交通費明細書等です。

領収書は、各交通機関を利用した際に、保存しておきます。

通院交通費明細書は、所定の書式に、公共交通機関等の利用履歴を自分で記入して作成します。

葬儀関係費用の証拠

葬儀関係費用の証拠になるものは、領収書等です。事業者から、入手して保存しておきます。

休業損害・逸失利益を請求するための証拠

交通事故による消極損害(休業損害、逸失利益)を証明する証拠、およびその入手方法は以下のとおりです。

休業損害・逸失利益の証拠の例

証拠入手方法
休業損害証明書勤務先に作成依頼
源泉徴収票勤務先から入手
賞与減額証明書勤務先から入手
確定申告書税務署
所得証明書市町村役場

また、休職中の場合は、就労可能性の高さを示す資料(就職活動記録、雇用契約書など)を提出することもあります。

その他、家事従事者(専業主婦・主夫)の場合、住民票を役所で入手したり、家事自認書を作成したりします。

慰謝料を請求するための証拠

慰謝料には、以下の3種類があります。

慰謝料の種類

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
    事故によるケガで入通院を余儀なくされた苦痛に対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
    事故によって後遺障害が残った苦痛に対する慰謝料
  • 死亡慰謝料
    事故によって死亡したことに対する慰謝料

入通院慰謝料(傷害慰謝料)の証拠

入通院慰謝料は、入通院の期間と日数で算定されるため、これらの情報がわかる証拠が必要になります。

具体的には、診断書、診療報酬明細書です。これらは通院先から入手できます。すでに任意保険会社が取得しているケースもあります。

後遺障害慰謝料の証拠

後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級に応じて算定されるため、等級がわかる証拠が必要になります。

具体的には、損害保険料率算出機構が発行する「後遺障害等級認定票」が必要です。この認定票を入手するには、後遺障害認定の申請をおこない、等級を認定してもらう必要があります。

また、生活への支障の度合いも考慮されるため、被害者自身が陳述書を作成することもあります。

死亡慰謝料の証拠

死亡慰謝料は、被害者の立場を参考に算定されるため、家族構成が分かる証拠が必要です。具体的には、戸籍謄本や住民票(市町村役場から入手)、陳述書(遺族が作成)等になります。

遺族固有の慰謝料を請求する場合、遺族の心情を陳述書にまとめることもあります。

交通事故の物件損害に関する証拠の入手

交通事故の物件損害とは

交通事故の物件損害(車両の修理費、買替諸費用など)についても賠償請求可能ですが、当該損害が発生したことを証拠により証明する必要があります。

物件損害の種類

  • 車両の修理費
  • 全損の場合の買替費用
  • 評価損
  • 代車使用料
  • 休車損 など

物件損害の証拠の入手方法

物件損害に関する証拠と、その入手方法については、以下のとおりです。

証拠入手方法
車検証被害者自身が保有
弁護士会照会
修理費の領収書、見積書業者や保険会社から入手
時価算定のためのレッドブック書店で購入
図書館で閲覧
保険会社から入手
時価算定のための中古車情報書店で書籍購入
ネット検索
時価算定のための査定証中古車業者から入手
評価損がわかる事故減価証明書日本自動車査定協会から入手
買替諸費用の見積書、注文書業者から入手
代車使用料の領収書、請求書業者や保険会社から入手
休車損を算定するための確定申告書被害者自身が保有、または税務署
休車損を算定するための売上書、決算書被害者自身が保有

交通事故の証拠でよくある質問

Q.自分で証拠が集められないときの対処法は?

裁判所を通じて、第三者から記録を入手する「証拠収集手続」があります。

手続き説明使用例
文書送付嘱託(民訴法226条)書類の提出を裁判所が指示病院のカルテ、保険会社の支払い記録など
調査嘱託(民訴法186条)官公庁に資料提出を求める信号サイクル表、防犯カメラの存在確認など

Q.交通事故の証拠には保存期限がある?

以下の証拠資料は、一定期間で消去または破棄されるため、早めの収集が重要です。

証拠資料保存期間の目安
交通事故証明書人身事故は5年
物損事故は3年
実況見分調書起訴された場合は3年〜10年
不起訴の場合は1年~5年
診療録(カルテ)原則、診療終了から5年
ドライブレコーダー映像機器により数日〜数週間で自動上書きされるため要注意

Q. 写真や録音がなくても証拠になる?

書面・録音・写真だけでなく、診断書、事故証明、警察記録なども立派な証拠です。複数の資料を組み合わせることで証明力が向上します。

Q.弁護士に依頼しないと証拠は集められない?

証拠の一部は自分でも集められますが、警察記録や保険会社の資料など、弁護士でないと入手が難しいものもあります。不安な場合は、弁護士へのお早めの相談をおすすめします。

Q.相手が全て否認し「事故そのものがなかった」と言っています

警察届出の有無、ドライブレコーダー、現場写真、目撃者証言など、多角的な証拠で客観的に事実関係を証明しましょう。

交通事故の示談を有利に進めるには「証拠」がカギ

交通事故の証拠についてまとめの一言

交通事故の被害にあった際は、事故直後からどれだけ証拠を残せるかが非常に重要です。証拠にもとづく主張が、損害賠償額や責任割合を決定づけるからです。

  • 事故態様の証明にはドライブレコーダーや実況見分調書が重要
  • 損害の証明には診断書や修理見積書、各種領収書が必要
  • 証拠の中には保存期間が短いものもあるため、早期対応が大切

証拠収集や提出方法に不安があれば、交通事故に詳しい弁護士に相談し、適切なサポートを受けましょう。

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交通事故に遭い、ご不安をお持ちの方は、まずは弁護士までご相談ください。

交通事故に関するお悩みは、早期の証拠収集及び、専門家への相談が解決の第一歩です。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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